説明

双方向光モジュールおよび光パルス試験器

【課題】高光出力かつ高感度を有するとともに小型化可能な双方向光モジュールを提供する。
【解決手段】本発明の双方向光モジュールは、異なる波長の光を発する複数の発光素子と、光を受光する受光素子と、光ファイバがそれぞれ接続される第1のポートおよび第2のポートと、第1のポートおよび第2のポートに入射する光の波長範囲を規定する波長フィルタと、入射された光を複数の光に分岐するビームスプリッタであって、複数の発光素子のうち少なくともいずれか1つから出射され当該ビームスプリッタに入射された光を分岐して、第1のポートまたは第2のポートのうち少なくともいずれか一方へ入射させるとともに、当該ビームスプリッタに入射された、第1のポートおよび第2のポートに接続された各光ファイバからの戻り光を分岐して、受光素子に入射させるビームスプリッタと、を、複数の発光素子から出射された光が光ファイバに結合する間の空間光内に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双方向光モジュールに関し、より詳細には、光ファイバ通信網の破断点測定等に用いられる光パルス試験器に用いる双方向モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムや、光を用いた例えば光ファイバセンサ等の測定機器は、光を出射する光源および光を感知する受光部を備える。また、光通信システムの保守・管理等に用いられる測定機器は、被測定光ファイバに測定用の光を出射する光源および被測定光ファイバによって伝送された光を感知する受光部を備えている。
【0003】
例えば、光信号によりデータ通信等を行う光通信システムでは、光信号を伝送する光ファイバの状態を監視するため、光ファイバの敷設や保守等において、例えばOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)と呼ばれる光パルス試験器が用いられる。OTDRは、被測定光ファイバに対してパルス光を繰り返し入力し、被測定光ファイバからの反射光および後方散乱光のレベルと受光時間とを測定することで、被測定光ファイバの断線や損失等の状態を測定する。
【0004】
光パルス試験器は、送信部および受信部を同一のケースに収め、ひとつにモジュール化した双方向光モジュールやBi−Directionalモジュール等を備えている。これらのモジュールは、近年のFTTH(Fiber To The Home)の普及に伴い低価格となり、OTDRに限らず、その他の測定機器や光通信システムにも多く使用されている。
【0005】
例えば、双方向光モジュールを用いたOTDRは、図3に示すように、双方向光モジュール1と、LD駆動部2と、サンプリング部3と、信号処理部4と、表示部5とを備えて構成される。
【0006】
双方向光モジュール1は、測定コネクタ6aあるいは6bを介して被測定光ファイバ7aあるいは7bにパルス光を出力し、被測定光ファイバ7aあるいは7bからの戻り光を感知するモジュールである。LD駆動部2は、双方向光モジュール1内の光源を駆動する駆動部である。サンプリング部3は、双方向光モジュール1内の受光部からの電気信号(光電流)を電圧に変換してサンプリングする機能部である。信号処理部4は、LD駆動部2を介して双方向光モジュール1にパルス光を出力させ、また、サンプリング部3にサンプリングを行わせる機能部である。さらに、信号処理部4は、サンプリング部3によるサンプリング結果の電気信号の演算処理を行う。表示部5は、信号処理結果を表示する機能部であり、例えばディスプレイ等を用いることができる。
【0007】
一般に、OTDRは、光ファイバの長さや接続点の把握、断線等の障害箇所の特定のために、その敷設工事や保守の現場で使用する測定器である。OTDRでは、光ファイバ敷設時には通信波長(例えば1310nmおよび1550nm)を用い、保守・監視時には通信波長に影響を与えないように通信波長以外の波長(例えば1625nmまたは1650nm、以下では保守・監視時の光の波長を「保守波長」と称する場合もある。)を使用して測定するのが一般的である。光ファイバの被測定線路内の破断点位置は、光源(例えば、半導体レーザ)がパルス光を発してから破断点で反射した戻り光が受光部に到達するまでの時間差により取得可能である。
【0008】
ここで、OTDRの保守・監視時の性能として、保持・監視時の波長が通信光の波長に影響を与えない波長帯域であり、かつ通信光がOTDRに入力されても正常に測定可能であることが要求される。このため、従来のOTDRは、通信光を遮断したカットフィルタを用いて、保守・監視時において通信波長の光が入力されても当該光をカットして正確に測定できるように構成されている。また、OTDRは、誤接続を防止するため、一般的に通信波長と保守波長とで光出力コネクタを分離し、2つの出力ポートを備えた構成となっている。図3に示すOTDRでも、例えば通信波長のパルス光を被測定光ファイバ7aへ出力するための測定コネクタ6aおよび保守波長のパルス光を被測定光ファイバ7bへ出力するための測定コネクタ6bとの2つの出力ポートを備えている。
【0009】
ここで、図4に基づいて、敷設保守対応兼用で使用される従来の双方向光モジュール1の構成について説明する。図4に示す従来の双方向光モジュール1は、ピッグテール型の3波長対応モジュールの一例であって、半導体レーザ11a〜11cと、レンズ12a〜12c、16と、WDM(Wavelength Division Multiplexing)カプラ13と、合分波光カプラ14、19と、WDMフィルタモジュール15と、受光素子17と、BPF(Band−pass filter)モジュール18とからなる。
【0010】
半導体レーザ11a〜11cは、光を出射する発光素子である。半導体レーザ11aは波長λ、半導体レーザ11bは波長λ、半導体レーザ11cは波長λの光を出射する。例えば、半導体レーザ11a、11bは通信波長、例えば波長1310nm、1550nmの光を出射し、半導体レーザ11cは保守波長、例えば波長1650nmの光を出射する。
【0011】
半導体レーザ11aから出射された波長λの光は、レンズ12aによりWDMカプラ13に入射され、合分波光カプラ14を介して、測定コネクタ6aから被測定光ファイバ7aへ出力される。また、半導体レーザ11bから出射された波長λの光も、レンズ12bによりWDMカプラ13に入射され、合分波光カプラ14を介して、測定コネクタ6aから被測定光ファイバ7aへ出力される。半導体レーザ11aと半導体レーザ11bとは、必要に応じて切替可能であり、いずれかの半導体レーザ11a、11bから出射された光は被測定光ファイバ7aへ入射させることができる。
【0012】
被測定光ファイバ7aへ出力された光は、被測定光ファイバ7aの破断点(あるいは接続点)で反射されて測定コネクタ6aから合分波光カプラ14、WDMフィルタモジュール15を介してレンズ16により集光されて受光素子17に結合される。WDMフィルタモジュール15は、WDMフィルタを備え、光の波長に応じて光路を切り替えるモジュールであって、例えば図5に示すような構成となっている。図5に示すWDMフィルタモジュール15において、第1端子55aは測定コネクタ6aと接続され、第2端子56aは合分波光カプラ19の一端と接続され、第3端子54aは受光素子17へ向かって光を出射する位置に配置されている。
【0013】
