説明

収納容器、収納容器による収納方法

【課題】グリースのように温度低下による熱収縮が生じる物体を充填する際に、容器本体が内側に凹んでしまうのを防止する。
【解決手段】缶底部に地板が巻締められているとともに最上部に開口部2が形成されている缶胴体5内にグリースを充填して、開口部2を天蓋7により閉蓋することによりこれを収納するグリースの収納方法であって、缶胴体5における開口部2外側に巻き込み突出形成された湾曲形状の固定縁部3に周縁溝部9を重ねるとともに、周縁溝部9から延設された複数のラグ21により固定縁部3を被包するようにして係止して開口部2を閉蓋し、周縁溝部9において、パッキンを非充填とするとともに頂部より内側の部位において突出された突出部11を固定縁部3に接触支持させることにより当該周縁溝部9と固定縁部3との間に空洞26を形成するようにして閉蓋する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペール缶又はドラム缶等のように円筒状に成形されて缶底部に地板が巻締められている缶胴体と、これを閉蓋する天蓋からなる収納容器、並びに収納容器による収納方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペール缶やドラム缶等の収納容器が従来から広く用いられている。この収納容器は、薬品や塗料、オイル等をはじめとした各種液体の保管や運搬等の用途に利用される。また、この収納容器は、通常断面円形状に構成されてなるとともに上部に開口部を有し、当該開口部を円形の容器蓋によって密閉可能とされている。
【0003】
ちなみに、この容器蓋には、収納容器本体を嵌め込むための嵌合溝が円環状に形成されてなり、この嵌合溝には、容器内部の気密性や液密性を維持するために樹脂製及びゴム製のパッキンが設けられている場合が多い。
【0004】
図9は、特許文献1に開示されているように嵌合溝にゴム製のパッキンを設けた収納容器の例を示している。図9は、かかる従来例の収納容器の組立分解斜視図及び蓋の縁重なり部の構成を示す拡大断面図であり、図10は同じ従来例の蓋と容器本体を締め付け固定した状態を示す切断拡大断面図である。ペール缶等の収納容器51は、上部を全開口してなる開口部52、この開口部52の外側に適宜な幅に巻き込まれて湾曲突出形成された蓋固定縁部53とからなる容器本体55と、蓋固定縁部53の上部全周に密着する弾性復元力のあるリングパッキン56と、蓋本体57、この蓋本体57の蓋固定縁部53と重なる部位に形成された、蓋固定縁部53とリングパッキン56を挟んで重なる縁重なり部58、蓋固定縁部53の中ほどより内側の適宜な部位に向かい合う前記縁重なり部の一部を、該蓋固定部に向かって突出させてなる突出部59とからなる蓋60と、この蓋60の縁重なり部58と容器本体55の蓋固定縁部53間とを押さえつけて、リングパッキン56を収縮密着させ、縁重なり部58と蓋固定縁部53を密閉状態にして固定する。ちなみに、蓋60の外周にはラグ71が複数に亘り設けられ、このラグ71により蓋固定縁部53を被包するようにして係止可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−177765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した特許文献1に係る開示技術では、あくまで容器本体内部と外部との間がリングパッキン56により遮蔽されて密閉状態になる。このため、容器本体に充填するものが密閉状態での保管が必要となるケースにおいてはより好ましい構成といえる。
【0007】
しかしながら、例えばグリースのような密閉状態での保管は求められず、外気と接触しても特に問題にならない場合には、上述したリングパッキン56の構成は特段の必要にならない。これに加えて、グリースは、比較的高温に加熱されている状態で容器本体に充填されるが、この状態で天蓋を閉めて外気と遮断するようにした場合、グリースの温度が低下することによる熱収縮で、容器本体の気体もこれに応じて減圧作用が働く。以下この減圧作用をバキューム現象という。このとき、リングパッキン56により容器本体内が完全に密閉状態とされている場合に係るバキューム現象が作用すると、容器本体が内側に凹んでしまい、容器が変形してしまう。特に業者が取引先にグリースを納品する場合に、そのグリースを充填された容器本体の見た目が悪いと、取引先からの心証を害してしまうことから、改善に対する要望は日に日に大きくなっていた。
