説明

単動形方向切換弁

【課題】単動形方向切換弁の復帰ばねによる弁棒の復帰動作がポペット弁部における排気ポート側の側面付近に発生する低圧部により不安定化するのを抑制する簡単な手段を提供する。
【解決手段】複数のポートが連通する弁室内に弁棒が収容され、該弁棒は、供給弁座39aと排気弁座39bとの間に配置された円形のポペット弁部37を有し、該ポペット弁部37の側面37bには環状の突壁45が形成され、該突壁45の外周面45aは、上記弁室の軸線Lと平行に延びる円筒面45a′と、該円筒面45a′の基端部を上記ポペット弁部37の側面37bになだらかに連通させる傾斜面45a″とを有し、上記円筒面45a′の直径は、上記ポペット弁部37の直径より小さいが上記弁棒の括れ部36の直径より大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイロット流体圧等によって駆動され、復帰ばねの付勢力で復帰する単動形方向切換弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4に例示するような単動形方向切換弁は、例えば、特許文献1における複合弁を構成するものとして、従来から知られているものである。
この方向切換弁は、内部に弁室11を有する弁ボディ10を備え、該弁ボディ10内の該弁室11の両端の開口部が、蓋部材12及びカバー13で気密に閉鎖され、上記弁室11内には、軸線L方向に駆動される弁棒30が配設され、また、上記弁室11には、上記軸線L方向と直交する方向に開口する供給ポート19、出力ポート20及び排気ポート21が、該弁室11の一端側から他端側に向けて順次配置されて該弁室11に連通し、上記供給ポート19と出力ポート20との間、及び出力ポート20と排気ポート21との間には、該弁室11を区画する区画壁15,16が設けられ、上記区画壁15と上記蓋部材12との間、及び上記区画壁16とカバー13との間に、弁棒30の軸線L方向の移動をガイドする複数の通孔を備えたリテーナ27,28が配設されている。
【0003】
上記弁室11内に上記リテーナ27,28により軸線L方向に摺動自在に支持された上記弁棒30は、その軸線L方向両端に設けられて上記リテーナ27,28の内面にガイドされるガイド部31,32と、両ガイド部31,32間に括れ部35,36を介して配設された円板状のポペット弁部37とを備えている。上記ポペット弁部37は、その左右両側面37a,37bに弁シート部38a,38bを備えたポペット形のもので、それぞれの弁シート部38a,38bを、上記両リテーナ27,28の対向端面に形成した供給弁座39a及び排気弁座39bに対向させている。
【0004】
上記方向切換弁は、パイロット流体圧で駆動される単動形のもので、上記蓋部材12とリテーナ27と弁棒30の一端のガイド部31の端面とにより形成される空間をパイロット圧力室40とし、該パイロット圧力室40を図示しないパイロット弁を介してパイロット流体圧源に連通させ、一方、弁棒30の他方のガイド部32と前記カバー13との間には、パイロット圧力室40の流体圧力を排出したときに弁棒30を復帰位置に戻すための付勢力を発生する復帰ばね41を介装している。
【0005】
上記構成を有する単動形方向切換弁は、パイロットエアがパイロット圧力室40に供給されると、弁棒30がその一方のガイド部31の端面に作用するパイロットエア圧力により駆動されて、図4において右側に移動し、ポペット弁部37の弁シート部38aが供給弁座39aから離間してそれらの間の流路を大きく開くと共に、弁シート部38bが排気弁座39bに圧接して該弁座39bを閉じ、その結果、供給ポート19からの圧縮空気が出力ポート20を通して所要の機器に出力される。
また、パイロット圧力室40のパイロットエアが排出されると、復帰ばね41の付勢力で弁棒30が上記切換位置から図の左側に向けて移動し、ポペット弁部37の弁シート部38aが供給弁座39aに圧接して該弁座39aを閉じると共に、弁シート部38bが排気弁座39bから離間してそれらの間の流路を開き、その結果、出力ポート20側からの圧縮空気が排気ポート21を通して外部に排出される。
【0006】
