説明

印刷装置、印刷制御装置、印刷方法、印刷制御方法およびプログラム

【課題】一般のアプリケーションを用いて、通常のカラートナーを用いた印刷に加え特色記録剤を用いた印刷を行う場合の指定を柔軟に行うことが困難であった。
【解決手段】原稿データの印刷を特色記録剤を用いて行うためのPDLデータを作成する印刷制御装置であって、前記原稿データの中に特定の性質を有するオブジェクトが存在するか否かを判定する判定手段と、前記特定の性質を有するオブジェクトであると判定された該オブジェクトの色を取得する取得手段と、前記特定の性質を有するオブジェクトであると判定された該オブジェクトを前記原稿データから除去する除去手段と、前記特定の性質を有するオブジェクトが除去された前記原稿データの残りのオブジェクトのうち前記取得した色と同一の色のオブジェクトについて、前記特色記録剤を用いて印字する旨の描画コマンドを発行する発行手段と、前記描画コマンドを含む前記PDLデータを印刷装置に送信する送信手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特色記録剤にて印字可能な印刷装置およびそれに対応する印刷制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のカラーレーザプリンタはCMYK(シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K))といった通常のカラートナーに加えて、いわゆる特色記録剤を扱うものが増加してきている。特色記録剤には、レッド、ブルー、ホワイトといったCMYK以外の色を持つカラートナーの他、印刷物に透過性のある画像を付加するための透明なトナー(以下、「クリアトナー」と呼ぶ。)など色を持たないものがある。ユーザは様々な特色記録剤を用途に応じて使い分けることで、付加価値の高い印刷物を生成することが可能である。
【0003】
例えば、クリアトナーを使用する印刷装置においては、CMYKのカラートナーによるカラー印字に加え、該用紙の全面又は一部分にクリアトナーを印字することで、写真のような光沢感やつや感を与えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−309685号公報
【特許文献2】特開2010−020578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
用紙の一部分についてのみクリアトナーを用いて印刷したい場合において、一般のアプリケーションからプリンタドライバを介してクリアトナーの印字箇所を任意に指定することは困難である。通常のグラフィックエンジンから描画される描画データの中にはクリアトナー用の描画オブジェクトは存在しない(通常のグラフィックエンジンのカラー空間では透明なオブジェクトを指定できない)からである。このため、たとえば特許文献1では、クリアインクを使って部分的に印字したい場合に、プリンタドライバのユーザインタフェース上でマウスによって範囲を指定し、該指定された部分の画像データのみクリアインクを使用して印字するという方法を取っている。
【0006】
指定する範囲が大雑把で数も少なければこの方法でもそれほど支障はない。しかし、複雑な形状のオブジェクト単位で指定したい場合やたくさんの数を指定したい場合などには、その指定作業に多くの手間を要すことになり、ユーザにとって非常に煩雑である。
【0007】
また、特許文献2では、クリアトナー用の別ページを通常のカラートナー用のページとは別に設ける方法を採用しているが、ページ数が大幅に増える上、クリアトナー用のページと通常のカラートナー用のページとの対応付けなどの手間も掛かる。
【0008】
さらに、クリアトナー用の描画オブジェクトなど特色記録剤のための描画オブジェクトを独立に指定可能な専用のアプリケーションを用意することも考えられるが、それでは複数のアプリケーションを用途に応じて使い分けなければならず利便性が良くない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る印刷制御装置は、原稿データに特色記録剤を用いて印刷を行う領域を特定する指示色で示される特定のオブジェクトが存在するか否かを判定する判定手段と、前記判定手段にて存在すると判定された特定のオブジェクトを示す前記指示色を取得する取得手段と、前記判定手段にて存在すると判定された特定のオブジェクトを前記原稿データから除去する除去手段と、前記除去手段にて前記特定のオブジェクトが除去された前記原稿データの残りのオブジェクトのうち、前記取得した指示色と同一の色で示されるオブジェクトについて、前記特色記録剤を用いて印字させる描画コマンドを発行する発行手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、RGBデータやCMYKデータを扱う一般のアプリケーションを用いて、通常のカラートナーを用いた印刷に加え特色記録剤を用いた印刷を行う場合の、特色記録剤を用いて印刷を行う部分であるオブジェクト領域を印刷する色の指定を柔軟に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用可能な印刷システムの構成の一例を示す図である。
【図2】ホストコンピュータの印刷処理に係るソフトウェア構成を示す図である。
【図3】プリンタの内部構成を示す図である。
【図4】プリンタドライバのユーザインタフェースの第一階層の画面を示す図である。
【図5】プリンタドライバのユーザインタフェースの第二階層の画面を示す図である。
【図6】プリンタドライバのユーザインタフェースの第三階層の画面を示す図である。
【図7】部分クリア印字を考慮していない段階の原稿データの一例を示す図である。
【図8】部分クリア印字用に作成された原稿N01の原稿データを示す図である。
【図9】部分クリア印字用に作成された原稿N01の原稿データを示す図である。
【図10】部分クリア印字用に作成された原稿データをプリンタで印字した結果を示す図である。
【図11】通常のカラー印刷ジョブとして発行した場合のPDLデータを示す図である。
【図12】部分クリアジョブとして発行した場合のPDLデータを示す図である。
【図13】実施形態1に係る印刷ジョブの作成過程を示すフローチャートである。
【図14】実施形態2に係るレンダリング処理の流れを示すフローチャートである。
【図15】実施形態3に係るレンダリング処理の流れを示すフローチャートである。
【図16】透かしパターンを説明する図である。
【図17】クリアトナーオブジェクトの透過率を指定してアプリケーション上に表示する場合の一例を示した図である。
【図18】実施形態3に係るベタ化処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【0013】
[実施形態1]
図1は、本発明を適用可能な印刷システムの構成の一例を示す図である。
【0014】
100は印刷制御装置としてのホストコンピュータである。
【0015】
101はホストコンピュータ100のCPUであり、以下に述べる各部を統括的に制御する。
