説明

動物の飼育舎管理方法とオゾン水製造装置

【課題】 薄いオゾン水は消毒効果が不十分である。濃いオゾン水はオゾン臭がして呼吸器への刺激が強い。
【解決手段】 動物の飼育舎の屋内天井側に配置した噴霧装置により、前記動物を飼育中の前記飼育舎内部に、初期濃度が3ppm以上であって、大気中で放置したときのオゾンガス濃度の半減期が5分以上の特定オゾン水を噴霧する処理を、所定のタイミングで繰り返す。
【効果】 飼育舎内部を霧状に噴霧されたオゾン水で冷却することができる。また、加湿することもできる。霧状の小粒のオゾン水滴が、天井側から屋内をゆっくり降下するとき、気中の悪臭成分を分解して脱臭する効果がある。霧状のオゾン水を吸い込むことで、動物の鼻や呼吸器が殺菌消毒される。オゾンの放出速度が十分緩やかなため、呼吸器への刺激が無い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養鶏、畜産その他の動物用飼育舎を、特定の性質を持つオゾン水を用いて消毒等するための用途に使用される、動物の飼育舎管理方法とオゾン水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、養豚その他の動物の飼育舎にいて、動物の洗浄殺菌や脱臭等のための処理に、オゾンやオゾン水を利用する技術が公開されている(特許文献1)(特許文献2)。
【特許文献1】特開2002−306086号公報
【特許文献2】特開2005−151803号公報
【特許文献3】US6457485号 米国特許公報
【特許文献4】特開2004−330050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
上記の文献記載のように、オゾン水は殺菌消毒の効果があるものの、通常の方法で製造したものは、大気中に放置すると急激にオゾンを放出してしまう。高濃度のオゾン水を使用すると、急激にオゾンを放出してしまうから、大気中のオゾンガス濃度が非常に高くなる。このオゾンは、動物の呼吸器を傷めて健康を害するおそれがある。気中に2ppm以上の濃度のオゾンが存在すると有害といわれている。特許文献等に記載された10ppmを超えるような高濃度のオゾン水は実用性がない。一方、低濃度のオゾン水では、散布等をすると数十秒で水になってしまい、対象物の十分な殺菌や消臭効果を期待することができない。
本発明は以上の点に着目してなされたもので、所定の処理により製造されて、特別の物性を持つ特定オゾン水を使用した、動物の飼育舎管理方法とオゾン水製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の各実施例においては、それぞれ次のような構成により上記の課題を解決する。
〈構成1〉
動物の飼育舎の屋内天井側に配置した噴霧装置により、上記動物を飼育中の上記飼育舎内部に、初期濃度が3ppm以上であって、大気中で放置したときのオゾンガス濃度の半減期が5分以上の特定オゾン水を噴霧する処理を、所定のタイミングで繰り返すことを特徴とする動物の飼育舎管理方法。
【0005】
飼育舎内部を霧状に噴霧されたオゾン水で冷却することができる。また、加湿することもできる。さらに、霧状の小粒のオゾン水滴が、天井側から屋内をゆっくり降下するとき、気中の悪臭成分を分解して脱臭する効果がある。また、霧状のオゾン水を吸い込むことで、動物の鼻や呼吸器が殺菌消毒される。既存のオゾン水はオゾン臭がするが、特定オゾン水はオゾンの放出速度が十分緩やかなため、呼吸器への刺激が無い。
【0006】
〈構成2〉
構成1に記載の動物の飼育舎管理方法において、上記噴霧装置は、粒径1mm以下のオゾン水滴を噴霧し、上記特定オゾン水は、気温摂氏35度以下の部屋で、初期濃度が5ppm以下であって、大気中で放置したときのオゾンガス濃度の半減期が5分以上の特定オゾン水であることを特徴とする動物の飼育舎管理方法。
【0007】
既存のオゾン水は、噴霧したときに水とオゾンがすぐに分離する。ここで使用する特定オゾン水は、気温摂氏35度以下の部屋に粒径1mm以下で噴霧される。このとき、初期濃度が5ppm以下であって、大気中で放置したときのオゾンガス濃度の半減期が5分以上の特性を持つオゾン水を使用する。噴霧してもオゾンガスの放出速度が緩やかで、強いオゾン臭を発しない。また、降下後にオゾン水による殺菌、消毒、消臭等の効力を失わない。
