説明

包装袋の開口装置、及び包装袋の開口方法

【課題】包装袋の側面シート同士が強固に密着している場合であっても、包装袋の未接着の縁部を容易に開口させることのできる包装袋の開口装置、及び包装袋の開口方法を提供する。
【解決手段】開口装置は、包装袋における一方の側面シートを吸着保持する第1吸着体11Aと、他方の側面シートを吸着保持する第2吸着体11Bとを備える。そして、開口前の包装袋の両側面シートをそれぞれ吸着保持した状態にある第1吸着体11A及び第2吸着体11Bを側面シートに沿った平面である基準面A上にて移動させて、基準面A上における第1吸着体11Aと第2吸着体11Bとの位置関係を異ならせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一対の側面シートを備える包装袋の未接着の縁部を開口させるための包装袋の開口装置、及び包装袋の開口方法に関する。
【背景技術】
【0002】
清涼飲料水や洗剤等の液体、ゼリー飲料等のゲル状物質、及び味噌等のペースト状物質を収容する包装容器として、樹脂シートにより袋状に形成される包装袋にスパウトを取り付けたスパウト付き包装袋が知られている。このスパウト付き包装袋は、例えば図7に示すようにして製造される。まず、前面シート31aと後面シート31bとからなる一対の側面シートの間に、二つ折りされた底面シート32を側面シートの下縁に沿って挟み込む(図7(a)参照)。そして、側面シートにおける上縁部分を除いた周縁を熱溶着等により接着する(図7(b)参照)。これにより、未接着の上縁部分33を開口可能な包装袋Hが形成される。次いで、包装袋Hの未接着の上縁部分33を開いて開口を形成し、その開口にスパウトSを挿入する(図7(c)参照)。この後、包装袋Hの上縁部分同士、及び上縁部分とスパウトSとを熱溶着等により接着することによって、包装袋Hの上縁部分にスパウトSが装着されたスパウト付き包装袋30が製造される。なお、図7において、網掛け表示部分は接着部分を示している。
【0003】
図7に示したスパウト付き包装袋30の製造過程において、包装袋Hの未接着の上縁部分33を開く開口工程は、例えば特許文献1に開示されるようなスパウト装着装置によって行われている。特許文献1のスパウト装着装置は、互いに対向配置される一対の吸着体と、同吸着体を互いに接近離間する方向に移動させる移動手段とを備えるものである。そして、両吸着体に包装袋Hの前面シート31a及び後面シート31bをそれぞれ吸着保持させた状態とし、両側面シートを吸着保持したまま、両吸着体をシートの積層方向において離間させるように移動させ、両側面シートを互いに相反する方向へ引っ張る。その結果、包装袋Hの未接着の上縁部分33が開かれた状態となって開口が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−093836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のスパウト装着装置を用いて、包装袋Hの未接着の上縁部分33を開く開口工程を行う際、包装袋Hの側面シート同士が静電気等の影響により強固に密着してしまい、包装袋Hの未接着の上縁部分33を好適に開くことができなくなる場合がある。上記のとおり、包装袋Hは両側面シートをそれぞれ吸着保持した両吸着体を離間させ、両側面シートを互いに相反する方向へ引っ張ることによって開口される。このとき、側面シート同士の密着状態が側面シートに対する吸着体の吸着力を上回る程に強固な密着状態であると、吸着体が側面シートを放してしまい、十分な大きさの開口を形成することができなくなる。開口が十分に形成されていない状態の包装袋Hが続くスパウト挿入工程へ供されると、包装袋Hの上縁部分33に接触してスパウトSを挿入することができなくなることから、製造ラインを停止せざるを得なくなる。
【0006】
このようなトラブルを解消するには、作業者の手によって、装置から包装袋Hを取り出すとともに包装袋Hを揉みほぐす等して側面シート同士の密着状態を解消させた後、再び包装袋Hを装置に供するという作業が行われる。しかしながら、こうした作業はスパウト付き包装袋30の製造効率を著しく低下させる原因となる。また、装置に供する全ての包装袋Hに対して、予め包装袋Hを揉みほぐす等して側面シート同士の密着状態を解消させる作業が行われる場合もあるが、こうした作業は非常に手間のかかる作業であるため、可能な限り省略することが好ましい。
【0007】
