説明

印刷装置及び印刷方法

【課題】記録媒体上の場所に応じた印刷の仕上がりムラが生じず、画質の劣化を防止する印刷装置を提供する。
【解決手段】本発明の印刷装置は、記録媒体を供給する供給ローラー21と、前記供給ローラー21から供給される前記記録媒体を加温する第1プラテン53と、
PTC特性を有する材料により構成され、所定の定電が印加されることで、前記第1プラテン53で加温された前記記録媒体を加温する第2プラテン51と、前記第2プラテン51の上方で前記記録媒体に液体を噴射するインクジェットヘッド31と、前記第2プラテン51で前記液体を噴射された前記記録媒体を加温する第3プラテン55と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式プリンターなどの印刷装置及びこのような印刷装置における印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体に液体を噴射して、文字、図形、模様、画像等の情報を描画記録する印刷装置の一つとして、インクジェット式プリンターが知られている。このようなインクジェット式プリンターでは、液体のインク粒子を記録媒体に吐着させて高精細な描画を行うために、記録媒体における温度管理が重要である。また高い生産性を確保するためには、記録媒体に吐着されたインクをできる限り速やかに定着、乾燥させることが求められる。
【0003】
このようなことから、インクジェット式プリンターにおいては、プラテンを加熱して記録媒体を昇温させるヒーターを設けておき、使用する記録媒体やインクの種類等に応じて、これらを設定された所定の温度に保持するようになっている。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2009−66864号公報)には、印刷媒体を保持するプラテンと、前記プラテンに保持された前記印刷媒体にインクを吐出するプリンタヘッドを有し前記印刷媒体と前記プリンタヘッドとを相対移動させて描画するインクジェット描画手段と、前記プラテンを加熱して前記印刷媒体を昇温させるヒーター手段と、前記プラテンの温度を検出する温度検出手段と、を有するインクジェットプリンターが開示されている。
【特許文献1】特開2009−66864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のインクジェットプリンターにおいては、記録媒体の位置に応じて吐出されるインクの量が異なるような場合、記録媒体を保持するプラテンに温度分布が生じ、印刷の仕上がりにムラが生じてしまう、という問題があった。
【0006】
特許文献1記載の発明では、各プラテンの温度を検出する温度センサーを設けるようにして、設定温度と、温度センサーにおいて検出される各プラテンの温度とを比較し、検出されるプラテンの温度が設定温度になるように各ヒーターへの通電をオン・オフする制御を行っている。
【0007】
しかしながら、このような構成をとったとしても、プラテン上に生じる局所的な温度分布までは抑制することが不可能であり、記録媒体上の場所に応じた印刷の仕上がりムラにより、画質が悪化してしまう、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するためのもので、本発明に係る印刷装置は、記録媒体を供給する供給ローラーと、前記供給ローラーから供給される前記記録媒体を加温する第1プラテンと、PTC特性を有する材料により構成され、所定の定電が印加されることで、前記第1プラテンで加温された前記記録媒体を加温する第2プラテンと、前記第2プラテンの上方で前記記録媒体に液体を噴射する記録ヘッドと、前記第2プラテンで前記液体を噴射された前記記録媒体を加温する第3プラテンと、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る印刷装置は、前記第1プラテンがPTC特性を有する材料により構
成され、前記第1プラテンは前記第2プラテンと並列に接続され通電されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る印刷装置は、前記第3プラテンがPTC特性を有する材料により構成され、前記第3プラテンは前記第2プラテンと並列に接続され通電されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る印刷装置は、前記第1プラテン及び前記第2プラテン及び前記第3プラテン全てが並列に接続され通電されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る印刷方法は、供給ローラーによって記録媒体を供給し、前記供給ローラーから供給される前記記録媒体を第1プラテンによって加温し、PTC特性を有する材料により構成され、所定の定電が印加される第2プラテンによって、前記第1プラテンで加温された前記記録媒体をさらに加温し、前記第2プラテンの上方で前記記録媒体に記録ヘッドによって液体を噴射し記録を行うことを特徴とする。
