説明

厚紙加工装置

【課題】 加工処理能力に優れると共に、自動加工に適する厚紙加工装置を提供する。
【解決手段】 加工台310に、加工ヘッド320がヘッド支持装置340に支持されて2次元方向に移動可能に設けられ、加工台320の一端には、治具保持部400が付設されている。治具保持部400には、例えば、複数種類の加工治具410、例えば、NTカット刃、超硬カット刃、段ボール紙の種類に応じてE段用、A段用、B段用などの筋押し具、あるいはペンなどが収容されている。複数種類の加工治具410を保持する治具保持部400を備え、制御用コンピュータ100からの制御信号に基づき、加工対象物である厚紙の特性や加工工程に応じて適切な加工治具を自動的に加工ヘッド320に装着させることができるため、自動加工に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボール紙、プラスチック製段ボール紙、板紙あるいはアクリルなどのプラスチック製板紙等の厚紙から、外箱、内装箱、化粧箱などの箱体を形成するため、該厚紙を所定の形状に加工する厚紙加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、段ボール箱を組み立てるに当たっては、予め、材料となる段ボール紙を所定の形状、大きさにカッティングし、折り目となる筋押し加工を行う。この際、形状、大きさ、折り目の位置などが同じものを数千枚〜数万枚というように大量に製造する場合には、予め所定の加工用型(トムソン刃)を製作しておき、該加工用型を用いて段ボール紙をプレス加工し、カッティング加工と筋押し加工を同時に行う。しかしながら、近年、梱包対象物の形が多彩になるに従い、多種多様な段ボール箱への需要が高まってきており、1回当たりの段ボール紙加工量は小ロット化(一般には、数十枚単位から数百枚単位で、多くても1千枚程度)する傾向が高まっている。かかる場合に、上記のように専用の加工用型を製作していたのでは、コスト的に見合わない。
【0003】
そこで、小ロット生産の場合には、本来、加工用型を製作する前の試し加工に用いるサンプルカット機で代用することも行われている。例えば、特許文献1には、加工対象物である段ボール紙を吸引固定するための加工台と、該加工台上で二次元方向に移動可能に設けられる加工用ヘッド部とを備えたサンプルカット機が開示されている。加工用ヘッド部は、曲線用、直線用などの複数のカット刃と、筋押し(罫線付け)用の筋押し具(罫線ブロック)とを具備しており、これらを選択的に上下動させてカッティングし、あるいは筋押しする。
【特許文献1】特開平10−175197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では明示されていないが、この種のサンプルカット機では、図5に示すように、カット刃50を上下に振動させながら段ボール紙などの厚紙60をカッティングするため、加工台表面の損傷を防止する必要があり、加工台表面には段ボール紙を支持する板状の支持材70が敷設される。この支持材70は、厚紙60をカッティングすることだけを前提とするならば、カット刃50が下降して厚紙60を厚み方向に切断した際に、刃先50aに損傷を来さないようなある程度柔らかな素材からなることが望ましい。しかしながら、サンプルカット機は、厚紙60をカッティングするだけでなく、その後、所定の位置に筋押し具80で筋押し加工を行う。筋押し加工を行う場合には、支持材70が柔らかくては厚紙60に筋がつかないため、比較的硬い素材を用いる必要がある。このため、従来、かかる支持材70としては、筋押し加工に対応して比較的硬い素材を用い、カッティング加工を行う際には、カット刃50が、厚紙60を貫通した後、支持材70に深く食い込まないように制御している。
【0005】
カット刃50は、刃先50aが一方向に傾斜しているため、支持材70への食い込み深さaが浅いと、厚紙60の貫通部の長さbは、傾斜している刃先50aの全長よりも短くなる。カット刃50は、二次元方向にずらしながら上下振動させるが、二次元方向への移動距離cは、厚紙60に形成される貫通部が連続する範囲に制限される。すなわち、貫通部が連続しない場合には、ミシン目のようになり、カッティングできないことになる。このため、カット刃50を1回下降させるごとに形成される厚紙60の貫通部の長さbが短いと、二次元方向への移動距離cも短くならざるを得ない。
【0006】
サンプルカット機は、本来、試作品を1枚ないしは数十枚製作することを目的としており、もちろん、この本来の目的で使用する限り、従来の仕様でも問題ない。また、1日フル稼働すれば、数十枚程度なら生産できなくもない。しかしながら、小ロット化しているとはいえ、1ロットが数十枚単位という発注は稀であり、通常の100〜1000枚程度のロットの場合には、従来のサンプルカット機をそのまま用いるだけでは、加工時間・日数を相当要し、処理能力の点で課題がある。