この発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、包装袋の側面シート同士が強固に密着している場合であっても、包装袋の未接着の縁部を容易に開口させることのできる包装袋の開口装置、及び包装袋の開口方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の包装袋の開口装置は、一対の側面シートを備える包装袋の未接着の縁部を開口させるための包装袋の開口装置であって、前記包装袋における一方の側面シートを吸着保持する第1吸着体と、他方の側面シートを吸着保持する第2吸着体とを備え、開口前の前記包装袋の両側面シートをそれぞれ吸着保持した状態にある前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方を側面シートに沿った平面上にて移動させて、同平面上における前記第1吸着体と前記第2吸着体との位置関係を異ならせることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の包装袋の開口装置は、一対の側面シートを備える包装袋の未接着の縁部を開口させるための包装袋の開口装置であって、前記包装袋における一方の側面シートを吸着保持する第1吸着体、及び他方の側面シートを吸着保持する第2吸着体と、前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の、側面シートに沿った平面上における位置を変位させる第1移動手段と、前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の、側面シートの積層方向における位置を変位させる第2移動手段と、前記第1移動手段及び第2移動手段を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は前記第1移動手段及び第2移動手段を制御して、開口前の前記包装袋の両側面シートをそれぞれ吸着保持した状態にある前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の、側面シートに沿った平面上における位置を変位させて、同平面上における前記第1吸着体と前記第2吸着体との位置関係を異ならせた後、前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の、側面シートの積層方向における位置を変位させて前記第1吸着体と第2吸着体とを離間させることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の包装袋の開口装置は、請求項2に記載の発明において、前記第1移動手段は、前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の、前記包装袋の未接着の縁部に沿った方向における位置を変位させるように構成され、前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の、前記包装袋の未接着の縁部に沿った方向における位置を変位させることにより、前記平面上における前記第1吸着体と前記第2吸着体との位置関係を異ならせることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の包装袋の開口装置は、請求項3に記載の発明において、前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の、前記包装袋の未接着の縁部に沿った方向における位置を、前記第1吸着体と第2吸着体とが離間するように変位させることにより、前記平面上における前記第1吸着体と前記第2吸着体との位置関係を異ならせることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の包装袋の開口装置は、請求項4に記載の発明において、前記制御手段は前記第1移動手段及び第2移動手段を制御して、前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の、側面シートの積層に沿った方向における位置を変位させて前記第1吸着体と前記第2吸着体とを離間させると同時又はその後に、前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の、前記包装袋の未接着の縁部に沿った方向における位置を、前記第1吸着体と前記第2吸着体とが接近するように変位させることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の包装袋の開口方法は、一対の側面シートを備える包装袋の未接着の縁部を開口させるための包装袋の開口方法であって、前記包装袋における一方の側面シートを第1吸着体により吸着保持させるとともに、他方の側面シートを第2吸着体により吸着保持させる第1工程と、前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の、側面シートに沿った平面上における位置を変位させて、同平面上における前記第1吸着体と前記第2吸着体との位置関係を異ならせる第2工程と、前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の、側面シートの積層方向における位置を、前記第1吸着体と前記第2吸着体とが離間するように変位させる第3工程とを有することを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の包装袋の開口装置は、請求項6に記載の発明において、前記第