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、グリースのように充填後に温度変化が生じるような収納物を充填する際に、容器本体が内側に凹んでしまうのを防止することが可能な収納容器、収納容器による収納方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明を適用した収納容器は、上述した課題を解決するために、缶底部に地板が巻締められているとともに最上部に開口部が形成されている缶胴体と、上記開口部を閉蓋する天蓋とを備える収納容器において、上記缶胴体は、上記開口部外側に巻き込み突出形成された湾曲形状の固定縁部を有し、上記天蓋は、上記固定縁部と重なる部位に形成された周縁溝部と、上記周縁溝部から延設された複数のラグとを有し、上記周縁溝部を上記固定縁部に重ねるとともに、上記ラグにより上記固定縁部を被包するようにして係止して上記開口部を閉蓋可能とされ、上記周縁溝部は、パッキンを非充填とするとともに頂部より内側の部位において突出された突出部を有し、閉蓋時には当該突出部が上記固定縁部に接触支持されることにより当該周縁溝部と上記固定縁部との間に空洞を形成していることを特徴とする。
【0010】
本発明を適用した収納容器は、上述した課題を解決するために、缶底部に地板が巻締められているとともに最上部に開口部が形成されている缶胴体と、上記開口部を閉蓋する天蓋とを備える収納容器において、上記缶胴体は、上記開口部外側に巻き込み突出形成された湾曲形状の固定縁部を有し、上記天蓋は、上記固定縁部と重なる部位に形成された周縁溝部とを有し、上記周縁溝部を上記固定縁部に重ねることにより上記開口部を閉蓋可能とされ、上記周縁溝部は、パッキンを非充填とするとともに頂部より内側の部位において突出された突出部を有し、閉蓋時には当該突出部が上記固定縁部に接触支持されることにより当該周縁溝部と上記固定縁部との間に空洞を形成し、更に閉蓋時には上記天蓋の周縁溝部と上記固定縁部とを外側から被包するようにして締め付け固定手段により締め付け固定してなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明を適用したグリースの収納方法は、缶底部に地板が巻締められているとともに最上部に開口部が形成されている缶胴体内にグリースを充填して、上記開口部を天蓋により閉蓋することによりこれを収納するグリースの収納方法において、上記缶胴体における上記開口部外側に巻き込み突出形成された湾曲形状の固定縁部に周縁溝部を重ねるとともに、上記周縁溝部から延設された複数のラグにより上記固定縁部を被包するようにして係止して上記開口部を閉蓋し、上記周縁溝部において、パッキンを非充填とするとともに頂部より内側の部位において突出された突出部を上記固定縁部に接触支持させることにより当該周縁溝部と上記固定縁部との間に空洞を形成するようにして閉蓋し、上記充填されたグリースが低温化することにより缶胴体内に減圧作用が働く際に、上記突出部と上記固定縁部との微細間隙を介して外部から缶胴体内に空気を流入可能とし、又は缶胴体内から外部へ空気を流出可能としたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明を適用したグリースの収納方法は、缶底部に地板が巻締められているとともに最上部に開口部が形成されている缶胴体内に収納物を充填して、上記開口部を天蓋により閉蓋することによりこれを収納する収納容器による収納方法において、上記缶胴体における上記開口部外側に巻き込み突出形成された湾曲形状の固定縁部に周縁溝部を重ねて外側から被包するようにして締め付け固定手段により締め付け固定し、上記周縁溝部において、パッキンを非充填とするとともに頂部より