【0008】
〈構成3〉
動物の飼育舎の屋内天井側に配置したシャワーノズルにより、上記動物を飼育中の上記飼育舎内部に、上記動物に降りかかるように、床に降下した水中に初期濃度が3ppm以上であって、大気中で放置したときのオゾンガス濃度の半減期が5分以上の特定オゾン水を散水する処理を、所定のタイミングで繰り返すことを特徴とする動物の飼育舎管理方法。
【0009】
動物にオゾン水を散水すると、動物の体を冷やし、洗浄し、皮膚の殺菌処理をすることができる。同時に、自動的に動物にオゾン水を飲ませることができ、動物の口内の殺菌処理をすることができ、消化器系の疾患の予防ができる。また、動物の飼育舎の屋内全般に均一にオゾン水を散水すると、飼育舎の床全体を消毒し、殺菌をして消臭処理をする効果がある。餌にかかっても毒性が無く腐敗も防止できる。急激にオゾンガス濃度が低下するオゾン水では、動物を洗浄した後で床を消毒する能力が不足する。
【0010】
〈構成4〉
構成1乃至3に記載の動物の飼育舎管理方法において、上記特定オゾン水は、気温摂氏35度以下の部屋に放置したとき、初期濃度が3.5ppm以上であって、オゾンガス濃度が1分以内に1ppm以上減少する状態を脱したものであることを特徴とする動物の飼育舎管理方法。
【0011】
気温摂氏35度以下の部屋に放置したとき、初期濃度が3.5ppm以上であって、オゾンガス濃度が1分以内に1ppm以上減少する状態を脱したものは、噴霧したりサンプリングしたときに、十分にオゾン臭を低く抑えることができる。
〈構成5〉
貯留タンクに貯留されたオゾン水を取り出す循環パイプと、循環パイプにより取り出したオゾン水にオゾンガスを混合する混合装置と、混合装置からオゾン水を受け入れてオゾン水を一時貯留する一時貯留タンクと、この一時貯留タンクからオゾン水を貯留タンクに戻す戻りパイプとを備え、一前記時貯留タンクの内部にはオゾン水の流路を設け、この流路を流れるオゾン水に乱流を発生させる障壁部材を配置した攪拌部と、この攪拌部に続く流路でオゾン水を一定の方向に押し流す整流部を配置し、少なくとも前記攪拌部の上方の水面上部に、ガス溜まりを設けたことを特徴とするオゾン水製造装置。
【0012】
オゾンガスを水に混合した後に、オゾン水に乱流を発生させて攪拌することにより、半減期の長いオゾン水の生産性を高める。さらに、整流部を設けることでオゾンガスをオゾン水中に均一に分散させることができる。同時に、攪拌によりオゾン水に十分溶け込まないオゾンガスをガス溜まりを通じて排出することができる。従って、オゾン水を大気中に取り出したときに、急激に放出されるオゾンの量を減少させ、高濃度のオゾン水を安全に利用できる。
〈構成6〉
構成6に記載のオゾン水製造装置において、前記貯留タンクは円筒状の容器とされ、前記一時貯留タンクから前記オゾン水を前記貯留タンクに戻す戻りパイプは、オゾン水が貯留タンクの内部を円を描いて流れるように、その先端を、貯留タンクの円筒の接線方向に向けたことを特徴とするオゾン水製造装置。
【0013】
貯留タンクの内部でオゾン水を一定方向に流れるように保持することで、溶け込んだオゾンガスが放出されるのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を実施例ごとに詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、実施例1の方法を実施した動物の飼育舎断面図とオゾン水供給設備の概略図である。
