説明

医薬品ガリウム組成物および方法

本発明は、新規の医薬品ガリウム組成物を提供するとともに、その製剤のための方法、並びに癌、高カルシウム血症、骨粗鬆症、骨減少症、パジェット病、および感染症のような症状および疾患を治療するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね、医薬品ガリウム組成物、詳細には、治療上の経口投与、吸入投与、または静脈内投与に適した医薬品ガリウム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ガリウムは、高カルシウム血症、癌、転移性骨疾患、感染症、並びに、特に骨粗鬆症およびパジェット病のような、ある広範な退行性または代謝性の骨疾患を含む、多くのヒトおよび動物の疾患の治療に対して医薬価値が立証されている。例えば、数々の臨床研究により、ガリウムが抗悪性腫瘍活性を有するとともに、パジェット病における異常に高い骨代謝を低下させる能力を有することが示されてきた(Bernstein, Therapeutic Gallium Compounds, in Metallotherapeutic Drugs and Metal−Based Diagnostic Agents: The Use of Metals in Medicine 259−277 (Gielen and Tiekink eds., 2005)で回顧されたい)。ガリウムは現在のところ、悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症を治療するため、静脈内注射用のガリウム硝酸塩(Ga(NO・9HO)溶解液(Ganite(登録商標))として米国での使用が承認されている。
【0003】
しかしながら確立された有用性にも関わらず、そのような疾患の治療におけるガリウムの使用は、ガリウム塩および有機金属錯体のようなガリウムの単型が、経口的に送達されると、非常に吸収が乏しく、生物学的利用率の高さに欠けるという事実により阻まれている。これらのガリウム形態の経口による生物学的利用率が低いということは、経口的に送達されるガリウムを、患者に対して非実用的に大量に投与するか、またはガリウムが非経口手段(例えば静脈内送達)を介して投与するか、のいずれかが必要になる。現時点では、そのようなガリウム塩、詳細には、塩化物(ハロゲン)、硝酸塩、硫酸塩などの塩の経口経路を介した反復投与または慢性投与は、その生物学的利用率の低さ、医薬品の許容性の欠落、またはその両方に起因して、骨粗鬆症およびパジェット病のような慢性型の症状に実用的だとは考えられていない。
【0004】
特に化学的錯体を介して経口的に投与されるガリウムの生物学的利用率を高める試みがなされてきた。数種類のガリウム錯体、例えば、ガリウムマルトレート(Bernsteinら、Metal−Based Drugs 7:33−47 (2000)、米国特許第5,258,376号、米国特許第5,574,027号、米国特許第5,883,088号、米国特許第5,968,922号、米国特許第5,998,397号、米国特許第6,004,951号、米国特許第6,048,851号、米国特許第6,087,354号を参照されたい)、およびガリウム8−キノリノレート(Colleryら、Anticancer Res. 16:687−692 (1996)、米国特許第5,525,598号、欧州特許第EP 0 599 881号、国際出願PCT/EP92/01687号を参照されたい)を含む、経口による高まった生物学的利用率を立証していることが確認されている。他の治療用のガリウム錯体は、例えば、Arionら、J. Inorg. Biochem. 91:298−305 (2002)、Chitambarら、Clin. Cancer Res. 2:1009−1015 (1996)、Stojilkovicら、Mol. Microbiol. 31:429−442 (1999)、米国特許第5,196,412号、米国特許第5,281,578号、および国際出願PCT/US91/03599号に説明されている。
【0005】
この点で、担体賦形剤を用いて錯体化された硝酸塩の対イオンを使用する、Ganite(登録商標)に含有される活性イオン性ガリウム成分の錠剤処方の、最近における第一相研究の結果は、健常者において経口投与後の優れた吸収を示した。しかし、硝酸塩は口腔および消化管における細菌により、ある病気、詳細には癌の形態の発生に罹らわせる危険因子として関係がみなされてきた亜硝酸塩に対して硝酸塩が減少しかねないため好ましくない。加えて硝酸塩は、単独および特定の薬剤(例えばシルデナフィル)との組み合わせで、血圧の重篤な低下(すなわち低血圧)を誘発しかねない。
【0006】
従って、新しい医薬品ガリウム組成物、詳細には、経口による向上された生物学的利用率および/または低毒性を有する医薬品ガリウム組成物の開発を継続する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の実施形態は、新規の医薬品ガリウム組成物、およびその製剤のための方法とともに、異常に高まった骨吸収の抑制が望まれる感染症、または症状および疾患を治療する方法を提供する。より詳細には、本発明の実施形態は、経口投与に適した新規のクエン酸ガリウム製剤、およびその製剤のための方法とともに、癌、高カルシウム血症、骨粗鬆症、骨減少症、パジェット病(すなわち、破骨細胞および骨芽細胞または腫瘍細胞の作用に媒介されるいずれかの骨障害)のような症状および疾患とともに、感染症を治療する方法を提供する。
【0008】
従って、本発明の一態様は、ガリウム塩の1つ以上の陰イオン性の対イオンを、1つ以上のクエン酸イオンと置換する方法を目的とし、当該方法は、水溶液中でガリウム塩をクエン酸塩と反応させることと、生じたクエン酸ガリウムを回収することとを含み、ここで1つ以上の陰イオン性の対イオンが、1つ以上のクエン酸イオンと置換されている。ガリウムは、好ましくは約0.1Mから飽和までの濃度、より好ましくは約0.75〜1.25Mの濃度、最も好ましくは約1.0Mの濃度である一方で、クエン酸は、好ましくは約0.1Mから飽和までの濃度、より好ましくは約0.5〜4Mの濃度、最も好ましくは約2〜3Mの濃度である。回収したクエン酸ガリウムは、単一の医薬溶媒、純水、またはそれらの混合物で洗浄することができる。クエン酸ガリウムの回収前に中和工程を含まないことが好ましい。
