説明

印刷物作成方法、印刷物作成システムおよび印刷物

【課題】異なる2つの印刷装置にて2つの印刷画像を同一印刷面に形成することにより作成される印刷物の質感の均一性を向上する。
【解決手段】印刷物作成システム1では、オフセット印刷機2にて第1画像を印刷用紙に印刷した後に、インクジェットプリンタ4にて第2画像を同一の印刷用紙に印刷する際に、処理部5にて第2画像のシャープネスを高めるシャープネス処理を行うことにより処理済み第2画像が生成され、インクジェットプリンタ4にて処理済み第2画像のデータに従って印刷が行われる。これにより、第2画像にシャープネス処理が施されない場合の印刷画像よりもシャープネスが第1印刷画像に近似する第2印刷画像が印刷用紙に形成され、印刷物の全体の質感の均一性を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の印刷装置により複数の画像が同一の印刷面に印刷される印刷物を作成する技術、並びに、当該印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
多階調(すなわち、連続階調)の元画像の印刷では、規則的に配列された網点ドットの大きさを変えることにより階調表現が実現されるAM(Amplitude Modulated)スクリーニングや、不規則に配置される一定の大きさの網点ドットの個数を変更することにより階調表現が実現されるFM(Frequency Modulated)スクリーニングが用いられ、近年では、不規則に配列された網点ドットの大きさを変えることにより階調表現を実現する手法も用いられている。
【0003】
実際に印刷を行う際には、複数の要素が行方向および列方向に配列されるとともに各要素に閾値が付与された閾値マトリクスが準備され、元画像と閾値マトリクスとを比較することにより印刷に用いられる網点画像が生成される。このような網点画像は、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、レタープレス印刷等の有版印刷、または、インクジェット方式や電子写真方式等の印刷装置を用いた無版印刷により、対象物上に印刷される。有版印刷では多数の印刷物を高速に作成することが可能であり、無版印刷では有版印刷にて必要となる刷版を作成することなく、画像データに従って直接的に画像を印刷することが可能となる。
【0004】
なお、印刷物の画質を向上する技術として、特許文献1では、濃度域、色相域、座標域のいずれかに関して、画像の各領域の帯域に応じて当該領域の網点形状を異ならせつつ網点画像を記録する手法が開示されている。また、特許文献2では、座標域、濃度域、色相域、空間周波数域のいずれかの属性において、当該属性が取り得る範囲を分割して複数の属性領域を定義し、各画素がいずれの属性領域に属するかを判定し、その判定結果に基づいて2値網点と、それより大きい多値網点とを含む複数の網点種類のうちのいずれかを選択することにより、網点画像を記録する手法が開示されている。
【0005】
また、非特許文献1のp.235にはシャープネスに関する評価値を求める手法が開示されており、本手法では、まず、画像の各画素に対して8近傍画素との濃度差の絶対値の平均値をHとして求め、横軸にHの値、縦軸に画素数を示す累積ヒストグラムがデルタヒストグラムとして生成される。続いて、当該画像にガウシアンフィルタを施した平均化画像が生成され、平均化画像において同様にデルタヒストグラムが求められる。そして、2つのデルタヒストグラムの差を示す値がシャープネスに関する評価値とされる。
【特許文献1】特開昭61−285867号公報
【特許文献2】特開2000−335014号公報
【非特許文献1】齋藤 文彦,「濃度勾配ヒストグラムによる画像のコントラスト改善」,電学論C,2006年,126巻,2号,p.228−236
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ダイレクトメールにて顧客に広告を送付する際に、顧客の好みに合わせて当該広告の一部を顧客毎に変更する場合等には、有版印刷により低コストにて多数の印刷用紙に同じ画像を印刷し、無版印刷により印刷用紙毎に個別の画像をさらに印刷する(いわゆる、追い刷りする)ことが行われる。例えば、記録解像度が2400dpi(dot per inch)とされる刷版を用いたオフセット印刷用の印刷装置にて2値の画像を印刷用紙に印刷し、記録解像度が600〜720dpiのインクジェット方式の印刷装置にて多値制御(すなわち、2通り以上の大きさのドットの描画制御)を行って画像を同じ印刷用紙に印刷する場合でも、近年では、無版印刷装置の性能の向上により、双方の印刷装置にて良好な画質の印刷が可能となる。
【0007】
しかしながら、実際には、油性インクを用いる高解像度のオフセット印刷では、水性インクを用いるインクジェット方式の印刷装置よりも印刷画像の滲みが少なくなり、インクジェット方式の印刷装置よりもシャープな印刷画像が形成される。したがって、これらの印刷装置にて同一の印刷面に印刷を行うと(いわゆる、ハイブリッド印刷を行うと)、印刷画像においてシャープネスが相違して印刷物の質感が不均一となり、観察者に違和感が生じる場合がある。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、異なる2つの印刷装置にて2つの印刷画像を同一印刷面に形成することにより作成される印刷物の質感の均一性を向上することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、第1画像および第2画像が同一の印刷面に印刷される印刷物を作成する印刷物作成方法であって、a)印刷装置において、第1画像を示す刷版を用いて印刷を行う、または、前記第1画像のデータに従って印刷を行うことにより、第1印刷画像を印刷媒体の印刷面に形成する工程と、b)第2画像にシャープネス変更処理を施すことにより処理済み第2画像を生成する工程と、c)前記印刷装置とは異なるもう1つの印刷装置において、前記処理済み第2画像を示す刷版を用いて印刷を行う、または、前記処理済み第2画像のデータに従って印刷を行うことにより、前記第2画像に前記シャープネス変更処理が施されない場合の印刷画像よりもシャープネスが前記第1印刷画像に近似する第2印刷画像を前記印刷面に形成する工程とを備える。