説明

加熱調理装置

【課題】業務用途の場合に使用頻度が高いため、調理庫の底面部にあってマイクロ波を遮蔽する一方磁束を通過させるパンチング板の寿命が短いが、従来構成では交換・修理に時間が掛かり装置の稼働効率を低下させる。
【解決手段】調理庫の底部を形成する底板71には円形状の開口を設け、そこに、パンチング板72を溶着した円環状の底板金具73を取り外し可能に装着する。底板71に固着した溶接ボルトとナットとの螺合による固定部75と単なる凸部73bの押し付けによる圧接部78との組み合わせにより、底板71に対する底板金具72の固定を行うことにより、作業効率を改善しつつ必要な強度を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、略密閉可能な調理庫内に収納された食品を加熱調理するために高周波加熱手段と誘導加熱手段とを併せ持つ複合型の加熱調理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子レンジはマイクロ波により食品を直接高周波加熱するため、温め加熱などの高速調理には非常に効果を発揮するものの、食品に焦げ目を付けることができず、焦げ目付け調理には不向きであった。一方、近年普及が進んでいる誘導加熱(IH)調理器は誘導加熱により磁性金属製の鍋などを加熱して調理を行うため、焦げ目付け調理や煮炊き調理などに最適である。そこで、上記のような高周波加熱による加熱調理の欠点を補うために、誘導加熱調理を併用した複合型の加熱調理装置が従来より知られている。
【0003】
例えば特許文献1に記載の加熱調理装置では、略箱形状の調理庫の底面の下方に誘導加熱コイルが配置され、該コイルから発生した磁束により調理庫底面上に載置された調理皿を誘導加熱することができるようになっている。他方、調理庫の外方にはマグネトロンが配置され、該マグネトロンから発生したマイクロ波が調理庫側面に形成された給電口を経て調理庫内に供給され、それによって調理皿上に置かれた食品を高周波加熱することができるようになっている。この種の加熱調理装置は、誘導加熱可能な構成の鍋やフライパンなどの容器内に収容された食品に対し、焦げ目付け調理や煮込み調理を行うのに好適である。
【0004】
こうした加熱調理装置は一般家庭用として便利であるのはもちろんであるが、外食チェーン店舗やコンビニエンスストアなど、調理時間の短縮化が特に強く要求される業務用途にも非常に有用である。加熱調理装置の使用状況において一般家庭用途と業務用途とで大きく異なることの1つは、その使用頻度である。即ち、業務用途の場合、加熱調理装置をできるだけ効率良く稼働させる、つまり稼働効率を上げることが望ましいわけであるから、途切れることなくほぼ連続的に長時間に亘って運転が行われるという状況が想定される。
【0005】
上述した構成のように誘導加熱コイルが調理庫の底面部の下方に配置される場合、調理庫の底面部は磁束が通過するような部材、例えば小孔が多数穿孔されたパンチング板から構成される。こうしたパンチング板は誘導加熱されにくいとはいうものの、その部材を貫通する一部の磁束の作用により若干は加熱される。また、誘導加熱コイル自体の温度上昇などの熱伝導によってもその温度が上昇する。そのため、上述したようにほぼ連続的に誘導加熱が繰り返されると、パンチング板に熱が蓄積していってその温度は上昇してゆき、通常の一般家庭の使用では起こり得ないようなかなりの高温に達する場合がある。こうしたことから、業務用途では加熱によるパンチング板の消耗が激しく、破れ等の損傷が起こり易い。
【0006】
そのため、特に業務用途の加熱調理装置ではパンチング板の交換が必要となる場合が多い。一方で、前述したように業務用途では装置の稼働効率をできるだけ上げることが重要であるため、修理等のメインテナンスに要する時間を極力短縮することが切望される。ところが、上記のような従来の加熱調理装置では、パンチング板の交換作業は非常に面倒である。何故なら、一般に、箱形状の調理庫はドアで開閉される前面部を除いた他の五面(天面部、底面部、後面部、及び左右両側面部)が一体化された構造となっていることが多く、この場合、底面部のパンチング板を交換するには調理庫全体を交換する必要があり、調理庫にはその外面に様々な部材が装着されていることから、加熱調理装置全体を一旦分解し、調理庫を交換した上で再組み立てすることになるからである。さらにまた、再組み立てを行った後に、例えばドアスイッチの動作調整など様々な機械的な調整が必要となり、その点でも上記のような修理は非常に面倒である。そのため、メーカーのサービス担当者であっても修理にかなりの時間を要することは避けられず、こうした手間を省くために装置自体を新品に交換することもよく行われる。こうしたことから、従来の加熱調理装置では、パンチング板の損傷に対する修理・交換に伴うコストはかなり高いものである。
【0007】
