説明

印刷/打刻複合装置の印刷処理方法、印刷/打刻複合装置、及びプログラム

【課題】 処理対象物に対し、墨字印刷と点字打刻とを重ねて行う場合、読みにくい墨字を印刷することを防止する印刷/打刻複合装置の印刷処理方法、印刷/打刻複合装置、及びプログラムを提供することをその課題とする。
【解決手段】 処理対象物に対し、墨字印刷と点字打刻とを重ねて行う重複処理可能な印刷/打刻重複処理手段と、入力した墨字印刷の文字サイズを設定するサイズ設定手段と、サイズ設定手段において設定された文字サイズが所定のサイズ以下に設定されているか否かを判別する判別手段と、判別手段により、設定された文字サイズが所定のサイズ以下に設定されていると判別された場合、墨字印刷を禁止する墨字印刷禁止手段と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一印刷面に墨字と点字とを重ねて印刷/打刻可能な印刷/打刻複合装置の印刷処理方法、印刷/打刻複合装置、及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の印刷/打刻複合装置として、点字ラベルの表面に、視覚障害を有しない晴眼者が視認可能な墨字(点字に対し、通常の印字文字を指す)を印刷する領域である墨字印刷領域と、点字を打刻する領域である点字打刻領域とを重複させ、墨字と点字とを重ねて印刷/打刻するものが知られている。この場合、晴眼者および視覚障害者の双方に対して印刷内容を案内することができると共に、点字ラベルの印刷領域を節約することができるようになっている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−275206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特に幅狭な印刷媒体に墨字を複数行に亘って入力したり、故意に文字サイズを小さく設定すると、印刷される墨字の文字サイズが点字打刻における打刻凸部と略同じ大きさになることがあり、上記の印刷/打刻装置のように墨字と点字とを重ねて印刷/打刻すると、墨字と打刻凸部とが重なり、印刷された墨字は打刻凸部により盛り上がって変形し、非常に読みづらくなってしまう。
【0004】
そこで、本発明は、墨字と点字とを重ねて印刷/打刻する場合に、印刷された墨字が読みづらくなることを防止することができる印刷/打刻複合装置の印刷処理方法、印刷/打刻複合装置、及びプログラムを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の印刷/打刻複合装置の印刷処理方法は、入力した文字情報に基づいて、同一の処理対象物に墨字印刷と点字打刻とを行う印刷/打刻複合装置の印刷処理方法であって、記処理対象物に対し、前記墨字印刷と前記点字打刻とを重ねて行う場合であって、墨字印刷の文字サイズが所定のサイズ以下に設定されている場合に、墨字印刷を禁止することを特徴とする。
【0006】
また、この場合、所定の文字サイズが、点字打刻における打刻凸部の平面サイズと略同一のサイズであることが望ましい。
【0007】
また、本発明の印刷/打刻複合装置は、入力した文字情報に基づいて、同一の処理対象物に対し、墨字印刷および点字打刻を重ねて行う重複処理可能な印刷/打刻処理手段と、入力した墨字印刷の文字サイズを設定するサイズ設定手段と、サイズ設定手段において設定された文字サイズが所定のサイズ以下に設定されているか否かを判別する判別手段と、重複処理を行う場合であって、判別手段により、設定された文字サイズが所定のサイズ以下に設定されていると判別された場合、印刷/打刻処理手段による墨字印刷を禁止する墨字印刷禁止手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、この場合、所定のサイズが、点字打刻における打刻凸部の平面サイズと略同一のサイズであることが望ましい。
【0009】
これらの構成によれば、墨字印刷と点字打刻とを重ねて行う場合、点字打刻における打刻凸部の平面サイズと略同一のサイズとなるサイズに設定された文字の墨字印刷を禁止するので、印刷された墨字が点字凸部によって盛り上がって変形する虞を減少させることが可能となり、印刷された墨字が読みづらくなることを防止することができる。なお、ここで「略同一」とは、墨字の太さにもよるが墨字と点字凸部が重なった場合に、墨字が認識不能あるいは誤認する程度の虞がある程度の同一性をいう。
【0010】
また、この場合、墨字印刷禁止手段により墨字印刷が禁止された場合、設定された文字サイズを所定サイズを超えるサイズに変更するサイズ変更手段を、さらに備えたことが好ましい。
【0011】
この構成によれば、入力した文字情報に、点字打刻における打刻凸部の平面サイズと略同一のサイズである、所定サイズ以下に設定された文字が含まれ墨字印刷が禁止された場合、所定サイズ以下に設定された文字サイズを所定サイズを超えるサイズに変更するので、入力した文字情報の再編集を行い、文字サイズを再設定する等の手間を省くことができる。すなわち、ユーザの操作効率を向上させることができる。
【0012】
また、この場合、処理対象物の特定の領域幅内に納まるように、文字情報が複数行に亘って入力され且つ行単位で文字サイズが設定されており、文字サイズの変更に伴って、文字情報が領域幅内に納まらなくなる場合、所定サイズ以下に設定された行を除く他行の文字サイズを当該文字サイズ以下の文字サイズに変更することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、文字情報が複数行に亘り入力された時に、文字サイズの変更に伴って、文字情報が領域幅内に納まらなくなる場合、当該複数行のうち、所定サイズ以下に設定された行を除く他行の文字サイズを縮小するので、サイズ変更処理によって、印刷された墨字の一部分が処理対象物の幅からはみ出し、欠如する虞がなくなる。
【0014】
また、この場合、処理対象物の特定の領域幅内に納まるように、文字情報が複数行に渡って入力され且つ行単位で文字サイズが設定されており、文字サイズの変更に伴って、文字情報が領域幅内に納まらなくなる場合、サイズ変更手段は、指定した特定行の文字列を削除することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、文字情報が所定以下のサイズで複数行に亘って入力した場合、所定以下のサイズで設定された文字サイズの変更に伴って、当該複数行において指定した特定行の文字列を削除するので、サイズ変更処理により、印刷された墨字の一部分が処理対象物の幅からはみ出し、欠如する虞がなくなる。