【0016】
102はRAMであり、CPU101の主メモリ、ワークエリア等として機能する。
【0017】
103はROMであり、制御プラグラム等を格納している。
【0018】
104は各部を繋ぐシステムバスである。
【0019】
105はキーボードコントローラ(KBC)であり、キーボード109や不図示のポインティングデバイスからのキー入力を制御する。
【0020】
106はCRTコントローラ(CRTC)であり、CRTディスプレイ(CRT)110の表示を制御する。
【0021】
107はディスクコントローラ(DKC)107であり、ハードディスクドライブ等の外部メモリ111とのアクセスを制御する。外部メモリ111には、CPU101の制御プログラムであるOSの他、ブートプログラム、各種のアプリケーション、フォントデータ、ユーザファイル、編集ファイル、プリンタ制御コマンド生成プログラム(以下プリンタドライバ)等が記憶される。
【0022】
108はプリンタコントローラ(PRTC)であり、双方向性インタフェース130を介してプリンタ150に接続され、プリンタ150との通信制御処理を実行する。
【0023】
150はプリンタである。
【0024】
151は、プリンタ150のCPUであり、以下に述べる各部を統括的に制御する。
【0025】
152はRAMであり、CPU151の主メモリ、ワークエリア等として機能する。
【0026】
153はROMであり、制御プラグラムが格納される他、フォントデータ等が記憶される。
【0027】
154は各部を繋ぐシステムバスである。
【0028】
155は入力部であり、PDLデータをホストコンピュータ100から受け取る他、プリンタ150内の情報等をホストコンピュータ100に通知することもできる。
【0029】
157はメモリコントローラ(MC)であり、ハードディスクドライブ(HDD)やICカード等で構成される外部メモリ160とのアクセスを制御する。外部メモリ160には、エミュレーションプログラム、フォームデータ等が記憶される。なお、外部メモリ160は1個に限らず、複数個備えられ、内蔵フォントに加えてオプションカード、言語系の異なるプリンタ制御言語を解釈するプログラムを格納した外部メモリを複数接続できるように構成されていてもよい。
【0030】
158は印刷部(プリンタエンジン)158とのであり、156は印刷部I/Fを介して出力情報としての画像信号を受け取り、記憶媒体(用紙)上に画像を印字する。
【0031】
159は操作パネルであり、ユーザが各種操作指示を行うためのスイッチ及びLED表示器等が配されている。
【0032】
161は課金カウンタであり、カラー印刷及びクリアトナー印刷の実行に伴ってカウントアップされる。
【0033】
図2は、ホストコンピュータ100の印刷処理に係るソフトウェア構成を示す図である。
【0034】
200は各種原稿データを生成するアプリケーションである。
【0035】
201はグラフィックエンジンである。アプリケーション200で生成された原稿データをプリンタ150で出力するため、アプリケーション200の出力をプリンタドライバ202に設定する。具体的には、アプリケーション200から受け取ったGDI関数をDDI関数に変換し、変換されたDDI関数をプリンタドライバ202に出力するということを行う。なお、GDI及びDDIは、それぞれ“Graphic Device Interface”、“Device Driver Interface”の意である。
【0036】
202はプリンタドライバである。プリンタドライバ202は、グラフィックエンジン201から受け取ったDDI関数に基づいて、プリンタが認識可能な制御コマンド、例えばPDL(Page Description Language)に変換する。変換された制御コマンドは、システムスプーラ203に出力される。
【0037】
203はシステムスプーラであり、プリンタドライバ202から変換された制御コマンドを受け取り、双方向性インタフェース130経由でプリンタ150へ印刷データ(PDLデータ)として出力する。
【0038】
なお、アプリケーション200、グラフィックエンジン201、プリンタドライバ202、及びシステムスプーラ203は、外部メモリ111に保存されている。これらはOSやそのプログラムを利用する別のプログラムからの指示によってRAM102にロードされ、CPU101によって実行される。
【0039】
図3は、プリンタ150の内部構成を示す図である。
【0040】
301は、像担持体としてのドラム状の電子写真感光体(感光体ドラム)である。感光体ドラム301の周りには、帯電手段としての帯電器306、露光手段としてのレーザ光源302、レーザ光源から照射された光像305を反射するポリゴンミラー303、ミラー304が配置されている。さらに、クリーニング手段としてのクリーナー307、及び回転式現像装置308も感光体ドラム301の周りに配置されている。
【0041】
320は、第2の像担持体としての中間転写体としての中間転写ベルトである。中間転写ベルト320は、感光体ドラム301に対向して、ローラ316、317、318、319にて張架されている。
【0042】
回転式現像装置308は、感光体ドラム301に対向して配置され、回転自在に支持された回転体である現像ロータリー321を有する。この現像ロータリー321には、複数の現像手段として、本実施形態の場合、4色分のカラートナー用現像器と1色分の特色記録剤用現像器が搭載されている。上記4色分のカラートナー用現像器は、イエロートナー用現像器309、マゼンタトナー用現像器310、シアントナー用現像器311、ブラックトナー用現像器312、ライトブラックトナー用現像器313である。また、上記1色分の特色記録剤用現像器は、本実施形態の場合、光沢度調整用の特色記録剤であるクリアトナー用現像器314である。
【0043】
315は一次転写手段としての一次転写ローラであり、322は二次転写手段としての二次転写ローラである。
【0044】
例えば、フルカラー画像の形成時には、先ず、感光体ドラム301の表面が帯電器306によって帯電され、ホストコンピュータ100から送られた画像信号などに基づき、帯電された感光体ドラム301の表面にレーザ光源302から光像305を照射する。これにより、感光体ドラム301上に静電像(潜像)が形成され、回転式現像装置308により現像される。つまり、現像ロータリー321が矢印321a方向に回転し、所定の現像器が感光体ドラム301上と対向した現像部に移動して、該現像器によって、感光体ドラム301上に現像剤像(トナー像)が形成される。感光体ドラム301上に形成されたトナー像は、感光体ドラム301と中間転写ベルト320との対向部(一次転写部)において、中間転写ベルト320上に転写される。なお、一次転写工程後に感光体ドラム301上に残った一次転写残トナーは、クリーナー307により除去される。
【0045】
