説明

加湿フィルター用立体編物

【課題】加湿フィルターに積極的に水分を供給する機構を不要とし、下に貯まった水分を立体編物の表裏2層の地組織で高く吸上げて、高い蒸散性と低圧力損失で水分を気化することのできる加湿フィルター用立体編物を提供すること。
【解決手段】表裏2層のメッシュ編地を連結糸により連結した立体編物であって、該表裏2層のメッシュ編地において、地組織全面積中に占める繊維の面積比率が20〜70%であり、該地組織の少なくとも一部が幅0.7〜3.5mmおよび長さ2.0〜15.0mmの導水性繊維束からなり、該導水性繊維束の見掛け密度が0.2〜0.7g/cm3であることを特徴とする加湿フィルター用立体編物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加湿機等の加湿フィルターとして好適に用いられる、水分吸上げ性及び蒸散性に優れた立体編物に関する。
【背景技術】
【0002】
表裏のメッシュ状の編地をマルチフィラメントからなる連結糸で連結し、多くの水分を繊維の表面や間隙に保持し、空気を通過させることにより水分を低圧力損失で蒸散させることのできる立体編物が、加湿用フィルター等として用いられている。
【0003】
特許文献1には、間隔をあけて開口を有する2枚の編地を、マルチフィラメントからなる連結糸で連結し、連結繊維間で液体を保持させることで十分な液体保持量を確保でき、圧力損失が低く、液体と空気などの気体との接触効率の良い立体編物が開示されている。特許文献1に開示の立体編物は、連結糸部分の液体保持量を増やす工夫により、連結糸部分に多くの水分を保持でき、かつ蒸散することができる。しかしながら、特許文献1に開示の立体編物は表裏2枚の編地自身の吸水および蒸散性能について何ら工夫がなされていないため、特に、下に貯まった水分を自然に吸上げて広い面積で直ちに蒸散する性能には劣るものであった。
【0004】
また、特許文献2には、少なくとも表裏2面の繊維シート材と両シートを連結する繊維からなり表裏のシート間に空隙を有する立体編物であって、加湿能力に優れ、スケール析出時の性能変化が少なく、洗浄が容易な加湿エレメントが開示されている。
【0005】
特許文献2に開示の立体編物は加湿特性を高めるために、連結糸に少なくとも1種類のマルチフィラメントを用いることで、繊維本数と表面積を増やし、連結毛細管現象により厚み方向への水供給を有利にし、通気抵抗の上昇を抑制しながら水分の保持と放散速度を高めている。しかしながら、特許文献2に開示の立体編物も特許文献1と同様に、表裏2枚の編地自身の吸水および蒸散性能については何ら工夫がなされておらず、下に貯まった水分を自然に吸上げて広い面積で直ちに蒸散する性能には劣るものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−280927号公報
【特許文献2】特開2010−255894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、前記問題点を解決し、加湿フィルターの一部を水に浸した状態で加湿フィルターを回転させる等の、加湿フィルターに積極的に水分を供給する機構を不要とし、下に貯まった水分を立体編物の表裏2層の地組織で高く吸上げて、高い蒸散性と低圧力損失で水分を気化することのできる加湿フィルター用立体編物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、立体編物の表裏2層の地組織の構造に着目し、繊維形態、繊維充填密度および仕上加工方法を鋭意検討した結果、地組織全面積中に占める繊維の面積比率を特定範囲とし、地組織に導水性を向上させるための特殊な繊維束を形成することにより、地組織による水の吸上げ性能を大幅に向上させ、高い蒸散性と低圧力損失で水を気化できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、以下のとおりのものである。
(1)表裏2層のメッシュ編地を連結糸により連結した立体編物であって、該表裏2層のメッシュ編地において、地組織全面積中に占める繊維の面積比率が20〜70%であり、該地組織の少なくとも一部が幅0.7〜3.5mmおよび長さ2.0〜15.0mmの導水性繊維束からなり、該導水性繊維束の見掛け密度が0.2〜0.7g/cm3であることを特徴とする加湿フィルター用立体編物。
(2)立体編物の長さ方向の1分後の吸水高さが5.0cm以上であることを特徴とする上記(1)に記載の立体編物。