【0009】
ガリウム塩は、ヨウ化ガリウム、塩化ガリウム、ガリウム硫酸塩、およびガリウム硝酸塩を含むがこれらに限定されない、医薬的に許容される任意のガリウム塩でよい。好ましくは、出発時のガリウム塩はガリウム硝酸塩である。同様に、クエン酸塩は、クエン酸アンモニウム、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウムを含むがこれらに限定されない、医薬的に許容される任意のクエン酸塩でよい。
【0010】
使用されるガリウム塩およびクエン酸塩次第で、生じるクエン酸ガリウムは、1つ以上の医薬的に許容される、そこに結合された陰イオンおよび/または陽イオンを少量有し得る。そのようなものとして、回収したクエン酸ガリウムは一般式Iを有する。
[Cat]xGa(Cit)[An]・nHO I
式中、[Cat]が医薬的に許容される陽イオンであり、(Cit)が、カルボキシル基の0〜3が随意にプロトン化されるクエン酸であり、[An]が医薬的に許容される陰イオンであり、xが0〜2、yが1〜6、zが0〜2、そしてnが0〜2またはnが0〜6である。好ましい実施形態では、xが0、yが2、zが0、そしてnが0である。
【0011】
好ましい実施形態では、調製方法における出発時のガリウム塩はガリウム硝酸塩であり、クエン酸塩はクエン酸アンモニウムである。従って、回収したクエン酸ガリウムは、一般式IIを有する。
[NH]xGa(Cit)y[NO]z・nHO II
式中、(Cit)は上述のように、xが0〜2、yが1〜6、zが0〜2、そしてnが0〜2またはnが0〜6である。好ましい実施形態では、xが0、yが2、zが0、そしてnが0である。
【0012】
出願人は、上述の方法により作製されたクエン酸ガリウムが、従来技術のクエン酸ガリウム製剤と比較して、アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、および硝酸塩イオンのような、望ましくない錯イオン量を一層少なく有していること、従って生体への投与に、より適切であることを発見した。従って、本発明の別の態様は、医薬品グレードのクエン酸アンモニウムを目的とする。好ましい実施形態では、医薬品グレードのクエン酸ガリウムは、式Ga(Cを有する。
【0013】
本発明の別の態様は、その必要のある患者に、クエン酸ガリウム、および1つ以上の医薬的に許容される賦形剤を含むガリウムを投与するための医薬組成物を目的とし、ここでクエン酸ガリウムは一般式Iを有する。
[Cat]Ga(Cit)[An]・nHO I
式中、[Cat]が医薬的に許容される陽イオンであり、(Cit)が、カルボキシル基の0〜3が随意にプロトン化されるクエン酸であり、[An]が医薬的に許容される陰イオンであり、xが0〜2、yが1〜6、zが0〜2、そしてnが0〜2またはnが0〜6である。好ましい実施形態では、クエン酸ガリウムは一般式IIを有する。
[NH]xGa(Cit)y[NO]z・nHO II
式中(Cit)は上述のように、xが0、yが2、zが0、そしてnが0である。好ましい実施形態では、組成物は、経口、頬側、舌下、経皮、鼻腔内、または肺への投与用に設計される。いくつかの実施形態では、ガリウムを錯体化できる錯化剤が組成物中に存在する。
【0014】
本発明の別の態様は、その必要性のある患者にガリウムを投与する方法を目的とし、当該方法は、クエン酸ガリウム、および1つ以上の医薬的に許容される賦形剤の治療的有効量を含む医薬組成物を当該患者に投与することを含み、ここでクエン酸ガリウムは一般式Iを有する。
[Cat]xGa(Cit)y[An]z・nHO I
式中、[Cat]が医薬的に許容される陽イオンであり、(Cit)が、カルボキシル基の0〜3が随意にプロトン化されるクエン酸であり、[An]が医薬的に許容される陰イオンであり、xが0〜2、yが1〜6、zが0〜2、そしてnが0〜2またはnが0〜6である。好ましい実施形態では、クエン酸ガリウムは一般式IIを有する。
[NH]xGa(Cit)y[NO]z・nHO II
式中、(Cit)は上述のように、xが0、yが2、zが0、そしてnが0である。いくつかの実施形態では、ガリウムを錯体化できる錯化剤が組成物中に存在する。好ましい実施形態では、組成物は、経口、頬側、舌下、鼻腔内、経皮、または肺への投与により、過剰な骨吸収に特徴付けられる症状または疾患の治療が必要な患者に送達される。
【0015】
本発明の別の態様は、細菌性感染症を有する患者を治療する方法を目的とし、当該方法は、当該患者に当該感染症を治療するに十分な量のイオン性ガリウム含有化合物を、全身に投与することを含む。感染症は、グラム陰性細菌またはグラム陽性細菌のいずれかにより由来し得る。適したイオン性ガリウム含有化合物は、ガリウム硝酸塩およびクエン酸ガリウムを含む。イオン性ガリウム含有化合物は、静脈内、皮下、局所、経口、頬側、舌下、または鼻腔内の経路を含むがこれらに限定されない、イオン性ガリウムの抗菌性濃度を達成する任意の経路により、全身に投与され得る。そのような投与はまた、例えば敗血症、肺炎、創感染、骨髄炎などのような、特定の感染症状を治療するために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明により調製されたクエン酸ガリウムの2つの処理単位、およびGa(NO・9HO(イヌへの経口投与後の(Ganite(登録商標))において活性医薬成分として使用されるガリウム硝酸塩)の臨床プロトタイプの生物学的利用率のグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書の発明は、特定の実施形態を参照して説明するが、これらの実施形態は、本発明の原理および適用の例示にすぎないことが理解されるべきである。それゆえ、添付の請求の範囲により定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態に対して数多くの変更が成され得ること、他の取り合わせが考案され得ることが理解されるべきである。