内側の部位において突出された突出部を上記固定縁部に接触支持させることにより当該周縁溝部と上記固定縁部との間に空洞を形成するようにして閉蓋し、上記充填された収納物の温度変化に応じて缶胴体内の圧力が変化しようとする際に、上記突出部と上記固定縁部との微細間隙を介して外部から缶胴体内に空気を流入可能とし、又は缶胴体内から外部へ空気を流出可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上述した構成からなる本発明によれば、周縁溝部の内側でパッキンを非充填しているとともに、突出部と固定縁部とは互いに接触しているものの、ミクロンオーダで見た場合に、微細間隙が生じているのが通常であることから、かかる微細間隙を通して缶内へ空気を通過させることが可能となる。即ち、閉蓋時においても缶胴体内は完全な密閉状態とはならず、微細な間隙を通じて外部と通気可能な構成となっている。このため、バキューム現象が作用しようとした場合に外部から空気が流入し、缶胴体が内側に凹んでしまうのを防止することができ、常時見た目の形状を良質に維持することが可能となる。
【0014】
また本発明では、空洞の存在により毛細管現象で缶胴体内に浸入するのを防止することができ、毛細管現象で缶胴体内部へ雨水が一気に浸入してしまうのを防止することが可能となる。
【0015】
更に本発明では、ラグの間隙を介して空洞までは虫や不純物が混入する場合はあるものの、あくまで突出部と固定縁部とを当接させることを必須の構成要素としているため、かかる虫や不純物がこれを通過して缶胴体の内部へ混入してしまうのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用した収納容器の組立分解斜視図及び蓋の縁重なり部の構成を示す拡大断面図である。
【図2】本発明を適用した収納容器において図1におけるA部の拡大断面図である。
【図3】周縁溝部を固定縁部に嵌め込む場合について説明するための拡大断面図である。
【図4】締機によりラグの締め付けを行う例について説明するための図である。
【図5】缶胴体を天蓋により閉蓋した後における周縁溝部並びに固定縁部の拡大断面図である。
【図6】この空洞に浸入した雨水がその空洞26内に貯留した状態を示す図である。
【図7】締め付け固定器具により天蓋を固定する収納容器の組立分解斜視図を示す図である。
【図8】締め付け固定器具により締め付けられた周縁溝部と固定縁部の拡大断面図である。
【図9】嵌合溝にゴム製のパッキンを設けた従来型の収納容器の例を示す図である。
【図10】従来例の蓋と容器本体を締め付け固定した状態を示す切断拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明を適用した収納容器の組立分解斜視図及び蓋の縁重なり部の構成を示す拡大断面図である。収納容器1は、例えばペール缶又はドラム缶等に具現化されるものであって、円筒状に成形されて缶底部に地板が巻締められているとともに上部を全開口してなる開口部2と、この開口部2の外側に適宜な幅に巻き込まれて湾曲突出形成された固定縁部3とを有する缶胴体5と、この缶胴体5の周面に設けられた提手4と、開口部2を閉蓋する天蓋7とを備えている。この天蓋7は、閉蓋時において固定縁部3と重なる部位に形成された周縁溝部9と、周縁溝部9から延設された複数のラグ21とを有している。なお、本発明は、ペール缶やドラム缶以外のいかなる缶体に対しても適用可能であり、その形状も円筒状のものに限定されるものではない。
【0019】
図2は、図1におけるA部の拡大断面図を示している。周縁溝部9は、略鉛直上方に立ち上げられた垂壁部12と、点線に示す断面円弧状となるように成形された円弧部13とを有しているが、当該円弧部13の頂部13aから垂壁部12の部位に至るまでの略中央に突出部11を形成させている。この突出部11は、周縁溝部9における内側に向けて突出されてなり、内側向けて凸となるような形状で構成されている。この突出部11の成形方法は、例えばプレス加工、ロール加工の方法等を用いるようにしてもよい。通常この突出部11は、断面湾曲形状で構成されている。またこの円弧部13の先端には、ラグ21が延設されている。なお、この周縁溝部9の内側ではパッキンは非充填とされている。
