受信システム
【課題】周波数変換した信号をデジタル化する際の負荷、及びデジタル信号を処理する際の負荷を低減し、無線周波数帯を掃引する際に要する時間を短縮する。
【解決手段】受信システムは、互いに異なる周波数帯域でかつ互いに異なる速度で周波数掃引される複数の局部発振信号を生成する局部発振信号生成部と、入力された無線信号を、複数の局部発振信号に対応する周波数帯域に分割し、分割された周波数帯域の各無線信号を当該周波数帯域に対応する局部発振信号と乗算して、分割された周波数帯域の無線信号を同一の周波数帯域に変換して出力する周波数変換部と、周波数変換部の出力をAD変換して出力するAD変換部と、AD変換された信号を周波数領域の信号に変換し、変換した信号の電力値が閾値電力を超えた周波数成分について受信信号が有ると判定し、受信信号が周波数を遷移する速度に基づいて信号を分離する信号分離検出部とを具備する。
【解決手段】受信システムは、互いに異なる周波数帯域でかつ互いに異なる速度で周波数掃引される複数の局部発振信号を生成する局部発振信号生成部と、入力された無線信号を、複数の局部発振信号に対応する周波数帯域に分割し、分割された周波数帯域の各無線信号を当該周波数帯域に対応する局部発振信号と乗算して、分割された周波数帯域の無線信号を同一の周波数帯域に変換して出力する周波数変換部と、周波数変換部の出力をAD変換して出力するAD変換部と、AD変換された信号を周波数領域の信号に変換し、変換した信号の電力値が閾値電力を超えた周波数成分について受信信号が有ると判定し、受信信号が周波数を遷移する速度に基づいて信号を分離する信号分離検出部とを具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広帯域な無線信号を受信する受信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や無線LANなどの無線通信システムの発展に伴い、周波数需要が増大している。特に、数GHz帯の周波数帯においては稠密に周波数が割り当てられており、新たな周波数帯域を確保することが難しい。このため、既に割当て済みの周波数の中で、「空間的」、「時間的」に使い分けることで、周波数の利用効率を上げることが検討されている。
【0003】
この実現には、利用状況により変化する利用可能な周波数帯域をリアルタイムに把握する必要がある。求められるセンシング用の無線受信機としては、周波数を広帯域に受信すること、他のシステムが存在しないことを示す低い受信レベルまで高精度に受信すること、高速なセンシングを実現することなどが必要である。
【0004】
無線帯域におけるセンシングには、広帯域な無線受信機で受信した無線信号を周波数変換後にデジタル化し、ソフトウェア無線機で解析する方法[非特許文献1]、スペクトラムアナライザを用いて広帯域な受信帯域を掃引しながら電力を受信する方法などがある[非特許文献2]。また、電波の利用状況を監視する電波監視システムは、無線信号を受信し、高速デジタル専用回線を用いてセンタ局へ集約し、データベース作成を行っている[非特許文献3]。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】石井、山本、樋口、「電波監視を考慮したソフトウェア受信機の開発」1998年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会 B5-47、page 297, 1998.