【0018】
本発明は、経口投与に適したクエン酸ガリウム製剤とともに、その製剤のための方法、並びに癌、高カルシウム血症、骨粗鬆症、骨減少症、パジェット病、および感染症のような症状および疾患を治療する方法に関する。
【0019】
「患者」とは、ヒトおよび他の哺乳類の両方を含む。「哺乳類」とは、ヒトおよび他の哺乳動物を意味する。
【0020】
本明細書で使用される状態、障害、疾患、または症状の、「治療する」または「治療」という用語は、(1)状態、障害、疾患、または症状に苦しめられ得る、または罹らせ得るが、状態、障害、または症状の臨床症状または無症候性の症状を経験または提示していない、哺乳類で発生する状況、障害、疾患、または症状の臨床症状の発現を防止するか、または遅延させること、(2)状態、障害、疾患、または症状を抑制すること、すなわち、疾患、またはその臨床症状もしくは無症候性の症状の少なくとも1つの発生を抑止するか、または低減させること、または(3)疾患を軽減すること、すなわち、状態、疾患、もしくは症状、またはその臨床症状もしくは無症候性の症状の少なくとも1つを退行させること、を意味する。治療される対象への利益は、統計的に有意であるか、または少なくとも患者および/または内科医に知覚できることである。
【0021】
「有効量」および「治療的有効量」とは、状況、障害、疾患、または症状を治療するために哺乳類に投与されるとき、そのような治療の効果を十分もたらす化合物量の化合物を意味する。有効量または治療的有効量は、化合物、疾患およびその重症度、並びに治療される個体の年齢、体重、健康状態、および反応性次第で異なる。しかし、あらゆる症例において、治療上の活性要素がガリウムイオンであることが理解されるべきである。
【0022】
「送達する」および「投与する」とは、宿主内の特異的な1つの部位または複数の部位に治療的有効量の活性成分を提供し、特異的な1つの部位または複数の部位に、活性成分の治療的に有効な血液濃度を生じさせることを意味する。これは、例えば、宿主へ活性成分を局所的または全身に投与するにより達成され得る。
【0023】
「同時投与」という用語は、一定比率の出発時の量および第2の量を有する単一剤形、例えばカプセルまたは錠剤、またはそれぞれに対する複数剤形のような、基本的に同時に第1薬剤および第2薬剤(例えば構造式Iにより示されるガリウムおよび化合物)を投与することを含む。薬剤は、順不同で、逐次的な方法で投与することができる。同時投与が各薬剤の別々の投与に関するとき、薬剤は所望の効果(例えば錯体形成)を有するため、十分近い時間内に投与される。
【0024】
「医薬品レベル」は、化合物または組成物が、生物学的活性に関して、および/または医薬産物の質および再現性を規制する、国のさまざまな代表機関により設定される活性薬剤の基準に合うことを意味して本明細書で使用される。そのような基準は、純度、活性、安定性などを含み得る。通常、「医薬品レベル」は、化合物または組成物が、望ましくない副作用なく、生体に治療的用量分を投与するのに適していることを意味する。
【0025】
「医薬的に許容される」とは、活性薬剤、塩、およびエステル並びに賦形剤が、健全な医学的判断の範囲内にあり、不当な毒性、刺激、アレルギー反応などなしに、ヒトおよび下等動物の組織との接触における使用に適し、適切な利益/リスク比に釣り合い、その目的とする使用に効果的であることを意味する。
【0026】
「過剰な骨吸収により特徴付けられる症状または病気」は、骨における転移性の病変(非ホジキンリンパ腫など)に伴う任意の癌、高カルシウム血症、骨粗鬆症、骨減少症、パジェット病、悪性骨疾患、および副甲状腺機能亢進症とともに、感染症を含むがこれらに限定されない、骨からの過剰なカルシウム吸収により少なくとも一部が特徴付けられる、任意の状態、障害、疾患、または症状を意味する。
【0027】
「組成物」という用語は、特定化された量において特定化された成分を含む産物とともに、特定化された量において特定化された成分の組み合わせから、直接的または間接的に生じる任意の産物を含むことを目的とする。
【0028】
本発明の一態様は、ガリウム塩の1つ以上の陰イオン性の対イオンを、1つ以上のクエン酸イオンと置換する方法を目的とし、当該方法は、水溶液中でガリウム塩をクエン酸塩と反応させることと、生じるクエン酸ガリウムを回収することとを含み、ここで1つ以上の陰イオン性の対イオンが1つ以上のクエン酸イオンと置換されている。
【0029】
出願人は、従来技術のクエン酸の使用と対照的に、クエン酸ガリウムの製剤におけるクエン酸塩の使用により、反応が一層早い比率で、より多くの収量とともに続けられることを発見した。この点で、従来技術の方法と異なり、ガリウム/クエン酸混合の中和は、回収前に必要ない。また、イオン交換のような特異的工程も必要ない。従来技術の形態と異なり、回収された産物はまた、大いに優れた効率を上げながら、医薬品の処方工程に即時に組み込んで最終的な製剤を得ることに、より適している。
【0030】
塩化ガリウム、ガリウム硫酸塩、またはヨウ化ガリウムのような、任意のガリウム塩を調製方法で使用することができるが、好ましくはガリウム塩は、Ga(NO・9HOのようなガリウム硝酸塩であり、これはGanite(登録商標)に見出される活性医薬成分である。
【0031】
同様に、クエン酸カリウムおよびクエン酸ナトリウムのような、任意のクエン酸塩を当該調製方法で使用することができるが、好ましくはクエン酸塩はクエン酸アンモニウムである。
【0032】
通常は、ガリウム塩を水溶液中に溶解し、クエン酸塩と混合し、これにより溶解したガリウムを沈殿させる。ガリウムは、好ましくは約0.1Mから飽和までの濃度、より好ましくは約0.75〜1.25Mの濃度、最も好ましくは約1.0Mの濃度である一方で、クエン酸は、好ましくは約0.1Mから飽和までの濃度、より好ましくは約0.5〜4Mの濃度、最も好ましくは約2〜3Mの濃度である。ガリウム塩の対陰イオンは、例えば濾過により沈殿したガリウムから取り除かれる。クエン酸ガリウムは、取り除かれる対陰イオンの量をさらに減少させるため、単一の医薬溶媒、純水、またはその混合物を用いて洗浄され得る。適した溶媒は、クラス3溶媒リストの溶媒に含まれる。必要であれば、クエン酸ガリウムは、酢酸ブチル、酢酸エチル、エチルエーテル、ギ酸エチル、酢酸イソプロピル、およびメチルケトンに限定されるものではないが、これらのような溶媒を使用して液体/液体抽出により、初回反応から回収することができる。回収した物質は、例えば乾燥加熱または回転蒸発により随意に乾燥され得る。
