説明

半導体装置

【課題】メサ型のフォトダイオードを有する光通信用素子等の半導体装置において、メサ上部への配線の寄生容量を低減し、応答特性の高速化を図る。
【解決手段】基板11表面に形成されフォトダイオードのカソードなるn型高濃度層12a上にn型クラッド層12b、吸収層12c、p型クラッド層12d及びp型高濃度層12eの積層体をメサ型に形成する。当該積層体の側面及びn型高濃度層12aの側面は、互いに連続して基板11表面からp型高濃度層12eまで段差なく到達する壁面を形成する部分を有する。基板11上に配置された水平配線19aとフォトダイオードのアノードとなるp型高濃度層12eとの層間を接続する配線19dは当該壁面に沿って配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メサ型の素子部分を有した半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信の送受信での電気信号と光信号との変換に用いることができる発光素子、受光素子が半導体素子として実現されている。例えば、光伝送の受信側のデバイスとして、PIN型のフォトダイオード(PIN−PD)やアバランシェフォトダイオード(APD)などの受光素子が実用化されている。
【0003】
これら発光素子や受光素子は、発光領域や光電変換領域を構成する半導体層(活性領域)をメサ型に形成することができる。図18は、裏面入射型の従来の受光素子10の平面図であり、図19は図18に示す直線B−Bに沿った垂直断面図である。当該受光素子10は、基板11上に円形メサ型の光電変換を行うフォトダイオード部12を有する。当該フォトダイオード部12はカソードとして基板11表面に積層されたn型高濃度層12aを有し、アノードとしてメサ型の上部に積層されたp型高濃度層12eを有する。
【0004】
受光素子10は、カソード電圧を印加されるn側電極15a、及びアノード電圧を印加されるp側電極15bを有する。n側電極15aは、スルーホール14aを介してn型高濃度層12aに接続される。また、p側電極15bは、フォトダイオード部12とは別の位置に配置され、当該p側電極15bからフォトダイオード部12を形成するメサの上部に位置するスルーホール14bまで伸びる配線を介してp型高濃度層12eに接続される。
【0005】
p側電極15bとスルーホール14bとの間をつなぐ配線19は、基板11表面に積層された配線層からなる配線19aと、当該配線19aとスルーホール14bが位置するメサ上部との間を接続する層間接続配線19bとを含む構造(段差配線構造)となっている。なお、n側電極15a、p側電極15bや配線19は、金属膜等の配線層をパターニングして形成され、当該配線層はその下地との短絡を防止するために誘電体膜13の上に積層される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−288089号公報
【特許文献2】特開平11−330534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
受光素子10のフォトダイオード部12の円形のメサ部分は、平面配置上、n型高濃度層12aの内側に位置する。その結果、メサの円形の縁とn型高濃度層12aの縁との間に距離が存在し、従来の段差配線構造は、層間接続配線19bの一部がn型高濃度層12aの上面に沿って配置される。その分、n側電極15aから電圧を印加されるn型高濃度層12aとp側電極15bから電圧を印加される配線とが近接する部分18の面積が増加し、当該部分18の寄生容量が増加する。この寄生容量は、フォトダイオード部12の応答特性を劣化させるという問題があった。同様の問題は、メサ型の発光部を有した発光素子など他の半導体装置を上述のような段差配線構造を用いて構成する場合にも生じる。特に、光通信で用いられる受光素子や発光素子のように高速での動作が要求される光半導体素子では、寄生容量の低減は重要な課題となる。
【0008】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、基板表面に積層され電圧を印加される下部層と、メサの上部層に電圧を供給する配線とを有する半導体装置において、上部層への配線と下部層との間の容量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る半導体装置は、基板表面に積層され第1電圧を印加される下部層、前記下部層の上にメサ型に形成される中間層、及び前記中間層の上に積層され第2電圧を印加される上部層を含む半導体素子と、前記基板表面に積層された配線層から前記上部層に前記第2電圧を供給する層間接続配線と、を有するものであって、前記中間層の側面及び前記下部層の側面は、互いに連続して前記基板表面から前記上部層まで到達する壁面を形成する部分を有し、前記層間接続配線は、前記壁面に沿って配置される。
