説明

厚さ連続測定装置及び厚さ連続測定方法

【課題】厚さ1mm以下の長尺シートの厚さを連続的に測定する。
【解決手段】装置基体12と、上下方向に揺動自在に前記基体12に取付けられた回転自在の車輪30と、車輪の上方に取付けられ前記車輪の上下揺動に連動して上下揺動するレーザー光反射体24と、前記レーザー光反射体の上方において装置基体12に固定されたレーザー厚さ測定器18とからなる連続走行シートの厚さ連続測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート長尺体の厚さ連続測定装置及び厚さ連続測定方法に関する。特に、本測定装置及び測定方法は、厚さが1mm以下の炭素繊維シートの厚さの連続測定に適する。
【背景技術】
【0002】
従来のシート長尺体の厚さの測定は、ダイヤルシックネスゲージ等の機械的な厚さ測定器を用いる用手法により、行っている(非特許文献1)。
【0003】
機械的な厚さ測定器を用いるシート厚さ測定は、信頼性、耐久性の面で優れている。しかし、連続的に測定できないため、測定に手間が掛かり、検査効率が悪くなる。
【0004】
機械的な厚さ測定器を用いない厚さの測定方法として、レーザー測定法がある(特許文献1)。このレーザー測定法による厚さの測定は比較的簡便な方法であるため、各方面で応用されている。
【0005】
しかし、このレーザー測定法は、炭素繊維シートのように黒色若しくは濃色のシートである場合、レーザー光の反射効率が悪くなり、厚さ測定が困難になる。また、表面の凹凸があるシートの場合、レーザー光が乱反射し、計測が困難になる。
【0006】
比較的厚い炭素繊維フェルトの厚さを測定する場合は、図3に示すようにフェルト52上面に沿って平板54を摺動させ、平板の上下動をレーザー厚さ測定装置56の放射するレーザー光58で測定する厚み測定装置が提案されている(特許文献2)。しかし、炭素繊維シートのような1mm以下の厚みのシートを連続測定する場合に前記平板を用いる測定装置を使用すると、平板の動きがシートの上面に存在する皺、うねりなどの影響を受け、レーザーの反射光の反射方向が変動し、その結果測定精度が悪くなる。更に、シート上面を摺動する平板がシートに擦り傷をつける問題もある。
【0007】
その他、光を用いる非接触式の厚み測定装置に関する特許出願もある(特許文献3)。この場合、検体装置本体以外の付帯設備が大規模になるため、かなりの設置スペースを必要とする。更に、織物などのように表面に凹凸のあるシートや、孔のあるシート、黒色のシート等を測定する場合、光を用いる非接触式の測定方法の場合は、光が乱反射するため、測定誤差が生じ易い。加えて、測定精度を維持するためのメンテナンスコストが高くなり、コスト上も不利である。
【非特許文献1】JIS L 1086-1983 (6.試験方法 6.4厚さ)
【特許文献1】特開平5−209723号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2004−325088号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2001−245989号公報 (特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者等は、厚さが1mm程度の薄いシートの厚さを連続的に測定する方法に付種々検討してきた。その結果、車輪をシート上面に沿って移動させることにより、上記問題が解決できることを知得した。この方法によれば、表面に凹凸がある薄いシートの場合でも精度良く、しかもシートを傷つけることなくシートの厚さを測定できる。
【0009】
本発明は上記知見に基づき完成するに至った。従って、本発明は、厚さが1mm程度の厚みのシートの厚さを正確に測定可能な、主に炭素繊維シートの厚み測定装置及びその測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明は、以下に記載のものである。
【0011】
〔1〕 装置基体と、上下方向に揺動自在に前記基体に取付けられた回転自在の車輪と、車輪の上方に取付けられ前記車輪の上下揺動に連動して上下揺動するレーザー光反射体と、前記レーザー光反射体の上方において装置基体に固定されたレーザー厚さ測定器とからなる連続走行シートの厚さ連続測定装置。
【0012】
〔2〕 レーザー光反射体及び/又は車輪が白色である〔1〕に記載の厚さ連続測定装置。
【0013】
