説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】封止樹脂の成形性と放熱性を高いレベルで両立させた半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置10は、アイランド12と、アイランド12の上面に実装された半導体素子20と、外部接続端子として機能するリード14と、これらを一体的に被覆して機械的に支持する封止樹脂15とを主要に備えた構成となっている。更に、封止樹脂15は、半導体素子20等を直に樹脂封止する第1封止樹脂16と、この第1封止樹脂16を更に封止する第2封止樹脂18から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置およびその製造方法に関し、特に、半導体素子が樹脂封止されるリードフレーム型の半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電源回路等を構成する半導体素子を樹脂封止した半導体装置が開発されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図6を参照して、この種の半導体装置100の構成を説明する。図6(A)は半導体装置100の平面図であり、図6(B)は図6(A)のB−B’線に於ける断面図である。
【0004】
図6(A)および図6(B)を参照して、半導体装置100は、半導体素子104と、半導体素子104が実装されるアイランド102と、半導体素子104と接続されて一部が外部に導出するリード110と、これらを一体に被覆して封止する封止樹脂108とを備えた構成と成っている。
【0005】
半導体素子103は、例えばディスクリートのMOSFETであり、裏面のドレイン電極がアイランド102に接続され、表面のゲート電極が金属細線106を介してリード110Aと接続され、表面のソース電極が金属細線106を経由してリード110Cと接続されている。
【0006】
また、封止樹脂108の側面からは、リード110A〜110Cが導出しており、これらのリードを実装基板に挿入することにより、半導体装置100は差込実装される。
【0007】
半導体素子104として大電流のスイッチングを行うパワー素子が採用されると、半導体素子104から多量の熱が放出される。この熱による半導体装置100の過熱を防止するために、図6(B)に示す封止樹脂108の裏面はヒートシンクに当接される。
【0008】
上記した構成の製造方法は次の通りである。先ず、図6(A)に示すアイランド102およびリード110を備えるリードフレームを用意する。そして、アイランド102に半導体素子104を固着した後に、半導体素子104の上面の電極とリード110A、110Cとを金属細線106を経由して接続する。その後に、モールド金型を使用したトランスファーモールドにより、アイランド102、半導体素子104、金属細線106を樹脂封止する。
【0009】
一方、物性が異なる複数の樹脂材料で半導体素子を樹脂封止する技術も開発されている(例えば特許文献2参照)。この文献の図1およびその説明箇所を参照すると、超高周波半導体素子1をシリコーン樹脂4で樹脂封止し、更にこのシリコーン樹脂4をエポキシ樹脂5により樹脂封止している。これにより、高周波特性および信頼性の双方が向上されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−320009号公報
【特許文献2】特昭52−117067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記した特許文献1に開示された半導体装置では、封止樹脂108の成形性を良好に保ちつつ装置全体の放熱性を向上させることが困難であった。具体的には、図6(B)を参照して、半導体素子104が動作中に発する熱を良好に外部に放出させるためには、アイランド102を被覆する封止樹脂108の厚みを薄くすることが有効である。更にまた、封止樹脂108に含有されるフィラーの割合を増加させると、封止樹脂108の熱抵抗が低減されるので、装置全体の放熱性を向上させることができる。しかしながら、このようにすると、トランスファーモールドにより封止樹脂108を形成する工程にて、アイランド102の下方の領域が狭くなってしまう。この結果、アイランド102の下方に封止樹脂108が充填されずにボイドが発生する恐れがある。
【0012】