【0016】
また、これらの場合、入力した文字情報の全部または一部を、点字打刻対象として指定する打刻文字指定手段をさらに備えたことが好ましい。
【0017】
これらの構成によれば、入力した文字情報において、点字打刻対象となる文字情報を指定できるので、墨字印刷および点字打刻のための文字情報入力作業を一連の操作で行うことができると共に、文字情報の一部を指定することにより、点字打刻対象となる文字情報を、簡単且つ任意に指定することができる。特に点字はキーワードで構成されることが通常であり、点字打刻対象を効率よく指定することが可能となる。
【0018】
また、この場合、打刻文字指定手段は、点字打刻対象を行単位で指定可能に構成されていることが好ましい。
【0019】
これらの構成によれば、点字打刻対象となる文字情報を行単位で指定できるので、より簡易な操作で点字打刻対象の指定を行うことができる。
【0020】
本発明の印刷/打刻複合装置は、入力した文字情報に基づいて、同一の処理対象物に墨字印刷および点字打刻を重ねて行う重複処理可能な印刷/打刻処理手段と、入力した墨字印刷の文字サイズを設定するサイズ設定手段と、重複処理を行う場合であって、サイズ設定手段による所定サイズのサイズ設定を禁止する所定サイズ設定禁止手段と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
また、この場合、所定のサイズが、点字打刻における打刻凸部の平面サイズと略同一のサイズであることが好ましい。
【0022】
これらの構成によれば、墨字印刷と点字打刻とを重ねて行うことが選択された場合、予め点字打刻における打刻凸部の平面サイズと略同一なサイズとなる所定サイズでのサイズ設定を禁止するので、入力した文字情報が所定サイズ以下で設定される虞が無い。すなわち、墨字印刷と点字打刻とが重なって処理されても、印刷された墨字全体が点字凸部によって盛り上がって変形する虞を減少させることができるので、印刷された墨字が読みづらくなることを防止することができる。さらに、印刷/打刻複合装置による文字サイズ変更や入力文字情報の削除といった手間を省くことができ、編集のための処理時間を短縮させることが可能となる。
【0023】
本発明のプログラムは、上記のいずれかに記載の印刷/打刻複合装置における各手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、印刷された墨字が読みづらくなることを防止するためのプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、添付の図面を参照して、本発明の印刷/打刻複合装置の印刷方法、印刷/打刻複合装置、及びプログラムの実施形態について説明する。
【0026】
まず、本発明の印刷/打刻複合装置1について図1〜図6を参照して説明する。この印刷/打刻複合装置1は、墨字印刷を行う前部の墨字印刷部10と、点字打刻を行う後部の点字打刻部30とから構成され、墨字印刷部10において墨字印刷を行った後テープTを排出し、排出されたそのテープTを、ユーザにより点字打刻部30の打刻テープ挿入部33に挿入することで、点字打刻を行うものである。
【0027】
図1は、印刷/打刻複合装置1の閉蓋状態の外観斜視図であり、図2は、印刷/打刻複合装置1の開蓋状態の外観斜視図である。両図に示すように印刷/打刻複合装置1は、前端部にキャリアハンドル4を有する装置ケース2により外郭が形成され、当該装置ケース2は、前部ケース2aと後部ケース2bとで一体形成されている。前部ケース2aには、墨字印刷部10主装置が内蔵され、これに装着したテープカートリッジCから繰り出されるテープTに対して墨字印刷を行う。また、後部ケース2bには、点字打刻部30の主装置が内蔵され、墨字印刷部10から排出されたテープTを手差し挿入する(ユーザがテープTを指先で把持し、これを点字打刻部30に案内挿入する)ことにより点字打刻を行う。
【0028】
前部ケース2aの前部上面には各種入力キーを備えたキーボード3が配置されると共に、後部上面には、開閉蓋20が取り付けられている。また、開閉蓋20には、中央部にディスプレイ13が配設されている。開閉蓋20の内部には、その左部に位置してテープTおよびインクリボンRを収容したテープカートリッジCを装着するためのカートリッジ装着部14(墨字印刷部10)が窪入形成されており、テープカートリッジCは、蓋体開放ボタン5の押下により開閉蓋20が開放された状態でカートリッジ装着部14に着脱可能に装着される。また、開閉蓋20の左部にはこれを閉止した状態でテープカートリッジCの装着/非装着を視認するための覗き窓20aが形成されている。
【0029】
前部ケース2a右側部には、電源供給のための電源供給口11と、パーソナルコンピュータ等の外部装置(図示省略)と接続するための接続口12(インタフェース)が設けられており、当該接続口12に外部装置を接続することで、外部装置によって生成された文字情報に基づいて墨字印刷や点字打刻を行い得るようになっている。
【0030】
また、前部ケース2aの左側部には、カートリッジ装着部14と装置外部とを連通する印刷テープ排出口21が形成され、この印刷テープ排出口21には、モータ駆動(カッタモータ131、図6参照)でハサミ形式のテープカッタ22が臨んでいる。そして、印刷テープ排出口21から、墨字印刷が行われたテープTが送り出される際に、テープTがテープカッタ22により切断され排出される。
【0031】
キーボード3は、種々の指定およびデータを後述する制御部200に入力するものであって、入力キーには、アルファベットキー群、記号キー群、数字キー群、仮名キー群を含む文字キー群3aの他、各種の動作を指定するための機能キー群3b等が配列されている。機能キー群3bには、テキスト入力時のデータ確定や改行、選択画面における各種モードの選択指示のための選択キー、各種入力を取りけるための取り消しキー、各キーの役割変更などに用いられるシフトキー、カーソル移動やディスプレイ13の表示範囲を移動させるための4個のカーソルキー、印刷/打刻動作を開始するための印刷/打刻キー、ファイル操作や印刷フォーム選択のためのファイルフォームキー、後述する印刷モードを設定するモード選択キー等が設けられている。
【0032】
