説明

医療検査装置

本発明は、特にMR装置などの医療検査装置に関する。既知のMR装置は、検査対象の患者を収容し患者に制限された空間しか提供しない空所を有する。この制限された空間は、測定結果を台無しにする閉所恐怖症の反応をもたらしうる。本発明によれば、患者ベッド3の主面5に平行に配される鏡4は、空所1の内部に設けられる。鏡4は、空所の内部のより大きな空間を擬態し、患者の安心感を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物又は患者が電磁波に曝されることの可能な空所と当該空所内の患者ベッドとを有する医療検査装置に関する。特に本発明は、MR(磁気共鳴)システム、MRI(磁気共鳴映像法)システム、CT(コンピュータ断層撮影法)システム又はPETスキャナにおいて用いられる医療検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MRシステムは、患者又は患者の体の一部が配される少なくとも一部が閉じられた空所を有する。静磁界が発生されこれがその空所により規定される測定空間を満たす。RF(ラジオ周波数)送信機の信号が体の中に結合されこれがその体の中の選択された細胞核の磁気的退化を高める。この細胞核はRFエネルギを吸収し、このエネルギを緩和時間内で消散させる。緩和時間の3D(3次元)分布を研究することにより、患者の組織の3D画像を得ることができる。
【0003】
当該組織の正確な3D画像のため、患者は動くことが許されない。しかしながら、当該空所に提供される制限された空間は、多くの患者に不快又は苦痛さえも感じさせる。閉所恐怖症により、患者を動かし又はさらにはそのMR空所を出させてしまう。同様の考察がCTシステムに当てはまる。
【0004】
米国特許出願に係る文献のUS2003/0128034A1は、管状の医療検査装置を開示している。この管状装置の内部には、患者の領域における検査空間に、より大なる空間が配されることを擬態する立体画像担体がある。例えばホログラムなどの立体画像により擬態されるこの大なる空間は、閉所恐怖の不安を避けることに役立つ筈である。
【0005】
国際特許出願に係る文献のWO01/22108A1は、当該空所内の鏡を用いた磁気共鳴装置を開示している。この鏡の表面は、患者のベッドに対して傾斜している。この鏡は、患者を外の世界に視覚的に触れ続けさせることを可能にする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、冒頭の段落で述べた種類の医療検査装置であって、実際のものよりも空間が大きなものとするよう擬態する空所を有するものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため、本発明による医療検査装置は、前記患者ベッドの主面に平行に配された略平坦な鏡をさらに有することを特徴としている。
【0008】
以下では、人又は動物のつまり「患者」が当該空所で検査される場合にのみ言及する。但し、本発明は、当業者であれば、植物又は他の非生体物質のような対象物を当該空所において検査することも可能であることが容易に理解するように、この場合に限定されるものではない。
【0009】
本発明は、平坦な鏡が患者のベッドの主面と平行に患者の顔の上方に配置されるとその空所の空間の患者の感覚が影響を受けることになる、という思想に基づいている。患者のベッドの主面は、当該患者が検査中に静止している面であると定義される筈である。この場合、患者は、自分を見てその空所内部をより簡単に見ることができる。鏡のサイズによっては、患者は内側から空所全体を見ることさえできる。患者の印象は、空所内に鏡がない状況と比べて2倍以上患者の空間が広がったものとなる。知覚される空間は、患者が当該空所内にいるときに患者が知覚する空間であると規定される筈の知覚空間は、鏡なしのものよりも大きく見える。結果として、患者の安心感及び装置の受け入れ度合が向上する。
【0010】
本発明の好適実施例は、MR装置に関する。このMR装置は、閉じられた円筒形の空所を備える従来のタイプのものであって、当該円筒形空所が当該空所の長手軸に垂直な面に配される2つの開口部を有するものとすることができる。最も好適な実施例は、上記開口部に加えて、当該空所が患者が患者のベッドに横たわるときに患者の左右において開放している開放型MRシステムである。このMR装置は、約3Tまで磁界を発生する。RF場の周波数は、当該場が1Tであると42MHzであり、当該周波数は、磁界強度に比例する。
【0011】
当該鏡は、磁石のカバーを形成する患者空間の内壁に設けられるようにしてもよい。特に、この鏡を当該カバーに一体化させることもできる。
【0012】
知覚される患者空間を大きくするため、鏡の表面は、成人の顔の面より大きく、好ましくは直径で約26cmよりも大きくなるよう選択されるのが好ましい。
【0013】
