説明

半導体集積回路、受信モジュール及び受信装置、並びに半導体集積回路の調整方法

【課題】CR積で変化する回路ブロック(例えば、IFローパスフィルタ)の特性を調整する工程を製品検査から削減できる、半導体集積回路、受信モジュール及び受信装置、並びに半導体集積回路の調整方法の提供。
【解決手段】可変抵抗33と、スイッチトキャパシタ32と、可変抵抗33とスイッチトキャパシタ32とのCR積の偏差を検出するRCキャリブレーション回路22と、可変抵抗33及びスイッチトキャパシタ32と同一チップに設けられた可変抵抗33と同じ構成の可変抵抗を持つIFローパスフィルタ18とを備える、半導体集積回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗素子と容量素子とのCR積によって特性が変化する回路ブロックを備える半導体集積回路、受信モジュール及び受信装置、並びに該半導体集積回路の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、アナログフィルタのカットオフ周波数を自動的に調整する手段を備えた半導体集積回路装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、フィルタの周波数特性を調整する自動調整機能付きフィルタ回路が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−298292号公報
【特許文献2】特開2007−300226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
CR積によって特性が変化する回路ブロックをオンチップ化した場合、CR積が製造ばらつき等によってずれてしまうため、その特性を調整する工程が製品検査に必要となり、検査工数が増大する。
【0005】
そこで、本発明は、CR積で変化する回路ブロックの特性を調整する工程を製品検査から削減できる、半導体集積回路、受信モジュール及び受信装置、並びに半導体集積回路の調整方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る半導体集積回路は、
抵抗素子と、
容量素子と、
前記抵抗素子と前記容量素子とのCR積の偏差を検出する検出回路と、
前記抵抗素子及び前記容量素子と同一チップに設けられた回路ブロックと、
前記検出回路により検出された偏差に応じて、前記回路ブロックのCR積を補正する補正回路とを備える、ことを特徴とするものである。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る受信モジュールは、該半導体集積回路を備え、該半導体集積回路に基づくオートキャリブレーション機能を有するものである。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る受信装置は、該受信モジュールと、復調器とを備えるものである。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る半導体集積回路の調整方法は、
抵抗素子と容量素子とのCR積の偏差を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにより検出された偏差に応じて、前記抵抗素子及び前記容量素子と同一チップに設けられた回路ブロックのCR積を補正する補正ステップとを備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、CR積で変化する回路ブロックの特性を調整する工程を製品検査から削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態である高周波受信装置7の構成例を示したブロック図である。
【図2】高周波受信装置7内のチューナ用半導体集積回路2の構成例を示したブロック図である。
【図3】チューナ用半導体集積回路2内のキャリブレーション回路22の構成例を示した回路図である。
【図4】キャリブレーション回路22内のスイッチトキャパシタ回路32の構成例を示した回路図である。
【図5】キャリブレーション回路22内の可変抵抗33の構成例を示した回路図である。
【図6】ビット生成回路72の動作フローの一例である。
【図7】IFポリフェーズフィルタ17の構成例を示した回路図である。
