説明

動物飼育用安全キャビネット

【課題】動物が飼育されている作業空間とは異なる箇所から、動物の下方にある汚物シート、及び、トレイを回収可能な動物飼育用安全キャビネットを提供する。
【解決手段】汚物シートを配置した簀の子状の網を移動可能に配置するとともに、簀の子状の網が移動した先には、開口部を有し、開口部には汚物シート回収時に汚物シートを密閉するバッグを配置したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染症の研究、医薬品の開発のために装置内で動物を飼育する動物飼育用安全キャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
動物飼育用安全キャビネットは、装置の作業空間内に給気用HEPAフィルタでろ過された清浄空気を供給するとともに、作業空間の前面に作業空間内を覗き見ることが可能な前面シャッターを配置し、前面シャッターの下方に作業空間内と装置外部を貫通する開口部を設け、その開口部から装置外の空気を吸い込むことにより、作業空間内の空気が、前面シャッター下の開口部から漏れ出ないようにしている。開口部から吸い込まれた流入空気は、排気用HEPAフィルタで、汚染物質や塵埃を除去し、空気のみが装置外に放出される。作業空間内には檻状のケージを配置し、その中で動物を飼育する。感染動物を飼育する場合は、前面シャッター下の開口部に発生する流入気流と排気用HEPAフィルタにより、内部の感染物質は装置内に封じ込められる。
【0003】
感染動物を装置内で飼育した場合、動物から感染物質を含んだ排泄物が排出される。動物を長期間飼育するには、感染しない方法で、この排泄物(汚物)を装置内から取り出す必要がある。
【0004】
従来技術による感染しないで感染物質を含んでいるかもしれない汚物を、装置から取り出す方法を、特許第4502222号に示す。作業空間の下部に汚物シューターを設け、汚物シューター下部の汚物排出用のダクトに連接してバッグを設けている。動物が排出した汚物は、汚物シューター下のバッグに入り、この汚物をバッグ越しに非接触で回収するよう工夫している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4502222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来技術の動物飼育用安全キャビネットを特許第4502222号に示す。作業空間の下面に、簀の子を上面に有する汚物シューターを設け、汚物シューターには汚物シューターを貫通するダクトを設け、そのダクトの下方にはバッグを配置している。作業空間の簀の子の上では動物を飼育するため、動物の排泄物が汚物シューターに入る。汚物シューターに入った排泄物は、ダクトを通りバッグに集められる。
【0007】
動物の排泄物(汚物)を回収する場合は、ダクト下方のバッグの口を熱溶着した後、切断することにより、汚物をバッグに密閉した状態で、かつ、汚物に触れることなく回収することが出来る。この操作により感染動物を飼育し、排泄物(汚物)に病原体を含んでいたとしても、非接触にて回収することが出来る。
【0008】
従来技術に動物飼育用安全キャビネットでは、汚物シューターが直接バッグに繋がっているため、動物を飼育している環境に配置している汚物シューターを、消毒水で清掃した場合、消毒水がバッグに入り込む不具合がある。また、ダクト下方に取り付いたバッグを取り外し、消毒水を流して清掃した場合、安全キャビネットの気流により開放した状態のダクトに流入する気流が発生したとしても、消毒水が安全キャビネットから外に出る方向に流れるため、消毒水と一緒に病原体を含んだエアロゾルが、安全キャビネットから外に出る可能性がある。
【0009】
また、従来技術の動物飼育用安全キャビネットは、動物の排泄部を回収する汚物シートを作業空間下面の簀の子に敷いて飼育する場合、汚物シートを回収するには、安全キャビネットの作業空間を開放した状態で、手袋をして汚物シートを回収するので、汚物シートに付着した感染物質が飛散する可能性がある。
【0010】
本発明の目的は、感染動物を飼育したときの、排泄物(汚物)及び、汚物シート及び、汚物が飛散している可能性があるトレイを、非接触で回収可能な、動物飼育用安全キャビネットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は以下のように装置を構成したものである。
【0012】