【非特許文献2】”Agilent N9344C Handheld Spectrum Analyzer Data Sheet”、[online]、平成23年3月16日、アジレント・テクノロジー(Agilent Technologies, Inc.)[平成23年6月30日検索]、インターネット<URL: http://cp.literature.agilent.com/litweb/pdf/5990-7193EN.pdf>
【非特許文献3】「DEURASシステム概要」、[online]、平成22年7月30日、総務省関東総合通信局、[平成23年6月30日検索]、インターネット<URL: http://www.soumu.go.jp/soutsu/kanto/re/system/index.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に記載されている技術では、対応する無線周波数帯が広帯域となった場合、デジタル信号へ変換時のデータ量が多く、アナログ−デジタル変換部や、信号処理部の処理負荷が大きくなるという問題がある。また、ネットワーク側へ伝送する際のコストが大きくなるという問題が生じる。
【0007】
また、非特許文献2に記載されている技術では、対応する無線周波数帯が広帯域となった場合、受信機で掃引が完了するまでの時間が長くなり、リアルタイム性が低下するという課題がある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、広帯域な無線周波数帯をセンシングする受信機において、IF(Intermediate Frequency;中間周波数)帯や、ベースバンド帯域の信号をデジタル化する際の負荷、及びデジタル信号を処理する際の負荷を低減し、無線周波数帯を掃引する際に要する時間を短縮することができる受信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は、互いに異なる周波数帯域で、かつ、互いに異なる速度で周波数掃引される複数の局部発振信号を生成する局部発振信号生成部と、入力された無線信号を、前記局部発振信号生成部が出力する前記複数の局部発振信号それぞれに対応する周波数帯域に分割し、分割された周波数帯域の無線信号それぞれを当該周波数帯域に対応する前記局部発振信号と乗算することにより、前記分割された周波数帯域の無線信号を同一の低周波数帯域に周波数変換して出力する周波数変換部と、前記周波数変換部の出力をデジタル信号に変換して出力するアナログ−デジタル変換部と、前記アナログ−デジタル変換部の出力を周波数領域の信号に変換し、変換した信号の電力値が予め定めた閾値電力を超えた周波数成分について受信信号が有ると判定し、当該周波数成分の受信信号が周波数を遷移する速度に基づいて信号を分離する信号分離検出部と、を具備することを特徴とする受信システムである。
【0010】
また、上記に記載の発明において、前記信号分離検出部は、前記受信信号に対する無線信号の周波数を、前記受信信号が低周波数帯域を遷移する周波数遷移量と同一の周波数遷移量で周波数掃引された局部発振信号の周波数と、前記受信信号の周波数とから算出することを特徴とする。
【0011】
また、上記に記載の発明において、前記信号分離検出部は、前記受信信号に対応する局部発振信号の周波数が増加する掃引をした際に、前記受信信号の周波数が増加する遷移をしていた場合、前記受信信号を、前記受信信号に対応する局部発振信号で周波数変換した下側波帯の成分と判定し、前記受信信号に対応する局部発振信号の周波数が増加する掃引をした際に、前記受信信号の周波数が減少する遷移をしていた場合、前記受信信号を、前記受信信号に対応する局部発振信号で周波数変換した上側波帯の成分と判定し、前記受信信号に対応する局部発振信号の周波数が減少する掃引をした際に、前記受信信号の周波数が減少する遷移をしていた場合、前記受信信号を、前記受信信号に対応する局部発振信号で周波数変換した下側波帯の成分と判定し、前記受信信号に対応する局部発振信号の周波数が減少する掃引をした際に、前記受信信号の周波数が増加する遷移をしていた場合、前記受信信号を、前記受信信号に対応する局部発振信号で周波数変換した上側波帯の成分と判定することを特徴とする。
【0012】
また、上記に記載の発明において、前記信号分離検出部は、前記局部発振信号の位相雑音の影響が少ない周波数帯域において、前記受信信号を検出することを特徴とする。