以上の動作を繰り返すことで、中間転写ベルト320上に、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナー、ライトブラックトナー、及び、透明トナー(クリアトナー)が順次重ね合わせられた多重トナー像が形成される。中間転写ベルト320上に形成された多重トナー像は、二次転写ローラ322と中間転写ベルト320との対向部(二次転写部)において記録媒体(印刷用紙)330に転写される。なお、二次転写工程後に中間転写ベルト320上に残った二次転写残トナーは、不図示の転写ベルトクリーナにより除去される。記録媒体330は、中間転写ベルト320上の多重トナー像の先端が二次転写部に搬送されるタイミングに合わせて、図示しない記録媒体供給部から二次転写部に搬送されてくる。トナー像が転写された記録媒体330は、搬送ベルト323、324により定着手段としてのローラ定着器325へと搬送される。記録媒体330は、ローラ定着器325によって加圧/加熱される。そして、その記録媒体330上に加圧/加熱されたトナーによって作成された画像が定着される。定着を終えた記録媒体330は、機外に排出される。
【0046】
以上のようにして、プリンタ150は記録媒体上に画像を形成する。
【0047】
次に、プリンタドライバ202のユーザインタフェースについて説明する。
【0048】
図4は、プリンタドライバ202におけるユーザインタフェースの第一階層の画面を示している。
【0049】
401は印刷設定ダイアログであり、OSの管理するプリンタフォルダやアプリケーション200の印刷設定画面等から開くことができる。ユーザからの指示を検知したCPU101が、RAM102にロードされたプリンタドライバ202を実行して印刷設定ダイアログ401をCRT110上に表示する。印刷設定ダイアログ401には、ページ設定タグ、仕上げタグ、給紙タグおよび印刷品質タグがある。ここでは印刷設定タグが選択され、基本的な印刷設定を行うことのできるページ設定シート402が表示されている状態である。
【0050】
そして、ページ設定シート402上のページオプションボタン403を押下することで、クリアトナーに関する設定の他、ページ修飾やオーバレイといった、プリンタドライバ202で行う各種オプションの設定が可能となる。
【0051】
図5は、プリンタドライバ202におけるユーザインタフェースの第二階層の画面を示している。
【0052】
501はページオプションダイアログ501である。このページオプションダイアログには、クリアトナータグ、ページ修飾タグおよびオーバーレイタグがある。ここではクリアトナータグが選択され、クリアトナーモードで使用する場合の処理方法を指定するためのクリアトナー設定画面502が表示されている状態である。
【0053】
クリアトナー設定画面502中の処理方法領域503には、クリアトナーを使った印字を行うか否か、行う場合に原稿の全面について行うのか一部分について行うのかを選択可能なラジオボタン504〜506がある。
【0054】
ラジオボタン504の「行わない」が選択されている時には、プリンタドライバ202は、クリアトナーを使用しない通常カラージョブの処理(CMYKのカラートナーを用いた通常カラー印字処理)を行うようにプリンタ150に対して指示する。
【0055】
ラジオボタン505の「全面クリア印字」が選択されている時には、プリンタドライバ202は、全面クリアジョブの処理(通常カラージョブの処理+記録媒体の一面にクリアトナーを載せる処理)を行うようにプリンタ150に対して指示する。
【0056】
ここで全面クリアジョブとは、印刷媒体上にカラージョブで印字される領域の判定を行うことなく、クリアトナーを印刷媒体全体に渡り印刷を行う。また、この場合、印刷時に印刷媒体のフチを残して印刷を行う「フチ有り印刷」の場合、有効印字領域であるフチ以外の部分の全面に対してクリアトナーの印字を行う。一方、「フチ無し印刷」である場合、有効印字領域である印刷媒体全面に渡りクリアトナーの印字を行う。
【0057】
ラジオボタン506の「部分クリア印字」が選択されている時は、プリンタドライバ202は、部分クリアジョブの処理(通常カラージョブの処理+記録媒体の特定の領域にのみクリアトナーを載せる処理)を行うようにプリンタ150に対して指示する。この部分クリア印字を行う際は、部分クリア詳細ボタン507を押下することにより表示される画面においてさらに詳細な指定を行う。
【0058】
なお、プリンタ150に対する指示はPDLコマンドで行っても良いし、その他の制御コマンドをプリンタ150に送信することで実施してもよい。
【0059】
図6は、プリンタドライバ202におけるユーザインタフェースの第三階層の画面を示している。
【0060】
601は部分クリア詳細ダイアログである。この部分クリア詳細ダイアログ601には、クリアトナーで印字する画像をどのようなジョブ形態で指定するかを選択するためのジョブ形態領域602が存在する。
【0061】
ジョブ形態領域602においてラジオボタン610の「1つのジョブで指定する」が選択された場合、プリンタドライバ202は、領域611においてクリアトナー指定色の指定方法をラジオボタン612〜618を用いて選択させる。ここで、「クリアトナー指定色」とは、後述のクリアトナーオブジェクトの指定に使用する色であって、原稿ページ内で使用されていない色のうちユーザが選択した任意の色をいう。たとえば、ある原稿ページにおいて水色がどのオブジェクトにも使用されていなかった場合、水色をクリアトナー指定色に指定できる。この指定には、たとえばグラフィックオブジェクトやテキストオブジェクトを利用する。これにより、クリアトナー指示色が何色であるかの情報が正確なRGB値として指定される。また、原稿が複数ページからなる場合には、クリアトナー指定色は全ページ同じ色で指定されてもよいし、ページ単位で指定されてもよい。
【0062】
ラジオボタン612の「最下層オブジェクト」が選択された場合は、ページ内の最も下の層に存在するオブジェクトの色がクリアトナー指定色として指定される。以下同様に、ラジオボタン613の「最上層オブジェクト」が選択された場合は、ページ内の最も上の層に存在するオブジェクトの色がクリアトナー指定色として指定される。ラジオボタン614の「最左上オブジェクト」が選択された場合は、ページ内の最も左上にあるオブジェクトの色がクリアトナー指定色として指定される。ラジオボタン615の「最右上オブジェクト」が選択された場合は、ページ内の最も右上にあるオブジェクトの色がクリアトナー指定色として指定される。ラジオボタン616の「最左下オブジェクト」が選択された場合は、ページ内の最も左下にあるオブジェクトの色がクリアトナー指定色として指定される。ラジオボタン617の「最右下オブジェクト」が選択された場合は、ページ内の最も右下にあるオブジェクトの色がクリアトナー指定色として指定される。そして、ラジオボタン618の「最大サイズオブジェクト」が選択された場合は、テキストボックス619で指定した値以上のページ内の最大サイズのオブジェクトの色がクリアトナー指定色として指定される。もし、指定された値以上のサイズのオブジェクトがページ内に存在しない場合には、当該ページについてはクリアトナーによる印字を行わず、CMYKのカラートナーを用いた印字のみを行う旨の指示がプリンタ150に対し行われる。
【0063】