また特許文献1に記載の装置では、調理庫の底面部を上述したようなパンチング板などの磁束を通過させる一方マイクロ波を反射する薄い板状部材で構成し、その上に誘電体であって耐熱性を有する非磁性体の載置板を設け、調理庫底面部の下方に誘導加熱コイルを設置している。誘導加熱コイルから発生する交番磁束は該コイルから離れるほど磁束密度が下がるため、誘導加熱効率を考えると、誘導加熱コイルはできるだけ被加熱物である容器底面に近くすることが好ましい。しかしながら、上述のように容器底面と誘導加熱コイルとの間には載置板とパンチング板等の板状部材とが挿入されるし、内容物によっては200〜300℃の温度になる容器の熱が誘導加熱コイルに伝達するのを抑えるために両者の間には適度な間隙を設ける必要もある。
【0008】
こうしたことから、容器底面と誘導加熱コイルとの間の間隙を適度に確保しながら、且つできるだけ誘導加熱効率を高くすることが好ましいものの、従来、そうしたことは考慮されておらず、必ずしも十分に高い加熱効率が得られているとは言えなかった。
【0009】
【特許文献1】特開2004−327260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、高周波加熱手段と誘導加熱手段とを併せ持つ複合型の加熱調理装置において、誘導加熱の加熱効率を従来より高めることで調理時間の短縮や消費電力量の低減を達成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために成された本発明は、略密閉可能な箱形状の調理庫と、該調理庫内に収容された食品を高周波加熱するためのマイクロ波を発生するマグネトロンとそのマイクロ波を前記調理庫内に導く導波管とを含む高周波加熱手段と、前記調理庫内に収容された発熱体を誘導加熱するための交番磁束を発生する誘導加熱コイルを含む誘導加熱手段と、を具備する加熱調理装置において、
前記誘導加熱コイルは前記調理庫のいずれかの壁面の外側に設置され、該壁面の少なくとも一部は前記誘導加熱コイルから発生する磁束を通過させる一方、マイクロ波の通過を阻止する磁束通過部を有し、さらに該壁面の磁束通過部の内側に、低損失の誘電体材料であって且つ耐熱性を有する材料から成る板部材が配置され、該板部材内面から前記磁束通過部までの厚さ方向の距離lと前記板部材内面から前記誘導加熱コイル内面までの厚さ方向の距離Lとの関係がl≦L/2であって、且つL−l≧3mmに設定されていることを特徴としている。
【0012】
したがって、本発明に係る加熱調理装置によれば、高周波加熱の際のマイクロ波の調理庫からの漏洩を磁束通過部により確実に防止しつつ、磁束通過部を挿入することによる誘導加熱の加熱効率の低下を抑えることができる。また、磁束通過部自体も若干は誘導加熱されて発熱するが、誘導加熱コイルから離すことにより、誘導加熱コイルに対する熱の伝導を抑えることができる。さらには、誘導加熱コイルと磁束通過部との間の間隙が大きくなるので空気が流通し易くなり、誘導加熱コイルと磁束通過部との両方の冷却効果が高まる。
【0013】
また、磁束通過部と誘導加熱コイル内面との間の距離を3mm以上にすることで、高周波加熱の際の調理庫内からのマイクロ波の漏洩を効率よく防止することができる。
【0014】
また本発明に係る加熱調理装置では、前記誘導加熱コイルを調理庫壁面に向いた面が開口した扁平箱形状の樹脂製のケース内に収容し、該ケースの外面及び前記開口の周縁端部には金属層を形成し、その周縁端部が金属製である調理庫壁面の外面に接触するように前記ケースを配置した構成とするとよい。
【0015】
この構成によれば、ケースの開口の周縁端部と調理庫の壁面との間からの磁束の漏れを軽減することができるので、ケース外部に配置された磁性金属製の部材が不所望に加熱されてしまうことを回避することができる。
【0016】
また本発明に係る加熱調理装置の一態様として、前記磁束通過部の温度を検知する温度検知手段と、該温度検知手段による検知温度に基づいて前記誘導加熱コイルに供給する電力を制御する制御手段と、を備える構成とすることができる。
【0017】
この構成では、例えば温度検知手段により検知された温度が所定値を超えると、制御手段は誘導加熱コイルに供給する電力を減少させる又は停止する。例えば鍋の空焚きや異常な長時間加熱などが発生すると磁束通過部の温度が異常に上昇するおそれがあるが、そうした状況になると、誘導加熱コイルから発生する磁力が弱まる又は無くなるので、誘導加熱による磁束通過部の発熱が抑制される。それにより、磁束通過部自体の異常加熱のほか、磁束通過部からの熱伝導による誘導加熱コイルの異常な温度上昇やそれ以外の周辺の電気部品等の異常な温度上昇も防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明に係る加熱調理装置によれば、高周波加熱の際のマイクロ波の調理庫外部への漏洩を効果的に防止しつつ、調理庫内に収容された鍋等の被加熱物に対し効率的に磁束を貫通させて良好に加熱を行うことができる。これにより、調理時間を短縮することができるとともに、消費電力量を抑えて調理コストの削減にも寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、第1乃至第4発明の一実施例である加熱調理装置について図面を参照して説明する。
