説明

反応染料組成物及びそれを用いる染色法

【課題】セルロース繊維含有繊維を再現性よく、均染性もよく、高堅牢度に染色する反応染料組成物及びそれを用いた染色法の提供。
【解決手段】下式で示される特定の染料を含有する赤色反応性染料組成物や、




(Y1〜Y3はSO2CH=CH2等を表す)あるいは青色等の反応性染料組成物等、並びに該組成物を用いる染色方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維又はセルロース繊維含有繊維の染色に適する特定の赤色用反応染料を含有する反応染料組成物及びそれを用いる染色法に関する。
【背景技術】
【0002】
反応染料を用いるセルロース繊維の染色においては、黄色、赤色、及び、青色又は紺色の反応染料を三原色用染料として用い、それらを種々の割合で配合して染色する方法が知られている。
【0003】
三原色に使用される反応染料に関しては、各染料のビルドアップ性や均染性が優れていること、三原色の染着速度がほぼ等しく温度依存性が揃っていること、三原色の諸堅牢度が優れていることが必要とされてきている。更に、実工程に対応出来ることが特に必要とされる。つまり、一般的に製品に使用する染色には実験室スケール(概ね5〜30g)、中実験スケール(概ね3〜20kg)、工場スケール(概ね100〜1000kg)のステップ段階を踏むが、このスケールに由来する又はセルロース含有材料のセルロース混率による染色浴比を一定にするのは極めて困難である。
【0004】
しかるに、従来の三原色用染料として使用する各染料のセルロース繊維に対する親和性は異なり、染着挙動が異なるため、染色浴比の変化に伴う濃度や色相の変化による色違いの問題が生じ、色修正・脱色修正が現場では頻繁に行われているのが現状である。その為、同一の染色浴比変化挙動を示す三原色が染色現場では強く望まれている。
又、染色浴比に伴う問題とは別に、アルカリ添加温度による色違いの問題があり、実験室スケールと工場スケールでの再現性不良も起こっている。
【0005】
このような問題を解決するために、例えば下記の特許文献では様々な検討がなされているが、未だ満足な結果は得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3168624号公報
【特許文献2】特公平1−24826号公報
【特許文献3】特公平1−12787号公報
【特許文献4】特開昭56−128380号公報
【特許文献5】欧州特許第22575号公報
【特許文献6】特開昭56−15481号公報
【特許文献7】特開2004−269863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記の問題を解決し、セルロース繊維又はセルロース繊維含有繊維を再現性よく、均染性もよく、高堅牢度に染色する反応染料組成物及びそれを用いた染色法の開発を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的のために、本発明者等は鋭意研究の結果、特定の赤色用反応染料を含有する反応染料組成物、該反応染料組成物と特定の青色用若しくは紺色用反応染料を含有する反応染料組成物及び/又は特定の黄色用反応染料を含有する反応染料組成物とを組み合わせて含有する反応染料組成物及びそれを用いる染色方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は以下の1)〜11)に関する。
1)遊離酸の形が式(1)で示される反応染料が10重量%〜90重量%、遊離酸の形が式(2)で示される反応染料が10重量%〜90重量%である赤色用反応染料を含有する反応染料組成物。
【化1】

[式中、YはSOCH=CH又はSOCHCHZを表し、Zはアルカリで脱離する基を表す]
【化2】

[式中、Y、Yはそれぞれ独立にSOCH=CH又はSOCHCHZを表し、Zはアルカリで脱離する基を表す]
【0010】
2)赤色用反応染料が、遊離酸の形が式(1)で示される反応染料が20重量%〜50重量%、遊離酸の形が式(2)で示される反応染料が50重量%〜80重量%である前記1)記載の反応染料組成物。
3)前記1)又は2)に記載の赤色用反応染料と、遊離酸の形が式(3)で示される反応染料が10重量%〜90重量%で、遊離酸の形が式(4)及び式(5)で示される反応染料からなる群から選ばれる1種以上の反応染料が10重量%〜90重量%である青色用反応染料とを含有する反応染料組成物。
【化3】