2工程において、前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の、前記包装袋の未接着の縁部に沿った方向における位置を変位させることにより、前記平面上における前記第1吸着体と前記第2吸着体との位置関係を異ならせることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の包装袋の開口装置は、請求項7に記載の発明において、前記第2工程において、前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の、前記包装袋の未接着の縁部に沿った方向における位置を、前記第1吸着体と第2吸着体とが離間するように変位させることにより、前記平面上における前記第1吸着体と前記第2吸着体との位置関係を異ならせることを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の包装袋の開口装置は、請求項8に記載の発明において、さらに、前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の、前記包装袋の未接着の縁部に沿った方向における位置を、前記第1吸着体と前記第2吸着体とが接近するように変位させる第4工程を有し、該第4工程を前記第3工程と同時、又は前記第3工程の後に行うことを特徴とする。
【0017】
上記包装袋の開口方法及び包装袋の開口装置では、開口前の包装袋の両側面シートをそれぞれ吸着保持した状態にある第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方を、側面シートに沿った平面上にて移動させて、同平面上における第1吸着体と第2吸着体との位置関係を異ならせている。これにより、第1吸着体及び第2吸着体に引っ張られて、側面シートにおける第1吸着体及び第2吸着体に吸着保持された部位も側面シートに沿った平面上を移動する。このとき、両側面シートが内面同士を擦るようにして相対的にスライド移動することによって、側面シート間の密着状態が緩和される。よって、包装袋の側面シート同士が強固に密着している場合であっても、包装袋の未接着の縁部を容易に開口させることができる。
【0018】
また、第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の、包装袋の未接着の縁部に沿った方向における位置を変位させることにより、側面シートに沿った平面上における第1吸着体と第2吸着体との位置関係を異ならせることが好ましい。この場合、包装袋の側面シートに、未接着の縁部から延びる皺状の撓み部分が形成される。そして、側面シートに撓み部分を形成した状態で、第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の両側面シートの積層方向における位置を変位させて両吸着体を離間させると、撓み部分を流入路として側面シート間にエアが流入するようになって側面シート同士が離れやすくなる。
【0019】
さらに、第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の、包装袋の未接着の縁部に沿った方向における位置を、第1吸着体と第2吸着体とが離間するように変位させることにより、側面シートに沿った平面上における第1吸着体と第2吸着体との位置関係を異ならせた場合、未接着の縁部から延びる皺状の撓み部分をより確実に形成することができる。
【0020】
また、第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の両側面シートの積層方向における位置を変位させて両吸着体を離間させると同時、又はその後に、第1吸着体及び第2吸着体を両側面シートの少なくとも一方の、包装袋の未接着の縁部に沿った方向における位置を、第1吸着体と第2吸着体とが接近するように変位させることが好ましい。この場合には、包装袋の未接着の縁部を開いて形成される開口の開口面積をより大きくすることができ、包装袋の開口内へのスパウト等の挿入作業をより容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の包装袋の開口装置、及び包装袋の開口方法によれば、包装袋の側面シート同士が強固に密着している場合であっても、包装袋の未接着の縁部を容易に開口させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態の開口装置の正面図。
【図2】包装袋を支持手段により支持した状態を示す斜視図。
【図3】(a)〜(e)は、本実施形態の開口装置による包装袋の開口過程を示す説明図。
【図4】(a)、(b)は、包装袋の開口状態を示す正面図。
【図5】別例の第2工程における第1吸着体及び第2吸着体の移動方向を示す説明図。
【図6】(a)、(b)は、第3工程における第1吸着体及び第2吸着体の移動方向を示す説明図、(c)、(d)は、開口状態の包装袋の断面図。