ディスプレイ13は、横方向(X方向)約12cm×縦方向(Y方向)5cmの長方形の形状の内側に、192ドット×80ドットの表示画像データを表示可能であり、ユーザがキーボード3から文字情報を入力して、墨字印刷を行うための墨字データや、点字打刻を行うための点字データを作成・編集する際に用いられる。また、各種エラーやメッセージ(指示内容)を表示し、ユーザに報知する。
【0033】
カートリッジ装着部14には、ヘッドカバー17内にサーマルヘッドから成る印刷ヘッド15が内蔵されたヘッドユニット16と、印刷ヘッド15に対峙するプラテン駆動軸18と、後述のインクリボンRを巻き取る巻き取り駆動軸19と、後述のテープリール29の位置決め突起23と、を備えている。また、カートリッジ装着部14の下側には、プラテン駆動軸18および巻き取り駆動軸19を回転させる印刷送りモータ121(図6参照)および動力伝達機構(図示省略)が内蔵されている。
【0034】
テープカートリッジCは、カートリッジケース24内部の上部中央部に、一定の幅のテープTを巻回したテープリール29と、右下部にインクリボンRを巻回したリボンリール27とを収容して構成されており、テープTとインクリボンRは同じ幅で構成されている。また、テープリール29の左下部には上記ヘッドユニット16を覆うヘッドカバー17に差し込むための貫通孔28が形成されており、テープTとインクリボンRとが重なる部分に対応して、上記プラテン駆動軸18に嵌合されて回転駆動するプラテンローラ25が配置されている。一方、上記リボンリール27に近接してリボン巻き取りリール26が配置され、リボンリール27から繰り出されたインクリボンRは、ヘッドカバー17を周回するように配置されたリボン巻き取りリール26に巻き取られるようになっている。
【0035】
テープカートリッジCがカートリッジ装着部14に装着されると、ヘッドカバー17に貫通孔28が、位置決め突起23にテープリール29の中心孔が、巻き取り駆動軸19にリボン巻き取りリール26の中心孔がそれぞれ差し込まれ、テープTおよびインクリボンRを挟み込んで印刷ヘッド15がプラテンローラ25に当接して墨字印刷が可能になる。そして、入力した文字情報に基づき墨字データの印刷を行った後、墨字印刷後のテープTは、印刷テープ排出口21に送られる。
【0036】
テープTは、特に図示はしないが、裏面に粘着剤層が設けられ、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルムで構成された基材シートと、この粘着剤層により基材シートに貼付された剥離紙とから構成されている。剥離紙は、基材シートをラベルとして使用する時まで粘着剤層に埃などが付着しないようにするためのものであって、表面にシリコン処理がなされた上質紙などで構成されている。そのため、粘着剤層が剥離紙に及ぼす粘着力は、基材層に及ぼす粘着力よりも極端に小さくなっている。
【0037】
また、テープTは、テープ種別(テープ幅、テープ色、墨字インク色、テープ材質など)が異なる複数種のものが用意されており、この種別を指標する複数の孔(図示省略)がカートリッジケース24の裏面に設けられている。また、複数の孔に対応してカートリッジ装着部14には、これらを検出するテープ識別センサ(マイクロスイッチ)141(図6参照)が複数設けられており、このテープ識別センサ141により、テープ種別を判別できるようになっている。
【0038】
一方、後部ケース2bには、その内部に主構成装置を装置フレーム65に組み込んだ、点字打刻アッセンブリが組み込まれ、その上面は点字打刻アッセンブリの上部が露出するように十字状に開放されている。また、この十字状の露出部32の右部にはユーザによりテープTが手差し挿入される打刻テープ挿入部33が形成されていると共に、左部には点字打刻後のテープTが排出される打刻テープ排出部34が形成されている。すなわち、点字打刻部30の右部に上面を開放した打刻テープ挿入部33が、またその左部に上面を開放した打刻テープ排出部34が形成され、これらにより、テープ走行路70が構成されている。
【0039】
点字打刻部アッセンブリは、3個の打刻ピン41(図3(b)参照)により点字打刻を行う打刻ユニット80と、打刻テープ挿入部33に挿入されたテープTを打刻テープ排出部34に向けて送るテープ送り機構60と、打刻テープ挿入部33から打刻テープ挿入部34に至るテープ走行路70とを有し、テープ送り機構60の駆動によりテープ走行路70に沿って送られていくテープTに対し、打刻ユニット80により3個の打刻ピン41を選択的に駆動することで点字Bが形成されるようになっている。
【0040】
テープ送り機構60は、正逆回転可能な送りローラ61と、送りローラ61を装置フレーム65に回転自在に支持する支持部材62と、図示しない動力伝達機構を介して送りローラ61を回転させる打刻送りモータ151(図6参照)とで構成されている。送りローラ61は、駆動ローラ(図示省略)および従動ローラ61aから成るグリップローラで構成されており、従動ローラ61aは、形成された点字Bを押し潰すことが無いよう、テープ走行路70の幅方向における上下3カ所ずつ(縦3個の打刻ポイント201a、201b、201c(図4(a)参照)に相当する位置)に環状溝63(図5参照)が形成されている。
【0041】
また、打刻ユニット80は、図3に示すように、テープTの裏面側に配設されると共にガイドブロックに上記3個の打刻ピン41を組み込んだ打刻部材81(打刻ヘッド)と、各打刻ピン41を打刻アームを介して打刻動作させる3個のソレノイド47と、テープTを挟んで打刻部材(打刻ピン41)81と対向する位置に設けられた打刻受け部材82とで構成されている(図3(b)参照)。打刻受け部材81には、3個の打刻ピン41に対応する3個の受け溝が設けられており、ソレノイド47を駆動して打刻ピン41を受け溝に向かって打刻動作させることにより、テープTに打刻凸部が形成されるようになっている。また、打刻ユニット80は、テープ走行路70の幅方向における手前側に片寄って固定配置されている(図3(a)参照)。従って、最大幅(24mm)のテープT1に点字打刻を行う場合は、テープT1の幅方向における下半部に点字打刻を行うこととなる(図5参照)。
【0042】
ここで、図4を参照し、テープT(T3:テープ幅12mm)上に形成される点字B(6点点字B)について説明する。同図(a)は、文字情報「し」を表す点字(点字データ)Bを示す図である。同図に示すように、6点点字Bは、縦3個×横2個の6個の点(打刻ドット)で1マス200が構成され、1マス200で、1文字または濁点等の属性が表現される。なお、点字Bには、仮名文字や数字等を表す6点点字の他、縦4個×横2個の8個のビットパターンの点で漢字を表す8点点字も使用されている。本実施形態の印刷/打刻複合装置1は、6点点字を打刻するものであるが、もちろん8点点字を打刻可能な構成であってもよい。
