説明

収穫機

【課題】 収穫機に左右に渡るレールを設け、レールに装着したレールこまにシートをくくりつけ、レールこまにシートをくくりつけた箇所とは反対側の機体側部からシートを引っ張って、シートを機体に被せるようにしてシート掛け作業を行いやすくする点にある。
【解決手段】 走行装置(2)を備えた機体の前方に昇降自在な前処理装置(1)を備え、前処理装置(1)の後方の左右横一側に運転部を備えたもので、運転部の上方の機体の左右に渡ってシート掛け用のレール(12)を配設したものである。特に運転部をキャビン(4)より構成し、高さの高いキャビン(4)の屋根の上に機体の左右に渡るシート掛け用のレール(12)を配設したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、稲、麦等を収穫するコンバインや人参、玉葱、大根等の農作物を収穫する収穫機を農閑期等に納屋に保管しておくときに、収穫機、特に大型のキャビン付き収穫機等にシートカバーを掛けるときに便利なシート掛け構造を備えた収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
収穫作業を終了すると納屋や圃場内に収穫機を置いておく。その際雨露や汚れを防止するために収穫機にシートを掛ける。大型機種では全高が高く、シート掛けがやり辛いのが実情である。キャビン仕様になると、シートを被せる場合、キャビンや脱穀装置の上面に上ってシート掛けをしないとシート掛け作業ができない。
【0003】
【特許文献1】特開2001−178243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャビンや脱穀装置の上面は薄い鉄板で構成されているので、人が乗ると凹みやすく足場が悪く作業に危険を伴うばかりでなく、手間が掛かる不都合がある。
又、キャビンを備えていない運転部であっても農閑期の間に運転部に埃が溜まると、掃除やクリーニングが大変煩わしいものとなる。
本発明は、収穫機にシートを被せる作業を行いやすくすることを意図したものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔構成〕
第1の本発明の特徴(請求項1)は、走行装置を備えた機体の前方に昇降自在な前処理装置を備え、前記前処理装置の後方の左右横一側に運転部を備えた収穫機において、運転部の上方の機体の左右に渡ってシート掛け用のレールを配設した点にある。
【0006】
〔作用〕
上記第1の発明の特徴によると、レールに案内させながら、シートを機体の左右一側から他側に広げることにより、運転部の上方を含む機体へのシート掛けを行なう。
【0007】
〔発明の効果〕
第1の発明は、シートがレールに案内されて広げることができるので機体へのシート掛けが行ないやすくなった。
【0008】
〔構成〕
第2の本発明の特徴(請求項2)は請求項1の発明において、前記運転部を内部に運転座席と操縦部を備えたキャビンより構成し、前記キャビンの横外側部からキャビンの上方及びキャビンとは反対側の機体左右方向の側部に渡ってシート掛け用のレールを配設した点にある。
【0009】
〔作用〕
上記第2の発明の特徴によると、背の高いキャビンにシートを被せる場合であってもキャビンを含む機体へのシート掛けが行ないやすい。
【0010】
〔発明の効果〕
第2の発明は、背丈の高いキャビンを含む機体へのシート掛けが行ないやすく、楽にシート掛けを行なうことができる利点がある。
【0011】
〔構成〕
第3の本発明の特徴(請求項3)は請求項1または2の発明において、前記シート掛け用のレールを前後に複数配設した点にある。
【0012】
〔作用〕
上記第3の発明の特徴によると、シート掛け用のレールを前後に複数配設してあるのでキャビンを含む前後の広い範囲に渡ってのシート掛けが行ないやすい。
【0013】
〔発明の効果〕
第3の発明は、キャビンを含む前後の広い範囲に渡ってシート掛けが行ないやすくなる利点がある。
【0014】
〔構成〕
第4の本発明の特徴(請求項4)は請求項1乃至3のいずれかの発明において、前記シート掛け用のレールを左右方向に複数に分割した点にある。
【0015】
〔作用〕
上記第4の発明の特徴によると、前記シート掛け用のレールを左右方向に複数に分割してあるので、農作業中に分割されたレールを部分的に外すことにより、作業の邪魔にならないようにすることができる。
【0016】
〔発明の効果〕
第4の発明は、機体へのシート掛けが行いやすく、しかもシート掛け用のレールを左右方向に複数に分割できるようにしてあるので、農作業中に分割されたレールを部分的に外すことにより、農作業に支障なく作業を行える利点がある。
