加熱パネルユニット及び加熱方法
【課題】パネル体が固着されるパネル取付け部材に設けられたトラフ内に電磁波導波手段を取付けて一体化して敷設される部材をユニット化することにより敷設工事を簡易化して低コスト化する。電磁波導波管内に対する水の浸入を防止すると共に電磁波導波管に荷重が直接作用するのを回避して電磁波導波管の変形を防止し、マイクロ波帯域電磁波を効率的に伝播させてパネル体を加熱する。
【解決手段】パネル体が固着されるパネル取付け部材の下面に配置され、パネル体の所要方向全体に亘る長さからなるトラフ内に、パネル体に相対する面に多数のスロットが形成され、電磁波発振手段から発振されたマイクロ波帯域電磁波を内部にて伝播させながら上記スロットからパネル体に向かって出力する電磁波導波手段を設ける。
【解決手段】パネル体が固着されるパネル取付け部材の下面に配置され、パネル体の所要方向全体に亘る長さからなるトラフ内に、パネル体に相対する面に多数のスロットが形成され、電磁波発振手段から発振されたマイクロ波帯域電磁波を内部にて伝播させながら上記スロットからパネル体に向かって出力する電磁波導波手段を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行用通路や駐車場、屋内外の各種床面、屋根や壁面等に敷設されるパネル体を加熱して融雪したり、氷結を防止したり、暖房したりする加熱パネルユニット及び加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示す融雪システムは、舗装体中に、上面に電磁波放出部を有する電磁波導波管を埋設し、該電磁波導波管の上面側に、電磁波吸収体を含有した表層体を敷設し、電磁波導波管内を伝播するマイクロ波帯域電磁波を表層体側へ出力して電磁波吸収体によるマイクロ波帯域電磁波の吸収作用により表層体を加熱して融雪したり、氷結を防止したりしている。
【0003】
しかし、上記該融雪システムを、歩行者用通路や駐車場、屋内外の床面、建築物の屋根や壁面等の簡易な施設に付設されるパネル体を加熱する加熱システムとして適用して融雪したり、加温したりする場合、先ず、路面や床面等を掘り下げて電磁波導波管を埋設した後に、該電磁波導波間の上層に電磁波吸収体を含有した表層体を敷設する必要があり、敷設工事が大がかりになって施工コストが増大する問題を有している。
【0004】
また、上記融雪システムにあっては、電磁波導波管を舗装体中に直接埋設するため、マイクロ波帯域電磁波を漏洩させるスロットから土中の水が電磁波導波管内に浸入し易く、また電磁波導波管に荷重が直接作用して変形し易く、マイクロ波帯域電磁波の伝播効率が悪くなって表層体を長手方向全体に加熱することが困難になる問題を有している。
【特許文献1】特開2006−138172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、敷設工事が大がかりになって工事コストが増大する点にある。電磁波導波管内に水が浸入し易く、また直接作用する荷重により電磁波導波管が変形してマイクロ波帯域電磁波の伝播効率が悪くなる点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1は、担持体に電磁波吸収体を含有して板状に形成されたパネル体に対してマイクロ波帯域電磁波を出力して電磁波吸収体による電磁波吸収によりパネル体を発熱する加熱システムにおいて、パネル体が固着されるパネル取付け部材と、パネル取付け部材の下面に配置され、パネル体の所要方向全体に亘る長さからなるトラフと、該トラフ内に設けられ、パネル体に相対する面に多数のスロットが形成され、電磁波発振手段から発振されたマイクロ波帯域電磁波を内部にて伝播させながら上記スロットからパネル体に向かって漏洩する電磁波導波手段とを設けたことを特徴とする。
【0007】
請求項12は、パネル体にマイクロ波帯域電磁波を出力して含有された電磁波吸収体による電磁波吸収によりパネル体を発熱させる際に、パネル体が固着されるパネル体取付け部材にトラフを設け、該トラフ内に設けられた電磁波導波手段内部を伝播するマイクロ波帯域電磁波の一部をパネル体に向けて出力して加熱可能にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、パネル体が固着されるパネル取付け部材に設けられたトラフ内に電磁波導波手段を取付けて一体化して敷設される部材をユニット化することにより敷設工事を簡易化して低コスト化することができる。電磁波導波管内に対する水の浸入を防止すると共に電磁波導波管に荷重が直接作用するのを回避して電磁波導波管の変形を防止し、マイクロ波帯域電磁波を効率的に伝播させてパネル体を加熱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、パネル体が固着されるパネル取付け部材の下面に配置され、パネル体の所要方向全体に亘る長さからなるトラフ内に、パネル体に相対する面に多数のスロットが形成され、電磁波発振手段から発振されたマイクロ波帯域電磁波を内部にて伝播させながら上記スロットからパネル体に向かって出力する電磁波導波手段を設けることを最良の形態とする。
【実施例1】
【0010】
以下に本発明を歩行者用通路として敷設される加熱パネルユニットとして実施した実施例を図に従って説明する。
図1〜図5において、被敷設体としての歩行用通路1は多数の加熱パネルユニット3を連続するように配列して敷設される。該加熱パネルユニット3を構成するパネル体5は、合成樹脂材やゴム及びゴムチップ(バージン材及びリサイクル材の少なくともいずれかを含む。)の担持体に、電磁波吸収体を含有し、所望の大きさ及び厚さのパネル状に成形される。また、加熱パネルユニット3の平面形状は、四角形状、扇形、台形状、多角形状等のいずれであってもよく、これらを適宜組合せて歩行用通路1を構成する。
【0011】
尚、加熱パネルユニット1が敷設される場所としては、上記した歩行用通路の他に、駐車場、アプローチ、屋内の床、屋外のベランダやテラス等の床、建築物の屋根、壁面等のいずれであってもよいことは、勿論である。また、パネル体5の形状としては、平面四角形状、扇形、多角形状等のいずれであってもよい。更に、図5はゴムチップをバインダー(接着剤)により接着固化したパネル体5を示す。
【0012】