また、上記した特許文献2に開示された発明では、半導体素子を樹脂封止するシリコーン樹脂4はポッティングにより形成されている。従って、シリコーン樹脂4が一定の定まった形状を備えていないので、封止樹脂全体としての信頼性が確保されず、更に外側のエポキシ樹脂5の成形性が悪化する恐れも有った。
【0013】
本発明は上述した問題を鑑みて成されたものである。本発明の主な目的は、封止樹脂の成形性と放熱性を高いレベルで両立させた半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の半導体装置は、アイランドと、リードと、前記アイランドの主面に実装されて前記リードと接続された半導体素子と、前記アイランドと前記半導体素子とを被覆する第1封止樹脂と、前記アイランドの下面を被覆する部分の前記第1封止樹脂を露出させた状態で、前記第1封止樹脂を被覆する第2封止樹脂と、を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の半導体装置の製造方法は、上面に半導体素子が固着されたアイランドを第1金型に収納し、前記第1金型に第1樹脂封止を注入することにより、前記半導体素子および前記アイランドを第1封止樹脂により被覆する第1工程と、前記第1封止樹脂により被覆された状態の前記アイランドを第2金型に収納し、前記第2金型に第2封止樹脂を注入することにより、前記アイランドの下面を被覆する部分の前記第1封止樹脂を露出させた状態で、前記第1封止樹脂を前記第2封止樹脂で被覆する第2工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、半導体素子およびアイランドの下面を、放熱性に優れた第1封止樹脂により被覆し、更に第1封止樹脂の裏面が露出されるように第2封止樹脂を形成している。このようにすることで、放熱性に優れた第1封止樹脂を経由して良好に熱が外部に放出され、耐湿性等に優れた第2封止樹脂により装置全体の信頼性が確保される。
【0017】
更に、製法上に於いては、トランスファーモールドにより形成される第1封止樹脂でアイランドを樹脂封止した後に、この第1封止樹脂を再び第2封止樹脂によりトランスファーモールドで樹脂封止している。これにより、装置全体を一度にモールドする場合と比較して、アイランド12の下方に優先的に第1封止樹脂を充填させ、ボイドの発生を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の半導体装置を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。
【図2】本発明の半導体装置が適用される半導体モジュールを示す断面図である。
【図3】本発明の半導体装置の製造方法を示す平面図である。
【図4】本発明の半導体装置の製造方法を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は本工程を経た後のアイランドを示す平面図である。
【図5】本発明の半導体装置の製造方法を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は本工程を経た後のアイランドを示す平面図である。
【図6】背景技術の半導体装置を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を参照して、本実施の形態に係る半導体装置10の構成を説明する。図1(A)は半導体装置10を示す平面図であり、図1(B)は図(A)のB−B’線に於ける断面図である。
【0020】
図1(A)および図1(B)を参照して、半導体装置10は、アイランド12と、アイランド12の上面に実装された半導体素子20と、外部接続端子として機能するリード14と、これらを一体的に被覆して機械的に支持する封止樹脂15とを主要に備えた構成となっている。本形態では、封止樹脂15は、半導体素子20等を直に樹脂封止する第1封止樹脂16と、この第1封止樹脂16を更に封止する第2封止樹脂18とから構成される。
【0021】
アイランド12は、厚みが0.6mm程度の銅等の金属から成る導電材料を、エッチング加工やパンチング加工により所定形状に成形したものである。アイランド12は、例えば縦×横=12.0mm×14.0mm程度の矩形である。
【0022】