【0033】
調製方法で使用されるガリウム塩およびクエン酸塩次第で、生じるクエン酸ガリウムは、1つ以上の医薬的に許容される、そこに結合された陽イオンを少量有し得る。そのようなものとして回収されたクエン酸ガリウムは、一般式Iを有する。
[Cat]xGa(Cit)y[An]z・nHO I
式中、[Cat]が医薬的に許容される陽イオンであり、(Cit)が、カルボキシル基の0〜3が随意にプロトン化されるクエン酸であり、[An]が医薬的に許容される陰イオンであり、xが0〜2、yが1〜6、zが0〜2、そしてnが0〜2またはnが0〜6である。好ましい実施形態では、xが0、yが2、zが0、そしてnが0である。カルボキシル基が1つもプロトン化されていない(Cit)は、Cである。
【0034】
好ましい実施形態では、調製方法における出発時のガリウム塩はガリウム硝酸塩であり、クエン酸塩はクエン酸アンモニウムである。従って、回収されたクエン酸ガリウムは、一般式IIを有する。
[NH]xGa(Cit)y[NO]z・nHO II
式中、(Cit)は上述のように、xが0〜2、yが1〜6、zが0〜2、そしてnが0〜2またはnが0〜6である。好ましい実施形態では、xが0、yが2、zが0、そしてnが0である。
【0035】
出願人は、本明細書で開示する過程により作製されたクエン酸ガリウムが、従来技術のクエン酸ガリウム製剤と比較して、アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、および硝酸塩イオンのような、望ましくない錯イオン量を一層少なく有していること、従って生体への投与に、より適していることを発見した。従って、本発明の別の態様は、医薬品レベルのクエン酸ガリウムを目的とする。好ましい実施形態では、医薬品レベルのクエン酸ガリウムは、式Ga(Cを有する。これにより、ガリウムの最大送達と、可能である最も低い大きさを兼ね備える。
【0036】
医薬品レベルのクエン酸ガリウムは、例えば癌、高カルシウム血症、骨粗鬆症、骨減少症、パジェット病、悪性の骨疾患、および副甲状腺機能亢進症に起因する骨変性とともに、感染症のような過剰な骨吸収により特徴付けられる、疾患および症状の治療において実用性が見出される。
【0037】
これら、および他の疾患の治療において、治療的有効量のクエン酸ガリウムが、そのような治療の必要がある患者に投与される。ガリウムは大抵、1つ以上の医薬的に許容される賦形剤を含有する医薬組成物の形態で患者に投与される。クエン酸ガリウムは、クエン酸部分のポリカルボン酸基とガリウムとの結合に起因して幾分か疎水性であるため、クエン酸ガリウム製剤は、腸と上手く相互作用するものと予想され、従って経口送達に特に適している。しかし、本発明のクエン酸ガリウム組成物はまた、例えば鼻、頬側、舌下、鼻腔内、肺、直腸、局所、経皮、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、脳室内、関節内、腹腔内、胸膜内、およびクモ膜下腔内を含むがこれらに限定されない、他の経路により投与され得る。
【0038】
さまざまな癌の形態、特に悪性腫瘍の治療のために、本発明のクエン酸ガリウムは、例えば腫瘍の部位に投与されるガリウム−67のような、放射活性のあるガリウムを使用して上述のように調製されてもよい。放射活性のあるガリウムを含む組成物はまた、腫瘍などの存在を検出する放射性診断薬として使用されてもよい。一般的に、約100mg〜約1000mgのガリウムがそのような工程のために投与され、本発明のクエン酸ガリウム組成物の投与を推定することができる。
【0039】
選択される特定の医薬品の賦形剤(単数または複数)とともに組成物の形態は、少なくとも一部が所望の投与経路次第で決まる。医薬的に許容される賦形剤およびさまざまな組成物の製造方法の例は、当業者に周知されており、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences(Gennaro ed., 20th ed. 2000)に見出し得る。
【0040】
例えば、好ましい経口投与に使用されるとき、クエン酸ガリウム組成物は、固形錠剤、カプセル、カプレット、または例えばデンプン、ラクトース、デキストラン、ステアリン酸マグネシウム、結晶セルロース、クロスポビドン、デンプングリコロール酸ナトリウム(sodium starch glycolate)、二酸化ケイ素などのような、1つ以上の固形賦形剤を組み込んだドラジェの形態が好ましい。
【0041】
この点で、本明細書で開示する過程により作製されるクエン酸ガリウムは、微粉の形態でもよい。そのようなものとして、錠剤化する物質を調製するため、粉砕、製粉、または粉にする必要がない。単に、ウェットケーキ(wet cake)の形態のクエン酸ガリウムを所望の賦形剤と混合し、顆粒化するか、または錠剤へと加圧することができる。
【0042】
錠剤化されたクエン酸ガリウムは、好ましくは同量のガリウムの静脈内投与の特性と類似する、経口による生物学的利用率の特性(例えばピーク[Ga]血しょう、ピークまでの時間[Ga]血しょうなど)を有する。30mgのガリウムを含有するクエン酸ガリウム錠剤は、約30分〜60分の時間に、約1,000ng/mL〜3,000ng/mLの間、または約0.1〜10μg/mLの間のピーク[Ga]血しょうを提供し得る。錠剤はまた、約30mg未満のガリウムから最大で約150mgまで、または最大で約300mgのガリウムを含有してもよい。これらの錠剤は、約15分〜120分の時間に約1,000〜40,000ng/mLの間、または約0.2〜3.0μg/mLの間のピークまたは定常状態の[Ga]血しょうを提供し得る。好ましい実施形態では、錠剤は、≦100mgの硝酸塩/錠剤または≦60mgの硝酸塩/錠剤を含有する。
【0043】
