説明

収納家具本体の補強構造

【課題】収納家具本体の側板の前端部に直接力が伝わらないため収納家具本体の側板の変形を抑制することができる収納家具本体の補強構造を得る。
【解決手段】収納家具本体102の側板107の前端部を左右方向の内側及び後側へ連続して折り曲げて平面視略コ字状とし、該折曲部107aの後端から後方に突出する係合凸片107b,…を上下に複数設け、上下に延びる、開口部側を前記左右の側板の内面に対向させた平面視略コ字状の前補強体121の前面に、係合凸片107b,…と係合する係合孔121b,…を上下に複数設け、前補強体121と一体の側板107に沿って後方に延びる前後の取付板121a,121aを設け、係合凸片107b,…に係合孔121b,…を係合させた状態で、側板107と左右の前補強体121の前後の取付板121,121とを溶着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワゴン又は袖キャビネット等の収納家具における、その本体の補強構造に係わり、更に詳しくは、収納家具本体の前端部の補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の収納家具本体の補強構造として、一枚の板金を折り曲げ加工し、収納家具本体の側板側及び上下端を開放する開口部を形成するとともに、前後端付近をそれぞれ前記側板の内面と平行に前側及び後側へ屈曲させて前後の取付面を形成してなる前補強体を、前記前後の取付面を前記側板に当接させて溶接等により固定してなるもの(例えば、特許文献1参照。)、側板の前端部に平面視略矩形状の巻回補強部を折曲形成して溶接等により固定して左右の側板補強部を形成するとともに、該側板補強部と上下の枠板とを、該側板補強部上下の係合孔に前記枠板の係合突片を係合させた状態で係止ピンを嵌着して連結してなるもの(例えば、特許文献2参照。)等がある。
【0003】
【特許文献1】特開2003−199632号公報(図2−4)
【特許文献2】実開昭52−126026号公報(第1図、第6図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、前記前補強体の前方に延びる前取付板(前端付近を前側に屈曲させた取付面)及び後方に延びる後取付板(後端付近を後側に屈曲させた取付面)と収納家具本体の側板とが溶接等により固定されて一体化され、収納家具本体の側板の前端部に直接力が伝わる構造であるため、引出しの閉め方によっては、収納家具本体の側板が変形しやすいという問題点がある。また、収納家具本体の前面開口部の強度及び剛性を十分に確保しにくいという問題点がある。さらに、前取付板が前方に延びているため、該取付板の端面が前側から視認できるため、美観上好ましくないという問題点もある。
【0005】
特許文献2の構成では、側板自体を折り曲げて前記巻回補強部を形成するため、収納家具本体の側板の前端部に直接力が伝わる構造であるため、引出しの閉め方によっては、収納家具本体の側板が変形しやすいという問題点がある。また、前記左右の巻回補強部と前記上下の枠板との連結を前記係止ピンの嵌着により維持する構造であるため、収納家具本体の前面開口部の強度及び剛性を十分に確保しにくいという問題点がある。
【0006】
本発明は、前記のような問題点を解決するためになされたものであり、収納家具本体の側板の前端部に直接力が伝わらないため収納家具本体の側板の変形を抑制することができる収納家具本体の補強構造を得ることを目的とする。また、収納家具本体の前面開口部の強度及び剛性を十分に確保することができ、該開口部の形状精度が高い収納家具本体の補強構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る収納家具本体の補強構造は、前記課題解決のために、収納家具本体の左右の側板の前端部を左右方向の内側及び後側へ連続して折り曲げて平面視略コ字状とし、該折曲部の後端から後方に突出する係合凸片を上下に複数設け、上下に延びる、開口部側を前記左右の側板の内面に対向させた平面視略コ字状の左右の前補強体の前面に、前記係合凸片と係合する係合孔又は係合凹部を上下に複数設け、前記左右の前補強体と一体又は別体の、前記側板に沿って後方に延びる前後の取付板を設け、前記係合凸片に前記係合孔又は係合凹部を係合させた状態で、前記左右の側板と前記左右の前補強体の前後の取付板とを溶着してなるものである。