【図7】(a)〜(d)は、スパウト付き包装袋の製造過程を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の包装容器の開口装置(以下、「開口装置」と記載する。)を図1に基づいて説明する。なお、本明細書において、水平面上において互いに直交する2方向をそれぞれX方向及びY方向とするとともに、水平面に対して直交する方向をZ方向とする。
【0024】
図1に示すように、本実施形態の開口装置は、水平面に平行な基準面Aを挟んでZ方向に対向配置される第1吸着装置1a及び第2吸着装置1bを備えている。
第1吸着装置1aは、図示しない支持柱等に固定された支持台2を備え、支持台2における支持面2aの下部(基準面A側の部位)には、X方向にスライド移動可能なシリンダヘッド3aを有する第1シリンダ3が固定されている。この第1シリンダ3は制御手段としての制御部Cに接続され、制御部Cから出力される信号に基づいてその動作が制御されている。第1シリンダ3のシリンダヘッド3aにはZ方向に延びるリニアガイドレール4が固定されるとともに、リニアガイドレール4には同リニアガイドレール4に案内されてZ方向にスライド移動可能なリニアガイド部材5が取り付けられている。そして、リニアガイド部材5には断面L字状のブラケット6が固定されている。したがって、ブラケット6はリニアガイドレール4に対してZ方向にスライド移動可能となっている。
【0025】
支持台2における支持面2aの上部(反基準面A側の部位)には、Z方向にスライド移動可能なシリンダヘッド7aを有する第2シリンダ7が固定されている。この第2シリンダ7は制御部Cに接続され、制御部Cから出力される信号に基づいてその動作が制御されている。第2シリンダ7のシリンダヘッド7aには断面L字状の移動体8が固定されている。そして、移動体8には、X方向に延びるとともにブラケット6を貫通するようにして配置されるスライドシャフト9の一端が固定されている。具体的には、ブラケット6の上部に図示しない貫通孔が形成され、この貫通孔内に固定されたスライドブッシュ10に対してスライドシャフト9が挿通された状態となっている。したがって、ブラケット6はスライドシャフト9に対してX方向にスライド移動可能となっている。
【0026】
L字状のブラケット6の基準面A側の壁部には吸着体11が取り付けられている。吸着体11は、ブラケット6に固定される管体11aと、管体11aの一端(基準面A側の端部)に取り付けられる吸盤11bと、管体11aの他端(反基準面A側の端部)に取り付けられる可撓性を有する連通管11cとから構成されている。連通管11cは図示しない真空ポンプ等の吸引手段に連通されている。この吸引手段も制御部Cに接続され、制御部Cから出力される信号に基づいてその動作が制御されている(図示略)。
【0027】
第2吸着装置1bは、上述した第1吸着装置1aと同様に構成される装置であり、その配置位置及び配置方向のみが第1吸着装置1aと異なっている。そのため、同一の部材については同一の符号を付し、第2吸着装置1bの具体的な構成については記載を省略する。なお、以下では第1吸着装置1aに設けられる吸着体11を第1吸着体11A、第2吸着装置1bに設けられる吸着体11を第2吸着体11Bとして記載する。
【0028】
次に、本実施形態の開口装置を用いて、図7(b)に示す包装袋Hの未接着の上縁部分33(以下、「未接着の縁部33」と記載する。)を開口させる態様について説明する。
まず、図3(a)に示すように、開口装置は第1吸着体11A及び第2吸着体11Bをそれぞれ基準面Aから所定距離退避させた状態を待機状態とする。そして、待機状態にある開口装置の第1吸着体11Aと第2吸着体11Bとの間へ、包装袋Hが所定の搬送手段によって基準面Aに沿って搬送される。より具体的には、包装袋Hは基準面Aに側面シートを重ねた状態、且つ未接着の縁部33の延びる方向をX方向に一致させた状態で搬送される。搬送された包装袋Hは、例えば図2に示すように、底部側を一対のクランプバー21により挟持されるとともに、側縁部を一対のクランプアーム22により挟持された状態で支持される。
【0029】
本実施形態の開口装置では、上記のように開口装置内の所定位置へ搬送された包装袋Hを、クランプバー21及びクランプアーム22等の支持手段により支持した状態とした後、以下に記載する4つの工程を経て包装袋Hを開口させる。
【0030】
[第1工程]
図3(b)に示すように、制御部Cは第1吸着装置1a及び第2吸着装置1bの第2シリンダ7をそれぞれ駆動して、第1吸着体11A及び第2吸着体11Bを包装袋Hに向かってZ方向(包装袋Hの側面シートの積層方向)へ移動させる。そして、第1吸着体11A及び第2吸着体11Bがそれぞれ包装袋Hの側面シートに当接する位置、すなわち、基準面Aに達する位置となるように第2シリンダ7の駆動を停止する。
【0031】
次いで、制御部Cは、第1吸着体11A及び第2吸着体11Bがそれぞれ包装袋Hの側面シートに当接した状態で吸引手段を作動させて、第1吸着体11A及び第2吸着体11Bの吸盤11b内のエアを吸引する。これにより、第1吸着体11Aによって包装袋Hにおける第1吸着装置1a側の側面シートを吸着保持するとともに、第2吸着体11Bによって第2吸着装置1b側の側面シートを吸着保持した吸着保持状態となる。なお、以下の工程は上記吸着保持状態を維持したままで行われる。