【0007】
上記した点に鑑み、本発明者は、特願2004−59887として、カッティング加工部と筋押し加工部とを、それぞれ、異なる位置に配置し、固さを異ならせたカット用厚紙支持材と筋押し用厚紙支持材とに厚紙をセットして実施する厚紙加工装置を提案している。カッティング加工部と筋押し加工部とを区分することにより、カッティング加工部において、柔らかい素材のカット用厚紙支持材を用いることができ、それによりカット刃の上下動作時の貫通部の長さを大きくし、加工スピードが増すものである。
【0008】
しかしながら、従来のサンプル加工用の装置並びに本発明者が提案した特願2004−59887に開示の装置のいずれも、サンプルカット又は小ロット生産用に用いるものであるため、例えば、段ボール紙のみ、あるいは板紙のみを加工するといった専用機として使用するのではなく、カット刃や筋押し具を複数種類の厚紙に対応できるように、各加工ヘッドに複数の取り付け部(装着軸)を設け、予め複数種類のカット刃や筋押し具を常時装備させている。また、例えば、段ボール紙の場合には中芯が弱いため、カッティングの際には、カット刃を上下に振動させて行う一方、板紙の場合には上下振動させてカッティングを行うとバリが発生することから、振動させずにカッティングする必要がある。このため、従来のサンプルカット機においては、段ボール紙を加工する際には、振動式と無振動式の2台を準備するか、あるいは、振動式の装着軸と無振動式の装着軸とを加工ヘッドに備えさせることが行われている。
また、カット刃等は、使用時間に応じて摩耗するため、所定の耐久時間が到来したならば交換しなければならない。しかしながら、カット刃等の交換は面倒であると共に、人手により交換しなければならないため、無人にて自動運転させようとする場合には、適切な時期に交換できなくなってしまうおそれもある。
【0009】
本発明は上記した問題を解決するためになされたものであり、カット刃や筋押し具等の加工治具の自動装着、自動交換を可能とし、加工ヘッドに予め複数種類の加工治具を装着させることなく種々の厚紙に対応可能とし、加工ヘッドの構造を簡易化でき、もって自動運転を可能とする厚紙加工装置を提供することを課題とする。また、本発明は、小ロット生産に適すると共に、自動運転を可能とした厚紙加工装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1記載の本発明では、厚紙に所定の加工を施す加工治具が装着される加工ヘッドを備えた厚紙加工装置であって、
前記加工ヘッドに装着可能な複数種類の加工治具を保持する治具保持部と、
前記治具保持部に保持された加工治具の中から適切な加工治具を選択し、前記加工ヘッドに装着させる制御装置と
を具備することを特徴とする厚紙加工装置を提供する。
請求項2記載の本発明では、前記制御装置は、加工対象物である厚紙の特性を含む加工データを記憶する加工データ記憶部を備え、厚紙特性に応じて、適切な加工治具を選択し、前記加工ヘッドに、選択された加工治具を装着させる制御を行うことを特徴とする請求項1記載の厚紙加工装置を提供する。
請求項3記載の本発明では、前記制御装置は、前記加工ヘッドに装着された加工治具の使用時間が所定の使用時間に至ったならば、他の適切な加工治具と交換させる制御を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の厚紙加工装置を提供する。
請求項4記載の本発明では、前記制御装置は、加工工程に応じて適切な加工治具を選択し、前記加工ヘッドに、選択された加工治具を装着させる制御を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の厚紙加工装置を提供する。
請求項5記載の本発明では、前記制御装置は、選択された加工治具の装着時に、前記加工ヘッドを前記治具保持部にアクセスさせる制御信号を加工ヘッドの駆動装置に出力する構成であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の厚紙加工装置を提供する。
請求項6記載の本発明では、前記加工ヘッドは、加工治具としてのカット刃が装着された際、該カット刃を上下振動させながらカッティングを行う振動運転モードと、上下振動させないでカッティングを行う無振動運転モードとに切り替え可能に構成されており、