【0013】
以上、本発明の印刷装置及び印刷方法では、記録媒体に液体が噴射される第2プラテンは、PTC特性を有する材料により構成され、所定の定電圧が印加されることで、記録媒体を加温する構成となっているので、PTC特性を有する材料の自己温度制御により、第2プラテンで温度分布が生じにくく、このような本発明の印刷装置及び印刷方法によれば、記録媒体上の場所に応じた印刷の仕上がりムラが生じず、画質の劣化を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る印刷装置の概要を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る印刷装置のブロック図の概略である。
【図3】本発明の実施形態に係る印刷装置におけるプラテンを抜き出して示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る印刷装置における加熱部の回路構成を説明する図である。
【図5】PTC特性を有する材料で構成されるプラテンの効果を説明する図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る印刷装置における第1プラテン53を説明する図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る印刷装置における加熱部の回路構成を説明する図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る印刷装置の概要を示す図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る印刷装置におけるプラテンを抜き出して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る印刷装置の各実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。本実施形態では、本発明に係る印刷装置として、インクジェット式プリンター(以下、単にプリンターと称する)を例示する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態におけるプリンター1を示す構成図である。また、図2は本発明の実施形態に係る印刷装置のブロック図の概略である。
【0017】
プリンター1は、比較的大型の記録媒体(記録媒体)Mを扱うラージフォーマットプリンター(LFP)である。本実施形態の記録媒体Mは、例えば64インチ(Inch)程度の幅を有する塩化ビニル系フィルムから形成されている。
【0018】
印刷装置1に用い得る、その他の記録媒体Mとしては、普通紙、再生紙、光沢紙等の各種紙、各種布地、各種不織布、樹脂、金属、ガラス、樹脂製フィルム等の材質からなる記録媒体Mがある。なお、樹脂製フィルムの樹脂としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PS(ポリエステル)、PP(ポリプロピレン)等も好適に用いられる。
【0019】
図1に示すように、プリンター1は、ロール・ツー・ロール方式で記録媒体Mを搬送する搬送部2と、記録媒体Mに対してインク(液体)を噴射して画像や文字等を記録する記録部3と、記録媒体Mを加熱する加熱部4と、を有する。これら各構成部は、本体フレーム5に支持されている。また、プリンター1は、上記各部材の駆動を制御する制御部を備えている。
【0020】
搬送部2は、ロール体Rからロール状の記録媒体Mを送り出す供給ローラー21と、送り出された記録媒体Mを巻き取る巻き取りローラー22とを有する。搬送部2は、供給ローラー21及び巻き取りローラー22間の搬送経路において記録媒体Mを搬送する搬送ローラー対23、24を有する。また、搬送部2は、搬送ローラー対24及び巻き取りローラー22間の搬送経路において記録媒体Mに張力を付与するテンションローラー25を有する。
【0021】
また、印刷装置1における搬送部2は、副走査方向(第2の方向)に記録媒体Mを送るための記録媒体搬送ユニット130(図2参照)により制御されている。記録媒体搬送ユニット130は、画像記録時において、キャリッジ32の動作に合わせて、記録媒体Mの搬送と停止とを繰り返して記録媒体Mを間欠的に搬送する。
