動画記録装置、動画記録方法、プログラムおよび異方性反射媒体
【課題】動画が記録される異方性反射媒体の作製に用いる動画記録装置等を提供する。
【解決手段】動画記録装置1は、動画のフレームに係る画像の構成要素である動画画素をグループ化し、フレームの再生順序を示すフレームIDを動画画素に付与する動画画素グループ化手段25と、格子状セルに対して、対応する動画画素に付与されたフレームIDごとに格子角度を割り当てる格子角度割り当て手段27と、格子状セルに対して、対応する動画画素の輝度値に応じて格子面積を割り当てる格子面積割り当て手段29と、格子角度割り当て手段27によって割り当てられた格子角度、および格子面積割り当て手段29によって割り当てられた格子面積に基づいて、格子状セル群の凹凸を表現する版下データを作成する版下データ作成手段31と、を具備する。
【解決手段】動画記録装置1は、動画のフレームに係る画像の構成要素である動画画素をグループ化し、フレームの再生順序を示すフレームIDを動画画素に付与する動画画素グループ化手段25と、格子状セルに対して、対応する動画画素に付与されたフレームIDごとに格子角度を割り当てる格子角度割り当て手段27と、格子状セルに対して、対応する動画画素の輝度値に応じて格子面積を割り当てる格子面積割り当て手段29と、格子角度割り当て手段27によって割り当てられた格子角度、および格子面積割り当て手段29によって割り当てられた格子面積に基づいて、格子状セル群の凹凸を表現する版下データを作成する版下データ作成手段31と、を具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な格子状セルの集合により形成され、動画が記録される異方性反射媒体の作製に用いる動画記録装置、動画記録方法、プログラムおよび当該異方性反射媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷物等の媒体は、一般に、平滑な表面を持つ。この平滑な表面に対し、向きの揃った細かい傷をつけると、媒体の表面に対して入射した光が正反射方向ではない方向に強く反射する。このような現象を異方性反射現象という。以下、異方性反射現象が生じる表面を持つ媒体を異方性反射媒体と呼ぶこととする。
このような異方性反射現象を利用する従来技術の一つとして、3次元形状データが持つ法線方向ベクトルの向きに基づいて、表面に付与する傷の向きを制御することにより、異方性反射媒体上に3次元形状の曲面に対する光の反射の変化を再現する技法が提案されている(特許文献1)。
【0003】
また、異方性反射媒体の一種とも言える回折格子では、モチーフの画素領域ごとに格子線の配置角度を変化させて、回折格子記録媒体上に回折パターンを記録する。このような回折格子記録媒体は、(広義の意味において)ホログラムとして利用されている。このタイプのホログラムでは、複数の異なるモチーフを重畳記録する技法も提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2001−138700号公報
【特許文献2】特開平08−75192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示される技法によって作製された異方性反射媒体では、動的な照明方向の変化に対する曲面の見え方を表現することはできるが、あくまでも物体の静的な状態を再現したものに過ぎない。すなわち、視線方向を変化させて、物体を動的に観察するような変化を演出することはできない。
【0005】
また、特許文献2に示される技法によって作製されたホログラムでは、複数の異なるモチーフを重畳記録することはできるが、複数の異なるモチーフが切り替わって表示される、または複数の異なるモチーフが重なって表示されるといった演出に留まる。
【0006】
更に、回折パターンではなく干渉縞パターンを記録する狭義のホログラフィでは、物体の3次元的な見え方を再現することができるが、撮影、データ作成、原版作製等のコストが高く、輝度も十分ではないといった課題が存在する。また、物体の見え方の変化ではなく、物体自体の形状の変化などは表現することができない。
【0007】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、動画が記録される異方性反射媒体の作製に用いる動画記録装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために第1の発明は、微細な格子状セルの集合により形成され、動画が記録される異方性反射媒体の作製に用いる動画記録装置であって、前記動画のフレームに係る画像の構成要素である動画画素をグループ化し、前記フレームの再生順序を示すフレームIDを前記動画画素に付与する動画画素グループ化手段と、前記格子状セルに対して、対応する動画画素に付与されたフレームIDごとに格子角度を割り当てる格子角度割り当て手段と、前記格子状セルに対して、対応する動画画素の輝度値に応じて格子面積を割り当てる格子面積割り当て手段と、前記格子角度割り当て手段によって割り当てられた前記格子角度、および前記格子面積割り当て手段によって割り当てられた前記格子面積に基づいて、前記格子状セル群の凹凸を表現する版下データを作成する版下データ作成手段と、を具備することを特徴とする動画記録装置である。第1の発明に係る動画記録装置の使用をすることによって、動画が記録される異方性反射媒体の作製に用いる版下データを作成できる。
【0009】
第1の発明における動画画素グループ化手段は、前記動画画素の位置を基準にグループ化するものであることが望ましい。例えば、各フレームの同一の位置に係る動画画素を一組のグループとすることで、作製された異方性反射媒体を観察する際、フレームごとに位置がずれて観察されることがなく、フレーム間の切り替わりがスムーズな動画が再生される。
【0010】
また、第1の発明における格子角度割り当て手段は、隣接する前記フレームID間に係る前記格子角度の差を略均等になるように割り当てることが望ましい。これによって、作製された異方性反射媒体を観察する際、画質の高い動画が再生される。
【0011】
また、第1の発明における格子角度割り当て手段は、前記フレームIDの順序に従って割り当てることが望ましい。これは、作製された異方性反射媒体を観察する際、格子角度の大きさの順序に従い各画像が観察されることによる。すなわち、格子角度の大きさの順序とフレームを再生する順序とを一致させることで、当初想定していたフレームの再生順に画像が観察される。
【0012】
また、第1の発明における格子面積割り当て手段は、前記動画画素の輝度値に比例して前記格子面積を割り当てることが望ましい。これによって、元の画像の階調が、異方性反射媒体で観察される画像の階調に反映される。
【0013】
第2の発明は、微細な格子状セルの集合により形成され、動画が記録される異方性反射媒体の作製に用いる動画記録方法であって、前記動画のフレームに係る画像の構成要素である動画画素をグループ化し、前記フレームの再生順序を示すフレームIDを前記動画画素に付与するステップと、前記格子状セルに対して、対応する動画画素に付与されたフレームIDごとに格子角度を割り当てるステップと、前記格子状セルに対して、対応する動画画素の輝度値に応じて格子面積を割り当てるステップと、前記格子角度割り当て手段によって割り当てられた前記格子角度、および前記格子面積割り当て手段によって割り当てられた前記格子面積に基づいて、前記格子状セル群の凹凸を表現する版下データを作成するステップと、を含むことを特徴とする動画記録方法である。第2の発明に係る動画記録方法の使用をすることによって、動画が記録される異方性反射媒体の作製に用いる版下データを作成できる。尚、電気通信回線を通じて、第2の発明に係る方法によって作成された版下データを提供することもできる。
【0014】
第2の発明における動画画素をグループ化するステップは、前記動画画素の位置を基準にグループ化するものであることが望ましい。これによる効果は、第1の発明の説明において前述したとおりである。
【0015】
また、第2の発明における格子角度を割り当てるステップは、隣接する前記フレームID間に係る前記格子角度の差を略均等になるように割り当てることが望ましい。これによる効果は、第1の発明の説明において前述したとおりである。
【0016】
また、第2の発明における格子角度を割り当てるステップは、前記フレームIDの順序に従って割り当てることが望ましい。これによる効果は、第1の発明の説明において前述したとおりである。
【0017】
また、第2の発明における格子面積を割り当てるステップは、前記動画画素の輝度値に比例して前記格子面積を割り当てることが望ましい。これによる効果は、第1の発明の説明において前述したとおりである。
【0018】
第3の発明は、コンピュータを第1の発明である動画記録装置として機能させるプログラムである。この第3の発明に係るプログラムをコンピュータにインストールすることによって、第1の発明に係る動画記録装置を得ることができる。
【0019】
第4の発明は、第2の発明である動画記録方法によって作成された版下データに基づいて、表面に前記格子状セルの集合が形成され、動画が記録された異方性反射媒体である。この異方性反射媒体は、格子角度と入射する光の方向と観察方向との相対的な変化によって、動画を再生する。
【0020】
