説明

化粧料の製造方法

【課題】25℃において固体の油性成分の含有量が高い場合においても、該油性成分の粒子が均一微細化された化粧料を、生産性よく、かつ安全に製造することができる方法を提供すること。
【解決手段】25℃において固体の油性成分を1種以上含む第1の配合原料を加熱溶融し、混合させた第1の流動体と、第1の流動体の供給温度より低い温度で溶融されている第2の流動体とを連続的に混合して前記流動体となす。これとともに、振動式攪拌混合装置内に前記流動体を通過させる工程において、該振動攪拌装置の内部を外壁から冷却し、前記流動体を、第1の流動体と第2の流動体を混合した時点での温度よりも低い温度まで冷却する化粧料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワックス等の油性成分を含む化粧料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワックス等の油性成分を含む化粧料の製造方法に関し、25℃において固体の油性成分を1種以上含む配合原料を加熱下に混合させて流動体となし、得られた流動体を冷却する工程を有する化粧料の製造方法が開示されている(特許文献1参照)。この製造方法においては、管状のケーシング内に、駆動軸と、該駆動軸に取り付けられた攪拌羽根とからなる攪拌体を備え、該駆動軸が軸方向に振動するようになされている振動式攪拌混合装置を用い、該振動式攪拌混合装置内を通過させることで前記流動体を連続的に前記油性成分の固化温度以下まで冷却している。
【0003】
この技術とは別に、特許文献2には、ワックスと有機溶剤とを加熱ゾーンに供給していったんワックスを加熱溶融し、次いでこの加熱ゾーンから導出された加熱混合物と、冷却液としての有機溶剤とをそれぞれ別の流路から冷却ゾーンへ供給し、両者を攪拌しながら冷却してワックスを析出させ、この冷却ゾーンから有機溶剤中にワックスを分散させたワックス分散体を取り出す連続プロセスによるワックス分散法が記載されている。この方法においては、冷却ゾーンにおける前記加熱混合物の冷却は有機溶剤との混合によるものであり、その他の積極的な冷却はされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−214212号公報
【特許文献2】特開平05−186603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の製造方法は、全ての原料を溶融混合するため、全ての原料を高温で溶融する必要性があり、熱効率的な観点から生産性に課題がある。また、配合成分中に引火点の低い油性成分や熱に弱い油性成分が含まれている場合には、製造に注意が必要である。
【0006】
また、特許文献2に記載の方法では、加熱されていない有機溶剤によってのみ冷却が行われるため、得られたワックス分散体において、ワックスの凝集が生じてしまい、ワックスを微分散させることが容易でない場合がある。
【0007】
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消することにあり、具体的にはワックスが微分散したワックス分散体からなる化粧料を生産性良く、かつ安全に製造し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
管状のケーシング内に、駆動軸と、該駆動軸に取り付けられた攪拌羽根とを有する攪拌体を備える振動式攪拌混合装置を用い、前記ケージング内に流動体を連続的に供給し、該流動体に前記駆動軸により軸方向の振動を与える化粧料の製造方法であって、
25℃において固体の油性成分を1種以上含む第1の配合原料を加熱溶融し、混合させた第1の流動体と、第1の流動体の供給温度より低い温度で溶融されている第2の流動体とを連続的に混合して前記流動体となし、
前記振動式攪拌混合装置内に前記流動体を通過させる工程において、該振動攪拌装置の内部を外壁から冷却し、前記流動体を、第1の流動体と第2の流動体を混合した時点での温度よりも低い温度まで冷却する化粧料の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、25℃において固体の油性成分の含有量が高い場合においても、該油性成分の粒子が均一微細化された化粧料を、生産性よく、かつ安全に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の製造方法を実施する好適な装置の一例を示す概略図である。
【図2】図1に示す振動式攪拌混合装置の縦断面の模式図である。
【図3】図1に示す振動式攪拌混合装置における攪拌体の要部拡大図である。
【図4】本発明の製造方法を実施する別の好適な装置を示す概略図である。
【図5】本発明の製造方法を実施する別の好適な装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の製造方法に好適に用いられる装置の概略図が示されている。図1に示す装置10は、第1の流動体の加熱混合部20及び冷却部30を備えている。更に装置10は、第2の流動体の供給部50も備えている。第1の流動体の加熱混合部20には、目的とする化粧料の配合原料のうち、25℃において固体の油性成分を初めとする配合原料が充填され、該配合原料を加熱下に混合して第1の流動体が調製される。第2の流動体の供給部50は、第1の流動体よりも低い温度に設定されている第2の流動体を供給するためのものである。第2の流動体は、目的とする化粧料の構成成分の一部であるとともに、第1の流動体の顕熱冷却液として用いられる。冷却部30は、第1の流動体と第2の流動体とを混合して前記の油性成分を微分散させ、かつ第2の流動体によって第1の流動体を顕熱冷却するとともに、該冷却部30に備えられたジャケットによって第1の流動体を更に冷却し、目的とする化粧料を得るために用いられるものである。