【図8】IFポリフェーズフィルタ17の周波数特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。本発明の一実施形態として高周波受信装置が挙げられる。
【0013】
図1は、高周波受信装置7の構成例を示したブロック図である。高周波受信装置7は、テレビ放送波等の電波を受信するアンテナ1が接続又は搭載されている。高周波受信装置7の具体例として、テレビ、ラジオ、携帯電話等の携帯端末、ゲーム機、コンピュータなどの電子機器が挙げられる。高周波受信装置7は、受信モジュール4と、復調器5と、出力装置6とを備える。
【0014】
受信モジュール4は、アンテナ1からの高周波信号(RF信号)を周波数変換して中間周波信号(IF信号)を生成可能な信号処理装置である。受信モジュール4は、例えば、水晶振動子3及びチューナ用半導体集積回路2が実装されたプリント基板を搭載するチューナである。チューナ用半導体集積回路(以下、「チューナIC」という)2には、水晶振動子3を共振器として使用する発振器が内蔵されている。受信モジュール4は、チューナIC2によってRF信号がダウンコンバートされたIF信号を出力する。復調器5は、受信モジュール4から出力されたIF信号を復調する。出力装置6は、復調器5により復調されて得られた情報を出力する。出力装置6の具体例として、復調器5により復調されて得られた画像を出力するディスプレイ、復調器5により復調されて得られた音声を出力するスピーカなどが挙げられる。
【0015】
図2は、オートキャリブレーション機能を有するチューナIC2の構成例を示したブロック図である。チューナIC2は、発振部と、RF信号処理部と、イメージリジェクションミキサと、IF信号処理部と、キャリブレーション処理部とを一つのICチップ上に備える。
【0016】
発振部は、発振器23と、PLL回路15とを備える。発振器23は、チューナIC2に外付けされた水晶振動子3を共振器として使用し、一定の周波数のクロック信号CLKを生成する。PLL回路15は、発振器23から供給されるクロック信号CLKに基づいて、互いに直交する複素信号対(LO信号)を生成する。
【0017】
RF信号処理部は、可変増幅器11と、バンドパスフィルタ12とを備える。可変増幅器11は、RF信号の増幅率を可変する機能を有する。バンドパスフィルタ12は、可変増幅器11によって増幅されたRF信号が入力される。
【0018】
イメージリジェクションミキサは、ポリフェーズフィルタ13と、Iミキサ14と、Qミキサ16と、ポリフェーズフィルタ17とを備える。ポリフェーズフィルタ13は、RF信号処理部のバンドパスフィルタ12でフィルタ処理されたRF信号が入力される。Iミキサ14は、ポリフェーズフィルタ13から出力された第1の信号とPLL回路15から出力された第1のLO信号とを乗算する。Qミキサ16は、ポリフェーズフィルタ13から出力された第2の信号とPLL回路15から出力された第2のLO信号とを乗算する。ポリフェーズフィルタ17は、Iミキサ14の出力信号とQミキサ16の出力信号に基づいて、IF信号を生成する。
【0019】
IF信号処理部は、ローパスフィルタ18と、ハイパスフィルタ19と、可変増幅器20と、バッファ21とを備える。ローパスフィルタ18は、イメージリジェクションミキサのポリフェーズフィルタ17でフィルタ処理されたIF信号が入力される。ハイパスフィルタ19は、ローパスフィルタ18で処理されたIF信号が入力される。可変増幅器20は、ハイパスフィルタ19で処理されたIF信号の増幅率を可変する機能を有する。バッファ21は、可変増幅器20によって増幅されたRF信号を所定の変換処理をして復調器5(図1参照)に出力する。
【0020】
キャリブレーション処理部は、キャリブレーション回路22を備える。キャリブレーション回路22は、チューナIC2に内蔵されるフィルタのフィルタ特性を自動的に調整する。キャリブレーション回路22は、例えば、IF信号処理部内のIF信号が入力されるIFフィルタのフィルタ特性を調整する。具体的には、ローパスフィルタ18のフィルタ特性を調整してもよいし、ハイパスフィルタ19のフィルタ特性を調整してもよい。
【0021】
次に、IFフィルタのフィルタ特性の調整方法について説明する。
【0022】