担持体に含有される電磁波吸収体は、酸化鉄(フェライト)、酸化スラグ、カーボン、パーマロイ等で、パネル体の担持体体積に対し、2.5〜30wt%の割合で含有される。上記電磁波吸収体をカーボンとした場合には、担持体体積に対して2.5〜15%、酸化スラグ又は酸化フェライトとした場合には、担持体体積に対して5〜30%とする。また、添加剤としては、上記電磁波吸収体の他に、必要に応じてフッ素樹脂、シリコン樹脂等の剥離剤、着色剤、難燃剤等を添加すればよい。
【0013】
上記加熱パネルユニット3は、後述するトラフ7及びパネル取付け部材9と、該パネル取付け部材9の上面に固着されるパネル体5とから構成される。上記トラフ7は合成樹脂材(リサイクル樹脂材を含む。)からなり、長手方向がパネル体5の横幅に一致する長さで、長手直交方向断面が開口上向きコ字形に形成される。また、パネル取付け部材9は合成樹脂材(リサイクル樹脂材を含む。)で、上面にパネル体5が接着される平面部9aと、平面部9aの下面に一体形成され、トラフ7の両側壁に沿って垂下して挿嵌される一対の脚部9bとから構成される。
【0014】
パネル取付け部材9の脚部9bをトラフ7内に挿嵌する際に、トラフ7の内側壁に対しして脚部9bを接着剤で接着することにより両者間を気密化する。また、トラフ7に対してパネル取付け部材9の脚部9bを挿嵌した際に、脚部9b間及びトラフ7の底面との間には空間部が形成される。そして該空間部内には電磁波導波手段としての電磁波導波管13が挿嵌される。該電磁波導波管13は、内部に電波法上、無許可で出力可能なマイクロ波帯域電磁波(例えば2.45GHz)を反射して長手方向へ伝播可能なステンレス、アルミニウム、銅等の金属材で、長手直交方向断面が矩形、円形の金属筒体からなる。
【0015】
該電磁波導波管13の一方端部内には、F形、ダイポール形のアンテナ15が取付けられ、該アンテナ15は電磁波発振装置17に接続された同軸ケーブル19が電気的に接続されている。また、電磁波導波管13の他方端部は閉鎖され、その内面に電磁波吸収板20が取付けられている。該電磁波吸収板20は内部にて伝播して他端部側に到達したマイクロ波帯域電磁波を吸収する。
【0016】
パネル体5側の電磁波導波管13上面には多数のスロット13aが、長手方向に対して所要の間隔をおいて形成されている。該スロット13aは、内部にてマイクロ波帯域電磁波が伝播可能で、1/4波長より大きい開口幅からなり、内部を伝播するマイクロ波帯域電磁波をパネル体5側へ漏洩させる。
【0017】
電磁波発振装置17は、マグネトロンまたはガンダイオード等の半導体によりマイクロ波帯域電磁波を所要出力で発振させる。電磁波発振装置17をマグネトロンで構成する場合には、比較的高出力(0.5〜5kW)で、またマイクロ波帯域電磁波を半導体とする場合には、比較的低出力(50W)で発振させる。半導体の電磁波発振装置17を使用して高出力を得るには、所望の出力に応じた個数の電磁波発振装置17を並列配置すればよい。
【0018】
図6において、制御回路21には設定装置23、パネル体5又はパネル取付け部材9に取付けられた温度センサー25が接続されている。設定装置23には可変抵抗器等の出力設定部材23a、加熱開始温度を設定する開始温度設定部材23b及び加熱中断温度を設定する中断温度設定部材23cが設けられている。出力設定部材23aは電磁波発振装置17の発振出力を所望の値に設定する。開始温度設定部材23bは電磁波発振装置17を間歇的に発振駆動させる際の下限温度を設定する。また、中断温度設定部材23cは電磁波発振装置17の発振駆動を中断する際の上限温度を設定する。
【0019】
制御回路21には電磁波発振装置17の発振駆動回路27が接続され、電磁波発振装置17を、出力設定部材23aにより設定された所望の出力で発振駆動し、パネル体5又はパネル取付け部材9の温度が中断温度設定部材23cにより設定された所望の温度に達したとき、電磁波発振装置17の発振駆動を中断すると共にパネル体5又はパネル取付け部材9の温度が開始温度設定部材23bにより設定された所望の温度になったとき、電磁波発振装置17を再び発振駆動させる。
【0020】
次に、上記加熱パネルユニット3を使用した歩行用通路1の敷設方法及びパネル体5の加熱作用を説明する。
歩行用通路1を敷設するに先立ってトラフ7の開口部内にパネル取付け部材9の脚部9bを挿嵌して接着剤により接着固着する。そしてトラフ7の底面及び脚部9bの側壁内面により形成される空間部内に電磁波導波管13を、スロット13aが上面に位置するように挿入して取付ける。また、電磁波導波管13内のアンテナ15に対し、電磁波発振装置17に接続される同軸ケーブル19を電気的に接続する。
【0021】
上記トラフ7が固着されたパネル取付け部材9の上面にパネル体5を接着剤等により接着して固着する。このようにパネル取付け部材9の下面に電磁波導波管13を収容したトラフ7が、また上面にパネル体5が取付けられて一体化された加熱パネルユニット3を、歩行用通路1の通路長さに応じた個数分、用意する。
【0022】
そして各加熱パネルユニット3を、整地された路面上にて互いに連続するように配列して歩行用通路1を敷設する。このとき、路面に対してパネル体5が、その厚さ分、飛び出した状態で歩行用通路1を敷設するのが望ましい。(図1参照)
【0023】
上記のように敷設された歩行用通路1のパネル体5を加熱する作用を説明すると、例えば外気温が予め設定された温度以下になった際に、操作者が電源スイッチをON操作したり、それぞれの加熱パネルユニット3のパネル体5又はパネル取付け部材9に埋め込まれた温度センサー25により検出されるパネル体5又はパネル取付け部材9の温度が所要の温度以下になった際に、対応する加熱パネルユニット3の電磁波発振装置17を発振駆動し、電磁波導波管13内にてアンテナ15から出力されるマイクロ波帯域電磁波を長手方向に向かって伝播させる。電磁波導波管13内を伝播するマイクロ波帯域電磁波の一部は、スロット13aを通過してパネル体5側へ漏洩される。(図7参照)
【0024】
そしてスロット13aから漏洩されたマイクロ波帯域電磁波は、パネル取付け部材9を透過した後にパネル体5内に含有された電磁波吸収体による磁界損失、誘電損失により熱エネルギーへ変換されることにより吸収される。これにより電磁波吸収体による電磁波吸収作用により電磁波吸収体が発熱してパネル体5を加熱させる。(図8参照)
【0025】