別の好ましい実施形態では、クエン酸ガリウム組成物は、肺送達のために処方される。そのような処方は、組織構造および肺構造にある細菌性感染症を治療するのに特に有用である。例えば、米国特許第5,997,912号、米国特許公報第2006/0018945号、およびKaneko ら、J. Clin. Invest. 117:877−888 (2007)を参照されたい。肺送達のための処方は、噴射器、定量噴霧式吸入器、および乾燥粉末吸入器を用いて使用する粉末および溶液を含む。肺送達のために薬物を処方する方法は、当業者には周知されており、例えばDrug Delivery to the Lung, in Lung Biology in Health and Disease, Volume 162 (Bisgaardら、eds., 2002)に説明されており、当該内容の全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0044】
しかし、以下の実施例で示されるように、ガリウムは、細菌性感染症に対して治療的であり得る濃度を肺または痰で達成するために、肺内投与または吸入投与により送達する必要はない。例えば静脈内投与、皮下投与、または経口投与によるイオン性ガリウムの全身投与では、in vivoにおいて抗菌性に抵抗するPseudomonas生命体を死滅させるのに十分高い痰でのガリウム濃度を達成することができる。実施例で示されるように、静脈内投与は、この点について明確に有効であり、匹敵する血しょう中濃度を達成できる全身投与の他の類似方法は、同じように治療的であるべきである。そのようなものとして、ガリウム硝酸塩、クエン酸ガリウム、およびその組み合わせ(例えばGanite(登録商標))のような、イオン性ガリウム含有化合物の全身投与は、グラム陰性細菌およびグラム陽性細菌の両方から生じる感染症(肺および非肺関連の両方)とともに、敗血症、肺炎、骨髄炎などのような、特定の感染症状の治療のために検討される。
【0045】
クエン酸ガリウム組成物は、例えば水、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マルチトール、ショ糖、またはリン酸緩衝液または炭酸緩衝液のような、医薬的に許容される緩衝液のような液体の賦形剤を組み込む溶解液、懸濁液、または乳剤の形態にもできる。
【0046】
特に経口送達のための医薬組成物はまた、ガリウムを錯体化できる経口送達用賦形剤(すなわち機能的な賦形剤)を含有してもよい。そのような錯化剤は、クエン酸ガリウムを結合させ得、それによりその生物学的利用率を高める。適した錯化剤は、米国特許第7,354,952号に開示される錯化剤であり、当該内容の全体が本明細書に組み込まれる。好ましい錯化剤は、構造式IIIを有する。
2−OH−Ar−CR−NR−R−COOH III
式中、2−OH−Arが随意に置換された2−ヒドロキシアリール、
が−OHまたは=O、
が水素、ヒドロキシル、または随意に置換されたC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、またはC〜Cアルケニル、および、
が随意に置換されたアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロサイクリル、C〜C24アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C10アルキルアリール、C〜C10アリールアルキル、C〜C10アルケニルアリール、C〜C10アリールアルケニル、C〜C10アルキニルアリール、またはC〜C10アリールアルキニルであり、
ここで、O,N、Sまたはそれらの任意の組み合わせが随意に割り込まれる。
構造式IIIに係る錯化剤の、限定されない特定の例は、N−(8−[2−ハイドロキシベンゾイル]アミノ)カプリル酸(SNAC)、およびN−(10−[2−ハイドロキシベンゾイル]アミノ)デカン酸(SNAD)である。本発明に係るガリウム化合物との組み合わせにおいて、そのような官能基担体を使用することが望ましいとき、必要とされるそのような担体の量は、本発明のガリウム化合物の生物学的利用率が高いため、Ga(NO化合物と比較して減少させることができる。
【0047】
錯化剤を使用してもよいが、必須ではない。本明細書に説明されるガリウム製剤の本質により、ガリウム製剤を、官能基担体または賦形剤の必要なしに、治療的投与のために処方することができる。そのようなものとして、錠剤のような医薬組成物は、GRAS、EAFUSまたは賦形剤を認める他のFDAのみを利用して処方され得る。
【0048】
本明細書に説明される医薬組成物は、通常、約1〜約99重量パーセントのクエン酸ガリウムを含む。好ましくは、医薬的に許容される賦形剤が本発明の医薬組成物に用いられるとき、組成物は約1〜約99重量パーセントの賦形剤を含有する。組成物はまた、錯化剤を含有するとき、錯化剤は通常、組成物の約98重量パーセント以内である。
【0049】
用量は、骨からのカルシウムの過剰な吸収(例えば癌、高カルシウム血症、骨粗鬆症、骨減少症、パジェット病、感染症などから生ずる)の治療のために、医薬的に活性の血しょう中ガリウム濃度を提供するように選択され、これは約0.1〜20.0μg/mL、好ましくは約0.5〜2.0μg/mLに規定されている。そのような血中レベルは、一日に、約0.1〜2.0グラムのガリウムを投与することにより達成され得る。
【0050】
癌関連の高カルシウム血症を含む、さまざまな形態の癌の治療のために、ガリウムは一般的に、約0.1mg/kg/日〜約15mg/kg/日、好ましくは約0.25mg/kg/日〜約7.5mg/kg/日、または約0.25mg/kg/日〜約10mg/kg/日の範囲で投与され、このことから、本発明のクエン酸ガリウム組成物の投与は外挿することができる。そのような用量は、単一の単位用量として、またはより少量を複数回投与してもよい。
【0051】
ガリウムの他の投与計画は、当業者に周知されている(例えばPhysician’s Desk Reference, 58th ed. (2004)を参照されたい)。用量は、患者の要求、および治療される症状の重症度次第で異なってよい。投与の量および頻度は、患者の年齢、症状、および大きさとともに、治療される症状の重症度のような要因を考慮する担当臨床医の判断により規制される。
