印刷装置
【課題】任意の方向で認識可能な印刷データを被印刷媒体に施すことができる印刷装置を提供する。
【解決手段】プリンタは、互いに対向して配置されたサーマルヘッドとプラテンローラとを有する印刷部を備えており、可撓性を有するチューブTをサーマルヘッドとプラテンローラとで圧接することで扁平状に変形させチューブTの一面側に所定のデータを印刷する。また、プリンタは、チューブTを反転させる反転部材21、22と、を備えており、チューブTは、チューブTの長手方向の軸を中心に、反転部材21、22によってチューブTが支持された状態で反転され、サーマルヘッドとプラテンローラとで圧接することで、チューブTの一面側以外の未印刷部にも印刷される。
【解決手段】プリンタは、互いに対向して配置されたサーマルヘッドとプラテンローラとを有する印刷部を備えており、可撓性を有するチューブTをサーマルヘッドとプラテンローラとで圧接することで扁平状に変形させチューブTの一面側に所定のデータを印刷する。また、プリンタは、チューブTを反転させる反転部材21、22と、を備えており、チューブTは、チューブTの長手方向の軸を中心に、反転部材21、22によってチューブTが支持された状態で反転され、サーマルヘッドとプラテンローラとで圧接することで、チューブTの一面側以外の未印刷部にも印刷される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷装置に係り、特に、互いに対向して配置された印刷ヘッドとプラテンとを有する印刷部を備え、可撓性を有する被印刷媒体を印刷ヘッドとプラテンとで圧接することで扁平状に変形させ被印刷媒体に所定のデータを印刷する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、配電盤等に配線される電線を識別するために、マークチューブ等の可撓性を有するチューブ状(円筒状)の印刷媒体(以下、チューブという。)に文字や記号等の所定のデータを印刷し、印刷されたチューブを電線に装着している。また、このようなチューブに印刷を施すための印刷装置は既に知られている。このような印刷装置は、互いに対向して配置されたプラテン(ローラ)とサーマルヘッド等の印刷ヘッドとを備えている。
【0003】
この種の印刷装置では、チューブの表面に印字を行う際に、チューブをプラテンと印刷ヘッドとの間で圧接して、チューブが平面ないし扁平状となるよう押し潰して(変形させて)印刷を行っている。チューブはプラテンとプラテンの下流側に配置された搬送ローラによりニップされながら印刷され、チューブ切断部へと搬送される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−358752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記構成の印刷装置では、被印刷媒体であるチューブに対して押し潰して印刷をするため、被印刷媒体の押し潰された一側面(例えば、180度)にしか印刷することしかできない。このため、実際に電線に装着して使用されるような場合には、被印刷媒体に印刷された刷データが、ある一方向からしか認識できず不便であった。
【0006】
本発明は上記事案に鑑み、任意の方向で認識可能な印刷データを被印刷媒体に施すことができる印刷装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、互いに対向して配置された印刷ヘッドとプラテンとを有する印刷部を備え、可撓性を有する被印刷媒体を前記印刷ヘッドと前記プラテンとで圧接することで扁平状に変形させ前記被印刷媒体に所定のデータを印刷する印刷装置において、前記被印刷媒体が搬送される搬送路と、前記搬送路上に設けられ、前記被印刷媒体を搬送する搬送手段と、前記被印刷媒体を支持する支持手段と、前記被印刷媒体の少なくとも2ヶ所の異なる面に対して印刷可能にするために、前記支持手段を所定角度回動させる回動手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明では、搬送手段により可撓性を有する被印刷媒体が搬送路上を印刷部に搬送され、印刷ヘッドとプラテンとで圧接することで被印刷媒体が扁平状に変形され被印刷媒体に所定のデータが印刷される。これにより、被印刷媒体の扁平状に変形された一側面に印刷が施される。次いで、支持手段によって支持された被印刷媒体を所定角度回動させるため、回動手段により支持手段を回動させる。そして、印刷ヘッドとプラテンとで圧接することで被印刷媒体に所定のデータが印刷される。これにより、被印刷媒体の一面側以外の未印刷部に印刷が施されるので、任意の方向で認識可能な印刷データを被印刷媒体に施すことができる。
【0009】
本発明において、搬送手段は少なくとも一対の搬送ローラで構成され、該搬送ローラは、支持手段が回動中は、離間していることが好ましい。また、搬送手段は、支持手段および回動手段により被印刷媒体が所定角度回動された後、被印刷媒体を、一旦印刷部より上流側に搬送した後、印刷部へスイッチバック搬送するようにしてもよい。搬送手段を、被印刷媒体の搬送方向に対して支持手段の下流側に配置するようにしてもよい。さらに、支持手段は、搬送路上の回動位置と、被印刷媒体をセットするためのセット位置との間で移動可能に構成するようにしてもよい。支持手段は、被印刷媒体の搬送方向に対して印刷ヘッドの上流および下流にそれぞれ設けることが好ましい。このとき、印刷ヘッドの上流に設けられた第1の支持手段と、該印刷ヘッドの下流に設けられた第2の支持手段とを連結する連結手段をさらに有し、第1の支持手段と第2の支持手段とは、同期して回動するようにしてもよい。支持手段は、被印刷媒体を挟持する狭持部材を有し、狭持部材は、該被印刷媒体を狭持する狭持位置と、該被印刷媒体を狭持しない開放位置との間で移動可能に構成してもよい。また、支持手段の回動量を検出する検出手段をさらに備えるようにしてもよい。このような態様についての作用効果については実施形態で詳述する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、支持手段が被印刷媒体を支持した状態で、回動手段が支持手段を所定角度回動させ、印刷ヘッドとプラテンとで圧接することで被印刷媒体の未印刷面側にも印刷が施されるので、任意の方向で認識可能な印刷データを被印刷媒体に施すことができる、という効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明が適用可能な実施形態のチューブプリンタの外観図である。
【図2】実施形態のチューブプリンタの印刷部の拡大斜視図である。
【図3】チューブを搬送中の状態を示す印刷部の拡大正面図である。
【図4】チューブに印刷中の状態を示す印刷部の拡大正面図である。
【図5】チューブが回動中の状態を示す印刷部の拡大正面図である。
【図6】反転部材が印刷位置からセット位置に引き出され、チューブが反転部材にセットされた状態を示す拡大斜視図である。
【図7】チューブが反転部材にセットされた状態を示す拡大断面図である。
【図8】反転部材とその駆動系の反転前の状態を示す拡大斜視図である。
【図9】反転部材とその駆動系の反転後の状態を示す拡大斜視図である。
【図10】実施形態のチューブプリンタの制御部および接続系統を示すブロック図である。
【図11】本発明が適用可能な他の実施形態のチューブプリンタにおけるサーマルヘッドと搬送ローラ対の離接動作を模式的に示す概念図であり、(A)および(C)はサーマルヘッドが退避位置にあり搬送ローラ対が接触位置にある状態、(B)サーマルヘッドが退避位置にあり搬送ローラ対が離間位置にある状態、(D)はサーマルヘッドが進出位置にあり搬送ローラ対が接触位置にある状態を示す。
【図12】本発明が適用可能な他の実施形態のチューブプリンタの印刷から排出までの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明を、可撓性を有するチューブ状の被印刷媒体(以下、単にチューブTという。)に任意の文字等を印刷可能なチューブプリンタに適用した実施の形態について説明する。
【0013】
(構成)
図1に示すように、本実施形態のチューブプリンタ1(以下、単にプリンタ1という。)は、ノートタイプコンピュータと同様に持ち運び可能に構成されており、大別して、キーボードや入力制御部を有する入力部13、LCDや表示制御部を有する表示部14、サーマルヘッド6(印刷ヘッド)とプラテンローラ3とを有する印刷部20、印刷部20の下流側に配置されチューブTを所望の位置で切断するカッタ7、カッタ7の下流側に配置された排出ローラ対12およびこれら各部を制御する制御部15(図10参照)を備えている。印刷部20、カッタ7および排出ローラ対12は、チューブTを搬送するための略直線状の搬送路Pに沿って配設されている。