図3は、所定の回路ブロックの回路特性を補正するためのキャリブレーション回路22の構成例を示した回路図である。図3には、キャリブレーション回路22によって生成されたデジタルデータのビット信号に基づいて、IFローパスフィルタ18のフィルタ特性を定めるCR積を補正する可変抵抗が例示され、その可変抵抗を含むローパスフィルタ回路37が例示されている。
【0023】
IFフィルタのフィルタ特性であるカットオフ周波数fcは、
fc=1/(2πRC) ・・・(1)
で与えられる。式(1)内のRは、IFフィルタ内の抵抗素子の抵抗値を表し、式(1)内のCは、IFフィルタ内の容量素子の容量値を表し、式(1)内のRCは、IFフィルタのCR積を表す。CR積とは、抵抗素子の抵抗値と容量素子の容量値との積(時定数)である。抵抗素子は、一つでも複数でもよい。容量素子も同様である。
【0024】
プロセスばらつきがあっても、カットオフ周波数fcが一定に保たれるためには、式(1)内のRCを理論値(設計値)に保つ必要がある。
【0025】
図3において、スイッチトキャパシタ回路32の抵抗値Crefは、
Cref=1/(4FclkC) ・・・(2)
で表される。Fclkは、発振器23(図2参照)から供給されるクロック信号CLKのクロック周波数である(例えば、16MHz)。クロック周波数Fclkは、PLL回路15にも供給される。式(2)内のCは、スイッチトキャパシタ回路32内のキャパシタの容量値である。
【0026】
図4は、スイッチトキャパシタ回路32の構成例を示した回路図である。スイッチトキャパシタ回路32は、クロック信号CLKが入力される反転回路45と、クロック信号CLKに従ってオン/オフするスイッチ素子41,44と、反転回路45の出力信号に従ってオン/オフするスイッチ素子42,43と、スイッチ素子41〜44のオン/オフに従って充放電されるキャパシタ46とを備える。
【0027】
また、図3において、可変抵抗33は、その抵抗値Rcalが可変する抵抗素子回路である。可変抵抗33の抵抗値Rcalは、ロジック回路36から出力されるカウンタ値を表すビット信号に従って変化する。
【0028】
図5は、可変抵抗33の構成例を示した回路図である。図5の可変抵抗33は、抵抗値がそれぞれrfix,r, 2r,4r,8r,16r,32r,64rの複数の抵抗素子が並列に配置され、並列に接続される抵抗素子の数がスイッチ素子51等のオン/オフによって可変する回路である。抵抗素子65の抵抗値は、抵抗素子61の抵抗値の8倍であることを表す。他の抵抗素子についても同様である。図3のロジック回路36は、可変抵抗33内のスイッチ素子毎に供給するビット信号によってそれらのスイッチ素子をオン/オフすることにより、可変抵抗33の抵抗値Rcalを変化させることができる。
【0029】
図3において、可変抵抗33の抵抗値Rcalの初期理論値は、可変抵抗33と、スイッチトキャパシタ回路32と、2つの抵抗素子34,35とによって、ホイートストンブリッジの原理が成り立つように設定されている。すなわち、製造ばらつき等がなければ、VCとVRの電位差は0となる。VCは、スイッチトキャパシタ回路32と抵抗素子34との間の接続点の電圧であり、VRは、可変抵抗33と抵抗素子35との間の接続点の電圧である。
【0030】
ホイートストンブリッジの原理から、抵抗値Rcalと抵抗値Crefの関係は、
Cref×R=Rcal×R ・・・(3)
となる。
【0031】
同一ICチップ上では、ホイートストンブリッジ回路のCR積のずれ量とIFフィルタのCR積のずれ量は、プロセスばらつき等によって同じであると考えることができる。したがって、ICチップ上の回路におけるCR積の理論値については、式(2),(3)により、
RcalC=1/(4Fclk) ・・・(4)
という関係が成立する。
【0032】
基準電圧Vrefは、基準電圧生成回路として機能するバンドギャップリファレンス回路31からの供給電圧なので、プロセス、電源電圧、温度などによって、変化しない。そのため、プロセス等のばらつきの影響は、可変抵抗33の抵抗値Rcalとスイッチトキャパシタ回路32の抵抗値Crefに限定される。
【0033】
そして、プロセス等のばらつきが生ずると、VCとVRの電位差が発生し、RcalとCrefの関係も式(3)を満足できなくなる。
【0034】