【0052】
ここで、本発明の方法に係る特定の実施形態を、以下の実施例で説明する。実施例は例示的なものにすぎず、開示の残りの部分を、決して限定するように意図するものではない。
【0053】
(実施例1)
1〜6つのクエン酸アンモニウムの当量を、室温で、1つのGa(NO・9HOの当量を含有する水溶液に増加的に添加した。この時点で、自発的な結晶化が早くも生じた。沈殿物(微細なコロイド状の物質)を形成する混合物を室温で、約3〜4.5のpHまで撹拌した。反応は室温まで冷やすことができる。Whatmanの3M濾紙を介した濾過により、沈殿したクエン酸ガリウムから溶解液中の硝酸塩を取り除いた。次いでクエン酸ガリウムを50%のイソプロパノールを用いて、水および190プルーフのエタノール中で経時的に洗浄し、微粉の形態のクエン酸ガリウム製剤を収量するため、高真空下、60℃〜100℃で回転式に蒸発させた。
【0054】
(実施例2)
乾燥前に、実施例1の2つの独立したクエン酸ガリウムのバッチを、標準的な賦形剤を用いて別々に混合し、湿式に顆粒化し、30mgのガリウムを含有する、725mgまでの2つの別ロットの錠剤に加圧した。これらの各ロットからできた錠剤は、約22μgの硝酸塩を含有していた。比較のため、Ga(NO・9HO(Ganite(登録商標))の2つのバッチを、30mgのガリウムを含有する、750mg分の別ロットの錠剤に処方した。これらの各ロットからできた錠剤は、約80mgの硝酸塩を含有していた。
【0055】
(実施例3)
実施例2の各錠剤の特性を、単回投与によるイヌ研究で直接比較した。錠剤を、4匹の一揃いのイヌに経口的に投与し、投与後、ガリウムの血しょう中レベルをさまざまな時間点で測定した。2つのクエン酸ガリウムのバッチ、および優れて機能するガリウム硝酸塩バッチ(臨床プロトタイプ)の結果を以下の表1に示す。
【表1】

【0056】
イヌへの経口投与後、クエン酸ガリウムの2ロットの錠剤、および優れて機能するガリウム硝酸塩(臨床プロトタイプ)のロットの錠剤の生物学的利用率を、図1でグラフ的に描写する。明白に示されるように、ガリウムの経口吸収(Tmax、30分〜60分)は、ガリウム硝酸塩錠剤(Tmax、90〜180分)からよりも各クエン酸ガリウム錠剤からの方が著しく早かった。この点について、クエン酸ガリウムの経口投与は、ガリウム硝酸塩の静脈内投与を模倣する。Leyland−Jones, Seminars in Oncology, 18(4)(1991)を参照されたい。さらに、クエン酸ガリウムロットの両方は、著しく類似する吸収特性を示した。例えば、ロットは約20%未満、好ましくは約10%未満、より好ましくは約5%未満、最も好ましくは約1%未満のTmaxにおける差異を示した。対照的に、ガリウム硝酸塩錠剤(第I相臨床試験)の低く機能するロットは、高く機能するロットよりも、40%までという低いピーク[Ga]血しょう中を示した。
【0057】
(実施例4)
あらゆる種類の抗生物質に高い抵抗性を示す緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)による嚢胞性線維症および肺の感染症を長期にわたりともなった患者を、著しい副作用を生じさせず、ヒトの使用に適したさまざまな用量レベルで静脈内的に、数回のクエン酸ガリウム−硝酸塩の点滴で治療した。そのような一回目の治療の間、この患者は、240mg/日、またはおよそ150mg/m/日の用量で5日間にわたりクエン酸ガリウム−硝酸塩の点滴を受け、深刻な咳痰試料中のイオン性ガリウムの濃度を測定した。痰のガリウム濃度は3.2μg/mL、またはおよそ46μmol/Lであり、これはin vivoで耐性緑膿菌を死滅させるのに十分な濃度である。Kanekoら、J. Clin. Invest. 117:877−888 (2007)を参照されたい。これらのデータは、イオン性ガリウムの高く有効な抗菌性濃度が、静脈内、皮下、または経口による治療のような全身投与を使用して痰で達成できていること、および不便で肺組織に潜在的に毒性であると分かっている吸入または噴射のような、肺内投与を、そのような活性に必要としないことを実証している。
【0058】
(実施例5)
開始から約1ヵ月後、実施例4の同じ患者に、クエン酸ガリウム−硝酸塩の追加点滴を、200mg/m/日の用量で5日間にわたり投与し、深刻な咳痰試料中のイオン性ガリウムの濃度を再び測定した。以下の表2で提示するデータは、実施例4で説明した投与後1ヶ月で、肺痰におけるイオン性ガリウムの濃度が、まだ0.32μg/mL存在したことを示している。これらのデータから、全身治療後の遷延期間について、ガリウムが痰に保持されていると確信して結論づけることができる。加えてこれらのデータは、ガリウムが全身投与後、血しょう中濃度のおよそ2倍を超えるレベルで、痰に優先的に濃縮されていることを示している。さらにこれらのデータは、全身投与が終了しても徐々に痰中のガリウム濃度が実際に上昇し、血しょう中濃度が次第に下降しているため、痰/肺がガリウム堆積の貯蔵を表していることを示している。濃度は5〜11日の間が高く、治療の休止後でさえ、in vivoで治療的であると思われるレベルが残存している。
【表2】

【0059】
発明は、クエン酸ガリウムを参照して説明してきたが、ガリウム錯体の他の形態も本明細書で開示する方法を使用して調製することができる。例えば、クエン酸の代わりに、任意のガリウムは、モノ−、ジ−、トリ−、またはテトラ−カルボン酸を用いて反応させ、先に説明したように生じるガリウム錯体を回収することができる。この点について、ガリウム錯体は一般式IVを有する。
[Cat]GaL[An]・nHO IV
式中、[Cat]が医薬的に許容される陽イオンであり、Lが医薬的に許容されるカルボン酸であり、[An]が医薬的に許容される陰イオンであり、xが0〜2、yが1〜6、zが0〜2、そしてnが0〜2またはnが0〜6である。
【0060】