第5の発明は、微細な格子状セルの集合により形成され、動画が記録された異方性反射媒体であって、前記格子状セルは、前記動画のフレームに係る画像の構成要素である動画画素と対応づけられ、前記動画画素の位置を基準にグループ化され、再生する順序が隣接するフレーム間に係る格子角度の差が略均等になるように割り当てられ、前記フレームを再生する順序に従い前記格子角度が割り当てられ、格子面積が対応する動画画素の輝度値に比例して割り当てられたものであり、前記格子角度と入射する光の方向と観察方向との相対的な変化によって、前記動画を再生するものであることを特徴とする異方性反射媒体である。この異方性反射媒体は、フレーム間の切り替わりがスムーズであり、画質が高く、当初想定していたフレームの再生順に動画を再生し、かつ元の画像の階調が、異方性反射媒体で観察される画像の階調に反映されたものとなっている。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、動画が記録される異方性反射媒体の作製に用いる動画記録装置等を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下図面に基づいて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態に係る動画記録装置1を実現するコンピュータのハードウェア構成図である。尚、図1のハードウェア構成は一例であり、用途、目的に応じて様々な構成を採ることが可能である。
動画記録装置1は、制御部3、記憶部5、メディア入出力部7、通信制御部9、入力部11、表示部13、周辺機器I/F部15等が、バス17を介して接続される。
【0024】
制御部3は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成される。
【0025】
CPUは、記憶部5、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス17を介して接続された各装置を駆動制御し、動画記録装置1が行う後述する処理(図7等参照)を実現する。
ROMは、不揮発性メモリであり、コンピュータのブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。
RAMは、揮発性メモリであり、記憶部5、ROM、記録媒体等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部3が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
【0026】
記憶部5は、HDD(ハードディスクドライブ)であり、制御部3が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティングシステム)等が格納される。プログラムに関しては、OS(オペレーティングシステム)に相当する制御プログラムや、後述の処理に相当するアプリケーションプログラムが格納されている。
これらの各プログラムコードは、制御部3により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて各種の手段として実行される。
【0027】
メディア入出力部7(ドライブ装置)は、データの入出力を行い、例えば、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、CDドライブ(−ROM、−R、−RW等)、DVDドライブ(−ROM、−R、−RW等)、MOドライブ等のメディア入出力装置を有する。
【0028】
通信制御部9は、通信制御装置、通信ポート等を有し、コンピュータとネットワーク19間の通信を媒介する通信インタフェースであり、ネットワーク19を介して、他のコンピュータ間との通信制御を行う。
【0029】
入力部11は、データの入力を行い、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、テンキー等の入力装置を有する。
入力部11を介して、コンピュータに対して、操作指示、動作指示、データ入力等を行うことができる。
【0030】
表示部13は、CRTモニタ、液晶パネル等のディスプレイ装置、ディスプレイ装置と連携してコンピュータのビデオ機能を実現するための論理回路等(ビデオアダプタ等)を有する。
【0031】
周辺機器I/F(インタフェース)部15は、コンピュータに周辺機器を接続させるためのポートであり、周辺機器I/F部15を介してコンピュータは周辺機器とのデータの送受信を行う。周辺機器I/F部15は、USBやIEEE1394やRS−232C等で構成されており、通常複数の周辺機器I/Fを有する。周辺機器との接続形態は有線、無線を問わない。
【0032】
バス17は、各装置間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。
【0033】
次に、図2から図4を参照しながら、後述の説明にて用いる用語の意味を説明する。
図2は、動画シーケンスを示す図である。図3は、動画画素を示す図である。図4は、格子状セルを示す図である。
【0034】
一般に、動画とは動いている画像であり、動かない画像である静止画と区別される。動画は、時系列を細かく分割した多数の静止画像を高速に切り替えて表示することで、人間の視覚にはそれらが連続的に動いているように見えるという特性を利用したものである。本実施の形態においても、動画の再生とは、複数の静止画像を切り替えて表示することを意味する。但し、本発明の実施の形態では、映画やテレビジョン放送のように長時間のものを対象とするわけではなく、物体の形状変化等を表現するアニメーションのように短時間のものを対象とする。
【0035】
図2に示すように、動画シーケンスとは、複数のフレームの集まりである。図2では、フレーム1からフレームnまでのn個のフレームを一つの動画シーケンスとしている。各フレームは任意の静止画像で良く、互いに連続性のないものでも構わないが、視覚的効果を高めるためには、動画シーケンス全体として何らかの連続性を持ったものであることが望ましい。
【0036】
また、図3に示すように、フレームk(1≦k≦n)は、動画画素の集合である。動画画素は、フレームkに定義された二次元座標として示される位置によって特定される。図3では、フレームkの位置(x,y)の動画画素を示している。フレーム1からフレームnは、同じ数の動画画素によって分割されているものとする。また、各フレームは、黒と白の濃淡で表現されたモノクロ画像とする。すなわち、各動画画素は、例えば、256階調の輝度値の情報(輝度値0の場合が黒、輝度値255の場合が白等)を有する。
【0037】
前述の動画が記録される異方性反射媒体は、微細な格子状セルの集合により形成される。図4に示すように、格子状セル51は、例えば、53を格子状セル51の一辺の長さとする正方形をなす。尚、格子状セル51の形状は、正方形に限定をするものではないが、正方形であれば特に問題が生じることはない。
【0038】
格子状セル51内には、異方性反射領域55が形成される。異方性反射領域55とは、格子状セル51の領域のうち異方性反射現象に貢献する領域である。異方性反射領域55は、例えば、57を異方性反射領域55の一辺の長さとする正方形をなす。尚、異方性反射領域55の形状は、正方形に限定をするものではないが、正方形であれば特に問題が生じることはない。また、図4では、異方性反射領域55は、格子状セル51の中央に形成されているが、格子状セル51の四隅のいずれかに偏るように形成されても良い。そして、格子状セル51の面積に対する異方性反射領域55の相対的な面積を、特に、格子面積と呼ぶこととする。
【0039】
また、異方性反射領域55内には、黒色で示された複数の格子線59が形成される。格子線59は、同一の異方性反射領域55内においては、格子角度61に従い、互いに平行である。また、63を格子線59の線幅、65を格子線同士の間隔とすると、63と65とを足した長さが格子ピッチ67となる。尚、最終的に作製された異方性反射媒体において、黒色で示した部分、すなわち格子線59と、白色で示した部分、すなわち格子線59以外とのどちらを凸状に形成しても良い。すなわち、格子線59が凸状、格子線59以外が凹状でも良いし、格子線59が凹状、格子線59以外が凸状でも良い。
【0040】
次に、図5、図6を参照しながら、動画記録装置1の機能を実現する構成について説明する。
図5は、動画記録装置1の機能の概要を示すブロック図である。図6は、格子角度の割り当ての一例を示す図である。
【0041】
動画記録装置1は、パラメータ入力手段21、動画シーケンス入力手段23、動画画素グループ化手段25、格子角度割り当て手段27、格子面積割り当て手段29、版下データ作成手段31等を具備する。
【0042】
パラメータ入力手段21は、版下データの作成に必要なパラメータを入力する。必要なパラメータとは、動画のフレームの数、異方性反射媒体の縦と横の大きさ、格子状セルの一辺の大きさ(格子状セルが正方形の場合)、格子状セルの格子ピッチ、格子線の線幅と間隔との比率等である。データの入力は、入力部11を介しても良いし、通信制御部9によってネットワーク19を介して他のコンピュータから入力しても良い。また、一部のパラメータは、デフォルト値として記憶部5が記憶していても良い。
【0043】
動画シーケンス入力手段23は、異方性反射媒体に記録する動画シーケンスを入力する。データの入力は、メディア入出力部7によって各メディアから行っても良い。また、通信制御部9によってネットワーク19を介して他のコンピュータから行っても良い。また、周辺機器I/F部15によって各周辺機器から行っても良い。
