説明

反射型液晶表示装置

【課題】イルミネーター内部の光の乱反射により画像品質が低下するのを防止した反射型液晶表示装置を提供する。
【解決手段】筐体11の壁部11aに、偏光板9を透過した偏光成分P1を筐体11の外部へ出射させるための開口部13を設ける。偏光板9から出射され、筐体11の壁部11aに向けて照射された偏光成分P1は、壁部11aに設けられた開口部13をそのまま通り抜けて筐体11の外部へと出射するため、偏光成分P1が壁部11aの表面で乱反射することは無い。従って、乱反射光(偏光成分P2)が液晶パネル1の画像に混入することは無く、色合いの変化やコントラストの低下が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反射型液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
反射型液晶表示パネルは、電子ビューファインダーなどに多く用いられ、近年では、民生用の小型デジタルカメラや業務用の大型高精細カメラなどに幅広く用いられている。
【0003】
図5は従来の反射型液晶表示装置を示す断面図である。液晶パネル1は、第一電極基板2と第二電極基板3とが枠状の周辺接着剤4を介して接着されることで形成された隙間に液晶5が封入されてなる反射型液晶パネルで、第一電極基板2には透明電極(対向電極)と配向膜が形成され、第二電極基板3には反射電極(画素電極)と配向膜が形成されている。液晶パネル1は、回路基板6上に搭載されており、第一電極基板2と回路基板6とが導電接着剤を介して電気的に接続され、第二電極基板3と回路基板6とがボンディングワイヤーを介して電気的に接続されている。
【0004】
回路基板6上には、光源7と拡散板8と偏光板9と偏光ビームスプリッター10とをドーム態様の筐体11に一体的に組み付けてなるイルミネーター12が、液晶パネル1を覆うように搭載されている。偏光ビームスプリッター10は、互いに直交する関係にある二種類の偏光成分P1、P2のうち何れか一方(偏光成分P2)のみを透過させ、他方(偏光成分P1)を反射する反射型偏光板で、偏光方向(偏光軸)の関係が偏光板9とクロスニコルの位置関係、即ち、互いに同じ偏光成分を透過させない位置関係となるように配置されている。
【0005】
以上の反射型液晶表示装置において、光源7より出射された光は、拡散板8を通り面内の均一な光に分散された後、偏光板9を通ることで一方のみの偏光成分P1となり、偏光ビームスプリッター10で反射されて液晶パネル1に照射される。液晶パネル1に照射された偏光成分P1は、第一電極基板2と液晶5を透過し、第二電極基板3上の反射電極に垂直に入射して逆方向へと反射される。逆方向へ反射された偏光成分P1は、液晶5と第一電極基板2を再度透過し、その過程で一部が他方の偏光成分P2へと変換され、偏光ビームスプリッター10を透過して観察者の目に画像として表示される。(例えば、特許文献1〜2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−161915
【特許文献2】特開2004−12723
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図6は従来技術の問題点を説明するための反射型液晶表示装置の斜視面である。従来技術では、光源7より出射された光は、拡散板8を通り面内の均一な光に分散された後、偏光板9を通ることで何れか一方のみの偏光成分P1となり、偏光ビームスプリッター10に向けて照射されるが、その際、偏光成分P1の一部は、筐体11の壁部11aに照射され、その表面で乱反射して一部が他方の偏光成分P2へと変換される。偏光成分P2は、そのまま偏光ビームスプリッター10を通り抜け、液晶パネル1の画像に混入し、色合いを変化させたり、コントラストを低下させたりする。
【0008】
本発明は以上の問題点に鑑みてなされたもので、イルミネーター内部の光の乱反射により画像品質が低下するのを防止した反射型液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
透明電極を有する第一電極基板と反射電極を有する第二電極基板とを所定の間隔で周辺接着剤を介して貼り合わせることで形成された空間に液晶を封入してなる液晶パネルと、当該液晶パネルに光を供給する光源と、当該光源から出射された光のうち一方の偏光成分のみを透過させる偏光板と、当該偏光板を透過した前記一方の偏光成分を前記液晶パネルに向けて反射すると共に、前記一方の偏光成分とは偏光方向が異なる他方の偏光成分を透過させるように配置された偏光ビームスプリッターと、当該偏光ビームスプリッターを保持し、前記液晶パネルを覆うように配置された筐体とを備え、前記液晶パネルの画像を前記偏光ビームスプリッターを透して観察するように構成された反射型液晶表示装置において、前記筐体の壁部に、前記偏光板を透過した前記一方の偏光成分を前記筐体の外部へ出射させるための開口部を設けた反射型液晶表示装置とする。
