説明

単元未満株取引システム

【課題】単元未満株単位に注文値段を設定でき、かつ、注文受付時間及び注文値段による優先性を本来の証券取引所システムと同様に持たせ、現在の時価に連動した時価±n%範囲で対当する値段での約定を可能とする。
【解決手段】単元未満株注文を受け取り、注文受け付けデータベースに格納する単元未満株注文受付処理手段と、当該単元未満株を時間及び値段の順に並べ、対象株券の時価±n%内で対当値段を算出し、当該対当値段にて単元単位の株が揃った時点で取引を成立させる単元未満株取引処理手段と、取引が成立した売買単位から注文を出した単元未満株の注文先へ配分し、注文受け付けデータベースに格納する単元未満株配分処理手段と、注文受付後の板情報や取引状況を配信する単元未満株取引状況配信処理手段と、対象銘柄の主市場となる証券取引所から現在の時価を取得し、かつ、時価が変化した場合に前記単元未満株取引処理手段を起動させる時価情報取得処理手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単元単位未満の株の単元未満株取引システムに係わり、特に、異なる発注者が有する単元未満株を、異なる注文値段で発注された場合でも、合算してある値段で単元単位以上であれば取引することが可能となるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の単元単位未満の株(以下、単元未満株)を取引する方法は、証券会社において発注者の単元未満株を集計し、集計完了後に証券会社が独自に決めた注文値段を用いて、証券取引所に対して発注していることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−133106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来の取引方法における単元未満株の取引では、発注者の注文を集計する証券会社が独自に決めた注文値段を用いて証券取引所に発注しているため、本来の発注者の意向が反映されることはない。
本発明は、前記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、単元未満株単位に注文値段を設定でき、かつ、注文受付時間及び注文値段による優先性を本来の証券取引所システムと同様に持たせ、現在の時価に連動した時価±n%範囲で対当する値段での約定を可能とする技術を提供することにある。
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面によって明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記の通りである。
(1)発注者が自由に注文値段を設定した単元未満株注文の取引を行う単元未満株取引システムであって、注文受け付けデータベースと、前記単元未満株注文を受け取り、前記注文受け付けデータベースに格納する単元未満株注文受付処理手段と、前記注文受け付けデータベースに格納された単元未満株を読み出し、当該読み出した単元未満株を時間及び値段の順に並べ、対象株券の時価±n%内で対当値段を算出し、当該対当値段にて単元単位の株が揃った時点で取引を成立させる単元未満株取引処理手段と、取引が成立した売買単位から注文を出した単元未満株の注文先へ配分し、前記注文受け付けデータベースに格納する単元未満株配分処理手段と、注文受付後の板情報や取引状況を配信する単元未満株取引状況配信処理手段と、対象銘柄の主市場となる証券取引所から現在の時価を取得し、かつ、時価が変化した場合に前記単元未満株取引処理手段を起動させる時価情報取得処理手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記の通りである。
本発明によれば、単元未満株単位に注文値段を設定でき、かつ、注文受付時間及び注文値段による優先性を本来の証券取引所システムと同様に持たせ、現在の時価に連動した時価±n%範囲で対当する値段での約定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例の単元未満株取引システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例の単元未満株取引システムにおける単元未満株注文受付処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施例の単元未満株取引システムにおける時価情報取得処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施例の単元未満株取引システムにおける単元未満株取引処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施例の単元未満株取引システムにおける単元未満株取引成立後配分処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施例の単元未満株取引システムにおける単元未満株取引状況配信処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
図1は、本発明の実施例の単元未満株取引システムの概略構成を示すブロック図である。
図1において、100は単元未満株の取引を行う単元未満株取引システム、101は単元未満株取引を注文する発注者、102は市場参加への可能性を広げ、かつ、発注者が有利な取引を行えるよう、値段を自由に設定し発注する単元未満株の注文、103は発注者101からの単元未満株の注文を単元未満株取引システム100へ仲介し、かつ、取引状況を単元未満株取引システム100から受信して発注者に通知する証券会社、104は単元未満株取引システム100から取引結果を受信する決済機関、105は単元未満株の対象銘柄の主市場である証券取引所である。