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の印刷物作成方法であって、d)前記印刷装置および前記もう1つの印刷装置のそれぞれにおいて、所定のテスト画像を示す刷版を用いて印刷を行う、または、前記テスト画像のデータに従って印刷を行うことにより、前記印刷装置および前記もう1つの印刷装置にそれぞれ対応する2つのテスト印刷画像を同一または異なる印刷媒体に形成する工程と、e)前記2つのテスト印刷画像のそれぞれを撮像して、前記2つのテスト印刷画像のシャープネスの差を取得する工程とをさらに備え、前記b)工程において、前記2つのテスト印刷画像のシャープネスの差に基づいて前記第2画像に前記シャープネス変更処理が施される。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の印刷物作成方法であって、前記印刷装置および前記もう1つの印刷装置にそれぞれ対応する2つのテスト印刷画像のシャープネスの差と、複数のフィルタとの対応付けを示すフィルタ情報が予め準備されており、前記e)工程にて取得される前記2つのテスト印刷画像のシャープネスの差を用いて前記フィルタ情報を参照することにより一のフィルタが特定され、前記b)工程において、前記フィルタを用いて前記第2画像に前記シャープネス変更処理が施される。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の印刷物作成方法であって、前記印刷装置が、前記第1画像を示す刷版を用いて印刷を行う有版印刷装置であり、前記もう1つの印刷装置が、前記処理済み第2画像のデータに従って印刷を行う無版印刷装置である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の印刷物作成方法であって、前記もう1つの印刷装置が、インクジェット方式の印刷装置であり、前記b)工程において、前記第2画像のシャープネスを高める前記シャープネス変更処理が行われることにより、前記処理済み第2画像が生成される。
【0014】
請求項6に記載の発明は、第1画像および第2画像が同一の印刷面に印刷される印刷物を作成する印刷物作成システムであって、第1画像を示す刷版を用いて印刷を行う、または、前記第1画像のデータに従って印刷を行うことにより、第1印刷画像を印刷媒体の印刷面に形成する印刷装置と、第2画像にシャープネス変更処理を施すことにより処理済み第2画像を生成する処理部と、前記処理済み第2画像を示す刷版を用いて印刷を行う、または、前記処理済み第2画像のデータに従って印刷を行うことにより、前記第2画像に前記シャープネス変更処理が施されない場合の印刷画像よりもシャープネスが前記第1印刷画像に近似する第2印刷画像を前記印刷面に形成するもう1つの印刷装置とを備える。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の印刷物作成システムであって、前記印刷装置および前記もう1つの印刷装置のそれぞれにおいて、テスト印刷として所定のテスト画像を示す刷版を用いて印刷を行う、または、前記テスト画像のデータに従って印刷を行うことにより、前記印刷装置および前記もう1つの印刷装置にそれぞれ対応する2つのテスト印刷画像が同一または異なる印刷媒体に形成され、前記2つのテスト印刷画像のそれぞれを撮像することにより、前記2つのテスト印刷画像のシャープネスの差が取得され、前記処理部が、前記2つのテスト印刷画像のシャープネスの差に基づいて前記第2画像に前記シャープネス変更処理を施す。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の印刷物作成システムであって、前記印刷装置および前記もう1つの印刷装置にそれぞれ対応する2つのテスト印刷画像のシャープネスの差と、複数のフィルタとの対応付けを示すフィルタ情報を記憶する記憶部をさらに備え、前記処理部が、前記テスト印刷にて取得される前記2つのテスト印刷画像のシャープネスの差を用いて前記フィルタ情報を参照することにより一のフィルタを特定し、前記フィルタを用いて前記第2画像に前記シャープネス変更処理を施す。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項7または8に記載の印刷物作成システムであって、前記テスト印刷にて取得される前記2つのテスト印刷画像を撮像する撮像部をさらに備え、前記印刷装置および前記もう1つの印刷装置が印刷媒体の搬送経路に沿って配置され、前記撮像部が前記搬送経路において前記印刷装置および前記もう1つの印刷装置の下流側に配置される。
【0018】
請求項10に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の印刷物作成方法により形成されたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、異なる2つの印刷装置にて同一印刷面にそれぞれ形成される2つの印刷画像のシャープネスを近似させることにより、印刷物の質感の均一性を向上することができる。
【0020】
また、請求項2および7の発明では、同一印刷面に形成される2つの印刷画像のシャープネスを精度よく近似させることができ、請求項3および8の発明では、シャープネス変更処理にて用いられるフィルタを容易に特定することができる。
【0021】
また、請求項5の発明では、有版印刷装置およびインクジェット方式の印刷装置を用いる場合でも、第2画像のシャープネスを高めることにより、印刷物の質感の均一性を向上することができ、請求項9の発明では、同一の撮像部にて撮像データを取得することにより、2つのテスト印刷画像のシャープネスの差を精度よく求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は本発明の一の実施の形態に係る印刷物作成システム1の構成を示すブロック図である。印刷物作成システム1は、有版印刷装置にて多数の印刷用紙に同じ画像を印刷し、無版印刷装置にて印刷用紙毎に個別の画像を印刷することにより、印刷物を作成するものである。