【0012】
第1の流動体の加熱混合部20は混合タンク21を備えている。混合タンク21は、ジャケット22によって加熱又は冷却され、所定温度に調整される。混合タンク21内には攪拌翼23が設置されている。攪拌翼23は、シャフト24を介して混合タンク21外に設置されたモータ25に接続されており、回転可能になっている。混合タンク21の底部には、該タンク21内で混合された流動体を取り出すための管26が接続されている。管26は弁27を介してモーノポンプ等からなる定量ポンプ28に接続されている。定量ポンプ28は、管29を通じて流動体を冷却部30に定量供給するために用いられる。
【0013】
第2の流動体の供給部50は、供給装置51及び定量ポンプ52を備えている。供給装置51には、第2の流動体の供給源(図示せず)から、第2の流動体の配合原料が供給される。供給装置51には、該装置51から第2の流動体を取り出すための管53が接続されている。管53は、モーノポンプ等からなる定量ポンプ52に接続されている。定量ポンプ52は、管54を通じて第2の流動体を冷却部30に定量供給するために用いられる。
【0014】
冷却部30は、振動式攪拌混合装置40を備えている。振動式攪拌混合装置40は、略筒状の構造を有している。振動式攪拌混合装置40は、その一端側に、管29に接続された第1流入口31A及び管54に接続された第2流入口31Bを有し、他端側に吐出口32を有している。吐出口32は吐出用管33に接続されている。第2流入口31Bは、第1流入口31Aよりも下流側(図1中、上側)に位置している。第1の流動体の加熱混合部20で得られた第1の流動体は、第1流入口31Aを通じて振動式攪拌混合装置40内に連続供給される。ここで言う「連続供給」とは、工程全体として連続的あればよく、完全に連続的であることを要しない。したがって、一定期間又は不定期に断続的に供給を行う場合や、間欠的に供給を行う場合も、本明細書で言う「連続供給」に包含される。一方、第2の流動体の供給部50から供給された第2の流動体は、第2流入口31Bを通じて振動式攪拌混合装置40内に連続供給される。
【0015】
第1の流動体及び第2の流動体は、振動式攪拌混合装置40内を通過し、吐出口32を通じて吐出用管33の端部から吐出される。第1の流動体及び第2の流動体は、振動式攪拌混合装置40内を通過する間に、混合されるとともに冷却される。冷却を行うために、振動式攪拌混合装置40には、流入口31A,31B側から吐出口32側に向けて4つのジャケット34,35,36,37がこの順で取り付けられている。各ジャケットにはそれぞれ冷却水が循環するようになっている。冷却水の温度は、適宣設定することが可能であり、これらのジャケットによって、第1の流動体と第2の流動体との混合体を、流入口31A,31B側から吐出口32側に向けて連続的又は段階的に冷却することができる。
【0016】
前記の混合体の冷却は完全に連続的であることを要せず、混合体が振動式攪拌混合装置40を通過する間に最終的に冷却されれば、冷却の過程は問われない。したがって、振動式攪拌混合装置40内を混合体が通過する間に、途中、一定温度の状態があっても差し支えない。また、冷却が段階的であっても差し支えない。尤も、振動式攪拌混合装置40による混合体の冷却は、該混合体の安定性の観点から連続的に行われることが好ましい。そのための一手法として、独立に制御できる冷却装置を振動式攪拌混合装置40に取り付け、該冷却装置を複数組み合わせることも好ましい。
【0017】
図2には、振動式攪拌混合装置40の縦断面の模式図が示されている。装置40は、管状のケーシング41内に、駆動軸42と、該駆動軸42に取り付けられた攪拌羽根43を有する攪拌体44を備えている。駆動軸42は、バイブレータ45aによって軸方向に沿って上下振動するようになされている。
【0018】
ケーシング41は、その横断面が円形である管状のものであり、その下部付近に第1流入口31Aが設けられている。第1流入口31Aよりも下流側(図2中、上側)には第2流入口31Bが設けられている。ケーシング41の上部付近には吐出口32が設けられている。第1流入口31Aから流入した第1の流動体及び第2流入口31Bから流入した第2の流動体は、ケーシング41内で混合され、それによって生成した混合体は該ケーシング41内を通り、吐出口32から吐出される。
【0019】
ケーシング41内には、上述の攪拌体44が配されている。攪拌体44の駆動軸42は、ケーシング41の長手方向(縦方向)に延びている。駆動軸42の上端は、ジョイント45bを介してバイブレータ45aに接続されている。バイブレータ45aは、モータ(図示せず)とその出力軸に接続された公知のカム機構(図示せず)を備えている。カム機構は、回転部(図示せず)と揺動部(図示せず)からなる。回転部は、モータの出力軸に対して偏心して取り付けられている。揺動部は、回転部の偏心回転によって揺動するようになっている。そして、揺動部の揺動が駆動軸42に上下振動として伝達される。
【0020】
ケーシング41の内壁には、円環状の仕切部46が複数設けられている。仕切部46はいずれも同形であり、ケーシング41の内壁から水平方向へ突出している。仕切部46の中央に形成された円孔には、駆動軸42が挿入される。この円孔の直径は、駆動軸42の直径よりも大きくなっている。隣り合う2つの仕切部によってケーシング41の内部は複数の混合室47が画成される。混合室47は、ケーシング41の長手方向(縦方向)に沿って直列配置される。
【0021】