また、ラジオボタン612〜618によって指定されたオブジェクトしかページ内に存在しなかった場合には、当該ページについてクリアトナーを用いた印字は行われない。
【0064】
一方、ジョブ形態領域602においてラジオボタン620の「別のジョブで指定する」が選択された場合、通常カラージョブとクリアトナー印字用のジョブとがアプリケーション200からそれぞれ別のジョブで指定されることになる。この場合、アプリケーション200においてクリアトナー印字用のジョブを予め作成してプリンタ150に登録しておく。ユーザは、通常カラージョブをアプリケーション200で別途作成して、印刷時に上記で登録したクリアトナー印字用のジョブを使用するよう指定する。
【0065】
上述のようにして、ユーザが、「部分クリア印字」、「1つのジョブで指定」を選択して原稿データの印刷を指示した場合、プリンタドライバ202は、領域611で指定された条件を満たすページ内のオブジェクトの色をクリアトナー指定色として解釈する。プリンタドライバ202は、ページ内のクリアトナーオブジェクトについてクリアトナーを用いて印字することをプリンタに指示する。クリアトナー指定色の指定に利用したオブジェクトについては、その印字をプリンタに指示しない。それ以外のオブジェクトについては、通常のカラートナーを用いて印字することをプリンタに指示する。
【0066】
印刷実行時には、以上のようにして設定された内容およびアプリケーションで指示された内容に従って生成された印刷指示(ジョブ)がプリンタ150に送信される。
【0067】
次に、本実施形態において原稿の一部分にのみクリアトナーを印字しようとする場合にユーザがアプリケーション200で作成する原稿データについて、図7〜図10を用いて説明する。
【0068】
図7は、部分クリア印字を考慮していない段階の原稿データの一例を示している。原稿N01には、星型のオブジェクトN02〜N04が存在している。CMYKのカラートナーを用いた通常カラー印字或いは全面クリア印字を行う場合には、この段階の画像データを用いればよい。部分クリア印字を行う場合には、さらに、クリアトナー指定色を指定するための前述のラジオボタン612〜618で選択されたオブジェクトの追加、およびクリアトナーを載せたい領域への当該クリアトナー指定色と同一色のオブジェクトの追加が必要となる。なお、クリアトナー指定色を特定するための前述のラジオボタン612〜618で選択されたオブジェクトを「指定色特定オブジェクト」と呼ぶこととする。また、クリアトナーを載せたい領域に置かれるクリアトナー指定色と同一色のオブジェクトを「クリアトナーオブジェクト」と呼ぶこととする。
【0069】
ここでは、星型のオブジェクトN02とN03についてクリアトナーによる印字を行うこととし、併せてクリアトナーだけで印字される文字オブジェクト「CLEAR TONER」を追加するものとする。
【0070】
図8及び図9は、部分クリア詳細ダイアログ601において「最下層オブジェクト」が選択されていた場合の、部分クリア印字用に作成された原稿N01の原稿データを示している。
【0071】
図8および図9において、N08は指定色特定オブジェクトであり、N05、N06、N07はクリアトナーオブジェクトである。図9において明らかなように、最も下の層に指定色特定オブジェクトとしての背景オブジェクトN08が置かれている。さらに、クリアトナーによる印字が行われる場所であるオブジェクトN02の上にクリアトナーオブジェクトN05が、オブジェクトN03の上にクリアトナーオブジェクトN06が置かれ、単独のクリアトナーオブジェクトN07が右上に置かれている。なお、ここではオブジェクトN02やN03の上にクリアトナーオブジェクトN05やN06を置いているが、この順序は逆でもよい。
【0072】
図10の(a)及び(b)は、図8及び図9で示した部分クリア印字用に作成された原稿データをプリンタ150で印字した結果を示している。
【0073】
図10の(a)は通常のカラートナーのみで印字した版であり、図10の(b)はクリアトナーのみで印字した版である。説明の便宜のために分版して示しているが、実際には同じ用紙上にカラートナー版とクリアトナー版とが重ねて形成される。クリアトナーオブジェクトではないオブジェクトN02、N03およびN04はCMYKの通常のカラートナーで印字され、クリアトナーオブジェクトであるN05、N06、N07はクリアトナーで印字されている。指定色特定オブジェクトである背景オブジェクトN08は、クリアトナー指定色を指定することが役割であるため印字されていない。
【0074】
このように、クリア指定された色と同じ色を指定された領域(オブジェクト)は、クリアトナーを用いて印刷が行われる。
【0075】
続いて、プリンタドライバ202で作成される部分クリア印字用の印刷ジョブについて説明する。
【0076】
図11及び図12は、プリンタドライバ202で作成されプリンタ150に対して出力される印刷ジョブとしてのPDLデータを示している。
【0077】
図11は、図8及び図9で示した原稿N01の原稿データを通常のカラー印刷ジョブとして発行した場合のPDLデータを示している。ジョブは<Begin Job>と<End Job>の二つのコマンドに囲まれている。さらに<Begin Page>と<End Page>がページの始めと終わりを示しており、その間にページ内のオブジェクトの描画コマンドが格納される。すべての描画オブジェクトが、コマンド<Begin Page>とコマンド<End Page>とに挟まれているので、同一ページ内の通常の描画データとして出力されることになる。すなわち、指定色特定オブジェクトであるN08やクリアトナーオブジェクトであるN05〜N07も、その指定色(例えば、水色)のオブジェクトとしてCMYKトナーを用いて印字されることになる。
【0078】
これに対して、図12は、図8及び図9で示した原稿N01の原稿データを部分クリアジョブとして発行した場合のPDLデータを示している。ジョブは<Begin Job>と<End Job>の二つのコマンドに囲まれている。そして<Begin Page>と<End Page>がそれぞれページの始めと終わりを示しており、さらにその中に<Begin ClearToner>と<End ClearToner>の2つのコマンドが含まれている。<Begin Page>と<End Page>との間に描画オブジェクトのコマンドが存在し、このうち[描画オブジェクトN05]〜[描画オブジェクトN07]が<Begin ClearToner>と<End ClearToner>とに挟まれている。したがって、[描画オブジェクトN02]〜[描画オブジェクトN07]のうち、[描画オブジェクトN05]〜[描画オブジェクトN07]だけがクリアトナーで印字されることになる。なお、[描画オブジェクトN08]は、クリアトナー色を指定するためのオブジェクトであるため部分クリアジョブ内に存在しない。
【0079】
このように、本実施形態に係るプリンタドライバ202は、プリンタ150に対する1つの印刷指示(印刷ジョブ)の中に、通常のカラートナーによる描画指示とクリアトナーによる描画指示とを含める。これにより、通常のカラートナーによる印字がなされた同一用紙の同一面に対してクリアトナーによる印字を重ねて行うようにプリンタ150に指示することが可能となる。なお、ここでは説明の便宜上1ページからなる原稿データを例に説明したが、複数ページからなる原稿データであれば、ページ単位で同様の処理が行われる。