【0023】
図1の印刷物作成システム1は、刷版を用いて印刷用紙上に印刷を行うオフセット印刷機2、オフセット印刷機2にて用いられる刷版を作成する製版装置3、印刷用紙に向けてインクの微小液滴を吐出することにより印刷を行うインクジェットプリンタ4、インクジェットプリンタ4における描画データを生成する処理部5、オフセット印刷機2およびインクジェットプリンタ4における印刷対象の画像のデータを記憶する画像記憶部6、並びに、オフセット印刷機2にて印刷された画像(印刷画像)を撮像するスキャナ7を備える。
【0024】
製版装置3は、画像記憶部6から入力される画像データから描画データを生成するRIP(Raster Image Processor)としての役割を果たすとともに製版装置3の全体制御を担う制御部31(例えばコンピュータにより実現される。)、並びに、描画データに従って刷版上に画像を記録する製版部32を備える。制御部31は、画像記憶部6から入力される画像データを記憶する画像データバッファ311、閾値マトリクスを記憶するマトリクス記憶部312(SPM(Screen Pattern Memory)とも呼ばれる。)、および、画像データバッファ311からの各画素の値(画素値)とマトリクス記憶部312からの対応する閾値とを比較することにより2値の網点画像を示す描画データを生成する比較演算部313を備える。
【0025】
処理部5も、製版装置3の制御部31と同様に、画像データバッファ51、マトリクス記憶部52および比較演算部53を備え、これらの構成要素に追加して、スキャナ7およびインクジェットプリンタ4のラインセンサ41からの撮像データが入力されるシャープネス解析部54、後述するフィルタ情報551を記憶する記憶部55、画像データバッファ51と比較演算部53との間に設けられるシャープネス処理部56を備える。なお、図1では撮像データの転送経路を破線の矢印にて示している(後述の図7において同様)。
【0026】
図2は、印刷物作成システム1にて印刷物を作成する処理の流れを示す図である。印刷物作成システム1では、まず、オフセット印刷機2およびインクジェットプリンタ4のそれぞれにおいて、テスト印刷としてテスト画像が印刷される(ステップS11)。
【0027】
具体的には、テスト画像は、図3に示すように多くのエッジ成分を含んだ画像(例えば、風景画像や人物のポートレート画像等の自然画像)とされ、テスト画像を示すテスト画像データ63が画像記憶部6から製版装置3の画像データバッファ311に入力される。制御部31の比較演算部313では、テスト画像データ63が示すテスト画像の各画素の値が対応する閾値マトリクスの閾値と比較されて、2値の網点画像を示す描画データが生成される。
【0028】
製版部32は、刷版が取り付けられる回転ドラム、回転ドラム上の刷版に光を照射する光照射部、および、光照射部を回転ドラムの回転軸に平行な方向に移動する移動機構を備え、制御部31が描画データに従って各構成要素を制御することにより、光照射部からの光の照射により、例えば2400dpiの記録解像度にて刷版にテスト画像を示す画像が記録される。テスト画像を示す刷版はオフセット印刷機2へと搬送され、オフセット印刷機2が有する回転ドラムに取り付けられる。そして、回転ドラムと共に回転する刷版に湿し水および油性インクが付与され、刷版上のインクが中間転写体を介して印刷用紙に転写され、印刷用紙上にテスト画像を示すテスト印刷画像が形成される。テスト画像が印刷された印刷用紙はスキャナ7へと搬送される。図1では印刷用紙の搬送経路を太線の矢印にて示している(後述の図7において同様)。なお、テスト画像がカラーである場合には、テスト画像の各色成分において描画データが生成されて製版部32にて刷版が作製され、オフセット印刷機2にて複数の色成分の刷版を用いて印刷用紙にカラーのテスト画像が印刷される(後述の第1画像の印刷において同様)。
【0029】
また、インクジェットプリンタ4にてテスト画像を印刷する際には、テスト画像を示すテスト画像データ63が画像記憶部6から処理部5の画像データバッファ51に入力される。ここで、インクジェットプリンタ4におけるヘッドでは、印刷用紙上にSサイズのドット、Sサイズよりも大きいMサイズのドット、および、Mサイズよりも大きいLサイズのドットが描画可能とされており、処理部5のマトリクス記憶部52では、Sサイズのドット、MサイズのドットおよびLサイズのドットにそれぞれ対応する複数の閾値マトリクスが記憶される。比較演算部53では、テスト画像データ63が示すテスト画像の各画素の値が各閾値マトリクスの対応する閾値と比較されることにより、Sサイズのドットの描画を指示する値、Mサイズのドットの描画を指示する値、Lサイズのドットの描画を指示する値、および、ドットの非描画を指示する値の4値の網点画像を示す描画データが生成される。
【0030】
また、ヘッドでは、複数の吐出口が、例えば720dpiに相当するピッチにて配列されており、ヘッドの下方にて吐出口の配列方向に垂直な方向に印刷用紙を移動しつつ、描画データに従ってヘッドからのインク(水性インク)の吐出制御が行われることにより、印刷用紙上にテスト画像を示すテスト印刷画像が形成される。実際には、ヘッドの複数の吐出口は印刷用紙の幅の全体に亘って配列されており、印刷用紙がヘッドの下方を1回通過するのみで(いわゆる、ワンパスにて)、印刷用紙への印刷が完了する。なお、テスト画像がカラーである場合には、テスト画像の各色成分において描画データが生成され、当該描画データに従って当該色のインクを吐出するヘッドからのインクの吐出制御が行われることにより、印刷用紙にカラーのテスト画像が印刷される(後述の第2画像の印刷において同様)。
【0031】