【0020】
図1は本実施例の加熱調理装置においてドアを開放した状態の外観斜視図、図2は上面平面図(a)及び正面平面図(b)、図3は図2中のA−A’矢視線概略縦断面図である。
【0021】
図1、図2に示すように、この加熱調理装置は略直方体形状の筐体1を有し、筐体1の内部には前面が開放された調理庫3が形成されている。調理庫3の前面開口は横開き式のドア2により開閉される。このドア2の中央部2aにはマイクロ波漏洩防止用のパンチング板と調理庫3内部を透視可能な耐熱ガラスとが設置され、またドア2の周囲には、ドア2の閉鎖時に調理庫3の前面開口周囲枠部3fと接触して調理庫3内のマイクロ波が外部に漏洩するのを防止するマイクロ波漏洩防止構造が設けられている。また、筐体1の前面上部でドア2の閉鎖時に隠れない位置に、複数の操作キーが配置されたキー入力部11とセグメントLCDなどによる表示部12とを有する操作パネルが配設されており、調理者はキー入力部11で各種の加熱調理条件や運転開始・停止などを指示し、表示部12にはそうした加熱調理条件や運転残り時間などが表示されるようになっている。また、筐体1の前面下部でドア2の下側には、後述する筐体1内の各部を冷却するための外気を取り込むための吸気口4が横に広く形成されている。
【0022】
図3に示すように、調理庫3は、壁面となる後面部3a、天面部3b、底面部3c、左側面部3d、右側面部3eを有する略直方体箱形状であり、前述のように前面開口がドア2により閉鎖されるとほぼ密閉状態となる。調理庫3の各壁面はそれぞれが別部材である場合と複数の壁面が一体になった部材(例えばコ字形状の板部材)を用いる場合とが考えられるが、いずれにしても、スポット溶接により固着されることで前面部を除く各壁面が一体化された箱状体とされている。この調理庫3を構成する一体化された部材が本発明における壁面部材である。調理庫3内には、図示するように、例えば内部に調理対象である食品91が収容された容器90が収納される。本加熱調理装置では、この食品91を加熱調理するために、電子レンジ調理のための高周波(マイクロ波)加熱手段と、第1及び第3発明における発熱体としての容器90を加熱して間接的に食品91を調理するための誘導加熱手段とが併設されている。
【0023】
即ち、高周波加熱手段として、調理庫3の後面部3aの後方上部にはマイクロ波を発生するマグネトロン5が設置され、マグネトロン5で発生したマイクロ波は筐体1内上部を前方に延伸する導波管6内を通って伝播し、調理庫3の天面部3bに設けられたマイクロ波拡散室7にまで案内される。マイクロ波拡散室7内にはアンテナ駆動モータ8により略水平面内で回転駆動される放射アンテナ9が設けられ、これによりマイクロ波は図3中の点線矢印で示すように調理庫3の天面部3bの給電口から該調理庫3内に拡散されながら放射される。このマイクロ波の作用によって容器90内の食品91は加熱調理される。
【0024】
なお、調理庫3の天面部3bは水平ではなく、後方に向かって下がるように傾斜状に設けられている。これにより、調理庫3内で発生した水蒸気が天面部3bで結露した場合に、その結露水は天面部3bを伝って後方側に流れる。そのため、容器90や食品を出し入れする際に水滴が調理者の手に掛かりにくくなっている。
【0025】
一方、誘導加熱手段として、調理庫3の底面部3cの下方には容器90自体を誘導加熱するための誘導加熱コイル82がケース81内に収容された状態で略水平面内に設置されており、後述するインバータ回路から誘導加熱コイル82に高周波電流が供給されると交番磁束が発生し、その磁束は底面部3cを通過して調理庫3内に侵入し、例えば磁性金属で形成された容器90の底部を横切る。すると、その交番磁束の誘導作用によって容器90の底部に渦電流が誘起され、ジュール熱により該容器90は高温になり、その容器90内に収容されている食品91は加熱調理される。この誘導加熱コイル82を含む誘導加熱ユニットと調理庫3の底面部3cの構造については後で詳述する。
【0026】
図4は本実施例の加熱調理装置の電気系構成図である。図4に示すように、制御の中心である主制御部20はCPUを中心に構成されており、主制御部20には、キー入力部11よりキー入力信号が、ドアスイッチ14よりドア2の開閉状態を認識するドア開放検知信号が、温度センサ86より底面部3cの一部を構成するパンチング板の温度検知信号が入力される。また、主制御部20は、誘導加熱(IH)駆動部18を介して誘導加熱用インバータ回路(IHインバータ回路)24を駆動し、このインバータ回路24の構成の一部である上記誘導加熱コイル82に高周波電流を供給する。また、主制御部20は高周波加熱(EM)駆動部19を介して高周波加熱用インバータ回路(EMインバータ回路)25を駆動し、駆動電力を上記マグネトロン5に供給してマイクロ波を発生させる。
【0027】