単元未満株取引システム100は、単元未満株取引の注文を受信する単元未満株注文受付処理手段106と、単元未満株取引にて用いる対象銘柄の主市場の時価をリアルタイムで取得する時価情報取得処理手段107と、現在の時価±n%の範囲で注文を集計し、売/買の累計数量が売買単元単位以上になる値段で約定させ、発注者が自由に設定した値段でも約定可能な単元未満株取引を行う単元未満株取引処理手段108と、取引が成立した売買単位から注文を出した単元未満株の注文先へ配分する単元未満株配分処理手段109と、取引状況を配信する単元未満株取引状況配信処理手段110を有する。
【0009】
図2は、本実施例の単元未満株取引システムにおける単元未満株注文受付処理手段106の処理手順を示すフローチャートであり、図2(a)は全体の処理手順を、図2(b)は、図1のステップ201の注文内容チェック処理の処理手順を示す。
以下、図2を用いて、本実施例の単元未満株取引システムにおける単元未満株注文受付処理手段106の処理手順について説明する。
始めに、単元未満株取引の注文内容をチェックする(ステップ201)。
このステップ201では、図2(b)に示すように、発注元情報を確認し(ステップ201)、次に、対象銘柄情報を確認し(ステップ203)、次に、注文数量を確認する(ステップ204)。
ステップ202、ステップ203、およびステップ204において、確認できた場合(各ステップにおいて、YESの場合)には、注文内容が受付可能であることを設定し(ステップ205)、ステップ202、ステップ203、あるいはステップ204の何れかにおいて、確認できない場合(各ステップにおいて、NOの場合)には、注文内容が受付不可であることを設定する(ステップ206)。
次に、注文受付が可能になったかを判定し(ステップ207)、ステップ207での判定結果が、注文内容が受付可能である場合(ステップ207において、YESの場合)には、発注元(証券会社)の受付番号を採番し(ステップ208)、注文内容を注文受付データベースに格納する(ステップ209)。なお、注文受付データベースの内容を、図2(c)に示す。
次に、注文を正常に受け付けたことを発注元に応答し(ステップ210)、単元未満株取引処理手段108を起動する(ステップ211)。
また、ステップ207での判定結果が、注文内容がエラーの場合(ステップ207において、NOの場合)には、注文がエラーとなったことを発注元に応答する(ステップ212)。
【0010】
図3は、本実施例の単元未満株取引システムにおける時価情報取得処理手段107の処理手順を示すフローチャートである。
以下、図3を用いて、本実施例の単元未満株取引システムにおける時価情報取得処理手段107の処理手順について説明する。
始めに、証券取引所105、または情報ベンダから単元未満株取引対象銘柄の時価情報メッセージを受信し(ステップ301)、当該受信した時価情報メッセージを時価情報データベースに格納する(ステップ302)。
次に、今回受信した単元未満株取引対象銘柄の時価と、時価情報データベースに格納されている、前回受信した単元未満株取引対象銘柄の時価とが異なっているか判定し(ステップ303)、ステップ303での判定結果が、今回受信した時価と前回受信した時価とが異なっている場合(ステップ303において、YESの場合)には、単元未満株取引処理手段108を起動する(ステップ304)。
また、ステップ303での判定結果が、今回受信した時価と前回受信した時価とが異なっていない場合(ステップ303において、NOの場合)には、処理を終了する。
【0011】
図4は、本実施例の単元未満株取引システムにおける単元未満株取引処理手段108の処理手順を示すフローチャートである。
以下、図4を用いて、本実施例の単元未満株取引システムにおける単元未満株取引処理手段108の処理手順について説明する。
始めに、注文受け付けデータベース(図2(c)の213)に格納された単元未満株を読み出し、当該読み出した単元未満株を時間及び値段の順に並べ、価格優先条件における対当値段(買い注文の値段と売り注文の値段とが一致する値段)を求め(ステップ401)、ステップ401で求めた対当値段が時価の±n%の範囲内にあるか否かを判定する(ステップ402)。ここで、nは、本実施例の単元未満株取引システムを使用する人が独自に設定する値であり、どれだけ値上がりや値下がりを穏やかにするかによって決定される値である。しかしながら、実際の取引を考えると、n≦100の範囲が妥当な値である。
次に、ステップ401で求めた対当値段が、時価±n%の範囲内にある場合(ステップ402において、YESの場合)には、対当値段以上の高い値段の買い注文の数量合計(a)を算出し(ステップ403)、次に、対当値段以下の安い値段の売り注文の数量合計(b)を算出する(ステップ404)。
【0012】
次に、ステップ403と、ステップ404で求めた(a)及び(b)が共に、単元株数に達しているかを判定し(ステップ405)、ステップ405での判定結果が、(a)及び(b)が共に単元株数に達している場合(ステップ405において、YESの場合)には、約定数量を下記(1)式で求める(ステップ406)。
単元単位数(小数点以下切捨て)=((a)あるいは(b)の小さい方の値)÷単元単位
約定数量=単元単位数×単元単位
・・・・・・・・・・・・・・ (1)
