説明

卓上切断機

【課題】本発明の課題は、丸鋸部が丸鋸刃の側面に沿う方向に摺動可能な卓上切断機において、小型化を図ると共に、運搬性、操作性の改善を図ることにある。
【解決手段】
丸鋸部を揺動可能に支持する支持部材(8)と、丸鋸刃の側面を、ベース部上面に対して垂直な位置から傾動可能なホルダ(5)と、ホルダからベース部側に延在し丸鋸刃側面に位置するガイドバー(7)とを有し、支持部材をガイドバーに沿って摺動可能とした卓上切断機において、前記支持部材をベース部上方の位置で固定可能にする第1の固定手段(10)と、丸鋸刃を最下方に揺動した状態で、丸鋸部の揺動を固定する第2の固定手段と、前記丸鋸部にスイッチを持つハンドル(26)とサブハンドル(36)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、丸鋸部がベース上面に対して揺動可能であると共に、丸鋸刃の側面に沿う方向に摺動可能な構成をした卓上切断機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の丸鋸部がベース上面に対して揺動可能であると共に丸鋸刃の側面に沿う方向に摺動可能な構成をした卓上切断機は、ベース後方上部のホルダがガイドバーを摺動可能に保持し、ガイドバーの前端部に支持部材、支持部材に丸鋸刃、モータを有する丸鋸部が揺動可能に取付けられた構成をしている。(例えば、特許文献1参照)
また、ホルダに丸鋸部を揺動可能に支持させると共に、ホルダとベース部との間にガイドバーを設け、ベース部とガイドバーが相対的に摺動可能な構成をした卓上切断機がある。(例えば、特許文献2参照)
上記した卓上切断機はベース部に対してホルダが傾動可能となっており、傾動によってベース部上面に対する丸鋸刃側面の角度が傾斜可能な構成をしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭62−11526号公報(図1)
【特許文献2】特開平11−90730号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の卓上切断機は、丸鋸部を前方側(ホルダから離れる方向側)に移動させた際には、工具全体がコンパクトとなるようにガイドバーが摺動するものであるが、丸鋸部を後方側(ホルダ側)に移動させた際には、ガイドバーがホルダより後方側にベース部から後方端部が離れるように突出する(特許文献1)、あるいはホルダがベース部から離れるように移動する(特許文献2)ものであった。
【0005】
このため、ホルダの反ベース側すなわち後方側に壁や物等がある状態では切断作業を行うことができず、狭い場所での作業性が悪いものであった。
【0006】
なお、卓上丸鋸を持ち運ぶ際には、通常丸鋸部を前方側に移動させ工具全体をコンパクト化した状態で持ち運ぶものであるが、この状態で壁や物の近傍にホルダが位置するように卓上丸鋸を設置した際には丸鋸部を後方側に移動させることができず、切断作業を行うことができないものであり、卓上丸鋸の設置の際にはガイドバーやホルダの移動量を考慮する必要があり操作性が悪いものであった。また、上記のように卓上丸鋸を持ち運ぶ際には卓上丸鋸をコンパクト化させる作業が必要があり、操作性が悪いものであった。
【0007】
また、ガイドバーを摺動可能に支持する部分に加わる摺動方向に直交した力が大きく、摺動性が低下する、あるいは摺動性の低下しにくい高価な構成とする必要があるものであった。
【0008】
本発明の目的は、上記欠点を解消し、小型化を図ると共に、作業スペースが小さい、操作性の良い卓上切断機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために本発明は、被加工材を載置可能なベース部と、電動機、電動機の駆動により回動する丸鋸刃、電動機の駆動を制御するスイッチを持つハンドル、及び運搬用のサブハンドルを有する丸鋸部と、丸鋸刃の軸方向と平行な揺動軸を支点として該丸鋸部を所定の最上方位置と、所定の最下方位置との間で揺動可能に支持する支持部材と、丸鋸刃の軸方向と直交すると共に、ベース部上面に対して平行に延びる傾動軸を支点として傾動し、丸鋸刃の側面を、ベース部上面に対して垂直な位置から傾動可能なホルダと、ホルダに固定されると共に、ホルダからベース部側に延在する上下に配列された第1及び第2のガイドバーとを有し、支持部材を前記ガイドバーに沿って摺動可能とした卓上切断機において、支持部材をガイドバーの任意