【0022】
テンションローラー25は、揺動フレーム26に支持されており、記録媒体Mの裏面に幅方向(図1において紙面垂直方向)で接触する構成となっている。テンションローラー25は、記録媒体Mの幅よりも幅方向において長く形成されている。テンションローラー25は、後述する加熱部4のアフターヒーター部よりも搬送方向下流側に設けられている。
【0023】
記録部3は、搬送ローラー対23、24間の搬送経路において記録媒体Mに対してインク(液体)を噴射するインクジェットヘッド(記録ヘッド)31と、インクジェットヘッド31を搭載して幅方向に往復移動自在なキャリッジ32とを有する。インクジェットヘッド31は、複数のノズルを備え、記録媒体Mとの関係で選択されて浸透乾燥や蒸発乾燥を必要とするインクを噴射可能な構成となっている。
【0024】
インクジェットヘッド31は、コントローラー110に接続されており、コントローラー110からインクジェットヘッド31に対しては、インクの吐出を制御するための信号などが送られる。
【0025】
印刷装置1は、不図示のガイドレールを有しており、このガイドレールには、キャリッジ32が支持されている。このキャリッジ32は、キャリッジ駆動ユニット140(図2参照)によって主走査方向(第1の方向)をガイドレールに沿って往復移動するようになっている。
【0026】
キャリッジ32の中央部には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)などの各色の色インクを記録媒体Mに吐出するノズルを形成してなるインクジェットヘッド31が搭載されている。インクジェットヘッド31で吐出されるインクのうちイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色インクは、主として画像記録用インクとして、上位装置であるコンピューター10等から受信した画像
データに基づいた所定画像の描画のために用いられる。
【0027】
なお、キャリッジ32が移動する方向(紙面に対して垂直な方向)を主走査方向(第1の方向)、この主走査方向と垂直で記録媒体Mが搬送される方向を副走査方向(第2の方向)として定義する。
【0028】
コンピューター10は、印刷を行う画像に応じた画像データを、プリンタードライバを介して印刷装置1に送る。画像データには、媒体の各画素についてインク色毎にインクを吐出するか否かを示す画素データが含まれている。
【0029】
印刷装置1の筐体(不図示)には、例えばタッチパネルにより構成され、ユーザーが選択可能な記録モードなどを表示するとともに、表示された記録モードをユーザーが選択して入力する入力操作ユニット120が設けられている。この入力操作ユニット120は、コントローラー110に接続されており、所定操作に基づいて選択された記録モードに係る信号をコントローラー110に対して出力するようになっている。
【0030】
このような入力操作ユニット120からは、印刷装置1で用いる記録媒体Mの種別に係る情報やインクの種別に係る情報などを入力することができるようになっている。また、コンピューター10からも、これらの情報を印刷装置1側のコントローラー110に入力することができるようになっている。
【0031】
図2の制御ブロックにおけるコントローラー110は、たとえば、CPU111、ROM112、RAM113からなり、ROM112に記録された処理プログラムをRAM113に展開してCPU111によりこの処理プログラムを実行するようになっている。また、インターフェイス105は、印刷装置1のコントローラー110とコンピューター10を接続するために設けられたインターフェイスである。
【0032】
ROM112には、記録媒体Mの種別やインクの種別に対応する加熱部4における最適設定温度のテーブルが記憶されており、コントローラー110は、入力操作ユニット120やコンピューター10から、印刷装置1で用いる記録媒体Mの種別に係る情報やインクの種別に係る情報が入力されると、このテーブルを参照し、加熱部4における温度設定を行うようになっている。
【0033】
このコントローラー110は、処理プログラムに従い、記録媒体Mの搬送制御を担う記録媒体搬送ユニット130、キャリッジ32の移動制御を担うキャリッジ駆動ユニット140、インクジェットヘッド31のインク吐出制御を担うヘッドユニット150、加熱部4の温度制御を担うヒーター制御ユニット160等の動作状況等のステータスに基づいて、各部材の動作を制御するようになっている。また、キャリッジ位置検出器180は、キャリッジ32の原点位置を検出する位置検出センサ(不図示)等から構成されており、これによる検出情報はコントローラー110に入力されるように構成され、キャリッジ駆動ユニット140の駆動処理に役立てられる。