前記制御装置は、加工データ記憶部から読み出した厚紙特性に応じて、前記加工ヘッドの運転モードを切り替える制御信号を出力する構成であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の厚紙加工装置を提供する。
請求項7記載の本発明では、前記加工ヘッドに装着される加工治具としてのカット刃は、通電制御により振動する電気振動式であることを特徴とする請求項6記載の厚紙加工装置を提供する。
請求項8記載の本発明では、厚紙の移送方向に沿って複数の加工ヘッドが配置されており、そのうちの少なくとも一つがカット用加工ヘッドであり、他の少なくとも一つが筋押し用加工ヘッドであって、厚紙のカッティング及び折り目用の筋押しを連続的に加工可能であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1に記載の厚紙加工装置を提供する。
請求項9記載の本発明では、前記カット用加工ヘッド又は筋押し用加工ヘッドが動作可能な範囲に、複数種類のカット刃又は筋押し具を保持する治具保持部が配置されていることを特徴とする請求項8記載の厚紙加工装置を提供する。
請求項10記載の本発明では、前記カット用加工ヘッドに対峙して設けられるカット用厚紙支持材と、前記筋押し用加工ヘッドに対峙して設けられる筋押し用厚紙支持材とは、カット用厚紙支持材が、筋押し用厚紙支持材よりも相対的に柔らかい素材から構成されていることを特徴とする請求項9記載の厚紙加工装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の厚紙加工装置によれば、複数種類の加工治具を保持する治具保持具を備え、制御装置により、厚紙の種類、使用時間等に応じて適切な加工治具を自動選択し、加工ヘッドに自動的に装着(交換)される構成である。従って、加工ヘッドに設ける加工治具の取り付け部は一つ備えていればよく、加工ヘッドの構成が簡易化される。また、制御装置によって、加工治具の選択、装着(交換)が自動的に行われるため、無人化による自動運転を可能とする。さらに、厚紙の移送方向に沿って複数の加工ヘッドを設け、そのうちの少なくとも一つをカット用加工ヘッドとし、他の少なくとも一つを筋押し用加工ヘッドとすることにより、厚紙のカッティング及び折り目用の筋押しを連続的に加工できると共に、これらを全て自動運転することも可能である。特に、カット用厚紙支持材及び筋押し用厚紙支持材として、前者を後者よりも相対的に柔らかい素材から構成することにより、従来のサンプルカット機と同様のカット刃及び筋押し具を用いるものでありながら、従来のサンプルカット機よりも加工処理能力に優れ、小ロット生産に適し、専用の加工用型を製作する必要がないため、コスト的にも有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に示した実施形態に基づいて本発明を更に詳しく説明する。
先ず、図1に基づき本発明の第1の実施形態に係る厚紙加工装置を説明する。この厚紙加工装置1は、段ボ−ル紙、プラスチック製段ボ−ル紙、板紙あるいはアクリルなどのプラスチック製板紙等の厚紙11から、外箱、内装箱、化粧箱などの箱体を形成するため、この厚紙11を所定の形状にカッティングし、折り目用の筋押しを連続的に施す装置であり、図に示すように、自動給紙部20と、カッティング加工部30と、筋押し加工部40とを備えている。
【0013】
より詳しくは、上記自動給紙部20は、給紙台21と、この給紙台21に設けられた図示しない自動給紙装置とを有して構成されている。給紙台21上面には、例えば、多数枚の方形状の厚紙11が積層して載置されており、厚紙11は、自動給紙装置によって、最下部から1枚づつ次段のカッティング加工部30へと供給される。
【0014】
カッティング加工部30は、X−Yテーブルからなる第1の加工台31に設けられており、この第1の加工台31は、給紙台21に隣接して配置され、その上部に設けられたカット用加工ヘッド32と、該第1の加工台31の上面に該カット用加工ヘッド32に対峙して配置されると共に、前段の自動給紙部20から供給された加工対象物である厚紙が載置されるカット用厚紙支持材33とを備えてなる。また、第1の加工台31の上部には、両端部の支持部34aと該支持部34a間を結ぶアーム部34bとからなるヘッド支持装置34が設けられている。両端の支持部34aは第1の加工台31の相対向する2つの桟部31aにスライド自由に支持され、アーム部34bは2つの桟部31a間に橋渡して設けられている。このヘッド支持装置34のアーム部34bにカット用加工ヘッド32がスライド自由に取り付けられている。これらヘッド支持装置34並びにカット用加工ヘッド32は、それぞれ第1の加工台31に付設した駆動装置80により、スライド動作されるようになっている。