の位置に固定するために支持部材に設けられた第1の固定手段と、丸鋸部を最下方位置に揺動した状態で、丸鋸部の揺動を固定する第2の固定手段とを有し、ホルダを第1及び第2のガイドバーが設けられた側に45°傾動したときに、該ガイドバーはベース部に接触しない高さ位置に配置されると共に、丸鋸部が最上方位置にあるとき及び最下方位置にあるときに第1及び第2のガイドバーは丸鋸部の上端より下方に位置し、更に丸鋸部が最下方位置にあるときに、ハンドルはガイドバーよりも反ホルダ側に位置し、サブハンドルはガイドバーよりも高い位置に位置し且つガイドバーの軸方向とほぼ平行であることに一つの特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、切断作業時にガイドバーがホルダから突出することや、ホルダがベース部から離れるように移動することがなく、製品の小型化を図ることができ、狭い場所等での切断作業が可能となると共に、摺動性及び操作性の向上を図ることができる卓上切断機を提供できるようになる。
【0011】
また、ガイドバーを2本設けると共に、両者を結ぶ仮想線が丸鋸刃側面に対してほぼ平行となるように配置することにより、丸鋸部揺動時に支持部材の摺動部及びホルダのガイドバーを固定する部分に加わる荷重に対する剛性を向上させることができると共に、持ち運び時にガイドバーに加わる荷重に対する剛性を向上させることができるようになる。
【0012】
また、少なくとも2本のガイドバーのホルダと反対側の端面には両者と係合する係合部材が設けられており、支持部材はホルダに当接することで丸鋸部のホルダ側への摺動が規制され、係合部材に当接することでホルダから離れる方向への摺動が規制される構成とすることで、容易に支持部材及び丸鋸部の抜け止めを行うことができるようになる。
【0013】
更に、電動機は丸鋸刃の側面の延長線と交差する部分を有するよう配置され、丸鋸部は電動機の回転力を丸鋸刃に伝達するためのベルト機構を有する構成とすることにより、丸鋸部における丸鋸刃の軸方向の寸法を小さくすることができるようになる。
【0014】
更に、電動機はその軸が丸鋸刃の軸方向とほぼ平行となるように配置されている構成とすることによって、丸鋸部及び卓上切断機本体の高さ方向寸法を小さくすることができるようになる。
【0015】
また、ガイドバーを2本とすると共に、支持部材のガイドバー外周部と当接可能な摺動部の少なくとも一方を、支持部材に対してガイドバーの径方向に移動可能とすることによって、一方の摺動部をガイドバーの径方向に移動させた際に他方の摺動部を支点と丸鋸部が回動し、これによりホルダに対する丸鋸刃の直角度を微調整することができるようになる。
【0016】
更に、一方のガイドバー外周部と当接可能な摺動部をボールベアリングとし、他方のガイドバー外周部と当接可能な摺動部をガイドバーの径方向に移動可能な摺動部とすると共に、他方のガイドバー外周部と当接可能な固定手段を支持部材に設けた構成とすることによって、支持部材におけるガイドバーの軸方向寸法を必要最低限なボールベアリングの軸方向寸法内で収めることができ、丸鋸部の摺動量の確保及び小型化を図ることができる。
【0017】
また、支持部材は丸鋸刃側面の延長線上にレーザーを照射可能なレーザー照射装置を支持する構成とすることにより、切断前において切断部の位置確認を容易に行うことができるようになり、操作性を向上させることができるようになる。
【0018】
更に、ホルダに傾動軸とほぼ直交する方向に移動可能な操作部材を設け、操作部材の操作によってベース部に対するホルダの傾動の規制・解除を可能とした構成とすることによって、作業時にホルダ後方のスペースを気にする必要がないと共に、ホルダ後方に回らずとも傾動の規制・解除を行うことができ操作性の向上を図ることができる。また、卓上切断機における傾動軸の軸方向の寸法を小さくすることができるようになる。
【0019】
更に、丸鋸部は切断作業時に発生する切粉を排出する切粉排出口と、切粉排出口に着脱可能に取付けられる集塵バックとを有し、集塵バックの端面はガイドバーの軸方向において最もベース部から離れる部分よりもベース部側に位置している構成とすることによって、壁際での作業時等に集塵バックによって卓上切断機の設置場所が制限されてしまうことがなく、作業性の向上を図ることができるようになる。
【0020】
更に、丸鋸部は持運び用のサブハンドルを有する構成とすることによって、持ち運び時の操作性を向上させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明卓上丸鋸の一実施形態を示す正面図。