電源回路23は電源スイッチ231、高周波加熱/誘導加熱に共通であるノイズフィルタ232、誘導加熱及び高周波加熱にそれぞれ独立な整流回路233、234などを含み、商用交流電源22から供給される例えば200Vの交流電力から変換された直流電力を誘導加熱用インバータ回路24及び高周波加熱用インバータ回路25に供給する。電源回路23から直流電源回路26を経て駆動電力を受ける主制御部20は、負荷駆動部21を介して、上記アンテナ駆動モータ8のほか、3つの冷却用のファンモータ、即ちEM冷却用ファンモータ16、IH冷却用ファンモータ17、及びコイル冷却用ファンモータ84の動作をそれぞれ制御する。さらにまた表示部12に対し調理コースの設定情報や運転状況などについての表示制御信号を出力して表示を行わせ、必要に応じてブザー13を鳴動させる。後述するように、EM冷却用ファンモータ16は主として高周波加熱用インバータ回路25を冷却するためのものであり、IH冷却用ファンモータ17は主として誘導加熱用インバータ回路24を冷却するためのものであり、コイル冷却用ファンモータ84は主として誘導加熱コイル82を冷却するためのものである。
【0028】
主制御部20は運転プログラムが格納されたROMを備えており、この運転プログラムをCPU上で実行する過程で、上記のような各種の入力信号により調理者の操作や本機器の動作状態を監視しながら上記各部の動作を制御する。
【0029】
次に、本実施例の加熱調理装置の特徴の1つである誘導加熱ユニットの構造と調理庫3の底面部3cの構造とについて、図7〜図13により説明する。図7は調理庫3の底面部3cとその下方に位置する誘導加熱ユニット80の分解図、図8は調理庫底部70の組立構造図、図9は誘導加熱ユニット80の組立構造図、図10は縦断面構造図である。
【0030】
図7に示すように、調理庫3の底面部3cを形成する調理庫底部70の下方には一体化された誘導加熱ユニット80が設置され、一方、調理庫底部70の上には食品を収容した容器を置くための載置板60が載せられる。載置板60は、誘導加熱のために磁束を通過させるものである必要がある一方、マイクロ波により高周波加熱されにくいように低損失の誘電体材料である必要がある。また、高温になる容器に直接接触するため、耐熱性も必要である。そこで、載置板60は例えば結晶ガラスから成るものとすることができる。この載置板60には被加熱物を載置する位置が窪んだ略円形状の凹部61が形成されており、この凹部61は誘導加熱コイル82と同軸である。
【0031】
図8に示すように、調理庫底部70は、調理庫3の底部を成す円形状の大きな開口が形成されたステンレス(SUS304)製の底板71に、本発明における磁束通過用板部材及び磁束通過部であるパンチング板72及び底板金具73が取り外し可能に装着された構造を有している。具体的には、本発明における枠板に相当するステンレス(SUS304)製の底板金具73は円環形状、所定径の小孔が多数穿孔された同じくステンレス製のパンチング板72は円形状であり、この両者はスポット溶接等の強固な固着方法によって一体化されている。底板71及び底板金具73の板厚は0.5mmであってその剛性は高いが、パンチング板72は磁束の通過効率を高めるために0.1mmと薄い板厚とされている。このようにパンチング板72は薄くその剛性は低いものの、肉厚の底板金具73の剛性は高いため、この底板金具73の部分を底板71に固定することにより、両者の固定部分の強度を十分に高くすることができる。なお、底板71は調理庫3の底面部3cを形成しており、図7、図8では一つの部材として記載してあるが、前述したように後面部3aや側面部3d、3eとスポット溶接により固着され、全体が調理庫3を構成する一つの壁面部材になっている。
【0032】
上述したようにパンチング板72は誘導加熱コイル82から発生する磁束を通過させる一方、後述するように調理庫3内に供給されるマイクロ波を阻止する機能を有する。このような磁束の通過効率の条件は、主としてパンチング板72の開口率と板厚とによって決まり、一方、マイクロ波の通過阻止条件は、主としてパンチング板72の小孔の径と板厚とによって決まる。したがって、こうした要素を適宜に設定する必要がある。ここでは、1.4mm径の小孔を1.7mm間隔で設けたものを使用している。但し、板厚が薄い条件の下では必ずしも小孔が形成されていなくても、磁束は通過し得る。
【0033】
また、パンチング板72の径はその下方の誘導加熱コイル82の外径よりも大きく、実際には適度な余裕を以て大きく形成されている。これにより、誘導加熱コイル82から発生する磁束により底板71や底板金具73が不所望に加熱されることを防止できる。
【0034】
この加熱調理装置では、パンチング板72が破れ等の損傷を生じた場合に底板71を交換することなくパンチング板72のみ(厳密にはパンチング板72と底板金具73とが一体化された磁束通過用板部材)を容易に交換できるような取付け構造を採用している。その点について図11、図12により説明する。図11、図12は底板金具73と底板71との取付構造の縦断面図であり、図11は固定部75、図12は圧接部78である。取付構造は底板金具73の円周方向に略等角度間隔で36箇所設けられ、固定部75と圧接部78とが交互に設けられている。この取付構造はマイクロ波の漏洩を防止するために、マイクロ波の波長の1/4以下にする必要があり、一般的に使用するマイクロ波の波長は約120mmであるため取付構造の間隔は30mm以下に設定されている。