【0015】
カット用加工ヘッド32には、カット刃35を取り付けるための図示しない取り付け部(装着軸)が設けられている。カット刃35は、図2に示すように、例えば、一方向に傾斜した刃先35aが下向となるように取り付けられ、上下振動して厚紙11をカッティングする構造で、上記駆動装置80により上下振動動作を付与されるようになっており、駆動装置80による通電制御によって上下振動させたり、上下振動させないようにすることができる電気振動式となっている。
【0016】
そして、ヘッド支持装置34の第1の加工台31におけるスライド方向をX方向(図1の矢印方向)とし、カット用加工ヘッド32のヘッド支持装置34のアーム部34bに沿ったスライド方向をY方向(図1の矢印方向に直交する方向)とすると、ヘッド支持装置34及びカット用加工ヘッド32それぞれのX−Y方向のスライド動作により、カット刃35が所定の二次元方向に移動し、該カット刃35の上下動により第1の加工台31上の厚紙11が所定の形状にカットされる。この場合、ヘッド支持装置34並びにカット用加工ヘッド32それぞれの駆動装置80は、予めカットすべき厚紙の形状の情報が入力された制御装置としての制御用コンピュータ100によって駆動が制御され、カット刃35の移動位置が制御されることで、厚紙11は定められた形状に自動的にカットされる。
【0017】
制御用コンピュータ100は、具体的には、図3に示したように、その記憶部101に、加工対象物である厚紙の特性等を含む加工データを記憶する加工データ記憶部110を備えており、この加工データ記憶部110に記憶された厚紙の特性、例えば、厚紙の種類(段ボール紙であるか、板紙であるか等)、厚紙の厚さ等を読み出し、厚紙の種類に応じた駆動制御信号を、ヘッド支持装置34、カット用加工ヘッド32の駆動装置80に出力する。例えば、厚紙の種類が段ボール紙の場合には、駆動装置80に対して、カット刃35を上下振動させる振動運転モードに切り替える制御信号を出力し、厚紙の種類が板紙の場合には、駆動装置80に対して、カット刃35を上下振動させずに二次元方向にカットしていく無振動運転モードに切り替える制御信号を出力する。なお、加工データ記憶部110には、厚紙の特性(厚紙の種類、厚さ等)のほか、加工に必要な展開図データ、厚紙使用枚数等も記憶される。
【0018】
また、第1の加工台31には、治具保持部200を備えている。治具保持部200には、厚紙の種類に応じて、例えば、段ボール紙用、板紙用などのカット刃35、あるいは、直線用、曲線用などの複数種類のカット刃35が保持されている。制御用コンピュータ100は、加工データ記憶部110に記憶された情報に基づき、加工対象となっている厚紙に適したカット刃35を選択する。そして、選択されたカット刃35がカット用加工ヘッド32の装着軸に取り付けられるように、ヘッド支持装置34、カット用加工ヘッド32の駆動装置80に制御信号を出力する。この制御信号に基づき、カット用加工ヘッド32は、第1の加工台31上をX方向又はY方向に移動し、治具保持部200の上方に至るようにアクセスし、装着軸が下降するなどして選択されたカット刃35を装着する。もちろん、装着軸に既に所定のカット刃35が装着されている場合には、治具保持部200の上方に至ったならば、装着軸が下降するなどして、まず、治具保持部200のうちの空所に既設のカット刃35を取り外して収容させ、次に、選択された新たなカット刃35を装填するように動作し、カット刃35の交換がなされる。
【0019】
カット用加工ヘッド32に、選択されたカット刃35を装着あるいは交換させるに当たって、治具保持部200には複数種類のカット刃35が保持されているため、カット用加工ヘッド32が、選択されたカット刃35に正確にアクセスするように制御する必要がある。その手段は任意であるが、例えば、治具保持部200に、複数に区画されたカット刃収容部(図示せず)を設け、各カット刃収容部に収容するカット刃35の種類を特定しておくことが考えられる。例えば、第1のカット刃収容部には、段ボール紙用でかつ直線用のカット刃を収容し、第2のカット刃収容部には、段ボール紙用でかつ曲線用のカット刃を収容するといったように対応させ、その対応関係を規定したテーブルを制御用コンピュータ100の記憶部101に設定しておく。これにより、カット用加工ヘッド32が制御用コンピュータ100からの制御信号に基づき、選択されたカット刃35が収容されているカット刃収容部に正確にアクセスできる。もちろん、カット用加工ヘッド32に既にカット刃35が装着されている場合には、そのカット刃35は、元々収容されていたカット刃用収容部に収容されるように動作して取り外す。