次に、ステップ406で求めた約定数量に従い、各単元未満株取引注文への配分を行う単元未満株配分処理手段109を起動し(ステップ407)、その後、取引状況の配信を行う単元未満株取引状況配信処理手段110を起動する(ステップ408)。
なお、ステップ401で求めた対当値段が、時価±n%の範囲内にない場合(ステップ402において、NOの場合)にも、取引状況の配信を行う単元未満株取引状況配信処理手段110を起動する(ステップ408)
【0013】
図5は、本実施例の単元未満株取引システムにおける単元未満株取引成立後配分処理手段109の処理手順を示すフローチャートである。
以下、図5を用いて、本実施例の単元未満株取引システムにおける単元未満株取引成立後配分処理手段109の処理手順について説明する。
始めに、取引値段(対当値段)より安い売り注文に対して、注文受付日付および注文受付時刻の早い順に配分数量を割り当て、注文受付データベースに格納する(ステップ501)。
次に、証券会社103を介して、ステップ501で配分した売り注文の発注元の発注者101に対して、注文毎の配分結果を通知する(ステップ502)。
次に、取引値段(対当値段)より高い買い注文に対して、注文受付日付および時刻の早い順に配分数量を割り当て、注文受付データベースに格納する(ステップ503)。
最後に、証券会社103を介して、ステップ503で配分した配分した買い注文の発注元の発注者101に対して、注文毎の配分結果を通知する(ステップ504)。
また、決済機関104は、単元未満株取引システム100から取引結果を受信し、決済する。
【0014】
図6は、本発明の実施例の単元未満株取引システムにおける単元未満株取引状況配信処理手段110の処理手順を示すフローチャートである。
以下、図6を用いて、本実施例の単元未満株取引システムにおける単元未満株取引状況配信処理手段110の処理手順について説明する。
始めに、価格優先条件における対当値段(買い注文の値段と売り注文の値段とが一致する値段)を求め(ステップ601)、ステップ601で求めた対当値段が時価の±n%の範囲内にあるか否かを判定する(ステップ602)。
ステップ602での判断結果が、ステップ601で求めた対当値段が時価±n%の範囲内の場合(ステップ602において、YESの場合)には、注文受付データベースから対当値段以上の高い値段の買い注文の数量合計(a)を算出し(ステップ603)、次に、注文受付データベースから対当値段以下の安い値段の売り注文の数量合計(b)を算出し(ステップ604)、最後に、時価、対当値段、買い注文の数量合計(a)、および、売り注文の数量合計(b)を、証券会社103を介して発注者101に配信する(ステップ605)。
また、ステップ602での判断結果が、求めた対当値段が時価±n%の範囲内でない場合(ステップ602でNOの場合)には、時価、最も安い売り注文の値段と注文数量、最も高い買い注文の値段と注文数量を、証券会社103を介して発注者101に配信する(ステップ606)。
【0015】
以上説明したように、本実施例によれば、単元未満株という比較的安い価格での株取引ができ、証券取引市場の流動性を高め、多くの人(証券会社、資金運用会社、投資家など)の市場参加への可能性を広げることが可能となる。
また、単元未満株に自由な注文値段を設定し取引とすることができ、単元未満株取引の発注者にとって有利な取引が可能となる。
また、単元未満株の取引が現在の時価に連動した時価で約定でき、主市場との連動性を保つことが可能となる。
以上、本発明者によってなされた発明を、前記実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0016】
100 単元未満株取引システム
101 発注者
102 注文
103 証券会社
104 決済機関
105 証券取引所
106 単元未満株注文受付処理手段
107 時価情報取得処理手段
108 単元未満株取引処理手段
109 単元未満株配分取引成立後処理手段
110 単元未満株取引状況配信処理手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発注者が自由に注文値段を設定した単元未満株注文の取引を行う単元未満株取引システムであって、
注文受け付けデータベースと、
前記単元未満株注文を受け取り、前記注文受け付けデータベースに格納する単元未満株注文受付処理手段と、
前記注文受け付けデータベースに格納された単元未満株を読み出し、当該読み出した単元未満株を時間及び値段の順に並べ、対象株券の時価±n%内で対当値段を算出し、当該対当値段にて単元単位の株が揃った時点で取引を成立させる単元未満株取引処理手段と、
取引が成立した売買単位から注文を出した単元未満株の注文先へ配分し、前記注文受け付けデータベースに格納する単元未満株配分処理手段と、
注文受付後の板情報や取引状況を配信する単元未満株取引状況配信処理手段と、
対象銘柄の主市場となる証券取引所から現在の時価を取得し、かつ、時価が変化した場合に前記単元未満株取引処理手段を起動させる時価情報取得処理手段とを備えることを特徴とする単元未満株取引システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−14087(P2011−14087A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159921(P2009−159921)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(391002409)株式会社 日立システムアンドサービス (205)