説明

化粧板

【課題】細菌や黴菌の繁殖をより確実に防止するとともに、製造コストを削減する。
【解決手段】基材3の表面に1〜5重量%の抗菌・防黴剤を含有する下塗り層5を塗布形成し、下塗り層5の表面に、撥水性及び透湿性を有する上塗り層7を塗布形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌・防黴性能に優れた化粧板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、住空間や生活環境の改善の要望が高まり、様々な手法で抗菌・防黴対策を施した内装用建材が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、基材の表面に撥水性・吸放湿性に優れた蜜蝋ワックスを塗布して撥水・通気塗膜を形成することにより、表面の保護及び手垢付着汚染の防止を図った建材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−348574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1では、塗膜が通気性や吸放湿性を有するので、塗膜の空孔を介して基材内部に細菌や黴菌が侵入して繁殖するおそれがある。
【0006】
そこで、塗膜又は基材に抗菌・防黴剤を含有させることが考えられる。しかし、塗膜に抗菌・防黴剤を含有させた場合には、塗膜が建材の表面に形成されているので、抗菌・防黴剤が蜜蝋ワックスと共に剥がれ、抗菌・防黴性能が失われるおそれがある。また、塗膜が剥がれなかったとしても、抗菌・防黴剤が蜜蝋ワックスで覆われ、かつ塗膜が撥水性を有しているので、抗菌・防黴剤が水(結露水)に溶けにくい。したがって、十分な抗菌・防黴性能が得られず、その結果、細菌や黴菌が塗膜の空孔を介して基材内部に侵入して繁殖するおそれがある。
【0007】
一方、基材を熱圧成形する際に抗菌・防黴剤を添加する場合には、抗菌・防黴剤として耐熱性を有する高価なものが必要となる。また、抗菌・防黴剤が、基材表面だけでなく基材内部全体に行き渡るので、抗菌・防黴剤の消費量が増大する。したがって、製造コストが増大する。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、細菌や黴菌の繁殖をより確実に防止するとともに、製造コストを削減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、抗菌・防黴剤を含有する塗膜を、撥水性及び透湿性を有する上塗り層で覆ったことを特徴とする。
【0010】
具体的には、本発明は、基材と、該基材の表面に塗布形成され、1〜5重量%の抗菌・防黴剤を含有する下塗り層と、該下塗り層の表面に塗布形成され、撥水性及び透湿性を有する上塗り層とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、細菌や黴菌が上塗り層の空孔を通過して下塗り層に到達しても、その繁殖が下塗り層の抗菌・防黴剤によって抑制される。
【0012】
また、仮に、化粧板の使用により上塗り層が剥がれても、下塗り層の表面に付着した細菌や黴菌の繁殖が抗菌・防黴剤によって抑制されるので、抗菌・防黴性能を確実に得ることができる。
【0013】
また、上塗り層が透湿性を有するので、水蒸気が上塗り層により取り込まれて液化しやすい。さらに、下塗り層に撥水性を持たせなくてよいので、下塗り層の抗菌・防黴剤を溶解させることにより、その抗菌・防黴性能を十分発揮させることができる。
【0014】
また、抗菌・防黴剤は下塗り層だけに含有させればよいので、抗菌・防黴剤の消費量を削減できる。また、下塗り層は基材の表面に塗布形成されるので、抗菌・防黴剤は基材の熱圧成形時の製造雰囲気に晒されず、耐熱性を有する高価な抗菌・防黴剤が不要となる。したがって、製造コストを削減できる。
【0015】
また、上塗り層が撥水性及び透湿性を有するので、汚れが付着しにくい。
【0016】
さらに、下塗り層には、表面平滑性が上塗り層程求められないので、生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る化粧板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る化粧板1を示す。該化粧板1は、基材3と、該基材3の表面に塗布形成された下塗り層5と、該下塗り層5の表面に塗布形成された上塗り層7とを備えている。上記基材3としては、ロックウール吸音板、木質繊維板、鉱物質繊維板、石膏ボード等、一般的な内装用建材を用いることができるが、特に、見かけ密度が0.2〜0.6g/cmの繊維板を用いた場合に、臭気等が大量に吸収されやすく好ましい。
【0020】
上記下塗り層5は、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、及びウレタン樹脂の単体又はこれらの混合物からなる水分散樹脂を主体とし、抗菌・防黴剤を含有している。含有される抗菌・防黴剤としては、銅イオン、2・オクチル・4・イソチアゾリン・3・オン等のイソチアゾリン系、トリアジン系、ピリジン系、ピリチオン系、有機銅系、無機系、又はこれらを組み合わせたものを使用できる。抗菌・防黴剤の添加量は、下塗り層5重量の1〜5重量%程度に設定される。
