説明

収穫機

【課題】長寿命であって省エネルギー性に優れた分離部を備える収穫機を提供する。
【解決手段】コンバインは、立毛状態の穀稈から穀粒を分離する分離部を備える。分離部は、回転可能に構成される分離部本体と、立毛状態の穀稈と接触した状態で回転することにより当該穀稈から穀粒を分離する分離歯312と、分離歯312と分離部本体との間に配置される分離歯接続部313と、を備える。また、分離歯312が突出している方向を突出方向とし、分離歯312のうち分離部本体側の端部近傍を基端部312aとしたときに、基端部312aを突出方向に垂直な面で切断したときの断面形状は、少なくとも端部が分離部本体の回転方向と反対側に曲げられている。また、分離歯接続部313のうち分離歯312が接続されていない箇所を分離部本体の回転軸に垂直な面で切断したときの断面形状は、少なくとも突出方向側の端部が前記回転方向と反対側に曲げられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立毛状態の作物から必要部分を収穫する収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、刈取り前の立毛状態の作物から、実、葉、穀粒等の必要部分を分離して取り入れる取入部を備える収穫機が知られている。この取入部は必要部分を分離するための分離部を備えており、例えば円筒状の回転体と、当該回転体の外側の表面から放射状に突出した複数の歯と、を備えるものが知られている。そして、分離部の歯と歯の間に穀稈等が入り込み、この状態で回転体が回転することで、穀粒等が分離される。特許文献1は、この種の収穫機を開示する。
【0003】
特許文献1が開示する収穫機では、分離部の歯について様々な形状が開示されている。例えば、歯の一部を三角形状の板で構成して、この板を凸面又は凹面にし、更にこの板の縁を折り曲げることが記されている。また、この歯のうち三角形状でない部分(回転体側の端部近傍)については、縁が円弧を描くような形状にする旨も記されている。
【0004】
この構成により、三角形状の板を凸面にした場合は歯の間を通過する作物が圧搾され、三角形状の板を凹面にした場合は歯の間を通過する作物の必要部分が掬い取られる。また、歯のうち回転体側の端部近傍が円弧を描くような形状にすることにより、作物の茎が通過可能な範囲を大きくして太い茎の作物に対応することができるとともに、作物の引抜きを容易にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6−97901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1の構成では、作物の茎と回転体側の端部近傍の歯との間に摩擦力が発生するために、当該作物を分離部から引き抜く際に大きな力が必要になり、この力が、作物から必要部分を分離するために必要な力を上回ることも多かった。従って、必要部分の分離という本来の目的に寄与しない部分で分離部の駆動源(例えば、エンジン)に大きな出力が求められることとなり、小型化及び省エネルギー性の観点から限界があった。
【0007】
以上の点から、作物の分離部からの引抜きに必要な力を一層低減できることが求められていた。また、歯と作物の茎との間で大きな摩擦が発生した場合、歯が摩耗し易くなって寿命が短くなり、この点からも改善が望まれていた。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、長寿命であって省エネルギー性に優れた分離部を備える収穫機を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の観点によれば、以下の構成の収穫機が提供される。即ち、この収穫機は、立毛状態の作物から必要部分を分離する分離部を備える。前記分離部は、分離部本体と、分離歯と、分離歯接続部と、を備える。前記分離部本体は、回転可能に構成される。前記分離歯は、前記分離部本体の外側に向けて突出しており、立毛状態の作物と接触した状態で前記分離部本体とともに回転することにより当該作物から必要部分を分離する。前記分離歯接続部は、前記分離歯に接続され、当該分離歯と前記分離部本体との間に配置される。前記分離歯が突出している方向を突出方向とし、前記分離歯のうち前記分離部本体側の端部近傍を基端部としたときに、前記分離歯の基端部を突出方向に垂直な面で切断したときの断面形状は、少なくとも端部が前記分離部本体の回転方向と反対側に曲げられている。また、前記分離歯接続部のうち前記分離歯が接続されていない箇所を前記分離部本体の回転軸に垂直な面で切断したときの断面形状は、少なくとも突出方向側の端部が前記分離部本体の回転方向と反対側に曲げられている。