図に示すように、飼育舎10には、例えば、豚等の動物20が飼育されている。この飼育舎10に隣接する土地や屋上に、オゾン水を貯留する貯留タンク11を配置する。この貯留タンク11には、濃度が調整され、さらにオゾンの特性を調整した特定オゾン水が貯留される。循環パイプ18は、貯留タンク11からオゾン水を混合装置15に供給するための配管である。循環パイプ18には温度センサ27とポンプ21とが設けられている。オゾンガス発生装置12とバルブ装置13と注入パイプ16とは、混合装置15に対してオゾンガスを供給するための系統である。なお、バルブ装置13には一時貯留タンク40で排出されたオゾンガスがガス抜きパイプ42を通じて供給される。混合装置15でオゾンガスを混合されたオゾン水は、連結パイプ24と一時貯留タンク40と戻りパイプ19を経て貯留タンク11に戻る。給水パイプ17は貯留タンク11の内部に水道水等を供給するパイプである。回収パイプ14は、貯留タンク11でオゾン水から放出されたオゾンガスをフィルタ56を通じて排出するパイプである。
【0016】
オゾンガス発生装置12は、空気中から酸素を分離し、この酸素をコロナ放電などによってオゾン化する装置である。この装置には、例えば、特許文献3等に記載されたものが利用できる。バルブ装置13は、オゾンガス発生装置12で発生されたオゾンと一時貯留タンク40の上部からガス抜きパイプ42を通じて回収されたオゾンガスを混合装置15に供給するためのものである。混合装置15は、貯留タンク11から循環パイプ18を通じて取り出したオゾン水に、バルブ装置13から供給されるオゾンガスを混入し、連結パイプ24を通じて一時貯留タンク40に送り込む装置である。
【0017】
なお、混合装置15には、例えば、特許文献4に記載されたようなバルブ装置を使用するとよい。貯留タンク11に貯留されたオゾン水を循環パイプ18を用いて取り出して、繰り返し新たなオゾンガスを混入することにより、オゾン水中のオゾンガス濃度を高める。なお、このとき、オゾン水中に十分溶解した微細な気泡となったオゾンガスは、そのままオゾン水中に保持され続ける。一方、大きな気泡のオゾンガスは、急激に空気中に発散する。このようなオゾンガスは、オゾン水の濃度を一時的に高めるものの、急速に空気中に発散するから、空気中のオゾンガス濃度を高め、強いオゾン臭の原因になる。そこで、貯留タンク11の上部へ排出パイプ14を通じて排出する。フィルタ56はオゾンガスを無害化するためのものである。。
【0018】
こうして、貯留タンク11の内部のオゾン水中に溶け込んで容易に気中に排出されないオゾンガスの濃度が高まる。その濃度は、後述するように調整される。こうして本発明による特定オゾン水が製造される。貯留タンク11には、送水パイプ29が取り付けられている。この送水パイプ29には、温度センサ27と送水パイプ29が設けられている。貯留タンク11中の特定オゾン水は、ポンプ21により送水パイプ29を通じて飼育舎10に送り込まれる。飼育舎10の天井部分には、フレーム25が設けられている。ここに、任意の数の噴霧装置26を固定しておく。この噴霧装置26に対し、ポンプ23を用いてオゾン水を供給する。なお、配管の各所に温度センサ27を配置して、オゾン水の温度を制御し、オゾンガス濃度の低下を防いでいる。
【0019】
オゾン水は、噴霧装置26により大気中に噴霧される。オゾン水30の霧は、動物の飼育舎10の内部をゆっくりと降下する。よく知られているように、気中に水を噴霧すると、気温を低下させることができる。例えば、夏の日中に飼育舎内の気温が上昇したとき、オゾン水を噴霧することで、飼育舎内の気温を数度以上低下させることができる。そこで、温度センサ33と電磁リレー22とを利用して、ポンプ21を間歇駆動する。例えば、気温が30度を超えたときに電磁リレー22を動作させてポンプ21を起動する。気温が27度に低下したときにはポンプ21を停止させる。
【0020】
一方、この霧は、飼育舎の上部からゆっくりと降下する。飼育舎10の内部には、強い臭気があり、害虫なども存在する。これが、オゾン水の霧によって分解され、あるいは、害虫が駆除される。さらに、この霧は動物20の体に付着し、体温を下げる。また、皮膚の表面の浄化にも寄与する。
【0021】