【0013】
また、上記に記載の発明において、前記局部発振信号生成部は、前記複数の局部発振信号の電力を互いに異なる時間変化のパターンを用いて変化させるとともに、前記複数の局部発振信号の電力の総和を一定にさせることを特徴とする。
【0014】
また、上記に記載の発明において、前記局部発振信号生成部は、所定の周波数を有する信号を出力する局部発振器と、前記局部発振器が出力する信号に対して、逓倍と分周とのいずれか一方、あるいは両方をして前記複数の局部発振信号を生成する周波数調整部とを備えることを特徴とする。
【0015】
また、上記に記載の発明において、前記局部発振信号生成部が備える前記局部発振器は1つであり、前記周波数変換部の内部で生じる前記局部発振器の逓倍信号を用いて前記複数の局部発振信号を生成することを特徴とする。
【0016】
また、上記に記載の発明において、前記周波数変換部は、所定の周波数の偶数倍波又は奇数倍波のいずれか一方の発生を抑圧するミキサを用いて構成され、前記局部発振信号生成部は、前記所定の周波数を有する信号と、前記所定の周波数の偶数倍波又は奇数倍波のいずれか一方の信号とを前記複数の前記複数の局部発振信号として生成することを特徴とする。
【0017】
また、上記に記載の発明において、前記信号処理部は、更に、前記局部発振信号生成部の局部発振信号の周波数、及び、搬送波の初期位相を示す位相情報を用いて、前記受信信号に含まれるデータの復調を行うことを特徴とする。
【0018】
また、上記に記載の発明において、前記信号処理部は、無線周波数帯ごとの用途、無線電力規格、無線変調方式、及び当該用途において用いられる位置を示す周波数利用情報を用いて、前記受信信号を検出することを特徴とする。
【0019】
また、上記に記載の発明において、前記信号分離検出部と前記アナログ−デジタル変換部とが、前記局部発振信号生成部と周波数変換部と異なる場所に配置され、前記アナログ−デジタル変換部は、ネットワークを介して、前記周波数変換部が変換した信号を受信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、センシング対象となる無線信号の周波数帯域を複数に分割し、分割した周波数帯域ごとに周波数変換し、同一の周波数帯域に変換する。このとき、分割した周波数帯域それぞれに対応する局部発振信号を並行に掃引することにより、無線信号の周波数帯域の掃引に要する時間を短縮することができる。また、分割された周波数帯域それぞれの無線信号を同一の周波数帯域に変換することで、変換した無線信号の帯域を削減することができ、変換した無線信号をデジタル化する際に要する負荷、デジタル化した無線信号を処理する際の負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態における受信機100の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】同実施形態における無線周波数帯の信号、局部発振信号、及びIF帯の信号の一例を示す図である。
【図3】同実施形態における局部発振信号ごとの掃引速度(傾き)の一例を示す図である。
【図4】同実施形態における信号処理部180が行う受信信号を検出する際の周波数及び電力判定手法のフローチャートである。
【図5】第2実施形態における受信機200の構成を示す概略ブロック図である。
【図6】同実施形態における局部発振信号ごとの掃引速度(傾き)の一例を示す図である。
【図7】同実施形態における無線周波数帯の信号、局部発振信号、及びIF帯の信号の一例を示す図である。
【図8】第3実施形態における受信機300の構成を示す概略ブロック図である。
【図9】同実施形態における振幅制御器335a〜335cを用いた局部発振信号の電力変化パターンを示す図である。
【図10】変形例としての受信システム400の構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