WDMフィルタモジュール15は、第1端子55aより2芯光ファイバ55へ入射された通信波長帯域の光については、レンズ53により平行光とした後、通信波長の光を反射して保守波長の光を透過させるWDMフィルタ52により反射して、2芯光ファイバ56と接続された第2端子56aから出射させる。一方、WDMフィルタモジュール15は、第1端子55aより2芯光ファイバ55へ入射された保守波長帯域の光については、レンズ53により平行光とした後、WDMフィルタ52を透過させて、レンズ51により光ファイバ54に集光し、第3端子54aから出射させる。
【0014】
図4の説明に戻り、一方、半導体レーザ11cから出射された波長λの光は、レンズ12cにより合分波光カプラ19へ入射され、BPFモジュール18を介して、測定コネクタ6bから被測定光ファイバ7bへ出力される。BPFモジュール18は、BPFを備え、所定の波長範囲の光のみを通過させ、それ以外の波長範囲の光の透過を減衰させ遮断するモジュールであって、例えば図6に示すような構成となっている。図6に示すBPFモジュール18において、第1端子84aは合分波光カプラ19の他端(WDMモジュール15と接続さていない端子)と接続され、第2端子85aは測定コネクタ6bと接続されている。
【0015】
上述したように、半導体レーザ11cから出射された波長λの光は、レンズ12cにより合分波光カプラ19へ入射される。合分波光カプラ19は、WDMフィルタモジュール15から出射された保守波長の光と半導体レーザ11cから出射された光とを合波して、BPFモジュール18へ出射する。BPFモジュール18は、第1端子84aより光ファイバ84へ入射された光をレンズ81により平行光とした後、保守波長の光を透過して通信波長の光を反射するBPF82に入射する。BPF82は、通信波長帯域の光を反射するが、保守波長帯域の光を透過させる。BPF82により透過された光は、レンズ83により光ファイバ85に集光されて第2端子85aから出射される。BPFモジュール18の第2端子85aは測定コネクタ6bと接続されているので、第2端子85aから出射された保守波長の光は、測定コネクタ6bを介して被測定光ファイバ7bへ出力される。
【0016】
被測定光ファイバ7bへ出力された光は、被測定光ファイバ7bの破断点(あるいは接続点)で反射されて測定コネクタ6bからBPFモジュール18、合分波光カプラ19、WDMフィルタモジュール15を介してレンズ16により集光されて受光素子17に結合される。
【0017】
このようなOTDRを用いることにより、被測定光ファイバ7a、7bの破断点位置を、通信波長の半導体レーザ11a、11b、あるいは保守波長の半導体レーザ11cにおいて出射パルス光を発生してから破断点において反射した戻り光が受光素子17に到達するまでの時間に基づき検出することができる。保守波長においては、通信光をカットするBPFモジュール18を設けることにより通信光の影響を受けないように構成されているため、回線運用中でも通信品質に影響を与えることなく動作させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2009−85684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかし、図4に示すような従来の双方向光モジュールの構成は、それぞれ専用波長の光分離器を通過させた後、再び合分波光カプラにより合波するという複雑な構成となっていた。このため、部品数が増加しコスト高になる上、部品数が多いことによる部品の結合損失が増加し、双方向光モジュールの性能に悪影響を与えるという問題があった。
【0020】
さらに、合分波光カプラには溶融型光ファイバカプラを一般的に使用しているため、当該光ファイバの融着作業、余長光ファイバの収納処理等の煩雑な作業が発生して製造工程における作業工数が増大する。また、双方向光モジュールの小型化が困難であるという問題もあった。特に、図5および図6に示したように、WDMフィルタモジュール15およびBPFモジュール18は、シングルモードファイバの光をレンズで平行光にし、フィルタを通してレンズで集光しシングルモードファイバに再度入射させる構成となっている。このため、レンズの収差、レンズ端面の反射等による結合損失が0.5〜1dB程度発生し、性能に悪影響があるという欠点がある。
【0021】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、高光出力かつ高感度を有するとともに小型化することの可能な、新規かつ改良された双方向光モジュールおよび光パルス試験器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、光ファイバに光を出射し、光ファイバから戻り光が入射される双方向光モジュールが提供される。かかる双方向光モジュールは、光ファイバに入射される、異なる波長の光を発する複数の発光素子と、光ファイバから出射された光を受光する受光素子と、光ファイバがそれぞれ接続される第1のポートおよび第2のポートと、第1のポートおよび第2のポートに入射する光の波長範囲を規定する波長フィルタと、入射された光を複数の光に分岐するビームスプリッタであって、複数の発光素子のうち少なくともいずれか1つから出射され当該ビームスプリッタに入射された光を分岐して、第1のポートまたは第2のポートのうち少なくともいずれか一方へ入射させるとともに、当該ビームスプリッタに入射された、第1のポートおよび第2のポートに接続された各光ファイバからの戻り光を分岐して、受光素子に入射させるビームスプリッタと、を、複数の発光素子から出射された光が光ファイバに結合する間の空間光内に備えることを特徴とする。
【0023】
本発明に係る双方向光モジュールは、複雑な構成とすることなく、複数の発光素子から出射された光が光ファイバに結合する間の空間光内に波長フィルタやビームスプリッタを配置して構成されている。これにより、光ファイバの本数を低減することができるので、融着作業、ファイバフォーミング工程を低減することができ、ファイバの曲げ半径を確保する必要もないのでモジュールの小型化を実現することができる。
【0024】
波長フィルタは、第1のポートとビームスプリッタとの間に設けられ、当該第1のポートへ入射させる波長の光を透過し、第2のポートへ入射させる波長の光は遮断する第1の波長フィルタと、第2のポートとビームスプリッタとの間に設けられ、当該第2のポートへ入射させる波長の光を透過し、第1のポートへ入射させる波長の光は遮断する第2の波長フィルタと、から構成することもできる。
【0025】
このとき、第1の波長フィルタおよび第2の波長フィルタとして、例えば合分波フィルタまたはバンドパスフィルタを用いてもよい。
【0026】
あるいは、波長フィルタを、ビームスプリッタと第1のポートおよび第2のポートとの間に設け、第1のポートへ入射させる波長の光を第1のポートへ向かって進行させ、第2のポートへ入射させる波長の光を第2のポートへ向かって進行させるようにしてもよい。
【0027】
このとき、波長フィルタとして、例えばバンドパスフィルタまたは合分波フィルタを用いてもよい。
【0028】
双方向光モジュールは、第1のポートには通信波長範囲の光が入射され、第2のポートには通信波長範囲以外の波長の光が入射されるように構成してもよい。