飼育舎の屋内天井側に配置した噴霧装置により特定オゾン水を噴霧すると、飼育舎全体に特定オゾン水の霧を行きわたらせることができる。飼育舎内部の空気の浄化を目的とするから、噴霧をする。初期濃度が3ppm以上であって、大気中で放置したときのオゾンガス濃度の半減期が5分以上の特定オゾン水は、噴霧してもオゾンガスの放出速度が緩やかで、強いオゾン臭を発しない。また、降下後にオゾン水による殺菌、消毒、消臭等の効力を失わない。しかも、その霧が動物の皮膚に付着し、あるいは鼻等に吸い込まれて殺菌や消毒の効果を示す。例えば、子豚の皮膚病を予防し、治癒を早める効果がある。実際に上記の装置によれば、初期濃度が3ppm〜4ppmのものを製造するのが最も経済性が高く、しかも、十分長い半減期を有するものを製造することができた。
【0022】
さらに、気温摂氏35度以下の部屋に粒径1mm以下で噴霧したとき、初期濃度が5ppm以下であって、大気中で放置したときのオゾンガス濃度の半減期が5分以上の特性を持つオゾン水を使用する。効率よく生産可能な濃度であること、動物に悪影響を及ぼさない適切な濃度であること、オゾンによる効果が実用的な範囲で持続することの条件を満たすのがこの範囲である。気温摂氏35度以下の部屋に粒径1mm以下で噴霧すると、オゾン水がオゾンガスを放出し易い過酷な条件になる。この条件で実用可能な濃度であって、かつ、長い半減期を有するものが好ましい。製造時濃度が5ppm〜7ppm程度のオゾン水では、濃度が5ppm近傍まで急激にオゾンを放出する。これは、従来のオゾン水に近い特性を示す。従って、オゾンガス濃度が5ppm以下になるまでオゾンガスを放出させて安定化させた後に噴霧器へ供給することが好ましい。また、飼育舎上部で濃度の高いオゾンガスを放出しても、これは、周辺の臭気性のガスと即座に反応する。従って、下の方にいる人や動物には影響しない。なお、もっと高濃度のオゾン水で半減期5分以上のものを生産しようとすると、処理時間が著しく長くなり、コストが上昇する。しかも、初期状態から一時的に空気中に放出されるオゾンガスの濃度が濃くなりすぎて、動物の飼育舎には適さない。
【実施例2】
【0023】
図2は、実施例2の方法を実施した動物の飼育舎断面図である。
この飼育舎10には、その天井側に配置されたフレーム25に多数のシャワーノズル28が固定されている。このシャワーノズル28からオゾン水31を散水する。流れ落ちたオゾン水31は動物20に降りかかる。また、その他のオゾン水は、床32の上に散布される。床の糞尿を殺菌して快適な環境を作る。糞尿に生み付けられた蠅の卵の孵化を阻止し蠅の発生を防ぐ。床のぬめりの原因になる有機物を分解して、滑りを無くす。シャワーを利用するのは、動物の体を直接強力に洗浄するためである。また、動物20は、流れ落ちたオゾン水31を飲用する。これによって動物の口中の殺菌ができる。動物の口中を殺菌し、さらに腸内細菌を安定させるので、下痢等が止まり、動物の食欲が増して健康が増進されるという効果もある。
【0024】
シャワーノズルにより、動物を飼育中の前記飼育舎内部に、動物に降りかかるように、床に降下させる。動物の洗浄を主目的とするものであるから、動物の存在する確立の高い場所をターゲットとするのが好ましい。床に降下したオゾン水中にも、床の消毒と消臭等に効果がある程度の濃度を維持することが好ましい。また、特定オゾン水は、気中にオゾンを放出する速度が遅いから、動物の呼吸器を痛めることがない。動物を世話する作業者にも害が無い。動物の体を冷やす効果もある。特定オゾン水を散水する処理は、噴霧装置の動作とは別のタイミングで実行されるように制御するとよい。
【0025】
図3と図4は、オゾン水の特性試験説明図である。
上記のような効果をもたらす特定オゾン水の性質を実証した。図に示すように、噴霧装置26から噴霧されたオゾン水30は、気中を降下して、皿34に受け入れられる。従来のオゾン水であって濃度の低いものも高いものも、この図に示すように噴霧装置26を用いて気中に噴霧すると、直ちにオゾンが水と分離する。従って、降下したオゾン水を皿34で集めて、オゾンガス濃度を測定するとほぼゼロppmである。噴霧したときの水の粒径が小さければ小さいほどオゾンガスは放出され易い。しかしながら、上記の特定オゾン水は、オゾンガスが水に十分溶解して微小な泡になっているので、噴霧されて降下した後も、一定量以上のオゾンガス濃度を呈する。これが動物の消毒などに寄与する。初期濃度が5ppmのオゾン水を図3に示すように霧状に散布したとき、皿34中のオゾン水のオゾンガス濃度は1.3ppmであった。また、同じ濃度のオゾン水を図4のようにシャワーで散布したとき、皿34中のオゾン水のオゾンガス濃度は3.4ppmであった。これらのオゾン水が、動物の体を洗浄したり、さらに、飼育舎の床の洗浄や、あるいは消毒、脱臭に寄与する。また、霧を散布したときの地上1.7mの大気中のオゾンガス濃度は0.42ppmであった。また、地上1mの大気中のオゾンガス濃度は0.43ppmであった。いずれも、基準値2ppmを大きく下回り、オゾン臭はほとんど無く、動物に無害な環境であった。