【0020】
上述の如き構成からなる缶胴体5を天蓋7により閉蓋する場合について以下説明をする。先ず天蓋7を開口部2の上から降ろしていく。このとき図3に示すように天蓋7の周縁溝部9は固定縁部3の直上に位置合わせを行い、周縁溝部9を固定縁部3に嵌め込むようにしてこれを降ろしていく。突出部11が固定縁部3に当接されることになる。そしてこの状態では突出部11が固定縁部3に接触支持されることになる。
【0021】
次に締機によりラグ21の締め付けを行う。図4(a)に示すように締機の天板31を円弧部13の頂部13aに押し当てる。このとき締機のツメ22は、ラグ21から離間した位置にある。次に図4(b)に示すように、締機のツメ22を回転芯23を中心に回転させることにより、締機のツメ22の先端を介してラグ21を内側へ向けて押圧する。その結果、ラグ21は、缶胴体5の周壁に当接された状態となる。本発明では、突出部11が形成されることで加工硬化されて面内剛性を向上させることが可能となり、図4(a)に示すように天板31で押さえ込みつつ、ツメ22を押圧する際において、突出部11が突っ張ることにより空洞26を形成することが可能となる。
【0022】
図5は、缶胴体5を天蓋7により閉蓋した後における周縁溝部9並びに固定縁部3の拡大断面図を示している。固定縁部3は、ラグ21により被包するようにして係止して固定されている。またこの閉蓋時には、突出部11が固定縁部3に接触支持される結果、周縁溝部9と固定縁部3との間に空洞26が形成されている。更には、固定縁部3における外周3aと、円弧部13の内周13bとが接触している状態となっている。
【0023】
本発明では、このような構成で缶胴体5に天蓋7が閉蓋されることにより、以下の効果を奏し得る。
【0024】
先ず、本発明では、雨水が外部から缶胴体5内部に浸入するのを防止することができる。仮に上述の如き閉蓋が行われた場合、雨水は、固定縁部3における外周3aと、円弧部13の内周13bとの間隙をいわゆる毛細管現象に基づいて空洞26の内部まで浸入してくる。しかしながら、この空洞26に浸入した雨水は、図6(a)に示すように空洞26内に貯留することになる。仮に空洞26が形成されることなく、固定縁部3と周縁溝部9とが互いに接触している場合には、浸入した雨水は毛細管現象で一気に缶胴体5の内部まで到達してしまうこととなるが、空洞26を形成させることで毛細管現象を生じないようにすることが可能となる。図6(b)は、天蓋7により閉蓋された状態における正面図を示している。空洞26は、完全に密閉構造ではなく、ラグ21の間に設けられた隙間48を介して外部との間で通気可能とされている。このため隙間48から空洞26内へ雨水が浸入した場合であっても、この隙間48を介して外部にこれを排出させることが可能となる。
【0025】
このとき突出部11が頂部13aより内側の部位において突出させて構成することにより、突出部11と固定縁部3との接点の距離と、固定縁部3における外周3aと、円弧部13の内周13bとの接点の距離を遠くすることができる。この距離があまりに近い場合には、空洞26に紛れ込んだ雨水が突出部11と固定縁部3との間隙を毛細管現象に基づいて通過してしまうことになり、缶胴体5内に雨水が浸入してしまうこととなる。またかかる距離があまりに近いと空洞26の容積が小さくなってしまい、空洞26に紛れ込んだ雨水が少しでも増えてしまうと直ぐに突出部11と固定縁部3との間隙にまで到達してしまう。このため、この突出部11と固定縁部3との接点の距離と、固定縁部3における外周3aと円弧部13の内周13bとの接点の距離をある程度離間させることで、空洞26に浸入した雨水が缶胴体5内に毛細管現象を通じて浸入してしまうのを防止することが可能となる。即ち、空洞26の存在により毛細管現象で缶胴体内に浸入するのを防止することができる。
【0026】
