説明

印刷制御装置およびそれを備えた印刷システム

【課題】放射線硬化型インクを用いてグレイ成分を再現する場合において、記録媒体上に形成されたインク層の内部硬化を起こりやすくするための制御手段を有する印刷制御装置、およびそれを備えた印刷システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る印刷制御装置は、画像データとインク量データとの関係を表す色変換関係を用いて印刷対象となる前記画像データを前記インク量データに変換する色変換部と、前記インク量データに基づいて印刷データを生成する印刷データ生成部と、を備えた印刷制御装置であって、前記色変換関係の前記グレイ成分の低明度側において、前記放射線硬化型コンポジットブラック用インクのインク量が前記放射線硬化型ブラックインクのインク量よりも多い領域を有し、前記領域よりも高明度側において、前記放射線硬化型ブラックインクのインク量が前記放射線硬化型コンポジットブラック用インクのインク量より多い領域を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷制御装置およびそれを備えた印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、印刷対象データから印刷データを生成する処理において、印刷対象データの種類に対応した印刷データを生成することが行われている。例えば、特許文献1には、画像種類に適した色変換関係を選択して画像データをインク量データに変換することにより、画像種類に適した印刷データを容易に生成することが可能な印刷制御装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献1には、グレイ成分を再現する際に画像種類に応じてコンポジットブラック用の有彩色インクとブラックインクの使用比率を変更する制御手段を備えた印刷制御装置が例示されている。かかる制御手段は、写真画像およびCG画像の場合には、グレイ成分の高明度側においてコンポジットブラック用インクが多く使用され、低明度側になるに連れてコンポジットブラック用インクの使用比率が減少し、ブラックインクの使用比率が増加するように設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−335073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、放射線硬化型インクを用いてグレイ成分を再現する場合には、特に低明度側において、放射線硬化型ブラックインクが活性放射線を吸収することにより、形成されたインク層の内部硬化が起こりにくいという問題が生じることがあった。また、該インク層を厚く形成する場合には、さらに内部硬化が不完全となり易かった。特に上述した特許文献1に記載されている制御手段では、低明度側になるに連れてブラックインクの使用比率が増加するので、このような内部硬化の問題が顕著に発生していた。
【0006】
本発明に係る幾つかの態様は、前記問題を解決することで、放射線硬化型インクを用いてグレイ成分を再現する場合において、記録媒体上に形成されたインク層の内部硬化を起こりやすくするための制御手段を有する印刷制御装置、およびそれを備えた印刷システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0008】
[適用例1]
本発明に係る印刷制御装置の一態様は、
画像データとインク量データとの関係を表す色変換関係を用いて、印刷対象となる前記画像データを前記インク量データに変換する色変換部と、
前記インク量データに基づいて印刷データを生成する印刷データ生成部と、
を備えた印刷制御装置であって、
前記色変換関係は、グレイ成分の階調を表現するための放射線硬化型ブラックインクと放射線硬化型コンポジットブラック用インクのインク量データを表し、前記放射線硬化型ブラックインクと前記放射線硬化型コンポジットブラック用インクとの使用比率が互いに異なる関係となるグレイ成分の値を有するものであり、
前記色変換関係の前記グレイ成分の低明度側において、前記放射線硬化型コンポジットブラック用インクのインク量が前記放射線硬化型ブラックインクのインク量よりも多い領域を有し、前記領域よりも高明度側において、前記放射線硬化型ブラックインクのインク量が前記放射線硬化型コンポジットブラック用インクのインク量より多い領域を有することを特徴とする。
【0009】