【0026】
図5は、特定オゾン水のオゾンガス濃度測定試験結果を示すグラフである。
図中のグラフの横軸は時間(単位秒)、縦軸はオゾンガス濃度(単位ppm)を示す。この測定値は、一定の口径を持つ皿にオゾン水を収容した状態で常温大気圧下で放置し、一定時間後の濃度測定を順次行うことで得られる。測定時の気温は摂氏32度湿度52%水温摂氏29度で、500mlのオゾン水の濃度をオゾン水濃度計で監視し、濃度の現象をほぼ連続的に測定したものである。オゾン水の初期濃度は5ppmであった。
【0027】
このグラフを見てわかるように、5ppmの特定オゾン水がオゾンガス濃度0ppmになるまで、18分5秒かかった。最初の1分間は、オゾンガス濃度が急激に低下して、3.8ppmまで下がった。その後、ゆっくりとオゾンガスを放出しながら、濃度を低下させた。その初期濃度に対する半減期は、5分で、3.8ppmに達してからその後の半減期は9分ほどあり、散布をしてもその後しばらくオゾンガス濃度を保持して消毒や殺菌をするのに十分な特性を示した。オゾン濃度の低下速度が遅いということは、空気中に放出するオゾンガスの濃度も低く、長時間消毒や消臭用のオゾン水として機能する。即ち、初期濃度が3.5ppm以上であって、オゾンガス濃度が1分以内に1ppm以上減少する状態を脱したものを使用すると、当初からオゾンガスの放出が少なく安全で効力の高いオゾン水による飼育舎管理が可能である。
【0028】
図6は、比較例のオゾン水のオゾンガス濃度測定試験結果を示すグラフである。
これは、従来の方法で製造した初期濃度3.2ppmのオゾン水であって、その他の測定条件は図5の実施例のものと変わらない。このオゾン水は、グラフを見てわかるように、3.2ppmのものがオゾンガス濃度0ppmになるまで、2分かかった。最初の1分間は、オゾンガス濃度が急激に低下して、1ppmまで下がった。その後約1分でオゾンガス濃度がゼロになったこれだけオゾンガス濃度が急激に低下すると、動物の飼育舎の中のオゾンガス濃度も一時的に高濃度になり、強いオゾン臭を感じさせる。この比較結果からも、動物の飼育舎用として、上記の特定オゾン水が最適であることが明確になった。
【0029】
畜産業界は人手不足で転業や廃業が進んでいる。仕事場の環境が悪く、作業者の定着率も悪いという問題をかかえる。特定オゾン水はこれらの問題を解決して、飼育舎のみならず、周辺の環境も改善する。特定オゾン水の噴霧により、特にアンモニアガスの臭気をすみやかに分解除去する。また、浮遊菌の殺菌効果により、動物の健康が保持され、作業者の作業環境が改善される。また、上記の特定オゾン水を手洗い用として使用できる。作業前後の先願、うがい、にも利用できる。例えば、お産の介護等、動物の世話をするときの器具や手の洗浄殺菌に役立ち、作業後の手や体の臭いを取るのにも非常に効果的である。即ち、上記の条件を満たす特定オゾン水は、噴霧とシャワーと手洗い等に広く利用でき、動物の飼育舎への利用はきわめて有用と言える。
【実施例3】
【0030】
図7は、混合装置の実施例縦断面図である。
以下、上記の実施例に適するオゾン水製造装置の具体例について説明する。
混合装置15は、循環パイプ18から吸入したオゾン水と注入パイプ16から吸入したオゾンガスとを混合するためにベンチュリー管36を備える。ベンチュリー管36の下流には、拡径部37が設けられている。ここには、オゾン水の流れを妨げてオゾン水が衝突するように、ブロック38が配置されている。オゾン水がこのブロック38に衝突すると、オゾン水に乱流が発生する。ブロック38は、隔壁部材として機能する。そのときオゾン水中のオゾンガスの気泡が微細化し、水への溶解度を高める。混合装置15は連結パイプ24を介して一時貯留タンク40に接続されている。一時貯留タンク40で、半減期の長い安定なオゾン水を製造する。