[式中、Rは水素原子、ハロゲン原子又は(C1〜C4)アルコキシ基を表し、YはSOCH=CH又はSOCHCHZを表し、Zはアルカリで脱離する基を表す]
【化4】

[式中、YはSOCH=CH又はSOCHCHZを表し、Zはアルカリで脱離する基を表す]
【化5】

[式中、Rは水素原子又は(C1〜C4)アルキル基を表し、YはSOCH=CH又はSOCHCHZを表し、Zはアルカリで脱離する基を表す]
【0011】
4)青色用反応染料が、遊離酸の形が式(3)で示される反応染料が10重量%〜30重量%で、遊離酸の形が式(4)及び式(5)で示される反応染料からなる群から選ばれる1種以上の反応染料が70重量%〜90重量%である前記3)記載の反応染料組成物。
5)青色用反応染料が、遊離酸の形が式(3)で示される反応染料が10重量%〜30重量%、遊離酸の形が式(4)で示される反応染料が50%〜60重量%及び遊離酸の形が式(5)で示される反応染料が20重量%〜30重量%である前記3)又は4)に記載の反応染料組成物。
【0012】
6)前記1)又は2)に記載の赤色反応染料と、遊離酸の形が式(4)で示される反応染料が5重量%〜95%重量%及び遊離酸の形が式(6)で示される反応染料が5重量%〜95%重量%である紺色用反応染料とを含有する反応染料組成物。
【化6】

[式中、YはSOCH=CH又はSOCHCHZを表し、Zはアルカリで脱離する基を表す]
7)紺色用反応染料が、遊離酸の形が式(4)で示される反応染料が80重量%〜95%重量%及び遊離酸の形が式(6)で示される反応染料が5重量%〜20%重量%である前記6)記載の反応染料組成物。
【0013】
8)前記1)又は2)に記載の赤色用反応染料と、遊離酸の形が式(7)で示される黄色用反応染料とを含有する反応染料組成物。
【化7】