【0021】
上記上塗り層7は、撥水性及び透湿性を有する塗料、例えば、フッ素アクリル樹脂、フッ素ポリエステル樹脂、シリコンアクリル樹脂等の塗布により形成され、その塗布量は、50〜100g/mに設定される。また、上塗り層7にさらに着色顔料を含有させてもよい。
【0022】
上述のように構成された化粧板1では、細菌や黴菌が上塗り層7の空孔を通過して下塗り層5に到達しても、その繁殖が下塗り層5の抗菌・防黴剤によって抑制される。
【0023】
また、仮に、化粧板1の使用により上塗り層7が剥がれても、下塗り層5の表面に付着した細菌や黴菌の繁殖が抗菌・防黴剤によって抑制されるので、抗菌・防黴性能を確実に得ることができる。
【0024】
また、上塗り層7が透湿性を有するので、水蒸気が上塗り層7により取り込まれて液化しやすい。さらに、下塗り層5の撥水性が上塗り層7よりも低くなっているので、下塗り層5の抗菌・防黴剤の溶解が妨げられない。したがって、十分な抗菌・防黴性能が発揮される。
【0025】
また、抗菌・防黴剤は下塗り層5だけに含有させればよいので、抗菌・防黴剤の消費量を削減できる。また、下塗り層5は基材3の表面に塗布形成されるので、抗菌・防黴剤は基材3の熱圧成形時の製造雰囲気に晒されず、耐熱性を有する高価な抗菌・防黴剤が不要となる。したがって、製造コストを削減できる。
【0026】
また、上塗り層7が撥水性及び透湿性を有するので、汚れが付着しにくい。
【0027】
さらに、下塗り層5には、表面平滑性が上塗り層7程求められないので、生産性を高めることができる。
【0028】
なお、下塗り層5の抗菌・防黴剤の添加量を、下塗り層5重量の1〜5重量%程度に設定したのは、この抗菌・防黴剤の添加量が、下塗り層5重量の1重量%を下回ると、抗菌・防黴性能がほとんど発揮されず、下塗り層5重量の5重量%を上回ると、下塗り層5の造膜に支障をきたすからである。
【0029】
上述のことを実証するために、以下に実験例(実施例1,2、及び比較例)を挙げる。
【0030】
実施例1,2、及び比較例では、上記基材3としてのロックウール吸音板の表面に、イソチアゾリン系の抗菌・防黴剤を以下の表1に示す量添加したアクリル樹脂塗料を塗布することにより下塗り層5を形成する。そして、下塗り層5の表面にフッ素アクリル樹脂塗料を塗布することにより上塗り層7を形成したものを試験片とした。
【0031】
一方、Chaetomium globosum,Aspergillus niger,Cladosporium cladosporioides,Penicillium citrinum,Rhizopus oryzaeの5種類のカビを、ポテトデキストロース寒天培地からなる斜面培地で各種類毎に1週間の間培養し、生成した胞子を採取・混合して胞子懸濁液を生成した。
【0032】
そして、ガラスシャーレに水を吸わせたろ紙、U字管、及びステンレス製網を順番に置き、ステンレス製網の上に上記試験片を載せ、この状態で、試験片の一表面(30mm角)に上記胞子懸濁液を0.75ml塗布してガラスシャーレに蓋をした。また、別途作製したブランク用(カビの生育確認用)のポテトデキストロース寒天平面培地も、上記胞子懸濁液を0.75ml塗布した状態で、上記試験片と同様にガラスシャーレに格納した。そして、各ガラスシャーレと蓋との間をパラフィンでシールして28℃恒温槽内に4週間放置し、1週間毎にカビの生育状況を観察した。
【0033】
ポテトデキストロース寒天平面培地では、7日後に、菌糸の発育部分の面積が、胞子懸濁液塗布面の全面積の1/3を超えていた。
【0034】
【表1】

【0035】
<実施例1>
下塗り層5に抗菌・防黴剤が5%添加された試験体では、28日後の時点で菌糸が生育していなかった。
【0036】
<実施例2>
下塗り層5に抗菌・防黴剤が2%添加された試験体では、28日後の時点で菌糸が生育していなかった。
【0037】
<比較例>
下塗り層5に抗菌・防黴剤が0.3%添加された試験体では、7日後には菌糸が生育し始め、14日後には、菌糸の発育部分の面積が、試験片の胞子懸濁液塗布面の全面積の1/3を超えていた。
【0038】
実験の結果、実施例1,2では、比較例に比べて、高い抗菌・防黴効果が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、抗菌・防黴性能に優れた化粧板として有用である。
【符号の説明】
【0040】
1 化粧板
3 基材
5 下塗り層
7 上塗り層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
該基材の表面に塗布形成され、1〜5重量%の抗菌・防黴剤を含有する下塗り層と、
該下塗り層の表面に塗布形成され、撥水性及び透湿性を有する上塗り層とを備えた化粧板。

【図1】
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【公開番号】特開2013−75368(P2013−75368A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215161(P2011−215161)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】