【図2】図1の右側面図。
【図3】本発明卓上丸鋸を構成する支持部材の一実施形態を示す図1のB−B線断面図。
【図4】本発明卓上丸鋸における右側傾斜状態を示す図1の右側面図。
【図5】本発明卓上丸鋸における左側傾斜状態を示す図1の右側面図。
【図6】図1に示す卓上丸鋸の一動作状態を示す正面図。
【図7】図1に示す卓上丸鋸の平面図。
【図8】図1のA−A線断面図。
【図9】本発明卓上丸鋸の他の実施形態を示す正面図。
【図10】図9の要部拡大左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明卓上切断機の一実施形態を図1〜図8を用いて以下説明する。以下、卓上切断機を卓上丸鋸として説明する。
【0023】
図に示す本発明卓上丸鋸は、被加工材35を載置可能なベース部1、2と、電動機であるモータ21を収納し、モータ21の駆動により回動する丸鋸刃14を回動可能に支持する丸鋸部12と、丸鋸刃14の軸方向とほぼ平行な揺動軸11により丸鋸部12を揺動可能に支持する支持部材8とを有し、ベース部1、2上面に対する丸鋸刃14側面の角度を変更可能な構成をしている。
【0024】
ベース部は床面等に載置可能なベース1と、ベース1に埋設されベース1上面とほぼ面一となる上面を有し、上面に直交する回動軸を介して回動可能にベース1と連結されたターンテーブル2を有する構成をしている。作業時には、ベース部であるベース1及びターンテーブル2に被加工材35が載置可能となっている。
【0025】
ベース1には上面とほぼ直交する押さえ面3a(図1に示す右側端面)を有する一対のフェンス3が設けられており、断面が直角形状をした図1に示すような被加工材35を切断加工する際にはフェンス3の押さえ面3aに被切断材35の一面を当接させた状態で切断作業を行うことにより、安定した切断作業を行うことができるようにしている。ターンテーブル2をベース1に対して回動させると、ターンテーブル2と連結されたホルダ5、ガイド部7、支持部材8及び丸鋸部12のフェンス3に対する位置が変化し、これによって、フェンス3の押さえ面3aと丸鋸刃14側面との角度が変化することとなり、フェンス3に当接された被加工材35を様々な角度で切断加工行うことができるようになっている。
【0026】
図1に示すようにターンテーブル2の後方側(図1に示す左側)端部付近には、上方に立設するホルダ5が丸鋸刃14側面及びターンテーブル2上面とほぼ平行に延びた傾動軸4を介して接続されている。この傾動軸4を支点としてホルダ5はターンテーブル2に対して傾動可能となっている(図4及び図5)。
【0027】
また、ターンテーブル2の後方側端部には上方に突出した突出部2aが設けられ、この突出部2aにホルダ5に設けられた傾動規制手段を構成するクランプレバー6が押接されることでベース1に対するターンテーブル2の傾動が規制(固定)される。このように、クランプレバー6の操作によってホルダ5とターンテーブル2との傾動を固定・解除可能となっている。なお、図示しないがターンテーブル2の突出部分には傾動軸4を支点とした円弧状の長穴が設けられており、長穴内にホルダ5に取付けられたクランプレバー6の軸部が位置する構成となっている。
【0028】
ホルダ5の上端部付近には、丸鋸刃14の側面及びベース部1の上面にほぼ平行に配列された穴部5cが2個形成されている(図6)。
【0029】
ホルダ5の穴部5cには、ほぼ同径あるいは若干大径のパイプ材からなる硬質のガイドバー7が挿入されている。本発明卓上丸鋸においては、ホルダ5に対するガイドバー7の抜け及び回動を防止するためにホルダ5に穴部5c内に突出可能な固定手段5dが設けられている(図6)。
【0030】
ホルダ5の穴部5c内に挿入される本発明ガイド部である2本のガイドバー7はほぼ同じ長さ寸法のものであり、長さ寸法はターンテーブル2の長手方向よりも短いものである。
【0031】
ガイドバー7の前方(図1に示す右側)端部には、丸鋸刃14の側面及びベース部1の上面にほぼ平行に配列された2個の穴部9aが設けられた係合部材であるサポート9が取付けられている。サポート9は穴部9a内に突出可能な固定手段9bが設けられており、固定手段9bによってガイドバー7に対するサポート9の抜け止め及びガイドバー7の回動を防止している。
【0032】