請求項1記載の動物飼育用安全キャビネットは、動物を飼育するための作業空間の一面に給気用の作業開口部を有し、この作業開口部から作業空間に流入した空気を送風手段により装置外へ空気清浄手段を通して排出する排気系と、前記作業空間下面の作業台と、この作業台に形成する排出孔と、この排出孔の下方にドレンを有する動物飼育用安全キャビネットにおいて、前記排出孔の下方に、動物が排泄する汚物を受ける汚物受け手段と、この汚物受け手段を移動可能に案内支持する案内支持手段とを設けるとともに、前記装置外壁面に前記汚物受け手段が挿通可能な取出し口を設け、この取出し口に前記汚物を前記汚物受け手段と共に回収する袋状のバッグを設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の動物飼育用安全キャビネットは、請求項1記載の動物飼育用安全キャビネットにおいて、前記動物が排泄する汚物が便であり、前記排出孔の下方に設けた汚物受け手段が汚物シートであり、前記案内支持手段が網状体であり、該網状体は装置に対して横方向に移動可能となるように案内溝により保持され、前記網状体の移動方向の装置外壁面には取出し口を有し、該取出し口には袋状のバッグを有することを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の動物飼育用安全キャビネットは、請求項1記載の動物飼育用安全キャビネットにおいて、前記動物が排泄する汚物が尿であり、前記排出孔の下方に設けた汚物受け手段がトレイであり、前記案内支持手段がトレイ乗せ台等のトレイ案内支持部材であり、前記トレイの移動方向のドレン外壁面には開口部を有し、前記開口部には袋状のバッグを有することを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の動物飼育用安全キャビネットは、請求項1記載の動物飼育用安全キャビネットにおいて、前記汚物受部材を上下に配置するとともに、その上部側の汚物受部材が固形状の汚物を受ける汚物シートであり、下部側の汚物受部材が液体状の汚物を受けるトレイから成り、前記汚物シートを網状体に載置し、前記網状体は一方向に移動可能な案内溝で保持案内されるとともに、前記トレイはドレン内に配置されていることを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の動物飼育用安全キャビネットは、請求項3または4の動物飼育用安全キャビネットにおいて、前記トレイの下方に移動可能な台を有し、前記台の進行方向に筒状のフランジを有し、前記筒状のフランジに袋状のバッグを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の実施により、動物飼育において、動物の排泄物が付着した汚物シートを、非接触で取り出し可能にするとともに、動物を飼育している環境を消毒水で清掃可能とし、飼育動物にストレスを与えないとともに、飼育作業者が感染しない、動物飼育用安全キャビネットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施の形態を示す動物飼育用安全キャビネット断面構造図である。
【図2】本発明の第1実施の形態を示す動物飼育用安全キャビネットの外観図、及び、フランジカバーを取り外した外観図である。
【図3】本発明の第1実施の形態を示す動物飼育用安全キャビネットの簀の子状の網を引き出した状態の断面構造図である。
【図4】本発明の第1実施の形態を示す動物飼育用安全キャビネットの汚物シート交換方法を示す、断面構造図である。
【図5】本発明の第2実施の形態を示す動物飼育用安全キャビネットのトレイ取り外し前の外観図、及び断面構造図である。
【図6】本発明の第2実施の形態を示す動物飼育用安全キャビネットのトレイを取り外したときの外観図、及び断面構造図である。
【図7】本発明の第2実施の形態を示す動物飼育用安全キャビネットのトレイを回収するときの外観図、及び断面構造図である。
【図8】本発明の第3実施の形態を示す動物飼育用安全キャビネットの外観図、及び断面構造図である。
【図9】本発明の第4実施の形態を示す動物飼育用安全キャビネットの断面構造図である。
【図10】本発明の第4実施の形態を示す動物飼育用安全キャビネットの汚物シート回収時の断面構造図である。
【図11】本発明の第5実施の形態を示す動物飼育用安全キャビネットの断面構造図である。