[式中、YはSOCH=CH又はSOCHCHZを表し、Zはアルカリで脱離する基を表す]
9)前記3)〜5)のいずれか一項に記載の反応染料組成物に、更に遊離酸の形が式(7)で示される黄色反応染料を含有する反応染料組成物。
10)前記6)又は7)に記載の反応染料組成物に、更に遊離酸の形が式(7)で示される黄色反応染料を含有する反応染料組成物。
11)前記1)〜10)のいずれか一項に記載の反応染料組成物を用いることを特徴とするセルロース繊維又はセルロース繊維含有繊維の染色方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の反応染料組成物及びそれを用いる染色方法により、染色浴比の変化による色相の変化が無く、且つ、濃度補正をする係数を掛け合わせて染色することで常に同様な濃度、色相を得ることが出来、更に、アルカリ添加温度による色相変化も無く、セルロース繊維又はセルロース繊維含有繊維を再現性よく且つ高堅牢度に染色出来るものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、遊離酸の形が前記式(1)で示される反応染料が10重量%〜90重量%、遊離酸の形が前記式(2)で示される反応染料が10重量%〜90重量%である赤色用反応染料を含有する反応染料組成物である。該反応染料組成物に含有される遊離酸の形が式(1)で示される反応染料は、例えば特許文献5等に、遊離酸の形が式(2)で示される反応染料は、例えば特公平7−91483号公報等に記載されており、又、商業的に入手可能である。しかしながら、それらの染料を含有する反応染料組成物は知られていない。該反応染料組成物には式(1)で示される反応染料を10重量%〜90重量%、式(2)で示される反応染料を10重量%〜90重量%含有する。特に式(1)で示される反応染料を20重量%〜50重量%、式(2)で示される反応染料を50重量%〜80重量%含有するのが好ましい。
【0016】
更に本発明は、前記の赤色用反応染料と、遊離酸の形が前記式(3)で示される反応染料が10重量%〜90重量%で、遊離酸の形が前記式(4)及び前記式(5)で示される反応染料からなる群から選ばれる1種以上の反応染料が10重量%〜90重量%である青色用反応染料とを含有する反応染料組成物である。該青色用反応染料に含有される遊離酸の形が式(3)で示される反応染料は、例えば特許文献2等に、遊離酸の形が式(4)で示される反応染料は、例えば特許文献3及び4等に、遊離酸の形が式(5)で示される反応染料は、例えば特公平3−10669号公報等に記載されており、又、商業的に入手可能である。該青色用反応染料に含有される式(3)〜式(5)で示される反応染料は、式(3)で示される反応染料を10重量%〜90重量%、式(4)及び式(5)で示される反応染料からなる群から選ばれる1種以上の反応染料を10重量%〜90重量%含有する。式(3)で示される反応染料を10重量%〜30重量%、式(4)及び式(5)で示される反応染料からなる群から選ばれる1種以上の反応染料を70重量%〜90重量%含有するのが好ましく、式(3)で示される反応染料を10重量%〜30重量%、式(4)で示される反応染料を50重量%〜60重量%及び式(5)で示される反応染料を20%重量%〜30重量%含有するのが殊更好ましい。
【0017】
更に本発明には、前記の赤色反応染料と、遊離酸の形が前記式(4)で示される反応染料が5重量%〜95%重量%及び遊離酸の形が前記式(6)で示される反応染料が5重量%〜95%重量%である紺色用反応染料とを含有する反応染料組成物である。式(4)で示される反応染料は前記の通りである。式(6)で示される反応染料はC.I.Reactive Black 5として知られる化合物であり、商業的に入手可能である。該紺色用反応染料には式(4)で示される反応染料が5重量%〜95重量%、式(6)で示される反応染料が5重量%〜95重量%含有する。式(4)で示される反応染料を80重量%〜95重量%、式(6)で示される反応染料を5重量%〜20重量%含有するのが好ましい。
【0018】
更に本発明は、前記の赤色反応染料と、遊離酸の形が前記式(7)で示される黄色用反応染料とを含有する反応染料組成物である。該式(7)で示される黄色反応染料は、例えば特許文献6等に記載されており、又、商業的に入手可能である。
【0019】
更に本発明の反応染料組成物には、前記の赤色用反応染料と前記の青色用反応染料と前記の黄色用反応染料とを含有する反応染料組成物、又は、前記の赤色用反応染料と前記の紺色用反応染料と前記の黄色用反応染料とを含有する反応染料組成物を含む。
【0020】