【0034】
加熱部4は、記録媒体Mを加熱することによりインクを記録媒体Mに速やかに乾燥定着させ、滲みやぼやけを防止して、画質を高める構成となっている。加熱部4は、記録媒体Mの搬送経路の一部を構成する支持面を有して、記録媒体Mを供給ローラー21、巻き取りローラー22間で上方に凸となるように湾曲させて支持すると共に、支持面上の記録媒体Mを加熱する構成となっている。
【0035】
加熱部4は箱体形状部4Aを有し、該箱体形状部4Aにより外形形状が構成されている。箱体形状部4Aは、その上方でインクジェットヘッド(記録ヘッド)31からインクが
吐出される第2プラテン51、第2プラテン51上流側に配される第1プラテン53、第2プラテン51下流側に配される第3プラテン55、及び本体部60を含む。第2プラテン51、第1プラテン53、及び第3プラテン55は、それぞれ本体部60に対して着脱可能とされている。
【0036】
本実施形態に係るプリンター1では、第1プラテン53、第2プラテン51、第3プラテン55のそれぞれはPTC特性を有する材料で構成されており、これらの各プラテン自体が加熱部4として機能するようになっている。
【0037】
加熱部4は、記録部3が設けられた位置よりも搬送方向上流側で記録媒体Mを予熱する第1プラテン53(プレヒーター)と、記録部3と対向する位置で記録媒体Mを加熱する第2プラテン51(記録部ヒーター)と、記録部3が設けられた位置よりも搬送方向下流側で記録媒体Mを加熱する第3プラテン55(アフターヒーター)とを有する。
【0038】
本実施形態では、第1プラテン53(プレヒーター)における加熱温度が、40℃に設定されている。また、本実施形態では、第2プラテン51(記録部ヒーター)における加熱温度が、同じく40℃(目標温度)に設定されている。また、本実施形態では、第3プラテン55(アフターヒーター)における加熱温度が、第1プラテン53、第2プラテン51よりも高い50℃に設定されている。
【0039】
第1プラテン53(プレヒーター)は、記録媒体Mを常温から目標温度(プラテンヒーター部42における温度)に向けて徐々に昇温させることによって、インクの着弾時からの乾燥を速やかに促す構成となっている。また、第2プラテン51(記録部ヒーター)は、目標温度を維持した状態でインクの着弾を記録媒体Mに受けさせて、インクの着弾時からの乾燥を速やかに促す構成となっている。
【0040】
また、第3プラテン55(アフターヒーター)は、記録媒体Mを目標温度よりも高い温度まで昇温させ、記録媒体Mに着弾したインクのうち未だ乾燥していないものを速やかに乾燥させ、少なくとも巻き取りローラー22で巻き取る前に、着弾したインクを記録媒体Mに完全に乾燥定着させる構成となっている。
【0041】
第3プラテン55(アフターヒーター)においては、上述のように他のヒーター部よりも加熱温度を高く設定しているので、相対的に他のヒーター部よりも記録媒体Mの熱伸びが生じ易くなっている。また、第3プラテン55(アフターヒーター)においてはテンションローラー25により張力が記録媒体Mに付与されているので、記録媒体Mの熱伸び分が幅方向中央部に出現して縒れてシワになり易くなっている。プリンター1はテンションローラー25を駆動することでアフターヒーター部において加熱されている記録媒体Mに張力を付与し、記録媒体Mの熱伸び分が幅方向中央部に出現して縒れてシワになるのを防止することができるようになっている。
【0042】
次に、図3及び図4を参照して第1プラテン53(プレヒーター)、第2プラテン51(記録部ヒーター)、第3プラテン55(アフターヒーター)のより詳しい構成について説明する。図3は本発明の実施形態に係る印刷装置におけるプラテンを抜き出して示す図であり、図4は本発明の実施形態に係る印刷装置における加熱部4の回路構成を説明する図である。
【0043】
本実施形態に係る印刷装置1においては、第1プラテン53、第2プラテン51、第3プラテン55はPTC特性を有する材料で構成されており、搬送される記録媒体Mを支持すると共に、これを加熱するようになっている。
【0044】
PTC(Positive Temperature Coefficient)特性を有する材料は、キュリー点である所定の温度以上になると急激に電気抵抗が上昇して自己温度制御機能を発揮する特性を有している。このため、プラテンの過昇温を防止できると共に、記録媒体Mに対しインクが着弾した際の温度が低下すると、電気抵抗が急激に減少し、これに応じて速やかに通電され温度が回復される。
【0045】