【0032】
[第2工程]
図3(c)に示すように、制御部Cは第1吸着装置1a及び第2吸着装置1bの第1シリンダ3をそれぞれ駆動して、第1吸着体11A及び第2吸着体11BをX方向(包装袋Hの未接着の縁部33に沿った方向)へ互いに離間させるように所定距離移動させる。これにより、包装袋Hの両側面シートは第1吸着体11A及び第2吸着体11Bに引っ張られて、その内面同士を擦るようにして移動するとともに、未接着の縁部33から延びる皺状の撓み部分34が形成される。図6(a)は第2工程後における第1吸着体11A及び第2吸着体11Bと包装袋Hの状態を示している(ブラケット6については図示を省略している)。なお、本実施形態においては、第1吸着装置1a及び第2吸着装置1bの第1シリンダ3が共に第1移動手段として機能する。
【0033】
[第3工程]
図3(d)に示すように、制御部Cは第1吸着装置1a及び第2吸着装置1bの第2シリンダ7をそれぞれ駆動して、第1吸着体11A及び第2吸着体11BをZ方向(包装袋Hの側面シートの積層方向)へ、互いに離間させるように所定距離移動させる。これにより、両側面シートがその積層方向における互いに相反する方向へと引っ張られて、包装袋Hの未接着の縁部33側が開口した状態となる。その際、撓み部分34を流入路として側面シート間にエアが取り込まれることにより、側面シート同士の密着状態が緩和されて側面シート同士の離間動作が促進される。なお、本実施形態においては、第1吸着装置1a及び第2吸着装置1bの第2シリンダ7が共に第2移動手段として機能する。
【0034】
[第4工程]
第3工程後の包装袋Hの未接着の縁部33の開口形状は図4(a)に示す形状となる。ここで、図3(e)に示すように、制御部Cは第1吸着装置1a及び第2吸着装置1bの第1シリンダ3をそれぞれ駆動して、第1吸着体11A及び第2吸着体11BをX方向(包装袋Hの未接着の縁部33に沿った方向)へ互いに接近させるように移動させる。そして、第1吸着体11A及び第2吸着体11BがZ方向に沿った同一直線上に位置したところ(Z方向に重なる位置)で第1シリンダ3の駆動を停止する。これにより、包装袋Hの未接着の縁部33の開口形状は図4(b)に示す形状となって、開口面積がより大きくなる。
【0035】
この後、上記第4工程後の開口状態にある包装袋Hの開口に対して、所定のスパウト挿入装置等によってスパウトが挿入される。
次に、本実施形態における効果について以下に記載する。
【0036】
(1)開口装置は、第1吸着体11A及び第2吸着体11Bを、包装袋Hの未接着の縁部33に沿った方向(X方向)に移動させる第1シリンダ3と、包装袋Hの側面シートの積層方向(Z方向)に移動させる第2シリンダ7と、両シリンダを制御する制御部Cとを備えている。そして、制御部Cからの信号に基づいて、開口前の包装袋Hの両側面シートをそれぞれ吸着保持した状態にある第1吸着体11A及び第2吸着体11Bを基準面A上にて移動させて、基準面A上における第1吸着体11Aと第2吸着体11Bとの位置関係を異ならせている。
【0037】
上記構成によれば、第1吸着体11A及び第2吸着体11Bに引っ張られて、側面シートにおける第1吸着体11A及び第2吸着体11Bに吸着された部位も基準面A上を移動する。このとき、両側面シートが内面同士を擦るようにして移動することによって、側面シート間の密着状態が緩和される。よって、包装袋Hの側面シート同士が強固に密着している場合であっても、包装袋Hの未接着の縁部33を容易に開口させることができる。
【0038】
(2)第2工程において、第1吸着体11A及び第2吸着体11Bの移動方向を、包装袋Hの未接着の縁部33に沿った方向(X方向)とし、同方向における両吸着体11の位置を変位させている。その後、第3工程として、制御部Cからの信号に基づいて、第1吸着体11A及び第2吸着体11Bを、包装袋Hの側面シートの積層方向(Z方向)へ、互いに離間させるように移動させている。
【0039】
上記構成によれば、第2工程において、包装袋Hの側面シートに、未接着の縁部33から延びる皺状の撓み部分34が形成される。そして、この撓み部分34を形成した状態で第3工程を行うことにより、第3工程時に撓み部分34を流入路として側面シート間にエアが流入するようになる。側面シート間にエアを流入させることによって側面シート同士が離れやすくなるため、包装袋Hの未接着の縁部33をより容易に開口させることができる。
【0040】
(3)第2工程において、第1吸着体11A及び第2吸着体11Bの移動方向を、包装袋Hの未接着の縁部33に沿った方向(X方向)とし、さらに第1吸着体11Aと第2吸着体11Bとを離間させるように移動させている。この場合、未接着の縁部33から延びる皺状の撓み部分34をより確実に形成することができる。
【0041】
