説明

医療用処置具およびこれを備えるマニピュレータ

【課題】医療用処置具において、処置具片の対を操作して開閉する際に、処置具片を閉じる場合に閉じ力を増大させるとともに開く場合にも開き力を増大させる。
【解決手段】医療用処置具において、第1鉗子片11および第2鉗子片12を有する処置部10、操作部材20A、20B、リンク部材16、15を備え、リンク部材16では、基端部16bが進退する第1の進退軸と先端部16aの距離はリンク部材16の長さより短く、基端部16bと鉗子回動軸13の中心を結んで第1の進退軸に射影した長さは先端部16aと鉗子回動軸13の中心を結んで射影した長さよりも短く、リンク部材15では、基端部15bが進退する第2の進退軸と先端部15aの距離はリンク部材15の長さより短く、基端部15bと鉗子回動軸13の中心を結んで第2の進退軸に射影した長さは先端部15aと鉗子回動軸13の中心を結んで射影した長さよりも短い構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用処置具およびこれを備えるマニピュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療の分野において、生体組織や手術器具等を把持したり、押圧したりして手技を行なう医療用処置具が使用されている。これらの医療用処置具は、例えばマスタースレーブ方式の医療用マニピュレータシステムを構成するマニピュレータに取り付けられたり、内視鏡の鉗子用チャンネルに挿通されたりして、患者等の体腔内に導入され、各種の手技に使用される。
【0003】
特許文献1には、医療用処置具の一つとして、開閉自在な把持部を備える把持鉗子が記載されている。把持部には、リンク機構を介してワイヤが接続されており、ワイヤはコイルシースに挿通されている。ワイヤを押し引きして長手方向に進退させると把持部が開閉する。
【0004】
上記のような把持鉗子においては、縫合針等の用具や、組織等をしっかりと把持できるように、把持部の把持力をより強くしたいというニーズがある。これに応えるため、特許文献2では、いわゆるトグル機構(倍力機構、増力機構)を備えたマニピュレータが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平6−1696号公報
【特許文献2】特開2007−301692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2のマニピュレータでは、トグル機構の作用によって力量が増大するのは、マニピュレータのエンドエフェクタ部材が閉じるときに限られており、把持力を増大することしかできないという問題がある。
ところが、体腔内で用いられる処置具は、処置が容易となるように、例えば切開された生体組織を処置中に押し開く動作が必要になる場合がある。また、例えば、体腔内で加わる外力によって処置具片が容易に閉じてしまわないように、開いた状態を安定的に維持する必要がある場合がある。
このため、医療用処置具において、処置具片を開閉させる場合に、閉じるときに閉じ力を増大させるとともに、開くときに開き力を増大させることができる医療用処置具が強く望まれている。
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、処置具片の対を操作して開閉する際に、処置具片を閉じる場合に閉じ力を増大させるとともに開く場合にも開き力を増大させることができる医療用処置具およびマニピュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の医療用処置具は、少なくとも一方が基体に対して回動可能に支持された一対の処置具片を有する処置部と、前記基体に対して一定の進退方向に沿って移動可能に設けられ、前記一対の処置具片を開く方向に回動させるため牽引による操作力を伝達する第1の操作部材と、前記基体に対して前記進退方向に平行な方向に沿って移動可能に設けられ、前記一対の処置具片を閉じる方向に回動させるため牽引による操作力を伝達する第2の操作部材と、回動可能な前記処置具片に第1の端部が連結され、第2の端部が前記第1の操作部材に連結された第1リンク部材と、回動可能な前記処置具片に第1の端部が連結され、第2の端部が前記第2の操作部材に連結された第2リンク部材と、を備え、前記第1リンク部材では、前記第1の操作部材の移動に伴って前記第2の端部が進退する第1の進退軸と前記第1の端部との距離は、前記第1リンク部材の長さより短く、前記第2の端部と前記一対の処置具片の回動中心とを結んだ線分を前記第1の進退軸に射影した長さは、前記第1の端部と前記回動中心を結んだ線分を前記第1の進退軸に射影した長さよりも短く、前記第2リンク部材では、前記第2の操作部材の移動に伴って前記第2の端部が進退する第2の進退軸と、前記第1の端部との距離は、前記第2リンク部材の長さより短く、前記第2の端部と前記一対の処置具片の回動中心とを結んだ線分を前記第2の進退軸に射影した長さは、前記第1の端部と前記回動中心を結んだ線分を前記第2の進退軸に射影した長さよりも短い構成とする。
【0009】
また、本発明の医療用処置具では、前記一対の処置具片の両方が前記基体に対して回動可能に支持されており、前記処置具片の一方が、前記第1リンク部材を介して前記第1の操作部材と連結され、前記処置具片の他方が、前記第2リンク部材を介して前記第2の操作部材が連結されている
ことが好ましい。
【0010】
また、本発明の医療用処置具では、前記一方の処置具片に連結された前記第1リンク部材と、前記他方の処置具片に連結された前記第1リンク部材とが、それぞれの前記第2の端部において、1つの第1接続回動軸を介して前記第1の操作部材に連結され、前記一方の処置具片に連結された前記第2リンク部材と、前記他方の処置具片に連結された前記第2リンク部材とが、それぞれの前記第2の端部において、1つの第2接続回動軸を介して前記第2の操作部材に連結されたことが好ましい。
【0011】
また、本発明の医療用処置具では、前記基体は、前記第1の進退軸に沿って延びる第1ガイドと、前記第2の進退軸に沿って延びる第2ガイドとを備え、前記第1の操作部材は、前記第1ガイドに沿って移動可能に支持され、前記第2の操作部材は、前記第2ガイドに沿って移動可能に支持されたことが好ましい。
【0012】
また、本発明の医療用処置具では、前記第1の操作部材と前記第2の操作部材とが、一端部および他端部に連結されたワイヤと、該ワイヤを巻きかけて回転することにより、前記第1の操作部材を前記第1の進退軸に沿って、前記第2の操作部材を前記第2の進退軸に沿って、それぞれ進退させるワイヤ駆動部と、を備えることが好ましい。
【0013】
また、本発明の医療用処置具では、2つのラックと、該2つのラックにそれぞれ係合されたピニオンとを有し、該ピニオンの回転によって前記2つのラックを互いに逆向きに進退駆動するラックピニオン駆動部と、前記ラックの一方と前記第1の操作部材、および、前記ラックの他方と前記第2の操作部材を、それぞれ連結するワイヤと、を備え、前記ラックピニオン駆動部によって、前記ワイヤを進退駆動することにより、前記第1の操作部材を前記第1の進退軸に沿って、前記第2の操作部材を前記第2の進退軸に沿って、それぞれ進退させることが好ましい。
【0014】
また、本発明の医療用処置具では、前記ワイヤの途中に前記ワイヤに張力を加える張力付加部を設けたことが好ましい。
【0015】
また、本発明のマニピュレータでは、本発明の医療用処置具を備える構成とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の医療用処置具およびこれを備えるマニピュレータによれば、一対の処置具片を開く第1の操作部材と一対の処置具片を閉じる第2の操作部材とを牽引操作することにより、それぞれ第1リンク部材と、第2リンク部材とを介して操作力を増大させて一対の処置具片を開閉させるため、処置具片の対を操作して開閉する際に、処置具片を閉じる場合に閉じ力を増大させるとともに開く場合にも開き力を増大させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の医療用処置具が適用される医療用マニピュレータシステムの構成の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の医療用処置具の先端側を示す模式的な正面図、および断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の医療用処置具の先端側の模式的な分解斜視図である。
【図4】図3におけるA−A断面である。
【図5】本発明の第1の実施形態の医療用処置具の処置部の開閉に用いるワイヤ駆動部の一例を示す模式的な正面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の医療用処置具の処置部が開いた状態を示す模式的な断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の医療用処置具の処置部の開閉時のリンク部材の位置関係を示す模式図である。
【図8】本発明の第1の実施形態の医療用処置具のトグル機構における開閉作用について説明するための模式図である。
【図9】本発明の第2の実施形態の医療用処置具の先端側を示す模式的な正面図、および断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態の医療用処置具の先端側の模式的な分解斜視図である。
【図11】本発明の第3の実施形態の医療用処置具の模式的な正面図および裏面図である。
【図12】本発明の第3の実施形態の医療用処置具の処置部が開いた状態を示す模式的な断面図である。
【図13】本発明の第4の実施形態の医療用処置具の処置部が閉じた状態、および開いた状態を示す模式的な断面図である。
【図14】本発明の第4の実施形態の医療用処置具の処置部の開閉に用いるラックピニオン駆動部の一例を示す模式的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0019】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態について説明するが、その前に本実施形態の医療用処置具(以下、単に「処置具」と称する。)およびマニピュレータが適用される医療用マニピュレータシステムの一例について説明する。