【0014】
<入力部>
入力部13は、ノートタイプコンピュータとほぼ同様に、ファンクションキー、文字・数字・記号キー、スペースキー、変換キー、十字方向キー、リターンキー等を有しており、オペレータがこれらのキーを操作することで、所望の印刷データを入力することができる。
【0015】
<表示部>
表示部14のLCDは、入力モード等を表示する各種情報表示エリア、入力部13から入力された文字、数字、記号(以下、文字と略称する。)を表示する文字情報表示エリア、文字サイズ等を表示するパラメータ表示エリアの3つの表示エリアに分割されており、各種情報表示エリアおよびパラメータ表示エリアはそれぞれ文字情報表示エリアの上下に配置されている。本例では、LCDは全体で縦64ドット、横160ドットの表示が可能であり、各種情報表示エリアは縦16ドット、横160ドット、文字情報表示エリアは縦32ドット、横160ドット、パラメータ表示エリアは縦16ドット、横160ドットの表示が可能である。
【0016】
<印刷部>
印刷部20は、その中央に、搬送路Pを介して互いに対向するように、サーマルヘッド6とプラテンローラ3とが配設されている。印刷部20において、チューブTは、プラテンローラ3側に押圧されたサーマルヘッド6により、換言すれば、チューブTをサーマルヘッド6とプラテンローラ3とで圧接して押し潰し扁平状に変形させることで、チューブTに入力部13から入力された所望のデータが印刷される。プラテンローラ3とサーマルヘッド6との間にはインクリボンRが介在しており、インクリボンRは、インクリボンカセット8のリボン供給リールから供給され、リボン巻取リールに巻き取られる。サーマルヘッド6は、マトリクス状に配設された多数の発熱素子を選択的に発熱させることでインクリボンRの色素をチューブTに熱転写することで印刷を施す。
【0017】
図2に示すように、プラテンローラ3の上流側および下流側には、それぞれ一対の搬送ローラで構成されチューブTを搬送するための搬送ローラ対27、28が配設されている。搬送ローラ対27、28は搬送路P上に配設されている(図1も参照)。また、搬送ローラ対27の上流側、並びに、プラテンローラ3の下流側かつ搬送ローラ対28の上流側には、チューブTの長手方向の(中空の)軸を中心にチューブTを所定角度(180°)回動(反転)させるための反転部材21、22がそれぞれ配設されている。
【0018】
反転部材21、22の中心部には、チューブTの径より小さい矩形状の穴21a、22aが形成されている。反転部材21、22は、穴21a、22aが搬送路P上に位置するように配設されている。このため、穴21a、22aにチューブTを通すことでチューブTの支持(把持ないし挟持)が可能である。
【0019】
反転部材21、22は全体としてギア形状を呈しており、反転部材21、22のギアはそれぞれギア23、24に噛合している。ギア23とギア24とはシャフト29で固定されている。このため、ギア23、23の回転(回動)は同期して行われる(図3も参照)。ギア23は複数のギアおよびクラッチを介してステッピングモータ5のモータ軸に連結されており、反転部材21、22はステッピングモータ5の回転駆動力により180°回動可能に構成されている(図8、図9も参照)。なお、上述した搬送ローラ対27、28の回転駆動力もステッピングモータ5から図示を省略した複数のギアを介して伝達される。また、反転部材21、22は、それぞれ、それらのギアより大径で円板状のフラグ21b、22bを有しており、このフラグ21b、22bを跨ぐように配設された透過一体型センサ25、26によりホームポジションの検出が可能である。
【0020】
図2に示すように、サーマルヘッド6は、ギアが固着された板状のレバー部材17に固定されている。レバー部材17の一側端部はバネで付勢されており、他側端部は回動可能に軸支されている。サーマルヘッド6のプラテンローラ3に対する進出、退避は、ステッピングモータ11の回転駆動力によって行われる。すなわち、ステッピングモータ11のモータ軸とレバー部材17のギアとの間には偏心ギアを含む複数のギアが設けられており、偏心ギアの作用によって、サーマルヘッド6はプラテンローラ3に対して進出、退避が行われる。なお、ステッピングモータ11は、図示しないギアを介してインクリボンカセット8のリボン巻取リールのスプールも回転駆動させる。
【0021】
搬送ローラ対27、28は、チューブTに対するニップ(挟持)を解除するニップ解除機構を有している。換言すれば、搬送ローラ対27、28は、それぞれを構成する2つの搬送ローラが、離間/接触(圧接)可能に構成されている。本例では、2つの搬送ローラの離間/接触を、偏心ギアを含む図示を省略したギア機構で構成しており、このギア機構への回転駆動力はステッピングモータ11から供給される。
【0022】
<カッタ、排出部>
図1に示すように、印刷部20の下流側には、チューブTを切断するためのカッタ7が配置されている。カッタ7は、カッタ刃7aとカッタ刃受け台7bとを有している。カッタ刃受け台7bを、カッタ刃7aに対して略垂直に押圧することにより、チューブTの切断が可能である。カッタ刃受け台7bのカッタ刃7aの進出、退避の駆動力は、図示しないギア機構を介してステッピングモータ9から供給される。なお、カッタ7の下流側には、上述した排出ローラ対12が配置されており、排出ローラ対12の回転駆動力もステッピングモータ9から供給される。カッタ刃受け台7bのカッタ刃7aの進出はステッピングモータ9の正転で行われ、カッタ刃受け台7bのカッタ刃7aの退避および排出ローラ対12の回転駆動はステッピングモータ9の逆転で行われる。
【0023】
なお、プリンタ1は、アタッチメント部10に装着するアタッチメントを変更することにより、本例に示すチューブT以外の各種長尺媒体に対しても印刷および切断処理が可能に構成されている。従って、図1に示すチューブ用アタッチメントをアタッチメント部10に装着することに代えて、例えば、ラベル用アタッチメントを装着することで、長尺状のラベルに対しても印刷および切断処理を行うことができる。
【0024】
<制御部>
図10に示すように、制御部15は、中央処理装置として高速で機能するCPU、プリンタ1の基本制御プログラムおよびプログラムデータを格納したROM、CPUのワークエリアとして機能するRAM等を有しており、これらCPU、ROM、RAMは内部バスで接続されている。
【0025】
制御部15には外部バスが接続されている。外部バスには、入力部13の入力制御部、表示部14の表示制御部、印刷部20のサーマルヘッド6、ステッピングモータ5、9、11の動作を制御するドライバ18、センサ25、26を含む各種センサからの情報を制御するセンサ制御部19が接続されている。ドライバ18には上述したステッピングモータ5、9、11が接続されており、センサ制御部19には各種センサが接続されている。また、制御部15は図示しないバッファやインターフェースを有しており、外部バスを介して、例えば、パーソナルコンピュータ等の上位機器に接続可能である。このため、オペレータは入力部13からの入力に代えて、パーソナルコンピュータからの入力も可能であり、さらに、RAMカード等の外部記憶装置を装着することで外部記憶装置に格納されたデータの利用も可能である。
【0026】
(動作)
次に、本実施形態のプリンタ1の動作について、CPUを主体として、印刷部20の動作を中心に説明する。なお、プリンタ1に電源が投入されると、ROMに格納されたプログラムおよびプログラムデータをRAMに展開するとともに、各種センサを介して上述した各部が所定のホームポジションにあるかを確認し、ホームポジションにない場合にはホームポジションに復帰させる復帰処理を含む初期設定処理を行った後、表示部14にプリンタ1の状態を表示し、以下のルーチンを実行する。
【0027】
一方、オペレータは、予め、チューブ用アタッチメントをアタッチメント部10に装着し(図1に示す状態)、チューブTを反転部材21、22の穴21a、22aに通しておく。図6は、チューブTを反転部材21、22にセットするために、反転部材21、22が搬送路P上の印刷位置から引き出された状態(セット位置)を示したものである。チューブTを反転部材21、22にセットする際は、オペレータがチューブTの先端を押し潰して、反転部材21の穴21aに押し込み、穴21aの反対側に出てきたチューブTを引っ張り、同様に反転部材22の穴22aにチューブTを通す。図7はチューブTを反転部材21、22に通した状態の断面図である。図7に示すように、反転部材21、22に通されたチューブTは穴21aと22aの形状によって変形されており、反転部材21、22により離間した2箇所で支持されている。オペレータは、図6および図7に示すようにチューブTを反転部材21、22にセットした後、図8に示すように、反転部材21、22を搬送路P外のセット位置から搬送路P上の印刷位置に戻す。
