説明

半導体ウエハの厚さ形状もしくは表面形状を修正するための多段局所ドライエッチング方法

【課題】半導体ウエハの厚さ形状もしくは表面形状を修正するための多段局所ドライエッチング方法において、ウエハ平坦化作業全体のスループットを低下させることなくロールオフ領域を小さくすることを課題とする。
【解決手段】外周縁局所ドライエッチング工程では、この領域の輪郭に実質的に沿う軌跡を主走査方向とし、この主走査方向と実質的に直交する軌跡を副走査方向として、小径ノズルを使用して外周縁環状領域Aに対して厚さ形状もしくは表面形状の短空間波長成分を修正し、内側局所ドライエッチング工程では、直線軌跡を主走査方向とし、この直線軌跡がなす主走査方向と直交する直線軌跡を副走査方向として、上記小径ノズルよりも径の大きい大径ノズルを使用して少なくとも上記外周縁環状領域の内側の内側円形領域を含む領域に対して行われる厚さ形状もしくは表面形状の長波長成分の修正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハの厚さ形状もしくは表面形状を修正するための多段局所ドライエッチング方法、特に、ベベル面との境界にできるだけ近い領域まで厚さ形状もしくは表面形状を修正することが可能な多段局所ドライエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコンウエハ等の半導体ウエハの厚さ形状(半導体ウエハの厚さ分布)もしくは表面形状(半導体ウエハの表面凹凸形状)を修正するための一つの加工方法として局所ドライエッチング法が知られている。局所ドライエッチング法では、プラズマによって発生した活性種ガスをノズルから噴出させながら、噴出した活性種ガスを半導体ウエハの表面に吹きつける。半導体ウエハは活性種ガスと反応し気体化合物となり、ガスの流れに乗って、その場から流れ去る。このため、半導体ウエハの表面材料が除去(除肉)される。
【0003】
このとき、ノズルを半導体ウエハ表面に沿って相対運動させると、その速度に応じて表面から除去する除肉量を制御することができる。上記相対運動は、通常は、直線に沿ったスキャニングによって行われ、予め得られている半導体ウエハの厚さ形状もしくは表面形状情報とスキャンピッチに対応してスキャニング速度を制御することにより半導体ウエハの表面が平坦化加工される。
【0004】
局所ドライエッチングにおいては、ノズルから吹き出された活性種ガスが半導体ウエハ表面に衝突(接触)し、この衝突によって反応が起こるため、活性種ガスの流れの大きさ、つまりスポット径、が除肉する範囲(の程度)を決定することになる。しかしながら、これはガスの流れであるため、その除肉範囲は、切削工具によるような明確な輪郭を有しているわけではなく、ノズル中心線を中心とする分布、つまり加工プロファイルとして与えられることになる。
【0005】
局所ドライエッチングは、研磨スラリーと研磨パッドを用いた遊星歯車式もしくは枚葉式の両面研磨装置等によって鏡面研磨された半導体ウエハの厚さ形状もしくは表面形状を修正するために用いることをひとつの目的としている。この修正すべき形状には様々の空間波長成分(周波数成分)が含まれている。この形状を修正して要求される高精度の形状を得るためには波長成分に対応した大きさの活性種ガスの流れを作り出さなければならない。このため、細かい(波長成分の短い)形状を修正するためにはこの細かさに応じてできるだけ小さい径のノズルを用いることが必要となる。
【0006】
一般に、研磨パッドはある程度の弾性を有しており、研磨中に加えられる研磨圧によって半導体ウエハが研磨パッドに沈み込む。このとき半導体ウエハの外周縁部よりも外側にも上記研磨パッドの弾性変形が生じるため、この力を受ける形で、中央部よりも円形平坦面の外周縁部の面圧が大きくなる。このため、半導体ウエハの円形平坦面の外周縁部の研磨量が多くなり、ベベル面へと続く「なで肩」状(ロールオフ)になる。この「なで肩」状部分は、ICチップ製造工程においてパターン形成に適さないためこの部分はパターン形成領域から除外(エッジエクスクルージョン)される。