【0010】
本発明の好適な態様である半導体装置は面入射型受光装置であって、前記半導体素子は、光電変換を行う吸収層を前記中間層に有した受光部である。
【0011】
ここで、前記下部層は第1導電型の半導体層とし、前記上部層は前記第1導電型とは異なる第2導電型の半導体層とすることができる。この構成において例えば、前記基板を、基板裏面から入射した検出対象光を前記基板表面へ透過させる半絶縁性の半導体基板とし、前記下部層をInP層とし、また前記上部層及び前記吸収層をInGaAs層又はInAlGaAs層とすることができる。
【0012】
また、上述の好適な態様において、前記半導体素子は、前記下部層側から順に、前記下部層より低い不純物濃度を有する前記第1導電型の下部クラッド層、i型半導体層からなる前記吸収層、及び前記上部層より低い不純物濃度を有する前記第2導電型の上部クラッド層が積層された前記中間層を有したPIN型受光部とすることができる。この構成において、前記基板を、基板裏面から入射した検出対象光を前記基板表面へ透過させる半絶縁性の半導体基板とし、前記下部層をInP層とし、前記上部層をInGaAs層又はInAlGaAs層とし、前記下部クラッド層及び前記上部クラッド層をInAlGaAs層とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、半導体素子の寄生容量を低減することができる。また、それにより、半導体素子の応答性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る裏面入射型の受光素子の模式的な平面図である。
【図2】図1に示す直線A−Aに沿った本発明の実施形態に係る受光素子の模式的な垂直断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る受光素子の主要な製造工程での模式的な垂直断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る受光素子の主要な製造工程での模式的な垂直断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る受光素子の主要な製造工程での模式的な垂直断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る受光素子の主要な製造工程での模式的な垂直断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る受光素子の主要な製造工程での模式的な垂直断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る受光素子の主要な製造工程での模式的な垂直断面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る受光素子の主要な製造工程での模式的な垂直断面図である。
【図10】図3に示す主要な製造工程での受光素子の模式的な平面図である。
【図11】図4に示す主要な製造工程での受光素子の模式的な平面図である。
【図12】図5に示す主要な製造工程での受光素子の模式的な平面図である。
【図13】図6に示す主要な製造工程での受光素子の模式的な平面図である。
【図14】図7に示す主要な製造工程での受光素子の模式的な平面図である。
【図15】図8に示す主要な製造工程での受光素子の模式的な平面図である。
【図16】図5に示す製造工程に対応する工程での従来の受光素子の垂直断面図である。
【図17】図12に示す製造工程に対応する工程での従来の受光素子の平面図である。
【図18】裏面入射型の従来の受光素子の平面図である。
【図19】図18に示す直線B−Bに沿った従来の受光素子の垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)について、図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る裏面入射型の受光素子30の模式的な平面図であり、図2は図1に示す直線A−Aに沿った受光素子30の模式的な垂直断面図である。受光素子30において、図18、図19に示した受光素子10と同様の構成要素には同一の符号を付して、受光素子10との対比を容易とする。
