説明

印刷機

【課題】品質の安定した、作業効率の良い表面処理装置付きの印刷機を提供することをその課題とする。
【解決手段】圧胴16に対して昇降可能なフィルム支持部材の下降が終わるまでは、ニス胴支持部材を下降させないよう、制御部32はニス胴支持部材駆動モータM2を制御する。このように制御することにより、ニスの塗布された枚葉紙Pが表面処理装置Dの表面処理を受けることなく排紙されるということがなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用紙に転写フィルムを押付けることにより、エンボス模様やホログラム模様等を転写して印刷面の付加価値を高めるための、印刷機の表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷済みのシート表面に転写フィルムを押付け、ホログラム模様等をインラインで転写形成できるものとして、例えば特許文献1に示すような表面処理装置付き印刷機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−72932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の印刷機は、圧胴の回転速度と、圧胴に押付けられる転写用フィルムとの速度が同期した状態で表面処理加工される必要がある。よって、圧胴に接離可能なフィルム押圧部は、転写用フィルムの速度が圧胴の速度に同期するか、その直前で下降し、圧胴に転写用フィルムを押付けるよう構成されている。そして、転写用フィルムを効率よく使用するために、速度が同期するかその直前に枚葉紙が給紙部から機内へ給紙されるようになっている。
この場合、最初に給紙された枚葉紙が、フィルム押圧部の下降前に圧胴を通過してしまう可能性がある。転写用フィルムが押付けられず、紫外線照射部の紫外線照射がされなかった枚葉紙は、ワニス塗布部により塗布された未乾燥のワニスがついたまま排紙されることとなり、排紙部、積載された印刷済みの枚葉紙が汚れる等の可能性があった。給紙部から表面処理装置までの印刷部のユニット数が少ない機械ほど、前述の可能性が増すという問題があった。
【0005】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は、品質の安定した印刷物を得ることのできる表面処理装置付の印刷機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、用紙Pを給紙する給紙部Aと、給紙された用紙Pを印刷する印刷部Bと、胴入れ、胴抜きが可能であって、該印刷部Bにより印刷された用紙Pにニスを塗布するニス塗布部Cと、圧胴16に対して接離可能であって、該ニス塗布部Cによりニス塗布された用紙Pに該圧胴16上で転写フィルム14を押付けながら紫外線照射することにより表面処理を行う表面処理装置Dとを有した印刷機であって、該転写フィルム14の速度と該圧胴16の速度とを同期させて該表面処理装置Dを該圧胴16に接触させるものにおいて、該表面処理装置Dが該圧胴16に接触するまでは該ニス塗布部Cを胴入れさせないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の印刷機によれば、表面処理装置が圧胴に接触するまではニス塗布部を胴入れさせないので、ニスが未乾燥のまま枚葉紙Pが排紙されるといったことがなく、品質の安定した、作業効率の良い表面処理装置付きの印刷機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る表面処理装置を備えた印刷機の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る印刷機の表面処理装置の制御部の構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0010】
図1は表面処理装置を備えた印刷機の一例である。図1の概略側面図に示す通り、本実施例に係る印刷機は枚葉オフセット印刷機である。この印刷機は、紙積み台からフィーダ装置や用紙分離装置等により一枚ずつ印刷用紙としての枚葉紙Pを送り出すための給紙部Aと、この給紙部Aからの枚葉紙Pに印刷を行うための印刷部Bと、印刷された枚葉紙Pにニスコーティングをするニス塗布部Cと、枚葉紙P上のニス塗布面に転写フィルムを押付けて紫外線照射し、ニス塗布面に表面処理を施す表面処理装置Dと、枚葉紙Pを排紙するための排紙部Eとを備えている。印刷機は本機モータM1(図2)により駆動される。
【0011】
ここで印刷部Bは、1色の印刷が行えるように1台の印刷ユニットを備えた印刷部Bとしているが、1色以外の色、つまり複数の印刷が行える印刷部であってもよい。又、前記排紙部Eは、グリッパを備えるチェーン搬送装置にて構成しているが、チェーン搬送装置に限らなくてもよい。又、印刷機を構成する各部の具体的な構成は図に示されるものに限定されるものではない。
【0012】
前記印刷部Bは、印刷版が巻回される版胴1とゴム胴2とインキローラ群3、そして圧胴4と渡し胴5とを備えている。図示していないが、前記胴4、5のそれぞれには、送り出されてきた枚葉紙Pを爪台と爪とで把持するグリッパを円周方向の2箇所(1箇所又は3箇所以上でもよい)に備えている。符号6は給紙胴であり、フィーダーボード7上を搬送される枚葉紙Pを図示しないスイングアームから受け取り、圧胴4に渡す役割を果たす。給紙胴6、スイングアームにも前記の爪台と爪が設けられている。
【0013】
ニス塗布部Cはニス版胴8とニスゴム胴9、ニス圧胴10とを有し、搬送される枚葉紙Pに有色あるいは無色の透明な紫外線硬化型樹脂ニスを塗布する。ニス版胴8には図示しないチャンバーからニスが供給され、ニスゴム胴9へニスを供給する。ニス版胴8及びニスゴム胴9は図示しないニス胴支持部材に支持されて、ニス胴支持部材駆動モータM2(図2)により、ニス圧胴10に対して接離可能に構成されており、ニス圧胴10への接近時に枚葉紙Pへニスを押圧転写するようになっている。このニス圧胴10への接触時を胴入れ、ニス圧胴10からの離脱時を胴抜きという。