本発明の反応染料組成物に含有される式(1)〜式(7)で示される反応染料において、Y、Y、Y、Y、Y、Y、Y、YはSOCH=CH又はSOCHCHZであり、Zはアルカリで脱離する基である。Zがアルカリで脱離するとSOCH=CHとなる。Zとしては脱離基として知られる各種の基が使用可能であるが、例えば、OSOH等が挙げられる。
【0021】
本発明の反応染料組成物に含有される式(3)で示される反応染料において、Rは水素原子、ハロゲン原子又は(C1〜C4)アルコキシ基を表す。該ハロゲン原子としては塩素原子、臭素原子等が挙げられる。該(C1〜C4)アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基等が挙げられる。Rとしては水素原子が好ましい。
【0022】
本発明の反応染料組成物に含有される式(5)で示される反応染料において、Rは水素原子又は(C1〜C4)アルキル基を表す。該(C1〜C4)アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。Rとしてはエチル基が好ましい。
、Y、Y、Y、Y、Y、Rの置換位置は置換可能な位置であれば特に限定されない。
【0023】
本発明の反応染料組成物に含有される式(1)〜(7)で示される反応染料は遊離酸の形で示しているが、塩であってもよく、その対カチオンは特に限定されない。中でもアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が好ましく、特にナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩が好ましい。
【0024】
本発明の反応染料組成物において各反応染料の配合方法は特に限定されない。例えば、それぞれの反応染料を別々に製造し、その後に配合する方法;製造時生成した各反応染料を含有した反応液を混合し、その後に乾燥して組成物とする方法;染色浴にそれぞれの反応染料を溶解し、染色浴中で各組成物と同じ組成とする方法等を採ることが出来る。その際に、各反応染料組成物の混合割合は、所望の色調に応じて適宜行われる。又、必要に応じて、本発明の組成物中には公知の添加剤、例えば、濃度調整剤、分散剤、均染剤、沈殿防止剤、金属イオン封鎖剤、還元防止剤等を含有させてもよい。
【0025】
染浴、パディング浴、捺染糊に本発明の反応染料組成物を構成する各染料及び必要に応じて前記の添加剤等を加え、染浴等を調製して染色する場合に、各染料、添加剤等を溶解する順序は任意の順序でよい。使用する各構成成分の使用量も公知の方法を参考にして決めればよい。
【0026】
本発明の反応染料組成物を用いた染色法においてそれらの使用量は通常、繊維重量に対して0.0005〜15重量%程度である。
【0027】
本発明の反応染料組成物はセルロース繊維やそれを含有する繊維に有用である。対象となる繊維としては、例えば、木綿、麻、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル等のセルロース繊維、又は、これら同士の混合繊維が挙げられる。更にはこれらの繊維又は混合繊維と他の繊維、例えば、ポリエステル繊維、アセテート繊維、ポリアクリルニトリル繊維、羊毛、絹、ナイロン等のポリアミド繊維等との混紡、又は、交織品等が挙げられる。
【0028】
本発明には前記の反応染料組成物を用いることを特徴とするセルロース繊維又はセルロース繊維含有繊維の染色方法も含まれる。
該反応染料組成物を用いる染色は、例えば、それ自体は公知の下記のような方法に従って行うことが出来るが、これらに限定されるものではない。例えば、木綿等のセルロース繊維の染色においては所望の色相及び濃度に応じた本発明の反応染料組成物を染浴に加え、無機中性塩、例えば、無水芒硝、食塩等と、酸結合剤、例えば、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、苛性ソーダ、第三燐酸ナトリウム等をそれぞれ単独に、又は、併用して行う。この時用いる無機中性塩や酸結合剤の使用量についても特に制限はない。又、無機中性塩や酸結合剤の染浴への投入は一度に行ってもよいし、分割して投入してもよい。
染色工程終了後、水洗、湯染の後、常法により、市販のソーピング剤を含むソーピング浴にて洗浄を行い、染色を終了する。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
本実施例では本発明の式(1)〜(7)で示される反応染料として、以下の式(A)〜(G)で示される反応染料を用いた。
尚、本文中「部」は特別な記載がない限り重量部を表わす。表中、C.I.Reactiveはカラーインデックスジェネリックネームを意味する。
【0030】
【化8】