(4)第1吸着体11A及び第2吸着体11Bを、包装袋Hの側面シートの積層方向(Z方向)へ互いに離間させた後、包装袋Hの未接着の縁部33に沿った方向(X方向)へ両吸着体11を互いに接近させるように移動させている。これにより、開口装置によって開口された包装袋Hの未接着の縁部33の開口面積をより大きくすることができる。そのため、包装袋Hの開口後に行われる開口内へのスパウトSの挿入作業をより容易に行うことができる。
【0042】
(5)本実施形態のような包装袋の開口装置及び包装袋の開口方法は、たとえば、従来技術を開示する特開2008−093836号公報に開示されるスパウト装着装置、特開2003−103658号公報に開示される包装体の製造装置や、特開2004−203400号公報に開示される充填機というような、シート状物からなる包装袋を製造したり、その包装袋に内容物を充填したりする装置に適用が可能で汎用性が高い。
【0043】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。また、次の変更例を互いに組み合わせ、その組み合わせの構成のように上記実施形態を変更することも可能である。
【0044】
・ 上記実施形態の開口装置は、包装袋HにスパウトSを取り付ける場合に限られるものではなく、包装袋Hの未接着の縁部33を開口させる必要のある場合であれば適用することができる。たとえば、包装袋H内に内容物を充填する場合には、充填用ノズル等の充填具を包装袋H内に挿入するために包装袋Hの未接着の縁部を開口させるが、その際に上記実施形態の開口装置を用いてもよい。
【0045】
・ 第1工程〜第4工程の各工程における第1吸着体11A及び第2吸着体11Bの移動量は互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
・ 第1工程〜第4工程において、第1吸着体11A及び第2吸着体11Bうちのいずれか一方のみを移動させるようにしてもよい。また、第1工程〜第4工程において、常に第1吸着体11Aのみを移動させる場合には、第2吸着装置1bに設けられる第1移動手段及び第2移動手段としての第1シリンダ3及び第2シリンダ7を省略してもよい。
【0046】
・ 上記実施形態では、基準面Aを水平面に対して平行な面として、第1吸着装置1a及び第2吸着装置1bが上下方向に対向配置されるように構成していたが、基準面Aを水平面に対して平行な面以外の面として第1吸着装置1a及び第2吸着装置1bの配置構成を変更してもよい。たとえば、基準面Aを水平面に対して直交する面として、第1吸着装置1a及び第2吸着装置1bが左右方向に対向配置されるように構成してもよい。この場合、包装袋Hは未接着の縁部33を上側、底部分を下側とした状態で搬送されるとともに左右方向に開口されることになる。包装袋H内に内容物の充填時に用いる開口装置としては、内容物のこぼれを抑制するという観点から、このような配置構成とすることが特に好ましい。
【0047】
・ 第2工程において、基準面A上における第1吸着体11Aと第2吸着体11Bとの位置関係を異ならせることができるのであれば、両吸着体11をどのように移動させてもよい。つまり、両吸着体11の移動方向及び移動量が共に同じでなければよい。たとえば、図5に示すように、基準面A上において、包装袋Hの未接着の縁部33に対して直交する方向に両吸着体11を移動させてもよいし、弧を描くように曲線的に両吸着体11を移動させてもよい。また、両吸着体11の移動量が異なっていれば、両吸着体11の移動方向が同じであってもよい。
【0048】
・ 第3工程において、包装袋Hの側面シートの積層方向における両吸着体11の位置を、互いに離間させるように変位させることができるのであれば、両吸着体11の移動方向は包装袋Hの側面シートの積層方向に限定されるものではない。たとえば、図6(b)に示すように、両吸着体11を、弧を描くように曲線的に移動させることによって、包装袋Hの側面シートの積層方向における両吸着体11の位置を互いに離間させるように変位させてもよい。
【0049】
なお、図6(c)は第3工程において、両吸着体11を包装袋Hの側面シートの積層方向に直線的に移動させた場合における包装袋Hの開口部分の断面形状を示したものである。そして、図6(d)は両吸着体11を曲線的に移動させた場合における包装袋Hの開口部分の断面形状を示したものである。両吸着体11を直線的に移動させた場合と比較して、両吸着体11を曲線的に移動させた場合には、スパウトSの挿入側に向かって包装袋Hがより大きく開口した状態となるため、スパウトSの挿入作業をより容易に行うことができる。
【0050】
・ 第4工程においては、第1吸着体11A及び第2吸着体11Bの、包装袋Hの未接着の縁部33に沿った方向における位置が僅かでも接近していればよい。そのため、両吸着体11の停止位置は両吸着体11が同一直線上となる位置(Z方向に重なる位置)に限定されるものではない。
【0051】
・ 第3工程と第4工程とを同時に行うようにしてもよいし、第3工程に僅かに遅れて第4工程を行うようにしてもよい。また、第4工程を省略してもよい。