【0028】
<一面側への印刷>
CPUは、センサ25、26を監視することで、反転部材21、22にチューブTが装着されたことを把握することができる。この後、位置精度を高めるために、反転部材21、22がホームポジションにあるかを判断し、ホームポジションにない場合には、ホームポジションに戻すようにしてもよい。次に、CPUは、入力部13の所定キー(スタートキー)が押下されるまで待機し、押下されると、チューブTを印刷位置に搬送するために、ステッピングモータ5を駆動する。これにより、チューブTは搬送路P上を搬送ローラ対27、28によって搬送される。図3は、この搬送状態を示している。この状態では、搬送ローラ対27、28がチューブTをニップしている。
【0029】
CPUは、ドライバからステッピングモータ5に出力したパルス数をカウントしており、チューブT(の印刷対象部分)がサーマルヘッド6とプラテンローラ3が対向配置された印刷位置に至ると(予め設定された所定のパルス数となると)、チューブTに対して印刷を施す。図4は、チューブTに対して印刷を施している状態を示したものである。この状態では、搬送ローラ対27、28がチューブTをニップして搬送しながら、上述したステッピングモータ11を駆動させることで、サーマルヘッド6がインクリボンR(図4では不図示、図1参照)とチューブTとをプラテンローラ3に圧接することでチューブTを扁平状に変形させ(押し潰し)その一面側に印刷を行う。なお、CPUは、予め入力部13から入力された印刷データを熱エネルギデータに変換してサーマルヘッド6に送出し、上述したように、サーマルヘッド6が、熱エネルギデータに従い、発熱素子を選択的に発熱させることでインクリボンRの色素をチューブTに転写し、チューブTへの印刷が行われる。
【0030】
<他面側への印刷>
CPUは、サーマルヘッド6とプラテンローラ3の圧接によりチューブTが押し潰されることで形成された一面側への印刷が終了すると、未印刷状態の他面側への印刷を実行する。
【0031】
すなわち、CPUは、まず、上述したニップ解除機構を介して、搬送ローラ対27、28によるチューブTのニップを解除するようにステッピングモータ11を駆動させる。同期して、サーマルヘッド6はプラテンローラ3に対して退避した退避位置に位置付けられる。図5はこの状態を示したものである。図5に示すように、サーマルヘッド6と搬送ローラ対27、28を構成する各搬送ローラは互いにチューブTから離間している。この状態では、チューブTは、反転部材21、22にのみ支持されている。
【0032】
次いで、CPUは、ステッピングモータ5を駆動し、反転部材21、22を180°回動させて、すなわち、反転させてチューブTを裏返す。このとき、CPUは、センサ25、26の出力を監視することで、フラグ21b、22bの回転量を検出している。図8および図9は、反転部材21、22とその駆動系のみを抜き出したものであり、図8は回動前の状態を示し、図9は回動後の状態を示している(フラグ21b、22bの位置参照)。次に、CPUは、搬送ローラ対27、28を構成する各搬送ローラを当接させるように(チューブTを挟持するように)ステッピングモータ11を駆動し(図3参照)、さらに必要に応じて、ステッピングモータ5を逆転させることで、チューブTの一面側への印刷の際に搬送した方向とは逆方向(図1に示すアタッチメント部10の方向)に所定パルス数搬送して、ステッピングモータ5の駆動を停止させる。このような逆方向への搬送は、上述したチューブTの一面側と他面側との印刷位置を揃えるために行われるものであるが、印刷位置を揃える必要がない場合(オペレータが入力部13を介してその命令を出さない場合)には、逆方向へのチューブTの搬送は行われない。
【0033】
チューブTを逆方向に搬送した場合には、CPUは、上述した一面側への印刷の際と同様に、チューブTを印刷位置に搬送するために、ステッピングモータ5を駆動する(図3参照)。従って、チューブTは搬送ローラ対27、28によってスイッチバック搬送される。CPUは、ドライバからステッピングモータ5に出力したパルス数をカウントし、チューブTが印刷位置に至ると、チューブTに対して印刷を施す(図4参照)。この状態では、搬送ローラ対27、28がチューブTをニップして搬送しながら、上述したステッピングモータ11を駆動させることで、サーマルヘッド6がインクリボンRとチューブTとをプラテンローラ3に圧接することでチューブTを扁平状に変形させ他面側に印刷が施される。これにより、印刷部20によるチューブTへの印刷が終了する。一方、印刷位置を揃える必要がない場合には、反転部材21、22でチューブTを反転させた後、ステッピングモータ11を駆動させることで、サーマルヘッド6がインクリボンRとチューブTとをプラテンローラ3に圧接することでチューブTを扁平状に変形させ他面側に印刷が施される。なお、他面側への印刷では一面側への印刷と同じ印刷データを印刷しても、一面側とは異なる印刷データを印刷してもよい。
【0034】
<切断、排出>
CPUは、上述したチューブTの一面側および他面側へ印刷データの印刷が終了すると、チューブTを下流側(カッタ刃7側)に所定パルス数、搬送する。このようなチューブTの搬送も、図3に示したように、搬送ローラ対27、28によるチューブTのニップ搬送により行われる。CPUは、所定パルス数、チューブTを下流側に搬送すると、オペレータによる入力部13からの命令を待つ。オペレータは、入力部13の所定キーを押下することで、さらにチューブTを下流側に搬送するか、切断位置が行き過ぎたために、逆方向へ戻すかの命令をCPUに与える。しかしながら、オペレータは、カッタ刃7の切断位置に位置するように、入力部13から所定距離搬送するように命令するようにしてもよい。オペレータの命令に従い、CPUは、ステッピングモータ5を回転ないし逆転させ、チューブTをカッタ刃7の切断位置に位置付け、ステッピングモータ5の駆動を停止させる。
【0035】
次いで、ステッピングモータ9を駆動することで、カッタ刃受け台7bをカッタ刃7aに向けて進出させる。これにより、チューブTはオペレータの所望の位置で切断される。次に、CPUは、ステッピングモータ9を逆転させることで、カッタ刃受け台7bをカッタ刃7aから退避させ、排出ローラ12を回転させる。これにより、チューブTは搬送路P上を排出位置まで搬送される。ステッピングモータ9は、所定パルス数逆転した後で停止する。
【0036】
以上の動作により、CPUのルーチンは終了する。続いて、次のルーチンを実行する場合には、既にチューブTは反転部材21、22の穴21a、22aに通されているので、CPUは、上述した<一面側への印刷>からルーチンを実行する。
【0037】
(効果等)
次に、本実施形態のプリンタ1の作用、効果等について説明する。
【0038】
本実施形態のプリンタ1では、搬送ローラ対27、28によりチューブTが搬送路P上を印刷部20に搬送され、サーマルヘッド6とプラテンローラ3とで圧接することでチューブTが扁平状に変形されてチューブTの一面側に所定のデータが印刷され、次いで、反転部材21、22がチューブTを支持した状態で、反転部材21、22を反転させ、サーマルヘッド6とプラテンローラ3とで圧接することで、チューブTの一面側以外の未印刷部に所定のデータが印刷されるので、任意の方向で認識可能な印刷データをチューブTに施すことができる。
【0039】
また、本実施形態のプリンタ1では、チューブTを反転している間、搬送ローラ対27、28を構成する搬送ローラは互いに離間しており、チューブTのニップを解除している(図5参照)。従って、プリンタ1によれば、チューブTの未印刷部に適正に印刷することができるとともに、反転に伴い一面側に既に施した印刷の品質低下を防止することができる。
【0040】
さらに、本実施形態のプリンタ1では、反転部材21、22によりチューブTが反転された後、必要に応じて(オペレータの命令に従い)、搬送ローラ対27、28がチューブTを一旦印刷部20より上流側に搬送した後、印刷部20へスイッチバック搬送している。従って、プリンタ1によれば、スイッチバック搬送を行わない場合には、チューブTにチドリ状に印刷を施すことができ、スイッチバック搬送を行う場合には、チューブTに両面印刷(チューブTの一面側と他面側との印刷位置を揃えた印刷)を施すことができる。
【0041】
また、本実施形態のプリンタ1では、搬送ローラ対27、28が、チューブTの搬送方向に対して反転部材21、22の下流側に配置されている。このため、可撓性を有するチューブTを引っ張って搬送することができる。これに対し、搬送ローラ対27、28を反転部材21、22の上流側に配置すると、可撓性を有するチューブTを押し出して搬送することとなるため、チューブTが変形して適正な搬送ないし印刷を阻害する。
【0042】