このような単動形方向切換弁において、パイロット圧力室40のパイロットエアが排出されて、復帰ばね41の付勢力でポペット弁部37の弁シート部38bが排気弁座39bから離間する初期段階で、出力ポート20側から圧力の高い圧縮空気が、矢印Aで示すように、排気弁座39bと弁シート部38bとの間の隙間を通して括れ部36の周囲の空間に向けて流入する。このように、上記圧縮空気が上記隙間から弁棒の中心側に向かって高速で流入すると、高速の空気流により、ポペット弁部37における排気ポート21側の側面37b付近の空気が誘導されて流出し、結果的に該側面37b付近に低圧部が発生して、その圧力の低下の度合いが大きい場合にはポペット弁部37を復帰ばね41の付勢力に抗して押し戻すことがあり、その結果、復帰ばね41の付勢力による弁棒30の切換動作が不安定になる。
【0007】
上述した切換動作の不安定さは、例えば、復帰ばね41の付勢力を高めることによっても改善できるが、それに伴って、パイロット圧力室40に供給するパイロットエアの流体圧を高めるとか、パイロット圧力室40における弁棒30に対する受圧面積を高めるなどの対応策を考慮する必要があり、そのような対応策は方向切換弁自体の構造や設計等に大きな影響を及ぼすので、ポペット弁部37における排気ポート21側の側面37b付近に低圧部が発生するのを抑制できる簡単な手段を見出すのが最適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−95818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の技術的課題は、単動形方向切換弁における上記復帰ばねによる弁棒の復帰動作を安定的にするための簡単な手段を提供することにある。
更に具体的な本発明の技術的課題は、高速の空気流に誘導されてポペット弁部における排気ポート側の側面付近に低圧部が発生するのを抑制するための簡単な手段を備えた単動形方向切換弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明によれば、供給ポート、出力ポート及び排気ポートを備えた弁ボディと、該弁ボディの内部に上記ポートに連通するように形成された弁室と、該弁室内に該弁室の軸線方向に摺動自在に収容された弁棒と、該弁棒を駆動する切換駆動機構及び復帰ばねとを有し、上記弁室には、上記供給ポートと上記出力ポートとを結ぶ流路を取り囲む供給弁座と、上記出力ポートと上記排気ポートとを結ぶ流路を取り囲む排気弁座とが、上記軸線方向の互いに相対する位置に形成され、上記弁棒は、上記供給弁座と上記排気弁座との間に配置された円形のポペット弁部と、該ポペット弁部の左右の側面に連なる括れ部とを有し、上記ポペット弁部の上記左右の側面は上記軸線に垂直をなし、該左右の側面には、上記供給弁座及び上記排気弁座に接離する環状の弁シート部が形成され、上記左右の側面のうち少なくとも上記排気弁座側を向く側面には、上記軸線方向に突出する環状の突壁が該ポペット弁部と一体に形成され、上記突壁の外周面は、上記軸線と平行に延びる円筒面と、該円筒面の基端部を上記ポペット弁部の側面になだらかに連通させる傾斜面とを有し、上記円筒面の直径は、上記ポペット弁部の直径より小さいが上記弁棒の括れ部の直径より大きいことを特徴とする単動形方向切換弁が提供される。
【0011】
本発明において好ましくは、上記突壁の高さが、上記ポペット弁部が該突壁側に位置する一方の弁座から離れて他方の弁座に当接しているとき該突壁が上記一方の弁座の内孔から完全に抜け出す高さであり、また該突壁の高さは、該突壁が上記一方の弁座の内孔内に嵌合しているときに該突壁の円筒面と上記内孔の内周面との間に形成される環状空間の幅より大きいことである。
また、本発明においては、上記傾斜面が上記弁シート部より内側の位置で上記ポペット弁部の側面に連なっていることが望ましい。
【0012】
本発明の具体的な構成態様によれば、上記弁ボディの内部に、上記流路の一部を形成する通孔を側面に備えた筒状の一対のリテーナが上記軸線に沿って設けられ、該リテーナの相対する端部に上記供給弁座と排気弁座とが形成され、該リテーナの内部に上記弁棒が収容されると共に、上記一対のリテーナの相対する端部間に上記ポペット弁部が配置されている。
【0013】
上述した本発明の単動形方向切換弁によれば、復帰ばねの付勢力でポペット弁部の弁シート部が排気弁座から離間を開始する段階で、出力ポート側の圧力の高い圧縮空気が排気弁座と弁シート部との間の間隙を通して弁室の中心に向かって高速で流入するとき、空気流の向きがポペット弁部の側面の上記突壁により軸線L方向に変更され、ポペット弁部から離れるように流れるので、前記既知の単動形方向切換弁のようにポペット弁部の排気ポート側面付近に低圧部が発生することはなく、弁棒の切換動作が不安定になるという問題は解決される。