【0035】
図11(a)に示すように、固定部75では、ネジ棒76aが下方向に突出するように溶接ボルト76が底板71に溶接等により固着されている。これに対向する底板金具73にはネジ穴73aが穿孔されており、このネジ穴73aにネジ棒76aを挿通し、下方からネジ棒76aにナット77を螺入して締めることにより、 図11(b)に示すように、パンチング板72と一体になった底板金具73を底板71に装着する。溶接ボルト76は底板71に固着されているため、上述のようにナット77を締める際にボルトが回らないように保持する必要がなく、ナット77の締め付け作業時の作業効率を高めることができる。
【0036】
一方、図12(a)に示すように、圧接部78では、底板71の下面が平面であるのに対し、底板金具73には凸部(ダボ)73bが形成されている。前述のように周方向に隣接する固定部75での固定が成された状態では底板71の下面と底板金具73の上面とが接触しているから、図12(b)に示すように圧接部78では底板金具73の凸部73bの上面が底板71の下面に強く押し当てられる。これにより、両者の接触面の高い密着性が確保される。
【0037】
上記固定部75は溶接ボルト76を底板71に固着する作業やナット77を締め付ける作業が必要であるために手間が掛かるが、圧接部78については作業の手間が掛からない。即ち、36箇所の取付構造のうち、その半分を固定部75として残りを圧接部78とすることにより、作業の手間や部品のコストを減らしながら底板71と底板金具73との間でマイクロ波の漏洩を生じないような間隔での密着性を確保し、これによりマイクロ波の漏洩を確実に防止することができる。
【0038】
図9に示すように、誘導加熱ユニット80は、上面が開放されたケース81の内側に、コイル冷却用ファンモータ84やこれにより回転駆動されるファンを含むコイル冷却ファンユニット、絶縁断熱板83上に載置された平板渦巻き状に巻回されて成る誘導加熱コイル82などが収容され、その誘導加熱コイル82の上方に絶縁体としての薄いマイカ板85が固定された構成を有している。即ち、ケース81内に上記のような部品が一体化されている。ケース81はポリプロピレン(PP)樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネートアクリロニトリルブタジエンスチレン(ポリカABS、PC/ABS)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、フェノール樹脂などの樹脂から形成され、その外面及び上縁端部81aは金属メッキ処理されている。
【0039】
図3に示すように、誘導加熱ユニット80が底面部3cの下方に設置される際に、ケース81の上縁端部81aは底板71の下面に接触した状態となるが、前述のようにケース81の上縁端部81aには金属層が形成されているため、両者の間の導電性が確保され、その隙間を介してのマイクロ波の漏洩を防止することができる。即ち、調理庫3内に放射されたマイクロ波の一部がパンチング板72を通り抜けて来たとしても、誘導加熱ユニット80の外側には漏洩しないので、周囲に対する不要輻射を一層軽減することができる。
【0040】
また図9に示すように、マイカ板85の上にはバネ87を介して温度センサ86が設けられており、誘導加熱ユニット80が底面部3cの下方に設置されると、バネ87の付勢力により温度センサ86は上方のパンチング板72の下面に押し付けられて密着する。これにより、温度センサ86はパンチング板72の温度を正確に検出することができる。
【0041】
なお、図7及び図10に示すようにパンチング板72の上には絶縁体であるマイカ板74がスペーサとして配置されており、これにより、パンチング板72と載置板60との間の間隙の距離が一定になるように配慮されている。このような配慮は、パンチング板72と載置板60との間の間隙の距離の変化が誘導加熱時の加熱効率に影響を与えるためである。
【0042】
図10に示すように、載置板60の上には被加熱物である容器90が載置されるから、載置板60の上面が容器90の底面であるとみなせる。このとき、加熱源である誘導加熱コイル82の上面と載置板60上面との間の距離(厚さ方向の距離)をL、パンチング板72と載置板60上面との間の距離をlとして考える。なお、パンチング板72は板厚が0.1mmと薄いのでその上面又は下面(或いは中心)のいずれからの距離lを考えても大差ないが、図10ではパンチング板72の上面からの距離としている。
【0043】