【0010】
前記開口部は、前記偏光板を透過した前記一方の偏光成分の前記偏光板からの出射方向と直交する方向に位置する前記筐体の壁部に設けられている反射型液晶表示装置とする。
【0011】
前記開口部は、前記開口部を通して前記筐体の内部空間と連通する空洞を備えたカバー部材で塞がれている反射型液晶表示装置とする。
【0012】
前記カバー部材が備えた前記空洞の内面は、前記偏光板を透過した前記一方の偏光成分が当該空洞の内面で乱反射することで生じた他方の偏光成分を、前記偏光ビームスプリッター以外の領域に向けて反射する傾斜面とされている反射型液晶表示装置とする。
【0013】
前記カバー部材が備えた前記空洞の内面は、前記偏光板を透過した前記一方の偏光成分が当該空洞の内面で乱反射することで生じた他方の偏光成分を、前記かバー部材が備えた前記空洞の他の内面又は前記開口部の周囲にある前記筐体の壁部に向けて反射する傾斜面とされている反射型液晶表示装置とする。
【0014】
前記カバー部材が備えた前記空洞の内面は、前記偏光板を透過した前記一方の偏光成分が当該空洞の内面で乱反射することで生じた他方の偏光成分を、前記かバー部材が備えた前記空洞の他の内面又は前記開口部の周囲にある前記筐体の壁部に向けて集光させる曲面とされている反射型液晶表示装置とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、光源より出射された光が筐体の壁部で乱反射するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の反射型液晶表示装置を示す斜視図(実施例1)
【図2】反射型液晶表示装置が組み込まれるビューファインダーの一例を示す図
【図3】本発明の反射型液晶表示装置を示す斜視図(実施例2)
【図4】本発明の反射型液晶表示装置を示す部分斜視図(実施例3)
【図5】従来の反射型液晶表示装置を示す断面図
【図6】従来技術の問題点を説明するための反射型液晶表示装置の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図を参照して本発明の実施形態について説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明の反射型液晶表示装置を示す斜視図である。液晶パネル1は、第一電極基板2と第二電極基板3とが枠状の周辺接着剤4を介して接着されることで形成された隙間に液晶5が封入されてなる反射型液晶パネルで、第一電極基板2には透明電極(対向電極)と配向膜が形成され、第二電極基板3には反射電極(画素電極)と配向膜が形成されている。液晶パネル1は、回路基板6上に搭載されており、第一電極基板2と回路基板6とが導電接着剤を介して電気的に接続され、第二電極基板3と回路基板6とがボンディングワイヤーを介して電気的に接続されている。
【0019】
回路基板6上には、光源7と拡散板8と偏光板9と偏光ビームスプリッター10とをドーム態様の筐体11に一体的に組み付けてなるイルミネーター12が、液晶パネル1を覆うように搭載されている。偏光ビームスプリッター10は、互いに直交する関係にある二種類の偏光成分P1、P2のうち何れか一方(偏光成分P2)のみを透過させ、他方(偏光成分P1)を反射する反射型偏光板で、偏光方向(偏光軸)の関係が偏光板9とクロスニコルの位置関係、即ち、互いに同じ偏光成分を透過させない位置関係となるように配置されている。ここまでの構成は、従来技術と同様である。
【0020】
本実施例1の特徴は、筐体11の壁部11aに、筐体11の内部を外部に連通させる開口部13を設けたことにある。開口部13は、偏光板9からの光の出射方向と直交する方向において互いに対向する二つの壁部11aのそれぞれに、壁部11aの中央部を壁部11aの外形に沿ってくり抜くことで形成されている。尚、開口部13は、何れか一方の壁部11aに設けられていても良い。
【0021】
壁部11aに開口部13を設けることにより、次のような作用が得られる。光源7から発せられた光は、拡散板8と偏光板9を通過し、その一部が筐体11の壁部11aに向かって照射されるが、その際、壁部11aには開口部13が設けられていることから、照射された光(偏光成分P1)は、開口部13を通して、そのまま壁部11aの本来の壁面位置を越えて筐体11の外部へと出射する。従って、従来のように、壁部11aに向けて照射された光(偏光成分P1)が、壁部11aの表面で広い範囲に亘ってで乱反射することは無い。
【0022】