さらに、本実施形態のプリンタ1では、反転部材21、22が、搬送路P上の回動位置と、チューブTをセットするためのセット位置(図6参照)との間で移動可能に構成されている。このため、オペレータは、反転部材21、22をセット位置に引き出してチューブTの穴21a、22bへの挿入(セット)を容易に行うことができる。
【0043】
また、本実施形態のプリンタ1では、反転部材21、22が、チューブTの搬送方向に対してサーマルヘッド6の上流および下流にそれぞれ設けられている。このため、反転部材21、22によるチューブTの反転精度を向上させることができる。さらに、本実施形態のプリンタ1では、サーマルヘッド6の上流に設けられた反転部材21と、サーマルヘッド6の下流に設けられた反転部材22とを連結するシャフト29を有し、反転部材21、22とは、同期して回動する。このため、反転部材21、22によるチューブTの反転精度を向上させることができるとともに、オペレータがチューブTをセット位置に引き出す場合にも同期して引き出すことができる。
【0044】
さらに、本実施形態のプリンタ1では、反転部材21、22の回転量を検出するセンサ25、26を有している。このため、反転部材21、22によるチューブTの反転精度を向上させることができる。
【0045】
なお、本実施形態では、反転部材21、22を2つ設け、チューブTを支持した状態でチューブTを反転させる例を示したが、本発明はこれに制限されるものではなく、反転部材は3つ以上設けるようにしてもよい。このような態様は、チューブTが柔らかく搬送路P上で弛みが生じるおそれがある場合に有効である。
【0046】
また、本実施形態では、典型的なチューブ状の被印刷媒体を例示し、反転部材21、22を180°回動させる(反転)させる例を示したが、本発明はこれに限ることなく、任意の角度(例えば、90°、120°)で反転部材21、22を回動させるようにしてもよい。このような態様では、断面が多角形状の被印刷媒体への印刷も適正に行うことができる。
【0047】
さらに、本実施形態では、搬送ローラ対27、28の離間/接触に、偏心ギアを含むキア機構で構成したニップ解除機構を例示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、図11に示すように、サーマルヘッド6のプラテンローラ3への退避、進出と連動として搬送ローラ対28の離間/接触動作をカム30で行うようにしてもよい。この実施形態では、カム30の上下に回動支点31a、32aを中心に回動可能な回動部材31、32が配置されている。回動部材31の一側端部は、搬送ローラ対28を構成する一方の搬送ローラが回転可能に支持されており、他側端部がカム31に当接している。また、回動部材32の他側端部がカム30に当接しており、他側端部にサーマルヘッド6がプラテンローラ3に対して進出、退避可能に固定されている。なお、搬送ローラ対27も同様の構成を採ることができる。また、ニップ解除機構は、リニアモータやソレノイド等で別個に動作させるようにしてもよい。
【0048】
また、本実施形態では、説明を簡単にするために、チューブTのねじれを排除する処理について説明を省略したが、長尺状で可撓性が小さいチューブTの場合には、例えば、(1)チューブTを予め反転部材21、22に通しておき、(2)チューブTを印刷位置に搬送し、(3)搬送ローラ対27、28を離間させ、(4)反転部材21、22を反転させてチューブTを裏返し、(5)搬送ローラ対27、28でチューブTをニップし、(6)サーマルヘッド6を進出させてチューブTの裏面に印刷を施し、(7)サーマルヘッド6を退避させ、搬送ローラ対27、28によるニップも解除し、(8)反転部材21、22を反転させてチューブTを表に戻し、(9)チューブTを搬送ローラ対27、28でニップし、(10)チューブTを搬送ローラ対27、28で印刷位置に搬送し、(11)サーマルヘッド6を進出させてチューブTの表面に印刷を施し、(12)サーマルヘッド6を退避させ、搬送ローラ対27、28で搬送し、(13)チューブTを切断して排出する、ようにしてもよい(図12参照)。こうすることで、反転することによるチューブTのねじれが解消された状態でチューブTを切断して排出することができる。一方、チューブTを支持(把持ないしニップ)しても、チューブTの両側を開放端とすることができる構成を採る場合や、チューブTが可撓性に富む場合には、チューブTのねじれがチューブTへの印刷ないし搬送に大きな影響を与えないため、実施形態で例示したように、一面側(表面側)に印刷した後、他面側(裏面側)に印刷するようにしてもよい。
【0049】
また、本実施形態では、サーマルヘッド6に対向配置されたプラテンローラ3を例示したが、本発明はローラないし回転体状のプラテンに限ることなく、例えば、サーマルヘッド6の押圧を受ける受け台状のプラテンや板状のプラテン等を用いるようにしてもよい。そして、本実施形態では、反転部材21、22の穴21a、22aにチューブTを通すことで、チューブTを支持した状態で反転させる例を示したが、チューブTを反転させる際にチューブTが穴21a、22aの中で滑らない程度に支持していればよい。また、別の例として、反転部材が、穴に代えてクリップ状の挟持部材でチューブTを積極的に挟持するようにしてもよい。このような挟持部材は、チューブTを挟持する挟持位置と、チューブTを挟持しない開放位置との間で移動可能に構成されていることが好ましい。このような態様では、チューブTを反転部材21、22の穴21a、22aに通す場合と比べオペレータの操作(チューブのセット)の手間を少なくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上説明した通り、本発明は任意の方向で認識可能な印刷データを被印刷媒体に施すことができる印刷装置を提供するものであるため、印刷装置の製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0051】
1 チューブプリンタ(印刷装置)
3 プラテンローラ(プラテン)
5 ステッピングモータ(回動手段の一部)
6 サーマルヘッド(印刷ヘッド)
21 反転部材(支持手段の一部、第1の支持手段)
22 反転部材(支持手段の一部、第2の支持手段)
25、26 センサ(検出手段の一部)
27、28 搬送ローラ対(搬送手段の一部)
29 シャフト(連結手段)
P 搬送路
T チューブ(被印刷媒体)
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷装置に係り、特に、互いに対向して配置された印刷ヘッドとプラテンとを有する印刷部を備え、可撓性を有する被印刷媒体を印刷ヘッドとプラテンとで圧接することで扁平状に変形させ被印刷媒体に所定のデータを印刷する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、配電盤等に配線される電線を識別するために、マークチューブ等の可撓性を有するチューブ状(円筒状)の印刷媒体(以下、チューブという。)に文字や記号等の所定のデータを印刷し、印刷されたチューブを電線に装着している。また、このようなチューブに印刷を施すための印刷装置は既に知られている。このような印刷装置は、互いに対向して配置されたプラテン(ローラ)とサーマルヘッド等の印刷ヘッドとを備えている。
【0003】
この種の印刷装置では、チューブの表面に印字を行う際に、チューブをプラテンと印刷ヘッドとの間で圧接して、チューブが平面ないし扁平状となるよう押し潰して(変形させて)印刷を行っている。チューブはプラテンとプラテンの下流側に配置された搬送ローラによりニップされながら印刷され、チューブ切断部へと搬送される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−358752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記構成の印刷装置では、被印刷媒体であるチューブに対して押し潰して印刷をするため、被印刷媒体の押し潰された一側面(例えば、180度)にしか印刷することしかできない。このため、実際に電線に装着して使用されるような場合には、被印刷媒体に印刷された刷データが、ある一方向からしか認識できず不便であった。
【0006】