【0017】
〔構成〕
第5の本発明の特徴(請求項5)は請求項4の発明において、分割したレールを一部重合させた状態でそれぞれ連結片を介して固定した点にある。
【0018】
〔作用〕
上記第5の発明の特徴によると、分離したレールをシート掛け作業を行なうときに連結することにより機体の左右全体に渡って容易にシート掛けを行なうことができるようになる。
【0019】
〔発明の効果〕
第5の発明は、分離したレールを連結することにより機体の左右全体に渡ってのシート掛けを容易に行なうことができる利点がある。
【0020】
〔構成〕
第6の本発明の特徴(請求項6)は請求項4の発明において、前記シート掛け用のレールを左右方向にスライド自在に分割した点にある。
【0021】
〔作用〕
上記第6の発明の特徴によると、分割したシート掛け用のレールを左右方向にスライド自在に伸ばすことができるので、シート掛けをするときのレールの伸長作業が容易に行なえる。
【0022】
〔発明の効果〕
第6の発明は、分割したシート掛け用のレールを左右方向にスライド自在に引き伸ばすだけで、シート掛けを容易に行なえる利点がある。
【0023】
〔構成〕
第7の本発明の特徴(請求項7)は請求項1乃至6のいずれかの発明において、前記レールに機体側内面と前後面とを備え、前記レール内に前記機体側内面に摺接するローラと前記前後面に摺接するローラとを備えたレールこまを装着した点にある。
【0024】
〔作用〕
上記第7の発明の特徴によると、レールに機体側内面と前後面とを備え、このレール内に機体側内面に摺接するローラと前後面に摺接するローラとを備えたレールこまを装着するので、シートを引っ掛けるレールこまの滑りがよく、シートを広げやすい。
【0025】
〔発明の効果〕
第7の発明は、シートを引っ掛けるレールこまの滑りがよくなるので、シートを広げやすい利点がある。
【0026】
〔構成〕
第8の本発明の特徴(請求項8)は請求項1乃至7のいずれかの発明において、収穫物の排出用のアンローダを設け、このアンローダを跨ぐ状態でレールを配設した点にある。
【0027】
〔作用〕
上記第8の発明の特徴によると、シート掛けを行なうときにアンローダにシートを引っ掛かることなくシート掛けを行なうことができる。
【0028】
〔発明の効果〕
第8の発明は、シート掛けを行なうときにアンローダにシートを引っ掛かけてしまうような不都合なこともなくシート掛けを行なうことができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、稲、麦等の植立穀稈を引起こして刈取り、刈取った穀稈を機体後方に搬送する前処理装置を構成する刈取部1を、クローラ式走行装置2や内部に運転座席3と操縦部を有した運転部としてのキャビン4等を備えた走行機体の前部に、上下に揺動操作できるように取付け、刈取部1から搬送されてくる穀稈を扱ぎ処理する脱穀装置5、この脱穀装置5からの脱穀粒を貯留するグレンタンク6、及び、グレンタンク6に貯留された脱穀粒を排出する装置であるアンローダ7等を走行機体に搭載して収穫機を構成してある。
【0030】
図1に示すように、アンローダ7は、グレンタンク6の底部に配設された図外の底スクリューケースから受け渡された穀粒を縦オーガ8で揚送されて、旋回並びに起伏自在な横オーガ9に受け継がれる。
図1に示すように、横オーガ9を、縦オーガ8に基端部が連結支持された根元側部分9aと、これに対して折畳み自在に連結された先端側部分9bとで構成し、根元側スクリュー軸10先端に形成した係合部と、先端側スクリュー軸11基端に形成した係合部とが、先端側部分9bと根元側部分9aとが直列接続されるように先端側部分9bを伸展移動(閉じ移動)した作用状態では両スクリュー軸10,11が連動回転するように噛合い、先端側部分9bを折畳み移動(開き移動)して、根元側部分9aの横傍に平行に並ぶように折畳まれた格納状態では離間して噛合いが解除されるドッグクラッチを備えてある。
【0031】
図3に示すように、運転部を構成するキャビン4の横外側部からキャビン4の上方及びキャビン4とは反対側の機体の左右側部に渡ってシート掛け用のレール12を配設してある。このレール12は前後2箇所に設けてあり、前方側のレール12は図4に示すようにキャビン4の屋根13に取付けた支持部材14、15とキャビン4の横外側壁の手すり4aに取付けた支持部材16を介してキャビン4に取付けてある。後方側のレール12はキャビン4の屋根13に取付けた支持部材14、15とキャビン4の横外側部における後方側の窓の後部側壁に取付けた図外の支持部材を介してキャビン4に取付けてある。
【0032】