そして温度センサー25により検出されるパネル体5又はパネル取付け部材9の温度が、予め設定された所要の温度に達した際に、電磁波発振装置17の発振駆動を中断させる。そして電磁波発振装置17の発振駆動の中断後の自然冷却によりパネル体5又はパネル取付け部材9の温度が、予め設定された所要の温度以下になった際に、再び、電磁波発振装置17を発振駆動して電磁波導波管13内にてマイクロ波帯域電磁波を伝播させながらその一部をスロット13aから漏洩させてパネル体5に含有された電磁波吸収体に吸収させ、その電磁波−熱エネルギー変換作用によりパネル体5を加熱させる。
【0026】
以下に、電磁波吸収体による加熱温度及び時間を測定した実験例を示す。
サンプル1
担持体:ゴムチップ
形状:プレート形(300mm×300mm、厚さ:20mm)
電磁波導波管とサンプルの距離:10cm
電磁波発振装置の出力:500W
電磁波吸収体:酸化スラグ(ゴムチップ体積に対して15%)
【0027】
サンプル2
担持体:ゴムチップ
形状:プレート形(300mm×300mm、厚さ:20mm)
電磁波導波管とサンプルの距離:10cm
電磁波発振装置の出力:500W
電磁波吸収体:酸化スラグ(ゴムチップ体積に対して20%)
【0028】
サンプル3
担持体:ゴムチップ
形状:プレート形(300mm×300mm、厚さ:20mm)
電磁波導波管とサンプルの距離:10cm
電磁波発振装置の出力:500W
電磁波吸収体:カーボン(ゴムチップ体積に対して2.5%)
【0029】
サンプル4
担持体:ゴムチップ
形状:プレート形(300mm×300mm、厚さ:20mm)
電磁波導波管とサンプルの距離:10cm
電磁波発振装置の出力:500W
電磁波吸収体:カーボン(ゴムチップ体積に対して5%)
【0030】
サンプル5
担持体:ゴムチップ
形状:プレート形(300mm×300mm、厚さ:20mm)
電磁波導波管とサンプルの距離:10cm
電磁波発振装置の出力:500W
電磁波吸収体:カーボン(ゴムチップ体積に対して10%)
【表1】
【0031】
サンプル6
担持体:ゴム
形状:プレート形(300mm×300mm、厚さ:20mm)
電磁波導波管とサンプルの距離:12cm
電磁波発振装置の出力:500W
電磁波吸収体:カーボン70wt%(全体重量比)+酸化スラグ30wt%(全体重量比)
【0032】
サンプル7
担持体:ゴム
形状:プレート形(300mm×300mm、厚さ:20mm)
電磁波導波管とサンプルの距離:12cm
電磁波発振装置の出力:500W
電磁波吸収体:カーボン85wt%(全体重量比)+酸化スラグ15wt%(全体重量比)
【0033】
サンプル8
担持体:PET樹脂(ポリエチレンテレフタレート)
形状:プレート形(300mm×300mm、厚さ:20mm)
電磁波導波管とサンプルの距離:12cm
電磁波発振装置の出力:500W
電磁波吸収体:酸化鉄80wt%(全体重量比)
【表2】
【実施例2】
【0034】
実施例1の電磁波導波管13は、パネル体5側の面に多数のスロット13aを形成した金属製の筒体とし、トラフ7の空間部内に挿入して取付ける構成としたが、本実施例の電磁波導波管31は、以下のように構成する。尚、実施例1と同一の部材に付いては、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0035】
図9〜図10において、トラフ7の底面にはステンレス薄板(箔)、アルミ薄板(箔)及び銅薄板(箔)等の金属薄板33が取付けられている。また、トラフ7内に挿嵌されるパネル取付け部材9の脚部9b内面及び脚部9b間の平面部9a下面には金属薄板33と同様の金属薄板35が貼り付けられている。その内、脚部9b間及び平面部9aの下面に取付けられる金属薄板35には開口幅が、内部にてマイクロ波帯域電磁波が伝播可能で、1/4波長以上からなる多数のスロット35aが形成されている。また、各平面部9aの内面に沿って垂下する金属薄板35の両側下部は、トラフ7内に平面部9aを挿嵌した際に、金属薄板33に対する電気的接触を確保するための接触片35bが折返し形成されている。
【0036】
本実施例は、トラフ7内にパネル取付け部材9の脚部9bを挿嵌することによりそれぞれの金属薄板33・35により電磁波導波管31を構成することができ、トラフ7及びパネル取付け部材9に対する電磁波導波管31の組付け作業を簡易化することができる。
【0037】
尚、本実施例の金属薄板33・35はトラフ7及びパネル取付け部材9を成形する際に、それぞれの金型内に金属薄板33・35をセットした状態でこれらを成形することにより一体化するインサート成形方法により具体化することができる。
【実施例3】
【0038】
実施例1及び2は、パネル取付け部材9及びトラフ7を別々に成形し、トラフ7内に脚部9aを挿嵌して接着することにより一体化する構成としたが、図11〜図12に示すように本実施例はトラフ51又はパネル取付け部材53を成形する際に、トラフ51の上面側にパネル取付け部材53を、またはパネル取付け部材53の下面側にトラフ51を一体成形すればよい。
【0039】
トラフ51及びパネル取付け部材53を一体的に成形する方法としては、公知の押出し成形法、予めトラフ51又はパネル取付け部材53の一方を成形しておき、他方のパネル取付け部材53又はトラフ51を成形する際に、金型内に予め成形されたトラフ51又はパネル取付け部材53をセットした状態で一体成形するインサート成形により具体化することができる。
【0040】
そして上記のように一体化されたトラフ51の空間部内に電磁波導波管13を挿入することにより加熱パネルユニット55を形成することができる。
【0041】
本実施例は、トラフ51とパネル取付け部材53を一体化することによりトラフ51内に雨水等が浸入するのを確実に防止することができる。
【0042】
上記説明は、加熱パネルユニットに1個の電磁波導波管を取付け、該電磁波導波管内を伝播するマイクロ波帯域電磁波の一部を漏洩させて電磁波吸収体による電磁波吸収作用により加熱する構成としたが、この構成にあっては、加熱パネルユニットの加熱箇所が1箇所であるため、加熱パネルユニットを効率的に温めることが困難である。
【0043】