ここで、ロジック回路36が、VRとVCの電位差を無くすように、可変抵抗33の抵抗値Rcalをビット信号によって変化させる。抵抗値Rcalを変化させることにより、VRとVCの電位差が0となったとき、RcalとCrefの関係は、再び、式(3)を満足できるようになり、式(4)が成立する。
【0035】
ロジック回路36は、式(3)(4)が成立する抵抗値Rcalに変化させるビット信号をキャリブレーションコード(calコード)として決定する。ローパスフィルタ回路37は決定されたキャリブレーションコードを、各可変抵抗に適応させることで、IFフィルタのカットオフ周波数fcを補正する。IFフィルタ内の各可変抵抗素子は、図5の可変抵抗33と同じ構成の可変抵抗で形成されているため(ただし、抵抗値は異なっていてもよい)、ホイートストンブリッジ回路を用いて決定されたキャリブレーションコードを使って、IFフィルタのカットオフ周波数fcを補正できる。
【0036】
例えば、ロジック回路36のビット生成回路72は、クロック信号CLKに同期して増加又は減少した値に対応するビット信号に応じて、図5の可変抵抗33内のスイッチ素子を1ステージずつオンしていく。VRの電位が遷移してVRの電位とVCの電位が反転した時、オペアンプ(又は、コンパレータ)71の出力は反転する。ビット生成回路72は、オペアンプ71の出力が反転すると、1クロック前にオンしたスイッチ素子をオフし、次のスイッチ素子をオンする。可変抵抗33のスイッチ素子の最終ステージまでスイッチ切換えが終わると、ビット生成回路72の動作が止まり、キャリブレーションコードが決定される。
【0037】
すなわち、ビット生成回路72によって生成されたビット信号は、可変抵抗33とIFフィルタ内の可変抵抗のどちらにも供給され、ビット生成回路72が動いている間は、可変抵抗33もIFフィルタ内の可変抵抗も同時に動く。ビット生成回路72は、可変抵抗33とIFフィルタ内の可変抵抗の両方のステージを、例えば抵抗値の低いステージから順番に、オン/オフ切り替えする。全てのステージの切り替えが終わると、ビット生成回路72の動作が止まる。
【0038】
図6は、ビット生成回路72の動作フローの一例である。プロセスばらつき等により、フィルタの抵抗値と容量値にずれが発生すると(ステップS10)、フィルタのカットオフ周波数fcは、1/(2πRC)で与えられるので、カットオフ周波数fcにずれが発生する。キャリブレーション回路22のビット生成回路72は、オペアンプ71によりモニタされたVRとVCを比較する(ステップS20)。
【0039】
ステップS20においてVCがVRよりも高い場合には、ビット生成回路72は、可変抵抗33の第1ステージのスイッチ素子51(図5参照)をオンするビット信号を、可変抵抗33に供給する(ステップS30)。可変抵抗33の第1ステージのスイッチ素子51がオンすることにより、抵抗素子61と62のみが並列接続されるため、可変抵抗33の抵抗値Rcalは減少し、VRは上昇する。一方、可変抵抗33に供給されるビット信号はIFフィルタ内の可変抵抗にも供給されるため、その供給されるビット信号に従って、IFフィルタ内の可変抵抗の第1ステージのスイッチ素子もオンする。これにより、IFフィルタ内の可変抵抗の抵抗値も、減少する。
【0040】
一方、ステップS20においてVRがVCよりも高い場合には、オペアンプ71の出力信号に従って、ビット生成回路72の動作は止まる(ステップS80)。この場合(ステップS20からステップS80に移行した場合)、可変抵抗33の抵抗値Rcal及びIFフィルタ内の可変抵抗の抵抗値は、共に、初期値のままである。
【0041】
ビット生成回路72は、ステップS30の処理後、再び、オペアンプ71によりモニタされたVRとVCを比較する(ステップS40)。
【0042】
ステップS40においてVCがVRよりも高い場合には、ビット生成回路72は、可変抵抗33の次のステージのスイッチ素子(例えば、第1ステージよりも抵抗値の高い第2ステージのスイッチ素子52)をオンするビット信号を、可変抵抗33に供給する(ステップS50)。可変抵抗33の第2ステージのスイッチ素子52もオンすることにより、抵抗素子61と62と63のみが並列接続されるため、可変抵抗33の抵抗値Rcalは更に減少し、VRは更に上昇する。このとき、上記同様に、IFフィルタ内の可変抵抗の第2ステージのスイッチ素子もオンするため、IFフィルタ内の可変抵抗の抵抗値も、更に減少する。
【0043】