【図12】本発明の第6実施の形態を示す動物飼育用安全キャビネットの断面構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図12により説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の第1実施の形態を示す動物飼育用安全キャビネット断面図構造図であり、図2は、本発明の第1実施の形態を示す動物飼育用安全キャビネットの外観図、及び、フランジカバーを取り外した外観図である。
【0021】
気流の構成は、前面シャッター4の下に作業開口部6を形成し、作業開口部6から装置外の空気を吸い込み、流入気流7を形成する。流入空気7は作業空間3内に入り、前面吸い込み口18に吸い込まれ、作業空間3の背面をリターンエアー22となって、送風機5に吸い込まれ、送風機5の吹き出し空気は加圧チャンバー40を加圧する。加圧チャンバー40には、排気用HEPAフィルタ12a、及び、給気側HEPAフィルタ12bが取り付けられている。給気側HEPAフィルタ12bを通った空気は、塵埃を除去され清浄化された空気のみ吹き出し空気17となり、作業空間3に供給され、前面吸い込み口18及び、背面吸い込み口23を通り、リターンエアー22と成って、作業空間3を循環する。また、排気側HEPAフィルタ12aを通った空気は、塵埃を除去され清浄化された空気のみ排気空気9となり、排気口8より動物飼育安全キャビネット1より放出される。給気側HEPAフィルタ12bと排気側HEPAフィルタ12aで除去した塵埃には、作業空間3内に存在する感染物質10を含んでいるため、吹き出し空気17、及び、排気空気9には、感染物質10を含まない状態となっている。
【0022】
以上の気流構成により、作業空間3内で病原体に感染した飼育動物19を飼育した場合、作業空間に存在する感染物質10は、流入気流7と排気HEPAフィルタ12aにより作業空間3内から外に出ることを封じ込められる。この構造により動物飼育用安全キャビネット1の周囲で飼育作業をする作業者21(図示せず)への病原体の感染を防止することが可能となっている。
【0023】
作業空間3下面の作業台2には、動物ケージ24が配置されている。動物ケージ24は、金網など檻状に形成し、内部で飼育動物19を飼育する。作業台2の動物ケージ24を配置する部分には、排出孔を形成している。作業台2の下には、案内支持手段として簀の子状の網26を配置し、網26両側の網用溝27で保持している。網26は網用溝27で保持しているので、溝の方向(動物飼育用安全キャビネットの前後方向)への移動を可能としている。網26を移動する手段は、溝ではなく、ベアリング等、異なる手段でも良い。網26の上方、動物ケージ24側に、汚物受け部材として汚物シート25を配置している。この汚物シート25に飼育動物19の排泄物である汚物20が付着することとなる。
【0024】
汚物シート25が気流で飛ばないよう、汚物20を回収する中央を除く、網用溝27付近の両端を固定しても良い。また、前面吸い込み口18から吸い込まれた気流が汚物シート25の下方である網26の下を通るよう構成すると、汚物シート25の風速が速い面の圧力が低く成ることから、汚物シート25が舞い上がることを防止することが可能となる。
【0025】
網26の前方の本体ケース1a外周面には、汚物シート25と、その案内支持手段である簀の子状の網26が挿通可能な取出し口が形成され、その取出し口に汚物シート交換用ビニールバッグ取り付けフランジ13aを配置している。汚物シート交換用ビニールバッグ取り付けフランジ13aの開口部(取出し口)の大きさは、網26に汚物シート25を乗せた状態で貫通させることが可能な寸法としている。その位置関係を図2(b)に示す。図2(a)は外観図であり、図2(b)は汚物シート用フランジカバー14aを取り外した外観図である。
【0026】
図1(a)に示すように、汚物シート交換用ビニールバッグ取り付けフランジ13aには、畳んだ状態のビニールバッグ15aを取り付けている。取り付け方法は、ビニールバッグ15の袋状の入り口周囲を、汚物シート交換用ビニールバッグ取り付けフランジ13aの周囲にゴム状のリングで閉めるか、粘着テープで貼り付けるので、汚物シート25及び網26周囲の作業台2下方の空間は、本体ケース1aをビニールバッグ15で仕切られていることとなる。畳んだ状態のビニールバッグ15aは、汚物シート用フランジカバー14aを被せることにより、ビニールバッグ15を保護している。
【0027】