【0017】
受光素子30は、基板11、フォトダイオード部12、n側電極15a、p側電極15b、誘電体膜13、及び反射防止膜16を有する。
【0018】
基板11は、半絶縁性の材料からなる。基板11は光透過性を有しており、例えば、鉄をドープしたインジウム燐(Fe−InP)などにより形成されている。例えば、基板11は厚さ100μm程度に形成される。
【0019】
反射防止膜16は基板11裏面に積層され、基板11での光の反射を抑制し、フォトダイオード部12への光の入射効率を向上させる。例えば、反射防止膜16は厚さ0.2μ程度に形成される。
【0020】
フォトダイオード部12は、本実施形態においては、PINフォトダイオードであり、基板11側から順に、n型高濃度層12a、n型クラッド層12b、吸収層12c、p型クラッド層12d、及びp型高濃度層12eが積層された構造を有する。例えば、フォトダイオード部12は厚さ2.0μm程度に形成される。
【0021】
n型高濃度層12aは、n型不純物を高濃度に導入され、低抵抗に形成された半導体層であり、フォトダイオードのカソードを構成する。本実施形態の受光素子30が裏面入射型であることに対応して、n型高濃度層12aは光透過性を有した材料で形成される。
【0022】
p型高濃度層12eは、p型不純物を高濃度に導入され、低抵抗に形成された半導体層であり、フォトダイオードのアノードを構成する。吸収層12cはi型半導体層からなり、不純物濃度は低く形成される。クラッド層12b,12dは吸収層12cと高濃度層12a,12eとの中間の不純物濃度を有する。フォトダイオード部12のうちn型高濃度層12aの上に積層される部分(n型クラッド層12b、吸収層12c、p型クラッド層12d及びp型高濃度層12e)は概略の形状として円形のメサ型に形成される。
【0023】
n側電極15a及びp側電極15bは、誘電体膜13の上に積層される配線層からなる電極パッドである。誘電体膜13は、配線層の下に積層され、配線層と他の部分、例えばn型高濃度層12a、p型高濃度層12e等との間を電気的に絶縁する。例えば、誘電体膜13は厚さ0.6μm程度に形成される。
【0024】
誘電体膜13には、n型高濃度層12aの上にスルーホール14aが形成され、n側電極15aにつながる配線層とn型高濃度層12aとが当該スルーホール14aを介してオーミック接触し、n側電極15aとn型高濃度層12aとが電気的に接続される。
【0025】
また誘電体膜13には、p型高濃度層12eの上にもスルーホール14bが形成され、この上に形成される電極15cとp型高濃度層12eとが当該スルーホール14bを介してオーミック接触する。電極15cは配線19を介してp側電極15bに接続され、p型高濃度層12eとp側電極15bとが電気的に接続される。
【0026】
p側電極15bの形成領域に対応して、基板11上には凸部が形成され、p側電極15bはこの凸部の上面に配置される。p側電極15bは比較的大きな面積とされるが、凸部により基板11との距離を保つことで、寄生容量を抑制することができる。
【0027】
一方、電極15cとp側電極15bとの間の配線19は、基板11やn型高濃度層12aと近づく部分を有する。そこで、配線19の寄生容量は、配線幅を小さくすることにより抑制する。具体的には、配線19は、基板11の表面に沿って配置される部分(水平配線19a)と、凸部の側面に沿って配置されp側電極15bと水平配線19aとの間を接続する層間接続配線19cと、フォトダイオード部12の側面に沿って配置され水平配線19aと電極15cとの間を接続する層間接続配線19dとからなる。これらの各部分は寄生容量を低減するために、配線抵抗が受光素子30の動作上に支障を来さない範囲で、基本的に幅を狭く設定される。また、寄生容量は配線の面積に応じて増加するので、配線長も短くするように配慮する。この点、本発明によれば、層間接続配線19dは、n型高濃度層12aの側面に沿う部分は有するが、n型高濃度層12aの上面に沿う部分を有さないように構成される。このように層間接続配線19dのうちn型高濃度層12aに近接して配置される部分18の長さ、面積を少なくすることにより寄生容量が低減される。これによりフォトダイオードの応答速度の向上が図られる。