適用例1に記載の印刷制御装置によれば、より多くのインク量を必要とする低明度側において、放射線硬化型コンポジットブラック用インクのインク量が放射線硬化型ブラックインクのインク量よりも多くなるように設定されているので、記録媒体上に形成された膜を完全に内部硬化させることができる。
【0010】
[適用例2]
適用例1の印刷制御装置において、
前記放射線硬化型ブラックインクのインク量が前記放射線硬化型コンポジットブラック用インクのインク量より多い領域よりもさらに高明度側において、前記放射線硬化型コンポジットブラック用インクのインク量が前記放射線硬化型ブラックインクのインク量よりも多い領域を有することができる。
【0011】
[適用例3]
適用例1または適用例2の印刷制御装置において、
前記色変換関係において、前記放射線硬化型コンポジットブラック用インクのインク量とグレイ成分の階調値との関係を表す関数が、2以上の変曲点を有することができる。
【0012】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例に記載の印刷制御装置において、
前記色変換関係は、ルックアップテーブルで実現されることができる。
【0013】
[適用例5]
本発明に係る印刷システムの一態様は、
適用例1ないし適用例4のいずれか一例に記載の印刷制御装置と、プリンターと、を備えたことを特徴とする。
【0014】
[適用例6]
適用例5の印刷システムにおいて、
前記印刷制御装置は、前記プリンターに組み込まれることができる。
【0015】
[適用例7]
適用例5または適用例6に記載の印刷システムにおいて、
前記プリンターの放射線硬化型ブラックインクのDutyは、50%以下であることができる。
【0016】
[適用例8]
適用例5ないし適用例7のいずれか一例に記載の印刷システムにおいて、
前記プリンターは、隣接した画素には放射線硬化型ブラックインクのドットを形成しないことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施の形態に係る印刷システムの構成を示すブロック図。
【図2】プリンタードライバ110における印刷データ生成処理を示すフローチャート。
【図3】本実施の形態においてグレイ成分を再現する際の放射線硬化型ブラックインクと放射線硬化型コンポジットブラック用インクのインク量の一例を示す説明図。
【図4】本実施の形態においてグレイ成分を再現する際の放射線硬化型ブラックインクと放射線硬化型コンポジットブラック用インクのインク量の一例を示す説明図。
【図5】インクジェットプリンター230を示す斜視図。
【図6】図5に示した活性放射線照射装置の正面図。
【図7】図6のA−A矢視図。
【図8】従来のグレイ成分を再現する際のブラックインクとコンポジットブラック用インクのインク量を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の好適な実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
【0019】
1.印刷システム
本実施の形態に係る印刷システムは、印刷制御装置と、プリンターと、を含む。但し、前記印刷制御装置は、前記プリンター内に組み込まれていても構わない。かかる印刷制御装置は、画像データとインク量データとの関係を表す色変換関係を用いて、印刷対象となる前記画像データを前記インク量データに変換する色変換部と、前記インク量データに基づいて印刷データを生成する印刷データ生成部と、を備えた印刷制御装置であって、前記色変換関係は、グレイ成分の階調を表現するための放射線硬化型ブラックインクと放射線硬化型コンポジットブラック用インクのインク量データを表し、前記放射線硬化型ブラックインクと前記放射線硬化型コンポジットブラック用インクとの使用比率が互いに異なる関係となるグレイ成分の値を有するものであり、前記色変換関係の前記グレイ成分の低明度側において、前記放射線硬化型コンポジットブラック用インクのインク量が前記放射線硬化型ブラックインクのインク量よりも多い領域を有し、前記領域よりも高明度側において、前記放射線硬化型ブラックインクのインク量が前記放射線硬化型コンポジットブラック用インクのインク量より多い領域を有することを特徴とする。
【0020】
1.1.印刷システムの構成
図1は、本実施の形態に係る印刷制御装置が組み込まれた印刷システムの構成を示すブロック図である。コンピューター100は、印刷制御装置として機能する。コンピューター100には、モニター20と、印刷部として機能するプリンター30と、が接続されている。コンピューター100では、アプリケーションプログラム102とビデオドライバ101とプリンタードライバ110とが動作している。