図1(A)を参照して、アイランド12の紙面上に於ける下側の側辺の中央部からは、外部に連続してリード14Bが延在している。また、図1(B)を参照すると、アイランド12を外部と絶縁させるために、アイランド12の下面は第1封止樹脂16により被覆されている。また、アイランド12の裏面を被覆する第1封止樹脂16の厚み(L1)は例えば0.4mm以上1.0mm以下と非常に薄いので、半導体素子20が動作することにより発生する熱は、アイランド12および第1封止樹脂16を経由して良好に外部に放出される。この厚みL1を0.4mm未満とすると樹脂封止時に微小なボイド(ピンホール)が出現して耐圧性が劣化する恐れがあり、厚みL1を1.0mmよりも長くすると放熱性が低下する恐れがある。
【0023】
リード14は、内蔵された半導体素子20と電気的に接続され、一部が外部に露出して外部接続端子として機能している。具体的には、図1(A)を参照して、リード14は、リード14A−14Cから成る。リード14A、14Cは、金属細線34を経由して半導体素子20の上面に形成された電極と接続される。一方、中央のリード14Bは、アイランド12と一体的に連続している。リード14Bは中間部が曲折加工されており、両端に位置するリード14A、14Cは、曲折加工されていない平坦な形状である。そして、リード14A、14B、14Cの外部に導出する部分は、同一平面上に位置している。また、リード14A〜14Cを実装基板等の実装面に挿入することにより、半導体装置10は差込実装される。
【0024】
半導体素子20は裏面に主電極を備えた半導体素子であり、具体的には、MOSFET(Metal−Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、バイポーラトランジスタ、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が採用される。本実施の形態では、半導体素子20としては、例えば1A以上の大電流のスイッチングを行うパワー系の半導体素子(パワー素子)が採用される。
【0025】
一例として、MOSFETが半導体素子20として採用されると、下面のドレイン電極が導電性固着材を介してアイランド12の上面に接続され、上面のゲート電極は金属細線34を経由してリード14Aと接続され、上面のソース電極は金属細線34を経由してリード14Cと接続される。そして、半導体素子20は、リード14Aから供給される制御信号に基づいて、リード14Bおよびリード14Cを通過する大電流のスイッチング動作を行う。
【0026】
本形態では、アイランド12および半導体素子20を単一の樹脂材料により樹脂封止するのではなく、2種類の樹脂(第1封止樹脂16および第2封止樹脂18)により樹脂封止している。具体的には、第1封止樹脂16によりアイランド12および半導体素子20を被覆し、更にこの第1封止樹脂16を第2封止樹脂18で樹脂封止している。
【0027】
第1封止樹脂16は、下面も含めたアイランド、金属細線34およびリード14A−14Cの内側の端部を被覆している。ここで、アイランド12は中間部分に段差が形成されており、紙面上でその段差よりも左側の領域に半導体素子20が実装され、この部分のアイランド12の下面は全面的に第1封止樹脂16で被覆される。一方、段差部よりも右側の領域は相対的に上方に配置され、この部分は部分的に第1封止樹脂16により被覆され、一部は第2封止樹脂18により被覆される。
【0028】
更に、第1封止樹脂16は、フィラーが添加された樹脂材料から成る。ここで、樹脂材料としては、エポキシ樹脂、ビフェニル系またはクレノボ系の樹脂等の熱硬化性樹脂が採用される。フィラーとしてはシリカ(SiO)、アルミナ(Al)またはこれらの混合物が採用される。第1封止樹脂16にフィラーが含まれる割合は、例えば、80重量%以上85重量%以下である。この割合を80重量%以上とすることにより、第1封止樹脂16の熱抵抗を低減して、半導体素子20が動作時に発生する熱を第1封止樹脂16を経由して良好に外部に放出できる。また、この割合を85重量%以下とすることにより、樹脂封止時に於ける第1封止樹脂16の流動性を確保して、第1封止樹脂16をアイランド12の下方に良好に充填させることができる。第1封止樹脂に採用されるフィラーとしては、アルミナまたはシリカが採用可能であるが、アルミナを採用することにより放熱性が向上する。また、フィラーの形状としては、破砕した形状、溶融した形状またはこれらを混合したものが採用される。
【0029】
更にまた、第1封止樹脂16の外形形状は、上面、下面および側面を備えた六面体形状(直方体形状)が好適である。具体的には、本形態の第1封止樹脂16はファラーの含有率が高いので、モールド金型の内壁形状を複雑にすると、端部まで封止樹脂が充填されない恐れがある。本形態では、このようなことを防止するために、第1封止樹脂16の射出成形に用いるモールド金型の内壁形状を簡素化した結果、第1封止樹脂16の外形形状が直方体形状を呈している。