オフセット印刷機2にて形成されたテスト印刷画像はスキャナ7にて撮像され、撮像データが処理部5のシャープネス解析部54に入力される。また、インクジェットプリンタ4では、印刷用紙の移動方向の下流側の上方に配置されるインラインのラインセンサ41により、形成された直後のテスト印刷画像の部分が順次撮像されて撮像データが取得され、シャープネス解析部54に入力される(ステップS12)。このとき、好ましくはスキャナ7およびラインセンサ41における読み取り解像度が等しくされ、スキャナ7およびラインセンサ41ではグレースケールの撮像データが取得される。なお、スキャナ7およびラインセンサ41にてカラーの(すなわち、R(赤)、G(緑)、B(青)の色成分を有する)撮像データが取得されてもよく、この場合、シャープネス解析部54では、後述の演算を行う前に、カラーの撮像データをグレースケール変換する処理が行われる。
【0032】
シャープネス解析部54では、スキャナ7およびラインセンサ41のそれぞれから入力されるグレースケールの撮像データが示す画像(以下、「撮像画像」という。)において、非特許文献1(齋藤 文彦,「濃度勾配ヒストグラムによる画像のコントラスト改善」,電学論C,2006年,126巻,2号,p.228−236)のp.235に記載の手法を用いてシャープネス(鮮鋭度)に関する評価値が求められる。
【0033】
具体的には、まず、0〜255の256階調にて表される撮像画像の各画素の値をg(x,y)として、各画素において8近傍の画素との濃度差(画素値の差)の絶対値の平均値H(x,y)が数1により求められる。
【0034】
【数1】

【0035】
続いて、各画素に対する値H(x,y)が例えば四捨五入により整数nにて表され、横軸にn、縦軸に画素数を示す累積ヒストグラムがデルタヒストグラムとして生成される。また、当該撮像画像にガウシアンフィルタを施した平均化画像が生成され、平均化画像において同様にデルタヒストグラムが求められる。そして、撮像画像から直接求められるデルタヒストグラム(すなわち、撮像画像にガウシアンフィルタを施すことなく求められるデルタヒストグラム)の値nにおける画素数をD(n)とし、平均化画像から求められるデルタヒストグラムの値nにおける画素数をD(n)とし、撮像画像(または平均化画像)の画素数をNとして、撮像画像のシャープネスに関する評価値SFが数2により求められる。
【0036】
【数2】

【0037】
シャープネス解析部54では、さらに、スキャナ7にて取得された撮像画像の評価値(すなわち、オフセット印刷機2におけるテスト印刷画像の評価値)と、ラインセンサ41にて取得された撮像画像の評価値(すなわち、インクジェットプリンタ4におけるテスト印刷画像の評価値)との差(以下、「シャープネス評価差分値」という。)が求められる(ステップS13)。シャープネス評価差分値は、オフセット印刷機2にて印刷用紙に形成されるテスト印刷画像とインクジェットプリンタ4にて印刷用紙に形成されるテスト印刷画像とのシャープネスの差を示すものであり、ステップS13の処理は2つのテスト印刷画像のシャープネスの差を取得する処理となる。もちろん、2つのテスト印刷画像のシャープネスの差は、デルタヒストグラムを用いる上記手法以外の手法にて数値化されてもよい。
【0038】
図4.Aおよび図4.Bはシャープネスフィルタの例を示す図である。図4.Aおよび図4.Bに示すように、処理部5の記憶部55にて予め記憶されるフィルタ情報551は、画像のシャープネスを高めるシャープネス処理の程度が異なる複数のシャープネスフィルタを示している。なお、シャープネスフィルタの係数(要素値)は、図4.Aおよび図4.Bに示すように通常整数とされるが、小数とされてもよい。
【0039】
また、フィルタ情報551は、オフセット印刷機2およびインクジェットプリンタ4にそれぞれ対応する2つのテスト印刷画像のシャープネスの差(すなわち、シャープネス評価差分値)と、複数のシャープネスフィルタのうち、インクジェットプリンタ4におけるテスト画像に対して用いることにより、インクジェットプリンタ4にて形成される印刷画像のシャープネスをオフセット印刷機2におけるテスト印刷画像のシャープネスに最も近似させるシャープネスフィルタとの対応付けも示している。
【0040】
シャープネス解析部54では、ステップS13の処理にて取得されるシャープネス評価差分値を用いてフィルタ情報551を参照することにより一のシャープネスフィルタ(以下、「特定シャープネスフィルタ」という。)が特定され、特定シャープネスフィルタがシャープネス処理部56に入力される(ステップS14)。
【0041】
続いて、印刷物作成システム1では、作成予定の印刷物におけるオフセット印刷機2での印刷対象の第1画像を示す第1画像データ61が画像記憶部6から製版装置3の画像データバッファ311に入力され、テスト画像データ63の場合と同様にして、比較演算部313にて描画データが生成されて、第1画像を示す刷版が作製される。そして、オフセット印刷機2において当該刷版を用いて印刷を行うことにより、図5に示すように、第1印刷画像81が印刷用紙9の印刷面91に形成される(ステップS15)。
【0042】
オフセット印刷機2にて第1画像が印刷されると、印刷用紙9がインクジェットプリンタ4へと搬送される。また、作成予定の印刷物におけるインクジェットプリンタ4での印刷対象の第2画像を示す第2画像データ62が画像記憶部6から処理部5の画像データバッファ51に入力される。シャープネス処理部56では、第2画像の各画素の値が特定シャープネスフィルタを用いて変換され、変換後の画素の値が比較演算部53に入力される(ステップS16)。そして、テスト画像データ63の場合と同様にして、変換後の画素の値が各閾値マトリクスの対応する閾値と比較されることにより、4値の網点画像を示す描画データが生成され、インクジェットプリンタ4において描画データに従ってヘッドからのインクの吐出制御を行うことにより、図6に示すように、第1印刷画像81に並んで第2印刷画像82が印刷用紙9の印刷面91に形成される(ステップS17)。これにより、第1画像および第2画像が同一の印刷面91に印刷される印刷物が作成される。
【0043】