図3(a)及び(b)には、攪拌体44の要部拡大図が示されている。攪拌体44は、駆動軸42とその周面に螺旋状に取り付けられた攪拌羽根43とを備えている。同図においては、攪拌羽根43は3周の螺旋状に取り付けられている。この状態の攪拌体44を一組として、ケーシング内には、各混合室47内に攪拌体44が配されている。したがって攪拌体44の組数は、混合室47の数と同じになっている。それぞれの組の攪拌体44において、攪拌羽根43の螺旋の方向は同じになっている。
【0022】
それぞれの組の攪拌体44における攪拌羽根43には1個以上の開孔48及び/又は1個以上の切り欠き49が設けられている。開孔48及び切り欠き49は、攪拌体44を駆動軸42の軸心方向からみたときに(図3(a)参照)、上下で隣り合う攪拌羽根どうしで形成位置が一致しないように設けられている。この理由は、軸方向での短絡流の発生を防止して、攪拌混合効果を高めるためである。
【0023】
以上のとおりの構成を有する振動式攪拌混合装置40としては、例えば特開平4−235729号公報に記載のもの等を用いることができる。また振動式攪拌混合装置40として、例えば冷化工業(株)製のバイブロミキサー(登録商標)が挙げられる。
【0024】
以上の構成を有する装置10を用いた化粧料の製造方法について説明すると、本製造方法においては、目的とする化粧料の成分を、第1の配合原料と第2の配合原料とに振り分け、各配合原料を、第1の流動体の加熱混合部20及び第2の流動体の供給部50にそれぞれ供給する。そして、(イ)第1の配合原料に由来する第1の流動体と、第2の配合原料に由来する第2の流動体とを、振動式攪拌混合装置40内において混合し、第1の流動体を第2の流動体で顕熱冷却する。この顕熱冷却とともに、(ロ)振動式攪拌混合装置40を流通する冷却液を利用して熱交換によって、両流動体の混合体を冷却する。このように、本製造方法においては、前記の(イ)及び(ロ)という2つの冷却様式を採用している。
【0025】
前記の(イ)の顕熱冷却を行うために、第1の流動体と第2の流動体とを振動式攪拌混合装置40内において混合するときには、第2の流動体は、第1の流動体の供給温度よりも低い温度で供給される。(ロ)の熱交換による冷却は、第1の流動体と第2の流動体との混合体を、両流動体を混合した時点での温度よりも低い温度まで冷却するために行われる。したがって、本製造方法では、まず(イ)の顕熱冷却が行われ、それ以降に(ロ)の熱交換による冷却が行われる。以下、(イ)及び(ロ)の冷却についてそれぞれ説明する。
【0026】
まず(イ)の顕熱冷却について説明する。まず、25℃において固体の油性成分、つまり固化温度が25℃以上の油性成分(以下、この油性成分を「固体脂」ともいう。)を1種以上含む第1の配合原料を、混合タンク21内に充填する。この充填とは別に、第2の流動体の供給部50における供給部51内に、油性成分を含む第2の配合原料を供給する。
【0027】
混合タンク21内に充填される第1の配合原料は、目的とする化粧料の具体的な用途に応じ適切なものが用いられる。例えば第1の配合原料としては、25℃において固体の油性成分のほかに、25℃において液体の油性成分や、顔料及び光輝性粉体などの粉体成分などが用いられる。特に本製造方法は、第1の流動体として、固体脂を高い割合で含有するものを用いる場合に有効である。固体脂を高い割合で含有する第1の流動体は、温度が低下すると、その粘度が高いものとなり、通常の撹拌装置を用いても十分な混合を達成できない場合が多いが、上述の振動式攪拌混合装置40を用いると、高粘度の流動体であっても首尾良く混合を行うことができるからである。この観点から、第1の流動体として、固体脂を40質量%以上、特に40〜90質量%、更に好ましくは50%〜90%含有するものを用いる場合に、本発明の効果が特に顕著にあらわれる。
【0028】
第1の配合原料の充填が完了したら、混合タンク21を加熱して第1の配合原料中に含まれている固体脂を溶融状態にする。加熱温度は、固体脂の融点に応じて適宜設定することができる。加熱温度は、配合原料の融点以上が好ましく、最も融点の高い固体脂の融点よりも10℃程度高めに設定することが好ましい。加熱によって固体脂が融解し、第1の配合原料全体が溶融して油性の第1の流動体となる。この状態下に攪拌翼23を回転させることで混合タンク21内を攪拌し、第1の配合原料を十分に均一混合分散させる。特に限定されるものではないが、第1の流動体の温度は、例えば70〜100℃に設定することができる。
【0029】
別法として、第1の配合原料のうち、主として油性成分を予めホモミキサーやディスパーなどの予備分散手段(図示せず)を用いて予備分散させた後、これによって得られた予備分散物を混合タンク21に内に充填するとともに、第1の配合原料のうちの残部、例えば粉体成分、を該タンク21に充填し、両者を該タンク21内で加熱混合して油性の第1の流動体を得てもよい。
【0030】
加熱混合部20において第1の配合原料が十分に混合し、かつ所定の温度に達したら、混合タンク21の底部に取り付けられた弁27を開き、タンク21内の第1の流動体を取り出す。第1の流動体は定量ポンプ28に導入され、その一定量が第1流入口31Aを通じて振動式攪拌混合装置40に供給される。また、定量ポンプ28には、該流動体が振動式攪拌混合装置40内を通過するための押し出し圧力源としての働きもある。振動式攪拌混合装置40へ供給される第1の流動体の温度は、流動性が保たれる温度以上であればよいが、固体脂の分散性の向上の観点から、特に固体脂の固化開始温度以上とすることが好ましく、更に固体脂の固化開始温度より5℃以上高い温度が好ましく、特に固体脂の固化開始温度より10℃以上高い温度が好ましい。第1の流動体の粘度は、供給される温度において、5〜10000mPa・s、特に10〜1000mPa・sであることが好ましい。第1の流動体の粘度が高い場合であっても、先に述べたとおり、振動式攪拌混合装置40を用いることで、第1の流動体の第2の流動体との混合を首尾良く行うことができる。この粘度は、応力制御型粘弾性測定装置 MCR300(Anton Paar社製)を用い、φ25mmのコーンプレートで、剪断速度=10[1/s]において測定される。以下、粘度というときには、この方法で測定された値を言う。