【0008】
ここで、前記左右の前補強体の上下端に左右方向の内側へ延出する上框連結体及び下框連結体をそれぞれ溶着し、左右の上框連結体と上框とを溶着するとともに、左右の下框連結体と下框とを溶着してなると好ましい。
【0009】
また、前記収納家具がワゴンであり、該ワゴン本体内に引出しを収容した状態で、該引出しの前板を、前記左右の側板の前端部内面及び前記左右の前補強体の前面により形成される段落ち部の前側に位置させ、平面視及び側面視において、前記前板が視認されないものである。
【0010】
さらに、前記段落ち部を、前記収納家具本体内への引出し収容時の当止め部としてなるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る収納家具本体の補強構造によれば、収納家具本体の左右側板の前端部を左右方向の内側及び後側へ連続して折り曲げて平面視略コ字状とし、該折曲部の後端から後方に突出する係合凸片を上下に複数設け、上下に延びる、開口部側を前記左右の側板の内面に対向させた平面視略コ字状の左右の前補強体の前面に、前記係合凸片と係合する係合孔又は係合凹部を上下に複数設け、前記左右の前補強体と一体又は別体の、前記側板に沿って後方に延びる前後の取付板を設け、前記係合凸片に前記係合孔又は係合凹部を係合させた状態で、前記左右の側板と前記左右の前補強体の前後の取付板とを溶着してなるので、収納家具本体の側板の前端部に直接力が伝わらないため収納家具本体の側板の変形を抑制することができる。また、収納家具本体の前面開口部の強度及び剛性を十分に確保することができ、該開口部の形状精度が高い収納家具本体の補強構造を得ることができる。
【0012】
また、前記左右の前補強体の上下端に左右方向の内側へ延出する上框連結体及び下框連結体をそれぞれ溶着し、左右の上框連結体と上框とを溶着するとともに、左右の下框連結体と下框とを溶着してなると、強固な矩形の枠体(框体)が形成されるため、収納家具本体の前面開口部の強度及び剛性を大幅に向上させた補強構造を得ることができる。また、収納家具本体の前面開口部の形状精度をさらに向上することができる。
【0013】
さらに、前記収納家具がワゴンであり、該ワゴン本体内に引出しを収容した状態で、該引出しの前板を、前記左右の側板の前端部内面及び前記左右の前補強体の前面により形成される段落ち部の前側に位置させ、平面視及び側面視において、前記前板が視認されないものであると、上記効果に加え、すっきりとした外観の印象を与えることができる。
【0014】
さらにまた、前記段落ち部を、前記収納家具本体内への引出し収容時の当止め部としてなると、上記効果に加え、前記左右の前補強体からなる強固な当止め部により、引出し収容時の当止めを確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲に記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。なお、本明細書においては、引出しを引き出す方向側(引出しを開ける方向側)を前、その反対側(引出しを閉じる方向側)を後とし、後方に向かって左右を左右とする。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係る収納家具本体の補強構造が用いられた上下2段の引出しを備えたワゴンを示す縦断左側面図、図2及び図3は、ワゴン本体側板の左右前端部の補強構造を示す分解斜視図である。また、図4は引出しの左側面図、図5は引出しの分解斜視図、図6は振止め体の形状説明図であり、図6(a)は左の振止め体を左右方向の内側(右側)から見た斜視図、図6(b)は右の振止め体を左右方向の外側(右側)から見た斜視図である。さらに、図7は引出しを閉じた状態における引出し及び側板の補強構造を示す横断平面図である。
【0017】
図1において、ワゴン101は、ワゴン本体102と、ワゴン本体102の左右内側面に取付けられたレール並びに該レールに係合するローラ及びスライダー等の組合せからなる案内手段103,103により引出しレール3a,3aが支持されて前後に開閉可能な、上段引出し104及び下段引出し105等から構成される。また、ワゴン本体102は、後側板106及び左右側板107,107からなる前側を開放してなる平面視略コ字状の鋼製の側板、該側板の上部前後に取付けられた鋼製の上框108a及び取付板108b、該側板の下部前後に取付けられた鋼製の下框109a及び底板109b、上框108a及び取付板108bの上面に取付けられた鋼製又は木製の天板110、並びに、下框109a及び底板109bの下面に取付けられたキャスター111,…等により構成される。該キャスター111,…により、ワゴン101の移動が容易となっている。