【0028】
層間接続配線19dを上述のように形成するために、フォトダイオード部12のうちn型高濃度層12aの上に積層されるメサ部(n型クラッド層12b、吸収層12c、p型クラッド層12d及びp型高濃度層12e)の平面形状の輪郭は、n型高濃度層12aの輪郭と一致する部分を有するように定められる。このメサ部とn型高濃度層12aとの平面形状の輪郭の一致部分は、メサ部側面とn型高濃度層12aの側面とが互いに連続して基板11表面からメサ部上端のp型高濃度層12eまで到達する壁面を形成する。層間接続配線19dはこの壁面に沿って配置され、これにより、図19の層間接続配線19bが有していたようなn型高濃度層12aの上面に沿う部分を介さずに、水平配線19aとp側電極15bとを接続することができる。
【0029】
例えば、メサ部の平面形状は、図2に示すように、フォトダイオード部12に要求される大きさの円形部分と、当該円形部分とn型高濃度層12aの周との間を橋渡しする矩形部分とを組み合わせた鍵穴形状とすることができる。
【0030】
上述のようにp側電極15bの位置には凸部が形成されるが、これに対応してn側電極15aの位置にも凸部が形成される。例えば、これにより、n側電極15aとp側電極15bとの高さが揃い、これら電極パッドへの外部からの配線がしやすくなる。
【0031】
次に、受光素子30の製造工程を説明する。図3〜図9は、受光素子30の主要な製造工程での模式的な垂直断面図であり、図1に示す直線A−Aに沿った位置での断面を表している。また、図10〜図15は、受光素子30の主要な製造工程での模式的な平面図であり、図10〜図15に示す工程はそれぞれ図3〜図8に示す工程である。
【0032】
まず、結晶成長やドーピングなどにより、厚さ450μm程度の平板状の半絶縁性の基板11上に、厚さ0.5μm程度のn型高濃度層12a、厚さ0.7μmのn型クラッド層12b、厚さ0.8μm程度の吸収層12c、厚さ0.7μm程度のp型クラッド層12d、厚さ0.1μm程度のp型高濃度層12eを順に積層する(図3参照)。
【0033】
基板11は、受光素子30が裏面入射型であることに対応して上述のように光透過性を有する材料で形成される。例えば、上述のように、Fe−InPが用いられる。また、n型高濃度層12aも光透過性を有しており、例えば、不純物濃度が5.0×1018cm−3程度のインジウム燐(InP)などにより形成される。n型クラッド層12bは、例えば、不純物濃度が3.0×1017cm−3程度であり、例えば、組成波長が1.2μm程度のインジウムアルミガリウム砒素(InAlGaAs)などにより形成される。吸収層12cは、不純物濃度が1.0×1015cm−3程度のインジウムガリウム砒素(InGaAs)により形成される。また吸収層12cはInAlGaAs層などで構成することもできる。p型クラッド層12dは、例えば、不純物濃度が3.0×1017cm−3程度であり、例えば、組成波長が1.2μm程度のInAlGaAsなどにより形成される。p型高濃度層12eは、不純物濃度が5.0×1019cm−3程度のInGaAsなどにより形成される。
【0034】
そして、p型高濃度層12e上の2箇所に、四角形のマスク17を形成する(図3及び図10参照)。マスク17の形成位置は具体的には、図1及び図2に示す受光素子30における、n側電極15a及びフォトダイオード部12が形成される部分に配置されるn型高濃度層12aの位置と、p側電極15b下の凸部の位置との2箇所である。マスク17は、例えば、フォトレジストや酸化膜などの材料を用い、フォトリソグラフィ技術により形成される。
【0035】
このマスク17をエッチングマスクとして第1のメサエッチング工程を実行し、マスク17で覆われていない領域のp型高濃度層12eからn型高濃度層12aまでを除去する。これにより、当該領域には基板11表面が露出する。エッチング終了後、マスク17を除去する。図4及び図11はこの第1のメサエッチング工程終了後の状態を示している。
【0036】
第1のメサエッチング工程後、第2のメサエッチング工程を実行する。当該工程では、まず、p型高濃度層12e上にエッチングマスクが形成される。このエッチングマスクは上述のマスク17と同様の手段で形成することができる。当該エッチングマスクは、図1及び図2に示す受光素子30におけるn側電極15a及びp側電極15b下の凸部の形成領域と、フォトダイオード部12の例えば鍵型のメサ部の形成領域とに対応して形成される。