【0043】
6点点字Bは、1マス200が縦3個×横2個の配置パターンで6個の打刻ポイント201a〜201fに分割されており、同図の「し」では、6個の打刻ポイント201a〜201fのうち4個の打刻ポイント201a,201b,201e,201fが選択的に打刻されて、テープT上に4個の打刻凸部202a,202b,202e,202fが形成されている。また、6個の打刻凸部202は、縦方向のピッチが略2.4mm、横方向のピッチが略2.1mm、隣接マスの点までの(マス間)ピッチは略3.3mmとなっている。
【0044】
同図(b)は、打刻凸部202の断面形状である。同図に示すように、打刻凸部202の形状は、角の丸まった円筒形である。なお、打刻凸部202の形状は、角の丸まった円筒形のものが良い(触感が良く好ましい)とされているが、他の形状、例えば半球形、円錐形、四角錐形等であってもよい。
【0045】
また、本実施形態の点字打刻部30は、打刻ユニット80として相互に交換可能な2種類のユニットが用意されており、一方は小形の小打刻凸部203を形成し、他方は大形の大打刻凸部204を形成する。小打刻凸部203は、円筒の直径が略1.4mm、高さが略0.4mmであり、大打刻凸部204は、円筒の直径が略1.8mm、高さが略0.5mmである。大小2種類の打刻凸部203,204は、その用途によって使い分けられるものであり、例えば、小打刻凸部203が点字Bの読み取りに慣れた者(先天盲者)向けであって、大打刻凸部204が初心者(中途失明者)向けである。
【0046】
次に、図5を参照し、点字打刻部30におけるテープTの送りについて説明する。上記のとおり、点字打刻部30は、打刻ピン41によりテープTに打刻凸部202を形成する打刻ユニット80、テープTが送られるテープ走行路70、並びにテープ走行路70に沿ってテープTを搬送するテープ送り機構60を備える他、テープTの送りをガイドするテープガイド部材71,72と、テープTの先端を検出する透過型の先端検出センサ152と、をさらに備えている。
【0047】
打刻テープ挿入部33には、テープ幅の大きいものからテープT1(テープ幅24mm)、テープT2(テープ幅18mm)、テープT3(テープ幅12mm)が挿入可能となっているが、最大テープ幅のテープT1については上下ガイド71,72によってガイドされ、それ以外のテープ幅のテープT2,T3については、下テープガイド部材72のみによってガイドされる。例えば、最小テープ幅のテープT3を用いる場合、ユーザは、テープT3を下テープガイド部材72に沿ってその先端がテープ送り機構60(送りローラ61)に到達するまで(挿入可能な位置まで)手差し挿入する。そして、テープ挿入をトリガとしてテープ送り機構60によるテープT3の送りを開始させる。
【0048】
このとき、テープ先端から打刻開始位置までの前余白長が、打刻ユニット80(打刻ピン41)と、先端検出センサ151との間の長さL1よりも短く設定されている場合は(但し、送りローラ61の位置関係上、前余白長が打刻ユニット80と送りローラ61との間の長さL2よりも長く設定されていることが前提となる)、送りローラ61を逆回転させることでテープTを送り戻し、特定の位置(頭出し位置)まで送ったところで打刻および正方向へのテープ送りを開始する。そして、打刻終了後テープ送り機構60により所定長さのテープ送りを行うことで、打刻テープ排出部34からテープTを排出する。
【0049】
さらに、図6を参照し、印刷/打刻複合装置1の制御構成について説明する。印刷/打刻複合装置1は、ユーザインタフェースを司る操作部110と、墨字印刷を行う墨字印刷部10と、点字打刻を行う点字打刻部30と、テープTを所定長さとなるように切断する切断部130と、各種検出を行う検出部140と、各部を駆動する駆動部160と、各部と接続され、印刷/打刻複合装置1全体を制御する制御部200とによって構成されている。
【0050】
操作部110は、キーボード3およびディスプレイ13を有し、ユーザによる文字情報の入力や各種情報の表示などを行う。また墨字印刷部10は、テープカートリッジC、印刷ヘッド15および印刷送りモータ121を有し、テープTおよびインクリボンRを搬送しながらテープT上に墨字文字情報に基づく墨字データを印刷する。さらに、切断部130はテープカッタ22、およびこれを駆動するカッタモータ131を有し、テープTを所定長さとなるように切断する。
【0051】
検出部140は、テープT(テープカートリッジC)の種別を検出するテープ識別センサ141、点字打刻部30においてテープTの先端を検出する先端検出センサ142、印刷送りモータ121の回転速度を検出する印刷部エンコーダ143、打刻送りモータ151の回転速度を検出する打刻部エンコーダ153を有し各種検出を行う。
駆動部160は、ディスプレイドライバ161、ヘッドドライバ162、印刷送りモータドライバ163、およびカッタモータドライバ164に加え、後述する点字打刻部30内のソレノイド47および打刻ピン41を駆動する打刻ドライバ165、後述する点字打刻部30内の打刻送りモータ151を駆動する打刻送りモータドライバ166をさらに有し、各部を駆動する。
【0052】
制御部200は、CPU210、ROM220、RAM230および入出力制御装置(以下、「IOC:Input Output Controller」という)250を備え、互いに内部バス260により接続されている。ROM220は、墨字印刷処理や点字打刻処理等の各種処理をCPU210で制御するための制御プログラムを記憶する制御プログラムブロック221と、墨字印刷を行うための文字フォントデータや、後述する文字サイズデータ、並びに点字打刻を行うための点字フォントデータの他、点字データの打刻制御のための制御データ等を記憶する制御データブロック222とを有している。なお、文字フォントデータは、ROM220内ではなく、CG−ROMを別個に備えても良い。
【0053】
RAM230は、フラグ等として使用される各種ワークエリアブロック231の他、生成された墨字印刷データを記憶する墨字印刷データブロック232と、生成された点字打刻データを記憶する点字打刻データブロック233と、ディスプレイ13に表示するための表示データを記憶する表示データブロック234と、を有し、制御処理のための作業領域として使用される。また、RAM230は電源が切断されても記憶したデータを保持しておくように常にバックアップされている。