【0007】
上記「なで肩」状部分は、その成因から円形平坦面の外周縁に環状に形成されることになる。そして、上記「なで肩」状部分は、急傾斜のベベル面につながる部分であることから、これから離れた円形平坦面の中央部における厚さ形状もしくは表面形状よりも変化が激しい。このため、外周縁環状領域の厚さ形状もしくは表面形状の方が中央部の厚さ形状もしくは表面形状よりも空間波長が短いことになる。
【0008】
特許文献1には、小径ノズルを用いた第1工程と大径ノズルを用いた第2工程によりSOIウェハーを多段局所ドライエッチングする方法が開示されている。しかしながら、この多段局所ドライエッチング方法では、それぞれの工程におけるエッチングはウエハの全表面を対象としており、第1工程では全表面にわたる凹凸を除去すること、第2工程はウエハ自体の厚さを所定の厚さにすることが目的とされている。各工程ではその行程を通して同じ径のノズルが使われる。ウエハの場所に応じて空間波長の異なる厚さ形状もしくは表面形状が存在することに着目してウエハ平坦化作業全体のスループットを改善するものではない。
【0009】
この文献のように、全表面の凹凸を小径ノズルによって除去する場合、外周縁領域まで高精度の加工は可能であるが、小径ノズルは加工プロファイル幅が小さく、スキャンピッチが狭く、単位時間当たりの除去体積(つまり加工速度)を大きくすることができないため、全表面にわたって加工するには長い時間が必要となり、スループットが悪くなる。
【0010】
他方、大径ノズルは加工プロファイル幅が大きいので、スループットは大きいが、特に空間波長の短い外周縁の厚さ形状もしくは表面形状を修正することができないので所期の目的を達成することができない。
【0011】
特許文献2には、大径ノズルとエッジマスクを組み合わせる局所ドライエッチング方法が開示されている。この方法は、スループットを落とさないで外周縁部を含んだ全表面の平坦化を行うことができるが、加工するウエハの形状に合わせてエッジマスクを作成しなければならない。このため即応性に乏しい。
【0012】
【特許文献1】特開2004−128079号公報
【特許文献2】特開2004−349587号公報
【特許文献3】特開2000−186000号公報
【特許文献4】特開2001−176844号公報
【特許文献5】特開2001−176845号公報
【特許文献6】特開2001−185537号公報
【特許文献7】特開2001−210626号公報
【特許文献8】特開2002−134471号公報
【特許文献9】特開2002−329690号公報
【特許文献10】特開2005−123483号公報
【特許文献11】特開2007−149923号公報
【特許文献12】特開平10−147893号公報
【特許文献13】特開平11−265877号公報
【特許文献14】特開2004−134661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の、半導体ウエハの厚さ形状もしくは表面形状を修正するための多段局所ドライエッチング方法は、半導体ウエハの円形平坦面のロールオフ部分を含む外周縁環状領域においては厚さ形状もしくは表面形状の空間波長が短いのに対し、これと比較した場合、外周縁環状領域の内側の領域では、厚さ形状もしくは表面形状の空間波長が長い点に着目したものであって、ウエハ平坦化作業全体のスループットを低下させることなくロールオフ領域を小さくすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題は以下の手段により解決される。