図1は、本発明の医療用処置具が適用される医療用マニピュレータシステムの構成の一例を示す模式図である。
【0020】
図1には、マスタースレーブ方式の医療用マニピュレータシステムの一例を示している。マスタースレーブ方式の医療用マニピュレータシステムとは、マスターアームとスレーブアームとからなる2種のアームを有し、マスターアームの動作に追従させるようにしてスレーブアームを遠隔制御するシステムである。このスレーブアームとして本発明のマニピュレータを適用することができる。
【0021】
図1に示す医療用マニピュレータシステムは、手術台100と、スレーブアーム200a、200b、200c、200d(マニピュレータ)と、スレーブ制御回路400と、マスターアーム500a、500bと、操作部600と、入力処理回路700と、画像処理回路800と、操作者用ディスプレイ900aと、助手用ディスプレイ900bと、を有している。
以下、記載を簡潔にするため、アルファベット順の符号「Xa、Xb、…、Xz」を、「Xa〜Xz」のように表す場合がある。例えば、「スレーブアーム200a、200b、200c、200d」を「スレーブアーム200a〜200d」と表す場合がある。
【0022】
手術台100は、観察・処置の対象となる患者Pが載置される台である。手術台100の近傍には、複数のスレーブアーム200a〜200dが設置されている。なお、スレーブアーム200a〜200dを手術台100に設置するようにしてもよい。
【0023】
各スレーブアーム200a〜200dは、それぞれ複数の多自由度関節を有して構成されており、各多自由度関節を湾曲させることによって、手術台100に載置された患者Pに対してスレーブアーム200a〜200dの先端側(患者Pの体腔に向かう側とする)に装着される処置具等を位置決めする。各多自由度関節は、図示しない動力部によって個別に駆動される。動力部としては、例えばインクリメンタルエンコーダや減速器等を備えたサーボ機構を有するモータ(サーボモータ)が用いることができ、その動作制御は、スレーブ制御回路400によって行われる。
スレーブアーム200a〜200dは、装着された処置具240a〜240dを駆動するための複数の動力部も有している(不図示)。この動力部も、例えばサーボモータを用いることができ、その動作制御はスレーブ制御回路400によって行われる。
【0024】
スレーブアーム200a〜200dの動力部が駆動された場合には、動力部の駆動量が位置検出器によって検出される。位置検出器からの検出信号はスレーブ制御回路400に入力され、この検出信号により、スレーブアーム200a〜200dの駆動量がスレーブ制御回路400において検出される。
【0025】
手術用動力伝達アダプタ(以下、単に「アダプタ」と称する。)220a、220b、220c、220dは、スレーブアーム200a〜200dと処置具240a〜240dとの間に介在されてスレーブアーム200a〜200dと処置具240a〜240dとをそれぞれ接続する。アダプタ220a〜220dは、それぞれが処置具240a〜240dを駆動する駆動機構を有し、対応するスレーブアームの動力部において発生した動力を、対応する処置具に伝達するように構成されている。
アダプタ220a〜220dの駆動機構は、対応する処置具の構成に応じて、例えば、直動機構、回動機構等が設けられている。
【0026】
スレーブ制御回路400は、例えばCPUやメモリ等を有して構成されている。スレーブ制御回路400は、スレーブアーム200a〜200dの制御を行うための所定のプログラムを記憶しており、入力処理回路700からの制御信号に従って、スレーブアーム200a〜200d又は処置具240a〜240dの動作を制御する。すなわち、スレーブ制御回路400は、入力処理回路700からの制御信号に基づいて、操作者Opによって操作されたマスターアームの操作対象のスレーブアーム(または処置具)を特定し、特定したスレーブアーム等に操作者Opのマスターアームの操作量に対応した動きをさせるために必要な駆動量を演算する。
【0027】
そして、スレーブ制御回路400は、算出した駆動量に応じてマスターアームの操作対象のスレーブアーム等の動作を制御する。この際、スレーブ制御回路400は、対応したスレーブアームに駆動信号を入力するとともに、対応したスレーブアームの動作に応じて動力部の位置検出器から入力されてくる検出信号に応じて、操作対象のスレーブアームの駆動量が目標の駆動量となるように駆動信号の大きさや極性を制御する。
【0028】
マスターアーム500a、500bは複数のリンク機構で構成されている。リンク機構を構成する各リンクには例えばインクリメンタルエンコーダ等の位置検出器が設けられている。この位置検出器によって各リンクの動作を検知することで、マスターアーム500a、500bの操作量が入力処理回路700において検出される。
【0029】
図1の医療用マニピュレータシステムは、2本のマスターアーム500a、500bを用いて4本のスレーブアームを操作するものであり、マスターアームの操作対象のスレーブアームを適宜切り替える必要が生じる。このような切り替えは、例えば操作者Opの操作部600の操作によって行われる。勿論、マスターアームの本数とスレーブアームの本数とを同数とすることで操作対象を1対1の対応とすれば、このような切り替えは不要である。
【0030】
操作部600は、マスターアーム500a、500bの操作対象のスレーブアームを切り替えるための切替ボタンや、マスターとスレーブの動作比率を変更するスケーリング変更スイッチ、システムを緊急停止させたりするためのフットスイッチ等の各種の操作部材を有している。操作者Opによって操作部600を構成する何れかの操作部材が操作された場合には、対応する操作部材の操作に応じた操作信号が操作部600から入力処理回路700に入力される。
【0031】
入力処理回路700は、マスターアーム500a、500bからの操作信号及び操作部600からの操作信号を解析し、操作信号の解析結果に従って本医療用マニピュレータシステムを制御するための制御信号を生成してスレーブ制御回路400に入力する。
【0032】
画像処理回路800は、スレーブ制御回路400から入力された画像信号を表示させるための各種の画像処理を施して、操作者用ディスプレイ900a、助手用ディスプレイ900bにおける表示用の画像データを生成する。操作者用ディスプレイ900a及び助手用ディスプレイ900bは、例えば液晶ディスプレイで構成され、観察器具を介して取得された画像信号に従って画像処理回路800において生成された画像データに基づく画像を表示する。
【0033】
以上のように構成された医療用マニピュレータシステムでは、操作者Opがマスターアーム500a、500bを操作すると、対応するスレーブアームおよび当該スレーブアームに取り付けられた処置具がマスターアーム500a、500bの動きに対応して動作する。これにより、患者Pに対して所望の手技を行うことができる。
【0034】
次に、本実施形態の医療用処置具について説明する。
図2(a)、(b)は、本発明の第1の実施形態の医療用処置具の先端側を示す模式的な正面図、および断面図である。図3は、本発明の第1の実施形態の医療用処置具の先端側の模式的な分解斜視図である。図4は、図3におけるA−A断面である。図5は、本発明の第1の実施形態の医療用処置具の処置部の開閉に用いるワイヤ駆動部の一例を示す模式的な正面図である。
【0035】
処置具1(医療用処置具)は、上述の処置具240a〜240dとしてスレーブアーム200a〜200dに装着することができるものである。
処置具1の概略構成は、図2(a)、(b)および図3に示すように、各種処置を行なうための処置部10と、処置部10を操作するための操作部材20A(第1の操作部材)、操作部材20B(第2の操作部材)(図3参照)と、操作部材20A、20Bを牽引するワイヤ21(図2(b)、図3参照)と、操作部材20A、20Bが挿通されたシース部30(図2(a)、(b)参照)とを備えている。
【0036】
処置部10は、第1鉗子片11および第2鉗子片12からなる一対の鉗子片(処置具片)を備えている。第1鉗子片11および第2鉗子片12は、それぞれの長手方向の中間部に設けられた貫通孔11e、12e(図3参照)に貫通する鉗子回動軸13で互いに回動可能に連結されており、鉗子回動軸13よりも先端側の領域が、開閉して体内組織や手術器具等の対象物を把持したり、押し開いたり、押さえたりする鉗子部14となっている。
また、処置部10は、鉗子回動軸13を固定し、第1鉗子片11および第2鉗子片12の基端側(鉗子部14と反対側)を側方から覆うとともに、シース部30を連結するカバー部材32(基体)を備える。
【0037】
第1鉗子片11の長手方向の中間部には、図3に示すように、鉗子回動軸13の軸方向に空間11dを隔てた状態で対向するとともに、鉗子回動軸13を貫通させる貫通孔11eを有する基部11cが設けられ、各基部11cから基端側に向かって2本のアーム部11A、11Bが延ばされている。
アーム部11Aの基端側の端部11aには貫通孔が設けられ、この貫通孔に、リンク部材15(第2リンク部材)の先端部15a(第1の端部)に設けられたリンク回動軸15cが挿通され、これによりリンク部材15がアーム部11Aに対し回動可能に連結されている。
また、アーム部11Bの基端側の端部11bには貫通孔が設けられ、この貫通孔に、リンク部材16(第1リンク部材)の先端部16a(第1の端部)に設けられたリンク回動軸16cが挿通され、これによりリンク部材16がアーム部11Bに対し回動可能に連結されている。
リンク回動軸15c、16cの中心軸線は、いずれも鉗子回動軸13の中心軸線と平行である。
【0038】
このように、アーム部11A、11B、リンク部材15、16は、それぞれリンク機構のリンクであり、端部11a、11b、先端部15a、16aには、リンク機構の回動継手であるリンク回動軸15c、16cが設けられている。このため、本明細書では、リンクの端部である先端部15a、16a、端部11a、11bの位置という場合、特に断らない限りは、先端部15a、16aの回動継手の回動中心の位置、すなわちリンク回動軸15c、16cの回動中心の位置を表すものとする。
また、以下に説明する他のリンクの端部の位置についても同様とする。
【0039】