ガイドバー7上であってホルダ5とサポート9との間には、丸鋸部12の揺動軸11を支持する支持部材8が設けられている。支持部材8にはガイドバー7とほぼ同心の穴部8aが2個形成されており、一方の穴部8a(図3の下側穴部8a)内にはガイドバー7の外径寸法とほぼ同寸法の内径を有し、ガイドバー7外径部に当接可能な一方の摺動部であるボールベアリング8bが設けられている。他方の穴部8a(図3の上側穴部8a)内にはガイドバー7との間に他方の摺動部である2個の移動部材8cが設けられており、この移動部材8cは支持部材8に螺合したボルト8dの先端によって穴部8a内からの抜け落ちが防止されていると共に、ボルト8dの先端の押圧によって移動調整可能となっている。
【0033】
また、支持部材8には上側穴部8a内に突出可能な固定手段であるノブ10が設けられており、ノブ10の先端がガイドバー7外径部を押圧することによって、ガイドバー7上で支持部材8の位置を固定可能となっている。
【0034】
ボルト8dの操作によって移動部材8cの位置を調整することにより、穴部8a内におけるガイドバー7の位置を調整することができる。すなわち、2個の移動部材8cを図3に示す左側方向に移動させれば支持部材8は下方のガイドバー7を支点として図示時計回りに回動し、これに伴って丸鋸部12及び丸鋸刃14もガイドバー7を支点として図示時計回りに回動することとなる。このように一方のガイドバー7を支点として支持部材8を回動調整可能な構成とすることによって、ベース1上面に対する丸鋸刃14側面の角度の微調整を行うことができるようにしている。
【0035】
なお、支持部材8の穴部8aを有する部分の穴部8aの軸方向寸法は、一方の摺動部であるボールベアリング8bの軸方向寸法とほぼ同じ寸法で、支持部材8が摺動性を損なわない必要最低限以上の寸法となっており、他方の摺動部である移動部材8cを移動可能として角度微調整機構を備えさせると共に他方の摺動部近辺に固定手段を設けた構成としたことにより、支持部材8の寸法を小さく抑えることができ、卓上丸鋸本体の小型化、丸鋸部12の摺動量の確保を行うことができるようになる。
【0036】
2本のガイドバー7のホルダ5と反対側の端面には両者と係合する係合部材であるサポート9が設けられており、支持部材8はホルダ5に当接することで丸鋸部12のホルダ5側への摺動が規制され、サポート9に当接することでホルダ5から離れる方向への摺動が規制される構成となっており、容易に支持部材8及び丸鋸部12の抜け止めを行うことができるようになっている。
【0037】
なお、本発明卓上丸鋸によれば、ガイドバー7上を摺動するのが支持部材8及び丸鋸部12のみであり、摺動時にボールベアリング8bに加わる摺動方向に直交した力を小さく抑えることができると共に、従来の卓上丸鋸のように摺動位置によってボールベアリング8bに加わる上記した摺動方向に直交する力が増加するものではないため、ボールベアリング8bの小型化を図ることができるものである。
【0038】
図3に示すように支持部材8にはガイドバー7の軸方向と直交する方向に延びる揺動軸11が固定され、揺動軸11を介して支持部材8には丸鋸部12が連結されている(図1、図6)。
【0039】
図1及び図3に示すように支持部材8の揺動軸11下方には凹部8eが設けられ、凹部8e内にはレーザー発振器40が設けられている。レーザー発振器40は、少なくとも丸鋸刃14の軸方向に移動調整可能な構成をしており、丸鋸刃14の側面の延長線上に延びるレーザー光を被加工材35上に照射可能となっている。
【0040】
また、揺動軸11外周にはスプリング13が設けられ、スプリング13によって丸鋸部12はベース部から丸鋸刃14が離れる方向(上方)に揺動するよう付勢されており、通常時には図示しないストッパ機構によって図1に示す最も上方(反ベース部側)に揺動した位置となる。切断加工は、スプリング13の付勢力に抗して丸鋸部12を揺動軸11を支点に下方(ベース部側)に揺動させることにより行なわれる。
【0041】
丸鋸部12を下方(ベース部側)に揺動させると、丸鋸刃14は図示しないターンテーブル2に設けられた溝部内に侵入し、所定量侵入した状態で図示しないストッパ機構によって図6に示すように揺動が停止される。
【0042】
本発明卓上丸鋸は、図6に示すように丸鋸部12をベース部側に揺動させた状態から丸鋸部12をホルダ5側に付勢することで、支持部材8がガイドバー7上を摺動し丸鋸部12及び丸鋸刃14がホルダ5側に移動しながら幅広の被加工材35の切断加工を行うことができる。
【0043】