【0037】
さらに第2のメサエッチング工程では、このエッチングマスクで覆われていない領域のp型高濃度層12eからn型クラッド層12bまでをエッチング除去する。エッチング終了後、エッチングマスクを除去する。図5及び図12はこの第2のメサエッチング工程終了後の状態を示している。このようにして、光透過性を有する基板11に光電変換を行うフォトダイオード部12が形成される。具体的には、基板11上に、比較的大きく配置される方形板状のn型高濃度層12aが形成され、さらにその上に、n型クラッド層12b、吸収層12c、p型クラッド層12d及びp型高濃度層12eからなりn型高濃度層12aより小さい面積を有するメサ部が形成される。当該メサ部は概ね円柱状であるが、上述のように平面形状を円形(図12の部分20)の周の一部に矩形(図12の部分21)を付加した鍵穴形状としているので、円柱部分22aの側面から突出した部分22bを有する。当該突出部分22bはn型高濃度層12aの端部まで達し、n型高濃度層12aとメサ部との間に段差無くつながる側面23が形成される。
【0038】
なお、第2のメサエッチング工程により、フォトダイオード部12の他に、n側電極15a及びp側電極15b下の凸部24a,24bも形成される。
【0039】
第2のメサエッチング工程によりフォトダイオード部12等が形成された基板11の表面側に誘電体膜13を形成する(図6及び図13参照)。
【0040】
誘電体膜13は、例えば、0.26μm程度の窒化シリコン(SiN)層と、当該SiN層上に形成される0.3μm程度の酸化シリコン(SiO)層との2層を含んで構成される。
【0041】
フォトリソグラフィ技術を用いて誘電体膜13の一部領域を選択的にエッチング除去し、n型高濃度層12a上の一部領域に、n型高濃度層12aに到達するスルーホール14aを形成し、またp型高濃度層12e上の一部領域に、p型高濃度層12eに到達するスルーホール14bを形成する(図7及び図14参照)。
【0042】
しかる後、金属からなる配線層により、n側電極15a、p側電極15b、電極15c及び配線19(水平配線19a、層間接続配線19c,19d)を形成する(図8及び図15参照)。ここで、層間接続配線19dは、側面23に沿って配置される。これらの電極及び配線は、例えば、蒸着などの方法により形成される。もちろん、他のメッキの方法などを用いて形成してもよい。
【0043】
次に、基板11を、厚さが100μm程度になるまで裏側から研磨する。そして、基板11の裏面に反射防止膜16を形成する(図9参照)。反射防止膜16は、例えば、0.2μm程度のSiN層などにより形成される。
【0044】
以上の工程を経て図1及び図2に示す受光素子30が作られる。ここで、本実施形態に係る受光素子30の構造及び製造工程の理解を補助するため、図18、図19に示した従来の受光素子10の製造工程のうち本実施形態の受光素子30と相違する点を説明する。図16は、従来の受光素子10の模式的な垂直断面図であり、図17は従来の受光素子10の模式的な平面図である。図16及び図17は、図5及び図12に示した受光素子30の製造工程に対応する工程を示している。従来の受光素子10は、n型高濃度層12a上のメサ部が円柱形状(受光素子30の円柱部分22aに相当)のみで、n型高濃度層12aの端部に達する突出部分22bを有さないので、メサ部の側面とn型高濃度層12aの側面との間に段差を有する。その結果、図19に示すように、層間接続配線19bにはn型高濃度層12aの上面に沿う部分が生じる。これに対して、受光素子30は図5、図12に示すように、突出部分の側面がn型高濃度層12aの側面と揃い、一つの連続する側面23を形成する。これにより、層間接続配線19dは水平配線19aと電極15cとの高低差を段差なく直線でつなぐことができる。また、受光素子30と受光素子10との製造工程上の差異は、基本的にフォトダイオード部12のメサ部の形状を定める第2のメサエッチング工程でのエッチングマスクのパターンだけであり、従来の製造工程に特別なプロセスを追加せずに本発明を実施することができる。
【0045】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明に係るフォトダイオード部12は、本実施形態のような、PINフォトダイオードではなく、アバランシェフォトダイオードなどの他の種類のフォトダイオードであってもよい。
【0046】