入力された動画シーケンスは、一旦、記憶部5に記憶し、制御部3が記憶部5から読み出して後述する処理を行っても良い。また、制御部3のRAMに保持し、後述する処理を行っても良い。
【0044】
また、動画シーケンス入力手段23は、入力された動画シーケンスから異方性反射媒体に記録する所望のフレームのみを抽出する。更に、入力された動画シーケンスに含まれる各フレームがカラー画像の場合、動画シーケンス入力手段23は、各フレームの画像を単色化する。
【0045】
動画画素グループ化手段25は、動画のフレームに係る画像の構成要素である動画画素をグループ化し、フレームの再生順序を示すフレームIDを動画画素に付与する。動画画素のグループ化は、動画画素の位置を基準に行う。例えば、動画のフレームの数がn個の場合、各フレームの同一の位置に係るn個の動画画素を一組のグループとする。動画画素には、対応するフレームIDを付与する。グループの数は、各フレームに含まれる動画画素の数と同一になる。
【0046】
格子角度割り当て手段27は、格子状セルに対して、対応する動画画素に付与されたフレームIDごとに格子角度を割り当てる。格子角度割り当て手段27は、隣接するフレームID間に係る格子角度の差を略均等になるように割り当てることが望ましい。また、格子角度割り当て手段27は、フレームIDの順序に従って割り当てることが望ましい。ここで、格子角度は、例えば、0度から90度の範囲を利用する。
【0047】
図6は、フレームの数が10個の場合の格子角度の割り当ての一例を示している。格子角度の利用範囲が0度から90度とすると、格子角度割り当て手段27は、隣接するフレームID間に係る格子角度の差を10度とし、均等に割り当てる。そして、図6に示すように、格子角度割り当て手段27は、フレーム1に係る格子状セルに対して格子角度0度、フレーム2に係る格子状セルに対して格子角度10度、フレーム3に係る格子状セルに対して格子角度20度、・・・、フレーム10に係る格子状セルに対して格子角度90度、というように、フレームIDの順序に従って割り当てる。
【0048】
格子面積割り当て手段29は、格子状セルに対して、対応する動画画素の輝度値に応じて格子面積を割り当てる。格子面積割り当て手段29は、動画画素の輝度値に比例するように格子面積を割り当てることが望ましい。例えば、格子面積割り当て手段29は、輝度値が255の場合は格子面積を1.0(=255÷255)、輝度値が0の場合は格子面積を0.0(=0÷255)、輝度値が60の場合は格子面積を0.235(≒60÷255)、というように、輝度値に比例するように割り当てる。
【0049】
版下データ作成手段31は、格子角度割り当て手段27によって割り当てられた格子角度、および格子面積割り当て手段29によって割り当てられた格子面積に基づいて、前記格子状セル群の凹凸を表現する版下データを作成する。
具体的には、まず、版下データ作成手段31は、次式を用いて、割り当てられた格子面積、および入力された格子状セルの一辺の長さから、異方性反射領域の一辺の長さを算出する。
【数1】
ただし、lは異方性反射領域の一辺の長さ、sは格子面積、Lは格子状セルの一辺の長さとする。
【0050】
次に、版下データ作成手段31は、入力された格子状セルの格子ピッチ、入力された格子線の線幅と間隔との比率、割り当てられた格子角度、および算出された異方性反射領域の一辺の長さを基に、格子線を黒色、格子線以外の部分を白色で示した二値データを作成する。尚、格子線を白色、格子線以外の部分を黒色としても良い。
版下データ作成手段31は、以上の処理を全ての格子状セルに対して行うことで、格子状セル群の凹凸を表現する版下データを作成する。
【0051】
次に、図7を参照しながら、動画記録装置1の動作の詳細について説明する。
図7は、動画記録装置1が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【0052】
図7に示すように、入力部11等を介して、パラメータ入力手段21によるパラメータの入力(S101)、動画シーケンス入力手段23による動画シーケンスの入力(S102)がなされると、制御部3は、動画画素グループ化手段25によって、動画画素をグループ化する(S103)。具体的には、制御部3は、入力された動画の各フレームの同一の位置に係る動画画素を一組のグループとし、各動画画素に対して対応するフレームIDを付与する。グループ化は、例えば、フレームの左上の位置に係る動画画素から右方向に進み、一列分が終了したら次の段の一番左の位置に係る動画画素に進む、といった順番によって行う。また、グループ化の順番に従って、各グループにグループIDを付与する。
【0053】
次に、制御部3は、格子角度割り当て手段27によって、格子角度を割り当てる(S104)。具体的には、制御部3は、フレームIDごとに、隣接するフレームID間に係る格子角度の差を略均等になるように、フレームIDの順序に従って格子角度を割り当てる。ここで、動画画素にはフレームIDが付与されていることから、フレームIDごとに格子角度を割り当てることは、結果として動画画素と対応づけられた格子状セルに対して格子角度を割り当てることになる。
【0054】
次に、制御部3は、格子状セルを決定し(S105)、格子面積割り当て手段29によって、格子面積を割り当てる(S106)。具体的には、制御部3は、例えば、グループIDの昇順およびフレームIDの昇順によって格子状セルを決定する。次に、制御部3は、決定した格子状セルに対応付けられた動画画素の輝度値を取得し、輝度値に比例するように格子面積を割り当てる。
【0055】
次に、制御部3は、全ての格子状セルについて処理が終了したかどうか確認する(S107)。
処理が終了していない場合、S105から繰り返す(S107のNo)。
処理が終了している場合、S108に進む(S107のYes)。
【0056】
次に、制御部3は、版下データ作成手段31によって、版下データを作成する(S108)。具体的には、制御部3は、S106において割り当てられた格子面積、およびS101において入力された格子状セルの一辺の長さから、異方性反射領域の一辺の長さを算出する。次に、制御部3は、S101において入力された格子状セルの格子ピッチ、S101において入力された格子線の線幅と間隔との比率、S106において割り当てられた格子角度、および算出された異方性反射領域の一辺の長さを基に、格子線を黒色、格子線以外の部分を白色で示した二値データを作成する。
以上のとおり、動画記録装置1は、異方性反射媒体の作製に用いる版下データを作成する。
【0057】
次に、図8を参照しながら、異方性反射媒体の作製工程について説明する。
図8は、異方性反射媒体の作製工程を示す図である。
図8に示すように、異方性反射媒体の作製工程は、S201の版下データ作成工程、S202の原版作製工程、およびS203の媒体作製工程が含まれる。
【0058】
版下データ作成工程では、前述した動画記録装置1を用いて、版下データを作成する。詳細は前述したとおりである。
【0059】
原版作製工程では、版下データ作成工程で作成された版下データを基に、媒体作製工程に合わせた原版を作製する。
媒体作製工程が印刷の場合、各種製版装置を用いる。但し、無版印刷の場合は、原版作成工程は省略される。また、媒体作製工程において箔押し、エンボスを行う場合、レーザー彫刻、機械切削、またはエッチング等の各種方法によって、原型となる金型、エンボス版等を作製する。
また、ホログラムを作製する場合、原版の作製方法としては、2光束干渉による方法、グレーティングプロット法、電子線描画装置を用いる方法等がある。後述する実施例における原版作製工程においては、格子描画の精度が高く、ノイズが少ないことから、電子線描画装置を用いている。
【0060】
媒体作製工程では、原版作製工程で作製された原版を用いて、異方性反射媒体を作製する。
印刷の場合、各種の印刷機によってUV硬化インキ等を用いることで、媒体表面上に凹凸を形成する。また、エンボス、箔押しを行う場合、各種のプレス装置を用いて、媒体表面上に凹凸を形成する。
また、ホログラムを作製する場合、原版に形成された凹凸をPET(ポリエチレンテレフタレート)等の基材に転写する装置、凹凸に反射層を蒸着する装置、粘着剤や接着剤を塗工する装置等を用いる。
【実施例】
【0061】
次に、図9から図12までを参照しながら、本発明の実施の形態に係る実施例について説明する。
図9は、実施例に係る動画シーケンスを示す図である。図10は、図9の動画シーケンスに対する各格子状セルの格子角度を示す図である。図11は、図9の動画シーケンスに対する各格子状セルの格子面積を示す図である。図12は、図9の動画シーケンスに対する版下データを示す図である。
【0062】
図9に示すように、本実施例の動画シーケンスは、球体と立方体の物体を異なる角度から観察した場合の4つのフレームを含む。フレームに係る画像は、左から順に観察する角度が変化しており、左から順に画像を再生することで、観察者が球体と立方体の物体の周囲を移動しているようなアニメーションとなる。
【0063】
図10の左図は、図9の動画シーケンスに対して、本実施の形態に係る格子角度割り当て手段27によって割り当てた格子角度を、濃度で表現したものである。図10の右図は、左図の拡大図である。図9の動画シーケンスは、4つのフレームを含むことから、割り当てられる格子角度は4通りである。また、本実施例では、4つのフレームの同一の位置に係る動画画素に対応する格子状セルを一組とし、縦の格子状セルの個数×横の格子状セルの個数が2×2となるようにグループ化した。これによって、作製された異方性反射媒体を観察する際、フレームごとに位置がずれて観察されることがなく、フレーム間の切り替わりがスムーズな動画が再生される。尚、例えば、縦の格子状セルの個数×横の格子状セルの個数が1×4となるようにグループ化しても良い。