これを回避して加熱パネルユニットを効率的に温めるため、図13に示すようにパネル体取付け部材61の下面に複数本のトラフ63を設け、それぞれのトラフ63内に電磁波導波管65を収容させることにより加熱パネルユニット79を効率的に温める構成としてもよい。この場合にあっては、図14に示すように2本の電磁波導波管71・73の一方端部を連結導波管75により連結してU字形状とし、連結導波管75の中間部内に、電磁波発振装置77に接続されたアンテナ(図示せず)を取付け、アンテナから出力されるマイクロ波帯域電磁波を双方の電磁波導波管71・73内にて伝播させながらそれぞれのスロット71a・73aから漏洩させる構成としてもよい。この構成にあっては、電磁波発振装置77の設置台数を少なくして加熱パネルユニット79の製作コストを低減することができる。
【0044】
尚、各電磁波導波管71・73の一方端部と連結導波管75の各端部を接続する際に、接続部に反射板を45度の角度で取付けることにより連結導波管75内を伝播するマイクロ波帯域電磁波をそれぞれの電磁波導波管71・73内に導くようにする。
【0045】
上記説明は、電磁波導波管内にアンテナを取付けてマイクロ波帯域電磁波を内部にて出力させる構成としたが、本発明は、電磁波導波管の開放端部に電磁波導波変換部材を取付け、例えばマグネトロンから直接出力されるマイクロ波帯域電磁波を電磁波導波管側へ導波して伝播させる構成であってもよい。
【0046】
上記説明は、別々に形成されたパネル取付け部材9の平面部9aの上面にパネル体5を接着したりして固着する構成としたが、本発明は、電磁波吸収体が含有された担持体によりパネル体及びパネル取付け部材を一体に形成したものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明を歩行者用通路に敷設されるパネル体に適用した例を示す斜視図である。
【図2】加熱パネルユニットを示す斜視図である。
【図3】加熱パネルユニットの分解斜視図である。
【図4】図2のIV−IV線縦断面図である。
【図5】図2のV−V線縦断面図である。
【図6】加熱パネルユニットの電気的ブロック図である。
【図7】電磁波導波管におけるスロットからのマイクロ波帯域電磁波の漏洩状態を示す説明図である。
【図8】電磁波吸収体によるマイクロ波帯域電磁波の吸収状態を示す説明図である。
【図9】実施例2に係る電磁波導波手段の説明図である。
【図10】加熱パネルユニットの縦断面図である。
【図11】実施例3に係る加熱パネルユニットの説明図である。
【図12】加熱パネルユニットの縦断面図である。
【図13】加熱パネルユニットの変更例を示す説明図である。
【図14】電磁波導波管の変更例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0048】
1 歩行用通路
3 加熱パネルユニット
5 パネル体
7 トラフ
9 パネル取付け部材
13 電磁波導波管
13a スロット
17 電磁波発振装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行用通路や駐車場、屋内外の各種床面、屋根や壁面等に敷設されるパネル体を加熱して融雪したり、氷結を防止したり、暖房したりする加熱パネルユニット及び加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示す融雪システムは、舗装体中に、上面に電磁波放出部を有する電磁波導波管を埋設し、該電磁波導波管の上面側に、電磁波吸収体を含有した表層体を敷設し、電磁波導波管内を伝播するマイクロ波帯域電磁波を表層体側へ出力して電磁波吸収体によるマイクロ波帯域電磁波の吸収作用により表層体を加熱して融雪したり、氷結を防止したりしている。
【0003】
しかし、上記該融雪システムを、歩行者用通路や駐車場、屋内外の床面、建築物の屋根や壁面等の簡易な施設に付設されるパネル体を加熱する加熱システムとして適用して融雪したり、加温したりする場合、先ず、路面や床面等を掘り下げて電磁波導波管を埋設した後に、該電磁波導波間の上層に電磁波吸収体を含有した表層体を敷設する必要があり、敷設工事が大がかりになって施工コストが増大する問題を有している。
【0004】
また、上記融雪システムにあっては、電磁波導波管を舗装体中に直接埋設するため、マイクロ波帯域電磁波を漏洩させるスロットから土中の水が電磁波導波管内に浸入し易く、また電磁波導波管に荷重が直接作用して変形し易く、マイクロ波帯域電磁波の伝播効率が悪くなって表層体を長手方向全体に加熱することが困難になる問題を有している。
【特許文献1】特開2006−138172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、敷設工事が大がかりになって工事コストが増大する点にある。電磁波導波管内に水が浸入し易く、また直接作用する荷重により電磁波導波管が変形してマイクロ波帯域電磁波の伝播効率が悪くなる点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1は、担持体に電磁波吸収体を含有して板状に形成されたパネル体に対してマイクロ波帯域電磁波を出力して電磁波吸収体による電磁波吸収によりパネル体を発熱する加熱システムにおいて、パネル体が固着されるパネル取付け部材と、パネル取付け部材の下面に配置され、パネル体の所要方向全体に亘る長さからなるトラフと、該トラフ内に設けられ、パネル体に相対する面に多数のスロットが形成され、電磁波発振手段から発振されたマイクロ波帯域電磁波を内部にて伝播させながら上記スロットからパネル体に向かって漏洩する電磁波導波手段とを設けたことを特徴とする。
【0007】
請求項12は、パネル体にマイクロ波帯域電磁波を出力して含有された電磁波吸収体による電磁波吸収によりパネル体を発熱させる際に、パネル体が固着されるパネル体取付け部材にトラフを設け、該トラフ内に設けられた電磁波導波手段内部を伝播するマイクロ波帯域電磁波の一部をパネル体に向けて出力して加熱可能にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、パネル体が固着されるパネル取付け部材に設けられたトラフ内に電磁波導波手段を取付けて一体化して敷設される部材をユニット化することにより敷設工事を簡易化して低コスト化することができる。電磁波導波管内に対する水の浸入を防止すると共に電磁波導波管に荷重が直接作用するのを回避して電磁波導波管の変形を防止し、マイクロ波帯域電磁波を効率的に伝播させてパネル体を加熱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、パネル体が固着されるパネル取付け部材の下面に配置され、パネル体の所要方向全体に亘る長さからなるトラフ内に、パネル体に相対する面に多数のスロットが形成され、電磁波発振手段から発振されたマイクロ波帯域電磁波を内部にて伝播させながら上記スロットからパネル体に向かって出力する電磁波導波手段を設けることを最良の形態とする。