同様に、第2鉗子片12の長手方向の中間部には、第1鉗子片11の空間11d内に挿入可能であって、鉗子回動軸13を貫通させる貫通孔12eを有する基部12cが設けられ、基部12cから基端側に向かって2本のアーム部12A、12Bが延ばされている。
第2鉗子片12は、第1鉗子片11の空間11d内に、基部12cを挿入し、各貫通孔11eおよび貫通孔12eを鉗子回動軸13が貫通した状態で、第1鉗子片11とともに鉗子回動軸13に対して回動可能に連結されている。
アーム部12Aの基端側の端部12aには貫通孔が設けられ、この貫通孔に、リンク部材17(第1リンク部材)の先端部17a(第1の端部)に設けられたリンク回動軸17cが挿通され、これによりリンク部材17がアーム部12Aに対し回動可能に連結されている。
また、アーム部12Bの基端側の端部12bには貫通孔が設けられ、この貫通孔に、リンク部材18(第2リンク部材)の先端部18a(第1の端部)に設けられたリンク回動軸18cが挿通され、これによりリンク部材18がアーム部12Bに対し回動可能に連結されている。
リンク回動軸17c、18cの中心軸線は、いずれも鉗子回動軸13の中心軸線と平行である。また、各リンク部材17、18の各先端部17a、18aは、第1鉗子片11において鉗子回動軸13より基端側で連結されている。
【0040】
リンク部材15、18の基端部15b、18b(第2の端部)は、操作部材20Bの後述する接続回動軸20bを介して操作部材20Bに回動可能に接続されている。接続回動軸20bの中心軸線は、鉗子回動軸13、およびリンク回動軸15c、18cの各中心軸線と平行であり、各リンク部材15、18は、操作部材20Bに対して相対回動可能である。
【0041】
リンク部材16、17の基端部16b、17b(第2の端部)は、操作部材20Aの後述する接続回動軸20aを介して操作部材20Aに回動可能に接続されている。接続回動軸20aの中心軸線は、鉗子回動軸13、およびリンク回動軸16c、17cの各中心軸線と平行であり、各リンク部材16、17は、操作部材20Aに対して相対回動可能である。
【0042】
操作部材20Aは金属等で形成され、操作部材20Aの先端側には、基端部16b、17bを回動支持する接続回動軸20aが設けられている。本実施形態では、操作部材20Aの形状は、一例として、鉗子部14側に向いた先端側が半円状に丸められ、基端側が角状とされた、断面矩形状のブロック状部材である。操作部材20Aの基端側から先端側に向かう方向に対する接続回動軸20aに直交する方向の幅はwとされている。
操作部材20Aの基端側には、ワイヤ21の一端部が挿入され、ワイヤ21の一端部が溶接や接着、あるいはかしめ等により一体に接続されている。
【0043】
操作部材20Bは、金属等で形成され、操作部材20Bの先端側には、基端部15b、18bを回動支持する接続回動軸20bが設けられている。本実施形態では、操作部材20Bの形状は、一例として、鉗子部14側に向いた先端側が半円状に丸められ、基端側が角状とされた、断面矩形状のブロック状部材である。操作部材20Bの基端側から先端側に向かう方向に対する接続回動軸20bに直交する方向の幅はwとされている
操作部材20Bの基端側には、ワイヤ21の他端部が挿入され、ワイヤ21の他端部が溶接や接着、あるいはかしめ等により一体に接続されている。
【0044】
このような構成により、第1鉗子片11、第2鉗子片12、リンク部材15、16、17、18は、鉗子回動軸13、リンク回動軸15c、16c、17c、18c、接続回動軸20a、20bを回動継手とするリンク機構を構成している。このため、リンク機構について述べる際に、第1鉗子片11、第2鉗子片12、リンク部材15、16、17、18をまとめて、リンク部材と称する場合がある。
本実施形態では、一例として、アーム部11Aとアーム部12B、アーム部11Bとアーム部12A、リンク部材15とリンク部材18、リンク部材16とリンク部材17の各対同士を同じ長さとし、開閉の中心に対して対称なリンク機構が構成されている場合の例で説明する。
【0045】
ワイヤ21は、操作部材20A、20Bを進退させる操作力を、操作部材20A、20Bに伝達する部材であり、本実施形態では、金属の撚り線ワイヤからなる。
ワイヤ21の一端部および他端部は、それぞれ操作部材20A、20Bの基端側に固定されている。
【0046】
カバー部材32は、図3に示すように、鉗子部14の基端側部分を側方から覆う側板部32a、32bを先端側に備え、基端側が円柱状の外形を有し、例えば金属等からなる部材である。カバー部材32の内部には、円柱状部分の中心軸線Oに沿って断面矩形状の貫通孔32iが設けられている。
以下では、処置部10における相対的な方向を参照する場合、図3に示すように、中心軸線Oに一致する軸をZ軸、Z軸に直交し鉗子回動軸13の中心軸線に平行な方向をY軸、Y軸およびZ軸に直交する軸をX軸とするXYZ座標系を用いる場合がある。
Z軸の正方向は処置部10における先端側、同じく負方向は処置部10における基端側である。
本実施形態では、カバー部材32における対称面は、YZ平面およびZX平面であり、側板部32a、32bは、YZ平面およびZX平面に関して面対称な形状を有する。
【0047】
側板部32a、32bの先端側の端部には、それぞれ、第1鉗子片11および第2鉗子片12を連結した鉗子回動軸13を挿通して位置を固定するための貫通孔からなる軸固定部32c、32dが設けられている。
また、側板部32a、32bが固定された円柱状部分の先端側には、側板部32a、32bの間に、鉗子回動軸13で連結された第1鉗子片11および第2鉗子片12のアーム部11A、12A、リンク部材15、16を回動可能の収容する溝部32eと、アーム部11B、12B、リンク部材17、18を回動可能の収容する溝部32fとが、ZX平面に沿う位置にX軸方向に貫通して設けられている。
このため、図2(a)に示すように、組立状態では、鉗子回動軸13はカバー部材32に固定され、第1鉗子片11および第2鉗子片12は、カバー部材32に対して回動可能に支持されている。
【0048】
貫通孔32iのY軸方向に互いに対向する内周面の間隔は、基端側よりも先端側が広くなっており、このため、Z軸方向の中間部の同位置に段部32hがそれぞれ形成されている。
【0049】
また、貫通孔32iにおいて、段部32hよりも先端側のX軸方向に対向する内周面には、操作部材20A、20Bの幅wよりもわずかに大きい幅W(図4参照)を有し、操作部材20A、20BをZ軸方向に進退移動可能に保持するガイド溝部32j(第1ガイド)、ガイド溝部32k(第2ガイド)がそれぞれ形成されている。
これにより、操作部材20A(20B)がワイヤ21によってZ軸方向に沿って駆動されると、ガイド溝部32j(32k)をガイドとして、操作部材20A(20B)がZ軸方向に円滑に進退できるようになっている。
【0050】
シース部30は、図2(a)、(b)に示すように、筒状に形成されたシース31を備えており、シース31内にワイヤ21が進退可能に挿通されている。本実施形態では、シース31として可撓性を有する公知のコイルシースが用いられている。
シース31の先端部は、カバー部材32の基端側に設けられた基端支持部32gの内部に取り付けられている。これにより、鉗子回動軸13は、シース部30に対しても移動しないように固定されている。
【0051】
シース部30において、カバー部材32が接続されたのと反対側の基端部には、図5に示すように、ワイヤ駆動部33が連結されている。
ワイヤ駆動部33は、図1のアダプタ220a〜220dのうち、駆動機構として回動機構が設けられたものに着脱可能に接続され、そのアダプタに対応するスレーブアームから供給される動力をワイヤ21に伝達する部材である。以下では、一例として、ワイヤ駆動部33が、アダプタ220aに装着され、スレーブアーム200aからの動力を受ける場合の例で説明する。
ワイヤ駆動部33の概略構成は、本実施形態では、アダプタ220aに着脱可能な形状を有する筐体33aの内部に、駆動軸35、駆動プーリ34、および張力付加部36A、36Bを備える。
【0052】
駆動軸35は、筐体33aに回転可能に保持され、筐体33aをアダプタ220aに装着した際に、図示略の端部がアダプタ220aの図示略の動力伝達軸と連結可能な構成とされている。駆動軸35の図4に示す端部は、駆動プーリ34に固定されている。
【0053】
駆動プーリ34は、駆動軸35の端部に固定され、駆動軸35の回動に伴って回動するもので、操作部材20A、20Bとの間で張られたワイヤ21の中間部にワイヤ21の配回し経路の内側から巻き掛けられている。
【0054】
張力付加部36A、36Bは、それぞれ、操作部材20Aと駆動プーリ34との間の位置と、操作部材20Bと駆動プーリ34との間の位置とで、ワイヤ21に張力を付加するものである。
また、張力付加部36A、36Bは、それぞれ共通して、固定プーリ37a、37b、テンションプーリ38、およびスプリング39を備え、ワイヤ21に対するこれらの設置位置のみが異なっている。
【0055】
固定プーリ37a、37bは、操作部材20A(20B)と駆動プーリ34との間で張架されたワイヤ21の配回し経路の外側において、互いに離間した位置に図示略の支持部材の端部に回転可能に固定されている。
テンションプーリ38は、固定プーリ37a、37bの間に張られたワイヤ21に対して、ワイヤ21の配回し経路の内側から巻き掛けて、配回し経路の外側に向かってワイヤ21を引き出すものである。本実施形態では、テンションプーリ38は、スプリング39を介して筐体33aに弾性支持された回転軸38aに回転可能に取り付けられている。
スプリング39の構成は、回転軸38aを弾性支持できれば、特に限定されず、例えば、コイルばねや板ばね等の適宜のばね部材、弾性部材を採用することができる。
【0056】
上記のように構成された処置具1の使用時の動作について、上述のスレーブアーム200a〜200dの一つ、例えば、スレーブアーム200aに取り付けた場合を例にとって説明する。
図6は、本発明の第1の実施形態の医療用処置具の処置部が開いた状態を示す模式的な断面図である。図7(a−1)、(a−2)は、本発明の第1の実施形態の医療用処置具の処置部の閉じた時のリンク部材の位置関係を示す模式図である。図7(b−1)、(b−2)は、本発明の第1の実施形態の医療用処置具の処置部の開いた時のリンク部材の位置関係を示す模式図である。図8(a)、(b)は、本発明の第1の実施形態の医療用処置具のトグル機構における開閉作用について説明するための模式図である。