丸鋸部12は、図8に示すようにギヤ16と回転固定された鋸刃軸部15を回転可能に支持し、鋸刃軸部15上に丸鋸刃14を回転固定されるよう取付け可能な構成をしている。また、ギヤ16と噛合うピニオン17aを有するプーリ軸17と、プーリ軸17と回転固定されたプーリ18と、丸鋸刃14の回転軸となる鋸刃軸部15と平行に且つ丸鋸刃14側面の延長線と交差するように配置されたモータ21と、モータ軸22と回転固定されたプーリ23と、プーリ18及びプーリ23に巻き付きモータ軸22の回転力をプーリ18に伝達するための伝達ベルト24とを有している。本発明ベルト機構は伝達ベルト24、プーリ18、23によって構成される。
【0044】
丸鋸部12のハウジングは、丸鋸刃14の一部外周を覆うと共に、鋸刃軸部15を覆う形状をしたソーカバー20と、ソーカバー20と連結し、鋸刃軸部15、ギヤ16、プーリ軸17、プーリ18、プーリ23等を覆う形状をしたギヤカバー37と、ギヤカバー28と連結しモータ21、モータ軸22を覆う形状をしたモータハウジング25とから構成される。
【0045】
ソーカバー20のホルダ5側部分には開口した切粉排出口20aが形成されており(図6)、図1の破線で示す集塵バック41を切粉排出口20aと接続する、あるいは切粉排出口20aに集塵機と接続したホースを接続することで、切断加工時に発生する切粉の飛散を抑制することができる。
【0046】
なお、最も支持部材8がホルダ5側に位置した際に集塵バック41の後端面が、ガイドバー7の軸方向において最もベース部から離れる部分(図1ではクランプレバー6)よりもベース部側に位置する構成とすることによって、ホルダ5後方に壁や物等の障害物がある状態での作業時においても切断作業に影響をきたすことを抑制することができる。このような構成は、集塵バック41の寸法を考慮することや、集塵バック41が丸鋸刃14の側方に配置されるよう例えば切粉排出口20aが丸鋸刃14に対して角度を持って延びる形状とすることで達成される。
【0047】
また、ソーカバー20内にはソーカバー20より突出する部分の丸鋸刃14外周を覆う形状をした鋸カバー19が回動可能に設けられている。鋸カバー19は図1に示すように丸鋸部12が上方に揺動している状態では、ソーカバー20より突出する部分の丸鋸刃14外周を覆う位置に回動し、図6に示すように丸鋸部12が下方に揺動している状態では図示しないリンク機構によってソーカバー20内に収納され、ソーカバー20より突出する部分の丸鋸刃14外周を露出する位置に回動する。
【0048】
モータハウジング25には丸鋸刃14側面の延長線上に位置するハンドル部26が一体的に設けられており、ハンドル部26にはモータ21の駆動を制御するスイッチ27が設けられている。ハンドル部26を丸鋸刃14側面の延長線上に設けることにより、切断加工時(揺動時)に丸鋸刃14を介して丸鋸部12に加わる反力を丸鋸部12に傾き等が起きることなく受けることができる。
【0049】
また、モータハウジング25には丸鋸部12が図6に示すように最もベース部側に近づくように揺動した際に把持部がガイドバー7の軸方向とほぼ平行となる形状をしたサブハンドル36が設けられていると共に、最下方に揺動した状態で支持部材8と丸鋸部12との揺動を固定する図示しない固定手段が設けられている。前記固定手段を動作させ、サブハンドル36を持って持ち運びを行なえば持ち運びが容易に行うことができるようにしている。
【0050】
図2及び図8に示すように、ガイドバー7は丸鋸刃14の側面に対してほぼ平行に配列されている。すなわち、2本のガイドバー7を結ぶ仮想線が丸鋸刃14側面に対してほぼ平行となるように配置しており、このような構成とすることによって、丸鋸部12の揺動時に支持部材8の摺動部8b、8c及びホルダ5のガイドバー7を固定する部分に加わる荷重に対する剛性を向上させることができると共に、持ち運び時にガイドバー7に加わる荷重に対する剛性を向上させることができるようになる。
【0051】
また、ガイドバー7は、丸鋸部12がベース部上面から最も離れた上方位置に揺動している状態で、丸鋸刃14の回動軸の延長線と近接する位置に位置し、丸鋸部12がベース部上面に最も近づく下方位置に揺動している状態(図6の状態)ではハンドル26との丸鋸刃14の回動軸方向の距離が小さくなる位置に設けられて、ガイドバー7が工具全体の高さ方向寸法に影響をきたさず小型化を阻害するものではないと共に、丸鋸部12が下方位置にある切断加工時の摺動操作をよりスムーズに行うことができるようになっている。
