説明

包装材廃棄物からの資源回収システム

【課題】アルミ箔積層タイプの回収包装材から効率的にアルミ箔資源を回収できる回収方法及び回収システムの提供を目的とし、さらには、廃棄物を利用した新エネルギー技術の提供と環境低負荷型社会の構築に貢献することを目的とする。
【解決手段】アルミ箔層が積層されている包装材の廃棄物を乾留処理してアルミ箔を回収することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ジュースや牛乳等の液体食品等の容器などに使用される包装材の廃棄物から各種資源を回収する資源回収システムに関し、特にアルミ箔層が積層された包装材から紙やアルミ箔を資源として回収するのみならず、回収したアルミ箔を燃料とした水素エネルギー供給システムに係る。
【背景技術】
【0002】
ジュースや牛乳等の液体食品などを充填する容器に用いる包装材には、紙基材のもの、紙層に樹脂を積層したラミネート紙製のもの、紙層と樹脂中間層とアルミ箔を積層したもの等が、保存期間、バリア性、遮光性等を考慮してそれぞれの目的に応じて使用されている。
この種の包装材からなる容器が使用された後は、自治体や店頭などで回収され再生紙として利用されている。
【0003】
アルミ箔を積層した包装材にあっては、例えば特許文献1に示すように、紙基材を回収する技術はあっても、パルプ等として紙層を回収した後の残渣にはアルミ箔にポリエチレン等の樹脂層が付着しているので、これまで廃棄物として埋め立て処理する方法しかなく、それが原因で容器そのもののリサイクル化が他の容器に比較して遅れているのが実情であった。
【0004】
【特許文献1】特開2006−159147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記背景技術に鑑みて、アルミ箔積層タイプの回収包装材から効率的にアルミ箔資源を回収できる回収方法及び回収システムの提供を目的とし、さらには、廃棄物を利用した新エネルギー技術の提供と環境低負荷型社会の構築に貢献することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
アルミ缶等のようにある程度厚みのあるアルミ廃棄物にあっては、加熱溶解して回収することが可能であるがアルミ箔のような非常に薄いものはかさ高く、加熱時に酸化したり、紙資源回収後の残渣に水分が含有していて加熱時に水と反応することから、単なる加熱方法では回収率が低くく、しかも溶解するには融点以上の高温加熱しなければならないためにアルミは水分との反応性が高く危険な作業でもあった。
【0007】
そこで発明者らは、種々、検討した結果、還元条件下あるいは貧酸素条件下で加熱してやればアルミ箔の酸化を抑えることができることが判明し、本発明に至った。
即ち、本発明に係る包装材廃棄物からのアルミ資源回収方法は、アルミ箔層が積層されている包装材の廃棄物を乾留処理してアルミ箔を回収することを特徴とする。
ここで、アルミ箔層が積層されている包装材とはアルミ箔状の薄いアルミ層が積層あるいは蒸着されているシート状の材料一般が含まれる。
【0008】
バリア性が高く、常温流通を可能にした牛乳パック等の液体容器として、内側のアルミ箔層と接着性の樹脂中間層と外側の紙層とからなる包装材が広く普及している。
本発明者らは、この種の包装材の使用後の回収物(廃棄物)からシステマテックに再利用資源が回収できるシステムを構築できれば環境低負荷型社会の実現に繋がると思い、リサイクル技術の開発を進めてきた。
【0009】
その結果、本発明に係る包装材廃棄物からの資源回収システムは、アルミ箔層と樹脂中間層と紙層とが積層されている包装材の廃棄物を回収する手段と、回収した包装材から紙層を回収する手段と、紙層を回収した包装材残渣を乾留処理してアルミ箔を回収する手段とを有していることを特徴とする。
この種の包装材は表側の紙層にさらにフイルムが積層されている場合もある。
上記包装材から紙資源を回収する手段としてはこれまで提案されてきた各種手段を用いることができる。
例えば、特許文献1に開示する手段を用いてもよいが、一般的には、数cm角の大きさに切断し、浸透水を用いてパルプとして回収している。
パルプが回収された残渣はアルミ箔にポリエチレン等の樹脂分が積層あるいは付着した状態になり、水分も多少含まれる。
次にこの紙層を回収した包装材残渣を乾留装置に投入する。
乾留により、アルミ箔に付着していた有機物は乾留ガス、液化物、炭化物に分離回収できる。
【0010】
紙層を回収した包装材残渣を乾留処理すると、アルミ箔に炭化物が付着した状態にはなるが炭化物の量は少なく、純度の比較的高いアルミ資源として回収できる。
この回収したアルミ箔とアルカリ性溶液とを反応させると高純度の水素を得ることができる。
従って乾留処理にて回収したアルミ箔は水素エネルギーを得る手段の優れた燃料(原料)になる。
アルミ箔を水素発生プラントまで輸送して、水素燃料電池の水素源として用いることもでき、またアルミの溶解プロセスを組み込んだ燃料電池にすると、アルミ箔は比表面積が大きく、そのまま、水素型燃料電池の燃料としても用いることができる。
【0011】
アルミ箔を水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ溶液に溶解すると溶解液から水酸化アルミニウムとして資源回収できるので回収された水酸化アルミニウムは純度が高く、凝集剤やセラミックス原料として再利用できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、アルミ箔を積層した包装材、あるいはアルミを蒸着した包装材の廃棄物から紙層が存在する場合にはその紙層を回収した残渣物を乾留処理することで高純度のアルミ箔を効率よく回収することができる。
