説明

加温下で販売可能な塊状調理食品包装体

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、加温下で販売可能な塊状調理食品包装体、好ましくはおにぎり包装体に関する。詳細には、本発明は、常温下において長期間の保存が可能であり、かつ、自動販売機などによる加温により、温かくかつおいしくなる塊状調理食品、好ましくはおにぎりの包装体に関する。
【0002】
【従来の技術】食品を高温で長時間保存しうる自動販売機(以下、「ホットベンダー」、「缶ウオーマー」ということもある。)による加温販売は内容物が液状の食品の缶詰を対象としている。これは缶詰を殺菌処理する際、固形物のみからなる缶詰は加熱ムラを生じ易く、殺菌条件等殺菌工程に困難がつきまとうこと及びホットベンダーでの加熱温度が55℃〜60℃にもなるため、その保管中に品質の劣化が起こり、ベンダー内での長時間の保管には耐えられなかったからである。したがって内容物の均一加熱の問題から、内容物が固形物のみからなる食品缶詰は、長時間ホットベンダーや缶ウオーマーでの加温、保存には、不適当であるとされてきた。そのため、ホットベンダーや缶ウオーマーによる加温販売は、おにぎり、焼き芋、ソーセージ等の固形物のみからなる調理食品の缶詰を対象としていない。
【0003】また、ホットベンダーや缶ウオーマーにより加温販売する場合、細菌、特に耐熱性細菌が問題となる。缶詰中に耐熱性細菌の胞子が残存していたとすると、この残存細菌が加温中に発芽増殖して内容物を腐敗変質させてしまう。これら耐熱性細菌胞子等の細菌を死滅させ残存させないために、製造には通常の缶詰食品の加熱殺菌工程を必要とするが、内容物が固形物であると殺菌時間は一層長くなり、その結果内容物の物理的、化学的性質に変化を生ぜしめ味、風味等を損なうおそれがある。
【0004】缶詰は貯蔵性にすぐれ、常温状態に放置しておいても長時間の貯蔵が可能であることから、最も普及された保存手段の一つである。普通、食品等の内容物とともに、水、調味料、シロップ等のパッキングメデイアを缶に詰め、これに蓋をした状態で、レトルト等の加熱装置内で加熱殺菌を行ってつくられるものであり、内容物のほかに多量のパッキングメディアが存在する。加熱殺菌時には、缶内に添加されたパッキングメディアが、缶内を流動し、この流動によって加熱殺菌が進行する。固形物食品缶詰の加熱殺菌の場合、缶内に多量のパッキングメディアが存在することはなく、従ってパッキングメディアの缶内流動が起こらず、殺菌時間は一層長くなる。
【0005】加熱殺菌がきわめて容易なものとして、缶内を真空に近い状態に保った所謂高真空缶詰等が提案されている。この真空缶詰は、缶詰の軽量化の上から、水等のパッキングメディアの添加を最小限におさえ、このパッキングメディア添加量の削減によってもたらされる加熱殺菌等の障害を缶内の空気を予め追い出すことによって解決した缶詰である。高真空缶詰は、パッキングメディアの添加量を少なくしても、缶内の高真空化によって、ある程度、加熱殺菌時間の長期化等の障害が解決できるが、パッキングメディアが少ないことにより外部からの衝撃によって食品内容物が破壊し易くなるという問題点がある。
【0006】更に、固形物食品を缶詰に詰めるときの問題点としては、輸送中に片寄ったり、固形物食品同志が付着したり、缶詰上部の固形物食品が底部のものに対して重力がかかったりして、固形物食品の原形を保つことが困難なことである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来ホットベンダーや缶ウオーマーによる加温販売が対象としていない、内容物が例えば、おにぎり、焼き芋のような塊状の固形物のみからなる塊状調理食品について、加温下で販売可能な包装体を提供することを目的とする。即ち、所望のときに所望の温度の塊状調理食品が容易に入手できるようにした食品の包装体であって、しかも製造されたときの品質を長期にわたって維持できるようにした塊状調理食品の包装体、特に加温下で販売可能な塊状調理食品包装体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の加温下で販売可能な塊状調理食品包装体は、塊状調理食品が耐熱性内装材で開封状態に包装され、そして耐熱性内装材で包装された塊状調理食品が、耐熱性形状保持性の外装材内に、その内装材に緩衝作用を持たせて収容されて構成されていること、並びに、外装材で密封後、例えば通常の缶詰食品の、加熱殺菌工程を経て加熱殺菌されていることを特徴とする。