【0031】
上述した「固体脂の固化開始温度」とは、該固体脂を、示差走査熱量計(DSC)を用い、10℃/minの加熱速度で120℃まで昇温した後、2℃/minの冷却速度で降温したときの、発熱ピークの立ち上がる温度で定義される。また「固体脂の固化温度」とは、発熱ピークのピーク位置での温度で定義される。
【0032】
図1には示していないが、第1の配合原料を用いて第1の流動体を得る場合、混合タンク21で得られた第1の流動体を直接に振動式攪拌混合装置40へ供給することに代えて、インラインホモミキサーやマイルダー等の連続式分散装置を通過させた後に振動式攪拌混合装置40へ供給してもよい。これらの装置を用いることによって、第1の流動体中に粉体等の固形成分が含まれている場合であっても配合原料が一層均一に分散した油性流動体を得ることができる。
【0033】
第2の配合原料は、第2の流動体の原料となるものであり、該第2の流動体が、振動式攪拌混合装置40へ供給されるときの温度より低い温度で溶融する油性成分を含む。該油性成分は、第2の配合量原料中に40〜100質量%程度配合することができる。
第2の配合原料には、例えば25℃において液体である油性成分が用いられる。具体的には、脂肪酸及びそのエステル炭化水素油並びに揮発油剤などを用いることができる。また、第2の流動体の供給温度において固体の物質であっても、該物質が、顔料及び光輝性粉体などの粉体成分である場合には配合しても良い。また、第2の配合原料は、水性成分を含んでいても構わない。水性成分を含む場合、水性成分の割合は第2の配合原料中1〜30質量%程度であることが好ましく、5〜20質量%程度であることがより好ましい。
【0034】
本製造方法においては、引火点の低い油性成分、例えば引火点が50℃以下の油性成分は第2の流動体に含有させ、第1の流動体には含有させないことが、製造の安全上の観点から好ましい。この理由は、振動式攪拌混合装置40へ供給されるときの第2の流動体の温度は、該装置40へ供給される第1の流動体の温度よりも低く設定されているからである。また、目的とする化粧料が顔料や光輝性粉体などの粉体成分を含有する場合、第1の流動体に配合しても第2の流動体に配合しても良いが、第2の流動体に配合する方が好ましい。
【0035】
第2の流動体は、その供給部50において、供給装置51に取り付けられた弁(図示せず)を開くことで、該供給装置51内から取り出される。第2の流動体は定量ポンプ52に導入され、その一定量が第2流入口31Bを通じて振動式攪拌混合装置40に供給される。第2の流動体は振動式攪拌混合装置40へ、第1の流動体が振動式攪拌混合装置40へ供給されるときの温度よりも低く、かつ第2の流動体の原料が溶融する温度で供給される。第2の流動体の供給温度が、第1の流動体の供給温度よりも低く設定されていれば、両者の混合によって顕熱冷却が起こる。第2の流動体の供給温度は、第1の流動体の供給温度や第1の流動体と第2の流動体の混合比によって適宜設定される。例えば0〜50℃に設定することができる。特に、顕熱冷却を効率的に行い、生産性を高める観点から、第2の流動体を、第1の流動体の固化開始温度以下の温度で振動式攪拌混合装置40へ供給することが好ましい。第2の流動体の粘度は、供給される温度において、1〜100000mPa・s、特に10〜10000mPa・sであることが、両者の均一混合性の点から好ましい。
【0036】
前記の第1の流動体の固化開始温度は、該流動体を、示差走査熱量計(DSC)を用い、10℃/minの加熱速度で120℃まで昇温した後、2℃/minの冷却速度で降温したときの、発熱ピークの立ち上がる温度として測定される。また「第1の流動体の固化温度」とは、発熱ピークのピーク位置での温度で定義される。なお、第1の流動体に含まれる固体脂の割合が高くなるほど、第1の流動体の固化開始温度Taは、固体脂の固化開始温度Tbに近づく(Ta<Tb)。本製造方法においては、第1の流動体の固化開始温度Taと固体脂の固化開始温度Tbとの温度差を6℃未満となるような、固体脂を多量配合した組成の場合でも、該固体脂が微分散した良好な化粧料が得られる。
【0037】
なお、前記の説明では、第1の流動体は、第1流入口31Aを通じて振動式攪拌混合装置40に供給され、第2の流動体は、第2流入口31Bを通じて振動式攪拌混合装置40に供給されるが、これに代えて、第1の流動体を、第2流入口31Bを通じて振動式攪拌混合装置40に供給し、かつ第2の流動体を、第1流入口31Aを通じて振動式攪拌混合装置40に供給してもよい。
【0038】
振動式攪拌混合装置40内において第1の流動体と第2の流動体とが合流して混合されることで、第2の流動体による顕熱冷却で第1の流動体が冷却される。したがって、第1の流動体の冷却効率を高くすることができ、その分だけ生産性を高めることができる。これに対して、先に背景技術の項で述べた特許文献1に記載の技術では、第1の流動体と第2の流動体とが予め混合された高い温度の混合体の状態で振動式攪拌混合装置40に供給されるので、該混合体の冷却に時間を要する。
【0039】