【実施例1】
【0010】
以下に本発明を歩行者用通路として敷設される加熱パネルユニットとして実施した実施例を図に従って説明する。
図1〜図5において、被敷設体としての歩行用通路1は多数の加熱パネルユニット3を連続するように配列して敷設される。該加熱パネルユニット3を構成するパネル体5は、合成樹脂材やゴム及びゴムチップ(バージン材及びリサイクル材の少なくともいずれかを含む。)の担持体に、電磁波吸収体を含有し、所望の大きさ及び厚さのパネル状に成形される。また、加熱パネルユニット3の平面形状は、四角形状、扇形、台形状、多角形状等のいずれであってもよく、これらを適宜組合せて歩行用通路1を構成する。
【0011】
尚、加熱パネルユニット1が敷設される場所としては、上記した歩行用通路の他に、駐車場、アプローチ、屋内の床、屋外のベランダやテラス等の床、建築物の屋根、壁面等のいずれであってもよいことは、勿論である。また、パネル体5の形状としては、平面四角形状、扇形、多角形状等のいずれであってもよい。更に、図5はゴムチップをバインダー(接着剤)により接着固化したパネル体5を示す。
【0012】
担持体に含有される電磁波吸収体は、酸化鉄(フェライト)、酸化スラグ、カーボン、パーマロイ等で、パネル体の担持体体積に対し、2.5〜30wt%の割合で含有される。上記電磁波吸収体をカーボンとした場合には、担持体体積に対して2.5〜15%、酸化スラグ又は酸化フェライトとした場合には、担持体体積に対して5〜30%とする。また、添加剤としては、上記電磁波吸収体の他に、必要に応じてフッ素樹脂、シリコン樹脂等の剥離剤、着色剤、難燃剤等を添加すればよい。
【0013】
上記加熱パネルユニット3は、後述するトラフ7及びパネル取付け部材9と、該パネル取付け部材9の上面に固着されるパネル体5とから構成される。上記トラフ7は合成樹脂材(リサイクル樹脂材を含む。)からなり、長手方向がパネル体5の横幅に一致する長さで、長手直交方向断面が開口上向きコ字形に形成される。また、パネル取付け部材9は合成樹脂材(リサイクル樹脂材を含む。)で、上面にパネル体5が接着される平面部9aと、平面部9aの下面に一体形成され、トラフ7の両側壁に沿って垂下して挿嵌される一対の脚部9bとから構成される。
【0014】
パネル取付け部材9の脚部9bをトラフ7内に挿嵌する際に、トラフ7の内側壁に対しして脚部9bを接着剤で接着することにより両者間を気密化する。また、トラフ7に対してパネル取付け部材9の脚部9bを挿嵌した際に、脚部9b間及びトラフ7の底面との間には空間部が形成される。そして該空間部内には電磁波導波手段としての電磁波導波管13が挿嵌される。該電磁波導波管13は、内部に電波法上、無許可で出力可能なマイクロ波帯域電磁波(例えば2.45GHz)を反射して長手方向へ伝播可能なステンレス、アルミニウム、銅等の金属材で、長手直交方向断面が矩形、円形の金属筒体からなる。
【0015】
該電磁波導波管13の一方端部内には、F形、ダイポール形のアンテナ15が取付けられ、該アンテナ15は電磁波発振装置17に接続された同軸ケーブル19が電気的に接続されている。また、電磁波導波管13の他方端部は閉鎖され、その内面に電磁波吸収板20が取付けられている。該電磁波吸収板20は内部にて伝播して他端部側に到達したマイクロ波帯域電磁波を吸収する。
【0016】
パネル体5側の電磁波導波管13上面には多数のスロット13aが、長手方向に対して所要の間隔をおいて形成されている。該スロット13aは、内部にてマイクロ波帯域電磁波が伝播可能で、1/4波長より大きい開口幅からなり、内部を伝播するマイクロ波帯域電磁波をパネル体5側へ漏洩させる。
【0017】
電磁波発振装置17は、マグネトロンまたはガンダイオード等の半導体によりマイクロ波帯域電磁波を所要出力で発振させる。電磁波発振装置17をマグネトロンで構成する場合には、比較的高出力(0.5〜5kW)で、またマイクロ波帯域電磁波を半導体とする場合には、比較的低出力(50W)で発振させる。半導体の電磁波発振装置17を使用して高出力を得るには、所望の出力に応じた個数の電磁波発振装置17を並列配置すればよい。
【0018】
図6において、制御回路21には設定装置23、パネル体5又はパネル取付け部材9に取付けられた温度センサー25が接続されている。設定装置23には可変抵抗器等の出力設定部材23a、加熱開始温度を設定する開始温度設定部材23b及び加熱中断温度を設定する中断温度設定部材23cが設けられている。出力設定部材23aは電磁波発振装置17の発振出力を所望の値に設定する。開始温度設定部材23bは電磁波発振装置17を間歇的に発振駆動させる際の下限温度を設定する。また、中断温度設定部材23cは電磁波発振装置17の発振駆動を中断する際の上限温度を設定する。
【0019】
制御回路21には電磁波発振装置17の発振駆動回路27が接続され、電磁波発振装置17を、出力設定部材23aにより設定された所望の出力で発振駆動し、パネル体5又はパネル取付け部材9の温度が中断温度設定部材23cにより設定された所望の温度に達したとき、電磁波発振装置17の発振駆動を中断すると共にパネル体5又はパネル取付け部材9の温度が開始温度設定部材23bにより設定された所望の温度になったとき、電磁波発振装置17を再び発振駆動させる。
【0020】
次に、上記加熱パネルユニット3を使用した歩行用通路1の敷設方法及びパネル体5の加熱作用を説明する。
歩行用通路1を敷設するに先立ってトラフ7の開口部内にパネル取付け部材9の脚部9bを挿嵌して接着剤により接着固着する。そしてトラフ7の底面及び脚部9bの側壁内面により形成される空間部内に電磁波導波管13を、スロット13aが上面に位置するように挿入して取付ける。また、電磁波導波管13内のアンテナ15に対し、電磁波発振装置17に接続される同軸ケーブル19を電気的に接続する。
【0021】