【0018】
上段引出し104及び下段引出し105は、鋼製の前板1の後面に鋼製の裏カバー2を取付け、その後側に上方に開口する正面視略コ字状の鋼製の胴板3を取付け、該胴板3の後側に鋼製の後板4を取付けて物品の収容部を形成している。また、引手装置11は、引出し104,105の前板1の上側において、左右方向軸まわりに回動可能な、合成樹脂製の引手体12と、該引手体12の回動による隙間を塞ぐ重合部が設けられた、合成樹脂製のカバー体13とを備えている。
【0019】
引出し104,105を閉じてワゴン本体102内に収容した状態では、平面視及び側面視において、天板110及び左右の側板107,107により、該引出し104,105の前板1,1が隠され、平面視及び側面視において視認されない構造となっているため、すっきりとした外観の印象を与えることができるとともに、前記のとおり合成樹脂製の引手体12及びカバー体13を保護することができる。
【0020】
また、引出し104,105は、前記のとおり案内手段103,103により支持されて前後に開閉可能とされ、引出し104,105を閉じると、ラッチ装置31が作動状態となるため、引出し104,105が不意に開くことが防止される。そして、引手体12を引くと、該操作に連動してラッチ装置31が解除状態となる。
【0021】
次に、ワゴン本体102の前端部の補強構造について説明する。図2に示すように、ワゴン本体102の左側板107は、その前端部が左右方向の内側(右方)及び後側(後方)へ連続して折り曲げられ、平面視コ字状の折曲部107aが形成され、該折曲部107a後端の上下には複数の係合凸片107b,…が後方に突設される。そして、上下に延びる、開口部側を左側板107の内面に対向させた平面視略コ字状の鋼製の左前補強体121には、その前面に、前記係合凸片107b,…と係合する係合孔121b,…が上下に複数設けられ、左側板107に沿って後方に延びる前後の鋼製の取付板121a,121aが左前補強体121と一体に形成される。なお、前記係合孔121b,…は係合凹部であってもよいし、前記取付板121a,121aは左前補強体121と別体のものを左前補強体121に固定してもよい。また、係止突起122,122は、引出し104,105のラッチ装置31,31を構成するラッチ板33,33の係止部33a,33a(図4参照)が係止して引出し104,105を閉じた状態でラッチを掛けるためのものである。
【0022】
また、図3に示すように、ワゴン本体102の右側板107は、その前端部が左右方向の内側(左方)及び後側(後方)へ連続して折り曲げられ、平面視コ字状の折曲部107aが形成され、該折曲部107a後端の上下には複数の係合凸片107b,…が後方に突設される。そして、上下に延びる、開口部側を右側板107の内面に対向させた平面視略コ字状の鋼製の右前補強体131には、その前面に、前記係合凸片107b,…と係合する係合孔131b,…が上下に複数設けられ、右側板107に沿って後方に延びる前後の鋼製の取付板131a,131aが右前補強体131と一体に形成される。なお、前記係合孔131b,…は係合凹部であってもよいし、前記取付板131a,131aは右前補強体131と別体のものを右前補強体131に固定してもよい。
【0023】
また、図2及び図3に示すように、前補強体121,131には、内側から前側の取付板121a,131aが視認できる位置に、上下複数(図2及び図3の例では4箇所)のスポット溶接用電極の挿通孔121c,…及び131c,…が形成されている。したがって、前側の取付板121a,131aは左右の側板107,107に沿って後方に延びるものであるが、前側の取付板121a,131aと左右の側板107,107とをスポット溶接により強固に固定することができる。なお、このように前側の取付板121a,131aが後方に延びるものであると、該取付板の端面が前側から視認できないため、商品価値として重要な美観を向上することができる。