【0011】
これにより、分離歯同士の間に立毛状態の作物が入り込み、この状態で分離部本体が回転することにより、作物から必要部分を分離することができる。このとき、基端部同士の間及び分離歯接続部で囲まれる部分には作物の茎等が入り込むことが多く、この基端部及び分離歯接続部と茎等との摩擦は分離部本体の回転に対して抵抗を及ぼしている。この点、上記の構成においては、基端部及び分離歯接続部に形成された曲げによってこの抵抗を減らすことができるため、分離部本体の回転に必要な動力を低減させることができる。また、分離歯の強度を向上させるとともに分離歯が茎等から受ける力も軽減されるため、分離歯の寿命を延ばすことができる。
【0012】
前記の収穫機においては、前記分離歯の任意の位置を前記突出方向に垂直な面で切断したときの断面形状についても、少なくとも端部が前記分離部本体の回転方向と反対側に曲げられていることが好ましい。
【0013】
これにより、茎等が分離部本体の回転に及ぼす抵抗をより低減することができるため、一層の省エネルギー化及び分離歯の長寿命化を達成できる。
【0014】
前記の収穫機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記分離歯は、前記分離部本体の回転軸方向に並べて配置されている。前記分離歯の基端部のうち少なくとも一部は、前記分離部本体の回転軸方向において占める長さが、隣り合う前記分離歯の中心間距離の半分以下となっている。
【0015】
これにより、茎等が分離部本体の回転に及ぼす抵抗をより低減することができるため、一層の省エネルギー化及び分離歯の長寿命化を達成できる。また、穀稈の茎が太い場合や栽植密度が高い場合でも適切に収穫を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの全体的な構成を示す側面図。
【図2】取入部の構成を示す側面断面図。
【図3】取入部の動作を示す説明図。
【図4】突出片の形状を示す斜視図。
【図5】図4のA−A断面矢視図及び図4のB−B断面矢視図。
【図6】図4のC−C断面矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。初めに、本実施形態のコンバインの全体的な構成について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るコンバインの側面図である。なお、以下の説明では、単に「左側」「右側」等というときは、コンバイン1が前進する方向に向かって左側及び右側を意味するものとする。
【0018】
図1に示すように、本実施形態のコンバイン1は、立毛状態の稲、小麦等から穀粒を分離して取り入れて、本体10まで搬送する収穫部12を備えている。なお、収穫部12によって穀稈から穀粒だけを完全に分離することはできず、穀稈からの分離物には穀粒(単粒)以外にも、茎や穂切れ粒等が含まれている。そして、本体10の上部には、この穂切れ粒等から穀粒を分離するための脱穀装置14が備えられる。また、この脱穀装置14と並設するように、グレンタンク15がコンバイン1の上部右側に備えられている。
【0019】
グレンタンク15の前方には、コンバイン1を操作するための運転部16が配置されている。この運転部16には運転操作部及び運転座席等が設けられており、この運転操作部を操作することによって取入れや走行等、コンバイン1の各種の操作を行うように構成されている。この運転部16の下方には、コンバイン1の駆動源としての図略のエンジンが配置されている。
【0020】
図1に示すクローラ部11はコンバイン1の左右両側に配置されており、このクローラ部11が駆動することでコンバイン1を走行させるように構成されている。そして、この左右のクローラ部11を図略の走行ミッション装置によって制御することで、コンバイン1の走行方向及び速度の調節が可能になっている。
【0021】