【0029】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、光ファイバの損失特性を試験する光パルス試験器が提供される。かかる光パルス試験器は、光ファイバに光を出射し、光ファイバから戻り光が入射される双方向光モジュールと、光を所定のタイミングで発生させるように双方向光モジュールを駆動する双方向光モジュール駆動部と、双方向光モジュールに入射した光を電気信号に変換する電気信号変換部と、電気信号変換部にて変換された電気信号に基づいて、光ファイバの損失特性を算出する信号処理部と、を備える。そして、双方向光モジュールは、光ファイバに入射される、異なる波長の光を発する複数の発光素子と、光ファイバから出射された光を受光する受光素子と、光ファイバがそれぞれ接続される第1のポートおよび第2のポートと、第1のポートおよび第2のポートに入射する光の波長範囲を規定する波長フィルタと、入射された光を複数の光に分岐するビームスプリッタであって、複数の発光素子のうち少なくともいずれか1つから出射され当該ビームスプリッタに入射された光を分岐して、第1のポートまたは第2のポートのうち少なくともいずれか一方へ入射させるとともに、当該ビームスプリッタに入射された、第1のポートおよび第2のポートに接続された各光ファイバからの戻り光を分岐して、受光素子に入射させるビームスプリッタと、を、複数の発光素子から出射された光が光ファイバに結合する間の空間光内に備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように本発明によれば、高光出力かつ高感度を有するとともに小型化することの可能な双方向光モジュールおよび光パルス試験器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る双方向光モジュールの構成を示す説明図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る双方向光モジュールの構成を示す説明図である。
【図3】光パルス試験器の構成を示すブロック図である。
【図4】従来の双方向光モジュールの構成を示す説明図である。
【図5】従来のWDMフィルタモジュールの一構成例を示す説明図である。
【図6】従来のBPFモジュールの一構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0033】
<1.第1の実施形態>
[双方向光モジュールの構成]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る双方向光モジュール100の構成について説明する。なお、図1は、本実施形態に係る双方向光モジュール100の構成を示す説明図である。
【0034】
本実施形態に係る双方向光モジュール100は、敷設保守対応兼用で使用可能なOTDRに用いられる双方向光モジュール100であって、図1に示すように、光を発する発光素子112、114、116と、光を平行光にするレンズ122、124、126と、光を集光するレンズ125、127、128と、合分波フィルタ132、134、180と、ビームスプリッタ140と、BPF150と、光ファイバ162、164と、光を感知する受光素子170とを備える。なお、本実施形態の双方向光モジュール100では、図1に示すように、四角形平面の周囲に発光素子112、114、116、受光素子170、および光ファイバ162、164の一端が配置されている。図1に示す素子等の配置は一例であって、本発明はかかる例に限定されないものとする。
【0035】
本実施形態にかかる双方向光モジュール100は、発光素子112、114から通信波長の光を出射する。発光素子112、114から出射された光は双方向光モジュール100内で光路を切り替えられて、光ファイバ164に結合され、測定コネクタ6bに接続された光ファイバ7bへ出射される。また、光ファイバ7bからの戻り光は、光ファイバ164を経由して双方向光モジュール100内へ出射され、光路を切り替えられて受光素子170へ入射される。また、双方向光モジュール100は、発光素子116から保守波長の光を出射する。発光素子116から出射された光は双方向光モジュール100内で光路を切り替えられて、光ファイバ162に結合され、測定コネクタ6aに接続された光ファイバ7aへ出射される。また、光ファイバ7aからの戻り光は、光ファイバ162を経由して双方向光モジュール100内へ出射され、光路を切り替えられて受光素子170へ入射される。
【0036】
以下、本実施形態に係る双方向光モジュール100を構成する各要素について、詳細に説明する。
【0037】
(発光素子112、114、116)
発光素子112、114、116は、光ファイバに入射する光を発する素子であり、例えばレーザダイオード(Laser Diode)を用いることができる。本実施形態においては、発光素子112、114は通信波長帯域のうち異なる波長の光をそれぞれ出射し、発光素子116は通信波長帯域以外の波長の光を出射する。発光素子112が発する光の波長をλ、発光素子114が発する光の波長をλ、発光素子116が発する光の波長をλとする。本実施形態では、波長λ、λは通信波長であり、例えば、それぞれ1310nm、1550nmとする。また、波長λは保守波長であり、例えば1650nmとする。発光素子112、114は、例えば図1に示すように、光の出射方向が交差するように配置することができる。また、発光素子116は、例えば図1に示すように、発光素子114と同一面に配置することができる。各発光素子112、114、116から出射された光は直進し、その光路上に配置された部材によって進行方向が切り替えられる。
【0038】
(レンズ122、124、126)
レンズ122、124、126は、光を平行光にするためのレンズであり、例えばコリメータレンズ等を用いることができる。レンズ122は発光素子112から出射された光を平行光にし、レンズ124は発光素子114から出射された光を平行光にし、レンズ126は発光素子116から出射された光を平行光にする。
【0039】
(レンズ125、127、128)
レンズ125、127、128は、光を集光するためのレンズであり、例えば平凸レンズ等を用いることができる。レンズ125は、BPF150を通過した光を集光して光ファイバ162に結合させる。レンズ127は、合分波フィルタ180を通過した光を集光して光ファイバ164に結合させる。レンズ128は、ビームスプリッタ140により反射された光ファイバ162、164からの戻り光を集光して受光素子170に結合させる。
【0040】
(合分波フィルタ132、134、180)
合分波フィルタ132、134、180は、入射された光を合波または分波する素子である。合分波フィルタ132は、発光素子112から出射されて第1面から入射した波長λの光と、発光素子114から出射されて第2面から入射した波長λの光とを合波する。合分波フィルタ132により合波された光は、合分波フィルタ134側へ進行する。合分波フィルタ134は、合分波フィルタ132により合波され第1面から入射した光を通過させ、発光素子116から第2面に入射した波長λの光を反射してビームスプリッタ140側へ進行させる。
【0041】
また、合分波フィルタ180は、後述するビームスプリッタ140を通過して第1面に入射した、合分波フィルタ132により合波された波長λ、λの光を通過させて光ファイバ164側へ進行させ、第2面に入射した光ファイバ164からの戻り光を通過させてビームスプリッタ140側へ進行させる。この合分波フィルタ180は、保守波長である波長λの光を反射する特性を有する波長フィルタの1つである。なお、合分波フィルタ180の代わりに、通信波長範囲の光のみを透過するBPFを用いてもよい。これにより、保守波長の光を確実に遮断することができる。また、合分波フィルタ180は光軸に対して数度(例えば4〜5°)傾けて配置してもよい。これにより、反射光が直接受光素子170に入射するのを低減することができ、クロストーク特性をよくすることができる。また、反射減衰量も向上させることができる。
【0042】