まず、本発明に係る実施形態における受信機(受信システム)の概要について説明する。以下の実施形態における受信機は、広帯域の周波数帯域を複数の周波数帯域に分割し、それぞれの帯域に含まれる信号を中間周波数(Intermediate Frequency;IF)帯(又はベースバンド周波数帯)の信号へ周波数変換する。このとき、互いに掃引する周波数帯域が異なり、かつ、掃引速度(周波数変化速度)が異なる複数の局部発振信号を用いて、同一のIF帯の信号へ周波数変換する。同じIF帯に周波数変換された信号は、IF帯において合成されることとなるため、特にデジタル変換した場合のデータ量を小さくする効果がある。一方、合成されたIF帯の信号を分離する際は、掃引速度(周波数変化速度)の相違に基づいて分離する。以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照して説明する。ここで、掃引とは、周波数変換に用いる局部発振信号の周波数を、予め定められたステップで、ある周波数から異なる周波数に変化させることである。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における受信機100の構成を示す概略ブロック図である。同図に示すように、受信システムとしての受信機100は、広帯域LNA(Low Noise Amplifier;低雑音増幅器)110と、局部発振信号生成部120、周波数変換部130、周波数帯域制限部140と、利得調整部150と、合成器160と、アナログ−デジタル変換部170と、信号処理部180とを備えている。
【0024】
広帯域LNA110は、アンテナを介して受信したRF(Radio Frequency;無線周波数)信号を増幅し、増幅したRF信号を周波数変換部130に出力する。
局部発振信号生成部120は、それぞれが異なる周波数の局部発振信号(LO1,LO2,…,LOM)を生成する局部発振器121−1〜121−Mの複数を有している。局部発振信号生成部120は、各局部発振器121−1〜121−Mが生成する局部発振信号を周波数変換部130に出力する。局部発振器121−1〜121−Mは、発振周波数を掃引して使うことができる。局部発振器121−1〜121−Mが局部発振信号の周波数を掃引する速度(掃引速度)は、局部発振器121−1〜121−Mごとに異なる。以下、局部発振信号LO1における掃引速度をVosc1とし、局部発振信号LOMにおける掃引速度をVoscMとする。
また、局部発振器121−1〜121−Mが生成する局部発振信号は、センシング対象とする無線周波数帯を分割したそれぞれの周波数帯に1対1に対応している。分割された無線周波数帯の信号それぞれは、対応する局部発振信号を用いて周波数変換することにより、同一のIF帯に周波数変換される。
【0025】
周波数変換部130は、複数の無線周波数帯のRF信号を、IF帯の信号に同時に周波数変換する。周波数変換部130は、局部発振信号生成部120が出力する各局部発振信号に対応するミキサ131を複数有している。各ミキサ131には、対応する局部発振信号と、RF信号とが入力される。各ミキサ131は、局部発振信号とRF信号とを乗算し、乗算によりIF帯に変換された信号を出力する。各ミキサ131でIF帯に周波数変換された信号は、周波数帯域制限部140に出力される。
【0026】
周波数帯域制限部140は、周波数変換部130から出力される複数の信号それぞれに含まれるIF帯の信号を通過させる。周波数帯域制限部140は、周波数変換部130が有する各ミキサ131に対応するローパスフィルタ回路141を複数有している。各ローパスフィルタ回路141は、周波数変換部130が出力する信号に含まれるIF帯以外の信号を減衰させて利得調整部150に出力する。
利得調整部150は、周波数帯域制限部140から出力される複数のIF帯の信号に対して、利得調整を行い合成器160に出力する。利得調整部150は、周波数帯域制限部140が有する各ローパスフィルタ回路141に対応して設けられている可変利得増幅器(VGA)151を複数有している。各VGA151は、周波数変換部130や周波数帯域制限部140における信号処理で減衰した信号のレベルを、予め定められた電力レベルになるよう増幅し、増幅した信号を合成器160に出力する。
【0027】
合成器160は、利得調整部150から出力される複数のIF帯の信号を1つのアナログ信号に合成してアナログ−デジタル変換部170に出力する。
アナログ−デジタル変換部170は、予め定められたサンプリング周波数で、合成器160が出力する信号に対してサンプリングを行い、アナログ信号の強度に応じたデジタル信号に変換し、時系列データのデジタル信号を生成する。また、アナログ−デジタル変換部170は、生成した時系列データのデジタル信号を信号処理部180に出力する。