図2は反射型液晶表示装置が組み込まれるビューファインダーの一例を示す図である。反射型液晶表示装置は、例えば、図2に示すようなビューファインダー14の内部に収納されるが、通常、画像を観察するためのファインダー部などを除けば、内部には外部から光が侵入しない構造となっている。従って、反射型液晶表示装置の筐体11に外部と連通する開口部13を設けたとしても、開口部13を通して外部から光が侵入することは無い。
【0023】
また、それとは逆に、筐体11に設けられた開口部13を通して外部へ出射した光は、反射型液晶表示装置を収納するビューファインダーの筐体部分などに吸収されるが、仮にその光がビューファインダーの筐体部分などで反射されて、再び開口部13を通して筐体11の内部へ戻ってきたとしても、その過程で減衰しているため、筐体11の壁部11aで反射した直後の光よりは、画像に与える影響が小さい。
【0024】
尚、筐体11の開口部13を通して外部へ出射した光をビューファインダー13の筐体部分などに確実に吸収させるために、ビューファインダー13の筐体部分などにつや消し黒塗装などの反射防止処理をしておくのも有効である。
【実施例2】
【0025】
図3は本発明の反射型液晶表示装置を示す斜視図である。以下、実施例1と同様の構成については説明を省略し、本実施例において特徴的な構成についてのみ詳細に説明する。
【0026】
本実施例2の特徴は、壁部11aに設けられた開口部13を塞ぐように、筐体11の外部にカバー部材15が取り付けられていることにある。カバー部材15の内側は空洞となっており、開口部13を通して筐体11の内部空間と連通している。
【0027】
本実施例2において、偏光板9から筐体11の壁部11aに向けて出射した偏光成分P1は、壁部11aに設けられた開口部13を通過してカバー部材15の空洞内に入り、カバー部材15の側面15aで乱反射され、一部が偏光成分P2となって再び筐体11の内部へと戻ってくる。しかし、カバー部材15の側面15aは、光源7に対して壁部11aの本来の壁面位置よりも奥まった位置にあるため、その分、光源7から出射された光の光路が長くなり、偏光成分P2は筐体11の内部へ戻ってくる間に減衰し、画像に与える影響が少なくなる。
【0028】
また、カバー部材15の側面15aで反射した光のうち、そこから上方に向かって急峻に立ち上がる光は、カバー部材15の上面15bに突き当たるため、偏光ビームスプリッター10に直接入射することは無い。
【0029】
更に、開口部13の周囲にある壁部11aが遮蔽物となって、カバー部材15の側面15aで反射した光が筐体11の内部へ戻るのが防止される。
【0030】
また、開口部13は、カバー部材15により塞がれているため、開口部13を通して外部から光や塵が侵入することは無い。
【0031】
尚、カバー部材15の内面に黒色塗装などの反射防止処理を施しておけば、カバー部材15の内部で光をより効率的に減衰させることができる。
【実施例3】
【0032】
図4は本発明の反射型液晶表示装置を示す部分斜視図である。本実施例3は、実施例2の変形例であり、以下、実施例2と同様の構成については説明を省略し、本実施例において特徴的な構成についてのみ詳細に説明する。
【0033】
本実施例3の特徴は、カバー部材15の側面15aを偏光ビームスプリッター10とは反対側に向けて傾斜する傾斜面としたことにある。尚、ここでは傾斜面を筐体11の内部に向かって凹となる曲面としているが、平面的な傾斜面であっても良い。
【0034】
傾斜面の傾斜角や曲率は、少なくとも、カバー部材15の側面15aで反射した光(偏光成分P2)が偏光ビームスプリッター10以外の領域に誘導されるように設定されており、本実施例2では、反射光(偏光成分P2)が、開口部13周囲の壁部11aに向かうように設定されている。傾斜面の傾斜角や曲率は、反射光をどこへ向かわせるかに応じて適宜設定すれば良いが、反射光を筐体11の内部へ再度入射させないようにする意味では、反射光を開口部13周囲の壁部11aやカバー部材15のその他の内面(上面や下面)に向けて反射するように設定されているのが好ましい。
【0035】
カバー部材15の側面15aをこのような傾斜面とすれば、カバー部材15の側面15aで反射された光(偏光成分P2)を偏光ビームスプリッター10から離れた領域へ誘導することができるため、偏光ビームスプリッター10へ直接向かう光を減少させることができる。特に傾斜面が曲面であれば、反射光を特定の領域に集光させることで拡散を抑えることもできる。
【0036】
尚、傾斜面とするのは、カバー部材15の側面15aに限らず、上面や下面などのその他の内面であっても良い。
【0037】
また、カバー部材15の形状は、実施例2、3に示したものに限らず、開口部13の形状などに応じて、その他の形状を採用することが可能である。