(ビームスプリッタ140)
ビームスプリッタ140は、光束を複数に分割する光学素子であって、ビームスプリッタ140に入射した光の一部は反射し、一部は透過する。ビームスプリッタ140としては、例えば誘電体多層膜を使用した分岐比50:50のハーフミラー等を用いることができる。これにより、ビームスプリッタ140は、入射した光のうち50%の光を透過させ、50%の光を反射する。ビームスプリッタ140の第1面から入射された光のうち、ビームスプリッタ140を透過した光は合分波フィルタ180側へ進行し、ビームスプリッタ140で反射された光はBPF150側へ進行する。また、ビームスプリッタ140の第2面から入射された光のうち、ビームスプリッタ140を透過した光は合分波フィルタ134側へ進行し、ビームスプリッタ140で反射された光は受光素子170側へ進行する。
【0043】
(BPF150)
BPF150は、所定の波長範囲の光のみを通過可能な素子である。本実施形態のBPF150は、保守波長として使用される波長範囲の光のみを通過可能な特性を有する波長フィルタの1つである。したがって、BPF150は、ビームスプリッタ140を反射して進行してきた保守波長λの光を透過して、光ファイバ162側へ進行させる。一方、通信波長である波長λ、λはBPF150により遮断され光ファイバ162には入射されない。なお、BPF150は光軸に対して数度(例えば4〜5°)傾けて配置する。
【0044】
(光ファイバ162、164)
光ファイバ162、164は、双方向光モジュール100を被測定光ファイバ7a、7bと接続するために設けられる。光ファイバ162は、レンズ125により光が結合される位置に一端が設けられ、他端が測定コネクタ6aと接続されている。これにより、双方向光モジュール100から所定波長の光を被測定光ファイバ7aへ入射させることができ、被測定光ファイバ7aからの戻り光を双方向光モジュール100へ入射させることができる。レンズ125により光が結合される光ファイバ162の一端は、被測定光ファイバ7aに接続されるポートである。
【0045】
同様に、光ファイバ164は、レンズ127により光が結合される位置に一端が設けられ、他端が測定コネクタ6bと接続されている。これにより、双方向光モジュール100から所定波長の光を被測定光ファイバ7bへ入射させることができ、被測定光ファイバ7bからの戻り光を双方向光モジュール100へ入射させることができる。レンズ127により光が結合される光ファイバ164の一端は、被測定光ファイバ7bに接続されるポートである。
【0046】
(受光素子170)
受光素子170は、光を感知する素子であり、例えば、アバランシェフォトダイオード(Avalanche PhotoDiode;以下、「APD」とする。)を用いることができる。APDは、雪崩増幅効果を利用した受光素子であり、微弱な光も高感度に検出することができる。このため、APD(特に、小口径のAPD)は、微弱な戻り光を高い距離分解能で検出しなければならないOTDR等の受光素子に適している。
【0047】
このような双方向光モジュール100は、図1に示すように、受光素子112、レンズ122、合分波フィルタ132、134、ビームスプリッタ140、合分波フィルタ180、レンズ127が同一直線(直線C)上に配置されている。また、直線Cに対して直交する方向に、合分波フィルタ132、レンズ124および発光素子114が一直線上に配置されており、合分波フィルタ134、レンズ126および発光素子116が一直線上に配置されている。さらに、レンズ125、BPF150、ビームスプリッタ140、レンズ128および受光素子170も、直線Cに対して直交する方向に延びる同一直線上に配置されている。なお、レンズ125およびBPF150は、ビームスプリッタ140に関してレンズ128および受光素子170と異なる側に配置されている。
【0048】
このように、双方向光モジュール100では、発光素子112、114、116から出射された光が被測定光ファイバ7a、7bと接続される2つのポートに結合するまでの間の空間光内に、本モジュールを構成する素子等が配置されている。
【0049】
[双方向光モジュールを備えた光パルス試験器の動作]
次いで、本実施形態にかかる双方向光モジュール100の機能を、この双方向光モジュール100を備えた光パルス試験器の動作とともに説明する。ここで、光パルス試験器の構成は図3と同様であり、双方向光モジュール1の代わりに本実施形態にかかる双方向光モジュール100が適用されているとする。
【0050】
本実施形態にかかる光パルス試験器は、まず、光パルス試験器OTDRの信号処理部4により、LD駆動部2に対してあらかじめパルス光のパルス幅を設定する。次いで、信号処理部4内のタイミング発生手段(図示せず。)により、所定の間隔でタイミング信号をLD駆動部2に送信する。タイミング信号を受信したLD駆動部2は、タイミング信号に同期するように、双方向光モジュール100の発光素子112、発光素子124または発光素子116にパルス光を出力させる。
【0051】
(通信波長による測定)
まず、発光素子112、114から通信波長である波長λ、λのパルス光が出射される場合を説明すると、発光素子112から出射された波長λのパルス光は、レンズ122により平行光とされ、合分波フィルタ132の第1面に入射する。また、発光素子114から出射された波長λのパルス光は、レンズ124により平行光とされ、合分波フィルタ132の第2面に入射する。合分波フィルタ132は、第1面および第2面から入射された各平行光を合波して、合分波フィルタ134側へ進行させる。
【0052】
合分波フィルタ134は、通信波長である波長λ、λの光を透過し、保守波長である波長λの光を反射する特性を有する。したがって、合分波フィルタ132にて合波された光はビームスプリッタ140へ進行する。ビームスプリッタ140は、入射した光の一部を透過して合分波フィルタ180側へ進行させ、他の一部を反射してBPF150側へ進行させる。ビームスプリッタ140を透過し、合分波フィルタ180に入射した光は、通信波長の光を透過し保守波長の光を反射する特性を有する合分波フィルタ180の特性により、通信波長である波長λ、λの光のみが透過して、レンズ127により光ファイバ164の一端(ポート)に集光される。このように、通信波長の光は、光ファイバ164に結合され、当該光ファイバ164と接続された被測定光ファイバ7bへ入射される。
【0053】
一方、ビームスプリッタ140で反射され、BPF150に入射した光は、保守波長範囲の光のみを透過し、それ以外の波長の光は反射する特性を有するBPF150の特性により、保守波長である波長λの光のみが透過して、レンズ125により光ファイバ162の一端に集光される。したがって、発光素子112、114から出射された波長λ、λの光は、ビームスプリッタ140により反射されて被測定光ファイバ7aが接続された光ファイバ162側へ進行したとしても、BPF150により反射されるので、光ファイバ162には入射されない。
【0054】
被測定光ファイバ7bへ入射した波長λ、λの光は、被測定線路の破断点で反射する。この戻り光は、光ファイバ164を介して双方向光モジュール100内へ入射し、レンズ127で再び平行光とされた後、ビームスプリッタ140の第2面へ入射する。ビームスプリッタ140は当該戻り光の一部を反射して受光素子170側へ進行させる。ビームスプリッタ140により反射された戻り光は、レンズ128により受光素子170に結合させる。こうして、受光素子170により戻り光を受光すると、サンプリング部3は、双方向光モジュール100の受光素子170からの電気信号(光電流)を電圧に変換してサンプリングする。そして、信号処理部4によりサンプリング結果の電気信号の演算処理が行われ、演算処理の結果が表示部5に表示される。こうして、被測定光ファイバ7bの被測定経路の破断点位置および線路損失を測定する光時間領域反射点測定装置(OTDR)を構成することができる。