【0064】
ここで、格子角度は、再生する順序が隣接するフレーム間に係る格子角度の差が略均等になるように割り当てられている。これによって、異方性反射媒体を観察する際、画質の高い動画が再生される。また、格子角度は、フレームを再生する順序に従い割り当てられている。これは、異方性反射媒体を観察する際、格子角度の大きさの順序に従い各画像が観察されることによる。すなわち、格子角度の大きさの順序とフレームを再生する順序とを一致させることで、当初想定していたフレームの再生順に画像が観察される。
【0065】
図11の左図は、図9の動画シーケンスに対して、本発明の実施の形態に係る格子面積割り当て手段29によって割り当てた格子面積を、濃度で表現したものである。図11の右図は、左図の拡大図である。図9の動画シーケンスに含まれるフレームに係る画像が256階調のモノクロ画像とすると、階調変更を行わない場合、格子面積は256通りとなる。尚、元となる画像に対して階調変更を行い、格子面積のパターンを256通りから少なくしても良い。
【0066】
ここで、格子面積は、対応する動画画素の輝度値に比例して割り当てられている。これによって、元の画像の階調が、異方性反射媒体で観察される画像の階調に反映される。
【0067】
図12は、図9の動画シーケンスに対して、本発明の実施の形態に係る動画記録装置1を用いて作成された版下データを示している。前述したように、各格子状セルは、4つのフレームの同一の位置に係る動画画素に対応する格子状セルを一組としてグループ化されている。図12では、隣り合う格子状セル同士の間に、格子状セルとしての領域ではないマージンが現されている。しかしながら、このマージンは必須構成要素ではなく、実際には隣り合う格子状セルが接するようにしても良い。
【0068】
本実施例では、図12に示す版下データに基づいて、前述の図8に示した作製工程によって異方性反射媒体を作製した。すなわち、微細な格子状セルの集合により形成され、動画が記録された異方性反射媒体であって、各格子状セルは、動画のフレームに係る画像の構成要素である動画画素と対応づけられ、動画画素の位置を基準にグループ化され、再生する順序が隣接するフレーム間に係る格子角度の差が略均等になるように割り当てられ、フレームを再生する順序に従い格子角度が割り当てられ、格子面積が対応する動画画素の輝度値に比例して割り当てられたものを作製した。
【0069】
このようにして作製した異方性反射媒体は、格子角度と入射する光の方向と観察方向との相対的な変化によって、図9に示した動画シーケンスに係る動画を再生する。格子角度と入射する光の方向と観察方向との相対的な変化は、例えば、異方性反射媒体の位置と入射する光の方向とを固定しておき、観察者が観察する方向を変化させるようにしても良い。また、例えば、入射する光の方向と観察方向とを固定し、異方性反射媒体の位置を変化させるようにしても良い。
【0070】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る動画記録装置1は、動画のフレームに係る画像の構成要素である動画画素をグループ化し、フレームの再生順序を示すフレームIDを動画画素に付与する。次に、動画記録装置1は、格子状セルに対して、対応する動画画素に付与されたフレームIDごとに格子角度を割り当てるとともに、対応する動画画素の輝度値に応じて格子面積を割り当てる。次に、動画記録装置1は、格子角度割り当て手段によって割り当てられた格子角度、および格子面積割り当て手段によって割り当てられた格子面積に基づいて、格子状セル群の凹凸を表現する版下データを作成する。
【0071】
そして、作成された版下データを基に原版を作製する原版作成工程、および原版作製工程で作製された原版を用いて異方性反射媒体を作製する媒体作製工程を行うことによって、動画が記録された異方性反射媒体が作製される。
【0072】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る動画記録装置等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】動画記録装置1を実現するコンピュータのハードウェア構成図
【図2】動画シーケンスを示す図
【図3】動画画素を示す図
【図4】格子状セルを示す図
【図5】動画記録装置1の機能の概要を示すブロック図
【図6】格子角度の割り当ての一例を示す図
【図7】動画記録装置1が行う処理の流れを示すフローチャート
【図8】異方性反射媒体の作製工程を示す図
【図9】実施例に係る動画シーケンスを示す図
【図10】図9の動画シーケンスに対する各格子状セルの格子角度を示す図
【図11】図9の動画シーケンスに対する各格子状セルの格子面積を示す図
【図12】図9の動画シーケンスに対する版下データを示す図
【符号の説明】
【0074】
1………動画記録装置
3………制御部
5………記憶部
7………メディア入出力部
9………通信制御部
11………入力部
13………表示部
15………周辺機器I/F部
17………バス
19………ネットワーク
21………パラメータ入力手段
23………動画シーケンス入力手段
25………動画画素グループ化手段
27………格子角度割り当て手段
29………格子面積割り当て手段
31………版下データ作成手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な格子状セルの集合により形成され、動画が記録される異方性反射媒体の作製に用いる動画記録装置、動画記録方法、プログラムおよび当該異方性反射媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷物等の媒体は、一般に、平滑な表面を持つ。この平滑な表面に対し、向きの揃った細かい傷をつけると、媒体の表面に対して入射した光が正反射方向ではない方向に強く反射する。このような現象を異方性反射現象という。以下、異方性反射現象が生じる表面を持つ媒体を異方性反射媒体と呼ぶこととする。
このような異方性反射現象を利用する従来技術の一つとして、3次元形状データが持つ法線方向ベクトルの向きに基づいて、表面に付与する傷の向きを制御することにより、異方性反射媒体上に3次元形状の曲面に対する光の反射の変化を再現する技法が提案されている(特許文献1)。
【0003】
また、異方性反射媒体の一種とも言える回折格子では、モチーフの画素領域ごとに格子線の配置角度を変化させて、回折格子記録媒体上に回折パターンを記録する。このような回折格子記録媒体は、(広義の意味において)ホログラムとして利用されている。このタイプのホログラムでは、複数の異なるモチーフを重畳記録する技法も提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2001−138700号公報
【特許文献2】特開平08−75192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示される技法によって作製された異方性反射媒体では、動的な照明方向の変化に対する曲面の見え方を表現することはできるが、あくまでも物体の静的な状態を再現したものに過ぎない。すなわち、視線方向を変化させて、物体を動的に観察するような変化を演出することはできない。
【0005】
また、特許文献2に示される技法によって作製されたホログラムでは、複数の異なるモチーフを重畳記録することはできるが、複数の異なるモチーフが切り替わって表示される、または複数の異なるモチーフが重なって表示されるといった演出に留まる。
【0006】
更に、回折パターンではなく干渉縞パターンを記録する狭義のホログラフィでは、物体の3次元的な見え方を再現することができるが、撮影、データ作成、原版作製等のコストが高く、輝度も十分ではないといった課題が存在する。また、物体の見え方の変化ではなく、物体自体の形状の変化などは表現することができない。
【0007】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、動画が記録される異方性反射媒体の作製に用いる動画記録装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために第1の発明は、微細な格子状セルの集合により形成され、動画が記録される異方性反射媒体の作製に用いる動画記録装置であって、前記動画のフレームに係る画像の構成要素である動画画素をグループ化し、前記フレームの再生順序を示すフレームIDを前記動画画素に付与する動画画素グループ化手段と、前記格子状セルに対して、対応する動画画素に付与されたフレームIDごとに格子角度を割り当てる格子角度割り当て手段と、前記格子状セルに対して、対応する動画画素の輝度値に応じて格子面積を割り当てる格子面積割り当て手段と、前記格子角度割り当て手段によって割り当てられた前記格子角度、および前記格子面積割り当て手段によって割り当てられた前記格子面積に基づいて、前記格子状セル群の凹凸を表現する版下データを作成する版下データ作成手段と、を具備することを特徴とする動画記録装置である。第1の発明に係る動画記録装置の使用をすることによって、動画が記録される異方性反射媒体の作製に用いる版下データを作成できる。
【0009】