【0031】
【化9】

【0032】
【化10】

【0033】
【化11】

【0034】
【化12】

【0035】
【化13】

【0036】
【化14】

【0037】
実施例1
反応染料の配合組成
表1に反応染料の組み合わせ及びそれらの使用量を記した。
[表1]配合組成
本発明配合例1 Brown
赤色用反応染料
式(1)の染料 0.10部
式(2)の染料 0.18部
青色用反応染料
式(3)の染料 0.10部
式(5)の染料 0.28部
黄色用反応染料
式(7)の染料 1.12部
【0038】
本発明配合例2 Brown
赤色用反応染料
式(1)の染料 0.12部
式(2)の染料 0.14部
紺色用反応染料
式(4)の染料 0.37部
式(6)の染料 0.04部
黄色用反応染料
式(7)の染料 1.14部
【0039】
本発明配合例3 Grey
赤色用反応染料
式(1)の染料 0.12部
式(2)の染料 0.33部
青色用反応染料
式(3)の染料 0.26部
式(4)の染料 0.71部
式(5)の染料 0.35部
黄色用反応染料
式(7)の染料 0.75部
【0040】
本発明配合例4 Grey
赤色用反応染料
式(1)の染料 0.09部
式(2)の染料 0.26部
紺色用反応染料
式(4)の染料 0.93部
式(6)の染料 0.11部
黄色用反応染料
式(7)の染料 0.60部
【0041】
比較例1
比較配合例1 Brown
赤色用反応染料
C.I.Reactive Red 195 0.50部
青色用反応染料
C.I.Reactive Blue 220 0.40部
黄色用反応染料
C.I.Reactive Yellow 145 1.21部
【0042】
比較配合例2 Grey
赤色用反応染料
C.I.Reactive Red 195 0.50部
青色用反応染料
C.I.Reactive Blue 5 0.70部
黄色用反応染料
C.I.Reactive Yellow 145 0.64部
【0043】
比較配合例3 Brown
赤色用反応染料
式(2)の染料 0.40部
青色用反応染料
C.I.Reactive Blue 220 0.35部
黄色用反応染料
C.I.Reactive Yellow 145 0.68部
【0044】
比較配合例4 Grey
赤色用反応染料
C.I.Reactive Red 195 0.40部
青色用反応染料
C.I.Reactive Blue 221 0.28部
黄色用反応染料
C.I.Reactive Yellow 145 0.68部
【0045】
比較配合例5 Brown
赤色用反応染料
式(2)の染料 0.40部
青色用反応染料
C.I.Reactive Blue 221 0.35部
黄色用反応染料
C.I.Reactive Yellow 145 0.68部
【0046】
浴比依存性試験法について説明する。
(1)浴比1:10での染色
表1に示す各配合組成の染料及び無水硫酸ナトリウム10部に水を加えて全量490部の染浴を調製した。この染浴に木綿メリヤス50部を投入し、60℃で15分間処理後、炭酸ナトリウム10部を投入し、同温度で60分間染色した。次いで、水洗、湯洗の後、市販のソーピング剤(スコアロールC−1200 北広ケミカル(株)1g/L)を含む水溶液1000部中で100℃にて15分間のソーピングをし、次いで水洗、乾燥して染色物を得た。
【0047】
(2)浴比1:30での染色
表1に示す各配合組成の染料及び無水硫酸ナトリウム30部に水を加えて全量1470部の染浴を調製した。この染浴に木綿メリヤス50部を投入し、60℃で15分間処理後、炭酸ナトリウム30部を投入し、同温度で60分間染色した。次いで、水洗、湯洗の後、前記ソーピング剤を含む水溶液1000部中で100℃にて15分間のソーピングをし、次いで水洗、乾燥して染色物を得た。
【0048】
(3)浴比1:60での染色
表1に示す各配合組成の染料及び無水硫酸ナトリウム60部に水を加えて全量2940部の染浴を調製した。この染浴に木綿メリヤス50部を投入し、60℃で15分間処理後、炭酸ナトリウム60部を投入し、同温度で60分間染色した。次いで、水洗、湯洗の後、前記ソーピング剤を含む水溶液1000部中で100℃にて15分間のソーピングをし、次いで水洗、乾燥して染色物を得た。
【0049】
(4)浴比1:60で濃度補正した染色
(3)の浴比1:60の条件で表1に示す各配合組成の染料を1.33倍使用して染色し染色物を得た。浴比を1:30から1:60にすると濃度が3/4になるので染料を1.33倍使用して濃度補正した。
【0050】
(5)判定方法
(1)の浴比1:10で得られた染色物を基準にそれぞれの条件で得られた染色物の色相差を、測色機カラ−アイCE7100(マクベス社製)、D65光源下、C.I.E色差式を使用して求め、色相差ΔEa*b*及び色差ΔEを表2に示した。
【0051】
[表2]