すなわち、第1番目の発明の多段局所ドライエッチング方法は、半導体ウエハの厚さ形状もしくは表面形状を修正するための多段局所ドライエッチング方法であって、任意の順序で実行される外周縁局所ドライエッチング工程と内側局所ドライエッチング工程とを含み、上記外周縁局所ドライエッチング工程は、上記円形平坦面の外周縁環状領域の輪郭に実質的に沿う軌跡を主走査方向とし、この主走査方向と実質的に直交する軌跡を副走査方向として、小径ノズルを使用して上記外周縁環状領域に対して行われる厚さ形状もしくは表面形状の短空間波長成分を修正するための局所ドライエッチング工程であり、上記内側局所ドライエッチング工程は、直線軌跡を主走査方向とし、この直線軌跡がなす主走査方向と直交する直線軌跡を副走査方向として、上記小径ノズルよりも径の大きい大径ノズルを使用して少なくとも上記外周縁環状領域の内側の内側円形領域を含む領域に対して行われる厚さ形状もしくは表面形状の長波長成分を修正するための局所ドライエッチング工程であり、更に、上記各局所ドライエッチング工程においては、予め得られている上記半導体ウエハの厚さ形状もしくは表面形状データに基づいて、上記主走査方向のそれぞれの走査速度及び上記副走査方向のそれぞれのピッチ間隔が決定されることを特徴とする多段局所ドライエッチング方法である。
【0015】
第2番目の発明の多段局所ドライエッチング方法は、第1番目の発明の局所ドライエッチング方法において、上記外周縁局所ドライエッチング工程と上記内側局所ドライエッチング工程とはそれぞれが異なる真空チャンバー内で実行されることを特徴とする半導体ウエハの厚さ形状もしくは表面形状を修正するための多段局所ドライエッチング方法である。
【0016】
第3番目の発明の多段局所ドライエッチング方法は、第1番目又は第2番目の発明の局所ドライエッチング方法において、上記外周縁局所ドライエッチング工程の主走査方向は、上記外周縁環状領域の輪郭に沿った同心円状であることを特徴とする半導体ウエハの厚さ形状もしくは表面形状を修正するための多段局所ドライエッチング方法である。
【0017】
第4番目の発明の多段局所ドライエッチング方法は、第1番目又は第2番目の発明の局所ドライエッチング方法において、上記外周縁局所ドライエッチング工程の主走査方向は、渦巻曲線に沿っていることを特徴とする半導体ウエハの厚さ形状もしくは表面形状を修正するための多段局所ドライエッチング方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の、半導体ウエハの厚さ形状もしくは表面形状を修正するための多段局所ドライエッチング方法は、半導体ウエハの円形平坦面のロールオフ部分を含む外周縁環状領域においては厚さ形状もしくは表面形状の空間波長が短いのに対し、これと比較した場合、外周縁環状領域の内側の領域では、厚さ形状もしくは表面形状の空間波長が長い点に着目したものであって、外周縁環状領域に対してはこの領域に沿って且つ小径ノズルにより細かい、つまり、ロールオフ部分の急激な変化に対応できる局所ドライエッチングが行われるのに対し、少なくとも上記外周縁環状領域の内側の内側円形領域を含む領域に対しては大径ノズルを使用して効率の良い局所ドライエッチングが行われる。これによりウエハ平坦化作業全体のスループットを低下させることなくロールオフ領域を小さくすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0020】
* 多段局所ドライエッチング装置
図1は、本方法発明を実施するに適した多段局所エッチング装置100の概要を説明するための模式図である。多段局所ドライエッチング装置100は第1局所ドライエッチング装置1及び第2局所ドライエッチング装置2を備えており、これらは搬送チャンバー3によって結合されている。
【0021】
第1局所ドライエッチング装置1及び第2局所ドライエッチング装置2は、それぞれ第1真空チャンバー11、第2真空チャンバー21を備えている。各チャンバー11、21内には第1ウエハテーブル12及び第2ウエハテーブル22が備えられており、これらのテーブル12、22上には半導体ウエハWが載置固定される。
【0022】