ところで、本実施の形態では、シャープネス処理部56における第2画像の各画素の値の変換(ステップS16)、並びに、比較演算部53における変換後の画素の値からの描画データの生成、および、インクジェットプリンタ4における描画データに基づく印刷動作(ステップS17)が並行して行われるが、実質的には、上記ステップS16は第2画像に特定シャープネスフィルタを用いてシャープネス処理を施すことにより処理済み第2画像を生成する処理となり、上記ステップS17はインクジェットプリンタ4において、処理済み第2画像のデータに従って印刷を行うことにより第2印刷画像82を印刷用紙9の印刷面91に形成する処理となる。
【0044】
印刷物作成システム1では、ステップS15〜S17の処理が多数の印刷用紙に対して繰り返され、多数の印刷物が作成される(ステップS18)。このとき、オフセット印刷機2では多数の印刷用紙に同じ画像が印刷され、インクジェットプリンタ4では多数の印刷用紙に対して異なる(または複数枚の印刷用紙毎に異なる)第2画像データを用いて(ただし、図1では1つの第2画像データ62のみを図示している。)個別の画像が印刷され、異なる画像を示す領域を含む多数の印刷物が効率よく作成される。必要な枚数の印刷物が作成されると、印刷物を作成する処理が完了する(ステップS18)。印刷物作成システム1では、ステップS15の処理のみを繰り返すことにより、オフセット印刷機2にて多数の印刷用紙に同じ画像を印刷し、続いて、ステップS16,S17の処理を繰り返すことにより、インクジェットプリンタ4にてこれらの印刷用紙に対して異なる画像が順次印刷されてもよい。
【0045】
以上に説明したように、印刷物作成システム1では、オフセット印刷機2にて第1画像を印刷用紙9に印刷した後に、インクジェットプリンタ4にて第2画像を印刷用紙9に印刷する際に、処理部5にて第2画像のシャープネスを高めるシャープネス処理を行うことにより処理済み第2画像が生成され、インクジェットプリンタ4にて処理済み第2画像のデータに従って印刷が行われる。これにより、第2画像にシャープネス処理が施されない場合の印刷画像よりもシャープネスが第1印刷画像に近似する第2印刷画像が印刷用紙9に形成される。このように、印刷物作成システム1では、異なる2つの印刷装置にて同一印刷面にそれぞれ形成される2つの印刷画像のシャープネスを近似させることにより、いわゆるハイブリッド印刷にて作成される印刷物の全体の質感の均一性を向上することができる。
【0046】
また、印刷物作成システム1では、オフセット印刷機2およびインクジェットプリンタ4のそれぞれにおいて、テスト印刷としてテスト画像を示す刷版を用いて印刷を行う、または、テスト画像のデータに従って印刷を行うことにより、オフセット印刷機2およびインクジェットプリンタ4にそれぞれ対応する2つのテスト印刷画像が異なる印刷用紙に形成され、2つのテスト印刷画像のそれぞれを撮像して2つのテスト印刷画像のシャープネスの差が取得される。そして、当該シャープネスの差を用いてフィルタ情報551を参照することにより使用すべきシャープネスフィルタが特定シャープネスフィルタとして容易に特定され、特定シャープネスフィルタを用いて第2画像にシャープネス処理が施される。このように、2つのテスト印刷画像のシャープネスの差に基づいて第2画像にシャープネス処理を施すことにより、同一印刷面に形成される2つの印刷画像のシャープネスを精度よく近似させることができる。なお、テスト印刷は、オフセット印刷機2およびインクジェットプリンタ4のそれぞれにおける印刷に係る各種設定や、印刷に使用するインクの種類、あるいは、印刷用紙の種類等が変更される際にのみ行われてもよい。
【0047】
図7は、印刷物作成システムの他の例の構成を示すブロック図である。図7の印刷物作成システム1aでは、図1のオフセット印刷機2およびインクジェットプリンタ4が1つの印刷システム10として構成され、スキャナ7は設けられない。他の構成は図1と同様であり、同符号を示している。なお、図7では図1の画像記憶部6の図示を省略している。
【0048】
印刷システム10は、実際には、オフセット印刷機2において、回転ドラムおよび中間転写体の下流側(すなわち、印刷用紙の排出側)にインクジェットプリンタ4のヘッド、および、ラインセンサ41を配列したものであり、オフセット印刷機2内にインクジェットプリンタ4のヘッドおよびラインセンサ41を設けたものと捉えることもできる。オフセット印刷機2にて画像が印刷された印刷用紙は、インクジェットプリンタ4のヘッドの下方を通過して画像が印刷され、ラインセンサ41により、必要に応じて印刷用紙上の印刷画像が撮像可能となっている。
【0049】
図7の印刷物作成システム1aにて印刷物を作成する際には、オフセット印刷機2にて印刷用紙にテスト画像が印刷され、同一の印刷面にインクジェットプリンタ4により同様のテスト画像が印刷される(図2:ステップS11)。オフセット印刷機2およびインクジェットプリンタ4にて形成された2つのテスト印刷画像は、ラインセンサ41により撮像されて、シャープネス解析部54に撮像データが入力される(ステップS12)。
【0050】
テスト印刷画像の撮像データが取得されると、上記処理と同様にしてシャープネス評価差分値が求められるとともに(ステップS13)、フィルタ情報551を参照することにより1つのシャープネスフィルタが特定シャープネスフィルタとして特定され、シャープネス処理部56に入力される(ステップS14)。続いて、製版装置3では第1画像データに基づいて第1画像を示す刷版が作製され、オフセット印刷機2では当該刷版を用いて印刷を行うことにより印刷用紙上に第1画像が印刷される(ステップS15)。また、シャープネス処理部56では、第2画像にシャープネス処理を施すことにより処理済み第2画像が生成され(ステップS16)、インクジェットプリンタ4において、オフセット印刷機2から排出された直後の印刷用紙に対して、処理済み第2画像のデータに従って印刷を行うことにより第2画像が印刷される(ステップS17)。ステップS15〜S17の処理は、第2画像を変更しつつ多数の印刷用紙に対して繰り返され、多数の印刷物が作成される(ステップS18)。
【0051】