第1の発明における動画画素グループ化手段は、前記動画画素の位置を基準にグループ化するものであることが望ましい。例えば、各フレームの同一の位置に係る動画画素を一組のグループとすることで、作製された異方性反射媒体を観察する際、フレームごとに位置がずれて観察されることがなく、フレーム間の切り替わりがスムーズな動画が再生される。
【0010】
また、第1の発明における格子角度割り当て手段は、隣接する前記フレームID間に係る前記格子角度の差を略均等になるように割り当てることが望ましい。これによって、作製された異方性反射媒体を観察する際、画質の高い動画が再生される。
【0011】
また、第1の発明における格子角度割り当て手段は、前記フレームIDの順序に従って割り当てることが望ましい。これは、作製された異方性反射媒体を観察する際、格子角度の大きさの順序に従い各画像が観察されることによる。すなわち、格子角度の大きさの順序とフレームを再生する順序とを一致させることで、当初想定していたフレームの再生順に画像が観察される。
【0012】
また、第1の発明における格子面積割り当て手段は、前記動画画素の輝度値に比例して前記格子面積を割り当てることが望ましい。これによって、元の画像の階調が、異方性反射媒体で観察される画像の階調に反映される。
【0013】
第2の発明は、微細な格子状セルの集合により形成され、動画が記録される異方性反射媒体の作製に用いる動画記録方法であって、前記動画のフレームに係る画像の構成要素である動画画素をグループ化し、前記フレームの再生順序を示すフレームIDを前記動画画素に付与するステップと、前記格子状セルに対して、対応する動画画素に付与されたフレームIDごとに格子角度を割り当てるステップと、前記格子状セルに対して、対応する動画画素の輝度値に応じて格子面積を割り当てるステップと、前記格子角度割り当て手段によって割り当てられた前記格子角度、および前記格子面積割り当て手段によって割り当てられた前記格子面積に基づいて、前記格子状セル群の凹凸を表現する版下データを作成するステップと、を含むことを特徴とする動画記録方法である。第2の発明に係る動画記録方法の使用をすることによって、動画が記録される異方性反射媒体の作製に用いる版下データを作成できる。尚、電気通信回線を通じて、第2の発明に係る方法によって作成された版下データを提供することもできる。
【0014】
第2の発明における動画画素をグループ化するステップは、前記動画画素の位置を基準にグループ化するものであることが望ましい。これによる効果は、第1の発明の説明において前述したとおりである。
【0015】
また、第2の発明における格子角度を割り当てるステップは、隣接する前記フレームID間に係る前記格子角度の差を略均等になるように割り当てることが望ましい。これによる効果は、第1の発明の説明において前述したとおりである。
【0016】
また、第2の発明における格子角度を割り当てるステップは、前記フレームIDの順序に従って割り当てることが望ましい。これによる効果は、第1の発明の説明において前述したとおりである。
【0017】
また、第2の発明における格子面積を割り当てるステップは、前記動画画素の輝度値に比例して前記格子面積を割り当てることが望ましい。これによる効果は、第1の発明の説明において前述したとおりである。
【0018】
第3の発明は、コンピュータを第1の発明である動画記録装置として機能させるプログラムである。この第3の発明に係るプログラムをコンピュータにインストールすることによって、第1の発明に係る動画記録装置を得ることができる。
【0019】
第4の発明は、第2の発明である動画記録方法によって作成された版下データに基づいて、表面に前記格子状セルの集合が形成され、動画が記録された異方性反射媒体である。この異方性反射媒体は、格子角度と入射する光の方向と観察方向との相対的な変化によって、動画を再生する。
【0020】
第5の発明は、微細な格子状セルの集合により形成され、動画が記録された異方性反射媒体であって、前記格子状セルは、前記動画のフレームに係る画像の構成要素である動画画素と対応づけられ、前記動画画素の位置を基準にグループ化され、再生する順序が隣接するフレーム間に係る格子角度の差が略均等になるように割り当てられ、前記フレームを再生する順序に従い前記格子角度が割り当てられ、格子面積が対応する動画画素の輝度値に比例して割り当てられたものであり、前記格子角度と入射する光の方向と観察方向との相対的な変化によって、前記動画を再生するものであることを特徴とする異方性反射媒体である。この異方性反射媒体は、フレーム間の切り替わりがスムーズであり、画質が高く、当初想定していたフレームの再生順に動画を再生し、かつ元の画像の階調が、異方性反射媒体で観察される画像の階調に反映されたものとなっている。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、動画が記録される異方性反射媒体の作製に用いる動画記録装置等を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下図面に基づいて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態に係る動画記録装置1を実現するコンピュータのハードウェア構成図である。尚、図1のハードウェア構成は一例であり、用途、目的に応じて様々な構成を採ることが可能である。
動画記録装置1は、制御部3、記憶部5、メディア入出力部7、通信制御部9、入力部11、表示部13、周辺機器I/F部15等が、バス17を介して接続される。
【0024】
制御部3は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成される。
【0025】
CPUは、記憶部5、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス17を介して接続された各装置を駆動制御し、動画記録装置1が行う後述する処理(図7等参照)を実現する。
ROMは、不揮発性メモリであり、コンピュータのブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。
RAMは、揮発性メモリであり、記憶部5、ROM、記録媒体等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部3が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
【0026】
記憶部5は、HDD(ハードディスクドライブ)であり、制御部3が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティングシステム)等が格納される。プログラムに関しては、OS(オペレーティングシステム)に相当する制御プログラムや、後述の処理に相当するアプリケーションプログラムが格納されている。
これらの各プログラムコードは、制御部3により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて各種の手段として実行される。
【0027】
メディア入出力部7(ドライブ装置)は、データの入出力を行い、例えば、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、CDドライブ(−ROM、−R、−RW等)、DVDドライブ(−ROM、−R、−RW等)、MOドライブ等のメディア入出力装置を有する。
【0028】
通信制御部9は、通信制御装置、通信ポート等を有し、コンピュータとネットワーク19間の通信を媒介する通信インタフェースであり、ネットワーク19を介して、他のコンピュータ間との通信制御を行う。
【0029】
入力部11は、データの入力を行い、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、テンキー等の入力装置を有する。
入力部11を介して、コンピュータに対して、操作指示、動作指示、データ入力等を行うことができる。
【0030】
表示部13は、CRTモニタ、液晶パネル等のディスプレイ装置、ディスプレイ装置と連携してコンピュータのビデオ機能を実現するための論理回路等(ビデオアダプタ等)を有する。
【0031】
周辺機器I/F(インタフェース)部15は、コンピュータに周辺機器を接続させるためのポートであり、周辺機器I/F部15を介してコンピュータは周辺機器とのデータの送受信を行う。周辺機器I/F部15は、USBやIEEE1394やRS−232C等で構成されており、通常複数の周辺機器I/Fを有する。周辺機器との接続形態は有線、無線を問わない。
【0032】
バス17は、各装置間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。
【0033】
次に、図2から図4を参照しながら、後述の説明にて用いる用語の意味を説明する。
図2は、動画シーケンスを示す図である。図3は、動画画素を示す図である。図4は、格子状セルを示す図である。
【0034】
一般に、動画とは動いている画像であり、動かない画像である静止画と区別される。動画は、時系列を細かく分割した多数の静止画像を高速に切り替えて表示することで、人間の視覚にはそれらが連続的に動いているように見えるという特性を利用したものである。本実施の形態においても、動画の再生とは、複数の静止画像を切り替えて表示することを意味する。但し、本発明の実施の形態では、映画やテレビジョン放送のように長時間のものを対象とするわけではなく、物体の形状変化等を表現するアニメーションのように短時間のものを対象とする。
【0035】