【0054】
IOC250には、CPU210の機能を補うと共に各種周辺回路とのインタフェース信号を取り扱うための論理回路が、ゲートアレイやカスタムLSIなどにより構成されて組み込まれている。これにより、IOC250は、キーボード3からの入力データや制御データをそのまま或いは加工して内部バス260に取り込むと共に、CPU210と連動して、CPU210から内部バス260に出力されたデータや制御信号を、そのまま或いは加工して駆動部160に出力する。
【0055】
そして、CPU210は、上記の構成により、ROM220内の制御プログラムに従って、IOC250を介してラベル作成装置1内の各部から各種信号・データを入力する。また、入力した各種信号・データに基づいてRAM230内の各種データを処理し、IOC250を介して墨字印刷装置10内の各部に各種信号・データを出力することにより、墨字印刷処理および/または点字打刻処理の制御などを行う。
【0056】
また、点字打刻部30は、ソレノイド47、打刻ピン41および打刻送りモータ151を備え、テープTを搬送しながら、生成した点字打刻データに基づく点字データをテープT上に打刻する。
【0057】
例えば、CPU210は、ユーザによりキーボード3を介して文字情報が入力されると、入力した文字情報に基づいて墨字印刷データを生成し、墨字印刷データブロック232に一時的に記憶する。また、キーボード3を介し印刷/打刻指示および点字打刻文字列の指定を取得すると、点字打刻データを生成し、点字打刻データブロック233に一時的に記憶すると共に、印刷送りモータ121の駆動を開始し、印刷部エンコーダ143の検出結果に応じて印刷ヘッド15を駆動することにより、墨字印刷データブロック232内の墨字データに基づいて墨字印刷を行う。その後、墨字印刷データに基づく所定長さのテープ送りを行った後、テープカッタ22によりテープ後端部を切断し印刷テープ排出口21から印刷済テープTを排出する。
【0058】
さらに、ユーザによりテープTが打刻テープ挿入部33から挿入されると、CPU210は、打刻ユニット80およびテープ送り機構60を駆動することにより、点字打刻部30において、生成した点字打刻データに基づき点字打刻が行われる。点字打刻が終了すると、打刻送りモータ151の駆動によりテープ送りを行い、打刻テープ排出部34から打刻済テープTを排出する。
【0059】
ところで、印刷/打刻複合装置1は、テープTに対して墨字印刷のみを行うモード(以下墨字印刷のみと記載)、墨字印刷・点字打刻との双方を行うモード(以下墨字・点字併記と記載)、点字打刻のみを行うモード(以下点字打刻のみと記載)、からなる印刷モードをモード選択キーの押下により設定することができる。すなわち、点字ラベルを作成する場合には、モード選択キーを介して印刷モードを設定した後、印刷/打刻キーの押下によって墨字印刷および点字打刻処理を開始する。なお、墨字・点字併記を設定した場合は、印刷面の同一の印刷領域に墨字印刷と点字打刻とが行われる。
【0060】
また、本発明の印刷/打刻複合装置1は、墨字と点字とが重ならないよう、同一印刷面に墨字印刷領域と点字打刻領域とを各々別の領域として設定し、墨字印刷および点字打刻処理を行うことも可能であるが、便宜上以下の説明では、印刷モードが墨字・点字併記として設定された場合は、墨字印刷および点字打刻を重ねて行う重複処理が行われることを前提とする。
【0061】
次に、本発明の印刷/打刻複合装置1における墨字印刷および点字打刻の流れを図7を参照して説明する。まず、ユーザによってキーボード3を介して文字情報が入力されると(S01)、ユーザまたは印刷/打刻複合装置1により入力した文字情報に対してそれぞれサイズが設定される(S02)。その後、ユーザにより、印刷モード(墨字印刷のみ/墨字・点字併記/点字打刻のみ)が設定され(S03)、次の処理へと進む。
【0062】
「墨字・点字併記」すなわち墨字印刷と点字打刻とが重ねて行うことが設定された場合は(S03:(b))、印刷/打刻キーが押下されると(S04)、詳細は後述するが、印刷/打刻複合装置1は、入力した文字情報に対して設定されたサイズが所定サイズ以下であるか否かを判別し、必要に応じてサイズ変更を行うサイズ判別・変更処理を行う(S05)。その後、印刷/打刻複合装置1は点字打刻文字列の指定(S06)を取得して点字打刻データを生成し、墨字文字情報に基づき墨字印刷を行う(S07)。
【0063】
次に、墨字印刷後のテープTの切断を行い、印刷テープ排出口21からテープTを排出する(S08)。さらに排出されたテープTが、ユーザによって点字打刻部30の打刻テープ挿入部33から挿入されると(S09)、点字打刻部30は生成された点字打刻データに基づき打刻領域Sに点字打刻を行う(S10)。そして、点字打刻済のテープTを打刻テープ排出部34から排出し処理を終了する(S11)。
【0064】
また、「墨字印刷のみ」が選択された場合は(S03:(a))、印刷/打刻複合装置1は、ユーザの印刷/打刻キーの押下により(S12)、入力した文字情報に基づきテープTに印刷を行った後(S13)、テープTを切断して印刷テープ排出口21からテープTを排出する(S14)。一方「点字打刻のみ」が選択された場合は(S03:(c))、印刷/打刻複合装置1は、ユーザにより印刷/打刻キーが押下されると、(S15)、点字打刻文字列の指定(S16)を取得した後、点字打刻データを生成すると共に、生成した点字打刻データに基づきテープTを所望の長さで切断し、テープTを印刷テープ排出口21から排出する(S08)。そして、ユーザによってテープTが点字打刻部30の打刻テープ挿入部33から挿入されることにより(S09)、点字打刻部30は生成された点字打刻データに基づき点字打刻を行い(S10)、打刻テープ排出部34から点字打刻済のテープTを排出して処理を終了する(S11)。
【0065】
なお、「墨字・点字併記」あるいは「点字打刻のみ」が選択された場合には、印刷テープ排出口21からテープTを排出すると共に、ディスプレイ13上に打刻テープ挿入部33へのテープ挿入を促す旨のメッセージ表示を行ってもよい。また、メッセージ表示に代えてインジケータやLEDによって表示を行ってもよい。
【0066】
ところで、印刷/打刻複合装置1は、テープ幅に基づき入力した行数に応じて文字サイズを設定するための文字サイズデータを有している。以下、テープ幅が12mmのテープTを用いる場合について説明する。