振動式攪拌混合装置40内において第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での混合体の温度を、固体脂の分散性の観点から、固体脂の固化開始温度未満に低下させることが好ましく、第1の流動体の固化開始温度未満に低下させることが更に好ましい。特に、該混合体の温度を、第1の流動体の固化開始温度未満で、かつ第1の流動体の固化温度以上となるように両流動体を混合することが、得られる化粧料中に、固体脂の凝集物が生成することを効果的に防止し、かつ得られる化粧料の保存安定性と使用感を向上できる点から好ましい。
【0040】
なお、「振動式攪拌混合装置40内において第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での混合体の温度」とは、振動式攪拌混合装置40に備えられたジャケットによる冷却がない仮想的な温度として定義され、第1の流動体及び第2の流動体の供給量及び比熱から計算される値であるか、又は振動式攪拌混合装置40を用い、かつジャケットによる冷却を行わずに両流動体を混合したときに実測された値のことである。
【0041】
振動式攪拌混合装置40内において、第1の流動体と第2の流動体とが混合した時点での混合体の粘度は、10〜100000mPa・s、特に100〜10000mPa・sであることが、固体脂の微分散性の向上の点から好ましい。
【0042】
振動式攪拌混合装置40に供給される第1の流動体と第2の流動体との割合は、両流動体の合計量を100%としたとき、固体脂を含む流動体である第1の流動体の割合を10〜50質量%、特に20〜40質量%に設定することが、良好な化粧料を生産性良く製造する点から好ましい。
【0043】
以上が、前記の(イ)の顕熱冷却である。本製造方法においては、この顕熱冷却に加え、前記の(ロ)の熱交換による冷却を行う。以下、この(ロ)の冷却について説明する。
【0044】
本製造方法では、固体脂の微分散と保存安定性の観点から、第1の流動体と第2の流動体の混合液を振動式攪拌装置40で攪拌しながら冷却する。冷却は振動式攪拌混合装置40の外壁から内部を冷却できればどのようは方法でも構わないが、振動式攪拌混合装置40の外壁に備えられたジャケットに冷却液を流通させる方法により冷却するのが好ましい。振動式攪拌混合装置40には、上述のとおり4つのジャケット34,35,36,37が取り付けられており、それぞれのジャケットには、冷却液として、所定温度の冷却水が循環して、第1の流動体と第2の流動体との混合体の冷却のための熱交換が行われる。例えば、各ジャケットに約0〜約20℃の冷却水を流通させることができる。この場合、振動式攪拌混合装置40の入り口側から出口側に向かうに連れて、4つのジャケット34,35,36,37に流通させる冷却水の温度を次第に低くしてもよく、あるいはすべて同じ温度にしてもよい。
【0045】
振動式攪拌混合装置40においては攪拌体44がその軸方向に沿って上下に振動することで、ケーシング41内を通過する前記の混合体が攪拌体44に沿った流れと、攪拌羽根43に設けられた開孔48及び切り欠き49を通る流れの乱れによって混合される。そして、冷却水との熱交換によって混合体が冷却されていくと、その流動性が低下する。この場合、混合体は、攪拌体44に沿った流れと、攪拌羽根43に設けられた開孔48及び切り欠き49を通る流れの乱れによって混合されながら冷却されるので、冷却むらが生じにくくなる。また混合されることで熱伝導性が良好になる。更に振動式攪拌混合装置40内にはデッドスペースが殆ど存在しないので、攪拌むらが生じにくい。しかも振動式攪拌混合装置40は、混合体の流動性が高い場合でも低い場合でも良好な攪拌混合を行うことができる。振動式攪拌混合装置40が有するこれらの利点は、混合体に含まれている固体脂の粒子を均一に微細化できるという好ましい効果をもたらす。
【0046】
振動式攪拌混合装置40内において、前記の混合体は、次第に出口側へ押し出されながら、冷却水との熱交換によって更に冷却される。このようにして、混合体は連続的に冷却され、目的とする化粧料が、振動式攪拌混合装置40の吐出口32を経て吐出用管33から吐出される。この場合、吐出用管33から吐出されるときの化粧料の吐出温度が、第1の流動体の固化温度未満となるように、混合体を冷却水によって冷却することが、固体脂の凝集物の生成を効果的に防止できる点から好ましい。化粧料の吐出温度が、第1の流動体の固化温度以上である場合には、該化粧料の温度が十分に低下せず、振動式攪拌混合装置40から吐出された後に該化粧料の冷却が進行し、それに起因して化粧料中に固体脂の凝集物が発生しやすくなることがある。化粧料の吐出温度を、第1の流動体の固化温度未満とするためには、各ジャケットに流通させる冷却水の温度や量を適切に調整すればよい。
【0047】
振動式攪拌混合装置40を用いた冷却においては、冷却水による平均冷却速度を0.1〜5℃/secに設定することが好ましい。平均冷却速度は、第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での温度と、目的とする化粧料、すなわち混合体が振動式攪拌混合装置40から吐出されたときの温度の差を滞留時間で除した値である。また、振動式攪拌混合装置40の振動数は2〜30Hz、特に10〜30Hzの範囲が好ましい。更に、振動式攪拌混合装置40で冷却される間に与えられる総振動量は、50〜100000ストローク、特に200〜20000ストロークであることが好ましい。
【0048】
振動式攪拌混合装置40の吐出用管33から吐出されるときの化粧料の粘度は、100〜1000000mPa・s、特に1000〜500000mPa・sであることが、化粧料の使用感及び化粧効果の点から好ましい。
【0049】