但し、上述した距離があまりに遠くなる場合、つまり突出部11が点線Bに示されるように垂壁部12に設けられて固定縁部3との接点を形成している場合には、空洞26内に入り込んだ雨水が自重で落ちてしまい、突出部11と固定縁部3との間隙を毛細管現象に基づいて通過してしまうことになり、缶胴体5内に雨水が浸入してしまうこととなる。また、上述したツメ22を押圧する際において、突出部11が突っ張ることにより防止する面内剛性の向上の効果を発現することができず、空洞26を形成することができない。更に、突出部11が点線Bに示されるように垂壁部12に設けられた場合、収納容器1を大量に積み重ねた場合にその重さに耐えられなくなり空洞26が凹んでしまう。
【0027】
このため、この突出部11の形成位置は、理想的には、円弧部13の頂部13aから垂壁部12に至るまでの略中央とされていることが望ましい。
【0028】
また、本発明によれば、仮にラグ21の間隙を介して空洞26までは虫や不純物が混入する場合はあるものの、あくまで突出部11と固定縁部3とを当接させることを必須の構成要素としているため、かかる虫や不純物がこれを通過して缶胴体5の内部へ混入してしまうのを防止することができる。
【0029】
更に本発明は、グリースのように充填後に温度変化が生じるような収納物を充填した場合において非常に有利な効果を発揮する。グリースは、流動性を向上させることによる充填容易性を鑑み、特に充填時には比較的高温に加熱されている状態で容器本体に充填されるが、この状態で天蓋を閉めて外気と遮断するようにした場合、グリースの温度が低下することによる熱収縮で、容器本体の気体もこれに応じて減圧作用が働き、バキューム現象が生じようとする。このとき缶胴体5内に減圧作用が働く際に、突出部11と固定縁部3との微細間隙を介して外部から缶胴体内に空気を流入させることができる。実際に突出部11と固定縁部3とは互いに接触しているが、ミクロンオーダで見た場合に、微細間隙が生じているのが通常であり、かかる微細間隙を通して空気を通過させることが可能となる。特に本発明では、周縁溝部9の内側においてリングパッキンを実装しない構成としていることから、缶胴体5は完全な密閉状態とはならず、微細な間隙を通じて外部と通気可能な構成となっている。このため、バキューム現象が作用しようとした場合に外部から空気が流入し、缶胴体5が内側に凹んでしまうのを防止することができ、常時見た目の形状を良質に維持することが可能となる。
【0030】
また、グリースを缶胴体5の内部に充填したときには、温度が高い状態であるため、空気が熱せられて膨張しようとするが、かかる場合においても突出部11と固定縁部3との微細間隙を通じて空気を外部に排出することができ、容器が膨らんでしまうのを防止することが可能となる。
【0031】
また、グリースに限らず、温度変化に応じて熱膨張、熱収縮が生じる収納物を充填する際にも同様の有利な効果を発揮し得ることは勿論である。
【0032】
なお、本発明は、上述した収納容器に具現化されるのみならず、グリースの収納方法として具現化されるものであってもよいことは勿論である。
【0033】
また本発明は、上述したようにラグ21により天蓋7を固定する場合に限定されるものではなく、例えば図7に示すように締め付け固定器具41を用いて天蓋7を固定するようにしてもよい。図7において図1と同一の構成については、同一の符号を付すことにより以下での説明を省略する。
【0034】
締め付け固定器具41は、締め付けバンドから構成され機械式の開閉操作部40を操作するのみで、締め付けを行い、或いはそれを開放することが自在にできることとなっている。周縁溝部9を固定縁部3に嵌め込むようにして天蓋7を降ろし、最後にこの締め付け固定器具41の開閉操作部40を操作することでこれを緊張させる。その結果、この締め付け固定器具41により、周縁溝部9と固定縁部3とを外側から被包するようにして締め付け固定されて閉蓋することができる。なお、締め付け固定器具41は、上述の如き構成に限定されるものではなく、例えばゴムバンドのような弾性収縮可能な材料で構成することで、これを締め付け固定するようにしてもよいし、他のいかなる周知の締め付け固定手段に代替することができる。
【0035】