図8および図9(a)、(b)に示す入力サイズ部分は、テープ幅が12mmのテープTにおいて、入力行数が2〜4行である場合に、行単位で設定される文字サイズパターン(「M+M」は、1行目の文字列がM字サイズ、2行目の文字列がM字サイズであることを表す)を示している。なお、サイズパターンの選択はユーザにより行われる。テープ幅が12mmのテープTにおいて設定される文字サイズには、図8および図9右上に示すように、P字、S字、M字となる3種類のサイズがあり、そのうちP字サイズは、点字打刻における打刻凸部の平面サイズと略同一のサイズとなるため、前述した「墨字・点字併記」が選択された場合は、P字サイズでの墨字印刷は禁止される(墨字印刷禁止手段)。
【0067】
ここで、墨字印刷を禁止する文字サイズとなる、「点字打刻における打刻凸部の平面サイズと略同一のサイズ」について図10を参照して具体的に説明する。
例えば、墨字Aが打刻凸部O内に納まるサイズ(同図(a))の場合は、言うまでもなく打刻凸部Oの平面サイズと略同一のサイズとなる。また、墨字Aが打刻凸部Oから若干はみ出すサイズ(同図(b))の場合は、打刻凸部Oよりも大きいサイズとはいえ、印刷された墨字Aが認識不能あるいは誤認される虞があるので、同様に打刻凸部Oの平面サイズと略同一のサイズと見なす。一方、墨字Aが打刻凸部Oから十分にはみ出すサイズ(同図(c))の場合は、印刷された墨字Aが認識可能であるので、打刻凸部Oの平面サイズと略同一のサイズとは見なさない。なお、本実施形態の印刷/打刻複合装置1は、P字サイズのみが打刻凸部Oの平面サイズと略同一のサイズとなることを前提とする。
【0068】
テープ幅が12mmにおいて入力行数が2行の場合、入力した文字情報の文字サイズにP字サイズ行が含まれるときは(図8No.3およびNo.8があてはまる)、P字サイズ行の文字サイズをS字サイズに変更する(同図変更後サイズ部分参照)。また、入力行数が3行の場合、入力した文字情報の文字サイズにP字サイズの行が含まれるときは(図9(a)No.2〜16があてはまる)、P字サイズ行の文字サイズをS字サイズに変更すると共に、サイズ変更に伴って入力した文字情報がテープTにおける印刷領域に納まらなくなる場合(入力した文字情報の文字サイズにM字サイズの行が含まれる場合)、すなわちテープ幅不足となった場合は、文字サイズがM字サイズである他行の文字サイズをS字サイズに変更する処理を行う(同図(a)変更後サイズ部分参照)。なお、サイズ変更処理において、P字サイズ以下に設定された行を除いた、複数の他行全てに対して文字サイズを変更する必要がない場合は、ユーザによりサイズ変更対象とする行を選択できるように構成してもよい。
【0069】
また、テープ幅が12mmにおいて、入力行数が4行である場合には、設定される文字サイズはP字サイズのみである(図9(b)入力サイズ部分参照)。この場合、入力した全ての行の文字サイズをP字サイズからS字サイズに変更すると、テープ幅不足となり印刷が不可能となる。従って、この場合は入力した行のうち特定の行を削除することにより、文字サイズをP字サイズからS字サイズに変更することを可能とする(同図(b)変更後サイズ部分参照)。
【0070】
ここで、サイズ判別(判別手段)・変更(サイズ変更手段)処理の流れについて説明する。
図11はサイズ判別・変更処理を示したフローチャートである。印刷/打刻複合装置1は、印刷モードが「墨字・点字併記」に設定されていた場合、印刷/打刻キーがユーザにより押下されると、サイズ判別・変更処理を開始し、まず入力した文字情報の文字サイズが所定サイズ(本実施例ではP字サイズとなる)以下であるか否かを判別する(S21)。文字サイズが所定サイズ以下の値であった場合は(S21:Yes)、一時的に印刷を禁止し(S22)、文字サイズを変更する処理を行う(S23)。文字サイズの変更処理において、テープ幅不足が生じた場合は(S24:Yes)、削除行を指定する画面を表示し(S25)、削除処理を行った後文字サイズを変更して処理を終了する(S26)。
【0071】
次に、文字情報が入力されてから、墨字印刷および点字打刻が行われるまでの流れを、図12および図13の画面遷移図を参照し説明する。
図12は、入力文字情報を3行に亘って入力した場合を示している。入力文字情報を、1行目「大糸線」、2行目「6番線」、3行目「降り口」として入力を行った後、1行目の文字サイズをS字サイズ、2行目の文字サイズをP字サイズ、3行目の文字サイズをM字サイズとして設定する(図9(a)14.のパターン)。そして、モード選択キーの押下により、印刷モード選択画面(図12:T10)を表示する。上記したように、ユーザはこの画面において印刷モード(墨字印刷のみ/墨字・点字併記/点字打刻のみ)を選択することができる。
【0072】
「墨字・点字併記」(画面T10では「墨字/点字」)を選択し、印刷/打刻キーを押下すると、印刷が不可能であることを示すエラー画面(図12:T11)が表示される。ユーザは、印刷/打刻キーあるいは選択キーの押下により、そのまま処理を続行しサイズ変更処理へと進むことができる。また、入力文字情報を変更する場合は、その他のキーの押下により、入力文字情報の編集画面(図示省略)へと戻り、再度編集を行うことができる。
【0073】
エラー画面(図12:T11)において、処理の続行を促す印刷/打刻キーあるいは選択キーが押下されると、印刷/打刻複合装置1によって前述したサイズ変更処理が行われ(図9(a)参照)、ユーザは、点字打刻文字列行を指定する画面(図12:T12)において、点字打刻を行う行の行番号を、数字キーを用いて指定する(図では、1行目「大糸線」を指定)。点字打刻を行う行の行番号を指定すると、テープTに対して入力した文字情報の墨字印刷が開始され、その後墨字印刷後のテープTがテープカッタ22により切断され、印刷テープ排出口21から排出される。
【0074】
このテープTを、印刷/打刻複合装置1の打刻テープ挿入部33へ挿入すると、点字打刻部30により印刷済みテープTに対して点字打刻が行われる。その後テープTは打刻テープ排出部34から排出される。図12(A)に示す点字ラベルは、上記した流れで墨字印刷および点字打刻が行われたラベルを示しており、図12(B)に示す点字ラベルは、本発明のサイズ判別・変更処理を行うことなく、入力時に設定された文字サイズのまま墨字印刷および点字打刻を行った場合に作成されるラベルを示している。なお、点字打刻は、指定された行番号の文字情報に基づいて、点字用の翻訳を行った後(本実施例では「大糸線」から「おおいとせん」に変換する)点字打刻データを生成し点字打刻が行われる。