【0057】
まず操作者Opは、所望のスレーブアーム、例えばスレーブアーム200aのアダプタ220aに処置具1のワイヤ駆動部33を装着し、これにより処置具1とスレーブアーム200aとを接続する。また、必要に応じて、他の処置具である処置具240b〜240dをアダプタ220b〜220dに接続する。
操作者Opが対応するマスターアームに所定の操作を行うと、スレーブ制御回路400aを介して当該スレーブアームの動力部が駆動される。当該動力部で発生した動力は、アダプタを介して直動運動または回動運動に変換される。
【0058】
例えば、処置具1を駆動するスレーブアーム200aの動力は、アダプタ220aにおいて回動運動に変換され、ワイヤ駆動部33の駆動軸35が操作量に応じて回動される。
本実施形態では、図5で、駆動プーリ34が図示反時計回り(矢印Aの方向)に回転されると、操作部材20A側のワイヤ21によって操作部材20Aが駆動プーリ34側に牽引される(矢印a参照)。また、操作部材20B側のワイヤ21は駆動プーリ34から操作部材20B側に送り出される。
逆に、駆動プーリ34が図示時計回り(矢印Bの方向)に回転されると、操作部材20B側のワイヤ21によって操作部材20Bが駆動プーリ34側に牽引される(矢印b参照)。また、操作部材20A側のワイヤ21は駆動プーリ34から操作部材20A側に送り出される。
【0059】
このように操作部材20A、20Bが牽引されると、それぞれの移動量に応じて処置具1内の各リンク部材が移動して、鉗子部14が開き角0°で閉じた状態(図2(b)参照)と最大開き角で開いた状態(図6参照)との間で開閉動作が行われる。
このため、操作部材20Aは、カバー部材32に対して一定の進退方向に沿って移動可能に設けられ、第1鉗子片11および第2鉗子片12を開く方向に回動させるため牽引による操作力を伝達する第1の操作部材になっている。
また、操作部材20Bは、カバー部材32に対して一定の進退方向に沿って移動可能に設けられ、第1鉗子片11および第2鉗子片12を閉じる方向に回動させるため牽引による操作力を伝達する第2の操作部材になっている。
【0060】
以下、操作部材20A、20Bの進退時における接続回動軸20a、20bの中心軸線上の点の移動軌跡が形成する直線を、この移動に伴って進退する操作部材20A、20Bに接続された各リンク部材の「基端部の進退軸」と称する。
本実施形態では、基端部16b、17bの進退軸O(図7(a−2)、(b−2)参照)は、鉗子回動軸13の中心軸線と接続回動軸20aの中心軸線とを通り、カバー部材32の中心軸線Oに平行である。また、進退軸Oは、ガイド溝部32jの長手方向に沿う中心軸とも平行である。
また、基端部15b、18bの進退軸O(図7(a−1)、(b−1)参照)は、鉗子回動軸13の中心軸線と接続回動軸20bの中心軸線とを通り、カバー部材32の中心軸線Oに平行である。また、進退軸Oは、ガイド溝部32kの長手方向に沿う中心軸とも平行である。
【0061】
まず、鉗子部14が閉じた状態の処置具1内の各部材の位置関係について説明する。
鉗子部14が閉じた状態では、図7(a−1)に示すように、第1鉗子片11および第2鉗子片12は、先端側が密着して閉じられている。基端側では、アーム部11Aの端部11aと、アーム部12Bの端部12bとが、鉗子回動軸13回りの回動の周方向において最も離れた状態になっている。また、このとき、図7(a−2)示すように、アーム部11Bの端部11bと、アーム部12Aの端部12aとは、鉗子回動軸13回りの回動の周方向において最も近づいた状態になっている。
この閉じた状態は、本実施形態では、図7(a−1)に示すように、接続回動軸20bが、進退軸O上の可動範囲において鉗子回動軸13に対して一定距離以上離れた位置に位置付けられることにより実現される。すなわち、開いた状態から、リンク回動軸15c回りにリンク部材15が図示反時計回りに回動されるとともにリンク回動軸18c回りにリンク部材18が図示時計回りに回動されることで、接続回動軸20bとリンク回動軸15c、18cとがZ軸方向において一定距離以下に近づくため実現される。
また、このとき、図7(a−2)に示すように、接続回動軸20aは、進退軸O上の可動範囲において鉗子回動軸13に対して一定距離以下に近づいた位置に位置付けられ、接続回動軸20aとリンク回動軸16c、17cとは、Z軸方向において一定距離以上離間されている。
【0062】
このため、鉗子部14が閉じた状態では、接続回動軸20aは、ガイド溝部32j内の可動範囲において、最も鉗子回動軸13寄りに位置またはこの位置に近接している。また、接続回動軸20bは、ガイド溝部32k内の可動範囲において、鉗子回動軸13から最も遠い位置またはこの位置に近接している。
カバー部材32に形成されたY軸正方向側の段部32hの位置は、操作部材20Bの基端側への移動範囲を規定しており、段部32hは、操作部材20Bの最大後退量を規制するストッパとして機能している。段部32hの位置は、把持する対象物の形状と上記降伏応力を考慮して設定されている。そのため、対象物を把持した状態で、段部32hに操作部材20Bの基端が後退されても各リンク部材15、18と第1鉗子片11および第2鉗子片12とは塑性変形を生じない。
【0063】
このような鉗子部14が閉じた状態から、鉗子部14を開くには、操作者Opがマスターアームを操作することにより、スレーブアーム200aからワイヤ駆動部33の駆動軸35に動力を伝達し、ワイヤ駆動部33の駆動プーリ34を図5の矢印A方向に回動させる。これにより操作部材20Aと駆動プーリ34との間のワイヤ21が図5の矢印a方向に牽引され、操作部材20Aが駆動プーリ34側に移動される。
この際、操作部材20Aはシース部30側に後退するが、鉗子回動軸13はカバー部材32に固定されているので、シース部30側に後退しない。この結果、図7(b−2)に示すように、接続回動軸20aが鉗子回動軸13から遠ざかる。これに伴って、接続回動軸20aとリンク回動軸16c、17cとがZ軸方向において近づくことにより、リンク部材16、17が第1鉗子片11、第2鉗子片12、および操作部材20Aに対して回動し、鉗子部14が開かれていく。
【0064】
一方、操作部材20Bと駆動プーリ34との間のワイヤ21は図5の矢印a’に示すように、駆動プーリ34から離間する方向に送り出されるが、たるみ側となるため、ワイヤ21の張力は減少しようとする。
ただし、操作部材20Bは、アーム部11B、12Aと同様に鉗子回動軸13回りに回動されるアーム部11A、12Bにリンク部材15、18を介して連結され、リンク機構の動きに連動するため、ワイヤ21からの作用がなくても図5の矢印a’方向に移動していく。
このため、ワイヤ21の張力は牽引開始前と大きな変化はないが、例えば、ワイヤ21の伸び変形、リンク機構の移動誤差、リンクの変形等の影響により、ワイヤ21の張力が変化する。本実施形態では、操作部材20Bと駆動プーリ34との間に張力付加部36Bを設けている。このため、ワイヤ21の張力が変化しようとしても、張力の変化に応じてテンションプーリ38が移動してスプリング39の弾性復元力が作用することで、ワイヤ21の張力が一定に保たれる。
【0065】
接続回動軸20aがZ軸負方向側に最大限牽引されると、図7(b−2)に示すように、第1鉗子片11および第2鉗子片12の基端側では、アーム部12Aの端部12aと、アーム部11Bの端部11bとが、鉗子回動軸13回りの回動の周方向において最も離れた状態になり、鉗子部14が最も開いた状態となる。このとき、図7(b−1)示すように、アーム部11Aの端部11aと、アーム部12Bの端部12bとは、鉗子回動軸13回りの回動の周方向において最も近づいた状態になっている。
【0066】
また、例えば、操作者Opがマスターアームを操作して、駆動プーリ34を図5の矢印B方向に回動させると、上述したのと逆の動作で、操作部材20Aが駆動プーリ34側に牽引され、図5の矢印bの方向に移動して鉗子部14が閉じる。
このとき、上述とは反対に、操作部材20Aと駆動プーリ34との間のワイヤ21がたるみ側となるが、本実施形態では、操作部材20Aと駆動プーリ34との間に張力付加部36Aを設けている。このため、ワイヤ21の張力が変化しようとしても、張力の変化に応じてテンションプーリ38が移動してスプリング39の弾性復元力が作用することで、ワイヤ21の張力が一定に保たれる。
【0067】
このようにして、処置具1では、操作部材20Aを牽引することで一対の処置具片が回動して鉗子部14が開かれ、操作部材20Bを牽引することで一対の処置具片が回動して鉗子部14が閉じられる。このため、処置具1によれば、対象組織を把持したり、曲針や縫合糸等の処置に必要な用具等を把持したりする等の所望の手技を行うことができる。
また、処置具1は、操作部材20A、20Bを移動させて鉗子部14の開閉動作を行う際に、ロッドを用いることなく、ワイヤ21の牽引のみで操作を行うことができるため、シース部30の可撓性を高めることが可能である。
【0068】
本実施形態では、図7(a−1)に示すように、鉗子部14が閉じられた状態において、接続回動軸20bは、リンク回動軸15c、18cよりも先端側(鉗子回動軸13側)に位置している。すなわち、リンク部材15、18の基端部15b、18bは、先端部15a、18aよりも先端側に位置している。
また、リンク部材15の基端部15bの進退軸Oとリンク回動軸15cとの距離は、リンク部材15の長さより短い。同様に、基端部18bの進退軸Oとリンク回動軸18cとの距離は,リンク部材18の長さより短い。
このため、図8(a)に示すように、一対の処置具片の回動中心(鉗子回動軸13の中心軸線)とリンク部材15の基端部15bの位置(ZX平面における接続回動軸20bの中心位置)とを結んだ線分を基端部15bの進退軸Oに射影した長さL1(本実施形態では、処置具片の回動中心とリンク部材15の基端部15bとの距離に等しい)は、当該回動中心とリンク部材15の先端部15aの位置(ZX平面におけるリンク回動軸15cの中心位置)とを結ぶ長さlaの線分を基端部の進退軸O上に射影した長さL2よりも短くなるように設定されている。なお、図8(a)の詳細については後述する。
また、特に図示しないが、本実施形態におけるリンク機構の、開閉の中心軸に関する対称性から、鉗子回動軸13、先端部18a、基端部18bの位置関係についても同様の関係が成立している。
【0069】