ΔEa*b*、ΔEの値は0に近いほど優れる。
1:60濃度補正後のΔEは、0.7以下であれば相当優れた水準である。
【0052】
実施例2
反応染料の配合組成
表3に反応染料の組み合わせ及びそれらの使用量を記した。
[表3]配合組成
本発明配合例5 Brown
赤色用反応染料
式(1)の染料 0.29部
式(2)の染料 0.85部
青色用反応染料
式(3)の染料 0.31部
式(4)の染料 0.83部
式(5)の染料 0.39部
黄色用反応染料
式(7)の染料 3.78部
【0053】
本発明配合例6 Brown
赤色用反応染料
式(1)の染料 0.20部
式(2)の染料 0.72部
青色用反応染料
式(3)の染料 0.40部
式(5)の染料 1.19部
黄色用反応染料
式(7)の染料 3.58部
【0054】
本発明配合例7 Brown
赤色用反応染料
式(1)の染料 0.26部
式(2)の染料 0.80部
紺色用反応染料
式(4)の染料 1.10部
式(6)の染料 0.13部
黄色用反応染料
式(7)の染料 3.42部
【0055】
本発明配合例8 Grey
赤色用反応染料
式(1)の染料 0.32部
式(2)の染料 1.00部
青色用反応染料
式(3)の染料 0.79部
式(4)の染料 2.14部
式(5)の染料 1.03部
黄色用反応染料
式(7)の染料 2.25部
【0056】
本発明配合例9 Grey
赤色用反応染料
式(1)の染料 0.29部
式(2)の染料 0.90部
青色用反応染料
式(3)の染料 0.79部
式(4)の染料 2.82部
黄色用反応染料
式(7)の染料 2.12部
【0057】
本発明配合例10 Grey
赤色用反応染料
式(1)の染料 0.27部
式(2)の染料 0.90部
紺色用反応染料
式(4)の染料 2.80部
式(6)の染料 0.32部
黄色用反応染料
式(7)の染料 1.80部
【0058】
比較例2
比較配合例6 Brown
赤色用反応染料
C.I.Reactive Red 195 1.50部
青色用反応染料
C.I.Reactive Blue 221 1.20部
黄色用反応染料
C.I.Reactive Yellow 145 3.63部
【0059】
比較配合例7 Brown
赤色用反応染料
C.I.Reactive Red 195 1.62部
青色用反応染料
C.I.Reactive Blue 220 1.88部
黄色用反応染料
C.I.Reactive Yellow 145 3.70部
【0060】
比較配合例8 Brown
赤色用反応染料
C.I.Reactive Red 195 1.44部
青色用反応染料
C.I.Reactive Blue 5 0.84部
黄色用反応染料
C.I.Reactive Yellow 145 3.90部
【0061】
比較配合例9 Grey
赤色用反応染料
C.I.Reactive Red 195 1.89部
青色用反応染料
C.I.Reactive Blue 221 3.05部
黄色用反応染料
C.I.Reactive Yellow 145 1.83部
【0062】
アルカリ添加温度依存性試験法について説明する。
(1)アルカリ(炭酸ナトリウム) 60℃添加での染色
表3に示す各配合組成の染料及び無水硫酸ナトリウム40部に水を加えて全量490部の染浴を調製した。この染浴に木綿メリヤス50部を投入し、20分間で60℃へ昇温した。60℃で10分間処理後、炭酸ナトリウム10部を投入し、同温度で60分間染色した。次いで、水洗、湯洗の後、市販のソーピング剤(スコアロールC−1200 北広ケミカル(株)1g/L)を含む水溶液1000部中で100℃にて15分間のソーピングをし、次いで水洗、乾燥して染色物を得た。
【0063】
(2)アルカリ(炭酸ナトリウム) 40℃添加での染色
表3に示す各配合組成の染料及び無水硫酸ナトリウム40部に水を加えて全量490部の染浴を調製した。この染浴に木綿メリヤス50部を投入し、40℃で20分間処理後、炭酸ナトリウム10部を投入し、20分間で60℃へ昇温した。同温度で60分間染色し、次いで、水洗、湯洗の後、前記のソーピング剤を含む水溶液1000部中で100℃にて15分間のソーピングをし、次いで水洗、乾燥して染色物を得た。
【0064】
(3)判定方法
60℃添加で得られた染色物を基準に、40℃添加で得られた染色物の色相差を、測色機カラ−アイCE7100(マクベス社製)、D65光源下、C.I.E色差式を使用して求め、色差ΔEを表4に示した。
【0065】
[表4]