一方、ステップS40においてVRがVCよりも高い場合には、ビット信号生成回路72は、可変抵抗33の前のステージのスイッチ素子(例えば、第1ステージのスイッチ素子51)をオフにし、且つ可変抵抗33の次のステージのスイッチ素子(例えば、第1ステージよりも抵抗値の高い第2ステージのスイッチ素子52)をオンするビット信号を、可変抵抗33に供給する(ステップS60)。可変抵抗33の第1ステージのスイッチ素子51がオフし第2ステージのスイッチ素子52がオンすると、抵抗素子61と63のみが並列接続されることで、可変抵抗33の抵抗値Rcalが定まる。このとき、IFフィルタ内の可変抵抗の第1ステージのスイッチ素子がオフし、第2ステージのスイッチ素子がオンすることで、IFフィルタ内の可変抵抗の抵抗値も定まる。
【0044】
ステップS70において、ビット生成回路72は、次のステージがある場合には、ステップS40の処理を行い、次のステージがない場合には、その動作が止まる(ステップS80)。
【0045】
ステップS80においてビット生成回路72の動作が止まったときに供給されているビット信号が、キャリブレーションコードに相当する。
【0046】
このように、ビット生成回路72は、オペアンプ71によりモニタされたVRとVCとの差が所定値以下になるまで、ビット信号を変更することにより可変抵抗33の抵抗値Rcalを変化させる。すなわち、ビット生成回路72は、可変抵抗33の抵抗値Rcalがフィルタの容量値のずれを補正する値になるように、キャリブレーションコードを生成する。ローパスフィルタ回路37は、生成されたキャリブレーションコードに従って、フィルタ内の可変抵抗素子の抵抗値を変化させることにより、フィルタ内の容量素子の容量値のばらつきを相殺して、フィルタのカットオフ周波数fcを補正する。
【0047】
したがって、自動的にIFフィルタのカットオフ周波数fcのずれが補正されるため、プロセスばらつきがあっても、個々のICのIFフィルタのカットオフ周波数fcの調整工程が不要になり、検査工程を削減できる。また、温度ばらつきや電源電圧ばらつきがあっても、同様に補正できる。CR積は温度によってもばらついてしまうが、定期的にキャリブレーション回路22を動作させることで、抵抗値と容量値の補正を行い、温度変化によるCR積の変化を補正できる。
【0048】
また、キャリブレーション回路22は、IFフィルタに限らず、イメージリジェクションミキサ内のポリフェーズフィルタ(例えば、IFポリフェーズフィルタ17)のフィルタ特性を補正してもよい。
【0049】
図7は、IFポリフェーズフィルタ17の構成例を示した回路図である。図8は、IFポリフェーズフィルタ17の周波数特性図である。
【0050】
イメージリジェクションミキサのイメージリジェクション帯域はIFポリフェーズフィルタの特性によって決められる。ポリフェーズフィルタは、図8に示されるように、負の周波数にノッチを形成する特徴を有するフィルタである。ノッチの周波数は、CR積によってフィルタ特性が変化するIFフィルタと同様に、
f=-1/(2πRC) ・・・(5)
で与えられる。例えば8MHz帯域のアナログテレビ受信機の場合、イメージリジェクションの要求値は、IRR=60dBとなる。これを実現するには、7段のポリフェーズフィルタが必要となる。
【0051】
しかしながら、イメージリジェクション帯域もプロセス及び温度特性によってばらつくので、何ら対策をしない場合、所望の帯域幅よりも広い帯域幅にするために、ポリフェーズフィルタの段数を増やす必要がある。プロセスによって±25%程度ずれると考えた場合、2段以上増やす必要がある。
【0052】
そこで、ノッチの周波数が式(5)で与えられることに着目する。ポリフェーズフィルタもRC=一定であればノッチの周波数がばらつくことは無いため、イメージリジェクション帯域がばらつくことは無い。したがって、上述のIFフィルタの場合と同様に、キャリブレーション回路22によって生成されたキャリブレーションコードを使って、ポリフェーズフィルタ内の可変抵抗素子の抵抗値を変化させることにより、ポリフェーズフィルタ内の容量素子の容量値のばらつきを相殺することができる。これにより、イメージリジェクション帯域のばらつきを抑えることができる。つまり、帯域幅を広げる必要が無くなり、ポリフェーズフィルタの段数も必要最低限で設計できるので、回路面積の削減が可能となる。
【0053】