網26、汚物シート25の下方には、ドレン31を配置している。ドレン31は、動物飼育用安全キャビネット1の本体ケース1aの外壁と連接し、本体ケース1aの内部と外部を仕切っている。ドレン31には開口部を設け、開口部周囲には、パッキン16を配置している。パッキン16の下方には、さらに、汚物受け部材としてトレイ29を配置している。すなわち、上部の汚物シート25は汚物20(便)が付着し、汚物20(尿)は汚物シート25と網26を通過し、トレイ29に溜まるようになっている。また、パッキン16は、ドレン31の外側とトレイ29に挟まれる形となっている。パッキン16を密閉するため、トレイ押さえ金具28により、トレイ29に荷重を与えている。トレイ押さえ金具28は、レバー方式や、ネジ込み方式など、パッキン16に荷重を与えられる方法としている。この構造により、トレイ29の動物飼育用安全キャビネット1の内側と外側を仕切っている。
【0028】
トレイ29にはバルブ30を配置している。トレイ29の上面は、作業空間3側のため、感染物質10や、汚物20が付着している可能性がある。トレイ29の消毒が必要になった場合は、ドレン31に消毒水を流し、トレイ29の上面を消毒することが可能となる。消毒の終わった消毒水は、バルブを開き、トレイ29から流し回収する。
【0029】
トレイ29の下方には、トレイ乗せ台32を配置し、トレイ乗せ台32は、レール33で保持され、動物飼育用安全キャビネット1の前後方向に移動可能としている。すなわち、トレイ29は案内支持手段たるレール33によって移動自在に案内される。なお、レール33は、溝式でもベアリング式でも良い。
【0030】
図3は、本発明の第1実施の形態を示す動物飼育用安全キャビネットの簀の子状の網を引き出した状態の断面構造図である。
【0031】
作業空間3内の飼育動物19は、排泄物である汚物20を排出する。この汚物には病原体等の感染物質10を含んでいる可能性があるため、非接触で回収したい。その回収方法を示す。
【0032】
飼育動物19を飼育しながら汚物20を回収する必要があるため、動物飼育用安全キャビネット1は運転状態、つまり、送風機5は運転している流入気流7が発生している状態で、汚物20を回収する。
【0033】
ビニールバッグ15を覆っている汚物シート用フランジカバー14aを取り外す。次に、ビニールバッグ15を畳んだ状態から開き、広げた状態のビニールバッグ15bとする。このとき、広げた状態のビニールバッグ15bの入り口部分と、汚物シート交換用ビニールバッグ取り付けフランジ13aは、ゴム状のリングで閉めるか、粘着テープで貼り付けられ、動物ケージ24下の空間と外部を仕切っている。
【0034】
網26を汚物シート交換用ビニールバッグ取り付けフランジ13a内側から引き出す。この作業は、広げた状態のビニールバッグ15bの上から、動物飼育用安全キャビネット1の内部に有った網26を触るため、内部の感染物質10に接触することは無い。
【0035】
網26を前方に引き出すことが可能となるのは、網26を網用溝27で保持し、移動を可能としているからである。網26の上には汚物シート25が有り、汚物シート25には汚物20が付着している。
【0036】
図4は、本発明の第1実施の形態を示す動物飼育用安全キャビネットの汚物シート交換方法を示す、断面構造図である。
【0037】
図4(a)は、汚物シート25及び、汚物20を、広げた状態のビニールバッグ15b内に導き、網26を動物ケージ10下方に戻した状態である。汚物シート25及び汚物20を広げた状態のビニールバッグ15b内に導く際も、ビニールバッグ15の上から、汚物シート25等に触るため、感染物質10に接触することは無い。
【0038】
この状態で、広げた状態のビニールバッグ15bの入り口付近を熱などにより密閉溶着し、ビニールバッグ15溶着部の外側を切断することで、汚物シート25、汚物20を非接触で密閉回収することが可能になる。この回収したビニールバッグを高圧蒸気滅菌機で感染物質を無害化のち、廃棄する。ビニールバッグ15の熱などにより密閉溶着は、切断箇所の両側を密閉すると、廃棄する汚染物質側だけではなく、作業空間3に吸い込まれる流入開口部が、作業開口部6に限定されるため、流入気流7を維持できるので、効果的である。
【0039】
図4(b)は、新しい汚物シート25aを取り付ける際の図である。
【0040】
新しいビニールバッグ15c内に新しい汚物シート15cを仕込む。古い切断し残ったビニールバッグ15を汚物シート交換用ビニールバッグ取り付けフランジ13aから取り外し、新しいビニールバッグ15cを汚物シート交換用ビニールバッグ取り付けフランジ13aに取り付ける。網26を引き出し、新しい汚物シート15cを網26の上に配置する。その後、網26を動物ケージ24の下方に移動し、ビニールバッグ15を畳んで、汚物シート用フランジカバー14aを取り付ける。この一連の作業も、動物飼育用安全キャビネット1内部に非接触で実施することが可能である。