【0024】
ワゴン本体102の左側板107の前記係合凸片107b,…に左前補強体121の前記係合孔121b,…を係合させ、前後の取付板121a,121aを左側板107に当接させた状態で、前後の取付板121a,121aと左側板107とをスポット溶接により溶着する(図2参照)。また、ワゴン本体102の右側板107の前記係合凸片107b,…に右前補強体131の前記係合孔131b,…を係合させ、前後の取付板131a,131aを右側板107に当接させた状態で、前後の取付板131a,131aと右側板107とをスポット溶接により溶着する(図3参照)。
【0025】
以上のように、左右の補強体121及び131により、ワゴン本体102の左右側板107,107の前面から後方に段落ちした側框が形成され、該側框である前補強体121,131と左右の側板107,107とは、溶着により前後2列の固定がされて強固に連結されるため、側板107,107の前端部の強度及び剛性が大幅に向上する。また、前補強体121,131の上下端には内側に延びる上框連結体112及び下框連結体113が溶着されるため、比較的薄い板材からなる前補強体121,131の上下端の歪みが抑制されて、より強固な補強構造を得ることができる。その上、左右の側板107,107の前記係合凸片107b,…と前補強体121,131の係合孔121b,…及び131b,…とが係合しているため、側板107,107の前端部の強度及び剛性がさらに向上する構造となっている。
【0026】
次に、側框である前補強体121,131と上框108a及び下框109a(図1参照)との固定について説明する。図2及び図3に示すように、前記のとおり前補強体121,131の上下端には上框連結体112及び下框連結体113が固定されるため、左右の上框連結体112,112と上框108aとをスポット溶接により溶着し、左右の下框連結体113,113と下框109aとをスポット溶接により溶着すれば、強固な矩形の枠体(框体)が形成される。したがって、ワゴン本体102の前面開口部の強度及び剛性を大幅に向上させた補強構造を得ることができる。なお、前記溶着は、スポット溶接に限定されるものではなく、例えば下框連結体113,113と下框109a等をアーク溶接又はレーザ溶接等により溶着してもよい。
【0027】
次に、引出し104,105の振止め構造について説明する。図4及び図5に示すように、前板1の上部には、上方、後方及び下方に連続して折り曲げられたカバー体支持部21が形成され、前板1の下部には、係合孔29a,…が形成された、後方へ延びる裏板支持板29が横設される。また、裏カバー2には胴板3が溶着され、裏カバー2の上部には、上方及び前方に連続して折り曲げられ、後面板41a及び上面板41bからなる係合片41が形成され、裏カバー2の下部には、係合凸部42,…が下方へ突設される。
【0028】
したがって、裏カバー2上部の係合片41を前板1のカバー体支持部21の下側から挿入して、後面板41a及び上面板41bをカバー体支持部21の下側に係合させた状態で、裏カバー2下部の係合凸部42,…を前板1下部の裏板支持板29に形成された係合孔29a,…に係止することにより、容易に裏カバー2を前板1に取付けることができる。なお、係合凸部42,…は、前方に行くに従って上昇する傾斜面42aが形成されているため、前記前板1への裏カバー2の取付けを小さい力で円滑に行うことができる。
【0029】
図5に示すように、引出し104(105)の胴板3の左右の外側面における左右のレール3a,3a等の凸部が設けられていない部分には、外方へ突出する突起45,45が内面側からプレス金型を押圧して一体形成され、同時に、該突起45,45には、前後方向の係合孔45a,45aが形成される。また、引出し104(105)の裏カバー2の左右の後面板43,43には、係合孔43a,43aが形成され、該裏カバー2の左右の側面板44,44には係止孔44a,44aが形成される。
【0030】