本発明は上記事案に鑑み、任意の方向で認識可能な印刷データを被印刷媒体に施すことができる印刷装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、互いに対向して配置された印刷ヘッドとプラテンとを有する印刷部を備え、可撓性を有する被印刷媒体を前記印刷ヘッドと前記プラテンとで圧接することで扁平状に変形させ前記被印刷媒体に所定のデータを印刷する印刷装置において、前記被印刷媒体が搬送される搬送路と、前記搬送路上に設けられ、前記被印刷媒体を搬送する搬送手段と、前記被印刷媒体を支持する支持手段と、前記被印刷媒体の少なくとも2ヶ所の異なる面に対して印刷可能にするために、前記支持手段を所定角度回動させる回動手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明では、搬送手段により可撓性を有する被印刷媒体が搬送路上を印刷部に搬送され、印刷ヘッドとプラテンとで圧接することで被印刷媒体が扁平状に変形され被印刷媒体に所定のデータが印刷される。これにより、被印刷媒体の扁平状に変形された一側面に印刷が施される。次いで、支持手段によって支持された被印刷媒体を所定角度回動させるため、回動手段により支持手段を回動させる。そして、印刷ヘッドとプラテンとで圧接することで被印刷媒体に所定のデータが印刷される。これにより、被印刷媒体の一面側以外の未印刷部に印刷が施されるので、任意の方向で認識可能な印刷データを被印刷媒体に施すことができる。
【0009】
本発明において、搬送手段は少なくとも一対の搬送ローラで構成され、該搬送ローラは、支持手段が回動中は、離間していることが好ましい。また、搬送手段は、支持手段および回動手段により被印刷媒体が所定角度回動された後、被印刷媒体を、一旦印刷部より上流側に搬送した後、印刷部へスイッチバック搬送するようにしてもよい。搬送手段を、被印刷媒体の搬送方向に対して支持手段の下流側に配置するようにしてもよい。さらに、支持手段は、搬送路上の回動位置と、被印刷媒体をセットするためのセット位置との間で移動可能に構成するようにしてもよい。支持手段は、被印刷媒体の搬送方向に対して印刷ヘッドの上流および下流にそれぞれ設けることが好ましい。このとき、印刷ヘッドの上流に設けられた第1の支持手段と、該印刷ヘッドの下流に設けられた第2の支持手段とを連結する連結手段をさらに有し、第1の支持手段と第2の支持手段とは、同期して回動するようにしてもよい。支持手段は、被印刷媒体を挟持する狭持部材を有し、狭持部材は、該被印刷媒体を狭持する狭持位置と、該被印刷媒体を狭持しない開放位置との間で移動可能に構成してもよい。また、支持手段の回動量を検出する検出手段をさらに備えるようにしてもよい。このような態様についての作用効果については実施形態で詳述する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、支持手段が被印刷媒体を支持した状態で、回動手段が支持手段を所定角度回動させ、印刷ヘッドとプラテンとで圧接することで被印刷媒体の未印刷面側にも印刷が施されるので、任意の方向で認識可能な印刷データを被印刷媒体に施すことができる、という効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明が適用可能な実施形態のチューブプリンタの外観図である。
【図2】実施形態のチューブプリンタの印刷部の拡大斜視図である。
【図3】チューブを搬送中の状態を示す印刷部の拡大正面図である。
【図4】チューブに印刷中の状態を示す印刷部の拡大正面図である。
【図5】チューブが回動中の状態を示す印刷部の拡大正面図である。
【図6】反転部材が印刷位置からセット位置に引き出され、チューブが反転部材にセットされた状態を示す拡大斜視図である。
【図7】チューブが反転部材にセットされた状態を示す拡大断面図である。
【図8】反転部材とその駆動系の反転前の状態を示す拡大斜視図である。
【図9】反転部材とその駆動系の反転後の状態を示す拡大斜視図である。
【図10】実施形態のチューブプリンタの制御部および接続系統を示すブロック図である。
【図11】本発明が適用可能な他の実施形態のチューブプリンタにおけるサーマルヘッドと搬送ローラ対の離接動作を模式的に示す概念図であり、(A)および(C)はサーマルヘッドが退避位置にあり搬送ローラ対が接触位置にある状態、(B)サーマルヘッドが退避位置にあり搬送ローラ対が離間位置にある状態、(D)はサーマルヘッドが進出位置にあり搬送ローラ対が接触位置にある状態を示す。
【図12】本発明が適用可能な他の実施形態のチューブプリンタの印刷から排出までの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明を、可撓性を有するチューブ状の被印刷媒体(以下、単にチューブTという。)に任意の文字等を印刷可能なチューブプリンタに適用した実施の形態について説明する。
【0013】
(構成)
図1に示すように、本実施形態のチューブプリンタ1(以下、単にプリンタ1という。)は、ノートタイプコンピュータと同様に持ち運び可能に構成されており、大別して、キーボードや入力制御部を有する入力部13、LCDや表示制御部を有する表示部14、サーマルヘッド6(印刷ヘッド)とプラテンローラ3とを有する印刷部20、印刷部20の下流側に配置されチューブTを所望の位置で切断するカッタ7、カッタ7の下流側に配置された排出ローラ対12およびこれら各部を制御する制御部15(図10参照)を備えている。印刷部20、カッタ7および排出ローラ対12は、チューブTを搬送するための略直線状の搬送路Pに沿って配設されている。
【0014】
<入力部>
入力部13は、ノートタイプコンピュータとほぼ同様に、ファンクションキー、文字・数字・記号キー、スペースキー、変換キー、十字方向キー、リターンキー等を有しており、オペレータがこれらのキーを操作することで、所望の印刷データを入力することができる。
【0015】
<表示部>
表示部14のLCDは、入力モード等を表示する各種情報表示エリア、入力部13から入力された文字、数字、記号(以下、文字と略称する。)を表示する文字情報表示エリア、文字サイズ等を表示するパラメータ表示エリアの3つの表示エリアに分割されており、各種情報表示エリアおよびパラメータ表示エリアはそれぞれ文字情報表示エリアの上下に配置されている。本例では、LCDは全体で縦64ドット、横160ドットの表示が可能であり、各種情報表示エリアは縦16ドット、横160ドット、文字情報表示エリアは縦32ドット、横160ドット、パラメータ表示エリアは縦16ドット、横160ドットの表示が可能である。
【0016】
<印刷部>
印刷部20は、その中央に、搬送路Pを介して互いに対向するように、サーマルヘッド6とプラテンローラ3とが配設されている。印刷部20において、チューブTは、プラテンローラ3側に押圧されたサーマルヘッド6により、換言すれば、チューブTをサーマルヘッド6とプラテンローラ3とで圧接して押し潰し扁平状に変形させることで、チューブTに入力部13から入力された所望のデータが印刷される。プラテンローラ3とサーマルヘッド6との間にはインクリボンRが介在しており、インクリボンRは、インクリボンカセット8のリボン供給リールから供給され、リボン巻取リールに巻き取られる。サーマルヘッド6は、マトリクス状に配設された多数の発熱素子を選択的に発熱させることでインクリボンRの色素をチューブTに熱転写することで印刷を施す。
【0017】
図2に示すように、プラテンローラ3の上流側および下流側には、それぞれ一対の搬送ローラで構成されチューブTを搬送するための搬送ローラ対27、28が配設されている。搬送ローラ対27、28は搬送路P上に配設されている(図1も参照)。また、搬送ローラ対27の上流側、並びに、プラテンローラ3の下流側かつ搬送ローラ対28の上流側には、チューブTの長手方向の(中空の)軸を中心にチューブTを所定角度(180°)回動(反転)させるための反転部材21、22がそれぞれ配設されている。
【0018】
反転部材21、22の中心部には、チューブTの径より小さい矩形状の穴21a、22aが形成されている。反転部材21、22は、穴21a、22aが搬送路P上に位置するように配設されている。このため、穴21a、22aにチューブTを通すことでチューブTの支持(把持ないし挟持)が可能である。
【0019】
反転部材21、22は全体としてギア形状を呈しており、反転部材21、22のギアはそれぞれギア23、24に噛合している。ギア23とギア24とはシャフト29で固定されている。このため、ギア23、23の回転(回動)は同期して行われる(図3も参照)。ギア23は複数のギアおよびクラッチを介してステッピングモータ5のモータ軸に連結されており、反転部材21、22はステッピングモータ5の回転駆動力により180°回動可能に構成されている(図8、図9も参照)。なお、上述した搬送ローラ対27、28の回転駆動力もステッピングモータ5から図示を省略した複数のギアを介して伝達される。また、反転部材21、22は、それぞれ、それらのギアより大径で円板状のフラグ21b、22bを有しており、このフラグ21b、22bを跨ぐように配設された透過一体型センサ25、26によりホームポジションの検出が可能である。
【0020】