・ 第1工程〜第4工程の各工程において、第1吸着体11A及び第2吸着体11Bの移動タイミングを異ならせてもよい。たとえば、第2工程において、第1吸着装置1aの第1シリンダ3を先に作動させて第1吸着体11Aを移動させ始めた後、第2吸着装置1bの第1シリンダ3を作動させて第2吸着体11Bを遅れて移動させるようにしてもよい。
【0052】
・ 第2工程における第1吸着体11A及び第2吸着体11Bの移動方向は、基準面Aの平面上に厳密に一致させなくともよい。たとえば、第1吸着体11Aが基準面Aを超えて斜め方向、第2吸着体11Bが基準面Aを超えて斜め方向へ移動するように、第1吸着体11A及び第2吸着体11Bの移動方向を変更してもよい。この場合、第1シリンダ3及び第2シリンダ7を同時に駆動するようにしてもよいし、第1シリンダ3の作動方向そのものを変更してもよい。こうした変更例も、第1吸着体11A及び第2吸着体11Bが側面シートに沿った平面上にて移動するという技術概念に含まれることとする。
【0053】
・ 吸引手段の作動タイミングを変更してもよい。たとえば、第1工程において、第1吸着体11A及び第2吸着体11Bが基準面Aに接近するタイミングで作動し始めるようにしてもよい。また、第1工程及び第2工程では吸引手段を作動させることなく、第3工程において、第1吸着体11A及び第2吸着体11Bを包装袋Hの側面シートの積層方向へ離間させる直前に吸引手段を作動させるようにしてもよい。この場合には、第1工程において、第1吸着体11A及び第2吸着体11Bの各吸盤11bと包装袋Hの側面シートとを圧接させた状態とすることが好ましい。これにより、第2工程時に、各吸盤11bと包装袋Hの側面シートとの間に生じる摩擦力に基づいて両側面シート間の移動や、撓み部分34を生じさせることができる。上記摩擦力を生じさせるべく第1吸着体11A及び第2吸着体11Bの各吸盤11bと包装袋Hの側面シートとを圧接させた状態とすることも、吸着保持の概念に含まれることとする。
【0054】
・ 第1吸着体11A及び第2吸着体11Bとしては、開口装置に一般的に使用されるものであればよく、例えば真空吸引しないタイプの吸着体を用いてもよい。
・ 第1移動手段及び第2移動手段は、第1吸着体11A及び第2吸着体11Bの、包装袋Hの積層方向及び面方向における位置を変位させることのできるものであれば特に限定されるものではない。たとえば、シリンダに代えてモータにより第1吸着体11A及び第2吸着体11Bを移動させる構成としてもよい。
【0055】
・ 図2に示すクランプバー21及びクランプアーム22等の支持手段を、開口装置の一部としてもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について記載する。
【0056】
(イ) 包装袋の未接着の縁部から延びる撓み部分を形成すべく、開口前の前記包装袋の両側面シートをそれぞれ吸着保持した状態にある前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方を側面シートに沿った平面上にて移動させて、同平面上における前記第1吸着体と前記第2吸着体との位置関係を異ならせることを特徴とする前記包装袋の開口装置。
(ロ) 前記第2工程は、包装袋の未接着の縁部から延びる撓み部分を形成する工程であることを特徴とする前記包装袋の開口方法。
【符号の説明】
【0057】
A…基準面、C…制御部、H…包装袋、S…スパウト、1a…第1吸着装置、1b…第2吸着装置、3…第1シリンダ、7…第2シリンダ、11…吸着体、11A…第1吸着体、11B…第2吸着体、30…スパウト付き包装袋、33…未接着の上縁部分(縁部)、34…撓み部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の側面シートを備える包装袋の未接着の縁部を開口させるための包装袋の開口装置であって、
前記包装袋における一方の側面シートを吸着保持する第1吸着体と、他方の側面シートを吸着保持する第2吸着体とを備え、
開口前の前記包装袋の両側面シートをそれぞれ吸着保持した状態にある前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方を側面シートに沿った平面上にて移動させて、同平面上における前記第1吸着体と前記第2吸着体との位置関係を異ならせることを特徴とする包装袋の開口装置。
【請求項2】
一対の側面シートを備える包装袋の未接着の縁部を開口させるための包装袋の開口装置であって、
前記包装袋における一方の側面シートを吸着保持する第1吸着体、及び他方の側面シートを吸着保持する第2吸着体と、
前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の、側面シートに沿った平面上における位置を変位させる第1移動手段と、
前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の、側面シートの積層方向における位置を変位させる第2移動手段と、