以上に説明したように、図7の印刷物作成システム1aでは、オフセット印刷機2およびインクジェットプリンタ4が印刷用紙の搬送経路に沿って配置されるとともに、撮像部であるラインセンサ41が、当該搬送経路においてオフセット印刷機2およびインクジェットプリンタ4の下流側に配置される。これにより、印刷物作成システム1aでは、同一の撮像部にて撮像データを取得することができ、異なる撮像部にて撮像データを取得する場合に生じる撮像画像の質のばらつきを抑制することができ、異なる2つの印刷装置にて形成される2つのテスト印刷画像のシャープネスの差を精度よく求めることができる。その結果、いわゆるハイブリッド印刷にて作成される印刷物の全体の質感の均一性を向上することができる。また、印刷物作成システム1aでは、1つのラインセンサ41のみが設けられることにより、印刷物作成システム1aの構成の簡素化を図ることができる。
【0052】
図8は、処理部の他の例の構成を示すブロック図である。図8の処理部5aは、図1の処理部5にフィルタ情報修正部57が追加されたものとなっており、フィルタ情報修正部57はシャープネス解析部54および記憶部55に接続される。他の構成は図1と同様であり、同符号を付している。
【0053】
図9は、処理部5aを有する印刷物作成システム1が印刷物を作成する処理の流れの一部を示す図であり、図2中のステップS14とステップS15との間にて行われる処理を示している。
【0054】
印刷物作成システム1では、特定シャープネスフィルタを準備する際に、オフセット印刷機2およびインクジェットプリンタ4のそれぞれにてテスト画像が印刷され(図2:ステップS11)、テスト印刷画像が撮像される(ステップS12)。続いて、シャープネス解析部54では、オフセット印刷機2におけるテスト印刷画像の評価値、および、インクジェットプリンタ4におけるテスト印刷画像の評価値が求められ、シャープネス評価差分値が求められる(ステップS13)。そして、フィルタ情報551を参照することにより、例えば図4.Aに示す特定シャープネスフィルタが特定され、シャープネス処理部56に入力される(ステップS14)。
【0055】
続いて、処理部5aでは、図4.Aの特定シャープネスフィルタを用いてテスト画像にシャープネス処理が施されることにより処理済みテスト画像が生成され(図9:ステップS21)、インクジェットプリンタ4(図1参照)にて処理済みテスト画像のデータに従って印刷を行うことにより、処理済みテスト印刷画像が印刷用紙に形成される(ステップS22)。処理済みテスト印刷画像はラインセンサ41にて撮像され(ステップS23)、撮像データが示す撮像画像からシャープネスに関する評価値(すなわち、インクジェットプリンタ4における処理済みテスト印刷画像の評価値)が求められる(ステップS24)。そして、上記ステップS13の処理にて求められた、オフセット印刷機2におけるテスト印刷画像の評価値と、ステップS24の処理にて求められた処理済みテスト印刷画像の評価値との差であるシャープネス評価差分値が求められる(ステップS25)。
【0056】
フィルタ情報修正部57では、シャープネス評価差分値が所定値以下となっていないことが確認されると(ステップS26)、図4.Aの特定シャープネスフィルタのサイズや係数(要素値)を変更することにより、新たなシャープネスフィルタが生成され、シャープネス処理部56に入力される(ステップS27)。続いて、当該シャープネスフィルタを用いてテスト画像にシャープネス処理が施されることにより新たな処理済みテスト画像が生成され(ステップS21)、インクジェットプリンタ4にて処理済みテスト画像のデータに従って印刷を行うことにより、処理済みテスト印刷画像が印刷用紙に形成される(ステップS22)。処理済みテスト印刷画像はラインセンサ41にて撮像され(ステップS23)、処理済みテスト印刷画像の評価値が求められる(ステップS24)。そして、オフセット印刷機2におけるテスト印刷画像の評価値と、処理済みテスト印刷画像の評価値との差であるシャープネス評価差分値が求められ(ステップS25)、シャープネス評価差分値が所定値以下となっているか否かが確認される。
【0057】
このようにして、印刷物作成システム1では、シャープネス評価差分値が所定値以下となるシャープネスフィルタ(以下、「最適化済みシャープネスフィルタ」という。)が取得されるまで、上記ステップS27,S21〜S25の処理が繰り返され(ステップS26)、例えば、図4.Bのシャープネスフィルタが最適化済みシャープネスフィルタとして取得される。なお、最適化済みシャープネスフィルタがステップS13の処理にて取得されるシャープネス評価差分値に対応するものとして、フィルタ情報551が更新されてもよい。
【0058】
続いて、製版装置3では第1画像データに基づいて第1画像を示す刷版が作製され、オフセット印刷機2では当該刷版を用いて印刷を行うことにより印刷用紙上に第1画像が印刷される(図2:ステップS15)。また、シャープネス処理部56では、最適化済みシャープネスフィルタを用いて第2画像にシャープネス処理を施すことにより処理済み第2画像が生成され(ステップS16)、インクジェットプリンタ4において、処理済み第2画像のデータに従って印刷を行うことにより第2画像が印刷されて印刷物が完成する(ステップS17)。ステップS15〜S17の処理は、第2画像を変更しつつ多数の印刷用紙に対して繰り返され、多数の印刷物が作成される(ステップS18)。
【0059】
以上に説明したように、図8の処理部5aを有する印刷物作成システム1では、オフセット印刷機2におけるテスト印刷画像と、インクジェットプリンタ4における処理済みテスト印刷画像との間のシャープネス評価差分値が所定値以下となるように、シャープネスフィルタのサイズや係数を修正することにより、異なる2つの印刷装置にて同一印刷面に形成される2つの印刷画像のシャープネスをより精度よく近似させることができ、印刷物の質感の均一性をさらに向上させることができる。なお、上記手法では、サイズや係数等のパラメータを少しずつ変えながら最適解を探索する手法(いわゆる、貪欲法)が用いられるが、他の最適化手法により最適化済みシャープネスフィルタが取得されてもよい。また、図8の処理部5aが図7の印刷物作成システム1aに設けられてもよい。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0061】
