説明

包装材廃棄物からのアルミ資源回収システム

【課題】包装材廃棄物から効率的にアルミ資源を回収することができる資源回収システムの提供を目的とする。
【解決手段】包装材の廃棄物を回収する包装材廃棄物回収手段と、回収された包装材廃棄物の中からアルミ箔が積層されたアルミ箔積層包装材とアルミ蒸着されたアルミ蒸着包装材とに分別する分別手段とを有し、前記アルミ箔積層包装材を500〜620℃の温度範囲にて乾留処理する高温乾留処理手段と、前記アルミ蒸着包装材を200〜350℃の温度範囲にて乾留処理する低温乾留処理手段とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミ層を有する包装材の廃棄物からアルミ資源を回収するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品包装、飲料容器、医薬品包装、化粧品包装等の多くの分野にてアルミ層を有する包装材が広く採用されている。
アルミ層を有する包装材にはフィルム基材にアルミニウムを蒸着したアルミ蒸着包装材と、アルミ箔を基材に積層したアルミ箔積層包装材が存在する。
【0003】
アルミ箔積層包装材は、樹脂基材にアルミ箔を積層したものの他にジュースや牛乳等の液体食品を充填する容器等に用いられる包装材には、紙基材に樹脂基材を積層し、この樹脂基材にさらにアルミ箔を積層したものがある。
これらのアルミ箔は0.5μm〜5μm程度の厚みを有する。
これに対してアルミ蒸着包装材は、アルミニウムを高真空状態で抵抗加熱や高周波加熱等により加熱蒸発させ、この蒸気をフィルム基材に付着したものであり、アルミ層の厚みが1μm以下であり、一般的には5nm〜200nmである。
【0004】
このように、アルミ層を有する包装材にあっては、アルミ箔で0.5μm〜5.0μm、アルミ蒸着で5nm〜200nmと非常に薄いので燃焼させるとアルミが空気酸化され金属アルミとして回収できない。
そこで本出願人は、これまで特許文献1に示すように500〜620℃にて乾留処理することで金属アルミを資源回収する技術を提案している。
しかし、その後の研究によりアルミ蒸着包装材にあってはアルミ箔よりもさらにアルミ層の厚みが薄く、500〜620℃の温度であっても金属アルミが酸化消滅してしまうことが明らかになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−207131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、包装材廃棄物から効率的にアルミ資源を回収することができる資源回収システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る包装材廃棄物からのアルミ資源回収システムは、包装材の廃棄物を回収する包装材廃棄物回収手段と、回収された包装材廃棄物の中からアルミ箔が積層されたアルミ箔積層包装材とアルミ蒸着されたアルミ蒸着包装材とに分別する分別手段とを有し、前記アルミ箔積層包装材を500〜620℃の温度範囲にて乾留処理する高温乾留処理手段と、前記アルミ蒸着包装材を200〜350℃の温度範囲にて乾留処理する低温乾留処理手段とを有することを特徴とする。
【0008】
ここで、前記包装材に紙層を有する場合に湿式でパルプ分を回収するパルプ回収手段を有し、当該パルプ回収手段にてパルプを回収した後にアルミ資源を回収するのが好ましい。
【0009】
本発明で乾留処理とは、自然発火を抑えた条件下で熱分解させることをいい、空気の流入を断った状態で加熱してもよく、酸素濃度9%以下の貧酸素状態あるいは還元性ガス下の還元雰囲気で加熱すればよい。
【0010】
樹脂基材にはポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、セロファンの他に、ポリ塩化ビニルが存在することから、ダイオキシンの発生を抑えるためにはポリ塩化ビニルが含まれる包装材の場合には、これを分別する塩ビ分別手段を有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明にあっては、アルミ箔積層包装材とアルミ蒸着包装材との分別手段を有するのでアルミ箔とアルミ蒸着とのそれぞれに最適な乾留条件にて乾留できるので金属アルミ資源の回収効率が高い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】包装材廃棄物の種類及び乾留処理実験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
包装材の廃棄物としては、アルミ層を有しない紙容器(飲料用パック等)等と、アルミ層の有する飲料用パックに用いられる包装材、医薬品包装材(パッケージ)、化粧品包装材(パッケージ)等が存在する。
アルミ層を有する包装材には紙基材にアルミ箔を積層又はアルミ蒸着したもの、樹脂基材にアルミ箔を積層又はアルミ蒸着したもの、紙基材に樹脂基材を積層し、さらにアルミ箔を積層又はアルミ蒸着したもの等多くの種類が存在する。
また、樹脂基材にはポリ塩化ビニル(PVC)のようにダイオキシン対策が必要なものと、ポリエチレンやポリプロピレン等の特にダイオキシン対策がいらないものがある。
【0014】
多種多様の廃棄包装材が混合する中から、まず、磁性の相違により金属の有無及び金属の種類に応じて分別する電磁センサー付選別機を通過させる。
また、近赤外線センサー又は/及び色彩センサー付選別機を組み合せることで、アルミ箔付きのものとアルミ蒸着付きのものとの分別及び樹脂基材の種類毎の分別が可能である。
【0015】
図1の表には、上記の分別手段にて分別した樹脂基材からなる包装材(紙基材はない)をセラミックパイプの中に投入し、空気を断った状態で所定温度、所定時間乾留処理した結果を示す。
この結果、アルミ箔付きの廃棄包装材は600〜620℃、210〜300分にて金属アルミを回収できるが、アルミ蒸着付き廃棄包装材は350℃以下にしないとアルミ成分も酸化消滅することが明らかになった。
アルミ蒸着付きの場合には、200〜350℃の温度がよく、200℃では120分以上、250〜350℃では90分〜30分でよいことも明らかになった。
なお、紙基材を積層したものにあっては、パルパー等の湿式解離装置にてパルプ分を除去した後に乾留処理するのが好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装材の廃棄物を回収する包装材廃棄物回収手段と、
回収された包装材廃棄物の中からアルミ箔が積層されたアルミ箔積層包装材とアルミ蒸着されたアルミ蒸着包装材とに分別する分別手段とを有し、
前記アルミ箔積層包装材を500〜620℃の温度範囲にて乾留処理する高温乾留処理手段と、
前記アルミ蒸着包装材を200〜350℃の温度範囲にて乾留処理する低温乾留処理手段とを有することを特徴とする包装材廃棄物からのアルミ資源回収システム。
【請求項2】
前記包装材に紙層を有する場合に湿式でパルプ分を回収するパルプ回収手段を有し、
当該パルプ回収手段にてパルプを回収した後にアルミ資源を回収することを特徴とする請求項1記載の包装材廃棄物からのアルミ資源回収システム。

【図1】
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【公開番号】特開2012−21200(P2012−21200A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161297(P2010−161297)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(300071513)トナミ運輸株式会社 (6)
【Fターム(参考)】