本体10の前方に回動可能に取り付けられた収穫部12は、立毛状態の穀稈から穀粒を分離して取り入れる取入部30と、取入部30が取り入れた穀粒等を本体10に搬送する搬送部20と、を備えている。また、この収穫部12には収穫部昇降シリンダ18が接続されており、当該収穫部昇降シリンダ18が伸縮することによって、収穫部12が収穫部支持軸51を中心として回動する。これによって取入部30の高さを変化させることができる(図1の鎖線参照)。
【0022】
また、搬送部20は、コンバイン1の左右方向に軸線を向けて配置されるスクリューコンベア21と、脱穀装置14の前方に配置されるチェーンコンベア22と、を備える。スクリューコンベア21は、取入部30が取り入れた穀粒等をコンバイン1の右側から左側へ(図1に示す紙面奥側から手前側へ)搬送し、チェーンコンベア22に送り込む。そして、このチェーンコンベア22によって穀粒等が脱穀装置14まで搬送される。
【0023】
そして、搬送された穂切れ粒等は、脱穀装置14によって脱穀される。また、脱穀装置14は図略の選別装置を備えており、この選別装置によって、穀粒を選別している。ここで選別された穀粒は、前記グレンタンク15に貯留される。一方、選別された茎等は、選別装置から機外に排出される。なお、グレンタンク15内に貯留された穀粒は、排出オーガ19を介してコンバイン1の外に排出することができる。
【0024】
次に、取入部30の詳細な構成について図2及び図3を参照して説明する。図2は、取入部30の構成を示す側面断面図である。図3は、取入部30の動作を示す説明図である。
【0025】
図2に示すように、取入部30は、分離部31と、ガイド部32と、角度センサ33と、を主要な構成として備える。
【0026】
分離部31は、エンジンからの駆動力が伝達されることにより図2に示す方向に回転可能な分離部本体311と、この分離部本体311の表面に配置される突出片310と、を備える。また、この突出片310は、分離歯312(詳細な形状は図4を参照)と、この分離歯312を分離部本体311に取り付けるための分離歯接続部313と、を備える。
【0027】
分離部本体311はコンバイン1の左右方向に回転軸を向けて配置されており、この回転軸を中心に当該分離部本体311が回転することにより、突出片310(即ち分離歯312)を回転させることができる。また、突出片310(即ち分離歯312)は、図2に示すように分離部本体311の表面に側面視で放射状に等間隔で複数配置されるとともに、コンバイン1の左右方向(分離部本体311の回転軸方向)にも並べて複数配置されている。なお、この突出片310の詳細な形状及び配置については後述する。
【0028】
この構成により、分離歯312同士の隙間に穀稈が入り込み、この状態で分離部本体311が回転することで、穀稈から穀粒等を分離することができる(図3を参照)。なお、穀稈は、穀粒等が分離された後でも、少しの間は分離歯312同士の隙間(特に分離部本体311側)に入り込んでいる。このとき、茎等が分離歯312及び分離歯接続部313と接触することで、分離部本体311の回転に抗する摩擦力が発生する。
【0029】
前記ガイド部32は、取入部30の最前部に配置される前方ガイド部321と、前方ガイド部321の後部と少し重なるように配置される後方ガイド部322と、を備える。
【0030】
前方ガイド部321の前部はやや突出しており、この前部の下面は、収穫時において穀稈と接触し、当該穀稈を押し下げるように押圧している(図3を参照)。そして、押し下げられて撓んだ穀稈は、その茎部分から分離歯312に接触する。そして、分離部31によって、穀稈から穀粒等が分離される。このように、前方ガイド部321は、穀稈を適切な姿勢で分離部31に案内するガイド部として機能している。
【0031】
そして、分離された穀粒等は、分離されたときに分離歯312から受けた力や風圧等によって飛ばされ、前方ガイド部321及び後方ガイド部322の下面に沿うように移動する。そして、スクリューコンベア21に達すると、前述のように本体10側に搬送されて、脱穀装置14へ導入される。このように、前方ガイド部321及び後方ガイド部322は、穀粒等を適切にスクリューコンベア21まで案内する機能も有している。
【0032】
前述のように、前方ガイド部321の後部と後方ガイド部322の前部は平面視において一部重なっている。また、前方ガイド部321は、図2に示す回動軸323を回動中心として回動可能に構成されている。そして、取入部30は、図略のガイド部昇降シリンダを備え、このガイド部昇降シリンダの伸縮に従って、前方ガイド部321が回動するように構成されている。