誘導加熱コイル82から発生する交番磁束が容器90を通過することにより容器90は発熱するわけであり、交番磁束の磁力は誘導加熱コイル82に近いほど強いから、加熱効率だけを考えると誘導加熱コイル82は容器90にできるだけ近いことが好ましい。しかしながら、誘導加熱コイル82は高周波電流に対する抵抗損によりそれ自体が発熱するし、パンチング板72は磁束の一部が板部分を貫通することで発生する渦電流損によりそれ自体が発熱する。したがって、これらの放熱を考える必要があって、そのためには図示するように誘導加熱コイル82とマイカ板85との間に適度な空隙(コイル冷却風路88)を設け、またマイカ板85とパンチング板72との間にも適度な空隙(パンチング板冷却風路79)を設ける必要がある。こうしたことから、誘導加熱コイル82上面と載置板60上面との間の距離Lは或る程度以上確保する必要がある。そこで、この実施例の加熱調理装置では、この距離Lを或る値に設定した条件の下で、できるだけ加熱効率が高くなるような構成を採用している。
【0044】
図13は、距離Lを8.5mm、11.7mmに設定した場合の、誘導加熱コイル82とパンチング板72との間の距離L−lと加熱効率との関係を実測した結果を示すグラフである。パンチング板を挿入することによりパンチング板が無い場合に比べて加熱効率が低下するのは当然であるが、距離Lが同一であってもパンチング板72と載置板60上面との間の距離lを大きくしてゆくと加熱効率の下がり方が大きいことが分かる。これは、誘導加熱コイル82から発生する磁束の磁力が強い領域にパンチング板72を配置すると、パンチング板72での損失がそれだけ大きくなって加熱効率を全体的に低下させるものと考えられる。そこで、ここではパンチング板72を、誘導加熱コイル82の上面と載置板60上面との間の中間点よりも載置板60に近い位置に配置する、つまり距離lがL/2以下になるように配置している。これにより、マイクロ波遮蔽のためにパンチング板72を設けたことによる誘導加熱の効率の低下の影響をできるだけ小さく抑えることができる。
【0045】
なお、載置板60と誘導加熱コイル82との間でパンチング板72を載置板60に近い側に片寄らせることにより、パンチング板72と誘導加熱コイル82との間が相対的に広がるから、前述のコイル冷却風路88やパンチング板冷却風路79を確保し易くなり、誘導加熱コイル82やパンチング板72の放熱を促進するのにも有利である。
【0046】
一方、l≦L/2という条件では、Lを小さくするとL−lも小さくなるが、本願発明者の検討によれば、このL−lの値は調理庫3内からのマイクロ波の漏洩度合に影響を与えることが判明している。これは、誘導加熱コイル82をパンチング板72に近づけすぎると、マイクロ波が通過し易くなるためである。そこで、マイクロ波の漏洩を増加させないためにL−lを3mm以上に設定している。
【0047】
上記構成の誘導加熱ユニットにおいて、主制御部20の制御の下に動作する誘導加熱駆動部18によりインバータ回路24から誘導加熱コイル82に高周波電流が流されると交番磁束が発生し、その磁束はパンチング板72及び載置板60を通過して調理庫3内に侵入し、少なくとも底部が磁性金属で形成された容器90の底部を横切る。その誘導作用によって容器90の底部に渦電流を誘起させ、ジュール熱により該容器90を加熱し、その容器90内に収容されている調理対象の食品91を加熱する。上述したように誘導加熱コイル82とパンチング板72と載置板60との関係が適切に定められているため、容器90を効率的に誘導加熱して効率的な調理を達成できる。また、上述したように底板71に対してパンチング板72が一体化された底板金具73が着脱可能であるため、パンチング板72が損傷した場合に、メーカーのサービス担当者はナット77を外してパンチング板72を容易に交換することができる。
【0048】
また本実施例の加熱調理装置では、誘導加熱コイル82とマグネトロン5とを駆動するインバータ回路24、25が独立に設けられているため、誘導加熱運転と高周波加熱運転とを同時に行うことができ、それ以外に両者の交互の運転やそれぞれの単独の運転も可能である。こうしたインバータ回路24、25は電力用スイッチング素子(例えば電力用FETなど)を含んでおり、動作時の発熱量が大きいために放熱を適切に行う必要がある。また、誘導加熱コイル82は磁束を発生させるものであるが、抵抗損や誘導加熱による発熱体からの輻射熱によってそれ自体の温度が高くなるため、これも適切に放熱させる必要がある。さらにまた、前述したように誘導加熱コイル82やパンチング板72自体もかなり発熱する。さらにまた、調理に伴い調理庫3内には水蒸気等が充満することがあるため、調理庫3内の空気を排気することも必要である。
【0049】
そこで本実施例の加熱調理装置では、上記のように冷却や排気のために、EM冷却用ファンモータ16を含む第1ファンユニット30、IH冷却用ファンモータ17を含む第2ファンユニット31、コイル冷却用ファンモータ84を含む第3ファンユニット32の3つを備えている。これら3つのファンユニット30、31、32の空気採り入れ口はいずれも筐体1の前面下部に設けられている吸気口4である。第3ファンユニット32は上述したようにケース81内に誘導加熱コイル82と一体化された構成であり、既に述べた通りである。
【0050】
コイル冷却用ファンモータ84が駆動されると第3ファンユニット32のファンが回転し、吸気口4から吸い込んだ外気を上記のコイル冷却風路88やパンチング板冷却風路79に送る。これにより、誘導加熱コイル82とパンチング板72との発熱を抑えることができる。