【0030】
第2封止樹脂18は、第1封止樹脂16の表面およびリード14を被覆している。具体的には、第2封止樹脂18は、第1封止樹脂16の側面および上面を被覆している。一方、第1封止樹脂16の下面は第2封止樹脂18により被覆されることなく、外部に露出している。これにより、半導体素子20が実装されるアイランド12の下面は、熱抵抗の低い第1封止樹脂16のみにより被覆されるので、放熱性が向上される。また、第1封止樹脂16の下面と、第2封止樹脂18の下面とは、同一平面上に配置されている。
【0031】
更に、第2封止樹脂18は、第1封止樹脂16の側面から導出するリード14の付け根の部分も被覆している。耐湿性等の信頼性に優れる第2封止樹脂18によりリード14を被覆することで、装置全体の信頼性が被覆される。
【0032】
また、第2封止樹脂18は、第1封止樹脂16と同様に、フィラーが添加された熱硬化性樹脂から成るが、含有されるフィラーの種類が異なる。第2封止樹脂18に含まれるフィラーとしては、シリカまたはアルミが採用可能であるが、安価なシリカを採用することでコストが低減される。第2封止樹脂18のフィラーの含有率は80重量%以上85重量%以下であり、第1封止樹脂16と同等で良い。更に、第2封止樹脂18に含まれるフィラーの形状も第1封止樹脂16と同様で良い。ここで、第1封止樹脂16および第2封止樹脂に含まれるフィラーが、共にシリカとアルミナとの混合物から成る場合、第1封止樹脂16にアルミナが含まれる割合を第2封止樹脂18よりも多くしても良い。
【0033】
第2封止樹脂18の外形形状は、第1封止樹脂16と比較すると複雑な形状を呈している。図1(B)を参照すると、第2封止樹脂18の上面には段差領域が形成されており、また、第1封止樹脂16の左下下部は一部切り欠いている。
【0034】
図2の断面図を参照して、次に、上記した構成の半導体装置10が組み込まれた半導体モジュール10Aの構成を説明する。
【0035】
この図に示す半導体モジュール10Aは、半導体装置10と、半導体装置10の下面に当接するヒートシンク26とを備えている。
【0036】
ヒートシンク26は、銅やアルミニウム等の金属から成り、半導体装置10と面的に接触するために上面は平坦面であり、放熱性を向上させるために下部は異形形状とされている。尚、ヒートシンク26に替えて、金属から構成されるセットの筐体を放熱手段として採用することも可能である。
【0037】
本形態では、放熱性に優れる第1封止樹脂16が半導体装置10の下面に露出し、ヒートシンク26の上面に当接している。従って、半導体素子20が動作時に発生する熱は、アイランド12、第1封止樹脂16を経由して良好にヒートシンク26に伝導した後に外部に放出される。
【0038】
図3から図6を参照して、次に、上記した構成の半導体装置の製造方法を説明する。
【0039】
先ず、図3の平面図を参照して、所定形状のリードフレーム50を用意する。リードフレーム50は、エッチング加工またはプレス加工により形成され、1つの半導体装置となるユニットが複数個連結された状態となっている。ここでは、ユニット56A−56Dの4つのユニットが示され、個々のユニットは、アイランド12と、アイランドに一端が接近するリード14A、14Cと、アイランド12から一体的に連続するリード14Bとから構成されている。また、各ユニットのリードの中間部と端部は、タイバー58により連結されている。
【0040】
更に、各ユニットには半導体素子が接続されている。ユニット56Aを参照すると、アイランド12の上面に半導体素子20が実装されている。半導体素子20としては、バイポーラ・トランジスタ、MOSFET、IGBT等のディスクリートのトランジスタが採用される。半導体素子20の裏面電極は、半田等の導電性の固着材を用いた接続または共晶結合により、アイランド12の上面に接続される。半導体素子20の上面の電極は、金属細線34を経由してリード14Aおよびリード14Cに接続される。
【0041】
次に各ユニットを樹脂封止するが、本形態では、放熱性に優れた第1封止樹脂により半導体素子20およびアイランド12を樹脂封止した後に、高信頼性の第2封止樹脂で第1封止樹脂を樹脂封止している。
【0042】
図4を参照して、1回目の樹脂封止の工程を説明する。図4(A)は本工程で用いるモールド金型60の断面図であり、図4(B)は本工程が終了した後のアイランド12を示す平面図である。