【0080】
次に、プリンタドライバ202における印刷ジョブを作成する処理の詳細について説明する。
【0081】
図13は、プリンタドライバ202における印刷ジョブの作成過程を示すフローチャートである。なお、本フローチャートによって示されるプリンタドライバ202の機能は、CPU101が、プリンタドライバプログラムをRAM102にロードして実行することにより実現される。
【0082】
ステップ1301において、プリンタドライバ202は、印刷設定の内容を確認する。具体的には、図5のページオプションダイアログ501で「部分クリア印字」が選択されており、かつ図6の部分クリア詳細ダイアログ601において「1つのジョブで指定する」が選択されているかどうかを判定する。判定の結果、「部分クリア印字」かつ「1つのジョブで指定する」が選択されていた場合には、ステップ1302に進む。その他の場合、すなわち、ページオプションダイアログ501で「行わない」或いは「全面クリア印字」が選択されている場合、及び「部分クリア印字」が選択されているが「別のジョブで指定する」が選択されていた場合にはステップ1317に進む。
【0083】
ステップ1302において、プリンタドライバ202は、ジョブ開始コマンド<Begin Job>を発行する。
【0084】
続いて、ステップ1303において、プリンタドライバ202は、ページ開始コマンド<Begin Page>を発行する。
【0085】
次に、ステップ1304において、プリンタドライバ202は、原稿データにおける処理対象ページのオブジェクト群の中に特定の性質を有するオブジェクトが存在するか否かを判定する。特定の性質とは、特色記録剤の指定色(ここでは、前述の図6におけるクリアトナー指定色)を特定するオブジェクトの性質である。たとえば、ラジオボタン612が有効化(「最下層オブジェクト」が選択)されていた場合には、オブジェクト群の中から最下層のオブジェクトを検索する。特定の性質に合致するオブジェクトが見つかった場合には、ステップ1305に進む。この場合において、ラジオボタン612〜617のいずれかが有効化されている場合においては、所定のオブジェクトが1つでも見つかれば、ステップ1305に進むことになる。ラジオボタン618が有効化(「最大サイズオブジェクト」が選択)されていた場合においては、見つかった最大オブジェクトのサイズが619で指定する値を満たした場合のみステップ1305に進むこととなる。一方、条件に合致するオブジェクトが見つからなかった場合には、ステップ1313に進む。
【0086】
ステップ1305において、プリンタドライバ202は、見つかった特定の性質を持つオブジェクトの色をクリアトナー指定色として取得する。クリアトナー指定色を取得後、プリンタドライバ202は、当該特定の性質を持つオブジェクトを処理対象ページの原稿データから除去し、ステップ1306に進む。
【0087】
ステップ1306において、プリンタドライバ202は、処理対象ページ内の残りのオブジェクトについて、通常のCMYKカラートナーで印字するオブジェクトか、クリアトナーで印字するオブジェクトかをオブジェクト毎に判定する。この場合において、オブジェクトの色がステップ1305で取得したクリアトナー指定色と合致した場合には、クリアトナーオブジェクトであると判定し、ステップ1307に進む。オブジェクトの色がクリアトナー指定色と合致しなかった場合には、通常のカラートナーオブジェクトであると判定し、ステップ1308に進む。
【0088】
ステップ1307において、プリンタドライバ202は、クリアトナーオブジェクトと判定されたオブジェクトをクリアトナーオブジェクトリストに加える。このリストは、後で処理対象となるオブジェクトを参照できる構造であれば、どのようなリストであっても構わない。
【0089】
ステップ1308において、プリンタドライバ202は、通常のカラートナーオブジェクトと判定されたオブジェクトをPDLに変換してオブジェクト図12にあったような描画コマンド[描画オブジェクトxxx]を発行する。
【0090】
ステップ1309において、プリントドライバ202は、処理対象ページ内の残りのオブジェクトのすべてについてステップ1306〜ステップ1308の処理が終了したかどうかを判定する。終了していない場合はステップ1306に戻る。終了している場合はステップ1310に進む。
【0091】
ステップ1310において、プリンタドライバ202は、クリア開始コマンド<Begin ClearToner>を発行し、ここから先のオブジェクト描画コマンドがクリアトナーでの印字を指示することを宣言する。
【0092】
ステップ1311において、プリンタドライバ202は、ステップ1307で作成したクリアトナーオブジェクトリストに存在する全てのオブジェクトについてPDLに変換する処理を行ってオブジェクト描画コマンドを発行する。この際、オブジェクトが持つ色情報は意味がなくなるため、所定の濃度(たとえば、100%)を持つオブジェクトとする。この際、ユーザがアプリケーション上での見た目のために何らかの属性(例えばオブジェクトを半透明に表示させるためのα合成属性)を付けている場合には、そういった属性を無視(除去)する。もしくは、例えばα合成属性で濃度を表現しているような場合を想定して、α値に応じで濃度情報に変換するようにしてもよい。(クリアトナーの載り量に変換してもよい。)オブジェクト描画コマンドの発行を終えるとステップ1312に進む。
【0093】
ステップ1312において、プリンタドライバ202は、クリア終了コマンド<End ClearToner>を発行する。発行を終えるとステップ1314に進む。
【0094】
ここでステップ1304にて条件に合致するオブジェクトが見つからなかった場合の処理の説明に戻る。この場合、処理対象ページ内の全てのオブジェクが通常のカラートナーオブジェクトということになるので、ステップ1313において、プリンタドライバ202は、すべてのカラートナーオブジェクトをPDLに変換してオブジェクト描画コマンドを発行する。発行を終えるとステップ1314に進む。
【0095】
ステップ1314において、プリンタドライバ202は、処理対象ページ内のカラートナー用描画データ及びクリアトナー用描画データの全てのコマンド化が完了したため、ページ終了コマンド<End Page>を発行する。発行を終えるとステップ1315に進む。
【0096】
ステップ1315において、プリンタドライバ202は、未処理のページの有無を判定する。未処理のページがある場合にはステップ1303に戻り、上記の各ステップを繰り返す。全てのページ分の処理が終了している場合にはステップ1316に進む。
【0097】
ステップ1316において、プリンタドライバ202は、ジョブ終了コマンド<End Job>を発行する。
【0098】