第1ウエハテーブル12(第1局所ドライエッチング装置1内)は回転テーブルであって、第2図に示すように例えば数値制御送り装置によってR方向(図2)への直線運動を制御されるRテーブル上に載置されており、この上でθ方向の回転運動をすることが可能となっている。また、その全体はZ方向(図1で上下方向)に直線運動することが可能となっている。他方、第2ウエハテーブル22(第2局所ドライエッチング装置2内)は不図示の各送り装置(例えば数値制御送り装置)によってX、Y、Z各方向に直線送りが可能となっている。
【0023】
第1真空チャンバー11内には小径ノズル13が、また第2真空チャンバー21には大径ノズル23がそれぞれ開口しており、これらのノズル13、23からは活性種ガスが吹き出される。各真空チャンバーの外側で各ノズル13、23の中間部には第1活性種ガス発生装置14、第2活性種ガス発生装置24がそれぞれ設けられている。不図示のマイクロ波発生装置で作られたマイクロ波が各活性種ガス発生装置内においてノズルの上記中間部に照射される。
【0024】
小径ノズル13、大径ノズル23の上端はパイプ16、及びパイプ26を介してガスボンベ151、152及びガスボンベ251、252に結合されている。各ガスボンベの出口近傍にはバルブ153、154、及びバルブ253、254が設けられており、これらのバルブを開閉することにより、任意のボンベ内のガスを小径ノズル13及び大径ノズル23の上端に供給することができる。各ボンベ内には、SFガス、NFガス、CFガス等が充填されている。
【0025】
第1真空チャンバー11には半導体ウエハを搬入チャンバー4から搬入するための扉171、及び第1真空チャンバー11内において外周縁環状領域の凹凸除去が済んだ半導体ウエハを搬送チャンバー3に搬出するための扉172が設けられている。また、第2真空チャンバー21には搬送チャンバー3から半導体ウエハを搬入するための扉271、及び加工完了した半導体ウエハを搬出するための扉272が設けられている。扉172と扉271は搬送チャンバー3と第1真空チャンバー11、第2真空チャンバー21間をそれぞれ隔てている。
【0026】
搬送装置31は、第1真空チャンバー11から半導体ウエハWを取り出し、これを第2真空チャンバー21内に搬送するための搬送装置であり、この例では搬送チャンバー3内に設置されている。なお、搬送装置31は、第1ウエハテーブル12上の半導体ウエハWを把持し、第2ウエハテーブル22上に直接載置することも可能であるが、第1真空チャンバー11、第2真空チャンバー21あるいは搬送チャンバー3内に設けたバッファー上に一旦置いてからタイミングをはかって第2ウエハテーブル22上に置くようにすることも可能である。
【0027】
また、第1真空チャンバー11及び第2真空チャンバー21は単一とする必要はない。つまり、単一の搬送チャンバー3の周囲にそれぞれ適宜の数の第1真空チャンバー11と第2真空チャンバー21を配置し、搬送チャンバー3内の搬送装置31がどれにもアクセスできるようにすることができる。このように各真空チャンバーの比を1対多、多対1あるいは多対多とすること、あるいは、先のバッファーによって、各局所ドライエッチング装置1、2のタクト(加工時間)の違いを吸収することができる。
【0028】
第1真空チャンバー11及び第2真空チャンバー21、場合により搬送チャンバー3には、それぞれ真空ポンプ(不図示)が接続され内部を真空(減圧)にするとともにそれぞれに最適な真空度に調整される。
【0029】
* 各工程
本発明の多段局所ドライエッチング方法は、任意の順序で実行される外周縁局所ドライエッチング工程と内側局所ドライエッチング工程とを含む。これら工程の順番は問われないが、ここでは第1工程として外周縁局所ドライエッチング工程が、第2工程として内側局所ドライエッチング工程が行われるものとして説明する。
【0030】
外周縁局所ドライエッチング工程は、半導体ウエハの円形平坦面の外周縁環状領域の輪郭に実質的に沿う軌跡を主走査方向とし、この主走査方向と実質的に直交する軌跡を副走査方向として走査(スキャン)が行われる局所ドライエッチング工程である。図3(1)に示されるように外周縁環状領域Aは、半導体ウエハの円形平坦面の外周縁にある環状の領域であって、先に述べたように、ベベル面へと続く「なで肩」状(ロールオフ)部分はこの中に含まれる。このロールオフ領域では、ロールオフ形状の空間波長が短いため、これを除去するのに細い加工プロファイルすなわち小径ノズルを用いて局所エッチングが行われる。