【0021】
アプリケーションプログラム102は、写真画像データや文字データを含むカラー文書データの編集用プログラムであり、ビデオドライバ101を介してカラー文書をモニター20に表示する。カラー文書データは、レッド(R)とグリーン(G)とブルー(B)の3色の色成分からなるデータであり、本実施の形態における印刷対象データである。
【0022】
このアプリケーションプログラム102が印刷命令を発すると、プリンタードライバ110が、カラー文書データをアプリケーションプログラム102から受け取り、これをプリンター30に供給する印刷データFNLに変換する。
【0023】
プリンタードライバ110の内部には、解像度変換部111と、色変換部115と、ハーフトーン処理部117と、データ配列部119と、色変換関係としてのルックアップテーブル(以下、「LUT」ともいう)114と、が備えられている。
【0024】
解像度変換部111は、アプリケーションプログラム102が扱っているカラー文書データの解像度、すなわち、単位長さ当たりの画素数をプリンタードライバ110が扱うことができる解像度に変換する機能を有する。
【0025】
色変換部115は、LUTを参照しつつ、複数の画素で構成される単位面積毎に色変換を行う。色変換では、RGBデータを、プリンター30に備えられたシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)等の各放射線硬化型インクのインク量データに変換する。色変換されたインク量データは、例えば256階調の階調値を有している。
【0026】
LUT114は、文字データ用や、グラフ画像用、写真画像用、CG画像用等のデータの種類に応じて最適な色変換関係となるように複数種備えられてもよい。この場合には、プリンタードライバ110の内部に画像データの種類を判別する画像解析部を備えるとよい。LUT114は、コンピューター100のハードディスクやCD−ROM等の外部記憶装置から読み込むことができる。または、プリンター30内のROMに記憶しておき、これから読み込むようにしてもよい。なお、色変換関係は本実施の形態ではLUTで実現されているが、それに限らず関数などで実現されていてもよい。
【0027】
ハーブトーン処理部117は、インク量データに対してハーフトーン処理を実行することによって、ドットの形成状態を示すドットデータを生成する。データ配列部119は、ハーフトーン処理で作成されたドットデータを、プリンター30に転送すべきデータ順に並べ替え、最終的な印刷データFNLとして出力する。なお、この印刷データFNLには、副走査送り量に関するデータも含まれている。本実施の形態では、ハーフトーン処理部117とデータ配列部119が印刷データ生成部の機能を実現する。
【0028】
プリンター30は、前述したシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)等の放射線硬化型インクすべてを印刷データFNLに従って吐出することによって、印刷媒体上にインクドットを形成する。なお、本実施の形態のプリンター30は画像処理を行っていないが、プリンタードライバ110内で行われる処理の全部または一部をプリンター30で行うようにしてもよい。
【0029】
1.2.印刷制御手段
図2は、プリンタードライバ110における印刷データ生成処理を示すフローチャートである。アプリケーションプログラム102が印刷命令を発すると、プリンタードライバ110がカラー文書データをアプリケーションプログラム102から受け取り、印刷データ生成処理を実行する。
【0030】
まず、プリンタードライバ110の解像度変換部111は、カラー文書データを解像度変換する(ステップS100)。
【0031】
次に、色変換部115は、LUT114を用いて、色変換処理を行う(ステップS110)。以下、グレイ成分を再現する際のLUTについて、詳細に説明する。
【0032】
まず、従来のグレイ成分を再現する際のLUTについて説明する。従来のグレイ成分を再現する際のLUTは、水または水溶性有機溶媒を主成分とする水系ブラックインクおよび水系コンポジットブラック用インクを用いることを前提としている。図8に、従来の印刷制御装置におけるグレイ成分を再現する際のブラックインクとコンポジットブラック用インクのインク量を示す説明図を示す。図8の横軸はグレイ成分の階調値(すなわち画像濃度)であり、縦軸はブラックインクまたはコンポジットブラック用インクのインク量の階調値である。図8において、実線はブラックインクのインク量を示し、一点鎖線はコンポジットブラック用インクのインク量を示している。ここで、コンポジットブラック用インクのインク量とは、グレイ成分を再現するために使用される複数の有彩色インク(例えば、シアンC、マゼンタM、イエローYのインク)の個々のインク量を示す。