反応において、任意の医薬的に許容される天然または非天然のカルボン酸を使用できるが、カルボン酸は、好ましくはクエン酸(本明細書で既説)、シス−アコニット酸、イソクエン酸、オキサロコハク酸、αケトグルタル酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、およびオキサロ酢酸のような、クレブス回路のポリカルボン酸である。酒石酸およびシトラリンゴ酸も使用できる。この方法で、ガリウム酒石酸を酒石酸およびガリウム硝酸塩により調製した。立体中心、例えば、L−イソクエン酸、L−酒石酸などを有する、自然的に生じるカルボン酸については、生理学的にL型、非生理学的にD型、またはL型およびD型の混合、例えばDL−イソクエン酸、DL−酒石酸などが使用できる。
【0061】
加えて、カルボン酸は、より多くの疎水性分子を産生するために誘導体化することもできる。この点について、上述の一般式IVにおけるLは、誘導体化された医薬的に許容されるカルボン酸である。
【0062】
例えば、カルボン酸はカルボン酸基の1つ以上のエステル化により誘導体化することができる。偶数鎖の炭素鎖が好ましいが、エステル基のアルキル鎖は、1(メチルエステル)、2(エチルエステル)、3(プロピルエステル)、4(ブチルエステル)、およびそれ以上の長さの鎖を含むことができる。誘導体化されたカルボン酸の例は、クエン酸トリメチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、酒石酸ジメチル、および酒石酸ジエチルを含むがこれらに限定されるものではない。この方法で、ガリウムクエン酸トリブチルを、クエン酸トリブチルおよびガリウム硝酸塩から調製した。
【0063】
ガリウム錯体の疎水性を高めることにより、担体、錯化剤、または機能的な賦形剤を用いることなく、直接的にガリウムの治療的送達ができるか、またはこれらの処方成分の存在下で治療的性能を高めることができる。そのようなものとして、これらのガリウム錯体を組み込む錠剤は、大きさを有意に小さくし、それにより望ましくない副作用を減少させながら患者コンプライアンスを高める。例えば、骨粗鬆症および他の慢性疾患のための1日分の錠剤は、約750〜800mgの総重量、最大で約1000mgとすることができるが、好ましくは約75〜250mgの総重量である。
【0064】
加えて、ガリウム錯体のより有効な送達により、直に抗腫瘍活性のための治療的送達をすることができる。この点について、錠剤は化学療法計画の直接成分として使用するため、十分に高いガリウム内容物(例えば、約100〜500mg)を備えた約1000〜1200mgの総重量とすることができ、それによりGanite(登録商標) (Ga(NO・9HO)に代わる。静脈内へのGanite(登録商標)は、GARD研究における非ホジキンリンパ腫の第I相臨床試験の一部として与えられている。
【0065】
一般式IVのカルボン酸Lはまた、より多くの親水性分子を産生するため、カルボン酸基の1つ以上のエステル化により誘導体化することができる。例えばLは、ポリカルボキシレート、ポリヒドロキシレート、ポリエーテルなどのような、O−およびC−に基づく小さな親水基を用いて誘導体化することができる。適した親水基の例は、ポリエチレングリコール(PEG)である。錯体の親水性を高めるため、一般式IVのLにおいてポリマー(例えばポリクエン酸)を使用することもできる。
【0066】
本明細書で記載された全文献、特許及び非特許文献の両方ともに、本発明に関係する当業者の技術レベルの指標である。これらの全文献は、参照により取り込まれるため、各個別の文献が具体的かつ単独的に示されたように同じ程度まで、全体が本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式IV、
[Cat]GaL[An]・nHO IV
(式中、[Cat]が医薬的に許容される陽イオンであり、Lが医薬的に許容されるポリカルボン酸であり、[An]が医薬的に許容される陰イオンであり、xが0〜2、yが1〜6、zが0〜2、そしてnが0〜2またはnが0〜6)を有する化合物。
【請求項2】
前記ポリカルボン酸が、クエン酸、シス−アコニット酸、イソクエン酸、オキサロコハク酸、αケトグルタル酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、オキサロ酢酸、酒石酸、シトラリンゴ酸、クエン酸トリメチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、酒石酸ジメチル、および酒石酸ジエチルからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
一般式I、
[Cat]xGa(Cit)y[An]z・nHO I
(式中、(Cit)が、随意にプロトン化される0〜3のカルボキシル基を有するクエン酸)を有するクエン酸ガリウムである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
一般式II、
[NH]xGa(Cit)y[NO]z・nHO II
を有する、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
式Ga(Cを有する、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
ガリウムクエン酸トリブチルである、請求項2に記載の化合物。
【請求項7】
Lが、1つ以上のカルボン酸基のエステル化により誘導体化される、請求項2に記載の化合物。
【請求項8】
Lが、前記化合物の疎水性を高めるために誘導体化される、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物、および1つ以上の医薬的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項10】
前記化合物がクエン酸ガリウムである、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
ガリウムを錯体化できる経口送達用の賦形剤を含み、構造式III、
2−OH−Ar−CR−NR−R−COOH III
(式中、2−OH−Arが随意に置換された2−ヒドロキシアリール、