図5はPTC特性を有する材料で構成されるプラテンの効果を説明する図である。図5(A)は、通電され温度がキュリー点であるToに保持されている第2プラテン51上で記録媒体Mが搬送されている状態を模式的に示している。これに対して、図5(B)は、インクジェットヘッド31で吐出されたインクが記録媒体M上に着弾し、このインクにより記録媒体M及び第2プラテン51における斜線で示す部分の温度がΔT下がったことを模式的に示している。本実施形態に係る印刷装置1においては、第2プラテン51がPTC特性を有する材料で構成されているので、このように第2プラテン51の温度が局所的にΔT下がると、斜線部の電気抵抗が減少し、速やかに通電され、温度Toが回復・保持されるようになっている。
【0046】
このように、記録媒体Mにインク(液体)が噴射される第2プラテン51は、PTC特性を有する材料により構成され、これにより、記録媒体Mを加温する構成となっているので、PTC特性を有する材料の自己温度制御により、第2プラテン51で温度分布が生じにくく、このような本発明の印刷装置及び印刷方法によれば、記録媒体上の場所に応じた印刷の仕上がりムラが生じず、画質の劣化を防止することが可能となる。
【0047】
第1プラテン53(プレヒーター)、第2プラテン51(記録部ヒーター)、第3プラテン55(アフターヒーター)に用いるPTC特性を有する材料としては、例えば、導電性粒子が添加された熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0048】
上記の熱可塑性樹脂としては、結晶性熱可塑性樹脂が好ましく、具体的には、ポリオレフィン樹脂及びその共重合樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリフェニレンオキシド及びノニル樹脂、ポリスルフォン等を挙げることができる。前記各種の結晶性熱可塑性樹脂は、必要に応じて他のポリマーや添加物との組成物として使用することもできる。
【0049】
また、前記導電性粒子としては、例えば、カーボンブラック粒子、グラファイト粒子等の粒状物、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、プラチナ(Pt)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)等の金属微粒子、金属粉体、金属酸化粉体等の粉状物、炭素繊維等の繊維状物、導電性無機材料(ITO等)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)等の正温度係数特性を有する無機材料等を挙げることができる。これらの中でもカーボンブラック粒子、グラファイト粒子等の粒状物、特に、カーボンブラック粒子が好ましい。前記各種の導電性粒子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合物として併用してもよい。
【0050】
上記のようなPTC特性材料により構成された第1プラテン53、第2プラテン51、第3プラテン55には通電のために電極を形成するが、このための電極としては、導電性の高い金属、例えば、銅や銅合金、金、銀、ニッケル、アルミニウム等の金属が好適に用いられ、必要に応じて、銅、銀、ニッケル、錫によるめっき等のコート材が表面に形成される。
【0051】
上記のような電極を第1プラテン53の上面(図3の53a)及び下面(図3の53b)、第2プラテン51の上面(図3の51a)及び下面(図3の51b)、第3プラテン55の上面(図3の55a)及び下面(図3の55b)に設け、それぞれのプラテンにお
いて厚み方向に電流が流れるようにしてもよいし、上記のような電極を第1プラテン53の側部(図3の53c、53d)、第2プラテン51の側部(図3の51c、51d)、第3プラテン55の側部(図3の55c、55d)に設け、それぞれのプラテンにおいて幅方向に電流が流れるようにしてもよい。
【0052】
上記のようにPTC特性材料に通電用電極を形成した後には、必要時応じて外面コート層を設けるようにしてもよい。このような外面コート層としては耐熱性があり、摩擦係数が低いものが好ましい。耐熱性および低摩擦係数を有する材料としては、PFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素樹脂を挙げることができ、これらのフッ素樹脂を1種で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。このような外面コート層を設けるようにしておけば、各プラテンを構成するPTC特性材料、電極のインクによる汚損などを防止することが可能となる。
【0053】