印刷物作成システム1,1aでは、有版印刷装置であるオフセット印刷機2、および、無版印刷装置であるインクジェットプリンタ4が設けられ、オフセット印刷機2にて第1画像を示す刷版を用いて印刷を行い、インクジェットプリンタ4にて処理済み第2画像のデータに従って印刷を行うことにより、印刷物の質感の均一性を向上することが実現されるが、印刷物作成システムでは、オフセット印刷機2およびインクジェットプリンタ4以外に、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、レタープレス印刷等を行う他の種類の有版印刷装置や、電子写真方式等の他の種類の無版印刷装置が設けられてもよい。また、印刷物作成システムでは、例えば記録解像度やインクの種類が相違する2つのインクジェットプリンタが設けられ、処理部にて一方のインクジェットプリンタにおける印刷対象の画像にシャープネス処理を施すことにより、異なる2つのインクジェットプリンタを用いて作成される印刷物の質感の均一性を向上させることも可能である。このように、印刷物作成システムでは、2つの有版印刷装置、または、2つの無版印刷装置が設けられてもよい。
【0062】
以上のように、異なる2つの印刷装置にて同一の印刷面に第1画像および第2画像をそれぞれ印刷して印刷物を作成する際に、印刷物の質感の均一性を向上するという観点では、一方の印刷装置において、第1画像を示す刷版を用いて印刷を行う、または、第1画像のデータに従って印刷を行うことにより、第1印刷画像を印刷用紙の印刷面に形成し、第2画像にシャープネス処理を施すことにより処理済み第2画像を生成し、他方の印刷装置において、処理済み第2画像を示す刷版を用いて印刷を行う、または、処理済み第2画像のデータに従って印刷を行うことにより、第2画像にシャープネス処理が施されない場合の印刷画像(すなわち、第2画像を示す刷版を用いて印刷を行う、または、第2画像のデータに従って印刷を行う場合の印刷画像)よりもシャープネスが第1印刷画像に近似する第2印刷画像を印刷面に形成することが重要となる。
【0063】
ところで、インクジェット方式の印刷装置では、電子写真方式の印刷装置等、他の種類の無版印刷装置に比べて印刷画像におけるシャープネスの低下が大きくなり、有版印刷装置における印刷画像とのシャープネスの差が顕著となる。したがって、一方の印刷装置における印刷画像のシャープネスが、他方の印刷装置における印刷画像に近似するように、当該一方の印刷装置における印刷対象の画像にシャープネスを高めるシャープネス処理を施す手法は、当該一方の印刷装置がインクジェット方式の印刷装置であり、当該他方の印刷装置が有版印刷装置である場合に採用することが特に好ましいといえる。
【0064】
また、作成する印刷物の用途によっては、インクジェットプリンタ4においてシャープネス処理が施されない画像のデータに従って印刷が行われ、オフセット印刷機2における印刷対象の画像にシャープネスを低下させる処理を施して処理済み画像を取得し、オフセット印刷機2において処理済み画像を示す刷版を用いて印刷を行うことにより、2つの印刷画像のシャープネスを近似させてもよい。すなわち、印刷物作成システムでは、一方の印刷装置における印刷対象の画像にシャープネス変更処理を施すことにより、当該画像にシャープネス変更処理が施されない場合の印刷画像よりもシャープネスが他方の印刷装置における印刷画像に近似する印刷画像を当該一方の印刷装置において形成することが重要となる。なお、当該他方の印刷装置における印刷対象の画像が、元の画像からシャープネスが変更されたものであってもよく、この場合も、当該一方の印刷装置における印刷画像のシャープネスが当該他方の印刷装置における印刷画像のシャープネスに近似するように、当該一方の印刷装置における印刷対象の画像にシャープネス変更処理が施される。
【0065】
上記実施の形態では、印刷物作成システムにて異なる2つの印刷装置が設けられるが、異なる3以上の印刷装置が設けられる印刷物作成システムにおいて、一の印刷装置における印刷画像のシャープネスに合わせて、他の各印刷装置における印刷対象の画像にシャープネス変更処理が施されてもよい。
【0066】
図2に示す処理の流れは、可能な範囲内で適宜変更されてもよい。例えば、印刷物作成システムに設けられる印刷装置の種類によっては、処理済み第2画像を生成する処理(ステップS16)、および、第2印刷画像を印刷面に形成する処理(ステップS17)の後に、第1印刷画像を当該印刷面に形成する処理(ステップS15)が行われてもよい。
【0067】
印刷物作成システム1,1aにおける印刷媒体は、印刷用紙以外に、フィルムや板状の部材等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】印刷物作成システムの構成を示すブロック図である。
【図2】印刷物を作成する処理の流れを示す図である。
【図3】テスト画像を示す図である。
【図4.A】シャープネスフィルタを示す図である。
【図4.B】シャープネスフィルタを示す図である。
【図5】第1印刷画像が形成された印刷用紙を示す図である。
【図6】第1および第2印刷画像が形成された印刷用紙を示す図である。
【図7】印刷物作成システムの他の例の構成を示すブロック図である。
【図8】処理部の他の例の構成を示すブロック図である。
【図9】印刷物を作成する処理の流れの一部を示す図である。
【符号の説明】
【0069】
1,1a 印刷物作成システム
2 オフセット印刷機
4 インクジェットプリンタ
5,5a 処理部
7 スキャナ
9 印刷用紙
41 ラインセンサ
55 記憶部
61 第1画像データ
62 第2画像データ
63 テスト画像データ
81 第1印刷画像
82 第2印刷画像
91 印刷面
551 フィルタ情報
S11〜S13,S15〜S17 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1画像および第2画像が同一の印刷面に印刷される印刷物を作成する印刷物作成方法であって、