【0033】
前方ガイド部321が回動すると、当該前方ガイド部321の高さが変化するため、分離部31に導入される穀稈の姿勢が変わる。そして、本実施形態では、穀稈を適切な姿勢で分離部31に導入させるために、角度センサ33を用いて穀稈の高さ(穀稈の上端部の位置)を検出し、この検出結果に基づいて前方ガイド部321を回動させている。なお、角度センサ33は、穀稈の上端部と接触して受けた力に基づいて、当該穀稈の上端部の位置を検出する構成である。
【0034】
次に、図4から図6までを参照して、分離歯312及び分離歯接続部313の形状及び配置等について説明する。図4は、突出片310の形状を示す斜視図である。図5(a)は、図4のA−A断面矢視図であり、図5(b)は、図4のB−B断面矢視図である。図6は、図4のC−C断面矢視図である。なお、図4から図6までにおいて、回転軸方向とは分離部本体311の回転軸方向のうちコンバイン1の左側(図4及び図5における右側、図6における紙面手前側)に向かう方向であり、突出方向とは分離歯312が分離部本体311の外側に突出する方向であり、回転方向とは分離部本体311が回転したときに分離歯312が移動する方向である。
【0035】
分離歯接続部313は、突出片310を分離部本体311とに取り付けるために用いられる。また、分離歯接続部313は略直角に折り曲げられた板材から構成されており、回転方向に略垂直な面を有する側には取付孔が形成されている。この取付孔を分離部本体311の図略の孔とを一致させて固定具で止めることにより、分離歯接続部313を分離部本体311に対して固定することができる。
【0036】
また、略垂直に折り曲げられた分離歯接続部313のうち、突出方向に略垂直な面を有する側には、当該突出方向に延びるように分離歯312が平行に形成されている。なお、この分離歯312は、分離歯接続部313と一体的に形成されている。なお、図4では、1枚の分離歯接続部313と5枚の分離歯312とが一体的に形成された構成を図示しているが、本発明の構成はこれに限定されず、1枚の分離歯接続部313と1枚又は複数枚の分離歯312とが一体的に形成される構成や、分離歯接続部313と分離歯312とが適宜の固定具によって取り付けられる構成にも、本発明を適用することができる。
【0037】
分離歯312は略スペード形状とされており、分離歯接続部313に接続するように形成された根元側の基端部312aと、基端部312aよりも突出方向側に配置された312bと、で構成されている。なお、以下の説明では、「回転軸方向(分離歯312が並べられる方向)でみたときの分離歯312の長さ」を「分離歯312の幅」と称する。
【0038】
基端部312aは、分離歯接続部313側から突出方向に向かって順に、分離歯接続部313と接続しており突出方向に進むにつれて幅が徐々に狭くなる箇所と、幅が略一定の箇所と、突出方向に進むにつれて幅が徐々に広がる箇所と、で構成されている。なお、この箇所よりも突出方向側では、幅が著しく拡大する部分があり、その部分よりも突出方向側を本体部312bとする。従って、本体部312bは基端部312aよりも幅広状に構成されている。
【0039】
本体部312bは、突出方向反対側から順に、幅があまり変化しない部分と、突出方向に進むにつれて幅が細くなっていく部分と、丸みを帯びた形状の先端部分と、で構成されている。
【0040】
この基端部312a及び本体部312bを突出方向に垂直な面で切断したときの断面図を図5に示す。この図5に示すように、分離歯312は平板状の板材を曲げることで形成されており、その曲げ方向は回転方向の反対側となっている。また、分離歯312の幅方向端部は、回転方向とほぼ逆方向を向いている。
【0041】
具体的には、基端部312aは、図5(a)に示すように、全体にわたって曲げられている。一方、本体部312bは、図5(b)に示すように端部(縁部)のみが曲げられている。
【0042】
また、分離歯接続部313のうち分離歯312が形成されていない箇所を回転軸方向に垂直な面で切断したときの断面図を図6に示す。この図6に示すように、分離歯接続部313の突出方向側の端部(分離歯312が形成されている側)の曲げ方向は、回転方向の反対側となっている。
【0043】