上記のような有機系の熱可塑性樹脂材料に導電性粒子を添加したPTC特性材料の他に、アルミナ、チタン酸バリウム、酸化チタン、マイカなどのセラミックス材料・無機材料にY、La、Sb、Taなどの希土類元素を添加したものも用いることができる。
【0054】
図4は第1プラテン53、第2プラテン51、第3プラテン55に通電を行うための回路構成の概略を示している。ここで、R1は第1プラテン53の、R2は第2プラテン51の、R3は第3プラテン55の等価回路として示しているが、実際にはそれぞれのプラテンは単純な抵抗成分ではなく、それぞれの材料のキュリー温度となると抵抗が無限大となる回路素子である。ここでは、簡便のため、図4に示すように抵抗として表記した。
【0055】
図4に示すように、第1プラテン53及び第2プラテン51及び第3プラテン55全ては互いに並列となるように接続されている。ヒーター制御ユニット160は、図4における回路図中の定電圧源に対して、所定の電圧が出力されるように出力目標値を指示する。また、ヒーター制御ユニット160は、図4における回路図中のスイッチSWのオンオフ制御を行うことで、定電圧源を各プラテンに印加するかをコントロールする。
【0056】
このように、本実施形態においては、全ての第1プラテン53及び第2プラテン51及び第3プラテン55に等しく電圧Vが印加されるようになっている。例えば、母材となる熱可塑性樹脂に添加する導電性粒子の量を各プラテンで調整することで、それぞれのプラテンでのキュリー点温度を調整し、共通電圧としてVが印加されても、それぞれのプラテンが所望の温度となるようにしている。
【0057】
以上、本発明の印刷装置及び印刷方法では、記録媒体Mにインク(液体)が噴射される第2プラテン51は、PTC特性を有する材料により構成され、所定の定電圧が印加されることで、記録媒体Mを加温する構成となっているので、PTC特性を有する材料の自己温度制御により、第2プラテン51で温度分布が生じにくく、このような本発明の印刷装置及び印刷方法によれば、記録媒体上の場所に応じた印刷の仕上がりムラが生じず、画質の劣化を防止することが可能となる。
【0058】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。先の実施形態においては、第1プラテン53(プレヒーター)における加熱温度が、40℃とされていた。一方、供給ローラー21から供給される記録媒体Mは室温であり、これが急激に40℃まで昇温されるのは、必ずしも好ましくない。そこで、他の実施形態においては、第1プラテン53(プレヒーター)では、供給ローラー21から第2プラテン51へと搬送される記録媒体Mを徐々に加熱するような構成が採用されている。
【0059】
図6は本発明の他の実施形態に係る印刷装置1における第1プラテン53を説明する図である。図6は第1プラテン53を抜き出して、装置側方からみた図である。
【0060】
図6(A)に示す実施形態では、第1プラテン53が3つの領域に分かれており、それぞれの領域で発熱温度が異なるようにされており、第1プラテン53に温度分布が付与されるようになっている。
【0061】
具体的には、第1プラテン53は、図示するように供給ローラー21から第2プラテン51へと進むにつれ、53p、53q、53rの3つの領域に分けられており、(室温)<(53pの設定温度)<(53qの設定温度)<(53rの設定温度)=40℃となるようにされている。これは、第1プラテン53のそれぞれの領域で、母材となる熱可塑性樹脂に添加する導電性粒子の量を各プラテンで調整することで実現することが可能である。
【0062】
また、第1プラテン53(プレヒーター)で、供給ローラー21から第2プラテン51へと搬送される記録媒体Mを徐々に加熱するように、図6(B)に示す実施形態では、第1の方向に延在する切り欠き凹部53sが設けられており、この切り欠き凹部53sの密度が、供給ローラー21側では密に、第2プラテン51側では疎となるように設けられている。
【0063】
なお、図6(B)に示す実施形態では、第1プラテン53は一様なPTC特性材料で構成されてなる。
【0064】
切り欠き凹部53sは第1の方向に延びるスリット状の凹部であり、図6(B)ではこの切り欠き凹部53sが、供給ローラー21側では密に設けられることで、第1プラテン53と記録媒体Mとの接触面積を制限し、供給ローラー21側における記録媒体Mの温度上昇を抑制する。一方、第2プラテン51側では切り欠き凹部53sが疎に設けられることで、第1プラテン53と記録媒体Mとの接触面積を供給ローラー21側より増やすことで、供給ローラー21側における記録媒体Mを第2プラテン51と同程度にまで昇温させるようになっている。
【0065】