信号処理部180には、アナログ−デジタル変換部170においてデジタル化された信号が入力される。信号処理部180は、入力された信号に対してフーリエ変換を行い、IF帯信号の周波数情報(各周波数ごとの電力情報、位相情報)を算出する。信号処理部180は、閾値以上の電力が検出されたIF帯信号の周波数情報の時間方向の変化を測定することにより、どのRF周波数に信号が存在するかを検出する。このとき、信号処理部180は、局部発振信号LO1〜LOMそれぞれの周波数変化速度(掃引速度)に基づいて、周波数情報から受信信号の分離及び検出を行う。
なお、デジタル化された時系列の入力信号から周波数情報の時間方向の変化を測定する為の信号変換方法は、フーリエ変換以外にも短時間フーリエ変換やウェーブレット変換、またウィグナー分布解析等を行う時間周波数変換方法を利用しても良い。また検出する値は相関値などの大きさでも良く、信号の電力レベルに限らない。
【0028】
図2は、本実施形態における無線周波数帯の信号、局部発振信号、及びIF帯の信号の一例を示す図である。ここでは、局部発振信号生成部120が3つの局部発振信号(LO1、LO2、LOM)を生成する場合について説明する。局部発振信号に対する掃引速度をVosc1、Vosc2、VoscMとし、各局部発振信号に対応する無線周波数帯に信号(RF1、RF2及びRFM)があるものとする。
同図に示すように、各局部発振信号を掃引することにより、IF帯に周波数変換された信号(IF1、IF2及びIFM)は、時間の経過に応じて、IF帯における周波数が遷移する。IF帯における周波数の単位時間当たりの遷移量は、局部発振信号の掃引速度と等しい。そこで、IF帯における信号が、無線周波数帯においてどの周波数帯域に存在していたかを検出することができる。また、ある時刻における局部発振信号の周波数に、同時刻に検出されたIF帯の信号の周波数差を加算することにより、検出された信号が存在した無線周波数を判定することができる。
【0029】
図3は、本実施形態における局部発振信号ごとの掃引速度(傾き)の一例を示す図である。同図において、横軸は時間を示し、縦軸はIF帯に周波数変換した後の信号が検出された周波数を示す。同図に示すように、局部発振信号の掃引速度は、IF帯に変換された信号の周波数変化速度(傾き)として現れる。すなわち、受信信号がそれぞれの周波数帯域における線スペクトラムと仮定したとき、各局部発振信号を掃引しながら周波数変換を行うことによって、線スペクトラムが時間軸上で周波数を遷移しながら観測されることになる。このとき、観測される線スペクトラムの単位時間あたりの周波数の遷移量が、局部発振信号の掃引速度と等しくなることから、当該線スペクトラムがどの周波数帯に存在するかを検出することができる。また、ある時刻のLO信号の発振周波数にそのときに観測された信号の周波数差を加算することにより、受信信号の存在する周波数を判定できる。
【0030】
図4は、本実施形態における信号処理部180が行う受信信号を検出する際の周波数及び電力判定手法のフローチャートである。ここでは、局部発振信号生成部120が有する局部発振器121−1〜121−Mは、周波数が増加する方向に掃引を行うものとする。
信号処理部180には、アナログ−デジタル変換部170からデジタル信号に変換された時系列データの信号と、局部発振信号の周波数及び掃引速度、各周波数ごとの電力情報、位相情報が入力される(ステップS101)。なお、各周波数ごとの電力情報、位相情報に替えて、閾値を超える電力が検出された周波数の値を入力してもよい。
信号処理部180は、アナログ−デジタル変換部170から入力される信号の受信電力を測定し、測定した受信電力が予め定められた閾値電力P0以上の信号があるか否かを判定する(ステップS102)。信号処理部180は、受信電力が閾値電力P0以上の信号がない場合(ステップS102:NO)、受信信号を検出する処理を終了する。
【0031】
一方、信号処理部180は、受信電力が閾値電力P0以上の信号がある場合(ステップS102:YES)、当該信号の周波数変化速度がVosc1であるか否かの判定を行い(ステップS103)、周波数変化速度がVosc1である場合(ステップS103:YES)、局部発振信号LO1で周波数変換した下側波帯(Low Side Band;LSB)成分と判定する(ステップS104)。一方、信号処理部180は、信号の周波数変化速度がVosc1でない場合(ステップS103:NO)、処理をステップS105に進める。