また、本実施形態では、図7(b−2)に示すように、鉗子部14が開かれた状態において、接続回動軸20aは、リンク回動軸16c、17cよりも先端側(鉗子回動軸13側)に位置している。すなわち、リンク部材16、17の基端部16b、17bは、先端部16a、17aよりも先端側に位置している。
また、リンク部材16の基端部16bの進退軸Oとリンク回動軸16cとの距離は、リンク部材16の長さより短い。同様に、基端部17bの進退軸Oとリンク回動軸17cとの距離は,リンク部材17の長さより短い。
このため、図8(b)に示すように、一対の処置具片の回動中心(鉗子回動軸13の中心軸線)とリンク部材16の基端部16bの位置(ZX平面における接続回動軸20aの中心位置)とを結んだ線分を基端部16bの進退軸Oに射影した長さL1’(本実施形態では、処置具片の回動中心とリンク部材16の基端部16bとの距離に等しい)は、当該回動中心とリンク部材16の先端部16aの位置(ZX平面におけるリンク回動軸16cの中心位置)とを結ぶ長さla’の線分を基端部の進退軸O上に射影した長さL2’よりも短くなるように設定されている。なお、図8(b)の詳細については後述する。
また、特に図示しないが、本実施形態におけるリンク機構の、開閉の中心軸に関する対称性から、鉗子回動軸13、先端部17a、基端部17bの位置関係についても同様の関係が成立している。
【0070】
このような構成により、操作部材20A、20B、リンク部材15、16、17、18および第1鉗子片11および第2鉗子片12は、いわゆるトグル機構を構成している。
トグル機構では、小さい操作力でも容易に開閉動作を行うことができる。この点について、以下、図8(a)、(b)を参照して説明する。
【0071】
図8(a)、(b)には、第1鉗子片11、鉗子回動軸13、リンク部材15、16、リンク回動軸15c、16c、接続回動軸20a、20b、およびワイヤ21を模式的に示している。
図8(a)に示すように、ワイヤ21に操作入力Fiを作用させて接続回動軸20bをZ軸負方向に牽引すると、接続回動軸20bが後退して進退軸Oとリンク部材15とが基端側でなす角度αが大きくなり、リンク回動軸15cを進退軸Oから離間させる方向に移動させる力Fbが生じる。力Fbは第1鉗子片11を鉗子回動軸13回りにY軸負方向から正方向をみて反時計回り方向に回動させるように作用し、最終的に鉗子部14において出力Foが発生する。
なお、図8(a)に示すlbおよびlaは、第1鉗子片11において、鉗子回動軸13より基端側の領域の長さおよび鉗子回動軸13より先端側のアーム部11Aの長さを、角度βは、進退軸Oと、鉗子回動軸13とリンク回動軸15cとを結ぶ直線とがなす角度を指す。また、第2鉗子片12等は図示していないが、同様に出力Foが発生する。
【0072】
第1鉗子片11および第2鉗子片12において鉗子部14に発生する出力Foの大きさは、下記式(1)で表される。ここで、α、βは、度(°)単位で表した角度である。
【0073】
【数1】

【0074】
したがって、角度αが90°に近づくほど、出力Foは指数関数的に大きくなる。理論上は、出力Foを無限大にすることができるが、実際には、出力Foが所定の大きさ以上になると、各リンク部材15、17や第1鉗子片11および第2鉗子片12が塑性変形するため、これらの部材の降伏応力によって把持力の上限が規定される。
【0075】
また、鉗子部14を開く際に、トグル機構の作用によって開く力を増大させることができる点についても、上記と同様にして説明される。
図8(b)に示すように、ワイヤ21に操作入力Fi’を作用させて接続回動軸20aをZ軸負方向に牽引すると、接続回動軸20aが後退して進退軸Oとリンク部材15とが基端側でなす角度α’が大きくなり、リンク回動軸16cを進退軸Oから離間させる方向に移動させる力Fb’が生じる。力Fb’は第1鉗子片11を鉗子回動軸13回りにY軸負方向から正方向をみて時計回り方向に回動させるように作用し、鉗子部14が開くのを阻害する外力が作用する場合には、最終的に鉗子部14において出力Fo’が発生する。
なお、図8(b)に示すla’は、第1鉗子片11において、鉗子回動軸13より先端側のアーム部11Bの長さを、角度β’は、進退軸Oと、鉗子回動軸13とリンク回動軸16cとを結ぶ直線とがなす角度を指す。また、第2鉗子片12等は図示していないが、同様に出力Fo’が発生する。
【0076】
第1鉗子片11および第2鉗子片12において鉗子部14に発生する出力Fo’の大きさは、下記式(2)で表される。ここで、α’、β’は、度(°)単位で表した角度である。
【0077】
【数2】

【0078】
したがって、鉗子部14が開くのを阻害する外力が作用する場合には、角度α’が90度に近づくほど、出力Fo’は指数関数的に大きくなる。
なお、上記と同様に、カバー部材32に形成されたY軸負方向側の段部32hは、操作部材20Aの最大後退量を規制するストッパとしても機能しており、この段部32hの位置は、鉗子部14が開くのを阻害する外力と、処置具1の各部材の降伏応力とを考慮して設定されている。
【0079】
以上説明したように、本実施形態の処置具1によれば、処置部10の第1鉗子片11、第2鉗子片12、各リンク部材15、16、17、18、および操作部材20A、20Bによってトグル機構が構成される。このため、牽引操作によってリンク部材15、18が進退軸Oに対して直角に近い角度をなす領域と、リンク部材16、17が進退軸Oに対して直角に近い角度をなす領域とでは、比較的小さな操作入力であっても鉗子部14に発生する開閉力が増大する。このため、小さい操作力でも効率よく開閉動作を行うことができる。
特に、鉗子部14を閉じる場合には、鉗子部14に生じる把持力を効率よく増大させることができる。このため、被把持物を、効率よく加圧したり、強固に把持したりすることができる。
また鉗子部14を開く場合には、鉗子部14に生じる開き力を効率よく増大させることができる。このため、開くのを阻害する外力に抗して円滑に開くことができる。また、例えば、生体組織などを押し開く動作を容易に行うことができる。また、例えば、鉗子部14が最大限開いた状態を外力に抗して安定的に維持することができる。
したがって、処置具片の対を操作して開閉する際に、処置具片を閉じる場合に閉じ力を増大させるとともに開く場合にも開き力を増大させることができる。
【0080】
また、操作入力Fi、Fi’が作用する接続回動軸20b、20aには、リンク部材15、18、16、17より進退軸O、Oから離間させる方向に出力Foの反力が作用するが、本実施形態のリンク部材15、18と、リンク16、17とは、それぞれ対をなして、進退軸O、Oに対して左右対称に配置されている。
このため、接続回動軸20bはリンク回動軸15c、18cの中間に位置し、接続回動軸20aはリンク回動軸16c、17cの中間に位置するため、接続回動軸20b、20aにそれぞれ作用する出力Foの反力、Fo’の反力は、正反対の方向に作用する結果、打ち消しあってゼロとなる。
したがって、ガイド溝部32j、32kに収容された操作部材20A、20Bがそれぞれガイド溝部32j、32kの内面に強く押し付けられることはなく、大きな摩擦が発生することが抑制される。
【0081】
[第2の実施形態]
図9(a)、(b)は、本発明の第2の実施形態の医療用処置具の先端側を示す模式的な正面図、および断面図である。図10は、本発明の第2の実施形態の医療用処置具の先端側の模式的な分解斜視図である。
【0082】
処置具1A(医療用処置具)は、上述の処置具240a〜240dとしてスレーブアーム200a〜200dに装着することができるものである。
処置具1Aの概略構成は、図9(a)、(b)および図10に示すように、上記第1の実施形態の処置部10に代えて、処置部10Aを備える。
処置部10Aは、上記第1の実施形態の処置部10のカバー部材32に代えて、カバー部材32A(基体)を備え、上記第1の実施形態の操作部材20A、20Bにそれぞれガイドピン22を追加したものである。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0083】
ガイドピン22は、摺動軸部22aと、摺動軸部22aと同軸で摺動軸部22aよりも大径な円板状のヘッド部22bとを有し、操作部材20A、20Bにおいて、それぞれ接続回動軸20a、20bの裏側に設けられている。ガイドピン22の位置は、摺動軸部22aがそれぞれ接続回動軸20a、20bと同軸となる位置に設けられている。
ガイドピン22は、例えば螺設、圧入、溶接等の適宜の固定手段によって操作部材20Aと固定されている。本実施形態では、一例として螺設を採用しており、これによりガイドピン22は操作部材20A、20Bと着脱可能に固定されている。
【0084】
カバー部材32Aは、第1鉗子片11および第2鉗子片12の基端側を側方から覆う側板部42a、42bと、側板部42a、42bの基端部を連結するとともに、シース部30を内周側に連結する円環状の基端支持部42cとを備える。
カバー部材32Aは、本実施形態では、シース部30の端部の中心軸線と一致する基端支持部42cの中心軸線O(図10参照)を含んで互いに直交する2平面に対して面対称な形状を有している。
カバー部材32Aの材質は、例えば金属等からなる。
【0085】
以下では、上記第1の実施形態と同様に、処置部10Aにおける相対的な方向を参照する場合、図10に示すように、中心軸線Oに一致する軸をZ軸、Z軸に直交し鉗子回動軸13の中心軸線に平行な方向をY軸、Y軸およびZ軸に直交する軸をX軸とするXYZ座標系を用いる場合がある。
Z軸の正方向は処置部10Aにおける先端側、同じく負方向は処置部10Aにおける基端側である。
本実施形態では、カバー部材32Aにおける対称面は、YZ平面およびZX平面であり、側板部42a、42bは、YZ平面およびZX平面に関して面対称な形状を有する。
【0086】
側板部42aの先端側の端部には、軸固定部32cが設けられている。
また、側板部42aにおいて軸固定部32cよりも基端側の中間部には、操作部材20Aに固定されたガイドピン22の摺動軸部22aをがたつくことなく挿通させる長穴42e(第1ガイド)が側板部42aに貫通して設けられている。
長穴42eの位置は、長穴42eの長手方向に沿う対称面がZY平面となる位置に設けられている。すなわち、長穴42eの長手方向の中心線は、軸固定部32cの中心を通り、かつ基端支持部42cの中心軸線Oに平行となる位置とされている。