【0055】
(保守波長による測定)
次いで、発光素子116から保守波長である波長λのパルス光が出射される場合を説明する。発光素子116から出射された波長λのパルス光は、レンズ126により平行光とされ、合分波フィルタ134の第2面に入射する。合分波フィルタ132は、第2面から入射された波長λの平行光を反射して、ビームスプリッタ140側へ進行させる。ビームスプリッタ140は、上述した通信波長による測定の場合と同様に、入射した光の一部を透過して合分波フィルタ180側へ進行させ、他の一部を反射してBPF150側へ進行させる。
【0056】
ビームスプリッタ140を透過し、合分波フィルタ180に入射した光は、通信波長の光を透過し保守波長の光を反射する特性を有する合分波フィルタ180の特性により、通信波長である波長λ、λの光のみが透過して、レンズ127により光ファイバ164の一端に集光される。したがって、発光素子116から出射された波長λの光は、ビームスプリッタ140により反射されて被測定光ファイバ7bが接続された光ファイバ164側へ進行したとしても、光ファイバ164には入射されない。
【0057】
一方、ビームスプリッタ140で反射され、BPF150に入射した光は、保守波長範囲の光のみを透過し、それ以外の波長の光は反射する特性を有するBPF150の特性により、保守波長である波長λの光のみが透過して、レンズ125により光ファイバ162の一端(ポート)に集光される。したがって、発光素子116から出射された波長λの光は、光ファイバ162に結合され、当該光ファイバ162と接続された被測定光ファイバ7aへ入射される。ファイバ7aからは保守波長光のみが出力され、通信波長光が出力されないため、回線運用中でも通信品質に悪影響を与えることなく動作させることができる。
【0058】
被測定光ファイバ7aへ入射した波長λの光は、被測定線路の破断点で反射する。この戻り光は、光ファイバ162を介して双方向光モジュール100内へ入射し、レンズ125で再び平行光とされた後、ビームスプリッタ140の第1面へ入射する。ビームスプリッタ140は当該戻り光の一部を透過して受光素子170側へ進行させる。ビームスプリッタ140により透過された戻り光は、レンズ128により受光素子170に結合される。被測定光ファイバ7aから入射された回線運用中の通信波長λ、λの光は、BPF150により遮断される。こうして、受光素子170により保守波長λの戻り光を受光すると、サンプリング部3は、双方向光モジュール100の受光素子170からの電気信号(光電流)を電圧に変換してサンプリングする。そして、信号処理部4によりサンプリング結果の電気信号の演算処理が行われ、演算処理の結果が表示部5に表示される。こうして、被測定光ファイバ7aの被測定経路の破断点位置および線路損失を測定する光時間領域反射点測定装置(OTDR)を構成することができる。
【0059】
このように、光パルス試験器OTDRに本実施形態に係る双方向光モジュール100を用いることにより、実際の通信波長帯と異なる保守波長の光を使用することができ、回線運用中においても通信品質に影響を与えずに保守作業を行うことができる。
【0060】
以上、本実施形態に係る双方向光モジュール100の構成とこれを用いた光パルス試験器OTDRの動作について説明した。本実施形態の双方向光モジュール100は、従来のようにそれぞれ専用波長の光分離器を通過させた後、再び合分波カプラによって合波するという複雑な構成をとらずに、合分波フィルタ132、134、180、ビームスプリッタ140、BPF150を双方向光モジュール100の空間光内に配置した構成となっている。このため、光ファイバの本数を低減することができるので、融着作業、ファイバフォーミング工程を低減することができ、ファイバの曲げ半径を確保する必要もないのでモジュールの小型化を実現することができる。
【0061】
さらに、本実施形態に係る双方向光モジュール100では、図5に示した従来のWDMフィルタモジュール、図6に示した従来のBPFモジュールのように、フィルタ特性を確保するためにわざわざレンズを介して平行光にしてさらに集光するという構成をとる必要がない。また、発光素子から光ファイバに入射するため空間光にした光学系内にフィルタを配置するので、それぞれのフィルタ損失は0.2dB程度となり、図4に示す構成と比較して結合損失を大幅に低減することができる。
【0062】
そして、本実施形態に係る双方向光モジュール100は、発光素子からファイバに入射させる機能と、フィルタ特性を実現する機能とを併せ持つ構成となっている。これにより、フィルタ特性機能を実現するためにレンズを配置する必要がなく、部品点数の低減および作業工程の低減を実現することができる。
【0063】
<2.第2の実施形態>
[双方向光モジュールの構成]
次に、図2を参照して、本発明の第2の実施形態に係る双方向光モジュール200の構成について説明する。なお、図2は、本実施形態に係る双方向光モジュール200の構成を示す説明図である。第1の実施形態に係る双方向光モジュール100では、光ファイバ162、164に光を結合させるレンズ125、127とビームスプリッタ140との間にそれぞれBPF150、合分波フィルタ180を配置したが、本実施形態に係る双方向光モジュール200では、BPF150と合分波フィルタ180との機能を1つのBPF250によって実現する。以下、本実施形態に係る双方向光モジュール200の構成について、第1の実施形態に係る双方向光モジュール100との相違点を重点的に説明する。
【0064】
本実施形態に係る双方向光モジュール200は、敷設保守対応兼用で使用可能なOTDRに用いられる双方向光モジュール200であって、図2に示すように、光を発する発光素子212、214、216と、光を平行光にするレンズ222、224、226と、光を集光するレンズ225、227、228と、合分波フィルタ232、234と、ビームスプリッタ240と、BPF250と、光ファイバ262、264と、光を感知する受光素子270とを備える。なお、本実施形態の双方向光モジュール200では、図2に示すように、四角形平面の周囲に発光素子212、214、216、受光素子270、および光ファイバ262、264の一端が配置されている。図2に示す素子等の配置は一例であって、本技術はかかる例に限定されないものとする。
【0065】
本実施形態にかかる双方向光モジュール200も、第1の実施形態と同様、発光素子212、214から通信波長の光を出射する。発光素子212、214から出射された光は双方向光モジュール200内で光路を切り替えられて、光ファイバ264に結合され、測定コネクタ6bに接続された光ファイバ7bへ出射される。また、光ファイバ7bからの戻り光は、光ファイバ264を経由して双方向光モジュール200内へ出射され、光路を切り替えられて受光素子270へ入射される。また、双方向光モジュール200は、発光素子216から保守波長の光を出射する。発光素子216から出射された光は双方向光モジュール200内で光路を切り替えられて、光ファイバ262に結合され、測定コネクタ6aに接続された光ファイバ7aへ出射される。また、光ファイバ7aからの戻り光は、光ファイバ262を経由して双方向光モジュール200内へ出射され、光路を切り替えられて受光素子270へ入射される。
【0066】