【発明の効果】
【0014】
以上に詳述したように、本発明によれば、単動形方向切換弁の復帰ばねによる弁棒の復帰動作が場合によって不安定化するという問題を、ポペット弁部の排気ポート側面の周辺に環状の突壁を設けるという簡単な手段で解決し、復帰ばねの付勢力を高めるなどの不利益な対応策を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る単動形方向切換弁の実施例の断面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】環状の突壁の変形例を示す要部断面図である。
【図4】既知の単動形方向切換弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明に係る単動方向切換弁をパイロット式の切換弁として構成した実施例を示している。このパイロット式単動方向切換弁は、図4に示す既知の単動方向切換弁と比較して、弁棒30におけるポペット弁部37に関連する構成を異にするもので、その他の構成は実質的に図4の単動方向切換弁と同じである。そのため、図1においては、図4に示す方向切換弁の各部と同一又は対応する部分に図4と同じ符号を付しているが、ここでは、本発明に係る単動方向切換弁の構成を改めて詳細に説明する。
【0017】
図1に示す単動方向切換弁は、弁ボディ10の内部に円形孔状をした弁室11を有している。上記弁室11の軸線L方向の一端の開口部11aは、上記弁ボディ10の一端にOリング12aを介して気密に固定した蓋部材12により閉鎖され、また、上記弁室11の軸線L方向の他端側の開口部11bは、上記弁ボディ10の他端にOリング13aを介して気密に固定したカバー13により閉鎖されている。
【0018】
上記弁室11内には、弁棒30が軸線L方向に摺動自在に内挿されている。また、上記弁室11には、上記弁ボディ10の側面から上記軸線Lと直交する方向に開設された供給ポート19、出力ポート20及び排気ポート21が連通し、該弁室11の内周面には、上記供給ポート19が連通する位置と上記出力ポート20が連通する位置との間、及び、上記出力ポート20が連通する位置と上記排気ポート21が連通する位置との間に、上記弁室11の中心側に向けて張り出す環状の区画壁15,16が設けられている。上記供給ポート19と出力ポート20と排気ポート21とは、上記弁室11の一端の開口部11a側から他端の開口部11b側に向けて上述した順番に並んでいる。
【0019】
上記弁棒30を摺動自在に保持するため、上記弁室11内には、円筒状をした一対のリテーナ27,28が取り付けられている。該リテーナ27,28は、アルミニウム合金等からなる金属製のもので、各々の中心軸線を上記弁室11の軸線Lに一致させた状態で相互間に間隔を保って相対するように配設され、一方の第1のリテーナ27の両端部の外周が、上記蓋部材12の内面の筒状のリテーナ保持部12cと一方の区画壁15とに、Oリング12b,15bを介して気密に保持され、他方の第2のリテーナ28の両端部の外周が、上記カバー13の端面のリテーナ保持孔13cと他方の区画壁16とに、Oリング13b,16bを介して気密に保持されている。
【0020】
上記リテーナ27,28の内部空間は、互いに相対する端部側の開口を通じて上記出力ポート20にそれぞれ連通し、第1のリテーナ27の内側空間は、該第1のリテーナ27に形成した通孔27aを通じて上記供給ポート19に連通し、第2のリテーナ28の内側空間は、該第2のリテーナ28に形成した通孔28aを通じて上記排気ポート21に連通している。従って、上記第1のリテーナ27の内側空間は、上記供給ポート19と出力ポート20とを結ぶ流路の一部を形成し、上記第2のリテーナ28の内側空間は、上記出力ポート20と排気ポート21とを結ぶ流路の一部を形成しており、従って、上記リテーナ27,28の内側空間は上記弁室11の一部であると言うことができる。
【0021】
また、上記第1のリテーナ27と第2のリテーナ28との相対する端部には、上記軸線Lと平行に突出して上記内側空間からなる流路の回りを取り囲む環状の供給弁座39aと排気弁座39bとが、各リテーナ27,28と一体に形成されている。