【0032】
信号処理部180は、閾値電力P0以上の信号の周波数変化速度が−Vosc1であるか否かを判定し(ステップS105)、周波数変化速度が−Vosc1である場合(ステップS105:YES)、局部発振信号LO1で周波数変換した上側波帯(Upper Side Band;USB)成分と判定する(ステップS106)。一方、信号処理部180は、閾値電力P0以上の信号の周波数変化速度が−Vosc1でない場合(ステップS105:NO)、処理をステップS107に進める。
【0033】
信号処理部180は、閾値電力P0以上の信号の周波数変化速度がVosci(i=2,…,M)であるか否かを判定し(ステップS107)、周波数変化速度がVosciである場合(ステップS107:YES)、局部発振信号LOiで周波数変換したLSB成分と判定する(ステップS108)。一方、信号処理部180は、信号の周波数変化速度がVosciでない場合(ステップS107:NO)、処理をステップS109に進める。
【0034】
信号処理部180は、閾値電力P0以上の信号の周波数変化速度が−Vosci(i=2,…,M)であるか否かを判定し(ステップS109)、周波数変化速度が−Vosciである場合(ステップS109:YES)、当該信号を局部発振信号LOiで周波数変換したUSB成分と判定する(ステップS110)。一方、信号処理部180は、信号の周波数変化速度が−Vosciでない場合(ステップS109:NO)、処理をステップS111に進める。
【0035】
信号処理部180は、閾値電力P0以上の信号の周波数変化速度がN×Vosci(i=1,2,…,M)であるか否かを判定し(ステップS111)、周波数変化速度がN×Vosciである場合(ステップS111:YES)、局部発振信号LOiのN倍波で周波数変換したLSB成分と判定する(ステップS112)。一方、信号処理部180は、信号の周波数変化速度がN×Vosciでない場合(ステップS111:NO)、処理をステップS113に進める。
【0036】
信号処理部180は、閾値電力P0以上の信号の周波数変化速度が−N×Vosci(i=1,2,…,M)であるか否かを判定し(ステップS113)、周波数変化速度が−N×Vosciである場合(ステップS113:YES)、当該信号を局部発振信号LOiのN倍波で周波数変換したUSB成分と判定する(ステップS114)。一方、信号処理部180は、信号の周波数変化速度が−N×Vosciでない場合(ステップS113:NO)、受信信号を検出する処理を終了する。
【0037】
上述のように、信号処理部180は、アナログ−デジタル変換部170から入力されるIF帯の信号において、電力が閾値電力P0以上の信号の周波数変化速度と、各局部発振信号LO1、LO2、…、LOMの周波数変化速度(掃引速度)とを比較する。これにより、閾値電力P0以上の電力を有する信号が、無線周波数帯におけるどの周波数の信号であるか、及び、LSB成分又はUSB成分であるかを検出する。また、各局部発振信号の整数倍の帯域における無線信号を検出するとともに、当該無線信号がLSB成分又はUSB成分のいずれであるかを検出することができる。
【0038】
なお、局部発振器121−1〜121−Mのうちいずれかの局部発振器において、周波数を掃引しない構成の場合、検出した受信信号の周波数変化速度が0のときは、発振周波数が固定された局部発振信号で周波数変換したLSB成分又はUSB成分として判定する。
【0039】
このように、センシング対象の無線周波数帯を複数の周波数帯に分割し、分割した各周波数帯における信号を同一のIF帯に周波数変換した場合であっても、周波数変化速度(掃引速度)に基づいて、いずれの局部発振信号を用いて周波数変換したものか特定することができ、受信した信号が存在する周波数を検出することができる。
【0040】
このほか、信号処理部180は、受信処理に必要とされる各種信号の処理を行ってもよい。例えば、必要とされる各種信号には、受信信号に対する誤り制御、復号化処理、伸張処理などの処理や受信信号の監視などの処理があげられる。
【0041】
また、図4に示した検出アルゴリズムにおいて、閾値電力P0以上であるか否かを判定する周波数帯域を、ある特定の周波数帯域に限定するようにしてもよい。この場合、例えば局部発振信号の位相雑音の影響が少ないIF帯を選ぶこと、また周波数帯域制限部140にデジタルフィルタを用いるとき通過帯域を低い周波数にすることにより精度を改善することができるため、この2つの条件に基づいて、受信機100において最適な判定周波数を選択するようにしてもよい。