前記シート掛け用のレール12は図4、図5、図6に示すように、キャビン4側に固定された固定側レール17とキャビン4とは反対方の機体上方にオーバーハングさせたオーバーハングレール18とからなり、固定側レール17とオーバーハングレール18とを突き合わせるとともに連結片19、20を介してボルト連結してある。固定側レール17の先端縁17aから10cm離してL形材からなる連結片19を溶接し、オーバーハングレール18の突き合わせ先端縁18aから10cm突出させた状態で内側形状がレール17,18の外側形状に合致するレール保持部材20aをオーバーハングレール18に先端部に溶接するとともにレール保持部材20aにL形材20bを溶接してある。すなわち、固定側レール17側の連結片19はL形材より構成し、オーバーハングレール18側の連結片20はレール保持部材20aとL形材より構成している。
【0033】
図7及び図8に示すように、レール12(図では固定側レール17を示す)内にはレールこま22を装着してある。このレールこま22は、レール17が上下に配設されている箇所では機体側(内側)となり、レール17がキャビン4上方において左右に配設されている箇所では下側(内側)となる内面23に摺接して前後軸P1周りで回転するローラ24と、レール17が上下に配設されている箇所では左右軸となり、レール17がキャビン4上方において左右に配設されている箇所では上下軸となる軸P2周り回転して前後面25、26で摺接するローラ27、28を備えている。そして、このレールこま22には、3個のローラ24,27,28を支持する機体前方側に突設しているローラ支持部材29と、このローラ支持部材29よりL字状に延設し先端にリング部30を備えたシート取付部材31を備えている。
【0034】
キャビン4の横外側部に取付けられているレール17の下端部には、レールこま22をレール17内に嵌め込んだ状態でレールこま22が落下しないように閉塞する閉塞部材32をボルト締めしてある。レールこま22をレール17内に装着するときは、ボルト21を緩めて閉塞部材32を外しレール17の端部を開放した状態でレールこま22を嵌め込むことにより装着できる。
【0035】
シートSの大きさは、その前後長はキャビン4を覆う長さの程度のものでもよいが、この実施の形態では、機体全体又はほぼ機体全体を覆う長さのもので、幅は機体の左右幅全体を覆うもので構成されている。
【0036】
次にシートSを被せる作業について説明する。
前後に並設した2個のレール12に嵌め込んだレールこま22のシート取付部材31のリング部30にそれぞれシートSを紐35で結ぶとともに、前記リング部30に機体の左右幅よりも長い紐(図示せず)を取付ける。そして、この長紐をキャビン4の上方を越えて反対側の機体側部に渡す。反対側に渡された長紐を引っ張るとレールこま22側のリング部30にくくりつけたシートSがレールこま22の引き上げにより、シートSが引っ張り上げられてレール12に沿ってレールこま22とともにスムーズに移動し、反対側のオーバーハングレール18の遊端部近くまで容易に移動させることができる。
適当な位置まで移動したところでリング部30に結んでいたシートSの紐35を解いて下方に引っ張ることによりキャビン4並びにシート長に相当した範囲で機体上部を覆うことができる。
【0037】
シートSを外すときは、被せてあるシートSをオーバーハングレール18上まで捲り上げた状態で反対側から引っ張ることにより、レール12上に沿ってシートSを移動させて取り去ることができる。
〔別実施の形態〕
図10〜図12は図4〜図6のレール12に代わる別実施の形態のレール構造を示す。この別実施の形態によるレール12は、オーバーハングレール33が固定側レール34に対してスライド自在に構成されている。キャビン4上部の固定側レール34とオーバーハングレール33とが互いに摺接する摺接面同士の曲率半径が同一となるように曲げ加工を施してある。固定側レール34の下面に、オーバーハングレール33に沿う装着したガイドピン36を案内する案内溝37をレール長手方向に沿って設けてある。案内溝37の端部は、図10の位置まで引き出された状態で固定側レール34とオーバーハングレール33が重合している部分がそれ以上引き出されないようにガイドピン36を係止するストッパーとなる。
オーバーハングレール33を収納状態にしたときは、オーバーハングレール33が勝手に引き出されないように図外の止め部材で固定するようにしてある。この止め部材に代えて前記ガイドピン36をオーバーハングレール33に対してねじ込むことにより固定側レール34に固定できるボルトとすることもできる。
図10に示されている他の仕様は主たる実施例と同じ構造である。