また、第1プラテン53(プレヒーター)で、供給ローラー21から第2プラテン51へと搬送される記録媒体Mを徐々に加熱するように、図6(C)に示す実施形態では、第1の方向に延在する切り欠き凹部53tが設けられており、この切り欠き凹部53tの幅が、供給ローラー21側では幅広に、第2プラテン51側では幅狭となるように設けられている。
【0066】
なお、図6(C)に示す実施形態では、第1プラテン53は一様なPTC特性材料で構成されてなる。また、切り欠き凹部53tの幅は、記録媒体Mの進行方向の長さとして定義される。
【0067】
切り欠き凹部53tは第1の方向に延びるスリット状の凹部であり、図6(C)ではこの切り欠き凹部53tが、供給ローラー21側では幅広に設けられることで、第1プラテン53と記録媒体Mとの接触面積を制限し、供給ローラー21側における記録媒体Mの温度上昇を抑制する。一方、第2プラテン51側では切り欠き凹部53tが、供給ローラー21側のものより幅狭に設けられることで、第1プラテン53と記録媒体Mとの接触面積を供給ローラー21側より増やすことで、供給ローラー21側における記録媒体Mを第2プラテン51と同程度にまで昇温させるようになっている。
【0068】
上記のような他の実施形態によっても、先の実施形態と同様の作用効果を享受すること
が可能となると共に、第1プラテン53において、室温で供給される記録媒体Mを徐々に昇温させるようになっているので、記録媒体Mへの加熱の影響を抑制することが可能となる。
【0069】
次に本発明の他の実施形態について説明する。第1の実施形態においては、図4に示すように、第1プラテン53及び第2プラテン51及び第3プラテン55全ては互いに並列となるように接続されている。これに対して、本実施形態においては、図7に示すように、第1プラテン53と第3プラテン55との直列接続に、第2プラテン51が並列に接続されて、定電圧Vが印加されるようになっている。
【0070】
記録媒体Mに対しインクが着弾した際の温度の低下は、第2プラテン51で起こるのみであるので、第2プラテン51には一定の電圧Vが印加されている必要がある。これに対して、第1プラテン53と第3プラテン55にそれぞれ印加されるV1、V3は多少の変動が生じても構わない。そこで、本実施形態においては、第1プラテン53と第3プラテン55とは直列接続として回路構成を簡便にするようにしている。
【0071】
すなわち、本実施形態においては、上方で搬送される記録媒体Mにインクが着弾する第2プラテン51は、第1プラテン53及び第3プラテン55のいずれとも、並列接続の関係を有する構成で、各プラテンに通電がなされるようになっている。
【0072】
次に本発明の他の実施形態について説明する。これまでの実施形態では、第1プラテン53、第2プラテン51、第3プラテン55の全てに、PTC特性を有する材料が用いられていた。これに対して、本実施形態においては、記録媒体Mに対しインクが着弾した際の温度の低下は、第2プラテン51で起こるのみであるので、第2プラテン51(記録部ヒーター)にのみ、PTC特性を有する材料が用いられている。
【0073】
図8は本発明の他の実施形態に係る印刷装置の概要を示す図である。本実施形態に係るプレヒーター部は、巻き取りローラー22から送り出された記録媒体Mを最初に支持する支持面52を構成する第1プラテン53を有するが、この第1プラテン53は、Al材やSUS材等の金属材から形成されている。支持面52の逆側の面52aには、図8に示すようにヒーター41aが配線されている。このヒーター41aは、チューブヒーターから構成され、アルミテープ(不図示)を介して、第1プラテン53の支持面52と反対の面52aに貼付されている。
【0074】
また、本実施形態に係るアフターヒーター部は、第2プラテン51を通過した記録媒体Mを支持する支持面54を構成する第3プラテン55を有するが、この第3プラテン55は、Al材やSUS材等の金属材から形成されている。また、支持面54の逆側の面54aには、図1に示すようにヒーター43aが配線されている。このヒーター43aは、チューブヒーターから構成され、アルミテープ(不図示)を介して、第3プラテン55の支持面54と反対の面54aに貼付されている。
【0075】
以上のような図8に示す実施形態によっても、これまで説明した実施形態と同様の効果を享受することが可能であると共に、第1プラテン53及び第3プラテン55については従来の構成を流用することが可能となり設計コスト等を抑制することが可能となる。
【0076】
次に本発明の他の実施形態について説明する。図9は本発明の他の実施形態に係る印刷装置1におけるプラテンを抜き出して示す図である。
【0077】
第1の実施形態においては、第1プラテン53及び第2プラテン51及び第3プラテン55の前面が、一様に加熱を行う構成であるのに対して、本実施形態では、第1プラテン