振止め体141は、後述するように、胴板3の左右の外側面におけるレール3a,3a等の凸部が設けられていない部分に接した状態で取付けられる。したがって、図6及び図7に示すように、特に左右方向に長い比較的大きい形状とすることができる。振止め体141は、図6に示すように、前後に延びる側板142及び該側板142の前部において左右方向の外側に延びる前板143、該前板143の左右方向の外側に設けられ後方に突出する当接部146、側板142及び前板143を連結する上下の水平板からなるガイド部144,144、並びに、該上下のガイド部144,144を連結する略左右方向に延びる垂直の連結板145等を主要構成部材とするものである。そして、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン又はABS等の合成樹脂により一体成形されて、前記主要構成部材は全体として強度及び剛性が高い形状となっている。
【0031】
また、振止め体141を引出し104(105)に取付けるための取付部材として、前記側板142から左右方向の内側(胴板3側)に離間した位置には、該側板142に沿って前方に延びる係合片142aが、前記前板143の左右方向の内側には、前方に突出する係止片143aが一体に形成される。
【0032】
したがって、胴板3の前記係合孔45a,45aの後側から振止め体141,141の前記係合片142a,142aを挿入するとともに、裏カバー2の前記係合孔43a,43aの後側から振止め体141,141の前記係止片143a,143aを挿入して、裏カバー2の前記係止孔44a,44aに、前記係止片143a,143aの前端鉤状部を係止させれば、左右の振止め体141,141は、胴板3の左右の外側面におけるレール3a,3a等の凸部が設けられていない部分に接した状態で、胴板3及び裏カバー2に容易かつ確実に取付けられる。なお、引出しの構成によっては、左右の振止め体を胴板のみに取付けてもよい。
【0033】
次に、このようにして引出し104,105の胴板3及び裏カバー2の左右に取付けられた振止め体141,141の作用について説明する。図7はワゴン本体102の右側板107及び右前補強体131と引出し104(105)の右側の振止め体141との関係を示しているが、ワゴン本体102の左側板107及び左前補強体121と引出し104(105)の左側の振止め体141との関係も、右側と左右対称であり、同様の関係となっている。
【0034】
引出し104(105)を開けた状態から、図7に示すように引出し104(105)を閉じると、左右の振止め体141,141のガイド部144,…が左右の前補強体121,131(ワゴン本体102の左右側板107,107の前面から後方に段落ちした側框)の内側面間に入るため、引出し104(105)の左右方向の移動が規制され、がたつきが抑制される。
【0035】
前記のとおり、左右の前補強体121,131による補強強度及び剛性が高いこと、さらに、前補強体121,131、上框連結体112,112及び下框連結体113,113並びに上框108a及び下框109aにより強固な矩形の枠体(框体)が形成されることから、左右の前補強体121,131間の間隔(間口)の寸法精度を高くすることができる。したがって、左側の振止め体141のガイド部144,144と左前補強体121との間隔、及び、右側の振止め体141のガイド部144,144と右前補強体131との間隔を狭くすることができるため、該左右の振止め体141,141による振止め効果を高めることができる。
【0036】
また、引出し104(105)を開けた状態から、図7に示すように引出し104(105)を閉じると、左右の前補強体121,131(ワゴン本体102の左右側板107,107の前面から後方に段落ちした側框)の前面が当止め部になっているため、該当止め部に、左右の振止め体141,141の当接部146,146が当接し、引出し104(105)とワゴン本体102との衝突による衝撃が緩和される。さらに、左右の前補強体121,131からなる強固な当止め部により、引出し104(105)の当止めを確実に行うことができると共に、該当止め部の変形を抑制することができる。
【0037】
そして、ワゴン本体102内に引出し104(105)を収容した状態で、引出し前板1が、左右の側板107,107の前端部内面及び左右の前補強体121,131の前面により形成される段落ち部の前側に位置し、平面視及び側面視において、引出し前板1が視認されないため、すっきりとした外観の印象を与えることができる。
【0038】