〔3〕〔1〕に記載の厚さ連続測定装置の車輪を、連続走行するシートの上面に当接し、走行する前記シートの上面に倣って上下方向に車輪を揺動させると共に、前記揺動により変化するレーザー厚さ測定器とレーザー反射体との間の距離をレーザー厚さ測定器により連続的に測定する連続走行シートの厚さ連続測定方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の厚さの連続測定装置は、図4に示すように、走行するシート長尺体60の上面を車輪62を転がしてシート長尺体60の表面をなぞらせ、それを上下動に変換しているので、各点の厚さが正確に測定できる。
【0015】
これに対し、シート上面を平板で摺動する特開2004-325088号の場合は、平板に有限の長さがあるので、図5に示すようにシート長尺体60と平板64との間に隙間ができ、その結果正確にシート長尺体の表面をなぞることができず、正確な厚さを測定できない。また更に、シート長尺体の凹凸に応じて平板の傾斜が変動するので、レーザー光Aの反射方向が変動し、正確な厚さの測定ができがたい。
【0016】
更に、レーザー光はレーザー光反射体で反射されるだけであるので、シート長尺体の色が黒色若しくは濃色である場合でも、シート長尺体の表面にレーザー光を乱反射させる凹凸があっても、正確に厚さの測定ができる。
【0017】
更に、本発明の厚さ連続測定装置は、車輪がシート長尺体の上面を転がりながら移動するので、シート長尺体を破損するおそれが少ない。また、レーザー光反射体上面を白色に形成する場合は、レーザー光の乱反射を防止でき、測定精度を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の厚さ連続測定装置の一例について図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の厚さ連続測定装置の一例を示す概略斜視図である。
【0020】
図1中2は厚さ0.1mm〜1mmの長尺シートで、矢印Xの方向に所定速度で搬送されている。前記シート2の上方には、シート2を跨いで、ゲート状の測定装置固定部材4が設けられている。測定装置固定部材4には、所定数(本図に於いては3箇)の厚さ連続測定装置6が互いに所定間隔離れて取付けられている。
【0021】
図2は、連続測定装置の拡大側面図の一例を示す。図2中、10は、測定装置固定部材で、その下端側には、平板状の装置基体12が取付けられている。
【0022】
装置基体12の上端側には、水平方向に突出してレーザー厚さ測定器取付け部材14が取付けられ、その先端側には、レーザー厚さ測定器18が取付けられている。このレーザー厚さ測定器18のレーザー投射面18aは、レーザー光がほぼ垂直方向に投射され、後述するレーザー光反射体24を照射するように取付けられている。
【0023】
前記レーザー厚さ測定器取付け部材14よりも下方において、装置基体12には、Z字状の可動部材取付け腕20の一端側20aが固定され、その他端側20bは下方に向けている。
【0024】
22は可動部材で、前記可動部材取付け椀20の他端側20bに上下方向に摺動自在に取付けられている。
【0025】
前記可動部材22の上部側は水平方向に突出された車輪支持部23が形成されており、この車輪支持部23の上面にはレーザー反射体24が、レーザー投射面18aと平行、かつ互いに対向して形成されている。
【0026】
前記車輪支持部23の先端側には車輪支持椀26が下方に突設され、その下部側において、車輪軸28により車輪30が回転自在に取付けられている。
【0027】
レーザー反射体24、及び車輪30は、白色に形成されていることが好ましい。
これらの白度はJIS Z 8729に規定するL*a*b*表色系でL*=60以上の白色系が好ましい。
【0028】
レーザー厚さ測定器18は市販の測定装置を利用できる。
【0029】
上記厚さの連続測定装置6を用いて、シート長尺体2の厚さの連続測定を行う方法を以下説明する。
【0030】
本発明で測定されるシート長尺体の厚さは、特に制限がない。しかし、破損しやすい1mm以下の厚みのシート長尺体の厚さの測定に特に適している。特に、0.8〜0.1mmの厚さのシート長尺体の測定に適している。
【0031】
先ず、図2に示されるように、ベルトコンベヤ等の運搬手段(不図示)により搬送されるシート長尺体2の上面に複数の測定装置6が載置される。測定装置の車輪30は、シート長尺体2の移動に対応してシート長尺体2の上面の形状に倣って微少に上下しながら回転する。この際、可動部材取付け椀20と、車輪支持部23とは、摺動自在に取付けられているので、車輪は自由に上下できる。