【0075】
また、図13は、入力文字情報を4行に亘って入力した場合を示している。入力文字情報を、1行目「大糸線」、2行目「6番線」、3行目「降り口」、4行目「階段手すり」として入力を行った後、モード選択キーを押下すると、印刷モード選択画面(図13:T20)が表示される。
「墨字・点字併記」(画面T20では「墨字/点字」)を選択し、印刷/打刻キーを押下すると、入力文字情報が4行に亘って入力された場合は、全ての行の文字サイズに対してP字サイズが設定されるので、印刷が不可能であることを示すエラー画面(図13:T21)が表示される。ユーザは、エラー画面(図13:T21)において、入力した行の中から削除する行の行番号を数字キーを用いて指定する。また、その他のキーの押下により、入力文字情報の編集画面(図示省略)へと戻り、再度編集を行うことができる。なお、削除行指定に代えて、予めユーザが削除行の優先順位を設定しておき、印刷/打刻複合装置1によって自動的に削除を行ってもよい。
【0076】
エラー画面(図13:T21)において、削除する行の行番号を指定すると(図では4行目「階段手すり」)、次に、点字打刻文字列行を指定する画面(図13:T22)において、点字打刻を行う行の行番号を数字キーを用いて指定する(図では、1行目「大糸線」を指定)。点字打刻を行う行の行番号を指定すると、テープTに対して入力した文字情報の墨字印刷が開始され、その後墨字印刷後のテープTがテープカッタ22により切断され、印刷テープ排出口21から排出される。
【0077】
このテープTを、印刷/打刻複合装置1の打刻テープ挿入部33へ挿入すると、点字打刻部30により印刷済みテープTに対して点字打刻が行われる。その後テープTは打刻テープ排出部34から排出される。図13(A)に示す点字ラベルは、上記した流れで墨字印刷および点字打刻が行われたラベルを示しており、図13(B)に示す点字ラベルは、本発明のサイズ判別・変更処理を行うことなく、入力時に設定された文字サイズのまま墨字印刷および点字打刻を行った場合に作成されるラベルを示している。
【0078】
このように、テープTの印刷面において、同一の印刷領域に墨字印刷と点字打刻とを重ねて行う場合、点字打刻における打刻凸部の平面サイズと略同一のサイズとなるP字サイズの墨字印刷を禁止しサイズを変更することにより、印刷された墨字が読みづらくなることを防止することができる。なお、上記したサイズ判別・変更処理は、印刷モードが「墨字・点字併記」に設定された直後に行ってもよい。これにより、墨字印刷に要する処理時間をさらに短縮させることができる。
【0079】
なお、文字情報の入力前に、墨字印刷を禁止する文字サイズの設定を予め禁止する構成でもよい。以下、墨字印刷を禁止する文字サイズの設定を文字情報の入力前に予め禁止する構成を第2実施形態として説明する。
【0080】
図14は、第2実施形態における墨字印刷、点字打刻の流れを示すフローチャートである。
ユーザは、最初にモード選択キーを押下し、表示された画面において印刷モード(墨字印刷のみ/墨字・点字併記/点字打刻のみ)を選択する(S31)。「墨字・点字併記」がユーザにより設定された場合は(S31:(b))、印刷/打刻複合装置1によって、打刻凸部の平面サイズと略同一のサイズとなるサイズ、すなわちP字サイズでの設定を禁止する所定サイズ設定禁止処理が行われる(S32)。
【0081】
所定サイズ設定禁止処理により、打刻凸部の平面サイズと略同一のサイズとなるP字サイズでのサイズ設定は不可能となる。所定サイズ設定禁止処理が行われた後、ユーザによって文字情報の入力が行われ(S33)、入力した文字情報に対してユーザまたは印刷/打刻複合装置によりサイズが設定される(S34)。例えば文字情報を3行に亘って入力した場合、ユーザは入力した全ての行がS字サイズとなるサイズパターンのみ選択可能となる(図9(a)変更後サイズ参照)。その後点字打刻行の指定を取得し(S35)、墨字印刷部10において墨字印刷が行われた後(S36)、点字打刻部30において点字打刻が行われ処理が終了する(S37)。
【0082】
また、印刷モード選択において、墨字印刷のみが選択された場合は(S31:(a))、文字情報の入力後(S38)、ユーザまたは印刷/打刻複合装置1によりサイズの設定が行われ(S39)、墨字印刷が行われる(S40)。
また、印刷モード選択において、点字打刻のみが選択された場合は(S31:(c))、文字情報の入力後(S41)、印刷テープ排出口21よりテープTが排出され、点字打刻部30において点字打刻が行われる(S42)。
【0083】
このように、第2実施形態の構成では、墨字印刷と点字打刻とを重ねて行う場合、印刷禁止とする文字サイズの設定を予め禁止するので、印刷/打刻複合装置1による文字サイズ変更や入力した文字情報の削除といった手間を省くことが可能となり、墨字印刷に要する処理時間を短縮させることが可能となる。
【0084】
なお、本実施形態ではテープ幅が12mmにおける、2行〜4行入力の場合について説明しているが、1行入力の場合、およびテープ幅が12mm以外のテープTを用いる場合にも、入力文字情報に打刻凸部の平面サイズと略同一のサイズとなるサイズ、すなわちP字サイズが含まれる場合は、上記したサイズ判別・変更処理が実行されることは言うまでもない。また、本実施形態では、打刻凸部の平面サイズと略同一のサイズとなるサイズ、すなわちP字サイズの設定を禁止しているが、P字サイズ以外の他のサイズを禁止サイズとしてもよい。これにより、点字ラベル以外のラベルを作成する場合にも、ある特定サイズのサイズ設定を禁止したい場合は、本発明を適用することが可能である。
【0085】
また、印刷/打刻複合装置1の装置ケース2は、墨字印刷部10を有する前部ケース2aと、点字打刻部30を有する後部ケース2bとが一体形成されているものとしたが(図1参照)、これらを別装置とし、インタフェース(コネクタ)を介して接続可能な構成としてもよい。点字打刻を必要とするものだけが後部ケース2bに相当する装置をオプションとして付加可能であると共に、後部ケース2bに相当する装置を他の形態に変更可能であるため、前部ケース2aに相当する装置(墨字印刷装置)の汎用性を高めることができる。
【0086】