このようにして得られた化粧料は、固体脂が微細に分散されているので、使用感、特に塗布性能が良好であり、つやが高く、仕上がりが綺麗で化粧効果が高いものである。固体脂が微細に分散されている状態とは、化粧料における固体脂の一次粒子径が小さく、その凝集物の粒子径が小さいか又は凝集物が発生しない状態のことを指す。特に固体脂の凝集物の有無は化粧料の使用感に大きく影響することから、光学顕微鏡下、定規で測定した凝集物の粒子径が200μm未満であることが好ましく、50μm未満であることがより好ましく、光学顕微鏡下では凝集物が観察されないことが最も好ましい。本製造方法によれば、このような高品質の化粧料を生産性よく製造することができる。しかも本製造方法によれば、引火点の低い油性成分や熱に弱い油性成分の加熱を行わなくても良いので、従来の製造方法より安全にかつ安定して化粧料を製造することができる。
【0050】
次に、本発明で製造される化粧料の主たる原料について説明する。混合タンク21に充填される第1の配合原料には、上述のとおり、25℃において固体の油性成分が少なくとも含まれる。25℃において固体の油性成分はその固化開始温度が40〜100℃、特に50〜80℃であることが好ましい。
【0051】
目的とする化粧料においては、25℃において固体の油性成分の量は、10〜60質量%、特に10〜40質量%であることが好ましい。従来法でこのようなに25℃において固体の油性成分の配合量を高くする処方を採用すると、冷却過程において激しく増粘するため、攪拌混合が困難になる。これに対して本製造方法を用いると、25℃において固体の油性成分の配合量を高くしても、十分な攪拌混合が可能である。25℃において固体の油性成分の配合量を高くできることは、化粧持ちを高める観点から有利である。
【0052】
25℃において固体の油性成分の代表的な例はワックスである。ワックスは、固体/液体の可逆変化をし、30〜150℃の融点固化開始温度を有するものを広く包含する。ワックスの融点固化開始温度は、好ましくは45〜150℃、特に好ましくは50〜100℃である。本発明においては、このワックスを1種、又は弾性率調整の点から2種以上用いることができる。化粧料の弾性率を高めることは、該化粧料を例えばマスカラとして用いた場合にカール性が良好になる点から好ましい。本発明の製造方法によれば、化粧料の弾性率を高めるためワックスの配合量を高くした場合であっても、ワックス粒子の粒径が小さく、従来の方法で製造した化粧料より使用感の良い化粧料を得ることが可能になる。
【0053】
ワックスの具体例としては、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、シリコーンワックス、セレシン、カルナウバロウ、ライスワックス、ホホバワックス、キャンデリラロウ、鯨ロウ、ミツロウ、雪ロウ等が挙げられる。
【0054】
目的とする化粧料における、25℃において固体の油性成分以外の油性成分としては、先に述べた脂肪酸やそのエステル炭化水素油等の25℃で液体の油剤や揮発油剤などが挙げられる。化粧料におけるこれらの油性成分の割合は、20〜80質量%、特に30〜70質量%であることが好ましい。
【0055】
前述の各成分以外に、化粧料に通常使用される成分、例えば粉体成分を、第1の流動体又は第2の流動体に含有させることができる。粉体成分としては、コンジョウ、群青、ベンガラ、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、二酸化珪素、カーボンブラック、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、合成セリサイト、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイトなどの無機粉体;雲母チタン、酸化鉄雲母チタン、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体;有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体;微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン等の複合粉体などが挙げられる。これらの粉体は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。冷却に振動式攪拌混合装置を用いた本発明の製造方法によれば、強いせん断力がかからないので、特にせん断力により破砕しやすい光輝性粉体を破砕することなく高分散できるという利点がある。
【0056】
更に、高級アルコール、炭化水素油,シリコーン油などの油剤、水溶性高分子、アルコール類、多価アルコール類、薬剤、増粘剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、保湿剤、香料、酸化防止剤、水などを前記の配合原料中に含有させることができる。
【0057】
以上の方法によって製造された化粧料は、まつ毛又は眉毛のメイクアップ用として、具体的にはマスカラとして好適に用いられる。更に、着色顔料を含有したものだけでなく、いわゆるまつ毛用下地剤又はトップコートとしても使用できる。そのほか、皮膚若しくは唇をメイクアップするため又は治療するために用いられ得る軟質ペーストの形態の化粧料として使用することもできる。
【0058】
図4には、本製造方法で用いられる装置の別の形態が示されている。先に説明した図1に示す装置においては、振動式攪拌混合装置40を一台用いたが、図4に示す装置10においては、振動式攪拌混合装置40、40’を2台以上直列に連結して使用している。この場合、下流側に位置する2台目の振動式攪拌混合装置40’の途中から、熱に弱い成分等を供給することで、ワックスが固化するまでの攪拌条件と該成分の混合条件等をそれぞれ別個に適切に選択することができる。