【0052】
モータ21は上述したように丸鋸刃14側面の延長線と交差する部分を有するよう配置され、丸鋸部12はモータ25の回転力を丸鋸刃14に伝達するためのベルト機構を有する構成となっていることによって、丸鋸部12における丸鋸刃14の軸方向の寸法を小さくすることができるようになり、これによって図4に示すようにガイドレバー7側にホルダ5及び丸鋸部12を傾斜させる構成とすることができ、左右方向に45度傾斜可能な構成となっている。
【0053】
なお、図2、図4及び図5に示すように、ホルダ5のベース部側部分には傾斜時の位置決め手段であるストッパ5a、5bが設けられ、ターンテーブル2上面にはストッパ5a、5bの移動軌跡上に位置する傾斜微調整手段であるストッパボルト30、31が垂直方向にねじ嵌合している。ホルダ5を傾動軸4を支点として傾斜させると、所定の傾斜角度でストッパ5a、5bがストッパボルト30、31の各々の頭部に当接し、丸鋸部12の傾動位置が位置決めされる。ストッパボルト30は、ホルダ5が左方向に45度の位置に傾斜したときにストッパ5aに係合するように設けられている。また、ストッパボルト31は、ホルダ5が右方向に45度の位置に傾斜したときにストッパ5bに係合するように設けられている。
【0054】
更に、ターンテーブル2上部には貫通孔2bが設けられると共に、貫通孔2b内には直角時の位置決め手段となるピン32が前後に水平移動自在に設けられており、図2に示すようにホルダ5にはピン32の移動軌跡上に位置するようにストッパボルト33が垂直方向にねじ嵌合している。ホルダ5が直角切断位置になったとき、ストッパボルト33の先端とピン32の外径部が接触する。
【0055】
上記した構成において、丸鋸部12を垂直位置に設定し加工材35を直角切断するには、ピン32を前方へ移動させた状態でホルダ5を傾動させ、ストッパボルト33先端とピン32外径部が接触する位置に傾動した際に、クランプレバー6を締めホルダ5の傾動位置を固定することで行なわれる。
【0056】
被加工材35を切断するには、ハンドル26に設けたスイッチ27を操作し、モータ21を回転駆動させ、のこ刃軸15を介して丸鋸刃14を回転させる。この状態で、ハンドル26を握りスプリング13の付勢力に抗して丸鋸部12を押し下げ、被加工材35を切断する。丸鋸刃14がターンテーブル2の溝部内へ侵入し被加工材35の切断が完了した時点で、丸鋸部12への押し下げ力を解除すると、スプリング13の付勢力によってもとの上限位置に復帰する。角度切りをする場合は、ターンテーブル2を回転し前述した切断方法で加工材35の切断作業を行う。
【0057】
次に、丸鋸部12を左右傾斜させる方法について説明する。クランプレバー6を緩めホルダ5の固定状態を解除してホルダ5を傾動軸4を支点として左または右方向へ傾動させる。この時、モータ21の重心はホルダシャフト4のほぼ真上に位置するため、丸鋸部12を左傾斜、右傾斜のどちら側でもほぼ一定の力で傾斜させることができる。クランプレバー6を緩めホルダ5の固定状態を解除してホルダ5を左方向へ傾動させると、ストッパ5aがストッパボルト30に当接し、丸鋸部12は左傾斜45度の状態に位置決めされる。この状態で、クランプレバー6を締めホルダ5の傾斜位置を固定する。あとは前述した切断方法で加工材35の切断作業を行う。
【0058】
更に、直角切り、角度切り、傾斜切りで幅の広い加工材を切断する場合には、フェンス3面に加工材35を押しつけ固定したあと、ノブ10を緩め、ハンドル26で手前側(図1の右方向)に引くと、丸のこ部ホルダ8、及び丸のこ部12は一体となって移動する。
【0059】
ハンドル26を押し下げ切込みを与えたあと、ホルダ5側に丸鋸部12を摺動させながら切断を行う(図6の状態)。切断終了後、丸鋸部12への押し下げ力を解除すると、スプリング13の付勢力によってもとの上限位置に復帰する。
【0060】
上記したように、スライド、直角、角度、傾斜切り、また、前述した角度切りの切断方法と傾斜切りの方法を組み合わせた複合切断が可能である。
【0061】
次に、本発明卓上丸鋸の他の実施形態を図9及び図10に示す。本実施形態は上記実施形態の傾動規制手段の構成を改良したものであり、他の部分については上記実施形態と同一であるので説明を省略する。
【0062】