前記第1移動手段及び第2移動手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は前記第1移動手段及び第2移動手段を制御して、開口前の前記包装袋の両側面シートをそれぞれ吸着保持した状態にある前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の、側面シートに沿った平面上における位置を変位させて、同平面上における前記第1吸着体と前記第2吸着体との位置関係を異ならせた後、前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の、側面シートの積層方向における位置を変位させて前記第1吸着体と第2吸着体とを離間させることを特徴とする包装袋の開口装置。
【請求項3】
前記第1移動手段は、前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の、前記包装袋の未接着の縁部に沿った方向における位置を変位させるように構成され、
前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の、前記包装袋の未接着の縁部に沿った方向における位置を変位させることにより、前記平面上における前記第1吸着体と前記第2吸着体との位置関係を異ならせることを特徴とする請求項2に記載の包装袋の開口装置。
【請求項4】
前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の、前記包装袋の未接着の縁部に沿った方向における位置を、前記第1吸着体と第2吸着体とが離間するように変位させることにより、前記平面上における前記第1吸着体と前記第2吸着体との位置関係を異ならせることを特徴とする請求項3に記載の包装袋の開口装置。
【請求項5】
前記制御手段は前記第1移動手段及び第2移動手段を制御して、前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の、側面シートの積層に沿った方向における位置を変位させて前記第1吸着体と前記第2吸着体とを離間させると同時又はその後に、前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の、前記包装袋の未接着の縁部に沿った方向における位置を、前記第1吸着体と前記第2吸着体とが接近するように変位させることを特徴とする請求項4に記載の包装袋の開口装置。
【請求項6】
一対の側面シートを備える包装袋の未接着の縁部を開口させるための包装袋の開口方法であって、
前記包装袋における一方の側面シートを第1吸着体により吸着保持させるとともに、他方の側面シートを第2吸着体により吸着保持させる第1工程と、
前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の、側面シートに沿った平面上における位置を変位させて、同平面上における前記第1吸着体と前記第2吸着体との位置関係を異ならせる第2工程と、
前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の、側面シートの積層方向における位置を、前記第1吸着体と前記第2吸着体とが離間するように変位させる第3工程とを有することを特徴とする包装袋の開口方法。
【請求項7】
前記第2工程において、前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の、前記包装袋の未接着の縁部に沿った方向における位置を変位させることにより、前記平面上における前記第1吸着体と前記第2吸着体との位置関係を異ならせることを特徴とする請求項6に記載の包装袋の開口方法。
【請求項8】
前記第2工程において、前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の、前記包装袋の未接着の縁部に沿った方向における位置を、前記第1吸着体と第2吸着体とが離間するように変位させることにより、前記平面上における前記第1吸着体と前記第2吸着体との位置関係を異ならせることを特徴とする請求項7に記載の包装袋の開口方法。
【請求項9】
さらに、前記第1吸着体及び第2吸着体の少なくとも一方の、前記包装袋の未接着の縁部に沿った方向における位置を、前記第1吸着体と前記第2吸着体とが接近するように変位させる第4工程を有し、
該第4工程を前記第3工程と同時、又は前記第3工程の後に行うことを特徴とする請求項8に記載の包装袋の開口方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−126054(P2012−126054A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280806(P2010−280806)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(391003794)押尾産業株式会社 (32)
【出願人】(599060847)株式会社ウイスト (5)
【Fターム(参考)】