この構成により、収穫中に穀稈の茎が分離歯312及び分離歯接続部313と接触したときに、滑るように穀稈の茎を通過させることができるため、穀稈が分離歯312及び分離歯接続部313に及ぼす不要な摩擦力を軽減することができる。また、穀稈の茎は主として基端部312a及び分離歯接続部313の突出方向側の端部に対して摩擦力を及ぼすため、基端部312a及び分離歯接続部313の突出方向側の端部を回転方向の反対側に曲げることにより、効果的に摩擦力を軽減している。なお、分離歯312の本体部312bについても回転方向の反対側に曲げることにより、穀稈の茎が本体部312bの間を通過する場合の摩擦力も軽減することができる。
【0044】
なお、穀稈の茎が分離歯312に及ぼす摩擦力を軽減するためには、突出方向に垂直な面で切断したときの断面のうち、少なくとも端部が回転方向の反対側に曲げられていれば良い。そのため、基端部312aの端部のみを曲げて、平坦部を設けるように形成しても摩擦力を軽減させることができる。
【0045】
なお、先行文献では歯のうち本実施形態の本体部312bと対応する箇所の縁を曲げる構成が開示されているが、以下の2つの理由により、摩擦力の低減を目的としたものではないものと考えられる。
【0046】
即ち、1つ目の理由は、縁を曲げることによる効果が明記されていないことである。なお、歯のうち回転体(本実施形態の分離部本体311と対応する構成)側の端部近傍の部分(本実施形態の基端部312aに対応する部分)を円弧状に形成したことを説明している箇所では、作物の引抜きを容易にする旨が明記されている。
【0047】
2つ目の理由は、茎が摩擦力を及ぼすのは歯の回転体側の端部近傍であることは知られているため、摩擦力の低減を目的とするのであれば、歯の回転体側の端部近傍に曲げを形成するのが一般的だからである。
【0048】
そのため、上記先行文献の縁を折り曲げる構成は、本実施形態の基端部312aの構成と目的が異なるものであると言うことができる。
【0049】
次に、図5(a)を参照して、基端部312aの幅を示す基端幅L1と、分離歯312が配置される間隔を示す中心間距離L2と、の関係について説明する。
【0050】
前述のように、基端部312aは突出方向上の位置によって幅が異なるが、ここでは、基端部312aの幅が略一定の箇所における幅を基端幅L1としている。また、中心間距離L2とは、隣り合う分離歯312同士の間隔のことであり、図5(a)では、分離歯312の幅方向中心線同士の距離を示している。
【0051】
また、図5(a)では、基端幅L1が中心間距離L2の半分よりも短いことを判り易く示すために、左端の中心間距離L2を示す箇所の下側に基端幅L1の長さを参考的に表示するとともに、左端の中心間距離L2を示す箇所には、中心間距離L2の2等分点から下側に垂線を下ろしている。
【0052】
そして、図5(a)に示すように、本実施形態の基端幅L1は従来の分離部31と比較して大幅に短くなっており、具体的には、基端幅L1は中心間距離L2の半分以下となっている。そのため、分離歯312の適切な間隔を維持しながら、穀稈の茎が太い場合や栽植密度の高い場合にも、茎が分離部31に引っ掛かることなく、適切に収穫を行うことができる。一方、穀稈の茎が細い場合や栽植密度が低い場合でも、茎が分離歯312に及ぼす摩擦力を一層低減することができるので、分離部31を駆動するエンジンに対する負荷を低減できる。
【0053】
以上に説明したように、本実施形態のコンバイン1は、立毛状態の穀稈から穀粒を分離する分離部31を備える。分離部31は、分離部本体311と、分離歯312と、分離歯接続部313と、を備える。分離部本体311は、回転可能に構成されている。分離歯312は、分離部本体311の外側に向けて突出しており、立毛状態の穀稈と接触した状態で分離部本体311とともに回転することにより当該穀稈から穀粒を分離する。分離歯接続部313は、分離歯312と一体的に形成され、この分離歯312と分離部本体311との間に配置される。また、分離歯312が突出している方向を突出方向とし、分離歯312のうち分離部本体311側の端部近傍を基端部312aとしたときに、分離歯312の基端部312aを突出方向に垂直な面で切断したときの断面形状は、少なくとも端部が分離部本体の回転方向と反対側に曲げられている。また、分離歯接続部313のうち分離歯312が接続されていない箇所を分離部本体311の回転軸に垂直な面で切断したときの断面形状は、少なくとも突出方向側の端部が分離部本体311の回転方向と反対側に曲げられている。
【0054】