図2に示すように、動画シーケンスとは、複数のフレームの集まりである。図2では、フレーム1からフレームnまでのn個のフレームを一つの動画シーケンスとしている。各フレームは任意の静止画像で良く、互いに連続性のないものでも構わないが、視覚的効果を高めるためには、動画シーケンス全体として何らかの連続性を持ったものであることが望ましい。
【0036】
また、図3に示すように、フレームk(1≦k≦n)は、動画画素の集合である。動画画素は、フレームkに定義された二次元座標として示される位置によって特定される。図3では、フレームkの位置(x,y)の動画画素を示している。フレーム1からフレームnは、同じ数の動画画素によって分割されているものとする。また、各フレームは、黒と白の濃淡で表現されたモノクロ画像とする。すなわち、各動画画素は、例えば、256階調の輝度値の情報(輝度値0の場合が黒、輝度値255の場合が白等)を有する。
【0037】
前述の動画が記録される異方性反射媒体は、微細な格子状セルの集合により形成される。図4に示すように、格子状セル51は、例えば、53を格子状セル51の一辺の長さとする正方形をなす。尚、格子状セル51の形状は、正方形に限定をするものではないが、正方形であれば特に問題が生じることはない。
【0038】
格子状セル51内には、異方性反射領域55が形成される。異方性反射領域55とは、格子状セル51の領域のうち異方性反射現象に貢献する領域である。異方性反射領域55は、例えば、57を異方性反射領域55の一辺の長さとする正方形をなす。尚、異方性反射領域55の形状は、正方形に限定をするものではないが、正方形であれば特に問題が生じることはない。また、図4では、異方性反射領域55は、格子状セル51の中央に形成されているが、格子状セル51の四隅のいずれかに偏るように形成されても良い。そして、格子状セル51の面積に対する異方性反射領域55の相対的な面積を、特に、格子面積と呼ぶこととする。
【0039】
また、異方性反射領域55内には、黒色で示された複数の格子線59が形成される。格子線59は、同一の異方性反射領域55内においては、格子角度61に従い、互いに平行である。また、63を格子線59の線幅、65を格子線同士の間隔とすると、63と65とを足した長さが格子ピッチ67となる。尚、最終的に作製された異方性反射媒体において、黒色で示した部分、すなわち格子線59と、白色で示した部分、すなわち格子線59以外とのどちらを凸状に形成しても良い。すなわち、格子線59が凸状、格子線59以外が凹状でも良いし、格子線59が凹状、格子線59以外が凸状でも良い。
【0040】
次に、図5、図6を参照しながら、動画記録装置1の機能を実現する構成について説明する。
図5は、動画記録装置1の機能の概要を示すブロック図である。図6は、格子角度の割り当ての一例を示す図である。
【0041】
動画記録装置1は、パラメータ入力手段21、動画シーケンス入力手段23、動画画素グループ化手段25、格子角度割り当て手段27、格子面積割り当て手段29、版下データ作成手段31等を具備する。
【0042】
パラメータ入力手段21は、版下データの作成に必要なパラメータを入力する。必要なパラメータとは、動画のフレームの数、異方性反射媒体の縦と横の大きさ、格子状セルの一辺の大きさ(格子状セルが正方形の場合)、格子状セルの格子ピッチ、格子線の線幅と間隔との比率等である。データの入力は、入力部11を介しても良いし、通信制御部9によってネットワーク19を介して他のコンピュータから入力しても良い。また、一部のパラメータは、デフォルト値として記憶部5が記憶していても良い。
【0043】
動画シーケンス入力手段23は、異方性反射媒体に記録する動画シーケンスを入力する。データの入力は、メディア入出力部7によって各メディアから行っても良い。また、通信制御部9によってネットワーク19を介して他のコンピュータから行っても良い。また、周辺機器I/F部15によって各周辺機器から行っても良い。
入力された動画シーケンスは、一旦、記憶部5に記憶し、制御部3が記憶部5から読み出して後述する処理を行っても良い。また、制御部3のRAMに保持し、後述する処理を行っても良い。
【0044】
また、動画シーケンス入力手段23は、入力された動画シーケンスから異方性反射媒体に記録する所望のフレームのみを抽出する。更に、入力された動画シーケンスに含まれる各フレームがカラー画像の場合、動画シーケンス入力手段23は、各フレームの画像を単色化する。
【0045】
動画画素グループ化手段25は、動画のフレームに係る画像の構成要素である動画画素をグループ化し、フレームの再生順序を示すフレームIDを動画画素に付与する。動画画素のグループ化は、動画画素の位置を基準に行う。例えば、動画のフレームの数がn個の場合、各フレームの同一の位置に係るn個の動画画素を一組のグループとする。動画画素には、対応するフレームIDを付与する。グループの数は、各フレームに含まれる動画画素の数と同一になる。
【0046】
格子角度割り当て手段27は、格子状セルに対して、対応する動画画素に付与されたフレームIDごとに格子角度を割り当てる。格子角度割り当て手段27は、隣接するフレームID間に係る格子角度の差を略均等になるように割り当てることが望ましい。また、格子角度割り当て手段27は、フレームIDの順序に従って割り当てることが望ましい。ここで、格子角度は、例えば、0度から90度の範囲を利用する。
【0047】
図6は、フレームの数が10個の場合の格子角度の割り当ての一例を示している。格子角度の利用範囲が0度から90度とすると、格子角度割り当て手段27は、隣接するフレームID間に係る格子角度の差を10度とし、均等に割り当てる。そして、図6に示すように、格子角度割り当て手段27は、フレーム1に係る格子状セルに対して格子角度0度、フレーム2に係る格子状セルに対して格子角度10度、フレーム3に係る格子状セルに対して格子角度20度、・・・、フレーム10に係る格子状セルに対して格子角度90度、というように、フレームIDの順序に従って割り当てる。
【0048】
格子面積割り当て手段29は、格子状セルに対して、対応する動画画素の輝度値に応じて格子面積を割り当てる。格子面積割り当て手段29は、動画画素の輝度値に比例するように格子面積を割り当てることが望ましい。例えば、格子面積割り当て手段29は、輝度値が255の場合は格子面積を1.0(=255÷255)、輝度値が0の場合は格子面積を0.0(=0÷255)、輝度値が60の場合は格子面積を0.235(≒60÷255)、というように、輝度値に比例するように割り当てる。
【0049】
版下データ作成手段31は、格子角度割り当て手段27によって割り当てられた格子角度、および格子面積割り当て手段29によって割り当てられた格子面積に基づいて、前記格子状セル群の凹凸を表現する版下データを作成する。
具体的には、まず、版下データ作成手段31は、次式を用いて、割り当てられた格子面積、および入力された格子状セルの一辺の長さから、異方性反射領域の一辺の長さを算出する。
【数1】
ただし、lは異方性反射領域の一辺の長さ、sは格子面積、Lは格子状セルの一辺の長さとする。
【0050】
次に、版下データ作成手段31は、入力された格子状セルの格子ピッチ、入力された格子線の線幅と間隔との比率、割り当てられた格子角度、および算出された異方性反射領域の一辺の長さを基に、格子線を黒色、格子線以外の部分を白色で示した二値データを作成する。尚、格子線を白色、格子線以外の部分を黒色としても良い。
版下データ作成手段31は、以上の処理を全ての格子状セルに対して行うことで、格子状セル群の凹凸を表現する版下データを作成する。
【0051】
次に、図7を参照しながら、動画記録装置1の動作の詳細について説明する。
図7は、動画記録装置1が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【0052】
図7に示すように、入力部11等を介して、パラメータ入力手段21によるパラメータの入力(S101)、動画シーケンス入力手段23による動画シーケンスの入力(S102)がなされると、制御部3は、動画画素グループ化手段25によって、動画画素をグループ化する(S103)。具体的には、制御部3は、入力された動画の各フレームの同一の位置に係る動画画素を一組のグループとし、各動画画素に対して対応するフレームIDを付与する。グループ化は、例えば、フレームの左上の位置に係る動画画素から右方向に進み、一列分が終了したら次の段の一番左の位置に係る動画画素に進む、といった順番によって行う。また、グループ化の順番に従って、各グループにグループIDを付与する。
【0053】
次に、制御部3は、格子角度割り当て手段27によって、格子角度を割り当てる(S104)。具体的には、制御部3は、フレームIDごとに、隣接するフレームID間に係る格子角度の差を略均等になるように、フレームIDの順序に従って格子角度を割り当てる。ここで、動画画素にはフレームIDが付与されていることから、フレームIDごとに格子角度を割り当てることは、結果として動画画素と対応づけられた格子状セルに対して格子角度を割り当てることになる。
【0054】
次に、制御部3は、格子状セルを決定し(S105)、格子面積割り当て手段29によって、格子面積を割り当てる(S106)。具体的には、制御部3は、例えば、グループIDの昇順およびフレームIDの昇順によって格子状セルを決定する。次に、制御部3は、決定した格子状セルに対応付けられた動画画素の輝度値を取得し、輝度値に比例するように格子面積を割り当てる。
【0055】