【0043】
図4(A)を参照して、本工程では、モールド用の金型40(第1金型)を用いて封止樹脂を射出成形するトランスファーモールドを行っている。具体的には、モールド金型40は、上金型42および下金型44から成り、両者を当接することにより形成されるキャビティ46の内部に、アイランド12、半導体素子20および金属細線34が収納される。そして、キャビティ46の側面に設けたゲートから、液状または半固形状の封止樹脂をキャビティ46の内部に注入する。注入された第1封止樹脂16により、アイランド12の下面、側面および上面、半導体素子20、金属細線34、リード14A−14Cの先端部分が被覆される。本形態では、紙面上右側(即ち、リード14が導出する方向に対向する方向から)に、樹脂注入用のゲートが設けられ、このゲートからキャビティ46に第1封止樹脂16が注入される。この図では、第1封止樹脂16が注入される方向を、矢印で示している。ここで、本工程で用いる第1封止樹脂16の組成は図1を参照して説明した通りである。
【0044】
本工程では、キャビティ46の内部に於けるアイランド12の位置は、リード14およびアイランド12を金型40で挟持することで固定されている。具体的には、紙面上にて左側にアイランド12から導出されるリード14Bを、上金型42および下金型44で挟持している。そして、アイランド12の紙面上に於ける右側の端部を、上金型42および下金型44で挟持している。これにより、キャビティ46の内部に於けるアイランド12の位置が固定されるので、第1封止樹脂16をキャビティ46に高圧で注入しても、この圧力によりアイランド12が移動して、アイランド12の下面を被覆する第1封止樹脂16が厚くなることがない。
【0045】
本形態では、キャビティ46の内部における、アイランド12の上方の領域の大きさと、アイランド12の下方の領域の大きさの差を小さくしている。これにより、アイランド12の下方の領域にボイドが発生することを抑止している。具体的には、アイランド12の上面と上金型42の上側内壁とが離間する距離L2は1.5mm以上2.0mm以下であり、アイランド12の下面と下金型44の下側内壁とが離間する距離L3は0.4mm以上1.0mm以下である。この距離L2は、後の工程で用いる図5(A)に示す金型60を用いた場合と比較して短い。即ち、図5(A)に示す金型60を用いた場合と比較すると、本工程では、キャビティ46の内部に於ける、アイランド12の上面の領域が小さくなる。
【0046】
キャビティ46に於けるアイランド12の上方の領域が、アイランド12の下方の領域に比較して極めて大きいと、注入された第1封止樹脂16はアイランド12の上方に優先的に流動し、アイランド12の下方には十分に充填されずにボイドが発生する恐れがある。本形態では、キャビティ46に於けるアイランド12の上方の領域が比較的狭い。従って、キャビティ46に注入された液状の第1封止樹脂16は、アイランド12の上方の領域に充填されると共に、アイランド12の下方の領域にも十分に充填される。これにより、アイランド12の下方の領域にも第1封止樹脂16が良好に充填されてボイドの発生が防止される。
【0047】
更に本形態では、キャビティ46の内壁形状を直方体形状等の六面体形状としている。即ち、キャビティ46の内壁の形状は、図1に示す半導体装置10の第2封止樹脂18の外形形状よりも面数が少ない形状である。これにより、金型40の内壁の端部まで第1封止樹脂16が行き渡り、ボイドの出現が防止される。
【0048】
更にまた、本形態では、トランスファーモールドで形成された第1封止樹脂16を、後の工程で再びトランスファーモールドにより第2封止樹脂18で樹脂封止している。従って、トランスファーモールドにより正確な外形形状とされた第1封止樹脂16を樹脂封止するので、金型60の内部に於ける第1封止樹脂16の位置を正確に規定できる。これにより、第2封止樹脂18の厚みや量を正確に制御することが可能となる。
【0049】
上述したように、本工程で用いられる第1封止樹脂はアルミナ等のフィラーが高充填されており流動性が低い。しかしながら、上記のような金型40を用いることにより、アイランド12の下方の狭い領域に、第1封止樹脂16を十分に行き渡らせる事ができる。
【0050】
キャビティ46に第1封止樹脂16を注入した後は、第1封止樹脂16を十分に加熱硬化させて、上金型42と下金型44とを離型した後に、第1封止樹脂16により樹脂封止されたアイランド12を取り出す。
【0051】