長穴42eの外周側には、ガイドピン22のヘッド部22bを内部に収容する段穴部42fが設けられている。
このため、図9(a)に示すように、組立状態では、鉗子回動軸13はカバー部材32Aに固定され、第1鉗子片11および第2鉗子片12は、カバー部材32Aに対して回動可能に支持されている。
また、摺動軸部22a、ヘッド部22bは、それぞれ長穴42e、段穴部42f内で、軸固定部32cの中心に向かってZ軸方向に進退移動可能に配置されている。
これにより、操作部材20Aがワイヤ21によってZ軸方向に沿って駆動されると、長穴42eをガイドとして、摺動軸部22aおよび操作部材20AがZ軸方向に円滑に進退できるようになっている。
【0087】
同様に、図10に示すように、側板部42bには、側板部42aの軸固定部32c、長穴42e、段穴部42fと、それぞれYZ平面に関して面対称な位置、形状を有する軸固定部32d、長穴42h(第2ガイド)、段穴部42iが設けられている。
このため、特に図示しないが、組立状態では、操作部材20Bに固定されたガイドピン22の摺動軸部22a、ヘッド部22bは、それぞれ長穴42h、段穴部42i内で、軸固定部32dの中心に向かってZ軸方向に進退移動可能に配置されている。
これにより、操作部材20Bがワイヤ21によってZ軸方向に沿って駆動されると、長穴42hをガイドとして、摺動軸部22aおよび操作部材20BがZ軸方向に円滑に進退できるようになっている。
【0088】
また、長穴42e、42fが規定する操作部材20A、20Bの可動範囲は、上記第1の実施形態における操作部材20A、20Bの可動範囲と合わされている。
【0089】
また、処置具1Aでは、シース部30は、カバー部材32Aの基端支持部42cを介してカバー部材32Aに連結され、操作部材20A、20Bに接続されたワイヤ21がシース部30内に挿通されている。ワイヤ21は、特に図示しないが、上記第1の実施形態と同様にシース部30の他端部に設けられたワイヤ駆動部33に巻きかけられている。
【0090】
このような構成により、処置部10Aには、第1ガイドおよび第2ガイドの構成が異なる他は、上記第1の実施形態と同様のトグル機構が構成されている。
すなわち、上記第1の実施形態の処置部10が、カバー部材32の内部に形成されたガイド溝部32j、32kによって、操作部材20A、20BのZ軸方向の移動がガイドされているのに対して、本実施形態の処置部10は、カバー部材32Aに設けられた長穴42e、42fによって、操作部材20A、20Bの接続回動軸20a、20bに同軸に設けられたガイドピン22の摺動軸部22aがガイドされる点のみが異なる。
このため、本実施形態の処置具1Aも、上記第1の実施形態の処置具1と同様な動作を行うことができ、上記第1の実施形態の処置具1と略同様の作用を備える。
例えば、接続回動軸20b、20aにそれぞれ作用する出力Foの反力、Fo’の反力は、正反対の方向に作用する結果、打ち消しあってゼロとなるが、本実施形態では、長穴32h、32eに挿通された接続回動軸20b、20aがそれぞれ長穴32h、32eの内面に強く押し付けられることはなく、大きな摩擦が発生することが抑制される。
【0091】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態の医療用処置具について説明する。
図11(a)、(b)は、本発明の第3の実施形態の医療用処置具の模式的な正面図および裏面図である。図12は、本発明の第3の実施形態の医療用処置具の処置部が開いた状態を示す模式的な断面図である。
【0092】
本実施形態の処置具1B(医療用処置具)は、図11(a)、(b)に示すように、上記第2の実施形態の処置具1Aの処置部10Aに代えて、処置部10Bを備え、上記第2の実施形態と同様に、図1に示す医療用マニピュレータシステムの処置具240a〜240dとしてスレーブアーム200a〜200dに装着して用いることができるものである。
本実施形態の処置具1Bは、一対の処置具片のうち一方だけが回動可能である点が、上記第2の実施形態の処置具1と異なる。
以下、上記第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0093】
処置具1Bの処置部10Bは、図11(a)、(b)、図12に示すように、鉗子片41(処置具片)がカバー部材40(基体)に鉗子回動軸13によって回動可能に固定されたものである。
鉗子片41は、中央部に鉗子回動軸13を挿通する軸孔部41cを備え、軸孔部41cよりも先端側に被処置物を押さえる鉗子片部41Cが形成され、軸孔部41cより基端側に、アーム部41A、41Bが延ばされている。
鉗子片部41Cは、後述するカバー部材40の鉗子片40aとともに、開閉して体内組織や手術器具等の対象物を把持したり、押し開いたり、押さえたりする鉗子部14Aを構成している。
【0094】
アーム部41Aの基端側の端部41aには、上記第1の実施形態と同様のリンク部材15(第2リンク部材)の先端部15a(第1の端部)が、先端部15aに設けられたリンク回動軸15cを介してアーム部41Aに対し回動可能に連結されている。
また、アーム部41Bの基端側の端部41bには、上記第1の実施形態と同様のリンク部材16(第1リンク部材)の先端部16a(第1の端部)が、先端部16aに設けられたリンク回動軸16cを介してアーム部41Bに対し回動可能に連結されている。
ただし、上記第1の実施形態とは異なり、操作部材20B、20Aには、リンク部材18、17のような他のリンクは接続されていない。
リンク回動軸15c、16cの中心軸線は、いずれも鉗子回動軸13の中心軸線と平行である。
このように、アーム部41A、41B、リンク部材15、16は、それぞれリンク機構のリンクであり、端部41a、41b、先端部15a、16aには、リンク機構の回動継手であるリンク回動軸15c、16cが設けられている。
【0095】
リンク部材15、16の基端部15b、16b(第2の端部)は、それぞれ上記第1の実施形態と同様に、それぞれ操作部材20B、20Aに接続回動軸20b、20aを介して回動可能に接続されている。
すなわち、接続回動軸20bの中心軸線は、鉗子回動軸13、およびリンク回動軸15cの各中心軸線と平行であり、リンク部材15は、操作部材20Bに対して相対回動可能である。また、接続回動軸20aの中心軸線は、鉗子回動軸13、およびリンク回動軸16cの各中心軸線と平行であり、リンク部材16は、操作部材20Aに対して相対回動可能である。また、操作部材20B、20Aには、それぞれ上記第1の実施形態と同様にワイヤ21が接続されている。
また、操作部材20B、20Aには、上記第1の実施形態と同様にそれぞれの接続回動軸20b、20aと同軸となるように、ガイドピン22が固定されている。
【0096】
カバー部材40は、鉗子回動軸13によって回動可能に連結された鉗子片41の基端側を側方から覆う側板部40Aと、側板部40Aの先端側に固定して設けられた固定鉗子片部40Bと、側板部40A、固定鉗子片部40Bの基端部を連結するとともに、シース部30を内周側に連結する上記第2の実施形態と同様の基端支持部42cとを備える。
カバー部材40の材質は、上記第2の実施形態のカバー部材32Aと同様、例えば金属等からなる。
【0097】
以下では、上記第2の実施形態と略同様に、処置部10Bにおける相対的な方向を参照する場合、中心軸線Oに一致する軸をZ軸、Z軸に直交し鉗子回動軸13の中心軸線に平行な方向をY軸、Y軸およびZ軸に直交する軸をX軸とするXYZ座標系を用いる場合がある。
Z軸の正方向は処置部10Bにおける先端側、同じく負方向は処置部10Bにおける基端側である。
【0098】
側板部40Aは、図11(a)に示すように、上記第2の実施形態の側板部42aと外形がわずかに異なるのみの板状部材であり、側板部42aと同様に、先端側の端部には、鉗子片41の軸孔部41cに挿通された鉗子回動軸13を挿通して位置を固定する軸固定部32cが設けられている。
また、側板部40Aにおいて軸固定部32cよりも基端側の中間部には、操作部材20Aに固定されたガイドピン22の摺動軸部22aをがたつくことなく挿通させる長穴42e(第1ガイド)が側板部40Aに貫通して設けられている。
長穴42eの位置は、長穴42eの長手方向の中心線が、軸固定部32cの中心を通り、かつ基端支持部42cの中心軸線Oに平行となる位置とされている。
長穴42eの外周側には、ガイドピン22のヘッド部22bを内部に収容する段穴部42fが設けられている。
このため、図11(a)に示すように、組立状態では、鉗子回動軸13はカバー部材40に固定され、鉗子片41は、カバー部材40に対して回動可能に支持されている。
また、操作部材20Aに接続された摺動軸部22a、ヘッド部22bは、それぞれ長穴42e、段穴部42f内で、軸固定部32cの中心に向かってZ軸方向に進退移動可能に配置されている。
これにより、操作部材20Aがワイヤ21によってZ軸方向に沿って駆動されると、長穴42eをガイドとして、摺動軸部22aおよび操作部材20AがZ軸方向に円滑に進退できるようになっている。
【0099】
固定鉗子片部40Bは、図11(b)に示すように、基端支持部42cに接続されるカバー部40bと、カバー部材40の先端側に設けられた鉗子片40aとからなる。
カバー部40bは、側板部40AとYZ平面に関して面対称な形状を有する板状部であり、側板部40Aの軸固定部32c、長穴42e、段穴部42fに対応して、それぞれYZ平面に関して面対称な位置、形状を有する軸固定部32d、長穴42h(第2ガイド)、段穴部42iが設けられている。
このため、組立状態では、操作部材20Bに固定されたガイドピン22の摺動軸部22a、ヘッド部22bは、それぞれ長穴42h、段穴部42i内で、軸固定部32dの中心に向かってZ軸方向に進退移動可能に配置されている。
これにより、操作部材20Bがワイヤ21によってZ軸方向に沿って駆動されると、長穴42hをガイドとして、摺動軸部22aおよび操作部材20BがZ軸方向に円滑に進退できるようになっている。
【0100】
鉗子片40aは、鉗子回動軸13を中心として回動される鉗子片41の鉗子片部41Cと、YZ平面に整列した位置で密着して当接するように設けられ、鉗子片部41Cとともに鉗子部14Aを構成している。
このため、鉗子部14Aは、一対の処置具片が、カバー部材40に対して回動可能に支持された鉗子片部41Cと、固定支持された鉗子片40aとから構成されている。