図に示すように、ターンテーブル2のホルダ5側端面には上方に突出する上端面が円弧形状をした突出部2aが形成されており、突出部2aの一部分はホルダ5の後端面とホルダ5に設けられた突部28とによって覆われている。傾動軸4の軸方向において突出部2aと突部28との間には移動部材であるスライダー29が配置されている。
【0063】
突部28には図に示すように傾動軸4の軸心延長線上にほぼ向うように、すなわち傾動軸4の径方向に延びた貫通穴28bが形成されており、貫通穴28b内にはクランプボルト6が回動可能に位置して、クランプボルト6にはスライダー29が螺合している。図に示すスライダー29の上端面と突部28の下端との間には、クランプボルト6の外周に配置された付勢手段であるバネ34が配置されており、スライダー29はバネ34によって常に傾動軸4側に付勢されている。
【0064】
突部28のホルダ5後端面及び突出部2aと対向する個所には、傾動軸4側(図示下方)に向うに従ってホルダ5後端面及び突出部2aから離れるように傾斜したテーパー部28aが設けられている。また、図に示すようにスライダー29にもテーパー部28aと面接触可能なようにテーパー部28aとほぼ同様の傾斜角度で形成されたテーパー部29aが形成されている。
【0065】
図9に示す状態は、ターンテーブル2に対してホルダ5の傾動が固定されている状態であるが、図に示す状態では、ターンテーブル2の突出部2aはホルダ5後端面とスライダー29によって傾動軸4の軸方向に挟持され、相対回動不能な状態となっている。詳細には、スライダー29のテーパー部29aと突部28のテーパー部28aとは当接状態にあると共に、バネ34は軸方向に圧縮された状態、クランプボルト6は締め付け状態にあり、スライダー29は突部28と突出部2aとの間に入り込んだ状態にある。
【0066】
この状態から丸鋸部12を左右方向に傾斜させるには、まずクランプボルト6を緩める。
【0067】
この緩め作業によってバネ34の付勢力及び自身の重力によってスライダー29は傾動軸4側(図1の下方)に移動する。
【0068】
上記したスライダー29の移動によってスライダー29とホルダ5後端面とによる突出部2aの挟持は解除され、ターンテーブル2に対するホルダ5の傾動が可能となる。
【0069】
その後、丸鋸部12を把持する等してターンテーブル2に対してホルダ5を任意の角度に傾動させ、傾動位置を保持した状態で再度クランプボルト6を締め付け操作することで、スライダー29がバネ34の付勢力に抗しながらクランプボルト6の軸方向に移動し、両テーパー部28a、29aが接触し、更にスライダー29がクランプボルト6の軸方向に移動することでスライダー29がホルダ5側に突出部2aを押圧するため、突出部2aがスライダー29とホルダ5とで挟持され、ターンテーブル2に対するホルダ5の傾動を固定し丸鋸部12の傾動位置を固定することができる。
【0070】
なお、スライダー29が突出部2aとテーパー面28aとの間に比較的強固に食い込んだ状態となり、クランプボルト6を緩めたとしてもバネ34の付勢力及び自身の重力によって傾動軸4側(図示下方)に移動しなかった場合においても、緩め操作によって上方に突出したクランプボルト6を下方に押し下げればスライダー29を傾動軸4側に移動させ、ターンテーブル2に対してホルダ5を傾動可能な状態とすることができる。
【0071】
また、ホルダ5の傾動固定は、上記したようにスライダー29がクランプボルト6の軸方向に移動することにより行なわれるが、詳細には、スライダー29はクランプボルト6と貫通穴28b間の隙間によって突出部2a側へも移動するものである。また、ホルダ5の後端面と突出部2aとの間に僅かな隙間がある場合には、この隙間が無くなるようにホルダ5が移動や傾くことによりスライダー29とホルダ5後端面とで突出部2aが挟持される。
【0072】
上述したようにホルダ5の傾動固定を解除することで、ホルダ5を傾動軸4を支点として左または右方向へ傾動させることができるものであるが、モータ21の重心はホルダシャフト4のほぼ真上に位置するため、丸鋸部12を左傾斜、右傾斜のどちら側でもほぼ一定の力で傾斜させることができる。クランプボルト6を緩めホルダ5の固定状態を解除してホルダ5を左方向へ傾動させると、ストッパ5aがストッパボルト30に当接し、丸鋸部12は左傾斜45度の状態に位置決めされる。この状態で、クランプボルト6を締めホルダ5の傾斜位置を固定した後には、前述した切断方法で加工材35の切断作業を行うことができる。
【0073】