このように、チューナIC2は、可変抵抗33とスイッチトキャパシタ回路32とのCR積の理論値との偏差を検出する検出回路として、キャリブレーション回路22を備えている。そして、キャリブレーション回路22は、その偏差に対応するキャリブレーションコードを生成するビット生成回路72を有している。また、チューナIC2は、そのキャリブレーションコードに応じて、可変抵抗33とスイッチトキャパシタ回路32と同一チップ上のフィルタのCR積を補正する機能を備えている。したがって、チューナIC2によれば、CR積で変化するフィルタのフィルタ特性を調整する工程を製品検査から削減できる。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形、改良及び置換を加えることができる。
【0055】
例えば、キャリブレーション回路22によって検出されたCR積の偏差に対応するキャリブレーションデータは、フィルタ内の可変容量素子の容量値を変化させることにより、フィルタ内の抵抗素子の抵抗値のばらつきを相殺することで、フィルタのCR積を補正するものでもよい。
【0056】
また、CR積が補正される回路ブロックは、周波数軸を基準に動作するフィルタに限らず、時間軸を基準に動作する遅延回路でもよい。
【符号の説明】
【0057】
2 チューナIC
4 受信モジュール
7 高周波受信装置
17 IFポリフェーズフィルタ
18 IFローパスフィルタ
19 IFハイパスフィルタ
22 RCキャリブレーション回路
31 バンドギャップリファレンス回路
32 スイッチトキャパシタ回路
33 可変抵抗
36 ロジック回路
37 ローパスフィルタ回路
51〜54 スイッチ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗素子と、
容量素子と、
前記抵抗素子と前記容量素子とのCR積の偏差を検出する検出回路と、
前記抵抗素子及び前記容量素子と同一チップに設けられた回路ブロックと、
前記検出回路により検出された偏差に応じて、前記回路ブロックのCR積を補正する補正回路とを備える、半導体集積回路。
【請求項2】
前記補正回路は、前記回路ブロックの抵抗値又は容量値を可変して、前記回路ブロックのCR積を補正する、請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記補正回路は、前記検出回路によりホイートストンブリッジの原理に基づき検出された偏差に応じて、前記回路ブロックのCR積を補正する、請求項1又は2に記載の半導体集積回路。
【請求項4】
前記補正回路は、前記検出回路により検出された偏差に対応するデジタル値に応じて、前記回路ブロックのCR積を補正する、請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体集積回路。
【請求項5】
前記回路ブロックは、フィルタである、請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体集積回路。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の半導体集積回路を備え、該半導体集積回路に基づくオートキャリブレーション機能を有する受信モジュール。
【請求項7】
請求項6に記載の受信モジュールと、復調器とを備える受信装置。
【請求項8】
抵抗素子と容量素子とのCR積の偏差を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにより検出された偏差に応じて、前記抵抗素子及び前記容量素子と同一チップに設けられた回路ブロックのCR積を補正する補正ステップとを備える、半導体集積回路の調整方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−9155(P2013−9155A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140505(P2011−140505)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【出願人】(503153953)エポック・マイクロエレクトロニクス・インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】