ここで、該当接部146が設けられた振止め体141の前板143は、引出し前板1の後側に位置するが、左右の振止め体141,141は、前記のとおり全体として強度及び剛性が高い形状であり、前板1に直接取付けられずに、裏カバー2及び胴板3に取付られるため、引出し前板1に掛かる力は小さく、該引出し前板1の変形を抑制することができる。
【0039】
また、引出し104(105)を閉じて、左右の振止め体141,141の当接部146,146が左右の前補強体121,131に当接すると、該前補強体121,131及び側板107,107に力が掛かるが、前記のとおり、前補強体121,131による補強強度及び剛性が高いこと、並びに、左右の側板107,107の係合凸片107b,…と前補強体121,131の係合孔121b,…及び131b,…とは、係合しているのみで溶着等により一体化されていないことから、ワゴン本体102の側板107,107の前端部にはほとんど力が掛からないため、該前端部の変形が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態に係る収納家具本体の補強構造が用いられた上下2段の引出しを備えたワゴンを示す縦断左側面図である。
【図2】ワゴン本体側板の左前端部の補強構造を示す分解斜視図である。
【図3】同じく右前端部の補強構造を示す分解斜視図である。
【図4】引出しの左側面図である。
【図5】同じく分解斜視図である。
【図6】振止め体の形状説明図であり、(a)は左の振止め体を右側から見た斜視図、(b)は右の振止め体を右側から見た斜視図である。
【図7】引出しを閉じた状態における引出し及び側板の補強構造を示す横断平面図である。
【符号の説明】
【0041】
101 ワゴン(収納家具)
102 ワゴン本体(収納家具本体)
103 案内手段
104 上段引出し
105 下段引出し
106,107側板
107a 折曲部
107b 係合凸片
108a 上框
109a 下框
112 上框連結体
113 下框連結体
121 左前補強体
121a 取付板
121b 係合孔
131 右前補強体
131a 取付板
131b 係合孔
141 振止め体
142 側板
142a 係合片
143 前板
143a 係止片
144 ガイド部
145 連結板
146 当接部
1 前板
2 裏カバー
3 胴板
3a 引出しレール
4 後板
29 裏板支持板
29a 係合孔
41 係合片
41a 後面板
41b 上面板
42 係合凸部
43 後面板
43a 係合孔
44 側面板
44a 係止孔
45 突起
45a 係合孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納家具本体の左右の側板の前端部を左右方向の内側及び後側へ連続して折り曲げて平面視略コ字状とし、該折曲部の後端から後方に突出する係合凸片を上下に複数設け、上下に延びる、開口部側を前記左右の側板の内面に対向させた平面視略コ字状の左右の前補強体の前面に、前記係合凸片と係合する係合孔又は係合凹部を上下に複数設け、前記左右の前補強体と一体又は別体の、前記側板に沿って後方に延びる前後の取付板を設け、前記係合凸片に前記係合孔又は係合凹部を係合させた状態で、前記左右の側板と前記左右の前補強体の前後の取付板とを溶着してなることを特徴とする収納家具本体の補強構造。
【請求項2】
前記左右の前補強体の上下端に左右方向の内側へ延出する上框連結体及び下框連結体をそれぞれ溶着し、左右の上框連結体と上框とを溶着するとともに、左右の下框連結体と下框とを溶着してなる請求項1記載の収納家具本体の補強構造。
【請求項3】
前記収納家具がワゴンであり、該ワゴン本体内に引出しを収容した状態で、該引出しの前板を、前記左右の側板の前端部内面及び前記左右の前補強体の前面により形成される段落ち部の前側に位置させ、平面視及び側面視において、前記前板が視認されない請求項1記載の収納家具本体の補強構造。
【請求項4】
前記段落ち部を、前記収納家具本体内への引出し収容時の当止め部としてなる請求項3記載の収納家具本体の補強構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−143682(P2007−143682A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−339700(P2005−339700)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】