【0041】
新しい汚物シート15cをビニールバッグ15内に仕込まずに取り付ける際は、送風機5の運転状態で、古い切断し残ったビニールバッグ15を汚物シート交換用ビニールバッグ取り付けフランジ13aから取り外すことにより、フランジ部にも流入気流が発生する。その状態で、網26を引っ掛け棒(図示せず)などで手前に引き出し、網26の上に新しい汚物シート25aを乗せる。再び、引っ掛け棒(図示せず)などで網26を動物ケージ24下方に誘導し、新しいビニールバッグ15cを汚物シート交換用ビニールバッグ取り付けフランジ13aに取り付ける。
【実施例2】
【0042】
図5は、本発明の第2実施の形態を示す動物飼育用安全キャビネットのトレイ取り外し前の外観図、及び断面図構造図である。
【0043】
ドレン31下方にパッキン16を挟んで、トレイ29を配置している。トレイ29の前方にトレイ交換用ビニールバッグ取り付けフランジ13bを取り付ける。取り付けた状態の正面図を図5(b)に示す。図5(b)は、ビニールバッグ15を省略した図である。
【0044】
図5(a)に示すように、トレイ交換用ビニールバッグ取り付けフランジ13bにビニールバッグ15を取り付ける。取り付け方法は、汚物シート25交換時と同様、ゴム状のリングで閉めるか、粘着テープで貼り付ける。
【0045】
図6は、本発明の第2実施の形態を示す動物飼育用安全キャビネットのトレイを取り外したときの外観図、及び断面構造図である。
【0046】
ドレン31下方にトレイ29を取り外したとき、取り外した開口部に流入気流7が発生するよう、前面シャッター4を下げ、作業開口部6を閉じる。
【0047】
トレイ29を取り外す際、トレイ押さえ金具28を外し、トレイ29を下方に移動し、トレイ乗せ台32に乗せた後、前方に移動する。トレイ乗せ台32の両端はレール33で保持されているため、前後への移動が可能となっている。この作業は、トレイ29の下方からアクセスするため、動物飼育用安全キャビネット1内部の病原体等の接触することは無い。
【0048】
図7は、本発明の第2実施の形態を示す動物飼育用安全キャビネットのトレイを回収するときの外観図、及び断面構造図である。
【0049】
トレイ29を回収する際は、広げた状態のビニールバッグ15c内にトレイ29を誘導し、ビニールバッグ15の入り口を、熱などにより密閉溶着し、溶着した部分の外側を、切断する。トレイ29をビニールバッグ15内に回収するときは、ビニールバッグ15の上からトレイ29に接触するため、トレイ29に付着している病原体等の感染物質10に非接触での作業が可能となる。トレイ29を取り外したドレン31の開口部には、流入気流7が発生しているため、動物飼育用安全キャビネット1内部の感染物質10が外に漏れることは無い。
【0050】
新しいトレイ29をドレン31下方に取り付ける場合は、ドレン31の下方は動物飼育用安全キャビネット1の外部であり、感染物質10が存在しないこと、また、新しいトレイ29にも感染物質10が存在しないことから、ビニールバッグ15を使用しないで、ドレン31下方から取り付けることが可能である。
【0051】
実施例2では、バルブ30がトレイ29に取り付いているため、トレイ29を取り外す前に、ドレン31、トレイ29を消毒水で消毒後に取り外すことにより、トレイ29の取り外し作業により感染物質10への接触の可能性を、より低減することが可能となる。
【実施例3】
【0052】
図8は、本発明の第3実施の形態を示す動物飼育用安全キャビネットの外観図、及び断面構造図である。
【0053】
実施例2では、トレイ29をドレン31の下方に配置していたが、実施例3では、ドレン31の内部にトレイ29を配置している。すなわち、本実施例ではトレイ29はドレン31の底部によって摺動自在に案内され、ドレン31の底部がトレイ29の案内支持手段となる。この配置により、パッキン16、レール33、トレイ乗せ台32が不要となるが、本体ケース1aの外壁面に、トレイ交換用ビニールバッグ取り付けフランジ13bの配置と、トレイ交換用ビニールバッグ取り付けフランジ13bに取り付けた、ビニールバッグ15、トレイ用フランジカバー14bが必要となる。
【0054】
実施例3のトレイ29の回収方法は、回収前にドレン31内を消毒水で消毒し、消毒水をバルブ30から回収した後、トレイ29を回収しても良いが、トレイ29とドレン31が接触していた面は、消毒水が入り込んでいない可能性があるので、ビニールバッグ15での非接触でのトレイ29回収が必要となる。
【0055】