図8は、この締め付け固定器具41により締め付けられた周縁溝部9と固定縁部3の拡大断面を示している。閉蓋時には、突出部11が固定縁部3に接触支持される結果、周縁溝部9と固定縁部3との間に空洞26が形成されている。また、仮に空洞26に雨水が浸入しても、突出部11と固定縁部3との接点が奥行方向に向けて離間しているため、上述と同様にその接点を通じて毛細管現象により缶胴体5内部に雨水が浸入してしまうのを防止できる。なお、この例ではラグ21の構成を設けない形態としている。
【実施例1】
【0036】
以下、本発明を適用した収納容器について実際に効果を確認するために以下の試験を行った。
【0037】
先ず上述したバキューム現象に対しても缶胴体5の陥没が防止できるか否かを検証するためのバキュームテストを行った。このバキュームテストでは、本発明を適用した収納容器1における缶胴体5に90℃のお湯を約半分程度注ぎ、天蓋7を上述の方法により閉蓋した。そして、この天蓋7の上に120kgの重しを載せたものと、係る重しを載せない無負荷状態のものを1種類ずつ設定し、24時間放置させた後の天蓋7並びに缶胴体5の変形の有無を確認した。
【0038】
その結果、重しを載せたもの、重しを載せないもの、いずれについても天蓋7並びに缶胴体5についてバキューム現象による変形は特に確認されなかった。
【0039】
次に本発明を適用した収納容器1における缶胴体5に90℃のお湯を約半分程度注いたものと、固定縁部3の下8cmまで注いだものを用意し、それぞれ天蓋7を上述の方法により閉蓋した。また、この天蓋7の上にさらにもう一つ別の収納容器を載置し、当該別の収納容器の上に120kgの重しを載せ、24時間放置させた後の天蓋7並びに缶胴体5の変形の有無を確認した。
【0040】
その結果、90℃のお湯を約半分程度注いたものと、固定縁部3の下8cmまで注いだもの、何れについてもバキューム現象による変形は特に確認されなかった。
【0041】
次にシャワーリングテストを行った。このシャワーリングテストでは、缶胴体5を空にした状態で天蓋7を上述の方法により閉蓋した。次に散水ノズルを使用し、雨量約50mm/10分相当のシャワーをこの閉蓋した収納容器1に放水した。1時間に亘りこの放水を連続して実行した後、収納容器1の表面に付着した水滴を十分に拭き取った上で、天蓋7を外し、缶胴体5の内部に水が浸入したか否かを確認した。
【0042】
その結果、缶胴体5の内部への水の浸入は一切確認されなかった。また、水は固定縁部3におけるちょうど空洞26に入る部分において付着していたことから、上述した作用が生じることを実験的に検証することができた。
【0043】
更に横倒しテストも行った。この横倒しテストでは、内部に水を入れた収納容器1を真横に倒して30分放置した。そして、30分経過後、缶胴体5と天蓋7との間から水が漏れるか否かを確認した。その結果、水漏れは全く確認できなかった。
【0044】
以上の実験を通じて上述した本発明特有の効果を確認することができた。
【符号の説明】
【0045】
1 収納容器
2 開口部
3 固定縁部
4 提手
5 缶胴体
7 天蓋
9 周縁溝部
11 突出部
12垂壁部
13 円弧部
21 ラグ
22 ツメ
23 ツメ回転芯
26 空洞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶底部に地板が巻締められているとともに最上部に開口部が形成されている缶胴体と、上記開口部を閉蓋する天蓋とを備える収納容器において、
上記缶胴体は、上記開口部外側に巻き込み突出形成された湾曲形状の固定縁部を有し、
上記天蓋は、上記固定縁部と重なる部位に形成された周縁溝部と、上記周縁溝部から延設された複数のラグとを有し、上記周縁溝部を上記固定縁部に重ねるとともに、上記ラグにより上記固定縁部を被包するようにして係止して上記開口部を閉蓋可能とされ、
上記周縁溝部は、パッキンを非充填とするとともに頂部より内側の部位において突出された突出部を有し、閉蓋時には当該突出部が上記固定縁部に接触支持されることにより当該周縁溝部と上記固定縁部との間に空洞を形成していること
を特徴とする収納容器。
【請求項2】