ΔEの値は0に近いほど優れ、0.7以下であれば相当優れた水準である。
【0066】
表2及び表4から明らかなように、本発明の配合例1、2、3、4、5、6、7、8、9、10の組み合わせで染色を行った場合、赤色用反応染料、青色用反応染料若しくは紺色用反応染料、黄色用反応染料の親和性が一致しており、浴比が大きく変動した場合でも濃度補正をしても色相変化が極めて小さく、又、アルカリ添加温度が変動した場合でも色相変化が極めて小さく、染色再現性が極めて優れている。
【0067】
実施例3〜実施例12
実施例1の配合例の組み合わせ及び使用量に替えて、表5に示す染料の組み合わせ及び使用量を用い、無水硫酸ナトリウム15部に水を加えて全量490部の染浴をそれぞれ調製した。この染浴に木綿メリヤス50部を投入し、20分間で60℃へ昇温した。60℃で10分間処理後、炭酸ナトリウム10部を投入し、同温度で60分間染色した。次いで、水洗、湯洗の後、市販のソーピング剤(スコアロールC−1200 北広ケミカル(株)1g/L)を含む水溶液500部中で100℃にて15分間のソーピングをし、次いで水洗、乾燥して染色物を得た。
【0068】
[表5]配合組成
実施例3 グリーン
赤色用反応染料
式(1)の染料 0.08部
式(2)の染料 0.18部
青色用反応染料
式(3)の染料 0.16部
式(5)の染料 0.64部
黄色用反応染料
式(7)の染料 0.8部
【0069】
実施例4 バイオレット
赤色用反応染料
式(1)の染料 0.20部
式(2)の染料 0.55部
青色用反応染料
式(3)の染料 0.20部
式(4)の染料 0.50部
黄色用反応染料
式(7)の染料 0.20部
【0070】
実施例5 エンジ色
赤色用反応染料
式(1)の染料 0.30部
式(2)の染料 0.85部
青色用反応染料
式(3)の染料 0.04部
式(4)の染料 0.11部
式(5)の染料 0.06部
黄色用反応染料
式(7)の染料 0.35部
【0071】
実施例6 カーキー色
赤色用反応染料
式(1)の染料 0.09部
式(2)の染料 0.21部
青色用反応染料
式(3)の染料 0.06部
式(4)の染料 0.20部
式(5)の染料 0.09部
黄色用反応染料
式(7)の染料 0.10部
【0072】
実施例7 ネービー
赤色用反応染料
式(1)の染料 0.20部
式(2)の染料 0.58部
青色用反応染料
式(3)の染料 0.44部
式(4)の染料 0.88部
式(5)の染料 0.35部
黄色用反応染料
式(7)の染料 0.80部
【0073】
実施例8 グリーン
赤色用反応染料
式(1)の染料 0.04部
式(2)の染料 0.12部
紺色用反応染料
式(4)の染料 0.70部
式(6)の染料 0.10部
黄色用反応染料
式(7)の染料 0.80部
【0074】
実施例9 バイオレット
赤色用反応染料
式(1)の染料 0.15部
式(2)の染料 0.42部
紺色用反応染料
式(4)の染料 0.52部
式(6)の染料 0.08部
黄色用反応染料
式(7)の染料 0.20部
【0075】
実施例10 エンジ色
赤色用反応染料
式(1)の染料 0.26部
式(2)の染料 0.77部
紺色用反応染料
式(4)の染料 0.105部
式(6)の染料 0.015部
黄色用反応染料
式(7)の染料 0.30部
【0076】
実施例11 カーキー色
赤色用反応染料
式(1)の染料 0.08部
式(2)の染料 0.20部
紺色用反応染料
式(4)の染料 0.17部
式(6)の染料 0.03部
黄色用反応染料
式(7)の染料 0.90部
【0077】
実施例12 ネービー
赤色用反応染料
式(1)の染料 0.16部
式(2)の染料 0.55部
紺色用反応染料
式(4)の染料 1.75部
式(6)の染料 0.20部
黄色用反応染料
式(7)の染料 0.65部
【0078】
試験結果
実施例3〜12で得られた染色物について浴比依存性試験及びアルカリ添加温度依存性試験を行ったところ、いずれの反応染料の組み合わせにおいても浴比が大きく変動した場合でも色相変化が極めて小さく、又、アルカリ添加温度が変動した場合でも色相変化が極めて小さく、染色再現性が極めて優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離酸の形が式(1)で示される反応染料が10重量%〜90重量%、遊離酸の形が式(2)で示される反応染料が10重量%〜90重量%である赤色用反応染料を含有する反応染料組成物。
【化1】