【0059】
図5にも、本製造方法で用いられる装置の別の形態が示されている。先に説明した図1に示す装置においては、第1の流動体及び第2の流動体を、振動式攪拌混合装置40内において合流させ、そこで混合・冷却を行ったが、図5に示す装置10においては、振動式攪拌混合装置40の上流側に設置された高速せん断型分散機60を更に用い、高速せん断型分散機60内に第1の流動体及び第2の流動体を供給して両流動体を混合している。この混合による顕熱冷却で第1の流動体の温度を低下させている。そして、高速せん断型分散機60によって混合された第1の流動体と第2の流動体との混合体を、振動式攪拌混合装置40内を通過させ、各ジャケットに流通する冷却水による熱交換で、該混合体を冷却しつつ更に混合を促進させる。このように、図5に示す装置10によれば、高速せん断型分散機60において顕熱冷却が行われ、かつ振動式攪拌混合装置40において熱交換による冷却が行われる。
【0060】
図5に示す装置10を用いる場合には、第1の流動体を、固体脂の固化開始温度以上の温度で高速せん断型分散機60へ供給することが、固体脂の凝集物の発生を効果的に防止する観点から好ましい。また、同様の理由によって、第2の流動体を、第1の流動体の固化開始温度以下の温度で高速せん断型分散機60へ供給することも好ましい。
【0061】
図5に示す装置10における高速せん断型分散機60としては、例えばマイルダー(大平洋機工(株)製)、TKパイプラインホモミクサー(特殊機化工業(株)製)、コロイドミル((株)日本精機製作所製)を用いることができる。
【0062】
なお、図4及び図5に示す装置を用いた化粧料の製造方法において、特に説明しない点については、図1に示す装置を用いた製造方法に関する説明が適宜適用される。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されない。
【0064】
〔実施例1〕
図1に示す装置を用いて化粧料を製造した。以下の表1に示す1〜5の成分を95℃加熱下で溶融混合し第1の流動体とした。この第1の流動体を振動式攪拌混合装置(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)へ定量ポンプで供給した。第1の流動体の供給温度は95℃とした。これとは別に、以下の表1に示す6〜11の成分を25℃で溶融混合し第2の流動体とした。この第2の流動体を、定量ポンプで、振動式攪拌混合装置の2ユニット目へ供給した。このとき、第2の流動体は、第1の流動体と第2の流動体の合計量を100質量%としたとき、第2の流動体の割合が68.8質量%となるように供給した。第2の流動体の供給温度は25℃とした。両流動体を振動式攪拌混合装置内で攪拌・混合しながら連続的に冷却した。振動式攪拌混合装置においては各ジャケットに流す冷却水の温度を5℃に設定した。振動式攪拌混合装置の振幅は6.5mm、総振動量は1680ストロークであった。その他の条件を、以下の表2に示す。このようにして、化粧料としてのマスカラを得た。
【0065】
〔実施例2及び3〕
実施例1において、第1の流動体の供給温度を表2に示す値とした以外は、実施例1と同様にして化粧料を得た。
【0066】
〔実施例4及び5〕
実施例1において、第2の流動体の供給温度を表2に示す値とした以外は、実施例1と同様にして化粧料を得た。
【0067】
〔実施例6〕
実施例5において、第1の流動体の供給温度を表2に示す値とした以外は、実施例5と同様にして化粧料を得た。
【0068】
〔実施例7及び8〕
実施例1において、振動式攪拌混合装置の振動数を表2に示す値とした以外は、実施例1と同様にして化粧料を得た。
【0069】
〔実施例9〕
図5に示す装置を用いて化粧料を製造した。同図における高速せん断型分散機60としては、マイルダー(大平洋機工(株)製)を用いた。マイルダーの運転条件は、回転数=1500r/m、滞留時間=約2sとした。第1の流動体と第2の流動体をマイルダーへ連続供給し混合した後に、そのまま連続的に振動式攪拌混合装置へ供給し、連続冷却した以外は、実施例1と同様にして化粧料を得た。
【0070】
〔比較例1〕
本比較例においては、振動式攪拌混合装置に冷却水を流さなかった。これ以外は、実施例1と同様にして化粧料を得た。
【0071】
〔比較例2〕
本比較例においては、実施例1において用いた振動式攪拌混合装置に代えて、スタティックミキサー(ノリタケカンパニー・リミテッド(株)製)を用いた。これ以外は、実施例1と同様にして化粧料を得た。
【0072】
〔参考例1〕
以下の表1において、1〜6の成分を95℃で加熱混合した後、7〜11の成分を添加しディスパーで分散した。この流動体を95℃で、振動式攪拌混合装置(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)へ定量ポンプで供給した。供給量は、実施例1における第1の流動体及び第2の流動体の供給量の合計量の2倍とした。この油相流動体を振動式攪拌混合装置内で攪拌・混合しながら連続的に冷却した。振動式攪拌混合装置においてはジャケット34の温度は95℃、ジャケット35の温度は5℃、ジャケット36の温度は5℃、ジャケット37の温度は5℃に設定した。それ以外は実施例1と同様にして化粧料を得た。
【0073】
〔評価〕
実施例、比較例及び参考例で得られた化粧料について、ワックスの粒径を光学顕微鏡で観察し、凝集物の発生の有無を以下の基準で評価した。またワックス粒子の一次粒径、化粧料の保存安定性及び使用感を以下の方法で評価した。それらの結果を表2に示す。
【0074】
〔凝集物の発生の有無の評価〕