【0020】
カット用加工ヘッド32は、厚紙を加工するために元々X−Y方向に動作するように構成されているため、本実施形態のように、その動作範囲に治具保持部200を設ければ、カット刃の自動交換を容易に行うことができる。但し、これはあくまで一例であり、例えば、第1の加工台31の任意位置に、治具保持部200とカット用加工ヘッド32との間を行き来するカット刃交換のための専用の多関節の可動アーム(図示せず)を設け、この可動アームを動作させて、治具保持部200から、選択されたカット刃35をピックアップし、カット用加工ヘッド32に装着する構成とすることもできる。
【0021】
筋押し加工部40は、カット加工後の厚紙11の排紙側であって、上記第1の加工台31に隣接して配置された第2の加工台41に設けられている。この第2の加工台41には、筋押し用加工ヘッドとしてのスリッタ42及びプレス具43と、該第2の加工台41の上面に、スリッタ42及びプレス具43に対峙して配置されると共に、前段のカッティング加工部30から排紙された加工対象物である厚紙11が載置される筋押し用厚紙支持材44とを備えてなる。
【0022】
第1の加工台31から移送された厚紙11は、例えば、移送方向の筋押しがスリッタ42によって行われ、移送方向と直交する方向や斜め方向の筋押しがプレス具43により行われる。スリッタ42は、例えば、第2の加工台41の入口部の上方に配置された棒状の支持具42aと、この支持具42aの離間する複数の位置に位置調節可能に取り付けられた円盤形状の筋押し具42bとを備えて構成されており、プレス具43は、例えば、第2の加工台41の上方に配置された棒状の筋押し具43aを備えて構成されている。棒状の筋押し具43aは、例えば、その断面下部が鋭角の略逆三角形状に形成されており、該棒状の筋押し具43aを厚紙11に押圧すると、下部の鋭角部分により厚紙11に筋付けがなされる。
【0023】
なお、筋押し用加工ヘッドとしてのスリッタ42又はプレス具43は、筋押し加工部40に両者とも具備させ、選択的に使用する構成としてもよいし、いずれか一方のみを具備させた構成としてもよい。もちろん、筋押し用加工ヘッドは、厚紙に筋押しできる機能を有するものであればよく、これらに限定されるものではない。例えば、2次元的に動作するコロ状の筋押しツールなどを用いることができる。
【0024】
また、図1では、筋押し加工ヘッドとしてのスリッタ42又はプレス具43に、それぞれ筋押し具42b,43bが一体的に設けられたものを示しているが、筋押し加工ヘッドとして、筋押し具の取り付け部(装着軸)を備え、所望の筋押し具を任意に交換可能な構成とすることもできる。この場合、上記したカッティング加工部30と同様に、第2の加工台41に治具保持部(図示せず)を付設し、該治具保持部に複数種類の筋押し具を準備しておくことにより、制御用コンピュータ100からの指令に基づき、例えば、段ボール紙の厚みによって適切な筋押し具を選択して使用できる。なお、筋押し具用の治具保持部と上記したカット刃35用の治具保持部200とは、それぞれ別々に設けることができることはもちろんであるが、第1の加工台31と第2の加工台41の中間付近等に、後述の第2の実施形態のように、カット刃及び筋押し具のいずれも保持できる兼用の治具保持部を設ける構成とすることもできる。
【0025】
また、カッティング加工部30による加工終了後、筋押し加工部40の筋押し用厚紙支持材44上に厚紙を移送するに当たっては、人手で作業を行うことも可能であるが、例えば、第1の加工台31と第2の加工台41との境界付近に配設される送りローラ(図示せず)と該送りローラを回転駆動させる駆動部(図示せず)とを備えた移送手段を設け、カット加工終了後に該移送手段によって厚紙が自動的に移送される構成とすると、作業性を向上できるため好ましい。
【0026】
さらに、カット用厚紙支持材33として、例えば、ゴムや発泡ウレタン等を用い、筋押し用厚紙支持材44として、例えば、木材や硬質の合成樹脂等を用いるなどして、筋押し用厚紙支持材44よりも、カット用厚紙支持材33を相対的に柔らかい素材から構成することが好ましい。これにより、加工処理速度を向上させることができるが、詳細については後述する。
【0027】