図4(B)を参照して、上記工程により、アイランド12、半導体素子20、金属細線34およびリード14A−14Cの先端部分が第1封止樹脂16により樹脂封止される。一方、アイランド12の紙面上における下方の先端部分は、第1封止樹脂16により封止されずに外部に露出している。これは、図4(A)に示したように、樹脂封止の工程にて金型40で挟持されており、キャビティ46に収納されてないからである。外部に突出する部分のアイランド12は、そのままの状態で次工程に搬送されてもよいし、次工程に先行して適当な長さに切断されても良い。
【0052】
図5を参照して、次に、上記工程で成形した第1封止樹脂16を、第2封止樹脂18で更にトランスファーモールドで被覆する。図5(A)は本工程を示す断面図であり、図5(B)は本工程を経た後のアイランド12を示す平面図である。
【0053】
図5(A)を参照して、先ず、第1封止樹脂16で封止された状態のアイランド12を金型60(第2金型)に収納する。本工程で使用する金型60は、先工程で用いた金型40(図4(A)参照)とは形状が異なる。本工程の金型60は、上金型62および下金型64から成り、両者を当接することでキャビティ66が形成される。キャビティ66の内壁の形状は、図1に示す第2封止樹脂18の形状と同様である。従って、上金型62および下金型64の内壁には、製造される半導体装置10のパッケージ外径形状に即した段差部が設けられている。即ち、本工程で用いる金型60の内壁の形状は、先工程で用いた金型40(図4(A)参照)の内壁形状よりも複雑な形状を呈している。
【0054】
第1封止樹脂16をキャビティ66に収納した後は、金型60に設けたゲートから、液状または半固形状の第2封止樹脂18をキャビティ66に注入する。本工程でも、ゲートはキャビティ66の右側端部に設けられており、このゲートから注入される第2封止樹脂18を矢印で示している。注入された第2封止樹脂18により、第1封止樹脂16の側面および上面、リード14A−14Cの付け根の部分が被覆される。一方、第1封止樹脂16の下面は、第2封止樹脂18により被覆されずに外部に露出した状態となる。
【0055】
また、紙面上で第1封止樹脂16の右側側面から導出しているアイランド12の端部も、第2封止樹脂18により被覆される。第2封止樹脂18がキャビティ66に注入された後は、加熱硬化を行い、上金型62および下金型64を離型した後に、第2封止樹脂18を金型60から外部に取り出す。ここで、本工程で用いる第2封止樹脂18の組成は図1を参照して説明した通りである。
【0056】
本工程では、キャビティ66に収納された第1封止樹脂16の下面は、下金型64の内壁に接触している。そして、この状態で、第1封止樹脂16の上面は、上金型62の内壁から下方に突出する押圧部68により下方に押圧されている。押圧部68で第1封止樹脂16の上面が下方に押圧されることにより、第1封止樹脂16の下面が下金型64の内壁に面的に接触し、両者の境界に第2封止樹脂18が侵入することが防止される。更には、押圧部68の押圧力により、第1封止樹脂16の位置が固定され、キャビティ66に第2封止樹脂18を高圧で注入しても、キャビティ66内部における第1封止樹脂16の移動が防止される。
【0057】
この押圧部68は、下金型64の内壁に固定された状態でも良いし、上下方向に可動するものでも良い。押圧部68が固定の場合は、形成される第2封止樹脂18の上面に押圧部68の形状に即した凹状部が形成される。一方、押圧部68が可動式の場合は、第2封止樹脂18の充填と共に押圧部68が上方に移動する。この結果、本工程を経た後の第2封止樹脂18の上面が平坦面となり、第1封止樹脂16の上面が全面的に第2封止樹脂18により被覆されて外部に露出しない。
【0058】
更に、上記したように、第1封止樹脂16の外形形状は、立方体等の六面体形状であり、比較的単純な構成である。従って、キャビティ66に注入された第2封止樹脂18は第1封止樹脂16の側面および上面に沿って良好に流動するので、第1封止樹脂16と第2封止樹脂18との間にもボイドは発生しない。
【0059】
図5(B)を参照して、上記した2回目の樹脂封止を行った結果、第1封止樹脂16の側面が第2封止樹脂18により被覆され、第2封止樹脂18の側面からリード14A−14Cが導出する構造が得られる。
【0060】
上記した樹脂封止が終了した後は、メッキ膜によりリードを被覆する工程、各ユニットをリードフレーム50から分離する工程(図3参照)、各ユニットの電気的特性を測定する工程、等を経て、図1に構造を示すような半導体装置が製造される。また、図2に示す半導体モジュールを製造する場合は、半導体装置の主面をヒートシンクに当接させて両者を熱的に結合させる。