【0033】
従来のLUTでは、図8に示すように、グレイ成分の濃度がE点に到達するまでは、コンポジットブラックインク用インクのみでグレイ成分が形成されるように設定されている。この理由は、グレイ成分の濃度がE点に到達するまでの高明度側では、粒状性が重視されているからである。かかる粒状性は、インクをより多く用いる方が良好となるからである。
【0034】
また、従来のLUTでは、図8に示すように、グレイ成分の濃度がE点を超えると、コンポジットブラック用インクの使用量を減少させると共に、ブラックインクの使用量を増加させてグレイ成分が形成されるように設定されている。グレイ成分の濃度がF点に到達した時点で、コンポジットブラック用インクとブラックインクの使用量が等しくなり、グレイ成分の濃度がG点を超えると、ブラックインクの使用量をさらに増加させてグレイ成分が形成されるように設定されている。以上のように、従来のLUTは、グレイ成分の濃度がE点を超えた領域では、ブラックインクの使用量を増加させることにより、グレイ成分の階調表現を実現している。
【0035】
次に、本実施の形態におけるグレイ成分を再現する際のLUTの一例について説明する。本実施の形態におけるグレイ成分を再現する際のLUTは、活性放射線によって硬化される放射線硬化型ブラックインクおよび放射線硬化型コンポジットブラック用インクを用いることを前提としている。図3に、本実施の形態におけるグレイ成分を再現する際の放射線硬化型ブラックインクと放射線硬化型コンポジットブラック用インクのインク量の一例を示す説明図を示す。図3の横軸および縦軸は、前述した図8の場合と同様である。図3において、実線は放射線硬化型ブラックインクのインク量を示し、一点鎖線は放射線硬化型コンポジットブラック用インクのインク量を示している。ここで、放射線硬化型コンポジットブラック用インクのインク量とは、グレイ成分を再現するために使用される複数の放射線硬化型有彩色インク(例えば、シアンC、マゼンタM、イエローYの放射線硬化型インク)の個々のインク量を示す。
【0036】
本実施の形態では、図3に示すように、グレイ成分の濃度がA点に到達するまでは、放射線硬化型コンポジットブラック用インクのみでグレイ成分を形成するように設定されている。この理由は、従来のLUTの場合と同様であり、グレイ成分の濃度がA点に到達するまでの高明度側では、粒状性が重視されているからである。
【0037】
また、本実施の形態では、図3に示すようにグレイ成分の濃度がA点を超えると、放射線硬化型コンポジットブラック用インクの使用量を減少させて、放射線硬化型ブラックインクの使用量を増加させるように設定されている。グレイ成分の濃度がB点に到達した時点で、放射線硬化型コンポジットブラック用インクと放射線硬化型ブラックインクの使用量が等しくなり、グレイ成分の濃度がC点に到達するまで放射線硬化型コンポジットブラック用インクの使用量を減少させて、放射線硬化型ブラックインクの使用量を増加させるように設定されている。以上のように、グレイ成分の濃度がA点からC点までの中間領域では、放射線硬化型ブラックインクの使用量を増加させることにより、グレイ成分の階調表現を実現している。すなわち、C点までは、従来のLUTと同様である。
【0038】
ところが、本実施の形態では、図3に示すようにグレイ成分の濃度がC点を超えると、放射線硬化型ブラックインクの使用量を一定量とし、放射線硬化型コンポジットブラック用インクの使用量を再び増加させてグレイ成分を形成するように設定されている。グレイ成分の濃度がD点に到達した時点で、放射線硬化型コンポジットブラック用インクと放射線硬化型ブラックインクの使用量が等しくなり、グレイ成分の濃度がD点を超えると放射線硬化型ブラックインクの使用量よりも放射線硬化型コンポジットブラック用インクの使用量を多くするように設定されている。この理由は、グレイ成分の濃度がC点を超えた低明度側(以下、単に「低明度側」ともいう)では、放射線硬化型ブラックインクが活性放射線を吸収することにより記録媒体上に形成された膜の内部硬化が起こりにくくなるため、放射線硬化型ブラックインクの使用量をこれ以上増加させることができないからである。一方、シアンC、マゼンタM、イエローY等の放射線硬化型インクで構成される放射線硬化型コンポジットブラック用インクは、前記のような弊害が放射線硬化型ブラックインクに比べて非常に小さい。そのため、グレイ成分の濃度がC点を超えた低明度側では、放射線硬化型コンポジットブラック用インクの使用量を増加させることにより、グレイ成分の階調表現を実現している。なお、上述の各領域間において、グレイ成分の値(濃度)が高い側が低明度側であり、グレイ成分の値が低い側が高明度側である。