【0022】
上記弁棒30は、アルミニウム合金等からなる金属製のもので、軸線L方向の両端にそれぞれ形成されて上記一対のリテーナ27,28の内部に摺動自在に嵌合するガイド部31,32と、軸線L方向の中間位置に形成されて上記一対のリテーナ27,28の相対する端部間に介在する円板状の上記ポペット弁部37と、該ポペット弁部37と上記ガイド部31,32との間に形成された括れ部35,36とを有している。上記ガイド部31,32は上記ポペット弁部37より小径であり、上記括れ部35,36は該ガイド部31,32より更に小径である。上記ガイド部31,32には、上記リテーナ27,28の内周面に摺動自在に接触するシール部材33及びウエアリング34が設けられている。
【0023】
上記ポペット弁部37は、上記供給弁座39aと排気弁座39bとに接離して、上記供給ポート19と出力ポート20とを結ぶ流路(供給流路)を開閉すると共に、上記出力ポート20と排気ポート21とを結ぶ流路(排気流路)を開閉するもので、該ポペット弁部37の軸線L方向を向く左右の側面、即ち、上記供給弁座39a側を向く側面37a及び上記排気弁座39b側を向く側面37bは、上記軸線Lに対して垂直な面であり、該側面37a,37bの外周寄りの部分に、上記供給弁座39a及び排気弁座39bに接離する環状の弁シート部38a,38bが形成されている。この弁シート部38a,38bは、上記ポペット弁部37の両側面37a,37bに、合成ゴム等からなる環状をした薄く平坦なシール材を、後述する突壁45の回りを取り囲むように固着することにより、該シール材によって形成されたものであるが、該シール材の図示は省略されている。
【0024】
上記単動方向切換弁は、弁棒30が切換駆動機構50の作動により図1の右方向に駆動されて、供給ポート19が出力ポート20と連通し、上記切換駆動機構50が不作動のとき上記弁棒30が、復帰ばね41の付勢力で図1の左方向に復帰動作させられる単動形のものであり、図示の実施例では、上記切換駆動機構50として、パイロット流体圧で弁棒30を駆動する機構を採用している。そのため、上記蓋部材12とリテーナ27と弁棒30の一端のガイド部31の端面とにより形成される空間をパイロット圧力室40とし、該室40をパイロット弁50aを介してパイロット流体圧源50bに連通させ、一方、弁棒30の他方のガイド部32と前記カバー13との間には、パイロット圧力室40の流体圧力を排出したときに弁棒30を復帰位置に戻すための上記復帰ばね41を介装している。上記切換駆動機構50としては、図1に示すパイロット流体圧駆動のものに限らず、機械的その他各種の駆動機構を採用することもできる。
【0025】
そして、上記ポペット弁部37の上記左右の側面37a,37bのうち少なくとも上記排気弁座39b側を向く側面37bには、該側面37bから上記軸線L方向に突出する環状の突壁45が形成されている。該突壁45は、上記ポペット弁部37が上記排気弁座39bから離間するとき、該排気弁座39bの周囲からポペット弁部37の側面37bに沿って弁室11の中心に向かって流入する空気流を、早い段階で軸線L方向に変更させて上記ポペット弁部37の側面37bから離れさせるためのものである。このため、上記突壁45の外周面45aは、図2から分かるように、上記軸線Lと平行をなす円筒面45a′と、該円筒面45a′の基端部を上記ポペット弁部37の側面37bになだらかに連通させる傾斜面45a″とからなっていて、この外周面45aで上記空気流の向きを変えるように構成されている。上記円筒面45a′の直径D1は、上記ポペット弁部37の直径D2より小さいが、上記弁棒30の括れ部36の直径D3よりは大きく形成され、また、上記傾斜面45a″は、上記弁シート部38bより内側の位置で上記ポペット弁部37の側面37bに連なっている。上記傾斜面45a″は、図示した例では円弧状(ホーン状)に湾曲しているが、直線状(円錐状)をしていても良い。
【0026】
また、上記突壁45の高さHは、上記ポペット弁部37が排気弁座39bから離れて供給弁座39aに当接した位置にあるとき該突壁45が上記排気弁座39bの内孔(内側空間)から完全に抜け出すような高さであり、しかもその高さは、該突壁45が上記排気弁座39bの内孔内に嵌合しているときに該突壁45の円筒面45a′と上記内孔の内周面との間に形成される環状空間46の幅Wより大きいことが望ましい。