(3)導水性繊維束を構成するフィラメントの50%以上が仮撚加工糸であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の立体編物。
(4)導水性繊維束を構成するフィラメントの50%以上が異型断面糸であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の立体編物。
(5)導水性繊維束が250〜2100本のフィラメントで形成されていることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の立体編物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、加湿フィルターの一部を水に浸した状態で加湿フィルターを回転させる等の、加湿フィルターに積極的に水分を供給する機構を不要とし、下に貯まった水分を立体編物の表裏2層の地組織で高く吸上げて、高い蒸散性と低圧力損失で水分を気化することのできる加湿フィルター用立体編物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の立体編物は、表裏2層の地組織とこれら2層の地組織を連結する連結糸によって形成される。
表裏2層の地組織は、地組織が吸収した水分の蒸散性を高めるために、空気が地組織を通過しやすいことが必要である。そのため、表裏の地組織はメッシュ編地で形成される。
【0012】
表裏のメッシュ編地において、地組織が十分な水分量を保持すると共に、気体が地組織を通過しやすく、高い水分蒸散性を得るためには、表裏面における地組織全面積中に占める繊維の面積割合が重要であり、繊維の面積比率が20〜70%であることが必要である。繊維の面積比率が70%を超えると、地組織が保持する水分量は増加するものの、地組織内を空気が通過し難くなるため、水分が蒸散し難く加湿性能が低下する。逆に繊維の面積比率が20%未満の場合、地組織内を空気が通過し易くなり、水分の蒸散効率は高まるが、地組織全体で保持する水分量が少ないため加湿性能が低下する。繊維の面積比率のより好ましい範囲は20〜60%であり、さらに好ましくは25〜55%である。
【0013】
表裏のメッシュ編地のメッシュ形状は、略六角形、略四角形、略円形等任意の形状とすることが出来るが、加湿フィルターの形態安定性を良好にし、揉み洗い等の洗浄時の型崩れを防止する上で略六角形が好ましい。
【0014】
本発明においては、下に貯めた水に立体編物を略垂直に浸した際に、表裏の地組織によって水を吸上げる性能を高めるために、立体編物の表裏のメッシュ編地の少なくとも一部が、一定の幅、長さおよび見掛け密度を有する導水性繊維束からなることが重要である。本発明において、導水性繊維束とはメッシュを構成する繊維が複数本合わさっている部分である。この導水性繊維束が多量の水分を吸上げ、地組織全体及び連結糸部分に水分供給する役割を果たす。そのためには、幅が0.7〜3.5mm、長さが2.0〜15.0mmの導水性繊維束を形成していることが必要である。
【0015】
導水性繊維束は少なくとも地組織のメッシュ編地の一部分を形成する必要があるが、メッシュ編地の40%以上を形成することが好ましく、より好ましくはメッシュ編地の50%以上、さらに好ましくは100%を形成することである。
【0016】
導水性繊維束において、地組織によって水分を吸上げる際の水分量を多く保つと同時に、地組織に空気を通過させる際の圧力損失を抑え、さらには地組織を通過する空気が導水性繊維束に含まれる水分をより効率的に蒸散させる上で、導水性繊維束の幅は0.7〜3.5mmであり、長さは2.0〜15.0mmである。導水性繊維束の幅が0.7mm未満の場合、水を吸上げる水分量が不足し加湿性能が劣るものとなる。逆に、幅が3.5mmを越えると、地組織に空気を通過させる際の圧力損失が大きくなり過ぎると共に、導水性繊維束の内部の水分の蒸散効率が低下し加湿性能が劣るものとなる。
【0017】
導水性繊維束の長さは2.0〜15.0mmであるが、長さが2.0mm未満の場合、水を吸上げる高さが劣ると同時にメッシュ編地に開口を形成することが困難となり、空気の通過時の圧力損失の高いものとなる。長さが、15.0mmを越える場合はメッシュの形状が大きくなり過ぎ、形態安定性に劣るものとなる。
【0018】