図2に示すように、サーマルヘッド6は、ギアが固着された板状のレバー部材17に固定されている。レバー部材17の一側端部はバネで付勢されており、他側端部は回動可能に軸支されている。サーマルヘッド6のプラテンローラ3に対する進出、退避は、ステッピングモータ11の回転駆動力によって行われる。すなわち、ステッピングモータ11のモータ軸とレバー部材17のギアとの間には偏心ギアを含む複数のギアが設けられており、偏心ギアの作用によって、サーマルヘッド6はプラテンローラ3に対して進出、退避が行われる。なお、ステッピングモータ11は、図示しないギアを介してインクリボンカセット8のリボン巻取リールのスプールも回転駆動させる。
【0021】
搬送ローラ対27、28は、チューブTに対するニップ(挟持)を解除するニップ解除機構を有している。換言すれば、搬送ローラ対27、28は、それぞれを構成する2つの搬送ローラが、離間/接触(圧接)可能に構成されている。本例では、2つの搬送ローラの離間/接触を、偏心ギアを含む図示を省略したギア機構で構成しており、このギア機構への回転駆動力はステッピングモータ11から供給される。
【0022】
<カッタ、排出部>
図1に示すように、印刷部20の下流側には、チューブTを切断するためのカッタ7が配置されている。カッタ7は、カッタ刃7aとカッタ刃受け台7bとを有している。カッタ刃受け台7bを、カッタ刃7aに対して略垂直に押圧することにより、チューブTの切断が可能である。カッタ刃受け台7bのカッタ刃7aの進出、退避の駆動力は、図示しないギア機構を介してステッピングモータ9から供給される。なお、カッタ7の下流側には、上述した排出ローラ対12が配置されており、排出ローラ対12の回転駆動力もステッピングモータ9から供給される。カッタ刃受け台7bのカッタ刃7aの進出はステッピングモータ9の正転で行われ、カッタ刃受け台7bのカッタ刃7aの退避および排出ローラ対12の回転駆動はステッピングモータ9の逆転で行われる。
【0023】
なお、プリンタ1は、アタッチメント部10に装着するアタッチメントを変更することにより、本例に示すチューブT以外の各種長尺媒体に対しても印刷および切断処理が可能に構成されている。従って、図1に示すチューブ用アタッチメントをアタッチメント部10に装着することに代えて、例えば、ラベル用アタッチメントを装着することで、長尺状のラベルに対しても印刷および切断処理を行うことができる。
【0024】
<制御部>
図10に示すように、制御部15は、中央処理装置として高速で機能するCPU、プリンタ1の基本制御プログラムおよびプログラムデータを格納したROM、CPUのワークエリアとして機能するRAM等を有しており、これらCPU、ROM、RAMは内部バスで接続されている。
【0025】
制御部15には外部バスが接続されている。外部バスには、入力部13の入力制御部、表示部14の表示制御部、印刷部20のサーマルヘッド6、ステッピングモータ5、9、11の動作を制御するドライバ18、センサ25、26を含む各種センサからの情報を制御するセンサ制御部19が接続されている。ドライバ18には上述したステッピングモータ5、9、11が接続されており、センサ制御部19には各種センサが接続されている。また、制御部15は図示しないバッファやインターフェースを有しており、外部バスを介して、例えば、パーソナルコンピュータ等の上位機器に接続可能である。このため、オペレータは入力部13からの入力に代えて、パーソナルコンピュータからの入力も可能であり、さらに、RAMカード等の外部記憶装置を装着することで外部記憶装置に格納されたデータの利用も可能である。
【0026】
(動作)
次に、本実施形態のプリンタ1の動作について、CPUを主体として、印刷部20の動作を中心に説明する。なお、プリンタ1に電源が投入されると、ROMに格納されたプログラムおよびプログラムデータをRAMに展開するとともに、各種センサを介して上述した各部が所定のホームポジションにあるかを確認し、ホームポジションにない場合にはホームポジションに復帰させる復帰処理を含む初期設定処理を行った後、表示部14にプリンタ1の状態を表示し、以下のルーチンを実行する。
【0027】
一方、オペレータは、予め、チューブ用アタッチメントをアタッチメント部10に装着し(図1に示す状態)、チューブTを反転部材21、22の穴21a、22aに通しておく。図6は、チューブTを反転部材21、22にセットするために、反転部材21、22が搬送路P上の印刷位置から引き出された状態(セット位置)を示したものである。チューブTを反転部材21、22にセットする際は、オペレータがチューブTの先端を押し潰して、反転部材21の穴21aに押し込み、穴21aの反対側に出てきたチューブTを引っ張り、同様に反転部材22の穴22aにチューブTを通す。図7はチューブTを反転部材21、22に通した状態の断面図である。図7に示すように、反転部材21、22に通されたチューブTは穴21aと22aの形状によって変形されており、反転部材21、22により離間した2箇所で支持されている。オペレータは、図6および図7に示すようにチューブTを反転部材21、22にセットした後、図8に示すように、反転部材21、22を搬送路P外のセット位置から搬送路P上の印刷位置に戻す。
【0028】
<一面側への印刷>
CPUは、センサ25、26を監視することで、反転部材21、22にチューブTが装着されたことを把握することができる。この後、位置精度を高めるために、反転部材21、22がホームポジションにあるかを判断し、ホームポジションにない場合には、ホームポジションに戻すようにしてもよい。次に、CPUは、入力部13の所定キー(スタートキー)が押下されるまで待機し、押下されると、チューブTを印刷位置に搬送するために、ステッピングモータ5を駆動する。これにより、チューブTは搬送路P上を搬送ローラ対27、28によって搬送される。図3は、この搬送状態を示している。この状態では、搬送ローラ対27、28がチューブTをニップしている。
【0029】
CPUは、ドライバからステッピングモータ5に出力したパルス数をカウントしており、チューブT(の印刷対象部分)がサーマルヘッド6とプラテンローラ3が対向配置された印刷位置に至ると(予め設定された所定のパルス数となると)、チューブTに対して印刷を施す。図4は、チューブTに対して印刷を施している状態を示したものである。この状態では、搬送ローラ対27、28がチューブTをニップして搬送しながら、上述したステッピングモータ11を駆動させることで、サーマルヘッド6がインクリボンR(図4では不図示、図1参照)とチューブTとをプラテンローラ3に圧接することでチューブTを扁平状に変形させ(押し潰し)その一面側に印刷を行う。なお、CPUは、予め入力部13から入力された印刷データを熱エネルギデータに変換してサーマルヘッド6に送出し、上述したように、サーマルヘッド6が、熱エネルギデータに従い、発熱素子を選択的に発熱させることでインクリボンRの色素をチューブTに転写し、チューブTへの印刷が行われる。
【0030】
<他面側への印刷>
CPUは、サーマルヘッド6とプラテンローラ3の圧接によりチューブTが押し潰されることで形成された一面側への印刷が終了すると、未印刷状態の他面側への印刷を実行する。
【0031】
すなわち、CPUは、まず、上述したニップ解除機構を介して、搬送ローラ対27、28によるチューブTのニップを解除するようにステッピングモータ11を駆動させる。同期して、サーマルヘッド6はプラテンローラ3に対して退避した退避位置に位置付けられる。図5はこの状態を示したものである。図5に示すように、サーマルヘッド6と搬送ローラ対27、28を構成する各搬送ローラは互いにチューブTから離間している。この状態では、チューブTは、反転部材21、22にのみ支持されている。
【0032】
次いで、CPUは、ステッピングモータ5を駆動し、反転部材21、22を180°回動させて、すなわち、反転させてチューブTを裏返す。このとき、CPUは、センサ25、26の出力を監視することで、フラグ21b、22bの回転量を検出している。図8および図9は、反転部材21、22とその駆動系のみを抜き出したものであり、図8は回動前の状態を示し、図9は回動後の状態を示している(フラグ21b、22bの位置参照)。次に、CPUは、搬送ローラ対27、28を構成する各搬送ローラを当接させるように(チューブTを挟持するように)ステッピングモータ11を駆動し(図3参照)、さらに必要に応じて、ステッピングモータ5を逆転させることで、チューブTの一面側への印刷の際に搬送した方向とは逆方向(図1に示すアタッチメント部10の方向)に所定パルス数搬送して、ステッピングモータ5の駆動を停止させる。このような逆方向への搬送は、上述したチューブTの一面側と他面側との印刷位置を揃えるために行われるものであるが、印刷位置を揃える必要がない場合(オペレータが入力部13を介してその命令を出さない場合)には、逆方向へのチューブTの搬送は行われない。
【0033】
