説明

化粧板の加熱着色方法

【課題】表面濃色化と着色ムラが少なく加熱処理時にも木質表面材に歪みが発生しにくい化粧板の加熱着色方法を提供する。
【解決手段】基材1に木質表面材2を貼着した化粧板3の加熱着色方法であって、基材1に木質表面材2を貼着して貼り上がり材4を形成した後に、該木質表面材2の表面より熱処理を施して発色させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧板の表面を加熱させて発色させる着色方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に化粧板は、基材に着色された木質表面材が貼着されて形成される。そして、この基材に貼着される木質表面材に着色するには、従来は、木質表面材の表面に着色剤を塗布したり、またその着色剤をいくらか拭き取ったり(ワイビング)することが主流であった。しかし、木目の弱い材料に比較的濃い色を加工すると素材感がなくなってしまうという問題があるので、木材が本来持つ木目等を引き立たせ素材感を保つ工夫が必要であった。
【0003】
そこで、熱処理によって素材感を保ったまま木質材に着色する加熱着色方法が種々開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、木材をバーナーの炎で熱処理して炭化加工する木材表面の加工方法が開示され提案されている。
【0005】
このような方法で木材を熱処理すると木材は、木材成分の変質により茶褐色に変色し、木材本来の木目や木理、節等は引き立たされ木材の木味感は強調される。
【特許文献1】特開2005−186539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような熱処理による着色が施された木質表面材を得ようとする場合は、木質表面材の材料となるフリッチ材を熱着色した後スライス加工したり、引き板にして着色木質表面材とする方法と、無着色の材料(フリッチ材)をスライス加工したり、あるいは引き板にした木質表面材を熱着色する方法とが考えられる。
【0007】
しかしながら、前者では、材料の表面濃色化が起こりやすく蒲色ムラになりやすい。また、フリッチの段階で製品色を決定しなくてはならないなど、化粧板としての仕上がりをコントロールしにくいという問題があった。
【0008】
また、後者では、厚みが薄い状態で木質表面材を熱処理しなければならず、木質表面材料が乾燥して歪みが発生し、平面性が確保できなくなるという問題があった。特に集成品では平面性が確保できなくなる。
【0009】
したがって、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、貼り上がり材として発色時の仕上がりがコントロールし易くし、かつ、表面濃色化と着色ムラを少なくした化粧板の加熱着色方法を提供することを目的としている。
【0010】
また、加熱処理時にも木質表面材に歪みが発生しにくく、木質表面材の平面性を確保することができる化粧板の加熱着色方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を解決するために、請求項1に記載の化粧板の加熱着色方法は、基材に木質表面材を貼着した化粧板の加熱着色方法であって、基材に木質表面材を貼着して貼り上がり材を形成した後に、該木質表面材の表面より熱処理を施して発色させることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に記載の化粧板の加熱着色方法は、請求項1において、上記貼り上がり材を、熱ロールにて押圧することにより木質表面材を発色させることを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に記載の化粧板の加熱着色方法は、請求項1または請求項2のいずれか1項において、上記熱ロールの温度を300℃以上に設定して、上記木質表面材を発色させることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4に記載の化粧板の加熱着色方法は、請求項1乃至3のいずれか1項において、熱処理によって発色した上記木質表面材の表面に研磨処理を施すことを特徴とする。
【0015】
また、請求項5に記載の化粧板の加熱着色方法は、請求項1乃至4のいずれか1項において、上記木質表面材が、湿潤状態にある木材をスライスした単板、あるいは引き板材であり、湿潤状態のまま基材に貼着することを特徴とする。
【0016】
また、請求項6に記載の化粧板の加熱着色方法は、請求項5において、上記木材は、集成材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の化粧板の加熱着色方法によれば、基材に木質表面材を貼着して形成された貼り上がり材の表面より、木質表面材に熱処理を施すので、木質表面材を熱処理して着色してから基材に貼着するものに比べて、コントロールし易く、材料の表面濃色化と着色ムラを防止することができる。