以下、本実施形態に係る双方向光モジュール200を構成する各要素について、詳細に説明する。
【0067】
(発光素子212、214、216)
発光素子212、214、216は、光ファイバに入射する光を発する素子であり、例えばレーザダイオード(Laser Diode)を用いて、第1の実施形態に係る発光素子112、114、116と同様に構成することができる。本実施形態において、発光素子212、214は通信波長帯域のうち異なる波長の光をそれぞれ出射し、発光素子216は通信波長帯域以外の波長の光を出射する。発光素子212が発する光の波長をλ、発光素子214が発する光の波長をλ、発光素子216が発する光の波長をλとする。本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、波長λ、λは通信波長、波長λは保守波長とする。発光素子212、214は、例えば図2に示すように、光の出射方向が交差するように配置することができる。また、発光素子216は、例えば図2に示すように、発光素子214と同一面に配置することができる。各発光素子212、214、216から出射された光は直進し、その光路上に配置された部材によって進行方向が切り替えられる。
【0068】
(レンズ222、224、226)
レンズ222、224、226は、光を平行光にするためのレンズであり、例えばコリメータレンズ等を用いて、第1の実施形態に係るレンズ122、124、126と同様に構成することができる。レンズ222は発光素子212から出射された光を平行光にし、レンズ224は発光素子214から出射された光を平行光にし、レンズ226は発光素子216から出射された光を平行光にする。
【0069】
(レンズ225、227、228)
レンズ225、227、228は、光を集光するためのレンズであり、例えば平凸レンズ等を用いて、第1の実施形態に係るレンズ125、127、128と同様に構成することができる。レンズ225は、BPF250により反射された光を集光して光ファイバ262に結合させる。レンズ227は、BPF250を通過した光を集光して光ファイバ264に結合させる。レンズ228は、ビームスプリッタ240により反射された光ファイバ262、264からの戻り光を集光して受光素子270に結合させる。
【0070】
(合分波フィルタ232、234)
合分波フィルタ232、234は、入射された光を合波または分波する素子である。合分波フィルタ232は、発光素子212から出射されて第1面から入射した波長λの光と、発光素子214から出射されて第2面から入射した波長λの光とを合波する。合分波フィルタ232により合波された光は、合分波フィルタ234側へ進行する。合分波フィルタ234は、合分波フィルタ232により合波され第1面から入射した光を通過させ、発光素子216から第2面に入射した波長λの光を反射してビームスプリッタ240側へ進行させる。
【0071】
(ビームスプリッタ240)
ビームスプリッタ240は、光束を複数に分割する光学素子であって、ビームスプリッタ240に入射した光の一部は反射し、一部は透過する。ビームスプリッタ240としては、第1の実施形態と同様、例えば誘電体多層膜を使用した分岐比50:50のハーフミラー等を用いることができる。これにより、ビームスプリッタ240は、入射した光のうち50%の光を透過させ、50%の光を反射する。ビームスプリッタ240の第1面から入射された光のうち、ビームスプリッタ240を透過した光はBPF250側へ進行する。また、ビームスプリッタ240の第2面から入射された光のうち、ビームスプリッタ240を透過した光は合分波フィルタ234側へ進行し、ビームスプリッタ240で反射された光は受光素子270側へ進行する。
【0072】
(BPF250)
BPF250は、所定の波長範囲の光のみを通過可能な素子である。本実施形態のBPF250は、通信波長として使用される波長範囲の光のみを通過可能な特性を有している。したがって、BPF250は、ビームスプリッタ240を透過して進行してきた、通信波長として使用される使用範囲外の波長λの光を反射して、光ファイバ262側へ進行させる。一方、波長λ、λは通信波長として使用される波長範囲内であるため、BPF250は、波長λ、λの光を通過させて光ファイバ264側へ進行させる。
【0073】
(光ファイバ262、264)
光ファイバ262、264は、双方向光モジュール200を被測定光ファイバ7a、7bと接続するために設けられる。光ファイバ262は、レンズ225により光が結合される位置に一端が設けられ、他端が測定コネクタ6aと接続されている。これにより、双方向光モジュール200から所定波長の光を被測定光ファイバ7aへ入射させることができ、被測定光ファイバ7aからの戻り光を双方向光モジュール200へ入射させることができる。レンズ225により光が結合される光ファイバ262の一端は、被測定光ファイバ7aに接続されるポートである。
【0074】
同様に、光ファイバ264は、レンズ227により光が結合される位置に一端が設けられ、他端が測定コネクタ6bと接続されている。これにより、双方向光モジュール200から所定波長の光を被測定光ファイバ7bへ入射させることができ、被測定光ファイバ7bからの戻り光を双方向光モジュール200へ入射させることができる。この光ファイバ262、264は、第1の実施形態の光ファイバ162、164と同様に構成することができる。レンズ227により光が結合される光ファイバ264の一端は、被測定光ファイバ7bに接続されるポートである。
【0075】
(受光素子270)
受光素子170は、光を感知する素子であり、第1の実施形態の受光素子170と同様、例えば、APDを用いることができる。受光素子170は、ビームスプリッタ240に入射して反射された被測定光ファイバ7a、7bからの戻り光を受光する。
【0076】
双方向光モジュール200は、図2に示すように、受光素子212、レンズ222、合分波フィルタ232、234、ビームスプリッタ240、BPF250、レンズ227が同一直線(直線C)上に配置されている。また、直線Cに対して直交する方向に、合分波フィルタ132、レンズ224および発光素子214が一直線上に配置されており、合分波フィルタ234、レンズ226および発光素子216が一直線上に配置されている。さらに、ビームスプリッタ240、レンズ228および受光素子270も、直線Cに対して直交する方向に延びる同一直線上に配置されており、レンズ225およびBPF250も直線Cに対して直交する方向に延びる同一直線上に配置されている。なお、レンズ225は、直線Cに関して受光素子270等と異なる側に配置されている。
【0077】
このように、双方向光モジュール200では、発光素子212、214、216から出射された光が被測定光ファイバ7a、7bと接続される2つのポートに結合するまでの間の空間光内に、本モジュールを構成する素子等が配置されている。
【0078】
[双方向光モジュールを備えた光パルス試験器の動作]
次いで、本実施形態にかかる双方向光モジュール200の機能を、この双方向光モジュール200を備えた光パルス試験器の動作とともに説明する。ここで、光パルス試験器の構成は図3と同様であり、双方向光モジュール1の代わりに本実施形態にかかる双方向光モジュール200が適用されているとする。
【0079】
本実施形態にかかる光パルス試験器は、第1の実施形態に係る光パルス試験器OTDRと同様に、まず、光パルス試験器OTDRの信号処理部4により、LD駆動部2に対してあらかじめパルス光のパルス幅を設定する。次いで、信号処理部4内のタイミング発生手段(図示せず。)により、所定の間隔でタイミング信号をLD駆動部2に送信する。タイミング信号を受信したLD駆動部2は、タイミング信号に同期するように、双方向光モジュール100の発光素子212、発光素子224または発光素子216にパルス光を出力させる。