【0031】
上述のようにこの工程における主走査は、外周縁環状領域Aの輪郭に実質的に沿う軌跡、ここでは同心円状であり、副走査は半径方向になる。したがって、半導体ウエハと同心の円に沿ってノズルを相対的運動させ、一周したときに図3(1)(丸内)に示すようにピッチp分だけ半径方向内側(あるいは外側)にノズルの相対位置を移動させる。
【0032】
内側局所ドライエッチング工程は、図3(2)に示すように、直線軌跡を主走査方向とし、この直線軌跡がなす主走査方向と直交する直線軌跡を副走査方向として、上記小径ノズルよりも径の大きい大径ノズルを使用して少なくとも上記外周縁環状領域の内側の内側円形領域を含む領域に対して行われる厚さ形状もしくは表面形状の長波長成分を除去するための局所ドライエッチング工程である。
【0033】
なお、内側局所ドライエッチング工程における走査領域は、外周縁環状領域の内側の内側円形領域内に限ることも可能であるが、ウエハ全面とすることも可能である。図(2)では、ウエハ全面を走査領域とするものとして描かれている。
【0034】
外周縁局所ドライエッチング工程及び内側局所ドライエッチング工程を実行するに先立って各半導体ウエハの厚さ形状もしくは表面形状は予め測定され、このデータに基づいて各工程における走査ピッチp(副走査の間隔)、各点(微小領域)における主走査速度が計算されているものとする。場合により、2つの工程の間に再測定をし、これに基づき再計算することも可能である。
【0035】
図4は、半導体ウエハの縁部断面の厚さ形状もしくは表面形状が上記外周縁局所ドライエッチング工程及び内側局所ドライエッチング工程を経て変化する様子を示した説明図である。本発明の多段局所ドライエッチング方法を実行する前に半導体ウエハは、波線のような断面輪郭、就中広いロールオフ部の領域RO1を持っている。
【0036】
上記外周縁局所ドライエッチング工程(第1工程)において、小径ノズルを用いた外周縁環状領域Aに局所ドライエッチングが施され、断面領域Ns(波線と一点鎖線で囲まれる領域)が除肉されている。小径ノズルのプロファイル特性により、この時点で、「なで肩」状部分における、当初のロールオフ部RO1は除去されている。次いで、内側局所ドライエッチング工程において、細かい加工はできないが効率の良い大径ノズルを用いてウエハ全面が局所ドライエッチングされ、断面領域NL(一点鎖線と実線で囲まれる領域)が除肉される。こうして、ロールオフ部の領域をRO2にまで減少させることができ、パターン形成が可能な平坦部を増やせることになる。
【0037】
* 動作、操作
今、第1真空チャンバー11、第2真空チャンバー21、搬送チャンバー3、搬入チャンバー4、搬出チャンバー5はともに同程度に減圧されており、扉171、172、271、272が閉鎖されているものとする。また、搬入チャンバー4内には、両面研磨装置で研磨された単数または複数の半導体ウエハWが既に搬入されているものとする。
【0038】
第1ステップ(外周縁局所ドライエッチング工程)
扉172が開放され、第1ステップが済んだ半導体ウエハW(一つ前の半導体ウエハ)は、搬送装置31によって第1ウエハテーブル12から取り外され、搬送チャンバー3内に取り込まれる。次いで、扉172が閉鎖され、扉171が開放される。不図示の搬送装置が搬入チャンバー4から両面研磨装置で研磨された1枚の半導体ウエハを取り出し、空になっている第1ウエハテーブル12上に載置する。半導体ウエハは第1ウエハテーブル12の静電チャック(不図示)にて保持される。次いで扉171が閉鎖される。
【0039】
第1ウエハテーブル12は、送り装置によって小径ノズル13からその下方の所定距離離れた位置(Z方向位置)に送られる。同時に、R方向送り装置によって小径ノズル13が最初のピッチの位置に送られる。