【0051】
一方、第1及び第2ファンユニット30、31の構成と動作を図4、図5により説明する。図4は筐体を取り外した状態の背面側の斜視図、図5は図4において通風路カバーを取り除いた状態を示す斜視図である。
【0052】
調理庫3の左側面部3dと筐体1の左側面部との間、及び調理庫3の右側面部3eと筐体1の右側面部との間はそれぞれ通風路となっており、筐体1内の後部の左右には上下に延伸する通風路カバー33、35が設けられている。通風路カバー33内には高周波加熱用インバータ回路25が設けられ、そのカバー33の下部には第1ファンユニット30が設けられている。即ち、第1ファンユニット30のEM冷却用ファンモータ16が駆動されると、これにより回転するファンにより吸気口4から吸い込んだ外気が通風路カバー33内を上昇し、高周波加熱用インバータ回路25を冷却する。そして、暖まった空気は上部に配設された排気ダクト34を通して後方に運ばれ、筐体1の背面に形成されている排気口から機外へと排出される。
【0053】
通風路カバー35内には誘導加熱用インバータ回路24が設けられ、そのカバー35の下部には第2ファンユニット31が設けられている。即ち、第2ファンユニット31のIH冷却用ファンモータ17が駆動されると、これにより回転するファンにより吸気口4から吸い込んだ外気が通風路カバー35内を上昇し、誘導加熱用インバータ回路24を冷却する。この空気は上部に配設された排気ダクト36を通して前方に運ばれ、図示しない開口を通して調理庫3内に供給される。即ち、第1ファンユニット30は専らこの回路25を冷却するために使用されるが、第2ファンユニット31は回路24の冷却だけでなく調理庫3内の汚れた空気の排気にも利用される。なお、調理庫3の左側面部3dには多数の排気孔が形成されており、調理庫3内の空気はこの排気孔を経て、左側面部3dの外側に配設された図示しない排気ダクトを通して機外へと排出される。
【0054】
このように本実施例の加熱調理装置では、それぞれ独立に駆動可能な誘導加熱手段と高周波加熱手段のインバータ回路をそれぞれ冷却するファンを備えるので、各インバータ回路の放熱が十分に促進され、連続的な使用が可能となっている。
【0055】
ところで、上述のように第3ファンユニット32による送風によりパンチング板72と誘導加熱コイル82との放熱は促進されるものの、例えば容器90が空焚き状態であったり載置板60のほぼ全体を覆うような鉄板などが収容されて長時間の加熱が連続されたりした場合に、パンチング板72が異常に加熱し、これに伴って誘導加熱コイル82やその周囲の部材なども異常に加熱されて故障等の原因となるおそれがある。そこで、こうした異常加熱を防止するために、主制御部20は次のような制御を行う。
【0056】
即ち、誘導加熱が行われているときに、主制御部20は定期的或いは非定期的に温度センサ86による検知温度を読み込み、その温度が予め決めておいた上限温度を越えているか否かを判定する。上限温度を越えていなければそのまま運転を継続するが、もし上限温度を越えている場合には、誘導加熱駆動部18を介して誘導加熱コイル82に供給する交流波電流を減らすようにインバータ回路24を制御する。或いは、誘導加熱コイル82に供給する交流波電流を一旦停止してもよい。これにより、誘導加熱コイル82から発生する磁束が減るか或いは無くなるので、パンチング板72の温度上昇も抑制される。また、インバータ回路24を制御して駆動電力を減らす代わりに、コイル冷却用ファンモータ84の回転速度を上げることにより、冷却効果を高めるようにしてもよい。
【0057】
なお、本実施例の加熱調理装置において調理を行う場合、高周波加熱による調理のみであれば調理庫3内の食品を収容すればよいが、誘導加熱による調理の場合には、誘導加熱コイル82の直上に容器90が位置するようにしないと良好な加熱調理が行えない。そのために、上記実施例では、載置板60に凹部61を設けていたが、同様の目的のために載置板60上の不所望の位置に容器が置きにくいような突起を設けたり、容器自体にも載置板60の形状と嵌合するような凹凸を設けても良い。また、載置板60とは別部材であっる容器位置指示ガードなどを載置板60の上に置き、それに合わせて容器90を置けるようにしてもよい。
【0058】
また、調理に使用する容器90としては、図10に示すように、その把手90aをシリコーンゴム製の保護カバー90bで被覆した構成のものを使用するとよい。シリコーンゴムは耐熱性が高く、マイクロ波にも影響を受けにくい。さらに金属製である調理庫3の壁面に近づいても放電が起こりにくい。
【0059】