次に、制御部3は、全ての格子状セルについて処理が終了したかどうか確認する(S107)。
処理が終了していない場合、S105から繰り返す(S107のNo)。
処理が終了している場合、S108に進む(S107のYes)。
【0056】
次に、制御部3は、版下データ作成手段31によって、版下データを作成する(S108)。具体的には、制御部3は、S106において割り当てられた格子面積、およびS101において入力された格子状セルの一辺の長さから、異方性反射領域の一辺の長さを算出する。次に、制御部3は、S101において入力された格子状セルの格子ピッチ、S101において入力された格子線の線幅と間隔との比率、S106において割り当てられた格子角度、および算出された異方性反射領域の一辺の長さを基に、格子線を黒色、格子線以外の部分を白色で示した二値データを作成する。
以上のとおり、動画記録装置1は、異方性反射媒体の作製に用いる版下データを作成する。
【0057】
次に、図8を参照しながら、異方性反射媒体の作製工程について説明する。
図8は、異方性反射媒体の作製工程を示す図である。
図8に示すように、異方性反射媒体の作製工程は、S201の版下データ作成工程、S202の原版作製工程、およびS203の媒体作製工程が含まれる。
【0058】
版下データ作成工程では、前述した動画記録装置1を用いて、版下データを作成する。詳細は前述したとおりである。
【0059】
原版作製工程では、版下データ作成工程で作成された版下データを基に、媒体作製工程に合わせた原版を作製する。
媒体作製工程が印刷の場合、各種製版装置を用いる。但し、無版印刷の場合は、原版作成工程は省略される。また、媒体作製工程において箔押し、エンボスを行う場合、レーザー彫刻、機械切削、またはエッチング等の各種方法によって、原型となる金型、エンボス版等を作製する。
また、ホログラムを作製する場合、原版の作製方法としては、2光束干渉による方法、グレーティングプロット法、電子線描画装置を用いる方法等がある。後述する実施例における原版作製工程においては、格子描画の精度が高く、ノイズが少ないことから、電子線描画装置を用いている。
【0060】
媒体作製工程では、原版作製工程で作製された原版を用いて、異方性反射媒体を作製する。
印刷の場合、各種の印刷機によってUV硬化インキ等を用いることで、媒体表面上に凹凸を形成する。また、エンボス、箔押しを行う場合、各種のプレス装置を用いて、媒体表面上に凹凸を形成する。
また、ホログラムを作製する場合、原版に形成された凹凸をPET(ポリエチレンテレフタレート)等の基材に転写する装置、凹凸に反射層を蒸着する装置、粘着剤や接着剤を塗工する装置等を用いる。
【実施例】
【0061】
次に、図9から図12までを参照しながら、本発明の実施の形態に係る実施例について説明する。
図9は、実施例に係る動画シーケンスを示す図である。図10は、図9の動画シーケンスに対する各格子状セルの格子角度を示す図である。図11は、図9の動画シーケンスに対する各格子状セルの格子面積を示す図である。図12は、図9の動画シーケンスに対する版下データを示す図である。
【0062】
図9に示すように、本実施例の動画シーケンスは、球体と立方体の物体を異なる角度から観察した場合の4つのフレームを含む。フレームに係る画像は、左から順に観察する角度が変化しており、左から順に画像を再生することで、観察者が球体と立方体の物体の周囲を移動しているようなアニメーションとなる。
【0063】
図10の左図は、図9の動画シーケンスに対して、本実施の形態に係る格子角度割り当て手段27によって割り当てた格子角度を、濃度で表現したものである。図10の右図は、左図の拡大図である。図9の動画シーケンスは、4つのフレームを含むことから、割り当てられる格子角度は4通りである。また、本実施例では、4つのフレームの同一の位置に係る動画画素に対応する格子状セルを一組とし、縦の格子状セルの個数×横の格子状セルの個数が2×2となるようにグループ化した。これによって、作製された異方性反射媒体を観察する際、フレームごとに位置がずれて観察されることがなく、フレーム間の切り替わりがスムーズな動画が再生される。尚、例えば、縦の格子状セルの個数×横の格子状セルの個数が1×4となるようにグループ化しても良い。
【0064】
ここで、格子角度は、再生する順序が隣接するフレーム間に係る格子角度の差が略均等になるように割り当てられている。これによって、異方性反射媒体を観察する際、画質の高い動画が再生される。また、格子角度は、フレームを再生する順序に従い割り当てられている。これは、異方性反射媒体を観察する際、格子角度の大きさの順序に従い各画像が観察されることによる。すなわち、格子角度の大きさの順序とフレームを再生する順序とを一致させることで、当初想定していたフレームの再生順に画像が観察される。
【0065】
図11の左図は、図9の動画シーケンスに対して、本発明の実施の形態に係る格子面積割り当て手段29によって割り当てた格子面積を、濃度で表現したものである。図11の右図は、左図の拡大図である。図9の動画シーケンスに含まれるフレームに係る画像が256階調のモノクロ画像とすると、階調変更を行わない場合、格子面積は256通りとなる。尚、元となる画像に対して階調変更を行い、格子面積のパターンを256通りから少なくしても良い。
【0066】
ここで、格子面積は、対応する動画画素の輝度値に比例して割り当てられている。これによって、元の画像の階調が、異方性反射媒体で観察される画像の階調に反映される。
【0067】
図12は、図9の動画シーケンスに対して、本発明の実施の形態に係る動画記録装置1を用いて作成された版下データを示している。前述したように、各格子状セルは、4つのフレームの同一の位置に係る動画画素に対応する格子状セルを一組としてグループ化されている。図12では、隣り合う格子状セル同士の間に、格子状セルとしての領域ではないマージンが現されている。しかしながら、このマージンは必須構成要素ではなく、実際には隣り合う格子状セルが接するようにしても良い。
【0068】
本実施例では、図12に示す版下データに基づいて、前述の図8に示した作製工程によって異方性反射媒体を作製した。すなわち、微細な格子状セルの集合により形成され、動画が記録された異方性反射媒体であって、各格子状セルは、動画のフレームに係る画像の構成要素である動画画素と対応づけられ、動画画素の位置を基準にグループ化され、再生する順序が隣接するフレーム間に係る格子角度の差が略均等になるように割り当てられ、フレームを再生する順序に従い格子角度が割り当てられ、格子面積が対応する動画画素の輝度値に比例して割り当てられたものを作製した。
【0069】
このようにして作製した異方性反射媒体は、格子角度と入射する光の方向と観察方向との相対的な変化によって、図9に示した動画シーケンスに係る動画を再生する。格子角度と入射する光の方向と観察方向との相対的な変化は、例えば、異方性反射媒体の位置と入射する光の方向とを固定しておき、観察者が観察する方向を変化させるようにしても良い。また、例えば、入射する光の方向と観察方向とを固定し、異方性反射媒体の位置を変化させるようにしても良い。
【0070】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る動画記録装置1は、動画のフレームに係る画像の構成要素である動画画素をグループ化し、フレームの再生順序を示すフレームIDを動画画素に付与する。次に、動画記録装置1は、格子状セルに対して、対応する動画画素に付与されたフレームIDごとに格子角度を割り当てるとともに、対応する動画画素の輝度値に応じて格子面積を割り当てる。次に、動画記録装置1は、格子角度割り当て手段によって割り当てられた格子角度、および格子面積割り当て手段によって割り当てられた格子面積に基づいて、格子状セル群の凹凸を表現する版下データを作成する。
【0071】
そして、作成された版下データを基に原版を作製する原版作成工程、および原版作製工程で作製された原版を用いて異方性反射媒体を作製する媒体作製工程を行うことによって、動画が記録された異方性反射媒体が作製される。
【0072】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る動画記録装置等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】動画記録装置1を実現するコンピュータのハードウェア構成図
【図2】動画シーケンスを示す図
【図3】動画画素を示す図
【図4】格子状セルを示す図
【図5】動画記録装置1の機能の概要を示すブロック図
【図6】格子角度の割り当ての一例を示す図
【図7】動画記録装置1が行う処理の流れを示すフローチャート
【図8】異方性反射媒体の作製工程を示す図
【図9】実施例に係る動画シーケンスを示す図
【図10】図9の動画シーケンスに対する各格子状セルの格子角度を示す図
【図11】図9の動画シーケンスに対する各格子状セルの格子面積を示す図
【図12】図9の動画シーケンスに対する版下データを示す図
【符号の説明】
【0074】
1………動画記録装置
3………制御部
5………記憶部
7………メディア入出力部
9………通信制御部
11………入力部
13………表示部
15………周辺機器I/F部
17………バス
19………ネットワーク
21………パラメータ入力手段
23………動画シーケンス入力手段
25………動画画素グループ化手段
27………格子角度割り当て手段
29………格子面積割り当て手段