【0031】
図8は、一時貯留タンク40の実施例縦断面図である。
一時貯留タンク40は同軸的に3重の、内パイプ44、中パイプ45、外パイプ46を配置した構造をしている。内パイプ44の最下端に、連結パイプ24を接続した。この連結パイプ24は、一時貯留タンク40の外壁を貫通して、内パイプ44に達するように接続されている。内パイプ44は、攪拌部60を構成している。内パイプ44の内部には障壁部材47が配置されている。障壁部材47は、この流路を下から上に向かって流れるオゾン水に乱流を発生させる障壁を構成している。障壁部材47は凹凸を持った棒状の構造体が好ましい。内パイプ44の上部には、内パイプ44を貫通する連結孔48が形成されている。オゾン水は、連結孔48から内パイプ44と中パイプ45の間に流れ出す。
【0032】
この内パイプ44と中パイプ45の間に、上方から下方に向かうオゾン水の流路が形成されている。中パイプ45の下端は、一時貯留タンク40の底より上方にあり、オゾン水の流路は、中パイプ45と外パイプ46の間に形成されている。ここで、オゾン水は下方から上方に向かう。一時貯留タンク40の外壁上部には、戻りパイプ19が接続されている。オゾン水はここから貯留タンク11へ向かう。なお、内パイプ44と中パイプ45の間および中パイプ45と外パイプ46の間の流路は、オゾン水を一定の方向に押し流す整流部61を形成している。
【0033】
また、各流路の上部は、下フランジ54で封止されている。この下フランジ54には、各流路の水面からオゾンガスを抜くためのガス抜き孔52が設けられている。下フランジ54の上面には上フランジ55が重ねられている。この下フランジ54と上フランジ55によって挟まれた空間にガス溜まり53が形成されている。ガス溜まり53にはガス分離装置41が接続されている。ガス分離装置41は、オゾンガスがガス溜まり53に溜まると自動的に弁が開いてガス抜きパイプ42方向にオゾンガスを逃がす。このオゾンガスは、バルブ装置13を通じて注入パイプ16に供給される。
【0034】
以上の構成の装置では、連結パイプ24から流入したオゾン水が攪拌部60において障壁部材47に衝突して攪拌される。これにより、オゾンガスの気泡が微細化され水中に十分に溶け込む。また、この攪拌処理中に十分溶け込まなかったオゾンガスが、攪拌部60の上方にあるガス抜き孔52を通じてガス溜まり53に溜まる。その後オゾン水は、連結孔48を抜けてから下降し、底面で反転して上昇する。この整流部61でオゾンガスの気泡がオゾン水中に均一に溶け込む。オゾンガスの微細な気泡が相互に衝突して次第に大きな気泡になると空気中に放出される。従って、オゾンガスの微細な気泡の相互の間隔が均一になるように、一定の流れの中で気泡を分散させる。整流部61はその機能を備える。
【0035】
図9は、貯留タンク11の実施例横断面図である。
戻りパイプ19を通じて取り出されたオゾン水は、貯留タンク11に蓄積される。このとき、オゾン水を水道の水のように落下させると、オゾンガスが放出され易くなる。そこで、戻りパイプ19の先端を貯留タンク11の底部まで延長する。さらに、貯留タンク11を円筒状の容器にして、戻りパイプ19の先端をその円筒の接線方向に向ける。これにより、オゾン水は貯留タンク11の内部を円を描くように流れ続ける。貯留タンク11の内部でオゾン水を一定の方向に流しておくと、貯留タンク11の内部でも、オゾンガスの気泡を分散させる作用が働く。従って、高濃度でかつ半減期の長いオゾン水を蓄積することができる。貯留タンク11の内部でガス化して放出されるオゾンガスを最小限にできる。以上のような装置は、動物の飼育舎のみならず、半減期の長いオゾン水を供給するシステムに広く採用できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1の方法を実施した動物の飼育舎断面図とオゾン水供給設備の概略図である。
【図2】実施例2の方法を実施した動物の飼育舎断面図である。