【0018】
また、木質表面材が基材に貼着された状態で木質表面材に熱処理を施すので、木質表面材には歪みが発生しにくく、平面性を確保することができる。
【0019】
請求項2に記載の化粧板の加熱着色方法によれば、貼り上がり材料を熱ロールにて押圧することにより熱処理して発色させるので、より木質表面材の平面性を確保することができる。
【0020】
また、木質表面材のみ効率よく熱処理でき,接着剤に対してのダメージや基材の乾燥を起こしにくい。また、熱ロールなので、生産性が高く均一な着色となる。
【0021】
請求項3に記載の化粧板の加熱着色方法によれば、上記熱ロールの温度を300℃以上に設定して、木質表面材を発色させるので、木質表面材の熱処理時間を短縮することができる。また、材料の表面濃色化と着色ムラもおこりにくい。
【0022】
請求項4に記載の化粧板の加熱着色方法によれば、発色した表面を研磨するので、自然な着色表現を具現化することができる。
【0023】
また、表面に凸部が存在する場合は、この凸部が焦げて色が濃くなっても、この表面の焦げた部分を削取ることで色が薄くなって自然な色に仕上がる。
【0024】
請求項5に記載の化粧板の加熱着色方法によれば、湿潤状態にある木材をスライスした単板、あるいは引き板材であり、湿潤状態のまま基材に貼着するので、平面性を確保した上で熱処理できる。
【0025】
また、熱処理の際に、着色と同時に木質表面材の乾燥も行われるので、木質表面材の製作過程における乾燥工程を省略することができる。
【0026】
また、請求項6に記載の化粧板の加熱着色方法によれば、上記木材は、集成材であるので、特にそりが発生しやすい集成材において平面性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について説明する。図1は、本発明の化粧板の加熱着色方法の製造工程の手順を示すフローチャートであり、図2は、化粧板の貼り上がり材4を形成する前の状態を示す説明図である。また、図3は、貼り上がり材4が形成された状態を示す説明図である。
【0028】
本発明の化粧板の加熱着色方法は、基材1に木質表面材2を貼着した化粧板3の加熱着色方法であって、基材1に木質表面材2を貼着して貼り上がり材4を形成した後に、木質表面材2の表面より熱処理を施して発色させるように構成されている。
【0029】
すなわち、具体的には、図1に示すように、ステップS1において、基材1に木質表面材2を貼着して貼り上がり材4を形成する(図2、図3)。
【0030】
ここで、基材1としては、厚み12mmの5プライ(5枚合わせ).合板が採用されている。
【0031】
また、木質表面材2としては、乾燥処理を施していない湿った集成材をスライスした単板が採用されている。すなわち、本実施形態では、サイズが0.25mm(厚)×310mm(巾)×1845mm(長さ)で、含水率:45%〜65%(ドライベース)のブナ材のスライス単板が採用されている。
【0032】
木質表面材2を基材1に貼着する際には、ゴムラテックス系のSBR(スチレンブタジエンゴム)エマルジョンの接着剤が使用され、塗布量は、100〜120g/m2である。
【0033】
また、木質表面材2が貼着された貼り上がり材4は、110℃の温度、7kg/cm2の圧力で保持時間90秒の間、熱圧されることにより接着を確実なものとしている。
【0034】
次に、ステップS2に進み、図4に示すように、貼り上がり材4を熱処理して木質表面材2に着色する。
【0035】
図4は、貼り上がり材4を熱ロール5にて押圧処理する状態を示す説明図である。
【0036】
ここで、熱ロール5は、大きさがそれぞれ350mmφの2つのステンレス製の上下2つの円柱状部材5a、5bを備えている。これら熱ロール5の2つの円柱状部材5a、5bのうち、上側の円柱状部材5aは、図略の電熱装置で加熱可能に構成され、ステップS2において、300℃以上の温度(本実施形態では熱ロール5の表面温度400℃)に設定される。この設定温度は300℃以下では着色に時間が掛かりすぎて非現実的であり、温度は高いほど生産性向上が期待できるが、現実的には500〜600℃程度が上限である。
【0037】
図4に示すように、ステップS3において、貼り上がり材4を熱ロール5にて押圧しながら上側の円柱状部材5aで熱処理して木質表面材2に着色する。この時、熱ロール5の2つの円柱状部材5a、5bは、それぞれ図略の駆動装置により反対方向に回転して貼り上がり材4を挟み込んで、圧力7.5トン/300mmで、貼り上がり材4を左から右に送り速度5m/分で搬送しながら木質表面材2の表面を熱処理して着色する。
【0038】
