説明

加工装置用カバー装置

【課題】加工装置のカバー装置の強度を向上させかつ透過性に優れた効果のある加工装置用カバー装置を提供する。
【解決手段】ポリカーボネート等の樹脂からなる透明樹脂板10と透明ガラス板12をアクリル樹脂等からなる接着用樹脂層11を介して接合する。この接着用樹脂層11に覆われるようにしてパンチングメタル13を挿入することにより、透明窓部分の強度を大幅に強化しながらも透明カバー部5の厚みの増大を最小限に止め、耐クーラント性にも優れたカバー装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置のカバー装置の強度を向上させかつ透過性に優れた効果のある加工装置用カバー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、工作機械のカバー装置は加工装置の周囲を覆う形で設置され、カバーの一部分は加工状態の監視や機械本体の状態確認のために開口窓が設けられており、その開口窓には切屑やクーラントの飛散防止、あるいは機械に直接触れる危険の無いように開口窓をガードする透明カバーが設けられている。この開口窓をガードする透明カバーは透明樹脂からなる1枚板等で構成されていた。この1枚板の透明カバーは、ワークを切削中に加工工具等が折損した際その加工工具の破片がカバーに衝突した際の衝撃に耐え得る強度面、及び加工領域からのクーラントに対する耐久性や寿命面、及びクーラントの影響による変色等の問題があった。それらの問題を解決するために、カバーの透明パネル部の内側に所定間隙を介してパンチングプレートを配置する方法が特許文献1に掲載されている。また、強化ガラス板、接着層、透明樹脂板からなる積層ガラスが特許文献2に掲載されている。
【特許文献1】特開平9−117842
【特許文献2】特開2003−231209
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようにカバーの透明パネル部の内側にパンチングプレートを配置する方法においては切粉等の飛散により、パンチングプレート小孔や間隙に切粉が詰まり、さらにその部位にクーラントがかかることにより、それらの切粉及びクーラントが小孔を完全に塞いでしまい、透明パネルの透過性が低下する原因となっていた。また、パンチングプレート自体は鉄等の素材から成り、耐クーラント寿命等が考慮されていないため、パンチングプレートが腐食する可能性がある。これを回避するためにパンチングプレート表面に特殊なコーティングを施すとコストや手間の増大につながってしまうといった問題があった。また、近年安全性に関する規制等が整備されてきており、工作機械等のカバーにも相応の耐久性が求められるようになっている。ただし、前記のような積層ガラスを開口部に適用すると、工作機械で安全と考えられる衝撃エネルギーに耐えるには相当の厚みを持った樹脂板が必要となり、工作機械に適用するには省スペース化、設計の自由度といった点から採用できないといった問題があった。
【0004】
本発明は、透明カバー部の厚みを増すことなく耐衝撃性、耐クーラント性に優れた加工装置のカバー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、加工装置のカバーに開口されたカバー開口窓をガードする透明カバー部を持つカバー装置において、前記透明カバー部は内側から透明ガラス、接着用樹脂層、透明樹脂板を重ね合わせて構成され、前記接着用樹脂層の内部にはパンチングメタルが埋めこまれていることを要旨とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記透明カバー部は内側から透明ガラス、第1の接着用樹脂層、第1の透明樹脂板、第2の接着用樹脂層、第2の透明樹脂板の順に構成され、前記第1の接着用樹脂層又は第2の接着用樹脂層の内部にはパンチングメタルが埋めこまれていることを要旨とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記パンチングメタルは、反射率の低い色で塗装又はめっきが施されていることを要旨とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項において、前記カバーの透明カバー部はワークの加工領域を覆う部分に設けられたことを要旨とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項において、前記接着用樹脂層の材質は、アクリル樹脂又はウレタン樹脂で構成されることを要旨とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか1項において、前記パンチングメタルの外周部は前記接着用樹脂層の外周部よりも小さく、前記パンチングメタルの外周部が前記接着用樹脂層にて覆われていることを要旨とする。

【発明の効果】
【0011】
請求項1から6のいずれか1項に記載の発明によれば、カバー装置の透明カバー部を内側から透明ガラス、接着用樹脂層、透明樹脂板を重ね合わせて構成し、前記接着用樹脂層の内部にパンチングメタルを挿入することにより、カバー装置における透明窓部の強度を大幅に強化することができ、ワークを加工中に加工工具が破損した時、その加工工具の破片が透明ガラスに衝突しても衝撃に耐えることが可能となる。また、パンチングメタルを挿入することにより、透明樹脂板の厚みを少なくすることができるので強度の向上に伴う透明窓全体の厚みの増大を最小限に抑えることができ、加工装置全体の省スペース化が可能となり、カバー内部の配管設置場所等設計の自由度も確保できるといった効果がある。またパンチングメタルの挿入に伴い若干視認性は悪くなるものの、加工状態及び機械の状態の確認という目的においては十分な視認性を有する。
【0012】