a)印刷装置において、第1画像を示す刷版を用いて印刷を行う、または、前記第1画像のデータに従って印刷を行うことにより、第1印刷画像を印刷媒体の印刷面に形成する工程と、
b)第2画像にシャープネス変更処理を施すことにより処理済み第2画像を生成する工程と、
c)前記印刷装置とは異なるもう1つの印刷装置において、前記処理済み第2画像を示す刷版を用いて印刷を行う、または、前記処理済み第2画像のデータに従って印刷を行うことにより、前記第2画像に前記シャープネス変更処理が施されない場合の印刷画像よりもシャープネスが前記第1印刷画像に近似する第2印刷画像を前記印刷面に形成する工程と、
を備えることを特徴とする印刷物作成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷物作成方法であって、
d)前記印刷装置および前記もう1つの印刷装置のそれぞれにおいて、所定のテスト画像を示す刷版を用いて印刷を行う、または、前記テスト画像のデータに従って印刷を行うことにより、前記印刷装置および前記もう1つの印刷装置にそれぞれ対応する2つのテスト印刷画像を同一または異なる印刷媒体に形成する工程と、
e)前記2つのテスト印刷画像のそれぞれを撮像して、前記2つのテスト印刷画像のシャープネスの差を取得する工程と、
をさらに備え、
前記b)工程において、前記2つのテスト印刷画像のシャープネスの差に基づいて前記第2画像に前記シャープネス変更処理が施されることを特徴とする印刷物作成方法。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷物作成方法であって、
前記印刷装置および前記もう1つの印刷装置にそれぞれ対応する2つのテスト印刷画像のシャープネスの差と、複数のフィルタとの対応付けを示すフィルタ情報が予め準備されており、
前記e)工程にて取得される前記2つのテスト印刷画像のシャープネスの差を用いて前記フィルタ情報を参照することにより一のフィルタが特定され、前記b)工程において、前記フィルタを用いて前記第2画像に前記シャープネス変更処理が施されることを特徴とする印刷物作成方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の印刷物作成方法であって、
前記印刷装置が、前記第1画像を示す刷版を用いて印刷を行う有版印刷装置であり、
前記もう1つの印刷装置が、前記処理済み第2画像のデータに従って印刷を行う無版印刷装置であることを特徴とする印刷物作成方法。
【請求項5】
請求項4に記載の印刷物作成方法であって、
前記もう1つの印刷装置が、インクジェット方式の印刷装置であり、
前記b)工程において、前記第2画像のシャープネスを高める前記シャープネス変更処理が行われることにより、前記処理済み第2画像が生成されることを特徴とする印刷物作成方法。
【請求項6】
第1画像および第2画像が同一の印刷面に印刷される印刷物を作成する印刷物作成システムであって、
第1画像を示す刷版を用いて印刷を行う、または、前記第1画像のデータに従って印刷を行うことにより、第1印刷画像を印刷媒体の印刷面に形成する印刷装置と、
第2画像にシャープネス変更処理を施すことにより処理済み第2画像を生成する処理部と、
前記処理済み第2画像を示す刷版を用いて印刷を行う、または、前記処理済み第2画像のデータに従って印刷を行うことにより、前記第2画像に前記シャープネス変更処理が施されない場合の印刷画像よりもシャープネスが前記第1印刷画像に近似する第2印刷画像を前記印刷面に形成するもう1つの印刷装置と、
を備えることを特徴とする印刷物作成システム。
【請求項7】
請求項6に記載の印刷物作成システムであって、
前記印刷装置および前記もう1つの印刷装置のそれぞれにおいて、テスト印刷として所定のテスト画像を示す刷版を用いて印刷を行う、または、前記テスト画像のデータに従って印刷を行うことにより、前記印刷装置および前記もう1つの印刷装置にそれぞれ対応する2つのテスト印刷画像が同一または異なる印刷媒体に形成され、前記2つのテスト印刷画像のそれぞれを撮像することにより、前記2つのテスト印刷画像のシャープネスの差が取得され、前記処理部が、前記2つのテスト印刷画像のシャープネスの差に基づいて前記第2画像に前記シャープネス変更処理を施すことを特徴とする印刷物作成システム。
【請求項8】
請求項7に記載の印刷物作成システムであって、
前記印刷装置および前記もう1つの印刷装置にそれぞれ対応する2つのテスト印刷画像のシャープネスの差と、複数のフィルタとの対応付けを示すフィルタ情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記処理部が、前記テスト印刷にて取得される前記2つのテスト印刷画像のシャープネスの差を用いて前記フィルタ情報を参照することにより一のフィルタを特定し、前記フィルタを用いて前記第2画像に前記シャープネス変更処理を施すことを特徴とする印刷物作成システム。
【請求項9】
請求項7または8に記載の印刷物作成システムであって、
前記テスト印刷にて取得される前記2つのテスト印刷画像を撮像する撮像部をさらに備え、
前記印刷装置および前記もう1つの印刷装置が印刷媒体の搬送経路に沿って配置され、前記撮像部が前記搬送経路において前記印刷装置および前記もう1つの印刷装置の下流側に配置されることを特徴とする印刷物作成システム。
【請求項10】
請求項1ないし5のいずれかに記載の印刷物作成方法により形成されたことを特徴とする印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4.A】
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【図4.B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−17953(P2010−17953A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181286(P2008−181286)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】