鏡の形状は、空所の幾何学的形状寸法に合うようにしてもよい。従来型のMR装置が選ばれている場合、この鏡は、当該円筒形空所の長手軸のかなりの部分に沿って延在するものとしてもよい。かなりの部分は、当該長手軸の方向で測定した場合、患者空間の長さの少なくとも3分の1に規定される筈である。この鏡は、この長さの3分の1、2分の1又は3分の2に沿って延在するようにしてもよく、鏡の形を矩形とすることができる。当該長手軸が2メートルの長さと推定されると、この方向における鏡の延在は、66cm、1m又は1.3mにもなるものと思われる。1m×26cmのサイズの矩形形状により、良好な結果を得ている。
【0014】
開放型MR装置が選ばれる場合、円形の鏡を選ぶことができる。その直径は、少なくとも80cm、好ましくは少なくとも約1mとするのが良い。
【0015】
湾曲した鏡は空所の視覚認知に歪みをもたらすので、この鏡は略平坦な鏡に選択される。この点で、歪みのない平坦な鏡は、より安心感のあるものであり、笑いを誘うような反応を避けるものとなる。
【0016】
この点に関し、患者のベッドに平行な平坦な鏡の位置合わせにより、特に鏡が患者のベッドの主面に対して角度をもっている状況と比較して、患者の顔から比較的遠く離れて鏡を置くことができる。当該状況では、患者の目から鏡までの距離は概して10cmであるが、今回のケースにおいては15cmが可能である。本質的に目が長い時間対象物に順応することができる最小の距離は通常は25cmであることを留意するのがよい。これは、患者のベッドに平行に位置合わせされている鏡の場合には患者が自分の顔を何ら労せずに見ることができることを意味している。
【0017】
この鏡は、装置の機能をなるべく妨げないのが良い。但し、電磁スペクトルの視認可能な部分において光を反射する鏡は、銀又はアルミニウムなどの高反射率を持つ材料からなる層を含むのが普通である。RF場がこれら伝導層に結合されると、渦電流が発生する。これは、大きな鏡に対して特に懸念される。
【0018】
こうした渦電流を回避するための1つの実現可能な例は、多数の誘電性被膜を有する鏡のような金属のない鏡である。他の実現可能な例は、当該層の厚さが当該装置においてRF波の表皮厚さが用いるものよりも非常に小さいという意味では、非常に薄い金属層が考えられる。通例、当該層の厚さは、当該表皮厚さよりも大きさが1桁小さいものとするのが良い。普通、これは、数マイクロメートルの厚さを意味する。
【0019】
好適実施例は、複数の金属領域からなる層を有する鏡を用いる。これらの領域は、任意の形状のものとすることができ、互いにガルヴァーニ電気接続を持たない点状又は帯状のものとし得る。上述した領域の間に絶縁体を置くことも考えられる。ガルヴァーニ電気接続がないと、渦電流の発生をより困難なものとする電気的経路長が短くなる。このタイプの鏡は、比較的に低い反射率を呈するが、その結果は、特に患者の空間における光強度が比較的に低い場合に良好となる。
【0020】
他の好適実施例は、金属層を伴う鏡を用いるものであり、ここでは当該層がスリットのような凹部を有する。これにより、効果的に渦電流を防止する電気的経路長が長くなる。
【0021】
2つ上の段落において述べた金属領域のサイズ、又は直ぐ上の段落において述べた凹部のサイズは、送信コイルにより送信されるような鏡における局部的RF場強度に依存し、また、当該表皮厚さに関係して当該層の厚さに依存する。付加的な凹部は、傾斜磁場コイルをスイッチングすることにより誘導される渦電流を減少させるために必要なものと考えられる。
【0022】
以下、本発明による医療検査装置の実施例を、図面を参照して詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は、本発明による閉鎖型円筒状MR装置の空所1を示している。この図は、x軸及びy軸どちらにも直角な長手軸(z軸、回転軸)に沿ったものである。x軸、y軸及びz軸は、3次元座標系を表す。この空所は、60cmの内径を有し、xy平面に両方が存在する2つの開口部を有する。
【0024】
この空所の内側にいるのは、患者ベッド3に横たわる患者2である。患者ベッド3は部分的に湾曲した主面5を有するものの、その中央部分は、概ね平坦であり、zy平面内に存在する。患者は、患者ベッド3の主面5に垂直なx軸において目を向ける。患者の頭6の上方にあるのは、zy平面内に、したがって患者ベッド3の主面5に平行に配置される平坦な鏡4である。鏡から座標系の中心までの距離は27cmである。鏡4の中心は、上部カバー8に対して3cmの距離を有する。
【0025】
この鏡は、当該カバーの中に一体化され、当該カバーがこの領域において平坦化されるようになっている。代替例においては、この鏡をQBC(quadrature body coil)の内側に置き、そのQBCカバー8が透明なものに選択されるようにすることができる。この場合、鏡4から患者ベッド3までの距離を長くすることができ、鏡4を大きくすることができる。その場合、知覚される空間はさらに大きくなる。
【0026】
代替例として、このMR装置のQBC(及びこれに伴う空所)は、xy平面内に円形を呈しないが、楕円形状を呈する。これは、点線によって示されている。
【0027】