なお、ステップ1317における、ページオプションダイアログ501で「行わない」或いは「全面クリア印字」が選択されている場合、及び「部分クリア印字」が選択されているが「別のジョブで指定する」であった場合の処理は概略以下のとおりである。
【0099】
まず、クリアトナーを用いた印字を一切行わない場合には、原稿ページ内の全てのオブジェクトが指定された色のオブジェクトで描画されるよう、図11に示したような通常の印刷ジョブが生成される。
【0100】
そして、全面クリア印字が選択されている場合には、同様に原稿ページ内の全てのオブジェクトが指定された色のオブジェクトで描画されるような印刷ジョブが生成され、さらに全面クリア印字を指示する描画コマンドが加えられる。なお、印刷ジョブ自体に全面クリア印字の描画コマンドを盛り込むのではなく、印刷ジョブとは別に全面クリア印字のための描画コマンドをプリンタに送ってもよい。
【0101】
また、部分クリア印字で“別のジョブで指定する”が選択されている場合にも、同様に原稿ページ内の全てのオブジェクトが指定された色のオブジェクトで描画されるような印刷ジョブが生成される。そして、該印刷ジョブと部分クリア印字のための印刷ジョブとがそれぞれプリンタに送られる。部分クリア印字のための印刷ジョブの指定は、例えば、ボックス内のフォームファイルを指定し、指定されたクリアトナーを用いて画像を印字するためのフォームと、カラートナーを用いて画像を印字するためのデータを合成するといった方法による。
【0102】
以上のような手順で、プリンタドライバ202は、図12に示すような印刷ジョブ(PDLデータ)を作成する。
【0103】
なお、上記説明において使用した各コマンドはあくまでも例示であり、システムに対応して自由に変更することが可能である。即ち、まず、特殊色を指定するためのオブジェクトから特殊色の指定色を得る。次に、当該指定色を持つオブジェクトを、特色記録剤を用いるオブジェクトとして処理し、その他のオブジェクトを通常のカラートナーを用いるオブジェクトとして処理する。そして、最終的に、同一記録媒体の同一面に対して通常のカラートナーオブジェクトと特色記録剤のオブジェクトとを重ねて印刷するようにプリンタ150に指示する、という構成であればどのような構成であってもよい。
【0104】
また、図13のフローチャートでは、クリアトナーオブジェクトを一旦リスト化し、通常のカラートナーを用いるオブジェクト用の描画コマンドを発行した後に、まとめて、クリアトナーオブジェクトの描画コマンドを発行する仕様とした。しかし、この点は種々の変形が可能であり、例えば、両方の描画コマンドを区分けせずに発行し、適切な部分に描画コマンド毎の属性を挿入するような仕組みにしてもよい。
【0105】
もちろん、白トナーや蛍光トナーなど、通常のグラフィックエンジンでは色指定が困難な特色記録剤に対しても本実施形態は幅広く適用することができる。
【0106】
以上説明したように、本実施形態に係る印刷制御装置によれば、一般のアプリケーションで作成された原稿データを用いて、通常のカラートナー用の画像と任意の特色記録剤用の画像とを重ねて印刷する旨の指示をプリンタに対して柔軟に行うことができる。更に、本実施形態においては、プリンタドライバ側で特色記録剤を用いるオブジェクトの描画コマンドを含んだPDLデータの生成処理を行うため、特色記録剤版の生成に関する設定情報についてプリンタドライバからプリンタへの送信が不要になる。そのため、プリンタとの通信プロトコルを簡易化出来るという効果もある。
【0107】
[実施形態2]
実施形態1は、ホストコンピュータ100のプリンタドライバ202側で、特色記録剤を用いるオブジェクトの描画コマンドを含んだPDLデータの生成処理を行う構成であった。次に、プリンタ150でPDLデータをレンダリングする段階で通常のカラートナーを用いた画像データ用の版と特色記録剤を用いた画像データ用の版とを生成する態様について実施形態2として説明する。
【0108】
図14は、本実施形態に係る、プリンタ150におけるレンダリング処理の流れを示すフローチャートである。
【0109】
なお、本フローチャートに示す機能は、プリンタ150のCPU151が、ROM153または外部メモリ160に格納されたPDLデータ処理プログラムをRAM152にロードし実行することにより実現される。また、プリンタドライバ202のユーザインタフェース上でユーザが指定した内容は、全てPDLデータ内に含まれており、CPU151は自由に参照することが可能であるものとする。
【0110】
ホストコンピュータ100からPDLデータを受け取ると、ステップ1401において、CPU151は、部分クリアトナー用の特別モードが指定されているかどうかを判定する。具体的には、「部分クリア印字」、「1つのジョブで指定」が選択されているかどうかを受け取ったPDLデータを参照して判定する。「部分クリア印字」かつ「1つのジョブで指定」が選択されていた場合には、ステップ1402に進む。それ以外が選択されていた場合にはステップ1410に進む。
【0111】
ステップ1402において、CPU151は、受け取ったPDLデータ内の処理対象ページのオブジェクト群の中に特定の性質を有するオブジェクトが存在するかどうかを判定する。特定の性質の意味については、実施形態1で説明したとおりである。特定の性質に合致するオブジェクトが見つかった場合には、ステップ1403に進む。特定の性質に合致するオブジェクトが見つからなかった場合には、ステップ1408に進む。
【0112】
ステップ1403において、CPU151は、特定の性質を持つオブジェクトの色をクリアトナー指定色として取得する。クリアトナー色を取得した後、当該特定の性質を持つオブジェクトをPDLデータから除去し、ステップ1404に進む。
【0113】
ステップ1404において、CPU151は、処理対象ページ内の残りのオブジェクトについて、通常のCMYKカラートナーで印字するオブジェクトか、クリアトナーで印字するオブジェクトかをオブジェクト毎に判定する。この場合において、オブジェクトの色がステップ1403で取得したクリアトナー指定色と合致した場合には、クリアトナーオブジェクトであると判定し、ステップ1405に進む。オブジェクトの色がクリアトナー指定色と合致しなかった場合には、通常のカラートナーオブジェクトであると判定し、ステップ1406に進む。
【0114】
ステップ1405において、CPU151は、クリアトナーオブジェクトと判定されたオブジェクトをRAM152内のクリアトナー版用の画像データ領域にレンダリングする。この際、当該オブジェクトが持つ色情報は意味がなくなるため、所定の濃度(たとえば、100%)を持つオブジェクトとしてレンダリングする。また、ユーザがアプリケーション上での見た目のために何らかの属性(例えばオブジェクトを半透明に表示させるためのα合成属性)を付けている場合には、そういった属性を無視(除去)する。もしくは、例えばα合成属性で濃度を表現しているような場合を想定して、α値に応じで濃度情報に変換するようにしてもよい。レンダリングを終えると、ステップ1407に進む。
【0115】
ステップ1406において、CPU151は、通常のカラートナーオブジェクトと判定されたオブジェクトをRAM152内のCMYKカラートナー版用の画像データ領域にレンダリングする。レンダリングを終えると、ステップ1407に進む。