【0039】
本実施の形態におけるグレイ成分を再現する際のLUTは、低明度側において放射線硬化型コンポジットブラック用インクのインク量が前記放射線硬化型ブラックインクのインク量よりも多い領域を含み、かつ、前記領域よりも高明度側において放射線硬化型ブラックインクのインク量が放射線硬化型コンポジットブラック用インクのインク量より多い領域を有すれば、特に前記の例に限定されない。
【0040】
また、前述した図3のLUTでは、最も高明度側においてコンポジットブラック用インクのインク量を多くして粒状性を良く(低減)させているが、これに限定されない。図4に、本実施の形態におけるグレイ成分を再現する際の放射線硬化型ブラックインクと放射線硬化型コンポジットブラック用インクのインク量の一例を示す説明図を示す。図4のLUTのように、高明度側において放射線硬化型ブラックインクの使用量を多くしてもよい。図4の実施形態では、最も高明度側において放射線硬化型ブラックインクのインク量が増加しH点で最高に達し、以降ブラックインクのインク量を一定とし、H点以降放射線硬化型コンポジットブラック用インクのインク量を増加させ、I点においてコンポジットブラック用インクのインク量がブラックインクのインク量を越える。図4の実施形態においては、高明度側においては図3の実施形態よりも粒状性が増加するが、LUTのデータを簡単なものとすることができ、高明度における粒状性を問題にしない画像を印刷させる場合には特に有用である。なお、前述の各実施形態においては、放射線硬化型コンポジットブラック用インクの最大のインク量は255となっているが、これには限られず255以上でもよいし255以下でもよい。
【0041】
また、印刷対象となる画像データ(例えば、グラフ画像データ、写真画像データ、CG画像データ等)の種類に応じて、それぞれに対応したLUTを用意してもよい。この場合には、プリンタードライバ110に画像解析部(図示せず)を別途設けるとよい。該画像解析部は、画像データを解析し、画像データの種類を判別する。そして、画像解析部は、その画像データに最適なLUTを選択する。
【0042】
以上のように、本実施の形態ではグレイ成分を再現する場合の色変換関係において、放射線硬化型コンポジットブラック用インクのインク量とグレイ成分の階調値との関係をLUTではなく関数で表現した場合には、該関数が2以上の変曲点を有することが好ましい。例えば、図3に示した例によれば、A点およびC点で変曲点を有している。
【0043】
以上のLUTに基づいて色変換処理がなされたら、ハーフトーン処理部117は、ステップS110で求めたインク量の階調値に対してハーフトーン処理を行う(ステップS120)。データ配列部119は、ハーフトーン処理された多階調データを、プリンター30に転送すべきデータ順に並べ替え、最終的な印刷データFNLとして出力する(ステップS130)。
【0044】
1.3.プリンター
印刷データFNLを受信したプリンター30は、印刷データFNLに基づいて印刷処理を実行する。プリンター30としては、特に制限されないが、例えば以下に説明するインクジェットプリンター230を用いることができる。
【0045】
図5は、インクジェットプリンター230を示す斜視図である。図5に示したインクジェットプリンター230は、記録媒体Pを副走査方向SSに送るモーター232と、プラテン240と、放射線硬化型インク組成物を微少粒径にしてヘッドノズルから噴射して記録媒体Pに吐出する記録ヘッドとしての印刷ヘッド252と、該印刷ヘッド252を搭載したキャリッジ250と、キャリッジ250を主走査方向MSに移動させるキャリッジモーター260と、印刷ヘッド252によって放射線硬化型インク組成物を吐出した記録媒体P上のインク付着面に活性放射線を照射する一対の活性放射線照射装置290A、290Bとを備えている。
【0046】
キャリッジ250は、キャリッジモーター260に駆動される牽引ベルト262によって牽引され、ガイドレール264に沿って移動する。
【0047】
図5に示した印刷ヘッド252は、3色以上のインクを噴射するフルカラー印刷用のシリアル型ヘッドであり、各色毎に多数のヘッドノズルが備えられている。かかる印刷ヘッド252が搭載されるキャリッジ250には、前記印刷ヘッド252の他に、印刷ヘッド252に供給されるブラックインクを収容したブラックインク容器としてのブラックカートリッジ254と、印刷ヘッド252に供給されるカラーインクを収容したカラーインクとしてのカラーインクカートリッジ256とが搭載されている。各カートリッジ254、256に収容されているインクは、いずれも放射線硬化型インクである。