また、包装材の回収手段、パルプの回収手段、乾留によるアルミ箔の回収手段、アルミ箔を燃料とした水素型燃料電池、水酸化アルミ回収手段等を輸送システムに組み込みシステマテックに結合させることにより、環境低負荷型社会の構築に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において特徴となる乾留条件をまず初めに検討した。
(1)試験品として容器内側アルミ箔の牛乳パックから湿式でパルプ分を回収した残渣(図2)の内、パルプ繊維を除去したもの(推定含水率20%)、発生残渣そのまま(推定含水率40%)の2種を用いた。
(2)乾留装置は、株式会社北日本テクノス製 カルボ300R(300I回転式乾留釜)を使用した。
乾留条件は図3の表1のとおりである。
(3)蛍光X線分析は、乾留後の試料について金属成分の分析を行った。
使用した装置は、パナリティカル社製 MagiXProである。
試料をサンプルホルダーに入れ、X線照射径20mmで定性分析(測定元素範囲:B〜U)を行い、その結果を基に付属アプリケーションにより金属元素別に半定量を行った。
(4)炭化物残分の測定は、乾留後の試料に残る炭化物量を求めるため、試料約3gを釉薬付き磁性蒸発皿に取り、電気炉で空気中600℃で2時間加熱した。
加熱前後の重量変化から炭化物残分を求めた。
【0014】
(乾留結果)
図4に乾留後の状態を示した。
乾留時間が短いもの(条件1、2)は、アルミが固まりとして残った。
パルプ分と水分を除き乾留時間を長くした場合(条件3)には、炭素分が見られなくなった。
図5の表2に乾留結果を示す。
乾留処理前の質量に対する乾留処理後の残分の質量を%で示し、( )の数字は液化物の回収%である。
乾留は600℃の温度で3.5〜5時間程度(条件3、4)で安定した乾留物が得られると考えられる。
図6の表3に乾留物の性状を示した。
金属はアルミが主成分でありその他、カルシウム鉄などが見られた。
残留炭素物は、(条件3、4)で少なくなり、乾留条件の影響を受けることがわかる。
これらの結果から考えると、乾留は600℃の温度で3.5〜5時間程度を基準として、残留炭素の条件に合わせて条件を検討する必要があると考えられる。
また、紙層残渣から乾燥ベースで約10%のアルミが得られることがわかった。
【0015】
本発明にて包装材から乾留手段にてアルミ箔を効率よく回収できるのでこれを用いた資源利用システムの構成例を図1に示す。
なお図1は紙層の有する包装材の例を示したが、アルミ蒸着フイルム等は直接乾留処理3に投入すればよい。
牛乳パック等の容器等の包装材廃棄物を回収する手段1はすでに自治体や店頭にて採用されているものを用いることができる。
回収した包装材廃棄物は再生紙会社等に持ち込まれ、パルプ分回収手段2にてパルプ回収され再生紙2a等になる。
パルプ分が回収された残渣分は乾留処理手段3にて約500〜620℃、好ましくは550〜620℃の範囲にて3〜6時間、好ましくは3.5時間以上乾留処理する。
乾留装置はバッチ炉でも回転炉でもよく貧酸素状態で加熱される。
乾留装置からはガス回収3aと液化分(乾留液)が回収される(3b)。
このようにして回収されたアルミ資源4は各種輸送手段5にて水素発生プラント6や水素型燃料電池7を使用した車両等の燃料ステーション等に運ばれる。
水素発生プラント6では水素エネルギー8を発生させ、利用でき、その際に発生する水酸化アルミ9は凝集剤、難燃剤、セラミックス等の原料10として利用できる。
これらの各ステップの手段や役割を社会全体で担うことで環境低負荷型社会の構築が可能になると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る資源回収システムの構成例を示す。
【図2】紙パックリサイクル(アルミ箔積層パック)残渣の例を示す。
【図3】乾留条件を示す。
【図4】乾留後の状態を示す。
【図5】乾留結果を示す。
【図6】乾留物の性状を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミ箔層が積層されている包装材の廃棄物を乾留処理してアルミ箔を回収することを特徴とする包装材廃棄物からのアルミ資源回収方法。
【請求項2】
アルミ箔層と樹脂中間層と紙層とが積層されている包装材の廃棄物を回収する手段と、回収した包装材から紙層を回収する手段と、紙層を回収した包装材残渣を乾留処理してアルミ箔を回収する手段とを有していることを特徴とする包装材廃棄物からの資源回収システム。
【請求項3】
さらに、回収したアルミ箔を用いて水素エネルギーを得る手段を有していることを特徴とする請求項2記載の包装材廃棄物からの資源回収システム。
【請求項4】
アルミ箔を用いて水素エネルギーを得る際に発生する水酸化アルミニウム資源を回収する手段を有していることを特徴とする請求項3記載の包装材廃棄物からの資源回収システム。
【請求項5】
請求項1記載のアルミ資源回収方法又は請求項2記載の資源回収システムにて得られたアルミ箔を燃料としたことを特徴とする水素エネルギー供給システム。
【請求項6】
請求項1記載のアルミ資源回収方法又は請求項2記載の資源回収システムにて得られたアルミ箔を燃料としたことを特徴とする燃料電池。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−207131(P2008−207131A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48111(P2007−48111)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【出願人】(300071513)トナミ運輸株式会社 (6)
【出願人】(000236920)富山県 (197)
【Fターム(参考)】