[式中、YはSOCH=CH又はSOCHCHZを表し、Zはアルカリで脱離する基を表す]
【化2】

[式中、Y、Yはそれぞれ独立にSOCH=CH又はSOCHCHZを表し、Zはアルカリで脱離する基を表す]
【請求項2】
赤色用反応染料が、遊離酸の形が式(1)で示される反応染料が20重量%〜50重量%、遊離酸の形が式(2)で示される反応染料が50重量%〜80重量%である請求項1記載の反応染料組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の赤色用反応染料と、遊離酸の形が式(3)で示される反応染料が10重量%〜90重量%で、遊離酸の形が式(4)及び式(5)で示される反応染料からなる群から選ばれる1種以上の反応染料が10重量%〜90重量%である青色用反応染料とを含有する反応染料組成物。
【化3】

[式中、Rは水素原子、ハロゲン原子又は(C1〜C4)アルコキシ基を表し、YはSOCH=CH又はSOCHCHZを表し、Zはアルカリで脱離する基を表す]
【化4】

[式中、YはSOCH=CH又はSOCHCHZを表し、Zはアルカリで脱離する基を表す]
【化5】

[式中、Rは水素原子又は(C1〜C4)アルキル基を表し、YはSOCH=CH又はSOCHCHZを表し、Zはアルカリで脱離する基を表す]
【請求項4】
青色用反応染料が、遊離酸の形が式(3)で示される反応染料が10重量%〜30重量%で、遊離酸の形が式(4)及び式(5)で示される反応染料からなる群から選ばれる1種以上の反応染料が70重量%〜90重量%である請求項3記載の反応染料組成物。
【請求項5】
青色用反応染料が、遊離酸の形が式(3)で示される反応染料が10重量%〜30重量%、遊離酸の形が式(4)で示される反応染料が50%〜60重量%及び遊離酸の形が式(5)で示される反応染料が20重量%〜30重量%である請求項3又は4に記載の反応染料組成物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の赤色反応染料と、遊離酸の形が式(4)で示される反応染料が5重量%〜95%重量%及び遊離酸の形が式(6)で示される反応染料が5重量%〜95%重量%である紺色用反応染料とを含有する反応染料組成物。
【化6】

[式中、YはSOCH=CH又はSOCHCHZを表し、Zはアルカリで脱離する基を表す]
【請求項7】
紺色用反応染料が、遊離酸の形が式(4)で示される反応染料が80重量%〜95%重量%及び遊離酸の形が式(6)で示される反応染料が5重量%〜20%重量%である請求項6記載の反応染料組成物。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の赤色用反応染料と、遊離酸の形が式(7)で示される黄色用反応染料とを含有する反応染料組成物。
【化7】

[式中、YはSOCH=CH又はSOCHCHZを表し、Zはアルカリで脱離する基を表す]
【請求項9】
請求項3〜5のいずれか一項に記載の反応染料組成物に、更に遊離酸の形が式(7)で示される黄色反応染料を含有する反応染料組成物。
【請求項10】
請求項6又は7に記載の反応染料組成物に、更に遊離酸の形が式(7)で示される黄色反応染料を含有する反応染料組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の反応染料組成物を用いることを特徴とするセルロース繊維又はセルロース繊維含有繊維の染色方法。

【公開番号】特開2012−82279(P2012−82279A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228206(P2010−228206)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】