【0009】本発明は、耐熱性細菌胞子等を死滅させる上記加熱殺菌工程として、好ましくは高真空缶詰の技術を採用する。具体的には、本発明は、好ましくは耐熱性内装材で包装した塊状調理食品を、耐熱性形状保持性の外装材内に、その内装材に緩衝作用を持たせて収容して構成し、そしてその内装材包装塊状調理食品の外装材内への収容が高真空下でされている塊状調理食品包装体である。
【0010】真空缶詰の、パッキングメディアが少ないことによる耐外部衝撃性の低下、それに基づく食品内容物の破壊に対しては、塊状調理食品の内装材による包装で解決する。内装材として耐熱性の食品包装材を採用し、そしてその内装材に緩衝作用を持たせて外装材内に収容する。したがって、内装材としては包装したとき緩衝作用を示すような耐熱性の食品包装材が好ましい。外装材としては缶詰缶が最も好ましい。缶にはいろいろのタイプのものが市販されているが、開けるときに缶切りがいらなくてかつ高真空に耐えられるタイプのものが実用的である。材質は金属製、ガラス製、プラスチック製等いずれでもよいが、熱伝導性の点から金属製のものが好ましい。
【0011】塊状調理食品が2個以上の塊状固形物からなるときは、各塊状固形物を内装材で個別にかつ開封状態に包装する。この個別かつ開封状態の包装の態様として塊状固形物間の仕切材による仕切を包含する。もちろん塊状固形物間を仕切材で仕切ってから内装材で包装してもよい。要するに、真空缶詰の耐外部衝撃性の低下、それに基づく食品内容物の破壊に対して緩衝能をもつ包装態様であればよい。
【0012】本発明の塊状調理食品包装体の最も好ましい態様を、塊状調理食品がおにぎりである場合について説明する。缶容器内に、耐熱耐水性フィルムの内装材により個別にかつ開封状態に包装された2箇以上のおにぎりが重ねられて詰められ、次いで高真空巻締機により密封される。缶詰内に脱酸素剤を封入しておくと、缶詰内に残存する酸素が除去される。高真空状態に保持された缶詰内は、おにぎりを個別にかつ開封状態に包装した内装材によって、おにぎり同志の付着等によりおにぎりの形状が変形したりすることがないようになっている。また、輸送においても内装材フィルムが緩衝材の役割を果たしておにぎりを保護する。また内装材で開封状態に包装されているため、高真空巻締機で密封されるとき並びに加熱殺菌されるとき、内装材内と外装材内の雰囲気が同じになり、おにぎりの脱気は容易になされ、おにぎりは効率的に加熱殺菌される。更に、缶詰を開けて、缶の中から包装されたおにぎりを取り出したとき、内装材を難なく開けることができる。
【0013】更に、常温下において長期間の保存が可能であり、ホットベンダーや缶ウオーマーでの加温により、温かくかつ美味しくなる塊状調理食品の包装体にするため、包装されるべき塊状調理食品は、高温で長時間保存できるように調理されていることが好ましい。例えば塊状調理食品がおにぎりである場合、米の炊飯時に通常の炊飯時の加水量1.2倍に対し1.4〜1.5倍の加水量で炊飯する必要がある。内装材で解放状態に包装されているため食品に含まれる水分が微量であるが蒸発して缶内を流通するために、その他の塊状調理食品についても、水分含有量を調整して調理することが望ましい。食品分野の通常の実験的努力によって最適な調理方法を決定することができる。
【0014】以下図面により、塊状調理食品がおにぎりである場合について、本発明を詳しく説明する。図1は本発明の一つの実施例を示し、缶詰内に個別に一方を開封したままプラスチックフィルムで包装したおにぎりを詰めた状態を示す説明図であり、図2は本発明の他の実施例を示す説明図であり、図3は缶詰内にプラスチックフィルムなど仕切材を介しておにぎりを詰めた状態を示す説明図であり、図4はレトルト殺菌時に横にされた状態を示す説明図である。符号1は缶詰、2は包装おにぎり、3はプラスチックフィルム、4は仕切材を示す。
【0015】まず、図1に示すように本発明の缶詰1にはプラスチックフィルムにより個別にかつ開封状態で包装された3個の包装おにぎり2が重ねて詰められ、高真空巻締機により密封される。この場合、缶詰内には脱酸素剤を封入しておくと、缶詰内に残存する酸素が除去されるので好ましい。高真空状態に密封された缶詰はレトルトで殺菌される。この時、缶詰はおにぎりの重ねられた状態のままでレトルト処理すると底部のおにぎりが上部のおにぎりの加重で変形するので図4のように横にしてレトルト処理をする。次いで、冷却し製品が得られる。このおにぎり包装体は予め設定された自動販売機の温度(例えば50〜70℃)にて加温され市販される。