チューブTを逆方向に搬送した場合には、CPUは、上述した一面側への印刷の際と同様に、チューブTを印刷位置に搬送するために、ステッピングモータ5を駆動する(図3参照)。従って、チューブTは搬送ローラ対27、28によってスイッチバック搬送される。CPUは、ドライバからステッピングモータ5に出力したパルス数をカウントし、チューブTが印刷位置に至ると、チューブTに対して印刷を施す(図4参照)。この状態では、搬送ローラ対27、28がチューブTをニップして搬送しながら、上述したステッピングモータ11を駆動させることで、サーマルヘッド6がインクリボンRとチューブTとをプラテンローラ3に圧接することでチューブTを扁平状に変形させ他面側に印刷が施される。これにより、印刷部20によるチューブTへの印刷が終了する。一方、印刷位置を揃える必要がない場合には、反転部材21、22でチューブTを反転させた後、ステッピングモータ11を駆動させることで、サーマルヘッド6がインクリボンRとチューブTとをプラテンローラ3に圧接することでチューブTを扁平状に変形させ他面側に印刷が施される。なお、他面側への印刷では一面側への印刷と同じ印刷データを印刷しても、一面側とは異なる印刷データを印刷してもよい。
【0034】
<切断、排出>
CPUは、上述したチューブTの一面側および他面側へ印刷データの印刷が終了すると、チューブTを下流側(カッタ刃7側)に所定パルス数、搬送する。このようなチューブTの搬送も、図3に示したように、搬送ローラ対27、28によるチューブTのニップ搬送により行われる。CPUは、所定パルス数、チューブTを下流側に搬送すると、オペレータによる入力部13からの命令を待つ。オペレータは、入力部13の所定キーを押下することで、さらにチューブTを下流側に搬送するか、切断位置が行き過ぎたために、逆方向へ戻すかの命令をCPUに与える。しかしながら、オペレータは、カッタ刃7の切断位置に位置するように、入力部13から所定距離搬送するように命令するようにしてもよい。オペレータの命令に従い、CPUは、ステッピングモータ5を回転ないし逆転させ、チューブTをカッタ刃7の切断位置に位置付け、ステッピングモータ5の駆動を停止させる。
【0035】
次いで、ステッピングモータ9を駆動することで、カッタ刃受け台7bをカッタ刃7aに向けて進出させる。これにより、チューブTはオペレータの所望の位置で切断される。次に、CPUは、ステッピングモータ9を逆転させることで、カッタ刃受け台7bをカッタ刃7aから退避させ、排出ローラ12を回転させる。これにより、チューブTは搬送路P上を排出位置まで搬送される。ステッピングモータ9は、所定パルス数逆転した後で停止する。
【0036】
以上の動作により、CPUのルーチンは終了する。続いて、次のルーチンを実行する場合には、既にチューブTは反転部材21、22の穴21a、22aに通されているので、CPUは、上述した<一面側への印刷>からルーチンを実行する。
【0037】
(効果等)
次に、本実施形態のプリンタ1の作用、効果等について説明する。
【0038】
本実施形態のプリンタ1では、搬送ローラ対27、28によりチューブTが搬送路P上を印刷部20に搬送され、サーマルヘッド6とプラテンローラ3とで圧接することでチューブTが扁平状に変形されてチューブTの一面側に所定のデータが印刷され、次いで、反転部材21、22がチューブTを支持した状態で、反転部材21、22を反転させ、サーマルヘッド6とプラテンローラ3とで圧接することで、チューブTの一面側以外の未印刷部に所定のデータが印刷されるので、任意の方向で認識可能な印刷データをチューブTに施すことができる。
【0039】
また、本実施形態のプリンタ1では、チューブTを反転している間、搬送ローラ対27、28を構成する搬送ローラは互いに離間しており、チューブTのニップを解除している(図5参照)。従って、プリンタ1によれば、チューブTの未印刷部に適正に印刷することができるとともに、反転に伴い一面側に既に施した印刷の品質低下を防止することができる。
【0040】
さらに、本実施形態のプリンタ1では、反転部材21、22によりチューブTが反転された後、必要に応じて(オペレータの命令に従い)、搬送ローラ対27、28がチューブTを一旦印刷部20より上流側に搬送した後、印刷部20へスイッチバック搬送している。従って、プリンタ1によれば、スイッチバック搬送を行わない場合には、チューブTにチドリ状に印刷を施すことができ、スイッチバック搬送を行う場合には、チューブTに両面印刷(チューブTの一面側と他面側との印刷位置を揃えた印刷)を施すことができる。
【0041】
また、本実施形態のプリンタ1では、搬送ローラ対27、28が、チューブTの搬送方向に対して反転部材21、22の下流側に配置されている。このため、可撓性を有するチューブTを引っ張って搬送することができる。これに対し、搬送ローラ対27、28を反転部材21、22の上流側に配置すると、可撓性を有するチューブTを押し出して搬送することとなるため、チューブTが変形して適正な搬送ないし印刷を阻害する。
【0042】
さらに、本実施形態のプリンタ1では、反転部材21、22が、搬送路P上の回動位置と、チューブTをセットするためのセット位置(図6参照)との間で移動可能に構成されている。このため、オペレータは、反転部材21、22をセット位置に引き出してチューブTの穴21a、22bへの挿入(セット)を容易に行うことができる。
【0043】
また、本実施形態のプリンタ1では、反転部材21、22が、チューブTの搬送方向に対してサーマルヘッド6の上流および下流にそれぞれ設けられている。このため、反転部材21、22によるチューブTの反転精度を向上させることができる。さらに、本実施形態のプリンタ1では、サーマルヘッド6の上流に設けられた反転部材21と、サーマルヘッド6の下流に設けられた反転部材22とを連結するシャフト29を有し、反転部材21、22とは、同期して回動する。このため、反転部材21、22によるチューブTの反転精度を向上させることができるとともに、オペレータがチューブTをセット位置に引き出す場合にも同期して引き出すことができる。
【0044】
さらに、本実施形態のプリンタ1では、反転部材21、22の回転量を検出するセンサ25、26を有している。このため、反転部材21、22によるチューブTの反転精度を向上させることができる。
【0045】
なお、本実施形態では、反転部材21、22を2つ設け、チューブTを支持した状態でチューブTを反転させる例を示したが、本発明はこれに制限されるものではなく、反転部材は3つ以上設けるようにしてもよい。このような態様は、チューブTが柔らかく搬送路P上で弛みが生じるおそれがある場合に有効である。
【0046】
また、本実施形態では、典型的なチューブ状の被印刷媒体を例示し、反転部材21、22を180°回動させる(反転)させる例を示したが、本発明はこれに限ることなく、任意の角度(例えば、90°、120°)で反転部材21、22を回動させるようにしてもよい。このような態様では、断面が多角形状の被印刷媒体への印刷も適正に行うことができる。
【0047】
さらに、本実施形態では、搬送ローラ対27、28の離間/接触に、偏心ギアを含むキア機構で構成したニップ解除機構を例示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、図11に示すように、サーマルヘッド6のプラテンローラ3への退避、進出と連動として搬送ローラ対28の離間/接触動作をカム30で行うようにしてもよい。この実施形態では、カム30の上下に回動支点31a、32aを中心に回動可能な回動部材31、32が配置されている。回動部材31の一側端部は、搬送ローラ対28を構成する一方の搬送ローラが回転可能に支持されており、他側端部がカム31に当接している。また、回動部材32の他側端部がカム30に当接しており、他側端部にサーマルヘッド6がプラテンローラ3に対して進出、退避可能に固定されている。なお、搬送ローラ対27も同様の構成を採ることができる。また、ニップ解除機構は、リニアモータやソレノイド等で別個に動作させるようにしてもよい。
【0048】
また、本実施形態では、説明を簡単にするために、チューブTのねじれを排除する処理について説明を省略したが、長尺状で可撓性が小さいチューブTの場合には、例えば、(1)チューブTを予め反転部材21、22に通しておき、(2)チューブTを印刷位置に搬送し、(3)搬送ローラ対27、28を離間させ、(4)反転部材21、22を反転させてチューブTを裏返し、(5)搬送ローラ対27、28でチューブTをニップし、(6)サーマルヘッド6を進出させてチューブTの裏面に印刷を施し、(7)サーマルヘッド6を退避させ、搬送ローラ対27、28によるニップも解除し、(8)反転部材21、22を反転させてチューブTを表に戻し、(9)チューブTを搬送ローラ対27、28でニップし、(10)チューブTを搬送ローラ対27、28で印刷位置に搬送し、(11)サーマルヘッド6を進出させてチューブTの表面に印刷を施し、(12)サーマルヘッド6を退避させ、搬送ローラ対27、28で搬送し、(13)チューブTを切断して排出する、ようにしてもよい(図12参照)。こうすることで、反転することによるチューブTのねじれが解消された状態でチューブTを切断して排出することができる。一方、チューブTを支持(把持ないしニップ)しても、チューブTの両側を開放端とすることができる構成を採る場合や、チューブTが可撓性に富む場合には、チューブTのねじれがチューブTへの印刷ないし搬送に大きな影響を与えないため、実施形態で例示したように、一面側(表面側)に印刷した後、他面側(裏面側)に印刷するようにしてもよい。