【0032】
車輪30の上下運動はレーザー反射体24の上下動になる。レーザー厚さ測定器18はこの上下動を読取り、これをシート長尺体2の厚さとして表示部(不図示)に表示する。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【0034】
実施例1
図1に示す厚さ連続測定装置を製造した。車輪は白色の合成樹脂製で、車輪の径40mm、車輪の厚み2mmで、質量は30gであった。レーザー投射面18aとレーザー反射体24との距離は30mmであった。レーザー厚さ測定器は、キーエンス社製CCDレーザー変位計(LK−G30)を用いた。厚さ約0.3mmの炭素繊維シートを0.03m/秒で搬送した。厚さの測定は、6秒間隔で測定回数50回行った。測定結果を表1に記載した。
【0035】
比較例1
機械的厚さ測定装置(ミツトヨダイヤルシックネスゲージNo.2050F)を用いて、JISL 1086-1983に基づいて、用手法で、0.3m間隔で、実施例1で測定したシート長尺体の厚さを50回測定した。結果を表1に示した。
【0036】
比較例2
特開2004−325088に示される装置を用いて実施例1で測定したシート長尺体の厚さを測定した。この測定装置は、図3に示すように、シート長尺体52の上面を舟形の反射体54を摺動させ、舟形の反射体54の上下動を反射体の上方に配設したレーザー光58を用いる厚さ測定装置56で測定することにより、シート長尺体の厚さを測定するものである。反射体の摺動面の寸法は40mmx120mmであった。厚さの測定は、6秒間隔で測定回数50回行った。測定結果を表1に記載した。
【0037】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の厚さ連続測定装置の使用例を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の厚さ連続測定装置の概略構成図で、(A)は上面図、(B)は側面図である。
【図3】従来の厚さ測定装置の構成を示す説明図である。
【図4】本発明の厚さ連続測定装置の車輪とシート長尺体との係合状態を示す説明図である。
【図5】比較例2の平板とシート長尺体との係合状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0039】
2 長尺シート
4 測定装置固定部材
6 厚さ連続測定装置
10 測定装置固定部材
12 装置基体
14 レーザー厚さ測定器取付け部材
18 レーザー厚さ測定器
18a レーザー投射面
20 可動部材取付け腕
20a 一端側
20b 他端側
22 可動部材
23 車輪支持部
24 レーザー反射体
26 車輪支持椀
28 車輪軸
30 車輪
52 フェルト
54 平板
56 レーザー厚さ測定装置
58 レーザー光
A レーザー反射光
X 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置基体と、上下方向に揺動自在に前記基体に取付けられた回転自在の車輪と、車輪の上方に取付けられ前記車輪の上下揺動に連動して上下揺動するレーザー光反射体と、前記レーザー光反射体の上方において装置基体に固定されたレーザー厚さ測定器とからなる連続走行シートの厚さ連続測定装置。
【請求項2】
レーザー光反射体及び/又は車輪が白色である請求項1に記載の厚さ連続測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の厚さ測定装置の車輪を連続走行するシートの上面に当接し、走行する前記シートの上面に倣って上下方向に車輪を揺動させると共に、前記揺動により変化するレーザー厚さ測定器とレーザー反射体との間の距離をレーザー厚さ測定器により連続的に測定する連続走行シートの厚さ連続測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−96530(P2010−96530A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265319(P2008−265319)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000003090)東邦テナックス株式会社 (246)
【Fターム(参考)】