【0048】
キャリッジ250のホームポジション(図5の右側の位置)には、停止時に印刷ヘッド252のノズル面を密閉するためのキャッピング装置280が設けられている。印刷ジョブが終了してキャリッジ250がこのキャッピング装置280の上まで到達すると、図示しない機構によってキャッピング装置280が自動的に上昇して、印刷ヘッド252のノズル面を密閉する。このキャッピングにより、ノズル内のインクの乾燥が防止される。キャリッジ250の位置決め制御は、例えば、このキャッピング装置280の位置にキャリッジ50を正確に位置決めするために行われる。
【0049】
このようなインクジェットプリンター230を使用することにより、記録媒体上に放射線硬化型インクを吐出することができる。そして、吐出された放射線硬化型インクに対して、活性放射線光源から活性放射線を照射することにより、該放射線硬化型インクが硬化されて、記録媒体上に画像を記録することができる。
【0050】
図6は、図5に示した活性放射線照射装置290A、290Bの正面図である。図7は、図6のA−A矢視図である。
【0051】
図5ないし図7に示すように、活性放射線照射装置290A、290Bは、キャリッジ250の移動方向に沿った両側端にそれぞれ取り付けられている。
【0052】
図6に示すように、印刷ヘッド252の向かって左側に取り付けられた活性放射線照射装置290Aは、キャリッジ250が右方向(図6の矢印B方向)に移動する右走査時に、記録媒体P上に吐出されたインク層296に対して活性放射線照射を行う。一方、印刷ヘッド252の向かって右側に取り付けられた活性放射線照射装置290Bは、キャリッジ250が左方向(図6の矢印C方向)に移動する左走査時に、記録媒体P上に吐出されたインク層296に対して活性放射線照射を行う。
【0053】
各活性放射線照射装置290A、290Bは、キャリッジ250に取り付けられて、活性放射線光源292をそれぞれ1個ずつ整列支持した筐体294と、活性放射線光源292の発光および消灯を制御する(図示しない)光源制御回路とを備えている。図6および図7に示すように、活性放射線照射装置290A、290Bには、活性放射線光源292がそれぞれ1個ずつ設けられているが2個以上設けてもよい。活性放射線光源292としては、LEDまたはLDのいずれかを使用することが好ましい。これにより、活性放射線光源として水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、その他のランプ類を使用した場合と比較して、フィルター等の装備のために活性放射線光源が大型化することを回避することができる。また、フィルターによる吸収で出射された活性放射線強度が低下することがなく、放射線硬化型インクを効率良く硬化させることができる。
【0054】
また、各活性放射線光源292は、出射される波長が同じものでもよいし、異なっていてもよい。活性放射線光源292としてLEDまたはLDを使用する場合、出射される活性放射線の発光ピーク波長は350〜430nm程度の範囲のいずれかとすればよい。
【0055】
以上に説明した活性放射線照射装置290A、290Bによれば、図6に示すように、印刷ヘッド252からの吐出で記録媒体P上に付着させたインク層296に対して、印刷ヘッド252近傍の記録媒体P上を照射する活性放射線光源292により活性放射線292aが照射され、インク層296の表面および内部を硬化させることができる。
【0056】
活性放射線の照射量は、記録媒体P上に付着させたインク層296の厚さにより異なるため厳密には特定できず、適宜好ましい条件を選択するものではあるが、前述した放射線硬化型インク組成物を用いているので、300〜1000mJ/cm程度の活性放射線照射量で十分に硬化させることができる。
【0057】
なお、インクジェットプリンター230における放射線硬化型ブラックインクのdutyは、50%以下とすることが好ましい。この理由について、以下に説明する。
【0058】