上記したような構成とすることによって、傾動作業時にホルダ5後方側に手を回り込ます必要がなく、ホルダ5後方に壁や物等がある場合であっても傾動作業を行うことができ、且つ傾動作業時に本体側方後方側に位置せずとも操作部材6に手が届き、傾動作業の操作性を良くすることができる。また、卓上切断機本体を配置させる際には、ホルダ5及び操作部材後方のスペースを考慮する必要が無く、作業スペースを小型化することができるものである。
【0074】
なお、上記実施形態ではガイドバー7を2本で構成したが、1本あるいは3本であっても良い。
【0075】
また、上記実施形態では左右両傾斜の構成としたが片傾斜の構成としても良いものであると共に、上記実施形態では、丸鋸刃14の右側に動力を伝達するギヤ16やプーリ18、23及びガイドバー7を配置させたが、上記実施形態と逆の左側に各部材を配置した構成としても、良いものである。更には、ベース部がターンテーブル2を有さないベース1のみの構成であっても良い。
【符号の説明】
【0076】
1はベース、2はターンテーブル、3はフェンス、4は傾動軸、5はホルダ、6はクランプレバー、7はガイドバー、8は支持部材、8aは穴部、8bはボールベアリング、8cは移動部材、8dはボルト、9はサポート、10はノブ、11は揺動軸、12は丸鋸部、13はスプリング、14は丸鋸刃である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工材を載置可能なベース部と、
電動機、該電動機の駆動により回動する丸鋸刃、前記電動機の駆動を制御するスイッチを持つハンドル、及び運搬用のサブハンドルを有する丸鋸部と、
前記丸鋸刃の軸方向と平行な揺動軸を支点として該丸鋸部を所定の最上方位置と、所定の最下方位置との間で揺動可能に支持する支持部材と、
前記丸鋸刃の軸方向と直交すると共に、前記ベース部上面に対して平行に延びる傾動軸を支点として傾動し、前記丸鋸刃の側面を、前記ベース部上面に対して垂直な位置から傾動可能なホルダと、
前記ホルダに固定されると共に、前記ホルダから前記ベース部側に延在する上下に配列された第1及び第2のガイドバーとを有し、
前記支持部材を前記ガイドバーに沿って摺動可能とした卓上切断機において、
前記支持部材を前記ガイドバーの任意の位置に固定するために前記支持部材に設けられた第1の固定手段と、
前記丸鋸部を最下方位置に揺動した状態で、前記丸鋸部の揺動を固定する第2の固定手段とを有し、
前記ホルダを前記第1及び第2のガイドバーが設けられた側に45°傾動したときに、該ガイドバーは前記ベース部に接触しない高さ位置に配置されると共に、前記丸鋸部が前記最上方位置にあるとき及び前記最下方位置にあるときに前記第1及び第2のガイドバーは前記丸鋸部の上端より下方に位置し、
更に前記丸鋸部が前記最下方位置にあるときに、前記ハンドルは前記ガイドバーよりも反ホルダ側に位置し、前記サブハンドルは前記ガイドバーよりも高い位置に位置し且つ前記ガイドバーの軸方向とほぼ平行であることを特徴とする卓上切断機。
【請求項2】
前記第1及び第2のガイドバーの前記ホルダと反対側の端面には両者と係合する係合部材が設けられており、前記支持部材は前記ホルダに当接することで前記丸鋸部の前記ホルダ側への摺動が規制され、前記係合部材に当接することで前記ホルダから離れる方向への摺動が規制されることを特徴とする請求項1記載の卓上切断機。
【請求項3】
前記ガイドバーは、前記丸鋸部が前記最上方位置にあるときに前記丸鋸刃の回転軸と近接する位置に位置していることを特徴とする請求項1又は2記載の卓上切断機。
【請求項4】
前記丸鋸刃を挟んで一方側に前記第1及び第2のガイドバー、他方側に前記電動機が配置され、
前記ホルダを、前記電動機が設けられた側に45°傾動したときにも、該電動機は、前記ベース部に接触しない高さ位置に配置されることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項記載の卓上切断機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−31924(P2013−31924A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−252414(P2012−252414)
【出願日】平成24年11月16日(2012.11.16)
【分割の表示】特願2012−110143(P2012−110143)の分割
【原出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】