上記トラフ7が固着されたパネル取付け部材9の上面にパネル体5を接着剤等により接着して固着する。このようにパネル取付け部材9の下面に電磁波導波管13を収容したトラフ7が、また上面にパネル体5が取付けられて一体化された加熱パネルユニット3を、歩行用通路1の通路長さに応じた個数分、用意する。
【0022】
そして各加熱パネルユニット3を、整地された路面上にて互いに連続するように配列して歩行用通路1を敷設する。このとき、路面に対してパネル体5が、その厚さ分、飛び出した状態で歩行用通路1を敷設するのが望ましい。(図1参照)
【0023】
上記のように敷設された歩行用通路1のパネル体5を加熱する作用を説明すると、例えば外気温が予め設定された温度以下になった際に、操作者が電源スイッチをON操作したり、それぞれの加熱パネルユニット3のパネル体5又はパネル取付け部材9に埋め込まれた温度センサー25により検出されるパネル体5又はパネル取付け部材9の温度が所要の温度以下になった際に、対応する加熱パネルユニット3の電磁波発振装置17を発振駆動し、電磁波導波管13内にてアンテナ15から出力されるマイクロ波帯域電磁波を長手方向に向かって伝播させる。電磁波導波管13内を伝播するマイクロ波帯域電磁波の一部は、スロット13aを通過してパネル体5側へ漏洩される。(図7参照)
【0024】
そしてスロット13aから漏洩されたマイクロ波帯域電磁波は、パネル取付け部材9を透過した後にパネル体5内に含有された電磁波吸収体による磁界損失、誘電損失により熱エネルギーへ変換されることにより吸収される。これにより電磁波吸収体による電磁波吸収作用により電磁波吸収体が発熱してパネル体5を加熱させる。(図8参照)
【0025】
そして温度センサー25により検出されるパネル体5又はパネル取付け部材9の温度が、予め設定された所要の温度に達した際に、電磁波発振装置17の発振駆動を中断させる。そして電磁波発振装置17の発振駆動の中断後の自然冷却によりパネル体5又はパネル取付け部材9の温度が、予め設定された所要の温度以下になった際に、再び、電磁波発振装置17を発振駆動して電磁波導波管13内にてマイクロ波帯域電磁波を伝播させながらその一部をスロット13aから漏洩させてパネル体5に含有された電磁波吸収体に吸収させ、その電磁波−熱エネルギー変換作用によりパネル体5を加熱させる。
【0026】
以下に、電磁波吸収体による加熱温度及び時間を測定した実験例を示す。
サンプル1
担持体:ゴムチップ
形状:プレート形(300mm×300mm、厚さ:20mm)
電磁波導波管とサンプルの距離:10cm
電磁波発振装置の出力:500W
電磁波吸収体:酸化スラグ(ゴムチップ体積に対して15%)
【0027】
サンプル2
担持体:ゴムチップ
形状:プレート形(300mm×300mm、厚さ:20mm)
電磁波導波管とサンプルの距離:10cm
電磁波発振装置の出力:500W
電磁波吸収体:酸化スラグ(ゴムチップ体積に対して20%)
【0028】
サンプル3
担持体:ゴムチップ
形状:プレート形(300mm×300mm、厚さ:20mm)
電磁波導波管とサンプルの距離:10cm
電磁波発振装置の出力:500W
電磁波吸収体:カーボン(ゴムチップ体積に対して2.5%)
【0029】
サンプル4
担持体:ゴムチップ
形状:プレート形(300mm×300mm、厚さ:20mm)
電磁波導波管とサンプルの距離:10cm
電磁波発振装置の出力:500W
電磁波吸収体:カーボン(ゴムチップ体積に対して5%)
【0030】
サンプル5
担持体:ゴムチップ
形状:プレート形(300mm×300mm、厚さ:20mm)
電磁波導波管とサンプルの距離:10cm
電磁波発振装置の出力:500W
電磁波吸収体:カーボン(ゴムチップ体積に対して10%)
【表1】
【0031】
サンプル6
担持体:ゴム
形状:プレート形(300mm×300mm、厚さ:20mm)
電磁波導波管とサンプルの距離:12cm
電磁波発振装置の出力:500W
電磁波吸収体:カーボン70wt%(全体重量比)+酸化スラグ30wt%(全体重量比)
【0032】
サンプル7
担持体:ゴム
形状:プレート形(300mm×300mm、厚さ:20mm)
電磁波導波管とサンプルの距離:12cm
電磁波発振装置の出力:500W
電磁波吸収体:カーボン85wt%(全体重量比)+酸化スラグ15wt%(全体重量比)
【0033】
サンプル8
担持体:PET樹脂(ポリエチレンテレフタレート)
形状:プレート形(300mm×300mm、厚さ:20mm)
電磁波導波管とサンプルの距離:12cm
電磁波発振装置の出力:500W
電磁波吸収体:酸化鉄80wt%(全体重量比)
【表2】
【実施例2】
【0034】
実施例1の電磁波導波管13は、パネル体5側の面に多数のスロット13aを形成した金属製の筒体とし、トラフ7の空間部内に挿入して取付ける構成としたが、本実施例の電磁波導波管31は、以下のように構成する。尚、実施例1と同一の部材に付いては、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0035】
図9〜図10において、トラフ7の底面にはステンレス薄板(箔)、アルミ薄板(箔)及び銅薄板(箔)等の金属薄板33が取付けられている。また、トラフ7内に挿嵌されるパネル取付け部材9の脚部9b内面及び脚部9b間の平面部9a下面には金属薄板33と同様の金属薄板35が貼り付けられている。その内、脚部9b間及び平面部9aの下面に取付けられる金属薄板35には開口幅が、内部にてマイクロ波帯域電磁波が伝播可能で、1/4波長以上からなる多数のスロット35aが形成されている。また、各平面部9aの内面に沿って垂下する金属薄板35の両側下部は、トラフ7内に平面部9aを挿嵌した際に、金属薄板33に対する電気的接触を確保するための接触片35bが折返し形成されている。
【0036】
本実施例は、トラフ7内にパネル取付け部材9の脚部9bを挿嵌することによりそれぞれの金属薄板33・35により電磁波導波管31を構成することができ、トラフ7及びパネル取付け部材9に対する電磁波導波管31の組付け作業を簡易化することができる。
【0037】
尚、本実施例の金属薄板33・35はトラフ7及びパネル取付け部材9を成形する際に、それぞれの金型内に金属薄板33・35をセットした状態でこれらを成形することにより一体化するインサート成形方法により具体化することができる。
【実施例3】