31………版下データ作成手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細な格子状セルの集合により形成され、動画が記録される異方性反射媒体の作製に用いる動画記録装置であって、
前記動画のフレームに係る画像の構成要素である動画画素をグループ化し、前記フレームの再生順序を示すフレームIDを前記動画画素に付与する動画画素グループ化手段と、
前記格子状セルに対して、対応する動画画素に付与されたフレームIDごとに格子角度を割り当てる格子角度割り当て手段と、
前記格子状セルに対して、対応する動画画素の輝度値に応じて格子面積を割り当てる格子面積割り当て手段と、
前記格子角度割り当て手段によって割り当てられた前記格子角度、および前記格子面積割り当て手段によって割り当てられた前記格子面積に基づいて、前記格子状セル群の凹凸を表現する版下データを作成する版下データ作成手段と、
を具備することを特徴とする動画記録装置。
【請求項2】
前記動画画素グループ化手段は、前記動画画素の位置を基準にグループ化するものであることを特徴とする請求項1に記載の動画記録装置。
【請求項3】
前記格子角度割り当て手段は、隣接する前記フレームID間に係る前記格子角度の差を略均等になるように割り当てることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の動画記録装置。
【請求項4】
前記格子角度割り当て手段は、前記フレームIDの順序に従って割り当てることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の動画記録装置。
【請求項5】
前記格子面積割り当て手段は、前記動画画素の輝度値に比例して前記格子面積を割り当てることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の動画記録装置。
【請求項6】
微細な格子状セルの集合により形成され、動画が記録される異方性反射媒体の作製に用いる動画記録方法であって、
前記動画のフレームに係る画像の構成要素である動画画素をグループ化し、前記フレームの再生順序を示すフレームIDを前記動画画素に付与するステップと、
前記格子状セルに対して、対応する動画画素に付与されたフレームIDごとに格子角度を割り当てるステップと、
前記格子状セルに対して、対応する動画画素の輝度値に応じて格子面積を割り当てるステップと、
前記格子角度割り当て手段によって割り当てられた前記格子角度、および前記格子面積割り当て手段によって割り当てられた前記格子面積に基づいて、前記格子状セル群の凹凸を表現する版下データを作成するステップと、
を含むことを特徴とする動画記録方法。
【請求項7】
前記動画画素をグループ化するステップは、前記動画画素の位置を基準にグループ化するものであることを特徴とする請求項6に記載の動画記録方法。
【請求項8】
前記格子角度を割り当てるステップは、隣接する前記フレームID間に係る前記格子角度の差を略均等になるように割り当てることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の動画記録方法。
【請求項9】
前記格子角度を割り当てるステップは、前記フレームIDの順序に従って割り当てることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれかに記載の動画記録方法。
【請求項10】
前記格子面積を割り当てるステップは、前記動画画素の輝度値に比例して前記格子面積を割り当てることを特徴とする請求項6から請求項9のいずれかに記載の動画記録方法。
【請求項11】
コンピュータを請求項1から請求項5のいずれかに記載の動画記録装置として機能させるプログラム。
【請求項12】
請求項6から請求項10のいずれかに記載の動画記録方法によって作成された版下データに基づいて、表面に前記格子状セルの集合が形成され、動画が記録された異方性反射媒体。
【請求項13】
微細な格子状セルの集合により形成され、動画が記録された異方性反射媒体であって、
前記格子状セルは、前記動画のフレームに係る画像の構成要素である動画画素と対応づけられ、前記動画画素の位置を基準にグループ化され、再生する順序が隣接するフレーム間に係る格子角度の差が略均等になるように割り当てられ、前記フレームを再生する順序に従い前記格子角度が割り当てられ、格子面積が対応する動画画素の輝度値に比例して割り当てられたものであり、
前記格子角度と入射する光の方向と観察方向との相対的な変化によって、前記動画を再生するものであることを特徴とする異方性反射媒体。
【請求項1】
微細な格子状セルの集合により形成され、動画が記録される異方性反射媒体の作製に用いる動画記録装置であって、
前記動画のフレームに係る画像の構成要素である動画画素をグループ化し、前記フレームの再生順序を示すフレームIDを前記動画画素に付与する動画画素グループ化手段と、
前記格子状セルに対して、対応する動画画素に付与されたフレームIDごとに格子角度を割り当てる格子角度割り当て手段と、
前記格子状セルに対して、対応する動画画素の輝度値に応じて格子面積を割り当てる格子面積割り当て手段と、
前記格子角度割り当て手段によって割り当てられた前記格子角度、および前記格子面積割り当て手段によって割り当てられた前記格子面積に基づいて、前記格子状セル群の凹凸を表現する版下データを作成する版下データ作成手段と、
を具備することを特徴とする動画記録装置。
【請求項2】
前記動画画素グループ化手段は、前記動画画素の位置を基準にグループ化するものであることを特徴とする請求項1に記載の動画記録装置。
【請求項3】
前記格子角度割り当て手段は、隣接する前記フレームID間に係る前記格子角度の差を略均等になるように割り当てることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の動画記録装置。
【請求項4】
前記格子角度割り当て手段は、前記フレームIDの順序に従って割り当てることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の動画記録装置。
【請求項5】
前記格子面積割り当て手段は、前記動画画素の輝度値に比例して前記格子面積を割り当てることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の動画記録装置。
【請求項6】
微細な格子状セルの集合により形成され、動画が記録される異方性反射媒体の作製に用いる動画記録方法であって、
前記動画のフレームに係る画像の構成要素である動画画素をグループ化し、前記フレームの再生順序を示すフレームIDを前記動画画素に付与するステップと、
前記格子状セルに対して、対応する動画画素に付与されたフレームIDごとに格子角度を割り当てるステップと、
前記格子状セルに対して、対応する動画画素の輝度値に応じて格子面積を割り当てるステップと、
前記格子角度割り当て手段によって割り当てられた前記格子角度、および前記格子面積割り当て手段によって割り当てられた前記格子面積に基づいて、前記格子状セル群の凹凸を表現する版下データを作成するステップと、
を含むことを特徴とする動画記録方法。
【請求項7】
前記動画画素をグループ化するステップは、前記動画画素の位置を基準にグループ化するものであることを特徴とする請求項6に記載の動画記録方法。
【請求項8】
前記格子角度を割り当てるステップは、隣接する前記フレームID間に係る前記格子角度の差を略均等になるように割り当てることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の動画記録方法。
【請求項9】
前記格子角度を割り当てるステップは、前記フレームIDの順序に従って割り当てることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれかに記載の動画記録方法。
【請求項10】
前記格子面積を割り当てるステップは、前記動画画素の輝度値に比例して前記格子面積を割り当てることを特徴とする請求項6から請求項9のいずれかに記載の動画記録方法。
【請求項11】
コンピュータを請求項1から請求項5のいずれかに記載の動画記録装置として機能させるプログラム。
【請求項12】
請求項6から請求項10のいずれかに記載の動画記録方法によって作成された版下データに基づいて、表面に前記格子状セルの集合が形成され、動画が記録された異方性反射媒体。
【請求項13】
微細な格子状セルの集合により形成され、動画が記録された異方性反射媒体であって、
前記格子状セルは、前記動画のフレームに係る画像の構成要素である動画画素と対応づけられ、前記動画画素の位置を基準にグループ化され、再生する順序が隣接するフレーム間に係る格子角度の差が略均等になるように割り当てられ、前記フレームを再生する順序に従い前記格子角度が割り当てられ、格子面積が対応する動画画素の輝度値に比例して割り当てられたものであり、
前記格子角度と入射する光の方向と観察方向との相対的な変化によって、前記動画を再生するものであることを特徴とする異方性反射媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−69324(P2009−69324A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236181(P2007−236181)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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