が−OHまたは=O、
が水素、ヒドロキシル、または随意に置換されたC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、またはC〜Cアルケニル、および、
が随意に置換されたアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロサイクリル、C〜C24アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C10アルキルアリール、C〜C10アリールアルキル、C〜C10アルケニルアリール、C〜C10アリールアルケニル、C〜C10アルキニルアリール、またはC〜C10アリールアルキニルであり、ここでO,N、S、またはそれらの任意の組み合わせが随意に割り込まれる)で示される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記経口送達用の賦形剤がSNACまたはSNADである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
経口投与、肺投与、または静脈内投与のために処方される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項14】
最大約300mgのガリウムを含む錠剤である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
ガリウム塩の1つ以上の陰イオン性の対イオンを、1つ以上のポリカルボン酸イオンと置換する方法であって、水溶液中で前記ガリウム塩をポリカルボン酸塩と反応させることと、ガリウムポリカルボン酸を回収することとを含み、ここで1つ以上の陰イオン性の対イオンが、1つ以上のポリカルボン酸イオンと置換されている、方法。
【請求項16】
前記ガリウム塩が、ヨウ化ガリウム、塩化ガリウム、ガリウム硫酸塩、およびガリウム硝酸塩からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリカルボン酸塩が、クエン酸アンモニウム、クエン酸カリウム、およびクエン酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項15に記載の方法により作製される、クエン酸ガリウム。
【請求項19】
過剰な骨吸収により特徴付けられる疾患を治療するために、一般式IV、
[Cat]GaL[An]・nHO IV
(式中、[Cat]が医薬的に許容される陽イオンであり、Lが医薬的に許容されるポリカルボン酸であり、[An]が医薬的に許容される陰イオンであり、xが0〜2、yが1〜6、zが0〜2、そしてnが0〜2またはnが0〜6)を有する化合物の使用。
【請求項20】
前記化合物が経口用剤形である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記経口用剤形が、最大150mgのガリウムまたは最大300mgのガリウムを含有する錠剤である、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
細菌性感染症を治療するために、一般式IV、
[Cat]GaL[An]・nHO IV
(式中、[Cat]が医薬的に許容される陽イオンであり、Lが医薬的に許容されるポリカルボン酸であり、[An]が医薬的に許容される陰イオンであり、xが0〜2、yが1〜6、zが0〜2、そしてnが0〜2またはnが0〜6)を有する、化合物の使用。
【請求項23】
前記感染症が、グラム陰性細菌により生じる、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記細菌が、Pseudomonas属である、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記感染症が肺炎である、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
治療が、少なくとも約50mg/日の用量の前記化合物を含む、請求項22に記載の使用。
【請求項27】
前記化合物が、静脈内投与用の剤形である、請求項22に記載の使用。
【請求項28】
前記剤形が、およそ150〜200mg/m/日の前記化合物を提供する、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記化合物が、経口用剤形または肺用剤形である、請求項22に記載の使用。
【請求項30】
化合物の全身投与後、血しょう中におけるガリウム濃度よりも高い、患者の肺および痰でのガリウム濃度を達成するために、一般式IV、
[Cat]GaL[An]・nHO IV
(式中、[Cat]が医薬的に許容される陽イオンであり、Lが医薬的に許容されるポリカルボン酸であり、[An]が医薬的に許容される陰イオンであり、xが0〜2、yが1〜6、zが0〜2、そしてnが0〜2またはnが0〜6)を有する、化合物の使用。
【請求項31】
前記化合物が、経口、静脈内、または皮下への投与用の剤形である、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
前記化合物が、クエン酸ガリウム、またはガリウムクエン酸トリブチルである、請求項19乃至請求項31のいずれか一項に記載の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2011−519859(P2011−519859A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507602(P2011−507602)
【出願日】平成21年4月29日(2009.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/042064
【国際公開番号】WO2009/134856
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(510283362)ジェンタ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】