請求項2に記載の発明は、透明樹脂板および接着用樹脂層をさらに分割した為、同様の厚みにおいて更なる強度アップが期待できる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、パンチングメタルに反射率の低い色で塗布やめっきを施すことで光の反射を抑制し、カバー内部の視認性を改善することが可能となる。また、反射率の低い色同士で文字やシンボル等をデザインした塗装も行うことができ、外観デザイン性も向上する。
【0014】
請求項4に記載の発明は、特に加工工具の折損等による加工工具の破片の衝突時における衝撃エネルギーの吸収性および加工領域でのクーラント等に対する耐久性が求められる加工領域の透明カバー部に関して前記吸収性と耐久性の両方の性能を兼ね備えた構成を採用し、加工領域以外の窓部には1枚板を採用することでカバー装置全体のコストを抑制することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、接着用樹脂層にアクリル樹脂やウレタン樹脂のような熱可塑性樹脂は、溶融した樹脂をパンチングメタルになじませるのに適しているため、本構成のような透明カバー部の構成部材を製造する手間、時間等が少なく済み、製造コストの削減に効果がある。
【0016】
請求項6に記載の発明は、前記パンチングメタルの外周部を前記接着用樹脂層の外周部よりも小さくし、前記パンチングメタルの外周部が前記接着用樹脂層にて完全に覆われている状態にすることで、透明カバー部側面にクーラントが侵入した際にそのクーラントによるパンチングメタル外周面の腐食や接着用樹脂層とパンチングメタルの接合面より侵入したクーラントによるパンチングメタル表面の腐食を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した加工装置用カバー装置の第1実施形態をマシニングセンターに適用した図面に従って説明する。
図1は加工装置全体の外観を示す斜視図である。以下図1に従い、本発明の実施形態の全体構成について説明する。加工装置の外観はベッド1の上方に加工部および加工装置の駆動部全体を覆うようにカバー2が設けられている。カバー2にはワークの加工領域を覆う部分に位置して正面扉3および側面扉4が設けられており、正面扉3および側面扉4に形成された開口窓3a、4aをガードするように透明カバー部5が設けられている。正面扉3および側面扉4はワークの加工中には開かないようになっている。
【0018】
次に透明カバー部5周辺の構成について図2に従って説明する。正面扉3内側面側には取り付け台座枠6が固定されている。透明カバー部5を構成する板体は前記取り付け台座枠6に嵌入され、枠状のパッキン7および取り付け枠8を介してシールされ、取り付けネジ9により固定されている。
【0019】
次に透明カバー部5の構成について説明する。透明カバー部5はポリカーボネート等の樹脂からなる透明樹脂板10と透明ガラス板12がアクリル樹脂等からなる接着用樹脂層11を介して接合されている。この接着用樹脂層11に覆われるようにしてパンチングメタル13が挿入されている。そして、透明ガラス板12を内側に、透明樹脂板10を外側にして取り付けられている。
【0020】
正面から透明カバー部5を見た場合は透明カバー部5のみでガードされる部分は透明樹脂板10を透過して全てパンチングメタル13が挿入されている部分のみが表出している。また、パンチングメタル13上には反射率の低い色で塗装が施されている。パンチングメタル13の小孔14の形状は丸、ひし形、長穴形状等様々な形状のものが用いられる。パンチングメタル13は加工状態がわかればよい程度の視認性があれば良いため、強度および視認性のバランスの観点から空孔率は40パーセントから80パーセント程度が望ましい。
【0021】
このように軟体である接着用樹脂層11中に剛体であるパンチングメタル13を挟み込む構成とすることで加工時に折損した加工工具の破片が透明ガラス板12に衝突した際に、衝突時の引張応力をパンチングメタル13により緩和するため、接着用樹脂層11のみで構成した積層体よりも割れにくく、単位面積あたりの衝撃エネルギーの吸収量が大きくなるためより透明カバー部5全体の厚みを薄くすることができる。
【0022】
また、このように透明カバー部5の内側面側をガラス、外側面側を樹脂としたのは樹脂のほうがクーラントの影響を受けやすいため、樹脂板10が変色しやすいという理由による。
【0023】
また、図2に記載のとおり、パンチングメタル13の外周が接着用樹脂層11の外周に内包されるようにしたため、透明カバー部5の外周にパンチングメタル13が直接あるいは境界面を通じて露出することが無く、仮に加工領域より枠状のパッキン7と透明ガラス板12の隙間を介してクーラントが侵入しても、そのクーラントがパンチングメタル13に到達することは無く、パンチングメタル13の腐食を防止可能となる。
【0024】
また、別の実施例として、図4に示すようにパンチングメタル13に反射率の低い色同士の組み合わせで塗装やめっきを行う際に、会社のロゴマーク15や会社名、図柄等のデザインを行うこともでき、外観デザイン性を向上することも可能である。
【0025】
上記実施形態のカバー装置によれば、以下のような特徴を得ることができる。
(1)上記実施形態では、透明カバー部5はポリカーボネート等の樹脂からなる透明樹脂板10と透明ガラス板12がアクリル樹脂等からなる接着用樹脂層11を介して接合され、接着用樹脂層11に覆われるようにしてパンチングメタル13を挿入する構成とした。このため、透明カバー部5全体の厚みをそれほど増すこと無しに強度を大幅に向上することが可能である。それに加えて加工状態の視認性も問題のないレベルのカバー装置が構成可能である。
【0026】