上記周縁溝部は、略鉛直上方に立ち上げられて断面円弧状となるように成形されてその先端に上記ラグが延設されてなり、当該円弧の頂部から上記略鉛直上方に立ち上げられた部位に至るまでの略中央に上記突出部を形成させてなること
を特徴とする請求項1記載の収納容器。
【請求項3】
缶底部に地板が巻締められているとともに最上部に開口部が形成されている缶胴体と、上記開口部を閉蓋する天蓋とを備える収納容器において、
上記缶胴体は、上記開口部外側に巻き込み突出形成された湾曲形状の固定縁部を有し、
上記天蓋は、上記固定縁部と重なる部位に形成された周縁溝部とを有し、上記周縁溝部を上記固定縁部に重ねることにより上記開口部を閉蓋可能とされ、
上記周縁溝部は、パッキンを非充填とするとともに頂部より内側の部位において突出された突出部を有し、閉蓋時には当該突出部が上記固定縁部に接触支持されることにより当該周縁溝部と上記固定縁部との間に空洞を形成し、
更に閉蓋時には上記天蓋の周縁溝部と上記固定縁部とを外側から被包するようにして締め付け固定手段により締め付け固定してなること
を特徴とする収納容器。
【請求項4】
上記缶胴体に充填された収納物の温度変化に応じて缶胴体内の圧力が変化しようとする際に、上記突出部と上記固定縁部との微細間隙を介して外部から缶胴体内に空気を流入可能とされ、又は缶胴体内から外部へ空気を流出可能とされていること
を特徴とする請求項1〜3のうち何れか1項記載の収納容器。
【請求項5】
上記空洞の存在により毛細管現象で缶胴体内に浸入するのを防止し、
上記突出部と上記固定縁部との接触部は、缶胴体内に異物が混入するのを防止すること
を特徴とする請求項1〜4のうち何れか1項記載の収納容器。
【請求項6】
缶底部に地板が巻締められているとともに最上部に開口部が形成されている缶胴体内に収納物を充填して、上記開口部を天蓋により閉蓋することによりこれを収納する収納容器による収納方法において、
上記缶胴体における上記開口部外側に巻き込み突出形成された湾曲形状の固定縁部に周縁溝部を重ねるとともに、上記周縁溝部から延設された複数のラグにより上記固定縁部を被包するようにして係止して上記開口部を閉蓋し、
上記周縁溝部において、パッキンを非充填とするとともに頂部より内側の部位において突出された突出部を上記固定縁部に接触支持させることにより当該周縁溝部と上記固定縁部との間に空洞を形成するようにして閉蓋し、
上記充填された収納物の温度変化に応じて缶胴体内の圧力が変化しようとする際に、上記突出部と上記固定縁部との微細間隙を介して外部から缶胴体内に空気を流入可能とし、又は缶胴体内から外部へ空気を流出可能としたこと
を特徴とする収納容器による収納方法。
【請求項7】
缶底部に地板が巻締められているとともに最上部に開口部が形成されている缶胴体内に収納物を充填して、上記開口部を天蓋により閉蓋することによりこれを収納する収納容器による収納方法において、
上記缶胴体における上記開口部外側に巻き込み突出形成された湾曲形状の固定縁部に周縁溝部を重ねて外側から被包するようにして締め付け固定手段により締め付け固定し、
上記周縁溝部において、パッキンを非充填とするとともに頂部より内側の部位において突出された突出部を上記固定縁部に接触支持させることにより当該周縁溝部と上記固定縁部との間に空洞を形成するようにして閉蓋し、
上記充填された収納物の温度変化に応じて缶胴体内の圧力が変化しようとする際に、上記突出部と上記固定縁部との微細間隙を介して外部から缶胴体内に空気を流入可能とし、又は缶胴体内から外部へ空気を流出可能としたこと
を特徴とする収納容器による収納方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−218741(P2012−218741A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83177(P2011−83177)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(598073578)新邦工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】