【0027】
上記環状の突壁45により、前記既知の単動形方向切換弁のようにポペット弁部37の排気ポート21側の側面37bに沿う高速の空気流によって該側面37b付近に低圧部が発生するのが抑制され、これにより弁棒30の切換動作が不安定になるという問題が回避される。
即ち、上記復帰ばね41の付勢力で上記ポペット弁部37が排気弁座39bから離間を開始するとき、上記出力ポート20側から圧力の高い圧縮空気が上記排気弁座39bと弁シート部38bとの間の間隙を通じて弁室11の中心に向けて高速で流入を開始するが、該圧縮空気の流れは、上記ポペット弁部37の側面37bの上記突壁45の外周面45aにより軸線L方向に向きを変えられ、上記圧縮空気はポペット弁部37の側面37bから離れる方向に流れることになるので、既知の単動形方向切換弁のようにポペット弁部37の排気ポート21側の部分に低圧部を発生させることがなく、従って弁棒30の切換動作が不安定になることはない。
【0028】
上記突壁45は、図1に示す例では、上記ポペット弁部37の上記弁シート部38bの内周側の部分を厚肉部とすることによって該ポペット弁部37の側面に一体に形成されていて、該突壁45の側面に上記弁棒30の括れ部36の一端が一体に連接されているが、図3に示す変形例のように上記突壁45を中空状に形成することもでき、この場合、上記弁棒30の括れ部36の一端は、該突壁45の内部において上記ポペット弁部37の側面37bに連接される。あるいは、上記ポペット弁部37の側面37bに上記弁シート部38bを形成するシール材が取り付けられている場合には、上記突壁45を該シール材と一体に形成することもでき、この場合、上記弁棒30の括れ部36の一端は上記ポペット弁部37の側面37bに連接されることになる。
【0029】
また、上記図1及び図3のポペット弁部37においては、上記突壁45が該ポペット弁部37の排気弁座39b側の側面37bだけではなく、反対側の側面即ち供給弁座39a側の側面37aにも対称をなすように設けられているが、これは、弁棒30におけるポペット弁部37の両側を対称形状に形成して、該ポペット弁部37を弁室11内に収容する場合にその向きについて配慮する必要をなくしたものであって、図示した実施例においては必ずしも必要な形状ではない。しかし、上記供給ポート19と排気ポート21とを入れ換えて使用する場合、即ち、上記排気ポート21を供給ポートとして使用すると共に、上記供給ポート19を排気ポートとして使用する場合には、有効である。
【0030】
また、図1において、上記弁棒30におけるガイド部32にロッド43のフランジ部43aを当接させ、該フランジ部43aを介して復帰ばね41の付勢力を弁棒30のガイド部32の端面に作用させているが、該ロッド43は、カバー13を通して外部に導出し、弁棒30の動作位置を検出するための図示しない位置検出器に接続しているものであり、該位置検出器を設ける必要がない場合には、弁棒30におけるガイド部32に復帰ばね41の付勢力を直接作用させることができる。
【0031】
上記構成を有する単動形方向切換弁において、パイロットエアがパイロット圧力室40に供給されると、弁棒30がその一方のガイド部31の端面に作用するパイロットエア圧力により駆動されて図1において右方向に移動し、上記ポペット弁部37の弁シート部38aが供給弁座39aから離間して該供給弁座39aの内孔内の供給流路を大きく開くと共に、弁シート部38bが排気弁座39bに圧接して該排気弁座39bの内孔内の排気流路を閉じる。そのため、供給ポート19と出力ポート20が連通して供給ポート19からの圧縮空気が出力ポート20を通して所要の機器に出力される。
【0032】
また、上記パイロット圧力室40内のパイロットエアが排出されると、上記復帰ばね41の付勢力で弁棒30が上記右側に移動した位置から左側に向けて移動し、ポペット弁部37の弁シート部38aが供給弁座39aに圧接して上記供給流路を閉じると共に、弁シート部38bが排気弁座39bから離間して上記排気流路を開放する。そのため、出力ポート20側からの圧縮空気が排気ポート21を通して外部に排出される。この場合、上述したように、復帰ばね41の付勢力でポペット弁部37の弁シート部38bが排気弁座39bから離間を開始する段階で、出力ポート20側の圧力の高い圧縮空気が、排気弁座39bと弁シート部38bとの間の間隙を通して弁棒30の括れ部36の周囲の空間に流入しても、その空気流は、上記突壁45により軸線L方向に向きを変えられてポペット弁部37から離れる方向に流れるので、弁棒30の切換動作が不安定になることはない。