地組織における導水性繊維束において、多くの水分を吸い上げると同時に、メッシュの開口部を空気が通過する際に多くの水分を蒸散させるために、導水性繊維束の見掛け密度が重要であり、該見掛け密度は0.2〜0.7g/cm3である。導水性繊維束において、各フィラメント間に生じる毛細管の形成のためだけでなく、多量の水分を保持できる適度な空間を形成するため、導水性繊維束の見掛け密度を上記範囲とすることが重要である。見掛け密度が0.2g/cm3未満の場合、毛細管現象によって水分を吸い上げる性能が不十分となり、見掛け密度が0.7g/cm3を越えると、毛細管現象により吸上げる高さは増すものの、導水性繊維束の中心部の水分が蒸散しにくくなり、加湿性能が劣るものとなる。見掛け密度の好ましい範囲は0.25〜0.65g/cm3、より好ましい範囲は0.3〜0.6g/cm3である。
【0019】
導水性繊維束を前記の見掛け密度で形成するためには、導水性繊維束を構成する各フィラメントの間に適度な空隙を作る必要があり、このため導水性繊維束を形成する各フィラメントは未加工糸よりも仮撚加工糸であることが好ましく、導水性繊維束を構成するフィラメントの50%以上が仮撚加工糸であることが、水の吸上げ性能及び蒸散性能高める上で好ましい。より好ましくはフィラメントの70%以上が仮撚加工糸であることである。
【0020】
又、導水性繊維束を構成するフィラメントの間に適度な空隙を作る上で、フィラメントの断面は丸断面より異型断面であることが好ましい。異型断面の形状は、W型、L型、扁平型、三角型等の任意の断面形状を用いる事ができる。
【0021】
地組織の導水性繊維束の幅を0.7〜3.5mm、長さを2.0〜15.0mm、見掛け密度を0.2〜0.7g/cm3とする際、導水性繊維束を形成するフィラメントの本数は、導水性繊維束の少なくとも一部の断面において250〜2100本であることが好ましい。フィラメントの本数を250〜2100本とすることで、水分を良好に吸上げ、優れた蒸散性能を有するものとなる。フィラメントの本数が250本未満の場合、毛細管の形成が不十分で水の吸上げ高さが劣ると共に、水を吸い上げる水分量も減少し、加湿性能の低いものとなる。フィラメントの本数が2100本を越えると吸上げる水分量は増えるものの、水分が効率的に蒸散されなくなり、加湿性能が低下する。フィラメントの本数はより好ましくは300〜2000本、さらに好ましくは350〜1700本である。尚、導水性繊維束を構成する繊維はマルチフィラメントのみで構成されていても良く、マルチフィラメントとモノフィラメントの混合であっても良い。
【0022】
導水性繊維束は地組織のニットループの集合によって形成されるが、幅方向に1〜4ウエール、長さ方向に2〜25コースで形成されていることが好ましい。より好ましくは、幅方向に2ウエール、長さ方向に3〜8コースで形成される。又、導水性繊維束は地組織の長さ方向に対して任意の角度で形成されていても良いが、長さ方向に並行に形成されることが水分の吸い上げ高さを上げる上でより好ましい。
【0023】
本発明の加湿フィルター用立体編物は、立体編物に積極的に水を供給することなく、下に貯めた水を自然に吸い上げて、立体編物の開口部に空気を通過させることにより加湿する加湿機等に用いる場合、良好な加湿性能を得るために、立体編物の長さ方向の1分後の吸水高さが5.0cm以上であることが好ましい。ここでいう吸水高さとは、略垂直状に保持した短冊状の立体編物の下端を水に浸け、1分後の水の吸上げ高さを測定するものであり、短時間にどれだけ高く水を吸上げるかを測定するものである。吸水高さはより好ましくは5.5cm以上、さらに好ましくは6.0cm以上である。
【0024】
本発明の加湿フィルター用立体編物の表裏のメッシュ編地及び連結糸に用いる繊維素材は、任意の素材を用いることができるが、水分の蒸散性能を高めるためには、ポリエステル繊維やナイロン繊維等の公定水分率が5%以下の合成繊維を用いることが好ましく、より好ましくはポリエステル繊維である。使用する繊維の繊度は、表裏のメッシュ編地に使用する繊維の場合、150〜600デシテックス、フィラメント数は30〜200本が好ましい。連結糸に使用する繊維の場合、100〜400デシテックス、フィラメント数は1〜200本が好ましい。又、連結糸については、立体編物の形態安定性を向上させる上で、モノフィラメントを一部に用い、マルチフィラメントを併用することで吸水量を向上させることが好ましい。連結糸に用いるマルチフィラメントは、表裏の地組織の導水性繊維束から、表裏の中間の連結糸部分に水を供給するため、より毛細管現象の働く未加工糸を用いることが好ましい。