ここで、貼り上がり材4の送り速度は、遅いほど着色度が上がるが、例えば今回のように400℃の熱処理の場合1.5m/分以下では接着剤の熱破壊が発生するので、火災防止の上からも1.5m/分程度の送り速度が好ましい。
【0039】
このように、平面性が出ている湿潤状態の木質表面材2をそのまま基材1に貼り、平面性を確保した上で表面熱処理に高効率な熱ロール式加熱を行うので、木質表面材2のみ効率よく熱処理でき,接着剤に対してのダメージや基材1の乾燥を起こしにくい。また、熱ロールなので、生産性が高く均一な着色となる。
【0040】
加熱着色された貼り上がり材4は、さらにステップS4において図5に示すように、熱ロール5のダウンストリームに配置されたサンダー6に搬送され、このサンダー6にて表面の着色部に研磨処理が施される。図5は、木質表面材2の発色した表面に研磨処理を施す状態を示す説明図である。ここでサンダー6は、下側に設けられた搬送用ローラ6aと上側に設けられたサンダー部6bとから構成され、搬送用ローラ6aにより搬送された貼り上がり材4は、サンダー部6bの回転する3つの円柱部材6c、6d、6eに掛け渡されたベルトサンダー6f(ワイドベルトサンダー#240)により搬送方向と逆向きに研磨される。このようなサンダー加工により、加熱着色された木質表面材2が、削り代0.02〜0.06mmだけ研磨処理されて、一連の加工が終了する。
【0041】
木質表面材2の表面には凹凸があり凸の部分は必要以上に焦げてしまうので、このように、サンダー仕上げを実施することにより凸部は選択的に排除され自然な着色された風合いが残ることになる。
【0042】
次に、図6を参照しながらこのようにして得られた化粧板3と、従来の方法による化粧板3とを比較した結果について説明する。
【0043】
図6は、製品の平面性と着色ムラとについて、本発明と従来方法との比較実験結果を示す表である。ここで、製品の平面性は、製品の表面の凹凸の寸法差を示している。また、着色ムラは、製品の濃淡のありなしを評価している。各項目とも、記号○(良好)、△(普通)、×(不良)で評価を表した。
【0044】
比較例1は、木質表面材2の原材料としてサイズ70mm(厚)×140mm(巾)×485mm(長さ)で、含水率35%〜110%のブナのフリッチ材を高圧水蒸気処理して集成、スライスした場合である。この比較例1の高圧水蒸気処理においては、フリッチ材は、30℃から165℃まで30分で昇温させた後、165℃で30分間保持させ、さらに165℃から60℃まで10分で降温させている。また、その後、このように降温した材料を圧力を保持したまま水没させて冷却している。
【0045】
そして、このように着色、冷却されたフリッチ材をサイズ加工、集成接着したものをスライスして全体サイズ0.25mm(厚)×310mm(巾)×1845mm(長さ)の木質表面材2を得ている。
【0046】
また、比較例1においては、基材1に対する貼り加工と、貼り上がり材4の木質表面材2に対するサンダー6による研磨仕上げとは実施例と同様である。
【0047】
次に、比較例2は、スライス後の木質表面材2を熱着色した場合であり、サイズ0.25mm(厚)×310mm(巾)×1845mm(長さ)含水率35%〜110%のブナ材スライス単板を100枚積載して、高圧水蒸気処理している。
【0048】
ここで、積載されたスライス単板は、高圧水蒸気処理により30℃から160℃まで30分昇温させ、165℃で30分保持し、160℃から60℃まで10分で降温させている。
【0049】
なお、比較例2においても、基材1に対する貼り加工と、貼り上がり材4の木質表面材2に対するサンダー6による研磨仕上げとは実施例と同様である。
【0050】
図6からもわかるように、製品平面性である製品の表面の凹凸の寸法差は、実施例が、○(±0.2mm)、比較例1が、O(±0.2mm)、比較例2が、×(±2.4mm)であった。
【0051】
また、着色ムラについては、実施例が、○(濃淡なし)、比較例1△(一部に濃淡あり)、比較例2△(一部に濃淡あり)であった。
【0052】
その結果、総合評価では、実施例が、○、比較例1△、比較例2△となった。
【0053】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る化粧板3の加熱着色方法によれば、基材1に木質表面材2を貼着して形成された貼り上がり材4の表面より、木質表面材2に熱処理を施すので、木質表面材2を熱処理して着色してから基材1に貼着するものに比べて、コントロールし易く、材料の表面濃色化と着色ムラを防止することができる。
【0054】
また、木質表面材2が基材1に貼着された状態で木質表面材2に熱処理を施すので、木質表面材2には歪みが発生しにくく、平面性を確保することができる。
【0055】
貼り上がり材4料を熱ロール5にて押圧することにより熱処理して発色させるので、より木質表面材2の平面性を確保することができる。
【0056】