また、上記実施例はいずれも本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜、変形、修正又は追加などを行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。例えば、上記実施例では、誘導加熱により食品を収容した容器を加熱しているが、容器の代わりに例えば金属板などの発熱体を配置し、この発熱体を誘導加熱して調理庫内の温度を上げたり、発熱体に滴下又は供給した水を加熱して水蒸気にしたり、する等の構成も可能である。また、一般に上記のように容器を誘導加熱する場合には誘導加熱コイルを調理庫の底壁面の下に設ける構成が適当であるが、特に上述のように容器以外の発熱体を誘導加熱する場合に、誘導加熱コイルを調理庫の他の壁面、天面、後面、側面などの外側に配置し、それに対応して磁束通過用のパンチング板を配設するように変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施例による加熱調理装置においてドアを開放した状態の外観斜視図。
【図2】本実施例の加熱調理装置の上面平面図(a)及び正面平面図(b)。
【図3】図2中のA−A’矢視線断面図。
【図4】本実施例の加熱調理装置の電気系ブロック構成図。
【図5】本実施例の加熱調理装置の筐体を取り外した状態の背面側の斜視図。
【図6】図4において通風路カバーを取り除いた状態を示す斜視図。
【図7】調理庫の底面部と誘導加熱ユニットの分解図。
【図8】調理庫底部の組立構造図。
【図9】誘導加熱ユニットの組立構造図。
【図10】誘導加熱ユニット及び調理庫底面部の縦断面構造図。
【図11】底板金具と底板との取付構造のうちの固定部の縦断面図。
【図12】底板金具と底板との取付構造のうちの圧接部の縦断面図。
【図13】誘導加熱コイルとパンチング板との間の距離L−lと加熱効率との関係を実測した結果を示すグラフ。
【符号の説明】
【0061】
1…筐体
2…ドア
3…調理庫
3a…後面部
3b…天面部
3c…底面部
3d…左側面部
3e…右側面部
3f…前面開口周囲枠部
4…吸気口
5…マグネトロン
6…導波管
7…マイクロ波拡散室
8…アンテナ駆動モータ
9…放射アンテナ
16…EM冷却用ファンモータ
17…IH冷却用ファンモータ
18…誘導加熱駆動部
19…高周波加熱駆動部
20…主制御部
21…負荷駆動部
22…商用交流電源
23…電源回路
231…電源スイッチ
232…ノイズフィルタ
233、234…整流回路
24…誘導加熱用インバータ回路
25…高周波加熱用インバータ回路
26…直流電源回路
30…第1ファンユニット
31…第2ファンユニット
32…第3ファンユニット
33、35…通風路カバー
34、36…排気ダクト
60…載置板
70…調理庫底部
71…底板
72…パンチング板
73…底板金具
73a…ネジ穴
73b…凸部
74…マイカ板
75…固定部
76…溶接ボルト
76a…ネジ棒
77…ナット
78…圧接部
79…パンチング板冷却風路
80…誘導加熱ユニット
81…ケース
82…誘導加熱コイル
83…絶縁断熱板
84…コイル冷却用ファンモータ
85…マイカ板
86…温度センサ
87…バネ
88…コイル冷却風路
90…容器
90a…把手
90b…保護カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略密閉可能な箱形状の調理庫と、該調理庫内に収容された食品を高周波加熱するためのマイクロ波を発生するマグネトロンとそのマイクロ波を前記調理庫内に導く導波管とを含む高周波加熱手段と、前記調理庫内に収容された発熱体を誘導加熱するための交番磁束を発生する誘導加熱コイルを含む誘導加熱手段と、を具備する加熱調理装置において、
前記誘導加熱コイルは前記調理庫のいずれかの壁面の外側に設置され、該壁面の少なくとも一部は前記誘導加熱コイルから発生する磁束を通過させる一方、マイクロ波の通過を阻止する磁束通過部を有し、さらに該壁面の磁束通過部の内側に、低損失の誘電体材料であって且つ耐熱性を有する材料から成る板部材が配置され、該板部材内面から前記磁束通過部までの厚さ方向の距離lと前記板部材内面から前記誘導加熱コイル内面までの厚さ方向の距離Lとの関係がl≦L/2であって、且つL−l≧3mmに設定されていることを特徴とする加熱調理装置。
【請求項2】
前記誘導加熱コイルを調理庫壁面に向いた面が開口した扁平箱形状の樹脂製のケース内に収容し、該ケースの外面及び前記開口の周縁端部には金属層を形成し、その周縁端部が金属製である調理庫壁面の外面に接触するように前記ケースを配置したことを特徴とする請求項1に記載の加熱調理装置。
【請求項3】
前記磁束通過部の温度を検知する温度検知手段と、該温度検知手段による検知温度に基づいて前記誘導加熱コイルに供給する電力を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−127896(P2011−127896A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70152(P2011−70152)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【分割の表示】特願2005−326933(P2005−326933)の分割
【原出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】