【0025】
本発明の立体編物の厚みは3〜20mmであることが好ましい。厚みが3mm未満では圧力損失が高くなり易く、20mmを超えると一定体積あたりに保持できる水分量が低下し、加湿性能が劣るものとなる。
【0026】
本発明の立体編物は、生機が精練、吸水加工、ヒートセット等の工程を経て仕上げられるが、水を吸上げる性能を高めるためには、通常、繊維加工に用いられる吸水加工を行なうことが好ましい。又、仕上げセット時には本発明の目的を損なわなければ、通常、繊維加工に用いられる抗菌加工および防カビ加工を施すことが好ましい。
【0027】
又、本発明の立体編物の導水性繊維束の構造を適正に形成させるためにはヒートセット工程が極めて重要であり、特に導水性繊維束の見掛け密度を本発明の特殊範囲にするためには、オーバーフィード率をヒートセット時の通常一般のオーバーフィード率より高めてヒートセット加工を行うことで、単繊維間に適度な空隙を形成することが好ましい。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、実施例中の各特性の評価および測定は下記の方法で行った。
(1)地組織全面積中に占める繊維の面積比率
立体編物の地組織を、地組織面に対して直角方向からマイクロスコープにより写真撮影し、地組織全面積に対して繊維が占める面積比率(%)を計算する。測定は3回行い平均値を求める。
【0029】
(2)導水性繊維束の幅および長さ
立体編物の地組織を、地組織面に対して直角方向からマイクロスコープにより写真撮影し、導水性繊維束の幅(mm)および長さ(mm)を測定する。測定は3回行い平均値を求める。
【0030】
(3)導水性繊維束の見掛け密度
上記(2)で幅および長さを測定した導水性繊維束を立体編物から切り出し、導水性繊維束から連結糸を根元部分でカットして取り除く。切り出した導水性繊維束の厚み(mm)をマイクロスコープにより写真撮影し、寸法を測定する。又、導水性繊維束の重量(g)を測定し、下記式により見掛け密度を計算する。測定は任意に3ヶ所の同一形状の導水性繊維束で行い平均値を求める。
見掛け密度(g/cm3
=重量(g)÷幅(mm)÷長さ(mm)÷厚み(mm)×1000
【0031】
(4)1分後の吸水高さ
立体編物から長さ20cm×幅2.5cmの短冊を切り出し、立体編物を長さ方向の一端で把持して垂直に垂らし、下端の2cmを水に浸し、1分後に吸い上げる水の高さを測定する。測定は3回行い平均値を求める。
【0032】
(5)吸水量
上記(4)の測定において1分後の吸水高さを測定した直後に、水面位置から水面上5cmの高さまでの立体編物(5cm×2.5cm)を切り出し、含水した立体編物の重量(g)を測定する。該立体編物を温度60℃の乾燥機にて絶乾状態として重量(g)を測定し、含水時の重量から絶乾時の重量を差し引いて、吸水量(g)を求める。
【0033】
(6)加湿量
パナソニック製加湿機(FE−KLE03)の円筒フィルターを取り外し、送風路の中間部に送付路をタテ9cm×ヨコ16.2cmの立体編物(1枚)で覆い、立体編物の下端がトレーの水に1cm浸かる状態となる様に、立体編物を取り付ける。該加湿機を天秤上に置き、温度20℃、湿度30%RHの人口気候室の中で加湿機を1時間運転し、加湿機の重量減少(タンク内の水の減少量)を測定し、加湿量(g)とする。測定は3回行い平均値を求める。
【0034】
(7)圧力損失(Pa)
内径160mm、長さ600mmの2本の円筒管の間に、直径160mmの円の外周部分を樹脂で密閉した立体編物を把持し、円筒管の片側から吸引ダクトにより風速1m/秒の風速で吸引する際の、立体編物前後の円筒管の差圧(Pa)を測定する。測定は3回行い平均値を求める。
【0035】
[実施例1、実施例2および比較例1]
6枚筬を装備し、釜間12mmの18ゲージのダブルラッセル編機を用い、地組織を形成する筬(L1、L2、L5、L6)にポリエステル仮撚加工糸334dtex/96fを供給し、連結糸を形成する筬(L3、L4)のL3にポリエステルモノフィラメント200dtex/1fを供給し、L4にポリエステル原糸84dtex/36fを供給して略六角形のメッシュ編地を形成し、略六角形の向かい合う長さ方向の2辺(長さは4コース分)を2ウエールで形成し、導水性繊維束とし、その他の辺を1ウエールで形成し、生機を得た。該生機を精練および吸水加工後、幅出し率を1.35倍とし、オーバーフィード率を10%、6%および3%と変更してヒートセットし、厚み10mmの立体編物を得た。得られた立体編物の特性を表1に示す。