また、木質表面材2のみ効率よく熱処理でき,接着剤に対してのダメージや基材の乾燥を起こしにくい。また、熱ロールなので、生産性が高く均一な着色となる。
【0057】
また、熱ロール5の温度を300℃以上に設定して、木質表面材2を発色させるので、木質表面材2の熱処理時間を短縮することができる。また、材料の表面濃色化と着色ムラもおこりにくい。
【0058】
また、発色した表面を研磨するので、自然な着色表現を具現化することができる。
【0059】
さらに、表面に凸部が存在する場合は、この凸部が焦げて色が濃くなっても、この表面の焦げた部分を削取ることで色が薄くなって自然な色に仕上がる
そして、木質表面材2が、湿った集成材によるスライス単板、あるいは引き板材の場合は、熱処理の際に、着色と同時に木質表面材2の乾燥も行われるので、木質表面材2の製作過程における乾燥工程を省略することができる。
【0060】
また、湿潤状態にある木材をスライスした単板、あるいは引き板材であり、湿潤状態のまま基材に貼着するので、平面性を確保した上で熱処理できる。
【0061】
また、上記木材は、集成材であるので、特にそりが発生しやすい集成材において平面性を確保することができる。
【0062】
上述した実施の形態は本発明の好ましい具体例を例示したものに過ぎず、本発明は上述した実施の形態に限定されない。
【0063】
例えば、基材1は、必ずしも実施例のように厚み12mmの5プライ(5枚合わせ).合板に限定されない。種々の基材が採用可能であるし、サイズも種々の設計変更が可能である。
【0064】
また、木質表面材2も、乾燥処理を施していない湿った集成材をスライスした単板に限定されず、例えば生材や煮沸、蒸煮材料からの引き板材なども採用可能である。また、樹種、サイズ、含水率、木質表面材2を基材1に貼着する際の接着条件なども種々の設計変更が可能である。
【0065】
さらに、熱ロール5の構成、材質、大きさ、加熱方法、圧力、なども種々の設計変更が可能である。
【0066】
特に、熱ロール5にエンボス模様等をつければ意図的に柄をつけることも可能でこの技術の応用として新しい付加価値が着けられる可能性もある。
【0067】
そして、サンダー6も必ずしもワイドペルトサンダー#240を用いたものに限定されない。構成の異なる種々の研磨装置が採用可能である。
【0068】
その他、本発明の特許請求の範囲内で種々の設計変更が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の化粧板の加熱着色方法の製造工程の手順を示すフローチャートである。
【図2】貼り上がり材を形成する前の状態を示す説明図である。
【図3】貼り上がり材が形成された状態を示す説明図である。
【図4】貼り上がり材を熱ロールにて押圧処理する状態を示す説明図である。
【図5】木質表面材の発色した表面に研磨処理を施す状態を示す説明図である。
【図6】製品の平面性と着色ムラとについて、本発明と従来方法との比較実験結果を示す表である。
【符号の説明】
【0070】
1 基材
2 木質表面材
3 化粧板
4 貼り上がり材
5 熱ロール
6 サンダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に木質表面材を貼着した化粧板の加熱着色方法であって、
基材に木質表面材を貼着して貼り上がり材を形成した後に、該木質表面材の表面より熱処理を施して発色させることを特徴とする化粧板の加熱着色方法。
【請求項2】
請求項1において、
上記貼り上がり材を、熱ロールにて押圧することにより木質表面材を発色させることを特徴とする化粧板の加熱着色方法。
【請求項3】
請求項2において、
上記熱ロールの温度を300℃以上に設定して、上記木質表面材を発色させることを特徴とする化粧板の加熱着色方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
熱処理によって発色した上記木質表面材の表面に研磨処理を施すことを特徴とする化粧板の加熱着色方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項において、
上記木質表面材は、湿潤状態にある木材をスライスした単板、あるいは引き板材であり、湿潤状態のまま基材に貼着することを特徴とする化粧板の加熱着色方法。
【請求項6】
請求項5において、
上記木材は、集成材であることを特徴とする化粧板の加熱着色方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−76195(P2010−76195A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245869(P2008−245869)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】