インクの最大ドットのドット径は、記録媒体の地を覆い隠すベタ印刷をする必要がある観点から、画素に外接する大きさ以上である必要がある。ここで、「画素」とは、解像度により決定されるドットを形成すべき最小単位領域のことをいう。したがって、dutyを100%とした場合、隣接ドット同士の重複した部分が発生する。この重複した部分は、インク層の膜厚が厚くなるため、どうしても硬化性が悪くなる傾向がある。また、記録媒体上での、ドットのブリードや隣接ドットとの混色はドットの周辺部で発生しやすい。そこで、dutyを50%以下とすることにより、隣接ドット同士の重複した部分を少なくすることができるので、放射線硬化型ブラックインクのインク層の硬化性を高め、ドットのブリードや隣接ドットとの混色を低減させることができる。
【0059】
なお、本明細書中において、「duty」とは、下式で算出される値である。
duty(%)={実印字ドット数/(縦解像度×横解像度)}×100
(式中、「実印字ドット数」は単位面積当たりの実印字ドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。「dutyが100%である」とは、複数の画素で構成される単位面積当たりの単色の最大インク重量を意味する。)
【0060】
インクジェットプリンター230は、隣接した画素には放射線硬化型ブラックインクのドットを形成しないことがさらに好ましい。縦または横に隣接した画素に放射線硬化型ブラックインクのドットを形成すると、隣接ドット同士の重複した部分が生じ得るため、該重複部分の硬化性が悪くなるからである。
【0061】
残りの画素は、放射線硬化型コンポジットブラック用インクでドットを形成することで、硬化性の良好なインク層が得られると共に、グレイ成分の階調を表現することができる。
【0062】
また、一画素において、放射線硬化型ブラックインクのドットを形成してから、放射線硬化型コンポジットブラック用インクのドットをさらに形成してもよい。このように、放射線硬化型ブラックインクから形成されるインク層と放射線硬化型コンポジットブラック用インクから形成されるインク層を重ねることにより、グレイ成分の低明度側の階調を実現することが可能となる。この順序を逆にした場合には、放射線硬化型ブラックインクにより形成されるインク層が最表面に存在することになるので、活性放射線が該インク層に吸収されてしまう。したがって、その内側に存在する放射線コンポジットブラック用インクにより形成されるインク層の硬化性が損なわれてしまう。
【0063】
なお、本実施形態においては、放射線硬化型ブラックインクのdutyは、50%以下とすることが好ましいが、放射線硬化型コンポジットブラック用インクのdutyは50%を超えることができ、その最大値は100%以下でもよいし100%以上とすることもできる。100%を超えると1画素に対して2以上の実印字ドット数となる画素も存在し得るが、放射線硬化型コンポジットブラック用インクは1画素に対して2以上の実印字ドット数となっても硬化性が悪くなり難い。
【0064】
なお、インクジェットプリンター230の構成は、前述した記録ヘッド、キャリッジおよび活性放射線光源等の構成に限定されるものではなく、本実施の形態に係る印刷システムの趣旨に基づいて種々の形態を採用することができる。
【0065】
また、図1において、コンピューター100とプリンター30が一体となった印刷システムでもよい。また、モニター20がプリンター30と一体となっていてもよいしモニター20がなくてもよい。
【0066】
プリンター30で使用される放射線硬化型ブラックインクは、特に制限されず公知の放射線硬化型インク組成物を適用することができる。具体的には、重合性化合物、光重合開始剤、ブラック顔料、分散剤、スリップ剤、光増感剤、重合禁止剤等の成分からなる放射線硬化型ブラックインクを用いることができる。ブラック顔料としては、グレイ成分のきめ細かな階調表現を実現する観点から、カーボンブラックを使用することが好ましい。
【0067】
カーボンブラックとしては、C.I.ピグメントブラック7が挙げられ、例えば、三菱化学株式会社から入手可能なNo.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等が、コロンビアケミカルカンパニー社から入手可能なRaven5750、同5250、同5000、同3500、同1255、同700等が、また、キャボット社から入手可能なRegal400R、同330R、同660R、MogulL、同700、Monarch800、同880、同900、同1000、同1100、同1300、同1400等が、さらに、デグッサ社から入手可能なColorBlackFW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、ColorBlackS150、同S160、同S170、Printex35、同U、同V、同140U、SpecialBlack6、同5、同4A、同4等が挙げられる。