トレイ29回収の回収方法は、実施例1の汚物シート25交換方法と同様、トレイ用フランジカバー14bを取り外し、ビニールバッグ15を広げ、ビニールバッグの上から、トレイ29を引き出して、回収する。ビニールバッグ15内のトレイ29は、汚物シート25交換方法と同様に、ビニールバッグ15を密閉溶着し、トレイ29を密封する。新しいトレイ29の取り付け方法は省略する。
【実施例4】
【0056】
図9は、本発明の第4実施の形態を示す動物飼育用安全キャビネットの断面構造図である。
【0057】
網26の後方に、ロール状汚物シート25bを配置している。また、網26の前方には、汚物シート切断突起36を配置している。
【0058】
ロール状汚物シート25bは、ロール状の部分から汚物シートが引き出され、網26の上部を汚物シートが通り、前方に誘導される。
【0059】
図10は、本発明の第4実施の形態を示す動物飼育用安全キャビネットの汚物シート回収時の断面構造図である。
【0060】
汚物シート25回収時は、実施例1と同様、汚物シート用フランジカバー14aを取り外し、ビニールバッグ15bを広げる。ビニールバッグ15の上から網26を手前に引き出す。網26が引き出し可能なのは、実施例1と同様、網26の両側が、網用溝27で保持されているからである。網26を引き出した状態で、汚物シート25を新しい汚物シート面により、網26上面が覆われるまで、汚物シート25を引き出し、汚物シート切断突起36で、汚物シート25を切断する。切断させた汚物シート25cには、汚物20が付着しているので、広げた状態のビニールバッグ15b内に回収し、他の実施例と同様にビニールバッグ15の入り口部分を密閉溶着し、密閉したビニールバッグ15切断して回収する。
【0061】
この状態で、新しい汚物シート25が網26上に配置されているので、網26を動物ケージ24の下方に移動し、新しいビニールバッグ15cを取り付け、汚物シート用フランジカバー14aを取り付ける。
【0062】
実施例4により、ロール状汚物シート25bの汚物シート25面が有るうちは、外側から網26上に汚物シート25を配置する必要が無いため、汚物シート25交換作業時の感染物質10への接触の可能性を低減することが可能となる。
【実施例5】
【0063】
図11は、本発明の第5実施の形態を示すケミカルハザード対策用キャビネットの外観図、及び一部断面図構造図である。
【0064】
他の実施例とは気流の構成のみ異なり、動物ケージ24及び作業台2、汚物シート25の回収方法、トレイ29の回収方法は、他の実施例を適用することが出来る。
【0065】
前面開口部6に形成される流入気流7は、作業空間3内に入り込み、前面吸い込み口18を通り、背面気流22bとなり、送風機5に吸い込まれ、加圧チャンバー40を加圧し、排気用HEPAフィルタ12aで感染物質10及び、塵埃をろ過され清浄空気として、排気口8より排気される。
【0066】
本気流構成では、前面吸い込み口18を設けず、背面吸い込み口23から吸い込みで機能は果たせるが、動物を飼育した場合、動物ケージ24の下方に排泄物などの臭気を発するものが存在するため、前面吸い込み口18から吸い込み、汚物シート25付近にも気流を構成したほうが、臭気対策では有効である。
【0067】
飼育動物19が存在する作業空間3内には、流入気流7として外気が入り込むため、クリーンな環境を必要としない、感染動物の飼育などに用いられる。
【実施例6】
【0068】
図12は、本発明の第6実施の形態を示す動物飼育用安全キャビネットの断面構造図である。
【0069】
他の実施例とは気流の構成のみ異なり、動物ケージ24及び作業台2、汚物シート25の回収方法、トレイ29の回収方法は、他の実施例を適用することが出来る。
【0070】
前面開口部6に形成される流入気流7は、作業空間3内に入り込み、前面吸い込み口18を通り、背面気流22bとなり、送風機5に吸い込まれ、排気側加圧チャンバー40aを加圧し、排気用HEPAフィルタ12aで感染物質10及び、塵埃をろ過され清浄空気として、排気口8より排気される。
吸い込み空気38は、吸い込み口37から吸い込まれ、送風機5により給気側加圧チャンバー40bを加圧し、給気用HEPAフィルタ12bにより塵埃をろ過され、清浄空気のみ吹き出し空気17となり作業空間3に供給される。作業空間3内に入った気流は、流入気流7ともに、前面吸い込み口18及び、背面吸い込み口23から吸い込まれ、背面気流22aになり、送風機5により排気側加圧チャンバー40aを加圧し、排気用HEPAフィルタ12aで感染物質10及び、塵埃をろ過され清浄空気として、排気口8より排気される。
【0071】