【符号の説明】
【0061】
10 半導体装置
10A 半導体モジュール
12 アイランド
14,14A,14B,14Cリード
15 封止樹脂
16 第1封止樹脂
18 第2封止樹脂
20 半導体素子
26 ヒートシンク
34 金属細線
40 金型
42 上金型
44 下金型
46 キャビティ
50 リードフレーム
54 ブロック
56、56A、56B、56C、56D ユニット
58 タイバー
60 金型
62 上金型
64 下金型
66 キャビティ
68 押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイランドと、
リードと、
前記アイランドの主面に実装されて前記リードと接続された半導体素子と、
前記アイランドと前記半導体素子とを被覆する第1封止樹脂と、
前記アイランドの下面を被覆する部分の前記第1封止樹脂を露出させた状態で、前記第1封止樹脂を被覆する第2封止樹脂と、
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1封止樹脂の外形形状は、上面、前記上面に対向する下面および、前記上面と前記下面とをつなぐ4つの側面を有する六面体形状であり、
前記第1封止樹脂の前記下面は前記第2封止樹脂により被覆されずに露出し、
延期第1封止樹脂の前記上面および前記側面は前記第2封止樹脂により被覆されることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体素子と前記リードとを接続する金属細線を前記第1封止樹脂により被覆することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1封止樹脂にはアルミナが含まれ、前記第2封止樹脂にはシリカが含まれることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の半導体装置。
【請求項5】
上面に半導体素子が固着されたアイランドを第1金型に収納し、前記第1金型に第1樹脂封止を注入することにより、前記半導体素子および前記アイランドを第1封止樹脂により被覆する第1工程と、
前記第1封止樹脂により被覆された状態の前記アイランドを第2金型に収納し、前記第2金型に第2封止樹脂を注入することにより、前記アイランドの下面を被覆する部分の前記第1封止樹脂を露出させた状態で、前記第1封止樹脂を前記第2封止樹脂で被覆する第2工程と、を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1封止樹脂の外形形状は、上面、前記上面に対向する下面および、前記上面と前記下面とをつなぐ4つの側面を有する六面体形状であり、
前記第2工程では、前記第1封止樹脂の前記下面を前記第2金型の内壁に当接させた状態で、前記第1封止樹脂の前記上面および前記側面を前記第2封止樹脂で被覆することを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1工程では、前記アイランドの端部を前記第1金型で挟持することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第2工程では、前記第1封止樹脂の主面を押圧することで、前記第2金型の内部における前記第1封止樹脂の位置を固定することを特徴とする請求項5から請求項7の何れかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1工程で、前記第1金型の上方内壁と前記アイランドの上面とが離間する距離は、
前記第2工程で、前記第2金型の上方内壁と前記アイランドの上面とが離間する距離よりも短いことを特徴とする請求項5から請求項8の何れかに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−4848(P2013−4848A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136211(P2011−136211)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(300057230)セミコンダクター・コンポーネンツ・インダストリーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (119)
【Fターム(参考)】