【0080】
(通信波長による測定)
まず、発光素子212、214から通信波長である波長λ、λのパルス光が出射される場合を説明すると、発光素子212から出射された波長λのパルス光は、レンズ222により平行光とされ、合分波フィルタ232の第1面に入射する。また、発光素子214から出射された波長λのパルス光は、レンズ224により平行光とされ、合分波フィルタ232の第2面に入射する。合分波フィルタ232は、第1面および第2面から入射された各平行光を合波して、合分波フィルタ234側へ進行させる。
【0081】
合分波フィルタ234は、通信波長である波長λ、λの光を透過し、保守波長である波長λの光を反射する特性を有する。したがって、合分波フィルタ232にて合波された光はビームスプリッタ240へ進行する。ビームスプリッタ240は、入射した光の一部を透過してBPF250側へ進行させる。ビームスプリッタ240を透過し、BPF250に入射した光は、通信波長範囲の光を透過しそれ以外の波長範囲にある保守波長の光を反射する特性を有するBPF250の特性により、通信波長である波長λ、λの光のみが透過して、レンズ227により光ファイバ264の一端(ポート)に集光される。このように、通信波長の光は、光ファイバ264に結合され、当該光ファイバ264と接続された被測定光ファイバ7bへ入射される。
【0082】
被測定光ファイバ7bへ入射した波長λ、λの光は、被測定線路の破断点で反射する。この戻り光は、光ファイバ264を介して双方向光モジュール200内へ入射し、レンズ227で再び平行光とされた後、BPF250の第2面へ入射する。BPF250は当該戻り光を透過してビームスプリッタ240側へ進行させる。ビームスプリッタ240に入射した戻り光の一部は受光素子270側に反射され、レンズ228により受光素子270に結合させる。こうして、受光素子270により戻り光を受光すると、サンプリング部3は、双方向光モジュール200の受光素子270からの電気信号(光電流)を電圧に変換してサンプリングする。そして、信号処理部4によりサンプリング結果の電気信号の演算処理が行われ、演算処理の結果が表示部5に表示される。こうして、被測定光ファイバ7bの被測定経路の破断点位置および線路損失を測定する光時間領域反射点測定装置(OTDR)を構成することができる。
【0083】
(保守波長による測定)
次いで、発光素子216から保守波長である波長λのパルス光が出射される場合を説明する。発光素子216から出射された波長λのパルス光は、レンズ226により平行光とされ、合分波フィルタ234の第2面に入射する。合分波フィルタ232は、第2面から入射された波長λの平行光を反射して、ビームスプリッタ240側へ進行させる。ビームスプリッタ240は、上述した通信波長による測定の場合と同様に、入射した光の一部を透過してBPF250側へ進行させる。
【0084】
ビームスプリッタ240を透過し、BPF250に入射した光は、通信波長範囲の光を透過し、通信波長範囲外の保守波長の光を反射する特性を有するBPF250の特性により反射されて、レンズ225により光ファイバ262の一端(ポート)に集光される。したがって、発光素子216から出射された波長λの光は、被測定光ファイバ7bが接続された光ファイバ264側へ進行しない。
【0085】
被測定光ファイバ7aへ入射した波長λの光は、被測定線路の破断点で反射する。この戻り光は、光ファイバ262を介して双方向光モジュール200内へ入射し、レンズ225で再び平行光とされた後、BPF250の第1面へ入射する。BPF250は、当該戻り光を反射してビームスプリッタ240側へ進行させる。ビームスプリッタ240に入射した戻り光の一部は受光素子270側に反射され、レンズ228により受光素子270に結合させる。こうして、受光素子270により戻り光を受光すると、サンプリング部3は、双方向光モジュール200の受光素子270からの電気信号(光電流)を電圧に変換してサンプリングする。そして、信号処理部4によりサンプリング結果の電気信号の演算処理が行われ、演算処理の結果が表示部5に表示される。こうして、被測定光ファイバ7bの被測定経路の破断点位置および線路損失を測定する光時間領域反射点測定装置(OTDR)を構成することができる。
【0086】
このように、光パルス試験器OTDRに本実施形態に係る双方向光モジュール200を用いることにより、実際の通信波長帯と異なる保守波長の光を使用することができ、回線運用中においても通信品質に影響を与えずに保守作業を行うことができる。
【0087】
本実施形態に係る双方向光モジュール200も、第1の実施形態と同様、従来のような複雑な構成をとらずに、合分波フィルタ232、234、ビームスプリッタ240、BPF250を双方向光モジュール200の空間光内に配置した構成となっている。このため、光ファイバの本数を低減することができるので、融着作業、ファイバフォーミング工程を低減することができ、ファイバの曲げ半径を確保する必要もないのでモジュールの小型化を実現することができる。また、発光素子から光ファイバに入射するため空間光にした光学系内にフィルタを配置するので、図4に示す構成と比較して結合損失を大幅に低減することができる。
【0088】
さらに、双方向光モジュール200は、発光素子からファイバに入射させる機能と、フィルタ特性を実現する機能とを併せ持つ構成となっているので、フィルタ特性機能を実現するためにレンズを配置する必要がなく、部品点数の低減および作業工程の低減を実現することができる。
【0089】
また、本実施形態に係る双方向光モジュール200では、BPF250が第1の実施形態に係る双方向光モジュール100のBPF150および合分波フィルタ180の機能を兼ね備えているといえる。したがって、第1の実施形態と比較して、本実施形態の双方向光モジュール200は部品点数を削減することができるので、より作業工程を低減することができる。さらに、ビームスプリッタ240は、発光素子212、214、216から出射され、当該ビームスプリッタ240に入射した光の一部を反射するが、光が反射される方向には光学素子は配置されていない。このように、反射される光を壁に対して逃がすことで、クロストーク特性をよくすることができる。
【0090】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0091】
例えば、上記実施形態では、発光素子から出射される光の波長λ、λ、λの具体例として、1310nm、1550nmの2つの通信波長および1650nmの保守波長を例示したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、通信波長を1310nmの1つの波長のみとしてもよく、1310nm、1490nm、1550nmの3つの波長としてもよい。また、保守波長も例えば1625nm等の波長を用いてもよい。このように、双方向光モジュールの発光素子の数を変化させて出射する光の波長の数を増減してもよく、その光の波長も適宜選択することができる。この場合、合分波フィルタやBPF等の光学素子には、選択された光の波長に応じた特性を有するものを選択すればよい。
【0092】