実施例1および実施例2で得られた立体編物は、吸水高さ、吸水量、加湿量が共に高く、加湿フィルター用立体編物として良好な特性を示した。又、比較例1で得られた立体編物は、導水性繊維束の見掛け密度が高すぎるため蒸散効率が悪く、加湿性能に劣るものであった。
【0036】
[実施例3および比較例2]
地組織を形成する筬(L1、L2、L5、L6)に供給する繊維として、ポリエステル仮撚加工糸167dtex/48fを使用した以外は実施例1と同様にして、略六角形のメッシュ編地の生機を得た。該生機を精練および吸水加工後、幅出し率を1.35倍とし、オーバーフィード率を10%および3%と変更してヒートセットし、厚み10mmの立体編物を得た。得られた立体編物の特性を表1に示す。
実施例3で得られた立体編物は、吸水高さ、吸水量、加湿量が共に高く、加湿フィルター用立体編物として良好な特性を示したが、比較例2で得られた立体編物は、導水性繊維束が細すぎるため、水分を吸上げる際の吸水高さ及び吸水量が劣り、加湿性能に劣るものであった。
【0037】
[実施例4]
地組織を形成する筬(L1、L2、L5、L6)に供給する繊維として、ポリエステル原糸334tex/96fを使用した以外は実施例1と同様にして、略六角形のメッシュ編地の生機を得た。該生機を精練および吸水加工後、幅出し率を1.35倍とし、オーバーフィード率を10%としてヒートセットし、厚み10mmの立体編物を得た。得られた立体編物の特性を表1に示す。
実施例4で得られた立体編物は、若干蒸散効果が低く加湿性能は低下したが、加湿フィルター用立体編物として良好な特性を示した。
【0038】
[比較例3]
実施例1と同様の繊維を用い、略六角形の向かい合う長さ方向の2辺(長さは4コース分)を6ウエールで形成し、導水性繊維束とした生機を得た。なお、メッシュ形状は略六角形とはいえ、長さ方向の2辺を6ウエールとしたため、かなり円形に近いものであった。該生機を精練および吸水加工後、幅出し率を1.2倍とし、オーバーフィード率を6%としてヒートセットし、立体編物を得た。得られた立体編物の特性を表1に示す。
比較例4で得られた立体編物は、吸水高さおよび吸水量は高いものの、蒸散効率が低く加湿性能に劣るものであった。又、圧力損失の高いものであった。
【0039】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の加湿フィルター用立体編物は、加湿フィルターに積極的に水分を供給する機構を不要とし、下に貯まった水分を立体編物の表裏2層の地組織で高く吸上げて、高い蒸散性と低圧力損失で水分を気化することのできる加湿フィルター用として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏2層のメッシュ編地を連結糸により連結した立体編物であって、該表裏2層のメッシュ編地において、地組織全面積中に占める繊維の面積比率が20〜70%であり、該地組織の少なくとも一部が幅0.7〜3.5mmおよび長さ2.0〜15.0mmの導水性繊維束からなり、該導水性繊維束の見掛け密度が0.2〜0.7g/cm3であることを特徴とする加湿フィルター用立体編物。
【請求項2】
立体編物の長さ方向の1分後の吸水高さが5.0cm以上であることを特徴とする請求項1に記載の立体編物。
【請求項3】
導水性繊維束を構成するフィラメントの50%以上が仮撚加工糸であることを特徴とする請求項1または2に記載の立体編物。
【請求項4】
導水性繊維束を構成するフィラメントの50%以上が異型断面糸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の立体編物。
【請求項5】
導水性繊維束が250〜2100本のフィラメントで形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の立体編物。

【公開番号】特開2013−50279(P2013−50279A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189444(P2011−189444)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(508250235)旭化成商事株式会社 (2)
【Fターム(参考)】