【0116】
ステップ1407において、CPU151は、処理対象ページ内の残りのオブジェクトのすべてについてステップ1404〜ステップ1406の処理が終了したかどうかを判定する。終了していない場合はステップ1404に戻る。終了している場合はステップ1409に進む。
【0117】
ここでステップ1402にて条件に合致するオブジェクトが見つからなかった場合の処理の説明に戻る。この場合、処理対象ページ内の全てのオブジェクが通常のカラートナーオブジェクトということになる。そこで、ステップ1408において、CPU151は、すべてのカラートナーオブジェクトをRAM152内のCMYKカラートナー版用の画像データ領域にレンダリングする。レンダリングを終えるとステップ1409に進む。
【0118】
ステップ1409において、CPU151は、未処理のページの有無を判定する。未処理のページがある場合にはステップ1402に戻り、上記の各ステップを繰り返す。全てのページ分の処理が終了している場合にはステップ1411に進む。
【0119】
なお、ステップ1410における、部分クリアトナー用の特別モード以外の選択がなされていた場合のレンダリング処理については、実施形態1に準じたものとなるので説明を省略する。
【0120】
レンダリング処理が終わると、ステップ1411においてCPU151は、印刷部(プリンタエンジン)158にレンダリングされた画像データを画像信号として出力し、印刷部158は、受け取った画像データに基づき印刷を行う。
【0121】
以上のような処理をプリンタ150側で行うことにより、前述の図10のような印字結果を得ることができる。
【0122】
当然のことながら、本実施形態も、白トナーや蛍光トナーなど、通常のグラフィックエンジンでは色指定が困難と思われる特色記録剤に対して幅広く適用することができる。
【0123】
以上説明したように、本実施形態に係る印刷装置によれば、一般のアプリケーションで作成された原稿データを用いて、カラートナー用の画像と任意の特殊色トナー用の画像とを合成して印刷する指定を柔軟に行うことができる。更に、本実施形態においては、プリンタ側で特殊色トナー版をもつPDLデータのレンダリング処理を行うため、特殊色トナー版の生成のために要求される高い処理能力をホストコンピュータが備えていなくても適用することができる。また、プリンタドライバがホストコンピュータの処理能力を占有する時間が少なくて済むという効果もある。さらに、特殊色トナー版のためのPDLデータの解析とレンダリングをまとめて行うことが可能であり、処理効率を上げる効果もある。
【0124】
[実施形態3]
続いて、実施形態2とクリアトナー版へのレンダリング方法が異なる態様について実施形態3として説明する。なお、実施形態2と共通する部分については説明を省略ないしは簡略化するものとする。
【0125】
図15は、本実施形態におけるクリアトナー版へのレンダリング処理の流れを示すフローチャートであり、実施形態2に係る図14のフローチャートのステップ1405に対応するものである。
【0126】
ステップ1501において、CPU151は、処理対象のクリアトナーオブジェクトが透かしパターンで構成されているかどうかを判定する。ここで、透かしパターンとは、複数のオブジェクトの重なりを表現するために用いられるα合成を使用しないパターンのことである。透かしパターンについて図16を用いて説明する。1601は透かしパターンによる星型のオブジェクトであり、1602はその一部を拡大したものである。1602は隙間が空いて市松模様となっているため、オブジェクト1601が他のオブジェクトの上に重なっても、その隙間部分から下にある他のオブジェクトが見えることとなる。つまり、α合成のような効果を得ることが可能となる。一般的にα合成を行うことができるPDLやプリンタは少ないため、1602のような市松模様状の透かしパターンを生成することにより、α合成の代替とするようなアプリケーションが多く存在する。
【0127】
たとえば、実際に画像を印刷出力する前のプレビュー時、実施形態1や実施形態2において、クリアトナーオブジェクトを他のオブジェクトに重ねると、通常のカラートナーオブジェクト自体が見えなくなってしまう場合があり得る。クリアトナーオブジェクトと通常のカラートナーオブジェクトとの上下関係を反対にすると、逆に、クリアトナーオブジェクトが見えなくなってしまい、どこをクリアトナーで印字するかが視覚的に分かりづらくなってしまう。
【0128】
そこで、クリアトナーオブジェクトの透過率を指定することにより、図17のような形でアプリケーション上に表示することが考えられる。この場合、クリアトナーオブジェクトであるN05およびN06は透過率の指定(たとえば、50%)があるオブジェクトとなっている。これにより、ユーザは、アプリケーション上で、通常のカラートナーオブジェクトであるN02やN03の上にクリアトナーオブジェクトであるN05やN06が載っていることを視覚的に把握することが可能となる。ここで重要なのは、視覚的にオブジェクトの関連性を掴むためにアプリケーション上でN05とN06を透過させて表示させているに過ぎないという点である。つまり、クリアトナーオブジェクトであるN05とN06を、クリアトナー版において実際に印刷時に濃度を薄くして印刷することを意図していないということである。
【0129】
しかし、図17のように表示させた状態の画像データに基づいて印刷を行うと、N05やN06のクリアトナーオブジェクトは、α合成属性を持ったオブジェクトや透かしパターンを持つオブジェクトとして印字されてしまう。つまり、ユーザが意図した濃度でクリアトナーオブジェクトが印字されないこととなる。もっとも、実施形態1や実施形態2で述べたとおり、α合成属性を持ったオブジェクトであればそれを無視することでこの問題は解決できる。しかしながら、1602のような透かしパターンでクリアトナーオブジェクトが描画された状態では、単純にそのオブジェクトの属性情報を無視するだけでは解決できない。そこで、本実施形態では、まずステップ1501において、処理対象のクリアトナーオブジェクトが、透かしパターンを持つオブジェクトであるかどうかを判定する。透かしパターンであるかどうかの判定は、一般的なアプリケーションで生成され得る透かしパターン群を保持しておき、これと処理対象のクリアトナーオブジェクトとをパターンマッチングすることにより行う。透かしパターンを持つオブジェクトと判定されるとステップ1502に進む。透かしパターンを持つオブジェクトではないと判定された時には、ステップ1503へと進む。
【0130】
ステップ1502において、CPU151は、透かしパターンを持つオブジェクトに対しベタ化処理を行う。ここで、ベタ化処理とは、オブジェクトを、透過率設定に応じた透かしパターンに変換される前の状態に戻す処理を意味する。ベタ化処理の方法としては、たとえば、図16のオブジェクト1601をぼかして、まず図18の1801のようなオブジェクトとし、それをさらに2値化処理することにより、1805のようなオブジェクトを得る方法がある。1802および1806は、それぞれオブジェクト1801および1805の一部を拡大したものである。他の方法としては、図16の1601のオブジェクトの境界領域を抽出して、1803のようなオブジェクトとし、その内部をさらに塗りつぶすことにより、1805のようなオブジェクトを得る方法もある。1804は1803の一部を拡大したものである。