【0101】
ここで、アーム部41A、41B、リンク部材15、16、および操作部材20B、20Aによって構成されるリンク機構について説明する。これらのリンク機構は、図8(a)、(b)に示すように、上記第1、2の実施形態に係るおよびアーム部11A、11B、リンク部材15、16、および操作部材20B、20Aによって構成されるリンク機構と同様な位置関係に配置されている。このため、上記第1、2の実施形態と同様なトグル機構を構成している。
【0102】
また、処置具1Bでは、上記第2の実施形態の処置具1Aと同様に、基端支持部42cにシース部30が接続され、操作部材20B、20Aに接続されたワイヤ21がシース部30内に挿通されている。ワイヤ21は、特に図示しないが、上記第1の実施形態と同様にシース部30の他端部に設けられたワイヤ駆動部33に巻きかけられている。
【0103】
このような処置具1Bによれば、上記第2の実施形態と同様にして、ワイヤ駆動部33によりワイヤ21を牽引することで、操作部材20Bを牽引した場合は、鉗子片41の鉗子片部41Cが閉じる方向(鉗子片40aに近づく方向)に回動され、鉗子部14Aを閉じることができる。また、鉗子部14Aが閉じてから、さらにワイヤ21を同方向に牽引することで、トグル機構の作用により小さな操作力によって把持力を増大させることができる。
また、ワイヤ21を牽引することで操作部材20Aを牽引した場合は、鉗子片41の鉗子片部41Cが開く方向(鉗子片40aから離れる方向)に回動され、鉗子部14Aを開くことができる。また、鉗子部14Aを略最大限開いてから、さらにワイヤ21を同方向に牽引することで、鉗子部14Aが開くのを阻害する外力を受ける場合に、トグル機構の作用により小さな操作力によって開く力を増大させることができる。
したがって、上記第2の実施形態と同様に、処置具片の対を操作して開閉する際に、処置具片を閉じる場合に閉じ力を増大させるとともに開く場合にも開き力を増大させることができる。
【0104】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
図13(a)、(b)は、本発明の第3の実施形態の医療用処置具の処置部が閉じた状態、および開いた状態を示す模式的な断面図である。図14は、本発明の第4の実施形態の医療用処置具の処置部の開閉に用いるラックピニオン駆動部の一例を示す模式的な正面図である。
【0105】
本実施形態の処置具1C(医療用処置具)は、図13(a)、(b)に示すように、上記第2の実施形態の処置具1Aの処置部10Aに代えて、処置部10Cを備える。また、図14に示すように、上記第2の実施形態のワイヤ駆動部33、ワイヤ21に代えて、ラックピニオン駆動部63、ワイヤ21A、21Bを備える。ただし、処置部10Bの構成に合わせて、ラックピニオン駆動部63は2組、ワイヤ21A、21Bは2対設けられている。
このような構成の処置具1Cは、上記第2の実施形態と同様に、図1に示す医療用マニピュレータシステムの処置具240a〜240dとしてスレーブアーム200a〜200dに装着して用いることができるものである。
【0106】
本実施形態の処置具1Cは、上記第2の実施形態の処置具1Aが、1対の処置具片の両方が基体に対して回動可能に支持され、これらの回動動作を1対の操作部材20A、20Bによって操作するリンク機構を備えていたのに対して、同様に1対の処置具片がそれぞれ回動可能に支持された場合に、各処置具片の回動動作をそれぞれ独立に操作できるようにした点が異なる。このため、上記第3の実施形態における一方の処置具片を回動させるトグル機構を、他方の処置具片にも設けた構成となっている。このため、一方の処置具片およびそのトグル機構を説明すれば、他方の構成は容易に理解される。
以下では、上記第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。また、2組の構成の説明がほとんど重複するため、対応する部材をかっこ書きして説明を簡素化する。
【0107】
処置具1Cの処置部10Cは、図13(a)、(b)に示すように、第1鉗子片51および第2鉗子片52(1対の処置具片)が図示略の基体に鉗子回動軸13によって回動可能に固定されたものである。
第1鉗子片51(第2鉗子片52)は、中央部に鉗子回動軸13を挿通する軸孔部51c(52c)を備え、軸孔部51c(52c)よりも先端側に被処置物を押さえる鉗子片部51C(52C)が形成され、軸孔部51c(52c)より基端側に、アーム部51A、51B(52A、52B)が延ばされている。
鉗子片部51C、52Cは、開閉して体内組織や手術器具等の対象物を把持したり、押し開いたり、押さえたりする鉗子部14Bを構成している。
【0108】
アーム部51A(52B)の基端側の端部51a(52b)には、上記第1の実施形態と同様のリンク部材15(第2リンク部材)の先端部15a(第1の端部)が、先端部15aに設けられたリンク回動軸15cを介してアーム部51A(52B)に対し回動可能に連結されている。
また、アーム部51B(52A)の基端側の端部51b(52a)には、上記第1の実施形態と同様のリンク部材16(第1リンク部材)の先端部16a(第1の端部)が、先端部16aに設けられたリンク回動軸16cを介してアーム部51B(52A)に対し回動可能に連結されている。
ただし、上記第2の実施形態とは異なり、操作部材20B、20Aには、リンク部材18、17のような他のリンクは接続されていない。
各リンク回動軸15c、16cの中心軸線は、いずれも鉗子回動軸13の中心軸線と平行である。
このように、アーム部51A、51B(52B、52A)、リンク部材15、16は、それぞれリンク機構のリンクであり、端部51a、51b(52b、52a)、先端部15a、16aは、リンク機構の回動継手であるリンク回動軸15c、16cが設けられている。
【0109】
各リンク部材15、16の基端部15b、16b(第2の端部)は、それぞれ上記第2の実施形態と同様に、それぞれ操作部材20B、20Aに接続回動軸20b、20aを介して回動可能に接続されている。なお、重なり合って見にくくなるため、図13(a)、(b)では、操作部材20B、20A、ワイヤ21A、21Bの図示は省略している。
すなわち、各接続回動軸20bの中心軸線は、鉗子回動軸13、およびリンク回動軸15cの各中心軸線と平行であり、各リンク部材15は、各操作部材20Bに対して相対回動可能である。また、各接続回動軸20aの中心軸線は、鉗子回動軸13、および各リンク回動軸16cの各中心軸線と平行であり、各リンク部材16は、各操作部材20Aに対して相対回動可能である。
【0110】
本実施形態では、図14に示すように、各操作部材20B、20Aには、それぞれワイヤ21B、21Aが接続されている。
各操作部材20B、20Aには、上記第2の実施形態と同様にそれぞれの接続回動軸20b、20aに図示略のガイドピン22が固定され、図示略の基体に設けられた長穴等のガイド内で移動可能に設けられている。
ただし、上記第2の実施形態とは異なり、リンク部材15(16)の基端部15b(16b)の進退軸P(P)は、中心軸線Oから先端部15a(16a)側(X軸正(負)方向側)に平行にずれた軸線に設定される。
【0111】
このようなアーム部51A、51B(52B、52A)、およびリンク部材15、16からなるリンク機構において、鉗子回動軸13、先端部15a、16a、および接続回動軸20b、20aの位置関係は、進退軸P、Pが中心軸線Oから平行にずれている以外は、上記第1の実施形態のトグル機構を構成するリンク機構の回動継手部の位置関係と同様である。
【0112】
次に、ラックピニオン駆動部63について説明する。
2組のラックピニオン駆動部63は、図1のアダプタ220a〜220dのうち、駆動機構として回動機構が設けられたものに着脱可能に接続され、そのアダプタに対応するスレーブアームから供給される動力をワイヤ21A、21Bに伝達する部材である。
以下では、一例として、2組のラックピニオン駆動部63が、アダプタ220bに装着され、スレーブアーム200bからの動力を受ける場合の例で説明する。
各ラックピニオン駆動部63の概略構成は、図14に示すように、本実施形態では、アダプタ220bに着脱可能な形状を有する筐体63aの内部に、駆動軸66、ピニオン65、およびラック64A、64Bを備える。なお、各ラックピニオン駆動部63の構成は同一のため、図14では、一方のラックピニオン駆動部63のみを示している。
【0113】
駆動軸66は、筐体63aに回転可能に保持され、筐体63aをアダプタ220bに装着した際に、図示略の端部がアダプタ220bの図示略の動力伝達軸と連結可能な構成とされている。駆動軸66の図11に示す端部は、ピニオン65に固定されている。
【0114】
ピニオン65は、駆動軸66の端部に固定され、駆動軸66の回動に伴って回動するもので、互いに対向して平行に配置されたラック64A、64Bと係合されている。
ラック64A(64B)は、操作部材20A(20B)に一端が接続されたワイヤ21A(21B)の他端が固定され、ピニオン65の回動に伴って一定方向に直動移動できるように筐体63aに支持されている。
このため本実施形態では、例えば、ピニオン65が図14の矢印B方向(図示反時計回り)に回動されると、ラック64Bはワイヤ21Bをラックピニオン駆動部63側に牽引する方向に移動し、ラック64Aはワイヤ21Aを処置部10B側に押し出す方向に移動する。逆に、ピニオン65が図示A方向に回動されると、これと反対の動作が行われる。
【0115】
このような処置具1Cによれば、ラックピニオン駆動部63によりワイヤ21A、21Bのいずれかを牽引することで、鉗子部14Bを開閉することができる。
以下では、簡単のため、一例として、各ラックピニオン駆動部63を同様に駆動することによって、第1鉗子片51および第2鉗子片52が対称的な動作をする場合の例で説明する。ただし、本実施形態では、第1鉗子片51および第2鉗子片52に対して、それぞれを独立に回動する2組のラックピニオン駆動部63を備えているため、第1鉗子片51および第2鉗子片52はいずれかの位置を固定したり、開閉量や開閉速度を互いに変えたりすることも可能である。
【0116】
図13(a)に示す鉗子部14Bが閉じられた状態から、鉗子部14Bを開くには、各ラックピニオン駆動部63の各ピニオン65を図14の矢印A方向に回動させる。これにより、各ワイヤ21Aがラックピニオン駆動部63側に牽引され、各ワイヤ21Aが接続された各操作部材20Aが進退軸P上で鉗子回動軸13から離れる方向に牽引される。