【0040】
次いで、バルブ153、及び/又はバルブ154が開かれ、ガスボンベ151及び/又はガスボンベ152内のガスがパイプ16を通って小径ノズル13に導かれる。ほぼ同時に不図示マイクロ波発生装置において発生したマイクロ波は活性種ガス発生装置14に導かれ、小径ノズル13内に導かれたガスはここでプラズマ化され活性種ガスが発生する。活性種ガスは、小径ノズル13下端から下方の半導体ウエハの方向に向かって吹き出しを開始する。
【0041】
上記活性種ガスの吹き出しと同時に、第1ウエハテーブル12が回転駆動され、先に述べた計算された各微小領域毎の走査速度に制御されながら回転する。一周するとR方向に所定のスキャニングピッチだけピッチ送りされてから再び回転する。これを外周縁環状領域A内について繰り返す。これによって上記断面領域Nsが除肉される。
【0042】
第2ステップ(内側局所ドライエッチング工程)
以上のようにして外周縁環状領域Aに対する第1ステップが終了すると、扉172が開放される。搬送装置31は半導体ウエハを第1ウエハテーブル12から取り外し、搬送チャンバー3内に取り込む。扉172は閉鎖される。半導体ウエハが搬送チャンバー3内に取り込まれた後、第2真空チャンバー21の扉271が開放される。
【0043】
搬送装置31は、既に空になっている第2ウエハテーブル22上にこの半導体ウエハを載置する。半導体ウエハは第2ウエハテーブル22の静電チャック(不図示)にて保持される。次いで扉271が閉鎖される。
【0044】
バルブ253、及び/又はバルブ254が開かれ、ガスボンベ251及び/又はガスボンベ252内のガスがパイプ26を通って大径ノズル23に導かれる。ほぼ同時に不図示マイクロ波発生装置において発生したマイクロ波は活性種ガス発生装置24に導かれ、大径ノズル23内に導かれたガスはここでプラズマ化され活性種ガスが発生する。活性種ガスは、大径ノズル23下端から下方の半導体ウエハの方向に向かって吹き出す。
【0045】
第2ウエハテーブル22は、不図示送り装置によって大径ノズル23からその下方の所定距離離れた位置(Z方向位置)に送られる。次いで、X方向に所定のスキャニングピッチずつピッチ送りされるとともに、ピッチ送りの間にY方向には制御された速度で送られる。
【0046】
この内側局所ドライエッチング工程では、細かい加工はできないが効率の良い大径ノズルを用いてウエハ全面を局所ドライエッチングして断面領域NLが除肉される。図4のようにロールオフ部の領域をRO2にまで減少させることができ、パターン形成が可能な平坦部を増やせることになる。
【実施例2】
【0047】
実施例1の外周縁局所ドライエッチング工程においては、主走査を同心円状とし、副走査は一周する毎に半径方向にピッチだけずらしているが、これを主走査、副走査を同時に連続的に行わせる、つまり、渦巻曲線に沿う走査を行わせるようにすることも可能である。
【実施例3】
【0048】
実施例1、2の外周縁局所ドライエッチング工程においては、第1ウエハテーブル12はそれ自体が回転する回転テーブルによって主走査をしている。しかしながらこれに限らず、代わって、第2局所ドライエッチング装置2におけるようなX−Yテーブルを用い、X軸、Y軸の同時2軸制御による外周縁環状領域Aの輪郭に沿う相対運動をもって主走査とすることも可能である。
【0049】
この場合、第1ウエハテーブル12それ自体は回転せず、ノズルとの相対位置が外周縁環状領域Aの輪郭に沿って移動するだけであるが、この場合でも、円形平坦面の外周縁環状領域の輪郭に実質的に沿う軌跡を主走査方向とし、この主走査方向と実質的に直交する軌跡を副走査方向とする局所ドライエッチングを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本方法発明を実施するに適した多段局所エッチング装置100の概要を説明するための模式図である。
【図2】実施例1における第1ウエハテーブル12拡大説明図である。