【0131】
ベタ化処理が完了すると、ステップ1502に進む。
【0132】
ステップ1503において、CPU151は、所定の処理がなされたクリアトナーオブジェクトをRAM152内のクリアトナー版用の画像データ領域にレンダリングする。
【0133】
以上のような処理を行うことにより、図17に示すようなアプリケーション出力からでも、実施形態2と同様の結果を得ることができる。
【0134】
以上説明したように、本実施形態においては、一般のアプリケーションで作成されたデータを用いて、カラートナー用の画像とクリアトナー用の画像とを重ねて印刷する指定を行う際に、ユーザの意図に沿ってアプリケーションからの出力情報を解釈し直す。これにより、ユーザの編集の容易さを高めることができる。
【0135】
(その他の実施例)
また、本発明の目的は、以下の処理を実行することによっても達成される。即ち、上述した実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す処理である。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード及び該プログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿データに特色記録剤を用いて印刷を行う領域を特定する指示色で示される特定のオブジェクトが存在するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段にて存在すると判定された特定のオブジェクトを示す前記指示色を取得する取得手段と、
前記判定手段にて存在すると判定された特定のオブジェクトを前記原稿データから除去する除去手段と、
前記除去手段にて前記特定のオブジェクトが除去された前記原稿データの残りのオブジェクトのうち、前記取得した指示色と同一の色で示されるオブジェクトについて、前記特色記録剤を用いて印字させる描画コマンドを発行する発行手段と、
を有することを特徴とする印刷制御装置。
【請求項2】
前記発行手段は、前記描画コマンドの発行をページ単位で行うことを特徴とする請求項1に記載の印刷制御装置。
【請求項3】
前記特色記録剤はクリアトナーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷制御装置。
【請求項4】
前記発行手段は、前記取得した指示色と同一の色で示されるオブジェクトがα合成属性を有する場合に、該属性を無視して該オブジェクトの描画コマンドを発行することを特徴とする請求項3に記載の印刷制御装置。
【請求項5】
前記指示色で示される特定のオブジェクトを指定するための表示を行う表示手段を有する請求項1に記載の印刷制御装置。
【請求項6】
原稿データの印刷を指示するPDLデータに、特色記録剤を用いて印刷を行う領域を特定する指示色で示される特定のオブジェクトが存在するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段にて存在すると判定された特定のオブジェクトから前記指示色を取得する取得手段と、
前記判定手段にて存在すると判定された特定のオブジェクトを前記PDLデータから除去する除去手段と、
前記除去手段にて前記特定のオブジェクトが除去された前記PDLデータの残りのオブジェクトのうち前記取得した指示色と同一の色で示されるオブジェクトに対し、前記特色記録剤を用いる画像データ用の版へのレンダリングを行うレンダリング手段と
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
前記レンダリング手段における前記レンダリングをページ単位で行うことを特徴とする請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記特色記録剤はクリアトナーであることを特徴とする請求項6又は7に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記レンダリング手段は、前記取得した指示色と同一の色で示されるオブジェクトがα合成属性を有する場合に、該属性を無視して該オブジェクトのレンダリングを行うことを特徴とする請求項8に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記レンダリング手段は、
前記取得した色と同一の色で示されるオブジェクトが透かしパターンで構成されているか否かを判定する手段と、
透かしパターンで構成されていると判定された場合に、該オブジェクトに対しベタ化処理を行う手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項8に記載の印刷装置。
【請求項11】
原稿データに特色記録剤を用いて印刷を行う領域を特定する指示色で示される特定のオブジェクトが存在するか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにて存在すると判定された特定のオブジェクトを示す前記指示色を取得する取得ステップと、
前記判定ステップにて存在すると判定された特定のオブジェクトを前記原稿データから除去する除去ステップと、
前記除去ステップにて前記特定のオブジェクトが除去された前記原稿データの残りのオブジェクトのうち、前記取得した指示色と同一の色で示されるオブジェクトについて、前記特色記録剤を用いて印字させる描画コマンドを発行する発行ステップと、
を有することを特徴とする印刷制御方法。
【請求項12】
原稿データの印刷を指示するPDLデータに、特色記録剤を用いて印刷を行う領域を特定する指示色で示される特定のオブジェクトが存在するか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにて存在すると判定された特定のオブジェクトから前記指示色を取得する取得ステップと、
前記判定ステップにて存在すると判定された特定のオブジェクトを前記PDLデータから除去する除去ステップと、
前記除去ステップにて前記特定のオブジェクトが除去された前記PDLデータの残りのオブジェクトのうち前記取得した指示色と同一の色で示されるオブジェクトに対し、前記特色記録剤を用いる画像データ用の版へのレンダリングを行うレンダリングステップと
を有することを特徴とする印刷方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−58977(P2012−58977A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201059(P2010−201059)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】