また、上記実施形態では、合分波フィルタ132、134は短波長の光を通過し長波長の光を反射する特性のものを使用したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、図1の例においては、発光素子1112と発光素子116との配置を入れ替えた場合には、合分波フィルタ132、134に長波長の光を透過して短波長の光を反射する特性を有するものを用いることで、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0093】
さらに、上記第1の実施形態では、BPF150は通信波長の光を反射して保守波長の光を透過する特性を有するものとして説明したが、本発明はかかる例に限定されず、例えば、BPF150の代わりに保守波長の光のみを透過する合分波フィルタを用いてもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、レンズを平行光にする共焦点光学系として説明したが、本発明はかかる例に限定されず、例えば1つのレンズによる単レンズ系で構成しても上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0095】
さらに、上記実施形態では、図1あるいは図2に示すように光学素子を配置した双方向光モジュールについて説明したが、本発明はかかる例に限定されず、例えば、フィルタの角度を変更したり、合分波フィルタの角度を90°変えたりすることにより、双方向光モジュールを構成する光学素子の配置を変更することは可能である。例えば、図2に示す例において、レンズ228および受光素子270を、レンズ227により光が集光される面と同一面側に配置することも可能である。この場合、ビームスプリッタ240の光の反射角度が、被測定光ファイバ7bからの戻り光の一部が受光素子270側に反射されるように調整される。また、例えば、図2に示す例において、発光素子216、レンズ226、受光素子270、レンズ227を、直線Cに関して受光素子214と反対側(すなわち、レンズ225と同一側)に位置するように配置することもできる。この場合、合分波フィルタ234、ビームスプリッタ240の配置を図2の状態から90°変更することで、双方向光モジュールを図2の双方向光モジュール200と同様に機能させることができる。もちろん、これらの変形例以外の形態で光学素子を配置して、本発明の特徴を有する双方向光モジュールを構成することは可能である。
【符号の説明】
【0096】
OTDR 光パルス試験器
2 LD駆動部
3 サンプリング部
4 信号処理部
5 表示部
6a、6b 測定コネクタ
7a、7b 被測定光ファイバ
100、200 光双方向モジュール
112、114、116、212、214、216 発光素子
122、124、126、125、127、128、222、224、226、225、227、228 レンズ
132、134、180、232、234 合分波フィルタ
140、240 ビームスプリッタ
150、250 BPF
162、164、262、264 光ファイバ
170、270 受光素子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバに光を出射し、前記光ファイバから戻り光が入射される双方向光モジュールであって、
前記光ファイバに入射させる、異なる波長の光を発する複数の発光素子と、
前記光ファイバから出射された光を受光する受光素子と、
前記光ファイバがそれぞれ接続される第1のポートおよび第2のポートと、
前記第1のポートおよび前記第2のポートに入射する光の波長範囲を規定する波長フィルタと、
入射された光を複数の光に分岐するビームスプリッタであって、前記複数の発光素子のうち少なくともいずれか1つから出射され当該ビームスプリッタに入射された光を分岐して、前記第1のポートまたは前記第2のポートのうち少なくともいずれか一方へ入射させるとともに、当該ビームスプリッタに入射された、前記第1のポートおよび前記第2のポートに接続された前記各光ファイバからの戻り光を分岐して、前記受光素子に入射させるビームスプリッタと、
を、前記複数の発光素子から出射された光が前記光ファイバに結合する間の空間光内に備えることを特徴とする、双方向光モジュール。
【請求項2】
前記波長フィルタは、
前記第1のポートと前記ビームスプリッタとの間に設けられ、当該第1のポートへ入射させる波長の光を透過し、前記第2のポートへ入射させる波長の光は遮断する第1の波長フィルタと、
前記第2のポートと前記ビームスプリッタとの間に設けられ、当該第2のポートへ入射させる波長の光を透過し、前記第1のポートへ入射させる波長の光は遮断する第2の波長フィルタと、
からなることを特徴とする、請求項1に記載の双方向光モジュール。
【請求項3】
前記第1の波長フィルタおよび前記第2の波長フィルタは、合分波フィルタまたはバンドパスフィルタであることを特徴とする、請求項2に記載の双方向光モジュール。
【請求項4】
前記波長フィルタは、
前記ビームスプリッタと前記第1のポートおよび前記第2のポートとの間に設けられ、
前記第1のポートへ入射させる波長の光を前記第1のポートへ向かって進行させ、前記第2のポートへ入射させる波長の光を前記第2のポートへ向かって進行させることを特徴とする、請求項1に記載の双方向光モジュール。
【請求項5】
前記波長フィルタは、バンドパスフィルタまたは合分波フィルタであることを特徴とする、請求項4に記載の双方向光モジュール。
【請求項6】
前記第1のポートには通信波長範囲の光が入射され、
前記第2のポートには前記通信波長範囲以外の波長の光が入射されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の双方向光モジュール。
【請求項7】
光ファイバの損失特性を試験する光パルス試験器であって、
前記光ファイバに光を出射し、前記光ファイバから戻り光が入射される双方向光モジュールと、
光を所定のタイミングで発生させるように前記双方向光モジュールを駆動する双方向光モジュール駆動部と、
前記双方向光モジュールに入射した光を電気信号に変換する電気信号変換部と、
前記電気信号変換部にて変換された電気信号に基づいて、前記光ファイバの損失特性を算出する信号処理部と、
を備え、
前記双方向光モジュールは、
前記光ファイバに入射させる、異なる波長の光を発する複数の発光素子と、
前記光ファイバから出射された光を受光する受光素子と、
前記光ファイバがそれぞれ接続される第1のポートおよび第2のポートと、
前記第1のポートおよび前記第2のポートに入射する光の波長範囲を規定する波長フィルタと、
入射された光を複数の光に分岐するビームスプリッタであって、前記複数の発光素子のうち少なくともいずれか1つから出射され当該ビームスプリッタに入射された光を分岐して、前記第1のポートまたは前記第2のポートのうち少なくともいずれか一方へ入射させるとともに、当該ビームスプリッタに入射された、前記第1のポートおよび前記第2のポートに接続された前記各光ファイバからの戻り光を分岐して、前記受光素子に入射させるビームスプリッタと、
を、前記複数の発光素子から出射された光が前記光ファイバに結合する間の空間光内に備えることを特徴とする、光パルス試験器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−237659(P2012−237659A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106977(P2011−106977)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(596157780)横河メータ&インスツルメンツ株式会社 (43)
【出願人】(502226380)株式会社オプトハブ (14)
【Fターム(参考)】