【0038】
また、カバー部材15は、筐体11に別体として取り付けられたものに限らず、筐体11と一体的に形成されたものであっても良い。
【0039】
また、本発明において、筐体11の壁部11aに設ける開口部13の形状は、円形や四角形などのその他の形状であっても良い。
【0040】
また、開口部13は、壁部11aの一部をくり抜くことで形成されたものに限らず、壁部11a自体を省略すること形成されたものであっても良い。
【0041】
以上説明した本発明による反射型液晶表示装置は、あくまで実施例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、光源7、拡散板8、偏光板9、偏光ビームスプリッター10、液晶パネル1などの位置関係は、実施例に示したものに限らず、光学設計に応じて適宜変更され得るものである。また、拡散板8は、必須要素ではなく、省略することが可能である。また、液晶パネル1は、画素電極が反射電極で構成された反射型液晶パネルに限らず、画素電極が透明電極で構成された透過型液晶パネルであっても良い。
【符号の説明】
【0042】
1 液晶パネル
2 第一電極基板
3 第二電極基板
4 周辺接着剤
5 液晶
6 回路基板
7 光源
8 拡散板
9 偏光板
10 偏向ビームスプリッター(反射型偏光板)
11 筐体
11a 壁部
12 イルミネーター
13 開口部
14 ビューファインダー
15 カバー部材
15a 側面
15b 上面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明電極を有する第一電極基板と反射電極を有する第二電極基板とを所定の間隔で周辺接着剤を介して貼り合わせることで形成された空間に液晶を封入してなる液晶パネルと、
当該液晶パネルに光を供給する光源と、
当該光源から出射された光のうち一方の偏光成分のみを透過させる偏光板と、
当該偏光板を透過した前記一方の偏光成分を前記液晶パネルに向けて反射すると共に、前記一方の偏光成分とは偏光方向が異なる他方の偏光成分を透過させるように配置された偏光ビームスプリッターと、
当該偏光ビームスプリッターを保持し、前記液晶パネルを覆うように配置された筐体とを備え、
前記液晶パネルの画像を前記偏光ビームスプリッターを透して観察するように構成された反射型液晶表示装置において、
前記筐体の壁部に、前記偏光板を透過した前記一方の偏光成分を前記筐体の外部へ出射させるための開口部を設けたことを特徴とする反射型液晶表示装置。
【請求項2】
前記開口部は、前記偏光板を透過した前記一方の偏光成分の前記偏光板からの出射方向と直交する方向に位置する前記筐体の壁部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の反射型液晶表示装置。
【請求項3】
前記開口部は、前記開口部を通して前記筐体の内部空間と連通する空洞を備えたカバー部材で塞がれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の反射型液晶表示装置。
【請求項4】
前記カバー部材が備えた前記空洞の内面は、前記偏光板を透過した前記一方の偏光成分が当該空洞の内面で乱反射することで生じた他方の偏光成分を、前記偏光ビームスプリッター以外の領域に向けて反射する傾斜面とされていることを特徴とする請求項3に記載の反射型液晶表示装置。
【請求項5】
前記カバー部材が備えた前記空洞の内面は、前記偏光板を透過した前記一方の偏光成分が当該空洞の内面で乱反射することで生じた他方の偏光成分を、前記かバー部材が備えた前記空洞の他の内面又は前記開口部の周囲にある前記筐体の壁部に向けて反射する傾斜面とされていることを特徴とする請求項4に記載の反射型液晶表示装置。
【請求項6】
前記カバー部材が備えた前記空洞の内面は、前記偏光板を透過した前記一方の偏光成分が当該空洞の内面で乱反射することで生じた他方の偏光成分を、前記かバー部材が備えた前記空洞の他の内面又は前記開口部の周囲にある前記筐体の壁部に向けて集光させる曲面とされていることを特徴とする請求項5に記載の反射型液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−88747(P2013−88747A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231439(P2011−231439)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000166948)シチズンファインテックミヨタ株式会社 (438)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】