これにより、各接続回動軸20aが移動して、進退軸Pに対する各リンク部材16のなす角が増大して90°に近づき、各リンク部材16の先端部16cのリンク回動軸16cに連結されたアーム部51B、52Aが回動される。
このとき、アーム部51Bは図示時計回りに回動され、アーム部52Aは図示反時計回りに回動される。これにより、鉗子片部51C、52Cが互いに離間する方向に回動され、鉗子部14Bが開かれる。
【0117】
この開き動作において、アーム部51A、52Bを含むリンクでは、アーム部51A、52Bの端部51a、52bがそれぞれリンク部材15のリンク回動軸15cを進退軸Pに近づける方向に回動するため、ラック64Aに接続されたワイヤ21Bが進退軸P上で鉗子回動軸13に近づく方向に押し出されることと相俟って、接続回動軸20bが鉗子回動軸13に近づく方向に移動する。
【0118】
上記動作の逆の動作を行えば、開かれた鉗子部14Bを閉じることができる。
また、鉗子部14Bが閉じてから、さらにワイヤ21Bを同方向に牽引することで、トグル機構の作用により小さな操作力によって把持力を増大させることができる。
また、ワイヤ21Aを牽引することで操作部材20Aを牽引した場合は、鉗子部14Bを略最大限開いてから、さらにワイヤ21Aを同方向に牽引することで、鉗子部14Bが開くのを阻害する外力を受ける場合に、トグル機構の作用により小さな操作力によって開く力を増大させることができる。
したがって、上記第2の実施形態と同様に、処置具片の対を操作して開閉する際に、処置具片を閉じる場合に閉じ力を増大させるとともに開く場合にも開き力を増大させることができる。
【0119】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の技術範囲は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したり、各実施形態の構成を組み合わせたりすることが可能である。
例えば、上記第3、4の実施形態において、ガイドが長穴である構成を、上記第1の実施形態におけるガイド溝部である構成に変更することが可能である。
また、上記第1〜第3の実施形態のワイヤ駆動部33を用いてワイヤを牽引する構成を、第4の実施形態のラックピニオン駆動部63を用いて牽引する構成に変更することが可能である。
【0120】
上記の各実施形態の説明では、操作部材を牽引する部材としてワイヤを用いた場合の例で説明したが、ワイヤに変えてロッドを用いた構成としてもよい。
この場合、ロッドに適宜の剛性を持たせることにより、ロッド自身の軸線に沿って操作部材を進退させることができるようにすれば、長穴32e、32h等のガイドは設けなくてもよい。
【0121】
また、上記の第1〜3の実施形態の説明では、ワイヤ駆動部33に、張力付加部36A、36Bが設けられた場合の例で説明したが、ワイヤ21の剛性によっては、張力付加部36A、36Bの少なくともいずれかを削除した構成としてもよい。
【0122】
また、上記の第2〜第4の実施形態の説明では、操作部材20A、20Bにガイドピン22を固定して、ガイドピン22の摺動軸部22aを長穴に挿入した例で説明したが、接続回動軸20a、20bを長穴等のガイドに挿入した構成としてもよい。
【0123】
また、上記の各実施形態の説明では、処置具が医療用マニピュレータシステムにおけるマニピュレータに設けられる場合の例で説明したが、本発明の処置具は、処置具はマニピュレータに接続する態様には限定されず、マニピュレータに接続しない処置具としても用いることが可能である。
例えば、第1の実施形態の処置具1は、ワイヤ駆動部33の駆動軸35を操作者が手動で回動操作することにより、単独の処置具として用いることが可能である。
【符号の説明】
【0124】
1、1A、1B、1C、240a、240b、240c、240d 処置具(医療用処置具)
10、10A、10B、10C 処置部
11、51 第1鉗子片(処置具片)
11A、11B、12A、12B アーム部
12、52 第2鉗子片(処置具片)
13 鉗子回動軸
14、14A、14B 鉗子部
15、18 リンク部材(第2リンク部材)
16、17 リンク部材(第1リンク部材)
15a、16a、17a、18a 先端部(第1の端部)
15b、16b、17b、18b 基端部(第2の端部)
15c、16c、17c、18c リンク回動軸
20A 操作部材(第1の操作部材)
20B 操作部材(第2の操作部材)
20a 接続回動軸(第1接続回動軸)
20b 接続回動軸(第2接続回動軸)
21、21A、21B ワイヤ
22 ガイドピン
22a 摺動軸部
22b ヘッド部
32、32A、40 カバー部材(基体)
32g 基端支持部
32j ガイド溝部(第1ガイド)
32k ガイド溝部(第2ガイド)
33 ワイヤ駆動部
34 駆動プーリ
36A、36B 張力付加部
40B 固定鉗子片部(処置具片)
41 鉗子片(処置具片)
42e 長穴(第1ガイド)
42h 長穴(第2ガイド)
63 ラックピニオン駆動部
64A、64B ラック
65 ピニオン
200a、200b、200c、200d スレーブアーム(マニピュレータ)
O 中心軸線
、P 進退軸(第1の進退軸)
、P 進退軸(第2の進退軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が基体に対して回動可能に支持された一対の処置具片を有する処置部と、
前記基体に対して一定の進退方向に沿って移動可能に設けられ、前記一対の処置具片を開く方向に回動させるため牽引による操作力を伝達する第1の操作部材と、
前記基体に対して前記進退方向に平行な方向に沿って移動可能に設けられ、前記一対の処置具片を閉じる方向に回動させるため牽引による操作力を伝達する第2の操作部材と、
回動可能な前記処置具片に第1の端部が連結され、第2の端部が前記第1の操作部材に連結された第1リンク部材と、
回動可能な前記処置具片に第1の端部が連結され、第2の端部が前記第2の操作部材に連結された第2リンク部材と、
を備え、
前記第1リンク部材では、
前記第1の操作部材の移動に伴って前記第2の端部が進退する第1の進退軸と前記第1の端部との距離は、前記第1リンク部材の長さより短く、
前記第2の端部と前記一対の処置具片の回動中心とを結んだ線分を前記第1の進退軸に射影した長さは、前記第1の端部と前記回動中心を結んだ線分を前記第1の進退軸に射影した長さよりも短く、
前記第2リンク部材では、
前記第2の操作部材の移動に伴って前記第2の端部が進退する第2の進退軸と、前記第1の端部との距離は、前記第2リンク部材の長さより短く、
前記第2の端部と前記一対の処置具片の回動中心とを結んだ線分を前記第2の進退軸に射影した長さは、前記第1の端部と前記回動中心を結んだ線分を前記第2の進退軸に射影した長さよりも短い
ことを特徴とする医療用処置具。
【請求項2】
前記一対の処置具片の両方が前記基体に対して回動可能に支持されており、
前記処置具片の一方が、前記第1リンク部材を介して前記第1の操作部材と連結され、
前記処置具片の他方が、前記第2リンク部材を介して前記第2の操作部材が連結されている
ことを特徴とする請求項1に記載の医療用処置具。
【請求項3】
前記一方の処置具片に連結された前記第1リンク部材と、前記他方の処置具片に連結された前記第1リンク部材とが、それぞれの前記第2の端部において、1つの第1接続回動軸を介して前記第1の操作部材に連結され、
前記一方の処置具片に連結された前記第2リンク部材と、前記他方の処置具片に連結された前記第2リンク部材とが、それぞれの前記第2の端部において、1つの第2接続回動軸を介して前記第2の操作部材に連結された
ことを特徴とする請求項2に記載の医療用処置具。
【請求項4】
前記基体は、前記第1の進退軸に沿って延びる第1ガイドと、前記第2の進退軸に沿って延びる第2ガイドとを備え、
前記第1の操作部材は、前記第1ガイドに沿って移動可能に支持され、
前記第2の操作部材は、前記第2ガイドに沿って移動可能に支持された
ことを特徴とする請求項2または3に記載の医療用処置具。
【請求項5】
前記第1の操作部材と前記第2の操作部材とが、一端部および他端部に連結されたワイヤと、
該ワイヤを巻きかけて回転することにより、前記第1の操作部材を前記第1の進退軸に沿って、前記第2の操作部材を前記第2の進退軸に沿って、それぞれ進退させるワイヤ駆動部と、
を備える
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の医療用処置具。
【請求項6】
2つのラックと、該2つのラックにそれぞれ係合されたピニオンとを有し、該ピニオンの回転によって前記2つのラックを互いに逆向きに進退駆動するラックピニオン駆動部と、
前記ラックの一方と前記第1の操作部材、および、前記ラックの他方と前記第2の操作部材を、それぞれ連結するワイヤと、
を備え、
前記ラックピニオン駆動部によって、前記ワイヤを進退駆動することにより、前記第1の操作部材を前記第1の進退軸に沿って、前記第2の操作部材を前記第2の進退軸に沿って、それぞれ進退させる
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の医療用処置具。
【請求項7】
前記ワイヤの途中に前記ワイヤに張力を加える張力付加部を設けた
ことを特徴とする請求項5または6に記載の医療用処置具。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の医療用処置具を備える
ことを特徴とするマニピュレータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2013−103074(P2013−103074A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250682(P2011−250682)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「がん超早期診断・治療機器の総合研究開発/超低侵襲治療機器システムの研究開発/内視鏡下手術支援システムの研究開発プロジェクト」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】