【図3】噴霧によるオゾン水の特性試験説明図である。
【図4】シャワーによるオゾン水の特性試験説明図である。
【図5】特定オゾン水のオゾンガス濃度測定試験結果を示すグラフである。
【図6】比較例のオゾン水のオゾンガス濃度測定試験結果を示すグラフである。
【図7】混合装置の実施例縦断面図である。
【図8】一時貯留タンク40の実施例縦断面図である。
【図9】貯留タンク11の実施例横断面図である。
【符号の説明】
【0037】
10 飼育舎
11 貯留タンク
12 オゾンガス発生装置
13 バルブ装置
14 回収パイプ
15 混合装置
16 注入パイプ
17 給水パイプ
18 循環パイプ
19 戻りパイプ
20 動物
21 ポンプ
22 電磁リレー
23 ポンプ
24 連結パイプ
25 フレーム
26 噴霧装置
27 温度センサ
28 温度センサ
40 一時貯留タンク
41 ガス分離装置
42 ガス抜きパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の飼育舎の屋内天井側に配置した噴霧装置により、前記動物を飼育中の前記飼育舎内部に、初期濃度が3ppm以上であって、大気中で放置したときのオゾンガス濃度の半減期が5分以上の特定オゾン水を噴霧する処理を、所定のタイミングで繰り返すことを特徴とする動物の飼育舎管理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の動物の飼育舎管理方法において、
前記噴霧装置は、粒径1mm以下のオゾン水滴を噴霧し、
前記特定オゾン水は、気温摂氏35度以下の部屋で、初期濃度が5ppm以下であって、大気中で放置したときのオゾンガス濃度の半減期が5分以上の特定オゾン水であることを特徴とする動物の飼育舎管理方法。
【請求項3】
動物の飼育舎の屋内天井側に配置したシャワーノズルにより、前記動物を飼育中の前記飼育舎内部に、前記動物に降りかかるように、床に降下した水中に初期濃度が3ppm以上であって、大気中で放置したときのオゾンガス濃度の半減期が5分以上の特定オゾン水を散水する処理を、所定のタイミングで繰り返すことを特徴とする動物の飼育舎管理方法。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の動物の飼育舎管理方法において、
前記特定オゾン水は、気温摂氏35度以下の部屋に放置したとき、初期濃度が3.5ppm以上であって、オゾンガス濃度が1分以内に1ppm以上減少する状態を脱したものであることを特徴とする動物の飼育舎管理方法。
【請求項5】
貯留タンクに貯留されたオゾン水を取り出す循環パイプと、循環パイプにより取り出したオゾン水にオゾンガスを混合する混合装置と、混合装置からオゾン水を受け入れてオゾン水を一時貯留する一時貯留タンクと、この一時貯留タンクからオゾン水を貯留タンクに戻す戻りパイプとを備え、
一前記時貯留タンクの内部にはオゾン水の流路を設け、この流路を流れるオゾン水に乱流を発生させる障壁部材を配置した攪拌部と、この攪拌部に続く流路でオゾン水を一定の方向に押し流す整流部を配置し、少なくとも前記攪拌部の上方の水面上部に、ガス溜まりを設けたことを特徴とするオゾン水製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載のオゾン水製造装置において、
前記貯留タンクは円筒状の容器とされ、前記一時貯留タンクから前記オゾン水を前記貯留タンクに戻す戻りパイプは、オゾン水が貯留タンクの内部を円を描いて流れるように、その先端を、貯留タンクの円筒の接線方向に向けたことを特徴とするオゾン水製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−82419(P2007−82419A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−272116(P2005−272116)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(391045934)株式会社リガルジョイント (14)
【Fターム(参考)】