また、上記の例に示した、印刷/打刻複合装置1の各部(各機能)をプログラムとして提供することも可能である。また、そのプログラムを記憶媒体(図示省略)に格納して提供することも可能である。記録媒体としては、CD−ROM、フラッシュROM、メモリカード(コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア、メモリースティック等)、コンパクトディスク、光磁気ディスク、デジタルバーサタイルディスクおよびフレキシブルディスク等を利用することができる。
【0087】
また、上述した実施例によらず、印刷/打刻複合装置1の装置構成や処理工程等について、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の一実施形態に係る印刷/打刻複合装置の閉蓋状態の外観斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る印刷/打刻複合装置の開蓋状態の外観斜視図である。
【図3】打刻ユニットの平面図および断面図である。
【図4】6点点字の説明図および打刻凸部の断面図である。
【図5】点字打刻部におけるテープの搬送を説明する説明図である。
【図6】印刷/打刻複合装置の制御ブロック図である。
【図7】印刷/打刻複合装置の全体処理を示すフローチャートである。
【図8】印刷/打刻複合装置に備えられた設定サイズパターン(2行入力)を示す図である。
【図9】印刷/打刻複合装置に備えられた設定サイズパターン(3行〜4行入力)を示す図である。
【図10】点字打刻における打刻凸部の平面サイズと略同一のサイズを補足説明するための図である。
【図11】印刷/打刻複合装置のサイズ判別・変更処理を示すフローチャートである。
【図12】印刷/打刻複合装置の印刷/打刻の流れを示す画面遷移図である。
【図13】印刷/打刻複合装置の印刷/打刻の流れを示す画面遷移図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係る印刷/打刻複合装置の全体処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0089】
1…印刷/打刻複合装置 10…墨字印刷部 30…点字打刻部 200…制御部 210…CPU C…テープカートリッジ B…点字 A…墨字 O…点字打刻凸部 T…テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力した文字情報に基づいて、同一の処理対象物に墨字印刷と点字打刻とを行う印刷/打刻複合装置の印刷処理方法であって、
前記処理対象物に対し、前記墨字印刷と前記点字打刻とを重ねて行う場合であって、
前記墨字印刷の文字サイズが所定のサイズ以下に設定されている場合に、前記墨字印刷を禁止することを特徴とする印刷/打刻複合装置の印刷処理方法。
【請求項2】
前記所定の文字サイズが、前記点字打刻における打刻凸部の平面サイズと略同一のサイズであることを特徴とする請求項1に記載の印刷/打刻複合装置の印刷処理方法。
【請求項3】
入力した文字情報に基づいて、同一の処理対象物に対し、墨字印刷および点字打刻を重ねて行う重複処理可能な印刷/打刻処理手段と、
前記入力した墨字印刷の文字サイズを設定するサイズ設定手段と、
前記サイズ設定手段において設定された文字サイズが所定のサイズ以下に設定されているか否かを判別する判別手段と、
前記重複処理を行う場合であって、
前記判別手段により、前記設定された文字サイズが所定のサイズ以下に設定されていると判別された場合、前記印刷/打刻処理手段による前記墨字印刷を禁止する墨字印刷禁止手段と、を備えたことを特徴とする印刷/打刻複合装置。
【請求項4】
前記所定のサイズが、前記点字打刻における打刻凸部の平面サイズと略同一のサイズであることを特徴とする請求項3に記載の印刷/打刻複合装置。
【請求項5】
前記墨字印刷禁止手段により前記墨字印刷が禁止された場合、前記設定された文字サイズを前記所定サイズを超えるサイズに変更するサイズ変更手段を、さらに備えたことを特徴とする請求項3または4に記載の印刷/打刻複合装置。
【請求項6】
前記処理対象物の特定の領域幅内に納まるように、前記文字情報が複数行に渡って入力され且つ行単位で文字サイズが設定されており、
前記文字サイズの変更に伴って、前記文字情報が前記領域幅内に納まらなくなる場合、
前記サイズ変更手段は、前記所定サイズ以下に設定された行を除く他行の文字サイズを当該文字サイズ以下の文字サイズに変更することを特徴とする請求項5に記載の印刷/打刻複合装置。
【請求項7】
前記処理対象物の特定の領域幅内に納まるように、前記文字情報が複数行に渡って入力され且つ行単位で文字サイズが設定されており、
前記文字サイズの変更に伴って、前記文字情報が前記領域幅内に納まらなくなる場合、
前記サイズ変更手段は、指定した特定行の文字列を削除することを特徴とする請求項5に記載の印刷/打刻複合装置。
【請求項8】
前記入力した文字情報の全部または一部を、点字打刻対象として指定する打刻文字指定手段を、さらに備えたことを特徴とする請求項3ないし7のいずれか1項に記載の印刷/打刻複合装置。
【請求項9】
前記文字情報は、複数行に亘って入力することが可能であり、
前記打刻文字指定手段は、前記点字打刻対象を行単位で指定可能に構成されていることを特徴とする請求項8に記載の印刷/打刻複合装置。
【請求項10】
入力した文字情報に基づいて、同一の処理対象物に対し、墨字印刷および点字打刻を重ねて行う重複処理可能な印刷/打刻処理手段と、
前記入力した墨字印刷の文字サイズを設定するサイズ設定手段と、
前記重複処理を行う場合であって、
前記サイズ設定手段による所定サイズのサイズ設定を禁止する所定サイズ設定禁止手段と、を備えたことを特徴とする印刷/打刻複合装置。
【請求項11】
前記所定のサイズが、前記点字打刻における打刻凸部の平面サイズと略同一のサイズであることを特徴とする請求項10に記載の印刷/打刻複合装置。
【請求項12】
請求項3ないし11のいずれか1項に記載の印刷/打刻複合装置における各手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−1133(P2006−1133A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179690(P2004−179690)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000129437)株式会社キングジム (241)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】