これにより、分離歯312の基端部312aに形成された曲げによって穀稈の茎等が基端部312a及び分離歯接続部313で囲まれる部分を通過するときの抵抗を減らすことができるため、分離部本体311の回転に必要な動力を低減させることができる。また、分離歯312及び分離歯接続部313が茎等から受ける力を軽減できるとともに、分離歯312の強度を向上させることができるので、分離歯312の寿命を延ばすことができる。
【0055】
また、本実施形態のコンバイン1においては、分離歯312の任意の位置を突出方向に垂直な面で切断したときの断面形状についても、少なくとも端部が分離部本体311の回転方向と反対側に曲げられている。
【0056】
これにより、茎等が分離部本体311の回転に及ぼす抵抗をより低減することができるため、一層の省エネルギー化及び分離歯312の長寿命化を達成できる。
【0057】
また、本実施形態のコンバイン1において、分離歯312は、分離部本体311の回転軸方向に並べて配置されている。分離歯312の基端部312aは、分離部本体311の回転軸方向において占める長さが、隣り合う分離歯312の中心間距離L2の半分より短くなっている。
【0058】
これにより、茎等が分離部本体311の回転に及ぼす抵抗をより低減することができるため、一層の省エネルギー化及び分離歯312の長寿命化を達成できる。また、茎が太い場合や栽植密度が高い場合でも適切に収穫を行うことができる。
【0059】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0060】
分離歯312の形状は、分離歯の分離部本体側の断面形状が回転方向の反対側に曲げられたものであれば、上記実施形態で説明した形状に限定されず、適宜の形状を用いることができる。
【0061】
上記実施形態では、分離歯312全体の縁部が回転方向の反対側に曲げられているが、分離歯312の分離部本体側のみが回転方向の反対側に曲げられた構成にしても良い。この場合でも、曲げがない構成に比べて、茎が及ぼす摩擦力を十分に低減させることができる。
【0062】
本実施形態のコンバイン1の構成は、稲や小麦等だけでなく、葉、花、及び実等を収穫する収穫機に適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 コンバイン(収穫機)
10 本体
30 取入部
31 分離部
311 分離部本体
312 分離歯
313 分離歯接続部
32 ガイド部
L1 基端幅
L2 中心間距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立毛状態の作物から必要部分を分離する分離部を備え、
前記分離部は、
回転可能に構成される分離部本体と、
前記分離部本体の外側に向けて突出しており、立毛状態の作物と接触した状態で前記分離部本体とともに回転することにより当該作物から必要部分を分離する複数の分離歯と、
前記分離歯に接続され、当該分離歯と前記分離部本体との間に配置される分離歯接続部と、
を備え、
前記分離歯が突出している方向を突出方向とし、前記分離歯のうち前記分離部本体側の端部近傍を基端部としたときに、
前記分離歯の前記基端部を突出方向に垂直な面で切断したときの断面形状は、少なくとも端部が前記分離部本体の回転方向と反対側に曲げられており、
前記分離歯接続部のうち前記分離歯が接続されていない箇所を前記分離部本体の回転軸に垂直な面で切断したときの断面形状は、少なくとも突出方向側の端部が前記分離部本体の回転方向と反対側に曲げられていることを特徴とする収穫機。
【請求項2】
請求項1に記載の収穫機であって、
前記分離歯の任意の位置を前記突出方向に垂直な面で切断したときの断面形状についても、少なくとも端部が前記分離部本体の回転方向と反対側に曲げられていることを特徴とする収穫機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の収穫機であって、
前記分離歯は、前記分離部本体の回転軸方向に並べて配置されており、
前記分離歯の基端部のうち少なくとも一部は、前記分離部本体の回転軸方向において占める長さが、隣り合う前記分離歯の中心間距離の半分以下となっていることを特徴とする収穫機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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