【0038】
実施例1及び2は、パネル取付け部材9及びトラフ7を別々に成形し、トラフ7内に脚部9aを挿嵌して接着することにより一体化する構成としたが、図11〜図12に示すように本実施例はトラフ51又はパネル取付け部材53を成形する際に、トラフ51の上面側にパネル取付け部材53を、またはパネル取付け部材53の下面側にトラフ51を一体成形すればよい。
【0039】
トラフ51及びパネル取付け部材53を一体的に成形する方法としては、公知の押出し成形法、予めトラフ51又はパネル取付け部材53の一方を成形しておき、他方のパネル取付け部材53又はトラフ51を成形する際に、金型内に予め成形されたトラフ51又はパネル取付け部材53をセットした状態で一体成形するインサート成形により具体化することができる。
【0040】
そして上記のように一体化されたトラフ51の空間部内に電磁波導波管13を挿入することにより加熱パネルユニット55を形成することができる。
【0041】
本実施例は、トラフ51とパネル取付け部材53を一体化することによりトラフ51内に雨水等が浸入するのを確実に防止することができる。
【0042】
上記説明は、加熱パネルユニットに1個の電磁波導波管を取付け、該電磁波導波管内を伝播するマイクロ波帯域電磁波の一部を漏洩させて電磁波吸収体による電磁波吸収作用により加熱する構成としたが、この構成にあっては、加熱パネルユニットの加熱箇所が1箇所であるため、加熱パネルユニットを効率的に温めることが困難である。
【0043】
これを回避して加熱パネルユニットを効率的に温めるため、図13に示すようにパネル体取付け部材61の下面に複数本のトラフ63を設け、それぞれのトラフ63内に電磁波導波管65を収容させることにより加熱パネルユニット79を効率的に温める構成としてもよい。この場合にあっては、図14に示すように2本の電磁波導波管71・73の一方端部を連結導波管75により連結してU字形状とし、連結導波管75の中間部内に、電磁波発振装置77に接続されたアンテナ(図示せず)を取付け、アンテナから出力されるマイクロ波帯域電磁波を双方の電磁波導波管71・73内にて伝播させながらそれぞれのスロット71a・73aから漏洩させる構成としてもよい。この構成にあっては、電磁波発振装置77の設置台数を少なくして加熱パネルユニット79の製作コストを低減することができる。
【0044】
尚、各電磁波導波管71・73の一方端部と連結導波管75の各端部を接続する際に、接続部に反射板を45度の角度で取付けることにより連結導波管75内を伝播するマイクロ波帯域電磁波をそれぞれの電磁波導波管71・73内に導くようにする。
【0045】
上記説明は、電磁波導波管内にアンテナを取付けてマイクロ波帯域電磁波を内部にて出力させる構成としたが、本発明は、電磁波導波管の開放端部に電磁波導波変換部材を取付け、例えばマグネトロンから直接出力されるマイクロ波帯域電磁波を電磁波導波管側へ導波して伝播させる構成であってもよい。
【0046】
上記説明は、別々に形成されたパネル取付け部材9の平面部9aの上面にパネル体5を接着したりして固着する構成としたが、本発明は、電磁波吸収体が含有された担持体によりパネル体及びパネル取付け部材を一体に形成したものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明を歩行者用通路に敷設されるパネル体に適用した例を示す斜視図である。
【図2】加熱パネルユニットを示す斜視図である。
【図3】加熱パネルユニットの分解斜視図である。
【図4】図2のIV−IV線縦断面図である。
【図5】図2のV−V線縦断面図である。
【図6】加熱パネルユニットの電気的ブロック図である。
【図7】電磁波導波管におけるスロットからのマイクロ波帯域電磁波の漏洩状態を示す説明図である。
【図8】電磁波吸収体によるマイクロ波帯域電磁波の吸収状態を示す説明図である。
【図9】実施例2に係る電磁波導波手段の説明図である。
【図10】加熱パネルユニットの縦断面図である。
【図11】実施例3に係る加熱パネルユニットの説明図である。
【図12】加熱パネルユニットの縦断面図である。
【図13】加熱パネルユニットの変更例を示す説明図である。
【図14】電磁波導波管の変更例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0048】
1 歩行用通路
3 加熱パネルユニット
5 パネル体
7 トラフ
9 パネル取付け部材
13 電磁波導波管
13a スロット
17 電磁波発振装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
担持体に電磁波吸収体を含有して板状に形成されたパネル体に対してマイクロ波帯域電磁波を出力して電磁波吸収体による電磁波吸収によりパネル体を発熱する加熱システムにおいて、
パネル体が固着されるパネル取付け部材と、
パネル取付け部材の下面に配置され、パネル体の所要方向全体に亘る長さからなるトラフと、
該トラフ内に設けられ、パネル体に相対する面に多数のスロットが形成され、電磁波発振手段から発振されたマイクロ波帯域電磁波を内部にて伝播させながら上記スロットからパネル体に向かって漏洩する電磁波導波手段と、
を設けた加熱パネルユニット。
【請求項2】
請求項1のトラフは、パネル取付け部材の下面に一体形成した加熱パネルユニット。
【請求項3】
請求項1のパネル体及びパネル取付け部材は、電磁波吸収体を含有した担持体により一体形成した加熱パネルユニット。
【請求項4】
請求項1又は2において、電磁波導波手段は、トラフ内に収容され、パネル体の相対面に、内部にてマイクロ波帯域電磁波を伝播可能で、1/4波長以上の幅からなる多数のスロットが形成された金属製筒体からなる加熱パネルユニット。
【請求項5】
請求項1又は2において、電磁波導波手段は、トラフの各面に金属体を一体形成すると共にトラフの開口部に位置するパネル体取付け部材に、内部にてマイクロ波帯域電磁波を伝播可能で、1/4波長以上の幅からなる多数のスロットを有した金属体を、トラフの金属体に電気的に導通するように設けた加熱パネルユニット。
【請求項6】
請求項5の金属体は、金属薄板及び金属薄膜のいずれかからなる加熱パネルユニット。
【請求項7】
請求項1の担持体は、合成樹脂、ゴム、ゴムチップの少なくともいずれかとした加熱パネルユニット。
【請求項8】