得られた化粧料を2枚のスライドガラス間に挟み、その状態下に化粧料を光学顕微鏡で観察した。そして凝集物の発生の有無を以下の基準で評価した。
5:凝集物が観察されない。
4:50μm未満の凝集物が観察される。
3:50μm以上200μm未満の凝集物が観察される。
2:200μm以上500μm未満の凝集物が観察される。
1:500μm以上の凝集物が観察される。
【0075】
〔ワックス粒子の一次粒径〕
得られた化粧料を、PETフィルム上に、約10μmの厚みになるように塗布して形成された塗布膜を、約30℃で24時間以上乾燥させた。乾燥させた塗布膜を走査型電子顕微鏡(10000倍)で撮影した。撮影した像の中から、任意で100個のワックス粒子を選択し、それぞれのワックス粒子の最大径を定規によって測定し、それらの粒径の平均値をワックス粒子の一次粒径とした。
【0076】
〔化粧料の保存安定性〕
約30gの化粧料50mLの容器に入れ、50℃の環境で1ヶ月保存した。保存後の分離状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。
○:全く分離していない
△:若干油浮きが観察される
×:完全に分離している
【0077】
〔化粧料の使用感〕
10名の専門パネラーに化粧料を使用させ、以下の基準で評価した。最も人数の多かった意見を評価結果とした。
5:非常に良い
4:良い
3:普通
2:悪い
1:非常に悪い
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
表2に示す結果から明らかなように、各実施例で得られた化粧料は、凝集物の発生の程度が非常に低く、かつワックス粒子の一次粒径が小さいものであることが判る。また保存安定性が高く、かつ使用感に優れていることが判る。これに対して、冷却が十分に行われていない比較例1及び2で得られた化粧料は、凝集物の発生が甚だしく、かつワックス粒子の一次粒径が大きいものであることが判る。また保存安定性が低く、かつ使用感に劣っていることが判る。参考例1で得られた化粧料は、その他の特性については、各実施例と同等の特性を有するものであったが、ワックス粒子の一次粒径に関しては、各実施例と比較して大きいものであった。また処理量が実施例1よりも50%低く、生産性が低かった。
【符号の説明】
【0081】
10 装置
20 第1の流動体の加熱混合部
30 冷却部
40 振動式攪拌混合装置
41 ケーシング
42 駆動軸
43 攪拌羽根
44 攪拌体
50 第2の流動体の供給部
60 高速せん断型分散機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状のケーシング内に、駆動軸と、該駆動軸に取り付けられた攪拌羽根とを有する攪拌体を備える振動式攪拌混合装置を用い、前記ケージング内に流動体を連続的に供給し、該流動体に前記駆動軸により軸方向の振動を与える化粧料の製造方法であって、
25℃において固体の油性成分を1種以上含む第1の配合原料を加熱溶融し、混合させた第1の流動体と、第1の流動体の供給温度より低い温度で溶融されている第2の流動体とを連続的に混合して前記流動体となし、
前記振動式攪拌混合装置内に前記流動体を通過させる工程において、該振動攪拌装置の内部を外壁から冷却し、前記流動体を、第1の流動体と第2の流動体を混合した時点での温度よりも低い温度まで冷却する化粧料の製造方法。
【請求項2】
第1の流動体として、25℃において固体の油性成分の割合が40質量%以上であるものを用いる請求項1に記載の化粧料の製造方法。
【請求項3】
第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での前記流動体の温度が、第1の流動体の固化開始温度未満で、かつ第1の流動体の固化温度以上となるように両流動体を混合する請求項1又は2に記載の化粧料の製造方法。
【請求項4】
前記振動式攪拌混合装置からの前記流動体の吐出温度が、第1の流動体の固化温度未満である請求項1ないし3のいずれか一項に記載の化粧料の製造方法。
【請求項5】
前記振動式攪拌混合装置内で第1の流動体と第2の流動体とを混合する請求項1ないし4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
第1の流動体を、前記25℃において固体の油性成分の固化開始温度以上の温度で前記振動式攪拌混合装置へ供給する請求項5に記載の化粧料の製造方法。
【請求項7】
第2の流動体を、第1の流動体の固化開始温度以下の温度で前記振動式攪拌混合装置へ供給する請求項5又は6に記載の化粧料の製造方法。
【請求項8】
前記振動式攪拌混合装置の上流側に設置された高速せん断型分散機を更に用い、
前記高速せん断型分散機内で第1の流動体と第2の流動体とを混合して前記流動体となし、該流動体を前記振動式攪拌混合装置内に通過させて更に冷却する請求項1ないし4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
第1の流動体を、前記25℃において固体の油性成分の固化開始温度以上の温度で前記高速せん断型分散機へ供給する請求項8に記載の化粧料の製造方法。
【請求項10】
第2の流動体を、第1の流動体の固化開始温度以下の温度で前記高速せん断型分散機へ供給する請求項8又は9に記載の化粧料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−116809(P2012−116809A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270068(P2010−270068)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】