【0038】
主たる実施の形態では、運転部をキャビン4を備えた運転部としたが、運転座席3の上方に屋根だけを設けたキャノピータイプのものであってもよい。この場合は、シート掛け用のレール12はキャノピーの支柱や屋根の上に固定することができる。又、キャビンやキャノピーがなく、運転座席3が露出して設けたれた収穫機に適用してもよい。この場合は、運転座席3を含む運転部や収穫機の他の各種装置を逆U字状ないしはアーチ状に覆う状態にレール12を設けて、レール12全体を着脱自在にしたものでもよい。
【0039】
主たる実施の形態では、シート掛け用のレール12はキャビン4の上方を通る前後で2本設けたが、レール12全体が着脱自在な逆U字状ないしはアーチ状のレール12をキャビン4後方の横オーガ9の上方を覆う状態で設けて3本以上設けてもよい。又、主たる実施の形態のうちの前または後のいずれかの1本だけでもよい。キャビン4を設けていない収穫機の場合もレール12を1本、2本又は3本以上の複数本設けてもよい。レール12を前後に3本以上設ける場合、キャビン4後方に設けるレール12はアンローダ7を跨ぐ状態で着脱自在に配設すればよい。
【0040】
収穫機としては、稲麦等を収穫するコンバインに限らず、キャビンやキャノピーを設けたもの或いは運転座席が露出した運転部を設けた人参、玉葱、大根等の農作物を収穫する収穫機に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】キャビン付き収穫機を示す側面図
【図2】キャビン付き収穫機の平面図
【図3】キャビン付き収穫機の正面図
【図4】キャビン上部のレールを示す部分正面図
【図5】分割レールの連結部を示す正面図
【図6】オーバーハングレールの連結部を示す縦断面図
【図7】レールこまをレールに込み込んだ状態の正面図
【図8】図7のA−A矢視の平面図
【図9】ローラの配置を示す正面図
【図10】別実施の形態のキャビン上部のレールを示す部分正面図
【図11】別実施の形態のスライドレールの連結部を示す破断正面図
【図12】別実施の形態のスライドレールの縦断面図
【符号の説明】
【0042】
1 前処理装置
2 走行装置
3 運転座席
4 キャビン
7 アンローダ
12 シート掛け用のレール
17 分割されたレール
18 分割されたレール
19、20 連結片
22 レールこま
23 機体側内面
25、26 前後面
24、27、28 ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置を備えた機体の前方に昇降自在な前処理装置を備え、前記前処理装置の後方の左右横一側に運転部を備えた収穫機において、
運転部の上方の機体の左右に渡ってシート掛け用のレールを配設してあることを特徴とする収穫機。
【請求項2】
前記運転部を、内部に運転座席と操縦部を備えたキャビンより構成し、前記キャビンの横外側部からキャビンの上方及びキャビンとは反対側の機体の左右側部に渡ってシート掛け用のレールを配設してあることを特徴とする請求項1記載の収穫機。
【請求項3】
前記シート掛け用のレールを前後に複数配設してあることを特徴とする請求項1または2記載の収穫機。
【請求項4】
前記シート掛け用のレールを左右方向に複数に分割してあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の収穫機。
【請求項5】
分割されたレールの端部を突き合わせた状態でそれぞれ連結片を介して固定してあることを特徴とする請求項4記載の収穫機。
【請求項6】
前記シート掛け用のレールを左右方向にスライド自在に分割してあることを特徴とする請求項4記載の収穫機。
【請求項7】
前記レールに機体側内面と前後面とを備え、前記レール内に前記機体側内面に摺接するローラと前記前後面に摺接するローラとを備えたレールこまを装着することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の収穫機。
【請求項8】
収穫物の排出用のアンローダを設け、このアンローダを跨ぐ状態でレールを配設してあることを特徴とする。請求項1乃至7のいずれか1項に記載の収穫機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2007−54009(P2007−54009A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245690(P2005−245690)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】