(2)上記実施形態では、透明カバー部5の内側面側を透明ガラス板12、外側面側を透明樹脂板10となるような構成とした。このため、透明樹脂板10がクーラントの影響を受け変色することがない。
【0027】
(3)上記実施形態では、パンチングメタル13の外周が接着用樹脂層11の外周に内包されるような構成とした。このため、パンチングメタル13の全てが接着用樹脂層11で覆われることになるため、仮に加工領域より枠状のパッキン7と透明ガラス板12の隙間を介してクーラントが侵入しても、そのクーラントがパンチングメタル13に到達することは無く、パンチングメタル13の腐食を防止することができる。
【0028】
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
この第2実施形態においては図5に示すように、透明カバー部50の構成が第1実施形態と異なっている。この第2実施形態における透明カバー部50の構成は、内側より透明ガラス板12、第1の接着用樹脂層11a、第1の透明樹脂板10a、第2の接着用樹脂層11b、第2の透明樹脂板10bよりなる。透明ガラス板12、第1の透明樹脂板10aおよび第2の透明樹脂板10bは第1実施形態と同じく第1の接着用樹脂層11aおよび第2の接着用樹脂層11bを介して接合されている。本実施形態ではパンチングメタル13は第1の接着用樹脂層11aに覆われるようにして挿入されている。
【0029】
この実施形態によれば、前記第1実施形態における(1)〜(3)に記載の効果に加えて以下のような効果を得ることができる。
(4)上記第2実施形態では、前記第1実施形態における透明樹脂板10および接着用樹脂層11をさらに2重に分割した為、同様の厚みにおいて更なる強度アップが期待できる。
【0030】
なお、第1および第2の実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 前記実施形態において、透明樹脂板10、第1の透明樹脂板10a、第2の透明樹脂板10bの材質は透明性、強度が確保されている材質であれば任意に変更可能である。
○ 透明カバー部5、50の取り付け構造については実施例に限らず任意に変更可能である。
【0031】
○ 透明ガラス板12は透明強化ガラス板に置き換えることも可能である。
○ 本実施例においてはマシニングセンタに装着されたカバー装置の例を示しているが、これがグラインダー、トランスファーマシン、旋盤等他の工作機械に装着されても良い。
○ 第2の実施形態において、パンチングメタル13を第1の接着用樹脂層11aではなく、第2の接着用樹脂層11bに挿入することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】マシニングセンターの全体構成を示す斜視図。
【図2】本発明の第1実施形態における透明カバー部の取り付け状態を示す断面図。
【図3】本発明の第1実施形態における透明カバー部を示す正面図。
【図4】本発明における他の実施例における透明カバー部を示す正面図。
【図5】本発明の第2実施形態における透明カバー部の取り付け状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0033】
1…ベッド、2…カバー、3…正面扉、5…透明カバー部、10…透明樹脂板、10a…第1の透明樹脂板、10b…第2の透明樹脂板、11…接着用樹脂層、11a…第1の接着用樹脂層、11b…第2の接着用樹脂層、12…透明ガラス板、13…パンチングメタル、50…透明カバー部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工装置のカバーに開口されたカバー開口窓をガードする透明カバー部を持つカバー装置において、前記透明カバー部は内側から透明ガラス、接着用樹脂層、透明樹脂板を重ね合わせて構成され、前記接着用樹脂層の内部にはパンチングメタルが埋めこまれていることを特徴とする加工装置用カバー装置。
【請求項2】
請求項1において、前記透明カバー部は内側から透明ガラス、第1の接着用樹脂層、第1の透明樹脂板、第2の接着用樹脂層、第2の透明樹脂板の順に構成され、前記第1の接着用樹脂層又は第2の接着用樹脂層の内部にはパンチングメタルが埋めこまれていることを特徴とする加工装置用カバー装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記パンチングメタルは、反射率の低い色で塗装又はめっきが施されていることを特徴とする加工装置用カバー装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項において、前記カバーの透明カバー部はワークの加工領域を覆う部分に設けられたことを特徴とする加工装置用カバー装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項において、前記接着用樹脂層の材質は、アクリル樹脂又はウレタン樹脂で構成されることを特徴とする加工装置用カバー装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項において、前記パンチングメタルの外周部は前記接着用樹脂層の外周部よりも小さく、前記パンチングメタルの外周部が前記接着用樹脂層にて覆われていることを特徴とする加工装置用カバー装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−205311(P2006−205311A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−21819(P2005−21819)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000152675)株式会社日平トヤマ (218)
【Fターム(参考)】