請求項1の電磁波吸収体は、酸化鉄、酸化スラグ、カーボン、パーマロイの少なくともいずれかとした加熱パネルユニット。
【請求項9】
請求項1において、トラフは、長手直交方向断面が開口上向きコ字形からなると共にパネル体取付け部材は、トラフの開口部に挿嵌される脚部を有した加熱パネルユニット。
【請求項10】
請求項9において、電磁波導波手段は、パネル体取付け部材の脚部内面及び脚部間に位置するトラフの底面に囲まれた空間部内に挿嵌され、パネル体の相対面に、内部にてマイクロ波帯域電磁波を伝播可能で、1/4波長以上の幅からなる多数のスロットが形成された金属製筒体からなる加熱パネルユニット。
【請求項11】
請求項9において、電磁波導波手段は、トラフの底面に一体化された金属体と受台の脚部内面に一体化された金属体とからなり、パネル体に相対する金属体に、内部にてマイクロ波帯域電磁波を伝播可能で、1/4波長以上の幅からなる多数のスロットを形成した加熱パネルユニット。
【請求項12】
パネル体にマイクロ波帯域電磁波を出力して含有された電磁波吸収体による電磁波吸収によりパネル体を発熱させる際に、パネル体が固着されるパネル体取付け部材にトラフを設け、該トラフ内に設けられた電磁波導波手段内部を伝播するマイクロ波帯域電磁波の一部をパネル体に向けて出力して加熱可能にするパネル体加熱方法。
【請求項13】
請求項12の電磁波導波手段は、パネル体の相対面に、内部にてマイクロ波帯域電磁波を伝播可能で、1/4波長以上の幅からなる多数のスロットが形成された金属製筒体をトラフ内に収容してなるパネル体加熱方法。
【請求項14】
請求項12の電磁波導波手段は、トラフの内面に、パネル体に相対する面にマイクロ波帯域電磁波の1/4波長以上の幅からなる多数のスロットを有した金属体を一体化したパネル体加熱方法。
【請求項1】
担持体に電磁波吸収体を含有して板状に形成されたパネル体に対してマイクロ波帯域電磁波を出力して電磁波吸収体による電磁波吸収によりパネル体を発熱する加熱システムにおいて、
パネル体が固着されるパネル取付け部材と、
パネル取付け部材の下面に配置され、パネル体の所要方向全体に亘る長さからなるトラフと、
該トラフ内に設けられ、パネル体に相対する面に多数のスロットが形成され、電磁波発振手段から発振されたマイクロ波帯域電磁波を内部にて伝播させながら上記スロットからパネル体に向かって漏洩する電磁波導波手段と、
を設けた加熱パネルユニット。
【請求項2】
請求項1のトラフは、パネル取付け部材の下面に一体形成した加熱パネルユニット。
【請求項3】
請求項1のパネル体及びパネル取付け部材は、電磁波吸収体を含有した担持体により一体形成した加熱パネルユニット。
【請求項4】
請求項1又は2において、電磁波導波手段は、トラフ内に収容され、パネル体の相対面に、内部にてマイクロ波帯域電磁波を伝播可能で、1/4波長以上の幅からなる多数のスロットが形成された金属製筒体からなる加熱パネルユニット。
【請求項5】
請求項1又は2において、電磁波導波手段は、トラフの各面に金属体を一体形成すると共にトラフの開口部に位置するパネル体取付け部材に、内部にてマイクロ波帯域電磁波を伝播可能で、1/4波長以上の幅からなる多数のスロットを有した金属体を、トラフの金属体に電気的に導通するように設けた加熱パネルユニット。
【請求項6】
請求項5の金属体は、金属薄板及び金属薄膜のいずれかからなる加熱パネルユニット。
【請求項7】
請求項1の担持体は、合成樹脂、ゴム、ゴムチップの少なくともいずれかとした加熱パネルユニット。
【請求項8】
請求項1の電磁波吸収体は、酸化鉄、酸化スラグ、カーボン、パーマロイの少なくともいずれかとした加熱パネルユニット。
【請求項9】
請求項1において、トラフは、長手直交方向断面が開口上向きコ字形からなると共にパネル体取付け部材は、トラフの開口部に挿嵌される脚部を有した加熱パネルユニット。
【請求項10】
請求項9において、電磁波導波手段は、パネル体取付け部材の脚部内面及び脚部間に位置するトラフの底面に囲まれた空間部内に挿嵌され、パネル体の相対面に、内部にてマイクロ波帯域電磁波を伝播可能で、1/4波長以上の幅からなる多数のスロットが形成された金属製筒体からなる加熱パネルユニット。
【請求項11】
請求項9において、電磁波導波手段は、トラフの底面に一体化された金属体と受台の脚部内面に一体化された金属体とからなり、パネル体に相対する金属体に、内部にてマイクロ波帯域電磁波を伝播可能で、1/4波長以上の幅からなる多数のスロットを形成した加熱パネルユニット。
【請求項12】
パネル体にマイクロ波帯域電磁波を出力して含有された電磁波吸収体による電磁波吸収によりパネル体を発熱させる際に、パネル体が固着されるパネル体取付け部材にトラフを設け、該トラフ内に設けられた電磁波導波手段内部を伝播するマイクロ波帯域電磁波の一部をパネル体に向けて出力して加熱可能にするパネル体加熱方法。
【請求項13】
請求項12の電磁波導波手段は、パネル体の相対面に、内部にてマイクロ波帯域電磁波を伝播可能で、1/4波長以上の幅からなる多数のスロットが形成された金属製筒体をトラフ内に収容してなるパネル体加熱方法。
【請求項14】
請求項12の電磁波導波手段は、トラフの内面に、パネル体に相対する面にマイクロ波帯域電磁波の1/4波長以上の幅からなる多数のスロットを有した金属体を一体化したパネル体加熱方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−145067(P2008−145067A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334138(P2006−334138)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(398000956)株式会社コーハン (14)
【出願人】(306022395)有限会社アミカル (5)
【出願人】(506342615)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(398000956)株式会社コーハン (14)
【出願人】(306022395)有限会社アミカル (5)
【出願人】(506342615)
【Fターム(参考)】
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