【0049】
また、本実施形態では、サーマルヘッド6に対向配置されたプラテンローラ3を例示したが、本発明はローラないし回転体状のプラテンに限ることなく、例えば、サーマルヘッド6の押圧を受ける受け台状のプラテンや板状のプラテン等を用いるようにしてもよい。そして、本実施形態では、反転部材21、22の穴21a、22aにチューブTを通すことで、チューブTを支持した状態で反転させる例を示したが、チューブTを反転させる際にチューブTが穴21a、22aの中で滑らない程度に支持していればよい。また、別の例として、反転部材が、穴に代えてクリップ状の挟持部材でチューブTを積極的に挟持するようにしてもよい。このような挟持部材は、チューブTを挟持する挟持位置と、チューブTを挟持しない開放位置との間で移動可能に構成されていることが好ましい。このような態様では、チューブTを反転部材21、22の穴21a、22aに通す場合と比べオペレータの操作(チューブのセット)の手間を少なくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上説明した通り、本発明は任意の方向で認識可能な印刷データを被印刷媒体に施すことができる印刷装置を提供するものであるため、印刷装置の製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0051】
1 チューブプリンタ(印刷装置)
3 プラテンローラ(プラテン)
5 ステッピングモータ(回動手段の一部)
6 サーマルヘッド(印刷ヘッド)
21 反転部材(支持手段の一部、第1の支持手段)
22 反転部材(支持手段の一部、第2の支持手段)
25、26 センサ(検出手段の一部)
27、28 搬送ローラ対(搬送手段の一部)
29 シャフト(連結手段)
P 搬送路
T チューブ(被印刷媒体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して配置された印刷ヘッドとプラテンとを有する印刷部を備え、可撓性を有する被印刷媒体を前記印刷ヘッドと前記プラテンとで圧接することで扁平状に変形させ前記被印刷媒体に所定のデータを印刷する印刷装置において、
前記被印刷媒体が搬送される搬送路と、
前記搬送路上に設けられ、前記被印刷媒体を搬送する搬送手段と、
前記被印刷媒体を支持する支持手段と、
前記被印刷媒体の少なくとも2ヶ所の異なる面に対して印刷可能にするために、前記支持手段を所定角度回動させる回動手段と、
を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記搬送手段は少なくとも一対の搬送ローラで構成され、前記支持手段が回動中は、該搬送ローラが離間していることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記搬送手段は、前記印刷部が前記被印刷媒体に一旦印刷を施した後、前記被印刷媒体を、前記印刷部より上流側に搬送し前記印刷部へスイッチバック搬送することを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記搬送手段が、前記被印刷媒体の搬送方向に対して前記支持手段の下流側に配置されたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記支持手段が、前記搬送路上の回動位置と、前記被印刷媒体をセットするためのセット位置との間で移動可能に構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記支持手段が、前記被印刷媒体の搬送方向に対して前記印刷ヘッドの上流および下流にそれぞれ設けられたことを特徴とする請求項1、2、4および5のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記印刷ヘッドの上流に設けられた第1の支持手段と、該印刷ヘッドの下流に設けられた第2の支持手段とを連結する連結手段をさらに有し、前記第1の支持手段と前記第2の支持手段とは、同期して回動することを特徴とする請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記支持手段は、前記被印刷媒体を挟持する狭持部材を有し、前記狭持部材は、該被印刷媒体を狭持する狭持位置と、該被印刷媒体を狭持しない開放位置との間で移動可能に構成されたことを特徴とする請求項1、2および4ないし7のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記支持手段の回動量を検出する検出手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項1】
互いに対向して配置された印刷ヘッドとプラテンとを有する印刷部を備え、可撓性を有する被印刷媒体を前記印刷ヘッドと前記プラテンとで圧接することで扁平状に変形させ前記被印刷媒体に所定のデータを印刷する印刷装置において、
前記被印刷媒体が搬送される搬送路と、
前記搬送路上に設けられ、前記被印刷媒体を搬送する搬送手段と、
前記被印刷媒体を支持する支持手段と、
前記被印刷媒体の少なくとも2ヶ所の異なる面に対して印刷可能にするために、前記支持手段を所定角度回動させる回動手段と、
を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記搬送手段は少なくとも一対の搬送ローラで構成され、前記支持手段が回動中は、該搬送ローラが離間していることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記搬送手段は、前記印刷部が前記被印刷媒体に一旦印刷を施した後、前記被印刷媒体を、前記印刷部より上流側に搬送し前記印刷部へスイッチバック搬送することを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記搬送手段が、前記被印刷媒体の搬送方向に対して前記支持手段の下流側に配置されたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記支持手段が、前記搬送路上の回動位置と、前記被印刷媒体をセットするためのセット位置との間で移動可能に構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記支持手段が、前記被印刷媒体の搬送方向に対して前記印刷ヘッドの上流および下流にそれぞれ設けられたことを特徴とする請求項1、2、4および5のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記印刷ヘッドの上流に設けられた第1の支持手段と、該印刷ヘッドの下流に設けられた第2の支持手段とを連結する連結手段をさらに有し、前記第1の支持手段と前記第2の支持手段とは、同期して回動することを特徴とする請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記支持手段は、前記被印刷媒体を挟持する狭持部材を有し、前記狭持部材は、該被印刷媒体を狭持する狭持位置と、該被印刷媒体を狭持しない開放位置との間で移動可能に構成されたことを特徴とする請求項1、2および4ないし7のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記支持手段の回動量を検出する検出手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の印刷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−280154(P2010−280154A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136032(P2009−136032)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】
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