患者2が患者ベッド3に横たわるときに患者2が持つ知覚は、矢印A1,A2により示される。患者が上を見ると、患者は、自分自身を見ることができ、或いはその左右を見ることができる。経験的空間は、図2により示されるように窓を通じて見るようなものである。その印象は、患者の顔7が鏡から15cm離れていないものの自分の鏡像2´から30cm離れたものとなる。これにより、患者2は、自分自身と、自分の鏡像2´との間に鏡4のない場合よりも大きな空間を知覚する。
【0028】
図3は、QBC(図示せず)の上部に平坦カバー8を備える開放型MRシステムを示している。カバー8は、厚さ2mmであり、ポリカーボネートにより作られる。カバー8は、金属のない非伝導性反射層10の基板9として振る舞う。カバー8及び層10は、1mの直径を有する円形鏡4の構成を視覚化するために正確な縮尺に従っていない。
【0029】
図4は、図3のMR装置における患者ベッド3に患者が横たわるときの患者2の持つ知覚を示している。図2の状況と同様に、知覚される空間は、実際の空間よりも大きい。これは、患者2から自分の鏡像2´までの距離が鏡4までのものよりも大きいからである。
【0030】
図5は、開放型MR装置において使用可能な鏡の実施例を示している。鏡4は、直径1mを有し、厚さ0.1 mのアルミニウムの層を含んでいる。鏡4は、交互に配された長いスリット12と短いスリット13とを有する。スリット12,13の全ては、半径方向に配され電気的経路長を長くする。小さめのスリット13は、RF場強度が特に高い領域に配される。
【0031】
図6は、多数の金属領域14からなる層10を有する鏡4を示している。このガルヴァーニ電気の領域14は、小さな点状体であり、ここでは、領域15が金属を含まず、これにより金属領域14の間の電気的接続を回避している。当該点状体のサイズは、図示のために正確な縮尺ではない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による閉鎖型円筒形状MR装置の空所を示す、当該空所の回転軸の方向で見た場合の図。
【図2】図1の空所における経験的拡大図。
【図3】本発明による開放型MR装置の空所を示す、当該空所の回転軸の方向で見た場合の図。
【図4】図3の空所における経験的拡大図。
【図5】本発明によるMR装置において用いられる鏡の実施例を示す図。
【図6】金属の点状体を持つ層を有する代替えの鏡を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物又は患者が電磁波に曝されることの可能な空所と、前記空所内の患者ベッドとを有する医療検査装置であって、前記患者ベッドの主面に平行に配された略平坦な鏡をさらに有する装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、前記鏡の面は、成人の顔の面よりも大きい、装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であって、当該装置は、閉鎖型円筒形状MR装置であり、前記鏡は、前記空所の長手軸の相当部分に沿って延びる、装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置であって、当該装置は、開放型MR装置であり、前記鏡は、少なくとも直径80cmを有する、装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置であって、前記鏡は、金属のないものである、装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置であって、前記鏡は、前記患者が受けることの可能な電磁波の周波数に対応する表皮厚さよりも相当に小さい厚さを有する金属層を有する、装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置であって、前記鏡は、複数の金属領域からなり、これら領域間にガルヴァーニ電気接続を持たない層を有する、装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置であって、前記鏡は、凹部を持つ金属層を有する、装置。
【請求項9】
請求項1に記載の装置であって、当該装置は、磁気共鳴映像法システムを含む磁気共鳴システムである、装置。
【請求項10】
請求項1に記載の装置であって、当該装置は、開放型磁気共鳴映像法システムを含む開放型磁気共鳴システムである、装置。
【請求項11】
請求項1に記載の装置であって、当該装置は、コンピュータ断層撮影システム又はPETスキャナである、装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−519640(P2008−519640A)
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540804(P2007−540804)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【国際出願番号】PCT/IB2005/053698
【国際公開番号】WO2006/051497
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】