次に、上記厚紙加工装置1を用いて、厚紙11を加工する手順について説明する。まず、作業計画に基づいて、加工データ(厚紙の種類、厚さ、展開図データ、加工枚数など)を制御用コンピュータ100の加工データ記憶部110に入力する。次に、作業計画に基づいて複数枚の厚紙11を自動給紙部20の給紙台21上面に積層するように載置する。制御用コンピュータ100の操作盤におけるスタートボタンを押して、自動給紙部20の自動給紙装置によって、積層された厚紙11を最下部から1枚づつ次段のカッティング加工部30へと供給し、その第1の加工台31のカット用厚紙支持材33上面の所定位置にセットする。その後は、制御用コンピュータ100により、ヘッド支持装置34並びにカット用加工ヘッド32が移動制御されると共に、カット用加工ヘッド32のカット刃35が上下動制御されることによって、厚紙11が所定の形状に自動的にカットされる。カット完了後の厚紙11は、次段の筋押し加工部40の第2の加工台41の筋押し用厚紙支持材44の上面に送られると同時に、次に加工する厚紙11が自動給紙装置によってカッティング加工部30へと供給される。筋押し用厚紙支持材44の上面に送られた厚紙11は排紙側に移動する途中で、スリッタ42及びプレス具43により移送方向の筋押しやこの移送方向と直交する方向、斜め方向の筋押しがなされる。プレス具43によるプレス加工の場合は、図示しないセンサなどにより筋押し位置の間隔が検知されて、加工位置が決定される。このようにして、次から次へと、多数の厚紙11がそれぞれ所定の形状にカッティングされると共に、折り目用の筋押しが施されて、多数の厚紙11がそれぞれ加工されるようになっている。
【0028】
ここで、本実施形態では、上記した加工データ記憶部110に記憶させた厚紙特性(厚紙の種類、厚さ等)に基づき、カッティング加工を行う前に、まず、制御用コンピュータ100が適切なカット刃35を選択し、カット用加工ヘッド32を動作させて治具保持部200から該カット刃35を自動的にピックアップして装着させ、展開図データ等に沿った所定のカッティングがなされる。また、制御用コンピュータ100により、ある所定のカット刃35の使用時間が所定時間に至ったならば、交換のための制御信号が発せられ、カット用加工ヘッド32が治具保持部200にアクセスするように駆動装置80によってヘッド支持装置34及びカット用加工ヘッド32を動作させ、装着している旧カット刃35を取り外して、新たなカット刃35に交換し、改めてカッティング作業が行われる。所定の使用時間は、カット刃が摩耗して使用に適さなくなる時間であるが、これは、予め制御用コンピュータ100に各カット刃の耐久時間をカット刃ごとに対応させて設定されている。そして、例えば、カット刃35ごとに、使用時間に関する対応表を制御用コンピュータ100に設定し、積算された使用時間を、記憶されている所定の使用時間(耐久時間)と比較し、所定の使用時間に至ったならば、制御用コンピュータ100から交換のための制御信号をカット用加工ヘッド32等の駆動装置80に出力する。
【0029】
また、異なる特性の厚紙を加工する場合には、加工データ記憶部110に入力された当該厚紙の種類、厚さ等を読み出し、改めて適切なカット刃35を選択する。例えば、最初に段ボール紙の加工を行った後に、板紙の加工を行う場合には、制御用コンピュータ100は、当該板紙を加工するのに適切なカット刃を選択し、ヘッド支持装置34並びにカット用加工ヘッド32の駆動装置80に制御信号を出力し、カット用加工ヘッド32を治具保持部200へアクセスさせ、カット用加工ヘッド32に装着されている段ボール紙用のカット刃を板紙用のカット刃と交換する。
【0030】
また、本実施形態では、カッティング加工部30と筋押し加工部40とを互いに異なる位置に設けて、カッティング加工と筋押し加工とを、それぞれ、異なる位置に配置したカット用厚紙支持材33と筋押し用厚紙支持材44とに厚紙11をセットして実施している。この結果、カット用厚紙支持材33と筋押し用厚紙支持材44とを異なる素材で別々に形成できることになる。
【0031】
従って、カッティング加工と筋押し加工とを、それぞれ、同じ位置に配置した支持材に厚紙をセットして実施するようにした従来装置(図5参照)のように、筋押し加工に対応して比較的硬い支持材を用いて、カット刃が支持材に深く食い込まないように細かな制御をする必要が全くなく、カット刃の二次元方向への移動距離も短くならずに済む。すなわち、カット刃35は、刃先35aが一方向に傾斜しているため、支持材への食い込み深さが浅いと、厚紙11の貫通部の長さは、傾斜している刃先35aの全長よりも短くなる(図5参照)。これに対し、本実施形態のように、カット用厚紙支持材33として、相対的に柔らかい素材を用いた場合には、カット刃35の耐久性を大幅に向上することができるのは勿論のこと、図2に示すように、カット刃35のカット用厚紙支持材33への食い込み深さaを深くすることができる。このため、カット刃35を1回下降させるごとに形成される厚紙11の貫通部の長さbを長くすることができ、カット刃35の二次元方向への移動距離cを長くとることが可能となる。この結果、加工速度を大幅に速くすることができる。従って、従来のサンプルカット機と同様のカット刃及び筋押し具を用いるものでありながら、従来のサンプルカット機よりも加工処理能力に優れ、小ロット生産に適し、コスト的に有利である。因みに、例えば、カット刃の上下動数を7000回/minとした場合、従来ではカットスピードの設定は、200mm/secが限度であるが、本実施形態では、500mm/secの設定が可能となり、加工速度を大幅に向上することができる。