送風機5部の排気側の気流と給気側の気流は、仕切り板39により仕切られている。
【0072】
作業空間3内には常に清浄空気が供給されているため、クリーンな動物を飼育場合に有効である。
【0073】
以上の実施の形態により動物飼育用安全キャビネットにおいて、感染動物を飼育したときの、排泄物(汚物)及び、汚物シート、トレイが非接触で回収可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 動物飼育用安全キャビネット
1a 本体ケース
2 作業台
3 作業空間
4 前面シャッター
5 送風機
6 作業開口部
7 流入気流
8 排気口
9 排気空気
10 感染物質
11 プレフィルタ
12a 排気用HEPAフィルタ
12b 給気用HEPAフィルタ
13a 汚物シート交換用ビニールバッグ取り付けフランジ
13b トレイ交換用ビニールバッグ取り付けフランジ
14a 汚物シート用フランジカバー
14b トレイ用フランジカバー
15 ビニールバッグ
15a 畳んだ状態のビニールバッグ
15b 広げた状態のビニールバッグ
15c 新しいビニールバッグ
16 パッキン
17 吹き出し空気
18 前面吸い込み口
19 飼育動物
20 汚物
21 作業者
22 リターンエアー
22b 背面気流
23 背面吸い込み口
24 動物ケージ
25 汚物シート
25a 新しい汚物シート
25b ロール状汚物シート
25c 切断された汚物シート
26 網
27 網用溝
28 トレイ押さえ金具
29 トレイ
30 バルブ
31 ドレン
32 トレイ乗せ台
33 レール
34 整流板
35 汚物シート押さえ金具
36 汚物シート切断突起
37 吸い込み口
38 吸い込み空気
39 仕切り板
40 加圧チャンバー
40a 排気側加圧チャンバー
40b 給気側加圧チャンバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物を飼育するための作業空間の一面に給気用の作業開口部を有し、この作業開口部から作業空間に流入した空気を送風手段により装置外へ空気清浄手段を通して排出する排気系と、前記作業空間下面の作業台と、この作業台に形成する排出孔と、この排出孔の下方にドレンを有する動物飼育用安全キャビネットにおいて、
前記排出孔の下方に、動物が排泄する汚物を受ける汚物受け手段と、この汚物受け手段を移動可能に案内支持する案内支持手段とを設けるとともに、前記装置外壁面に前記汚物受け手段が挿通可能な取出し口を設け、この取出し口に前記汚物を前記汚物受け手段と共に回収する袋状のバッグを設けたことを特徴とする動物飼育用安全キャビネット。
【請求項2】
前記動物が排泄する汚物が便であり、前記排出孔の下方に設けた汚物受け手段が汚物シートであり、前記案内支持手段が網状体であり、該網状体は装置に対して横方向に移動可能となるように案内溝により保持され、前記網状体の移動方向の装置外壁面には取出し口を有し、該取出し口には袋状のバッグを有することを特徴とする、請求項1記載の動物飼育用安全キャビネット。
【請求項3】
前記動物が排泄する汚物が尿であり、前記排出孔の下方に設けた汚物受け手段がトレイであり、前記案内支持手段がトレイ乗せ台等のトレイ案内支持部材であり、前記トレイの移動方向のドレン外壁面には開口部を有し、前記開口部には袋状のバッグを有することを特徴とする、請求項1記載の動物飼育用安全キャビネット。
【請求項4】
請求項1の動物飼育用安全キャビネットにおいて、前記汚物受部材を上下に配置するとともに、その上部側の汚物受部材が固形状の汚物を受ける汚物シートであり、下部側の汚物受部材が液体状の汚物を受けるトレイから成り、前記汚物シートを網状体に載置し、前記網状体は一方向に移動可能な案内溝で保持案内されるとともに、前記トレイはドレン内に配置されていることを特徴とする、動物飼育用安全キャビネット。
【請求項5】
請求項3または4の動物飼育用安全キャビネットにおいて、前記トレイの下方に移動可能な台を有し、前記台の進行方向に筒状のフランジを有し、前記筒状のフランジに袋状のバッグを有することを特徴とする、動物飼育用安全キャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−244933(P2012−244933A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118847(P2011−118847)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】