【0033】
なお、図示した実施例では、弁ボディ10の内部に一対のリテーナ27,28が設けられ、このリテーナ27,28を介して弁棒30が摺動自在に支持されているが、上記一対のリテーナ27,28を無くし、弁ボディ10に供給弁座39aと排気弁座39bとを直接形成すると共に、該弁ボディ10に上記弁棒30のガイド部31,32を直接支持させることもできる。
【0034】
また、上記供給弁座39aと排気弁座39bとを合成樹脂や合成ゴム等で形成し、上記弁シート部38a,38bを、金属製の上記ポペット弁部37の側面37a,37bの一部に直接形成することもでき、この場合、上記弁シート部38a,38bが金属製ということになる。
【符号の説明】
【0035】
10 弁ボディ
11 弁室
19 供給ポート
20 出力ポート
21 排気ポート
27,28 リテーナ
27a,28a 通孔
30 弁棒
35,36 括れ部
37 ポペット弁部
37a,37b 側面
38a,38b 弁シート部
39a 供給弁座
39b 排気弁座
41 復帰ばね
45 突壁
45a 外周面
45a′ 円筒面
45a″ 傾斜面
46 環状空間
50 切換駆動機構
L 軸線
D1,D2,D3 直径
H 高さ
W 幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給ポート、出力ポート及び排気ポートを備えた弁ボディと、該弁ボディの内部に上記ポートに連通するように形成された弁室と、該弁室内に該弁室の軸線方向に摺動自在に収容された弁棒と、該弁棒を駆動する切換駆動機構及び復帰ばねとを有し、
上記弁室には、上記供給ポートと上記出力ポートとを結ぶ流路を取り囲む供給弁座と、上記出力ポートと上記排気ポートとを結ぶ流路を取り囲む排気弁座とが、上記軸線方向の互いに相対する位置に形成され、
上記弁棒は、上記供給弁座と上記排気弁座との間に配置された円形のポペット弁部と、該ポペット弁部の左右の側面に連なる括れ部とを有し、
上記ポペット弁部の上記左右の側面は上記軸線に垂直をなし、該左右の側面には、上記供給弁座及び上記排気弁座に接離する環状の弁シート部が形成され、上記左右の側面のうち少なくとも上記排気弁座側を向く側面には、上記軸線方向に突出する環状の突壁が該ポペット弁部と一体に形成され、
上記突壁の外周面は、上記軸線と平行に延びる円筒面と、該円筒面の基端部を上記ポペット弁部の側面になだらかに連通させる傾斜面とを有し、上記円筒面の直径は、上記ポペット弁部の直径より小さいが上記弁棒の括れ部の直径より大きい、
ことを特徴とする単動形方向切換弁。
【請求項2】
上記突壁の高さは、上記ポペット弁部が該突壁側に位置する一方の弁座から離れて他方の弁座に当接しているとき該突壁が上記一方の弁座の内孔から完全に抜け出す高さであり、また該突壁の高さは、該突壁が上記一方の弁座の内孔内に嵌合しているときに該突壁の円筒面と上記内孔の内周面との間に形成される環状空間の幅より大きいことを特徴とする請求項1に記載の単動形方向切換弁。
【請求項3】
上記傾斜面は、上記弁シート部より内側の位置で上記ポペット弁部の側面に連なっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の単動形方向切換弁。
【請求項4】
上記弁ボディの内部に、上記流路の一部を形成する通孔を側面に備えた筒状の一対のリテーナが上記軸線に沿って設けられ、該リテーナの相対する端部に上記供給弁座と排気弁座とが形成され、該リテーナの内部に上記弁棒が収容されると共に、上記一対のリテーナの相対する端部間に上記ポペット弁部が配置されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の単動形方向切換弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−64498(P2013−64498A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−188693(P2012−188693)
【出願日】平成24年8月29日(2012.8.29)
【出願人】(000102511)SMC株式会社 (344)
【Fターム(参考)】