【0032】
なお、上記の実施形態では、カッティング加工部30と筋押し加工部40とを、隣接して配置された異なる2つの加工台31、41に設けているが、カッティング加工部30と筋押し加工部40とを異なる加工台に設けずに、一台の加工台に設けても良い。かかる構成とすると、加工ラインの設置スペースのさらなる削減をはかれ、装置コストもより安価となる。
【0033】
次に、本発明の第2の実施形態に係る厚紙加工装置1’を図4に基づいて説明する。なお、第1の実施形態と同じ部材については同じ符号で示す。本実施形態は、上記第1の実施形態と異なり、加工部300を1カ所とし、1台の加工台310において、カッティング加工、筋押し加工等を行う構成である。すなわち、加工台310には、上記第1の実施形態で示したカット用加工ヘッド32と同様の加工ヘッド320がヘッド支持装置340に支持されて2次元方向に移動可能に設けられており、加工台320の一端には、治具保持部400が付設されている。治具保持部400には、例えば、複数種類の加工治具410、例えば、NTカット刃、超硬カット刃、段ボール紙の種類に応じてE段用、A段用、B段用などの筋押し具、あるいはペンなどが収容されている。なお、加工ヘッド320に設けられる加工治具410の取り付け部(装着軸)は、上記第1の実施形態と同様に通電制御により振動する電気振動式となっている。
【0034】
本実施形態によれば、治具保持部400にカット刃だけでなく、筋押し具等も含む複数種類の加工治具410が収容されている。従って、例えば、A段の段ボール紙を加工する場合、まず、カッティング工程では、制御用コンピュータ100により超硬カット刃が選択され、ヘッド支持装置340及び加工ヘッド320の駆動装置80に制御信号が出力される。これにより、加工ヘッド320が治具保持部400にアクセスし、超硬カット刃がその装着軸に装着される。段ボール紙の場合には、装着軸を振動させる運転モードに制御し、超硬カット刃を振動させながら上下動してカッティングする。カッティング工程の終了後、制御用コンピュータ100によりA段用の筋押し具が選択されて、ヘッド支持装置340及び加工ヘッド320の駆動装置80に制御信号が出力され、加工用ヘッド320が治具保持部400にアクセスし、超硬カット刃を取り外し、A段用の筋押し具に交換される。その後、制御用コンピュータ100からの制御信号に従い、所定の位置に筋押し加工を施していく。
【0035】
本実施形態では、1台の加工台310において、カッティングから筋押しまで行う構成であるため、上記第1の実施形態に示したカッティング加工部30と筋押し加工部40とを区分した構成と比較し、生産性は劣る。しかしながら、複数種類の加工治具410を保持する治具保持部400を備え、制御用コンピュータ100からの制御信号に基づき、加工対象物である厚紙の特性や加工工程に応じて適切な加工治具を自動的に加工ヘッド320に装着させることができる。従って、従来のように加工ヘッドに複数種類の加工治具を常時保持させる構造と比較した場合、従来のものは、保持させる加工治具の種類が増加するほど、加工ヘッドの構造が複雑化し、加工ヘッドが大型化することから、保持させる加工治具の種類、数が制限されていたが、本実施形態では、加工台に付設される治具保持部400に加工治具410を保持させるものであるため、より多種類の加工治具410を保持させても、加工ヘッド320としては1つの装着軸を有するもので済み、構成が簡易である。また、同種類のカット刃を治具保持部400に予め複数個準備しておくことができるため、使用時間(使用時間)に応じたカット刃の自動交換も可能であり、自動運転に適している。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る厚紙加工装置の概略構造を示す斜視図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る厚紙加工装置の作用効果を説明するための図で、カット刃の刃先と厚紙とカット用厚紙支持材との関係を示す概略正面図である。
【図3】図3は、第1の実施形態で用いた制御用コンピュータの構成を説明するための図である。