例えば、フォトダイオード部12はn型クラッド層12b、p型クラッド層12dを有さず、InP層からなるn型高濃度層12a、InGaAs層又はInAlGaAs層からなる吸収層12c及びp型高濃度層12eを積層した構造とすることができる。
【0047】
また、フォトダイオード部12を、一般的な光電変換を行う受光部に置き換えても構わない。すなわち、フォトダイオード部12は光電変換手段の一例にすぎない。さらに、本発明の適用範囲は受光素子に限定されず、発光ダイオードやレーザダイオードなどメサ構造を用いて構成する面発光型の発光素子を含む光半導体素子、及びその他半導体素子一般に適用することができる。
【0048】
なお、本発明に係る各部材の材料は上述のものに限定されない。また、以上の説明において示した具体的な数値は例示であり、本発明に係る受光素子30の構造は、上述の数値に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0049】
11 基板、12 フォトダイオード部、12a n型高濃度層、12b n型クラッド層、12c 吸収層、12d p型クラッド層、12e p型高濃度層、13 誘電体膜、14a,14b スルーホール、15a n側電極、15b p側電極、15c 電極、16 反射防止膜、17 マスク、19 配線、19a 水平配線、19c,19d 層間接続配線、22a 円柱部分、22b 突出部分、23 側面、24a,24b 凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面に積層され第1電圧を印加される下部層、前記下部層の上にメサ型に形成される中間層、及び前記中間層の上に積層され第2電圧を印加される上部層を含む半導体素子と、前記基板表面に積層された配線層から前記上部層に前記第2電圧を供給する層間接続配線と、を有する半導体装置において、
前記中間層の側面及び前記下部層の側面は、互いに連続して前記基板表面から前記上部層まで到達する壁面を形成する部分を有し、
前記層間接続配線は、前記壁面に沿って配置されること、
を特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
当該半導体装置は面入射型受光装置であって、
前記半導体素子は、光電変換を行う吸収層を前記中間層に有した受光部であること、を特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記下部層は第1導電型の半導体層からなり、
前記上部層は前記第1導電型とは異なる第2導電型の半導体層からなること、
を特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置において、
前記半導体素子は、前記下部層側から順に、前記下部層より低い不純物濃度を有する前記第1導電型の下部クラッド層、i型半導体層からなる前記吸収層、及び前記上部層より低い不純物濃度を有する前記第2導電型の上部クラッド層が積層された前記中間層を有したPIN型受光部であること、を特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項3に記載の半導体装置において、
前記基板は、基板裏面から入射した検出対象光を前記基板表面へ透過させる半絶縁性の半導体基板であり、
前記下部層はInP層からなり、
前記上部層及び前記吸収層はInGaAs層又はInAlGaAs層からなること、
を特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項4に記載の半導体装置において、
前記基板は、基板裏面から入射した検出対象光を前記基板表面へ透過させる半絶縁性の半導体基板であり、
前記下部層はInP層からなり、
前記上部層はInGaAs層又はInAlGaAs層からなり、
前記下部クラッド層及び前記上部クラッド層はInAlGaAs層からなり、
前記吸収層はInGaAs層からなること、
を特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−267647(P2010−267647A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115364(P2009−115364)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(301005371)日本オプネクスト株式会社 (311)
【Fターム(参考)】