【0068】
プリンター30で使用されるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)等の放射線硬化型インクで構成されるコンポジットブラック用インクについても、特に制限されず、重合性化合物、光重合開始剤、顔料、分散剤、スリップ剤、光増感剤、重合禁止剤等の成分からなる放射線硬化型ブラックインクを用いることができる。コンポジットブラック用インクとしては、例えば特開2008−265263号公報に記載されているインクジェット用光硬化インクを使用することができる。
【0069】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0070】
20…モニター、30…プリンター、100…コンピューター、101…ビデオドライバ、102…アプリケーションプログラム、110…プリンタードライバ、111…解像度変換部、114…ルックアップテーブル(LUT)、115…色変換部、117…ハーフトーン処理部、119…データ配列部、230…インクジェットプリンター、232…モーター、240…プラテン、250…キャリッジ、252…印刷ヘッド、254…ブラックインクカートリッジ、256…カラーインクカートリッジ、260…キャリッジモーター、262…牽引ベルト、264…ガイドレール、280…キャッピング装置、290A、290B…活性放射線照射装置、292…活性放射線光源、292a…活性放射線、294…筐体、296…インク層、FNL…印刷データ、P…記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データとインク量データとの関係を表す色変換関係を用いて、印刷対象となる前記画像データを前記インク量データに変換する色変換部と、
前記インク量データに基づいて印刷データを生成する印刷データ生成部と、
を備えた印刷制御装置であって、
前記色変換関係は、グレイ成分の階調を表現するための放射線硬化型ブラックインクと放射線硬化型コンポジットブラック用インクのインク量データを表し、前記放射線硬化型ブラックインクと前記放射線硬化型コンポジットブラック用インクとの使用比率が互いに異なる関係となるグレイ成分の値を有するものであり、
前記色変換関係の前記グレイ成分の低明度側において、前記放射線硬化型コンポジットブラック用インクのインク量が前記放射線硬化型ブラックインクのインク量よりも多い領域を有し、前記領域よりも高明度側において、前記放射線硬化型ブラックインクのインク量が前記放射線硬化型コンポジットブラック用インクのインク量より多い領域を有する、印刷制御装置。
【請求項2】
前記放射線硬化型ブラックインクのインク量が前記放射線硬化型コンポジットブラック用インクのインク量より多い領域よりもさらに高明度側において、前記放射線硬化型コンポジットブラック用インクのインク量が前記放射線硬化型ブラックインクのインク量よりも多い領域を有する、請求項1に記載の印刷制御装置。
【請求項3】
前記色変換関係において、前記放射線硬化型コンポジットブラック用インクのインク量とグレイ成分の階調値との関係を表す関数が、2以上の変曲点を有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の印刷制御装置。
【請求項4】
前記色変換関係は、ルックアップテーブルで実現される、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の印刷制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の印刷制御装置と、プリンターと、を備えた印刷システム。
【請求項6】
前記印刷制御装置が前記プリンターに組み込まれた、請求項5に記載の印刷システム。
【請求項7】
前記プリンターの放射線硬化型ブラックインクのDutyは、50%以下である、請求項5または請求項6に記載の印刷システム。
【請求項8】
前記プリンターは、隣接した画素には放射線硬化型ブラックインクのドットを形成しない、請求項5ないし請求項7のいずれか一項に記載の印刷システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−213032(P2011−213032A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84890(P2010−84890)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】