53及び第2プラテン51及び第3プラテン55には、発熱又は非発熱を選択可能な領域が設けられることを特徴としている。
【0078】
印刷装置1で用いる記録媒体Mの幅には、複数の規格が存在する。例えば、図9に示すように、幅がA1の記録媒体Mと、幅がA2の記録媒体Mなどである。幅がA2の記録媒体Mの印刷を行う際に、各プラテン全面を加熱すると、エネルギー利用効率が良くない、という問題がある。
【0079】
そこで、本実施形態に係る印刷装置1のいいては、第1プラテン53においてはP1に示す領域が、また、第2プラテン51においてはQ1に示す領域が、また、第3プラテン55においてはR1に示す領域が、選択的に発熱又は非発熱とすることが可能に構成されている。
【0080】
これにより、幅がA2の記録媒体Mの印刷を行う際には、第1プラテン53においてはP2に示す領域のみを、また、第2プラテン51においてはQ2に示す領域のみを、また、第3プラテン55においてはR2に示す領域のみを加熱するようにすることで、エネルギー消費を抑制することが可能となる。
【0081】
以上のような実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を享受することが可能であると共に、エネルギー利用効率も向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0082】
1・・・プリンター(印刷装置)、2・・・搬送部、3・・・記録部、4・・・加熱部、4A・・・箱体形状部、5・・・本体フレーム、10・・・コンピューター、21・・・供給ローラー、22・・・巻き取りローラー、23、24・・・搬送ローラー対、25・・・テンションローラー、26・・・揺動フレーム、31・・・インクジェットヘッド、32・・・キャリッジ、41a・・・ヒーター、43a・・・ヒーター、51・・・第2プラテン、52・・・支持面、53・・・第1プラテン、53s・・・切り欠き凹部、53t・・・切り欠き凹部、54・・・支持面、55・・・第3プラテン、60・・・本体部、110・・・コントローラー、111・・・CPU、112・・・ROM、113・・・RAM、120・・・入力操作ユニット、130・・・記録媒体搬送ユニット、140・・・キャリッジ駆動ユニット、150・・・ヘッドユニット、160・・・ヒーター制御ユニット、M・・・記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を供給する供給ローラーと、
前記供給ローラーから供給される前記記録媒体を加温する第1プラテンと、
PTC特性を有する材料により構成され、所定の定電が印加されることで、前記第1プラテンで加温された前記記録媒体を加温する第2プラテンと、
前記第2プラテンの上方で前記記録媒体に液体を噴射する記録ヘッドと、
前記第2プラテンで前記液体を噴射された前記記録媒体を加温する第3プラテンと、
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記第1プラテンがPTC特性を有する材料により構成され、前記第1プラテンは前記第2プラテンと並列に接続され通電されることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記第3プラテンがPTC特性を有する材料により構成され、前記第3プラテンは前記第2プラテンと並列に接続され通電されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記第1プラテン及び前記第2プラテン及び前記第3プラテン全てが並列に接続され通電されることを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
供給ローラーによって記録媒体を供給し、
前記供給ローラーから供給される前記記録媒体を第1プラテンによって加温し、
PTC特性を有する材料により構成され、所定の定電が印加される第2プラテンによって、前記第1プラテンで加温された前記記録媒体をさらに加温し、
前記第2プラテンの上方で前記記録媒体に記録ヘッドによって液体を噴射し記録を行うことを特徴とする印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−52578(P2013−52578A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191959(P2011−191959)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】