【0014】
表面処理装置Dは、転写フィルム14が巻き付けられるとともに送り出し可能な供給ロール11と、この供給ロール11から送り出された転写フィルム14を圧胴16上の枚葉紙Pに押付ける押圧ローラ17、18と、押付けられた転写フィルム14を巻き取る、巻き取りロール12と、供給ロール11と巻き取りロール12との間に配置されたフィルム案内用ローラ群13と、押圧ローラ17、18間の転写フィルム14を照射して、転写フィルム14越しに枚葉紙P上のニスを乾燥する紫外線照射部15とを備えている。転写フィルム14はフィルム駆動モータM3(図2)により駆動される。
押圧ローラ17,18と紫外線照射部15とは図示しないフィルム支持部材に支持されて、フィルム支持部材駆動モータM4(図2)により上昇下降可能になっており、図1の二点鎖線で示すとおり、圧胴16に対して接離可能となっている。
尚、転写フィルム14は透明のフィルムにエンボス模様やホログラム模様等が凹凸として形成されており、この凹凸をニスが塗布された枚葉紙P上に転写するタイプと、金箔等の転移層が施された透明のフィルムをニスが塗布された枚葉紙Pに押付けることにより、この転移層を枚葉紙P上に転移させるタイプとがある。
【0015】
給紙部Aから搬送される枚葉紙Pは印刷部Bで印刷され、ニス塗布部Cでニスが塗布される。表面処理装置Dにて転写フィルム14が枚葉紙Pに押付けられ、紫外線照射部15により枚葉紙Pのニス塗布面は硬化されて転写フィルム14と一体化し、搬送方向終端まで移動してきた転写フィルム14と枚葉紙Pとが互いに離間する側に移動することによって両者が剥離され、転写フィルム14は巻取りロール12へ巻き取られ、硬化した紫外線硬化型樹脂ニスが一体化された枚葉紙Pは排紙部Eへ受け渡されることになる。転写フィルム14を押し付けることによって、枚葉紙Pのニス塗布面を平滑にすることができ、光沢度をアップさせることができる利点がある。
【0016】
図2は本発明に係る印刷機の表面処理装置の制御部の構成を示す概略ブロック図であり、印刷機本体を駆動する本機モータM1、前述のニス胴支持部材駆動モータM2、フィルム駆動モータM3、フィルム支持部材駆動モータM4、給紙胴エンコーダ6a、給紙部A、制御部32により構成されている。制御部32は演算処理等を行うマイクロプロセッサ32a(シーケンサでもよい)、データ及び所定のプログラム(演算式あるいはテーブル等)を記憶するROM32b、機械回転数等に関する種々の情報を記憶可能なRAM32c、マイクロプロセッサ32aと制御部32外部に設けられた装置との間における各種信号のやりとりを仲介するインターフェイス32d等を用いて構成されている。
【0017】
本発明の作用について説明する。本機モータM1により本機が駆動する。表面処理装置についてはフィルム駆動モータM3が駆動することにより、転写フィルム14が供給ロール11から繰り出されて巻き取りロール12に巻き取られる。
制御部32は本機の駆動速度と転写フィルム14の速度とを給紙胴エンコーダ6aとフィルム駆動モータM3により判断し、速度が同期したらフィルム支持部材駆動モータM4を駆動させてフィルム支持部材を下降させ、紫外線照射部15から紫外線を照射させ、転写フィルム14を介して押圧ローラ17,18を圧胴16に押付ける。
転写フィルム14を効率的に使用するために、フィルム支持部材の下降が終わるかその直前に、制御部32は給紙部Aから枚葉紙Pを給紙させる。
【0018】
この時、フィルム支持部材の下降が終わるまでは、ニス胴支持部材を下降させないよう、制御部32はニス胴支持部材駆動モータM2を制御する。このように制御することにより、ニスの塗布された枚葉紙Pが表面処理装置Dの表面処理を受けることなく排紙されるということがなくなる。よって、未乾燥のニスが付着した枚葉紙Pが排紙部Eや積層された印刷済みの枚葉紙Pを汚すといったトラブルがなく、品質の安定した、作業効率の良い表面処理装置付きの印刷機を得ることができる。
【0019】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。前述の実施例では、フィルム支持部材の下降が終わるかその直前に、枚葉紙Pを給紙させていたが、本機の駆動速度と転写フィルム14の速度との同期が完了するまでは給紙させないように制御することもできる。このようにすることにより、損紙の発生を抑えることができる。
また、前述の実施形態では、枚葉オフセット印刷機であったが、これに限定されず、インクジェット式印刷機やフレキソ印刷機のようなものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明に係る印刷機の表面処理装置は、印刷面の付加価値を高めるための表面処理装置を備えた印刷機において極めて有用である。
【符号の説明】
【0021】
8 ニス版胴 9 ニスゴム胴
10 ニス圧胴 16 圧胴
17 押圧ローラ 18 押圧ローラ
32 制御部 A 給紙部
D 表面処理装置 M1 本機モータ
M2 ニス胴支持部材駆動モータ M3 フィルム駆動モータ
M4 フィルム支持部材駆動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を給紙する給紙部と、給紙された用紙を印刷する印刷部と、胴入れ、胴抜きが可能であって、該印刷部により印刷された用紙にニスを塗布するニス塗布部と、圧胴に対して接離可能であって、該ニス塗布部によりニス塗布された用紙に該圧胴上で転写フィルムを押付けながら紫外線照射することにより表面処理を行う表面処理装置とを有した印刷機であって、該転写フィルムの速度と該圧胴の速度とを同期させて該表面処理装置を該圧胴に接触させるものにおいて、
該表面処理装置が該圧胴に接触するまでは該ニス塗布部を胴入れさせないことを特徴とする印刷機。

【図1】
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【図2】
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