【0016】次に、本発明の一例を示すおにぎり缶詰の製造方法について説明する。まず、米の炊飯時に通常の炊飯時の加水量1.2倍に対し1.4倍の加水量で常法に従い炊飯する。この炊飯された米飯をそのまま用いるか或いは調味料、具材等を所定量混合し、型抜きしておにぎりの原形を作成する。例えば、焼きおにぎりの場合は所定量成形されたおにぎりの表面に醤油を噴霧し、表面を乾燥させると同時に焼成し冷却する。次いで、この焼きおにぎりをプラスチックフィルムにより個別に包装し一方を開口したままフィルム縁を折りまげておく。この包装されたおにぎりを例えば電子レンジ等で加温した状態にしておく。これは缶詰の殺菌工程を効率化する為である、この包装おにぎりを缶詰容器内に詰めると共に酸素除去剤例えば商品名「エージレス」(三菱ガス化学社製)を缶詰内に入れ、真空巻締(減圧度40〜60cm/Hg)をする。
【0017】次に、レトルト殺菌する。レトルト殺菌時間は117℃、120分が通常であるが、包装されたおにぎりを予め加温した状態にすることによってレトルト殺菌時間を約60分位短縮することができる。次いで、約40℃まで冷却する。レトルト殺菌したままの温度でおにぎりを扱うと、団子状となるため、70℃以下の温度に冷却することが好ましい。得られた缶詰おにぎりを缶ウオーマーと同じ条件(65℃、4時間)で加温した。缶を開け、中から内装材で包装されたおにぎりを取り出して食べたところ、ふっくらとした作りたてのおいしいおにぎりであった。
【0018】
【発明の効果】従来ホットベンダーや缶ウオーマーによる加温販売が対象としていない、内容物が例えば、おにぎり、焼き芋のような塊状の固形物のみからなる塊状調理食品について、常温下において長期間の保存が可能であり、かつ、自動販売機などによる加温により、温かくかつおいしくなる加温下で販売可能な包装体を提供することができる。自動販売機の加温により、そのまま手づかみしても手でよごすことなくあたたかく喫食でき、また高真空下に、特に高真空巻締により密封すると共に脱酸素剤を封入して、包装されているため、つくられたときの品質が長期間保持されている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一つの実施例を示し、缶詰内に個別に一方を開封したままプラスチックフィルムで包装したおにぎりを詰めた状態を示す説明図である。
【図2】本発明の他の実施例を示す説明図である。
【図3】一方を開封したままプラスチックフィルムで包装したおにぎりを詰めた状態を示す説明図である。
【図4】レトルト殺菌時に横にされた状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 缶詰
2 包装おにぎり
3 プラスチックフィルム
4 仕切材

【特許請求の範囲】
【請求項1】 耐熱耐水性フィルムの内装材で開封状態に包装された塊状調理食品が、耐熱性形状保持性の外装材内に、その内装材に緩衝作用を持たせて収容されていること、かつ、外装材で密封後、加熱殺菌工程を経て加熱殺菌されていることを特徴とする加温下で販売可能な塊状調理食品包装体。
【請求項2】 内装材で包装された塊状調理食品の外装材内への収容が高真空下でされている請求項1記載の加温下で販売可能な塊状調理食品包装体。
【請求項3】 塊状調理食品が2個以上の塊状固形物からなり、各塊状固形物が個別に開封状態に耐熱性内装材で包装されている請求項1又は請求項2記載の加温下で販売可能な塊状調理食品包装体。
【請求項4】 内装材で包装された塊状調理食品が外装材内へ収容され、かつ脱酸素剤が同封されている請求項1、請求項2又は請求項3記載の加温下で販売可能な塊状調理食品包装体。
【請求項5】 塊状調理食品が、米の炊飯時に1.4〜1.5倍の加水量で炊飯されたおにぎりである請求項1ないし4のいずれかに記載の加温下で販売可能な塊状調理食品包装体。
【請求項6】 外装材が缶詰缶である請求項1ないし5のいずれかに記載の加温下で販売可能な塊状調理食品包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】特許第3412102号(P3412102)
【登録日】平成15年3月28日(2003.3.28)
【発行日】平成15年6月3日(2003.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−105857
【出願日】平成5年3月26日(1993.3.26)
【公開番号】特開平6−38721
【公開日】平成6年2月15日(1994.2.15)
【審査請求日】平成12年3月21日(2000.3.21)
【前置審査】 前置審査
【出願人】(000004189)日本水産株式会社 (119)
【参考文献】
【文献】実開 平5−70289(JP,U)
【文献】実開 平5−67281(JP,U)