【図4】図4は、本発明の第2の実施形態に係る厚紙加工装置の概略構造を示す斜視図である。
【図5】図5は、従来技術の問題点を説明するための図で、カット刃の刃先と厚紙とカット用厚紙支持材との関係を示す概略正面図である。
【符号の説明】
【0037】
1,1’ 厚紙加工装置
11 厚紙
30 カッティング加工部
31 第1の加工台
32 カット用加工ヘッド
33 カット用厚紙支持材
35 カット刃
40 筋押し加工部
41 第2の加工台
42 スリッタ
43 プレス具
44 筋押し用厚紙支持材
80 駆動装置
100 制御用コンピュータ
110 加工データ記憶部
200 治具保持部
300 加工部
310 加工台
320 加工ヘッド
400 治具保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚紙に所定の加工を施す加工治具が装着される加工ヘッドを備えた厚紙加工装置であって、
前記加工ヘッドに装着可能な複数種類の加工治具を保持する治具保持部と、
前記治具保持部に保持された加工治具の中から適切な加工治具を選択し、前記加工ヘッドに装着させる制御装置と
を具備することを特徴とする厚紙加工装置。
【請求項2】
前記制御装置は、加工対象物である厚紙の特性を含む加工データを記憶する加工データ記憶部を備え、厚紙特性に応じて、適切な加工治具を選択し、前記加工ヘッドに、選択された加工治具を装着させる制御を行うことを特徴とする請求項1記載の厚紙加工装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記加工ヘッドに装着された加工治具の使用時間が所定の使用時間に至ったならば、他の適切な加工治具と交換させる制御を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の厚紙加工装置。
【請求項4】
前記制御装置は、加工工程に応じて適切な加工治具を選択し、前記加工ヘッドに、選択された加工治具を装着させる制御を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の厚紙加工装置。
【請求項5】
前記制御装置は、選択された加工治具の装着時に、前記加工ヘッドを前記治具保持部にアクセスさせる制御信号を加工ヘッドの駆動装置に出力する構成であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の厚紙加工装置。
【請求項6】
前記加工ヘッドは、加工治具としてのカット刃が装着された際、該カット刃を上下振動させながらカッティングを行う振動運転モードと、上下振動させないでカッティングを行う無振動運転モードとに切り替え可能に構成されており、
前記制御装置は、加工データ記憶部から読み出した厚紙特性に応じて、前記加工ヘッドの運転モードを切り替える制御信号を出力する構成であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の厚紙加工装置。
【請求項7】
前記加工ヘッドに装着される加工治具としてのカット刃は、通電制御により振動する電気振動式であることを特徴とする請求項6記載の厚紙加工装置。
【請求項8】
厚紙の移送方向に沿って複数の加工ヘッドが配置されており、そのうちの少なくとも一つがカット用加工ヘッドであり、他の少なくとも一つが筋押し用加工ヘッドであって、厚紙のカッティング及び折り目用の筋押しを連続的に加工可能であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1に記載の厚紙加工装置。
【請求項9】
前記カット用加工ヘッド又は筋押し用加工ヘッドが動作可能な範囲に、複数種類のカット刃又は筋押し具を保持する治具保持部が配置されていることを特徴とする請求項8記載の厚紙加工装置。
【請求項10】
前記カット用加工ヘッドに対峙して設けられるカット用厚紙支持材と、前記筋押し用加工ヘッドに対峙して設けられる筋押し用厚紙支持材とは、カット用厚紙支持材が、筋押し用厚紙支持材よりも相対的に柔らかい素材から構成されていることを特徴とする請求項9記載の厚紙加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−239819(P2006−239819A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−59192(P2005−59192)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(596057631)篠田商事株式会社 (13)
【Fターム(参考)】