【図3】外周縁局所ドライエッチング工程及び内側局所ドライエッチング工程における走査軌跡の違いを説明する説明図である。
【図4】半導体ウエハの縁部断面の凹凸形状が上記外周縁局所ドライエッチング工程及び内側局所ドライエッチング工程を経て変化する様子を示した説明図である。
【符号の説明】
【0051】
100 多段局所ドライエッチング装置
1 第1局所ドライエッチング装置
11 第1真空チャンバー
12 第1ウエハテーブル
13 小径ノズル
14 第1活性種ガス発生装置
151、251、152、252 ガスボンベ
153、253、154、254 バルブ
16、26 パイプ
171、172、271、272 扉
2 第2局所ドライエッチング装置
21 第2真空チャンバー
22 第2ウエハテーブル
23 大径ノズル
24 第2活性種ガス発生装置
3 搬送チャンバー
31 搬送装置
4 搬入チャンバー
5 搬出チャンバー
A 外周縁環状領域
W ウエハ
p ピッチ
Ns、NL 断面領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハの厚さ形状もしくは表面形状を修正するための多段局所ドライエッチング方法であって、
この多段局所ドライエッチング方法は、任意の順序で実行される外周縁局所ドライエッチング工程と内側局所ドライエッチング工程とを含み、
上記外周縁局所ドライエッチング工程は、上記円形平坦面の外周縁環状領域の輪郭に実質的に沿う軌跡を主走査方向とし、この主走査方向と実質的に直交する軌跡を副走査方向として、小径ノズルを使用して上記外周縁環状領域に対して行われる厚さ形状もしくは表面形状の短空間波長成分を修正するための局所ドライエッチング工程であり、
上記内側局所ドライエッチング工程は、直線軌跡を主走査方向とし、この直線軌跡がなす主走査方向と直交する直線軌跡を副走査方向として、上記小径ノズルよりも径の大きい大径ノズルを使用して少なくとも上記外周縁環状領域の内側の内側円形領域を含む領域に対して行われる厚さ形状もしくは表面形状の長波長成分を修正するための局所ドライエッチング工程であり、更に、
上記各局所ドライエッチング工程においては、予め得られている上記円形半導体ウエハの厚さ形状もしくは表面形状データに基づいて、上記主走査方向のそれぞれの走査速度及び上記副走査方向のそれぞれのピッチ間隔が決定されること
を特徴とする多段局所ドライエッチング方法。
【請求項2】
請求項1に記載された多段局所ドライエッチング方法において、
上記外周縁局所ドライエッチング工程と上記内側局所ドライエッチング工程とはそれぞれが異なる真空チャンバー内で実行されること
を特徴とする半導体ウエハの厚さ形状もしくは表面形状を修正するための多段局所ドライエッチング方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された多段局所ドライエッチング方法において、
上記外周縁局所ドライエッチング工程の主走査方向は、上記外周縁環状領域の輪郭に沿った同心円状であること
を特徴とする半導体ウエハの厚さ形状もしくは表面形状を修正するための多段局所ドライエッチング方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された多段局所ドライエッチング方法において、
上記外周縁局所ドライエッチング工程の主走査方向は、渦巻曲線に沿っていること
を特徴とする半導体ウエハの厚さ形状もしくは表面形状を修正するための多段局所ドライエッチング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−87175(P2010−87175A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253773(P2008−253773)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000107745)スピードファム株式会社 (62)
【Fターム(参考)】