また、受信機100内のスプリアスや、外部からの干渉波の影響が少ない特定の周波数をIF帯に選ぶことも、信号の検出に効果的である。
【0042】
上述のように、本実施形態における受信機100は、センシング対象とする広周波数帯域の受信信号を複数の周波数帯域の信号として扱い、当該周波数帯域ごとに対応する局部発振信号を用いて、同一のIF帯へ周波数変換する。すなわち、受信機100は、広周波数帯域の受信信号をIF帯へ変換する際に、受信信号を重畳して、受信信号の周波数帯域を減少させている。受信機100は、IF帯のアナログ信号の段階で合成し、合成波をデジタル化する構成としている。これにより、IF帯それぞれのアナログ信号に対してアナログ−デジタル変換をする場合に比べ、アナログ−デジタル変換における負荷、変換により得られるデジタル信号のデータ量を削減することができる。
これにより、受信機100は、広帯域なRF周波数帯域の受信信号をデジタル信号に変換する場合に比べ、デジタル信号へ変換する際のデータ量を大幅に削減することができ、アナログ−デジタル変換部170や、信号処理部180の処理負荷を削減することができる。また、IF帯に変換した信号を伝送する際に要するデータ帯域を削減することができ、ネットワークに与える負荷を低減することができる。
【0043】
また、本実施形態における受信機100は、上述のように、広周波数帯域の受信信号を複数の周波数帯域の信号として扱い、当該周波数帯域ごとに対応する局部発振信号を用いて、周波数の掃引を並行して行う。これにより、掃引に要する時間を短縮することができ、リアルタイム性を向上させることができる。特に、広周波数帯域をセンシングする場合、1つの局部発振信号を用いて掃引すると時間が掛かるという問題があるが、複数の周波数帯域に分割し、分割した周波数帯域を並行に掃引することにより、センシングに要する時間をより短縮することができる。
また、LSB成分とUSB成分との分離を行うことができ、高精度な受信信号の検出を行うことができる。
【0044】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態における受信機200の構成を示す概略ブロック図である。同図に示すように、受信システムとしての受信機200は、広帯域LNA110と、局部発振信号生成部220と、周波数変換部130と、周波数帯域制限部140と、利得調整部150と、アナログ−デジタル変換部170と、信号処理部180とを備えている。同図において、第1実施形態の受信機100(図1)と同じ構成には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0045】
局部発振信号生成部220は、1つの局部発振器221と、分配器222と、複数の周波数調整器223とを有している。局部発振器221は、周波数LO1を有する局部発振信号を生成し、生成した局部発振信号を分配器222に出力する。分配器222は、入力された局部発振信号をM個に分配して出力する。分配器222が出力するN個の局部発振信号のうち1つの局部発振信号は、周波数調整器223を介さずに、周波数変換部130に直接出力されてもよい。周波数調整器223は、分配器222から入力された局部発振信号を逓倍又は分周することにより周波数を調整して周波数変換部130に出力する。
この構成により、局部発振信号生成部220は、局部発振器221が生成する周波数LO1の局部発振信号を逓倍又は分周して得られるM個の局部発振信号を周波数変換部130に出力する。なお、局部発振器221と分配器222と周波数調整器223のセットを複数用意して、M’個の局部発振信号を周波数変換部130に出力してもよい。
【0046】
図6は、本実施形態における局部発振信号ごとの掃引速度(傾き)の一例を示す図である。同図に示すように、局部発振信号生成部220において、局部発振器221が生成する周波数LO1の局部発振信号を基準信号として逓倍して用いるため、掃引速度(傾き)が周波数LO1の局部発振信号の整数倍となる。なお、分周して得られた局部発振信号の場合は分数倍になる。
【0047】
図7は、本実施形態における無線周波数帯の信号、局部発振信号、及びIF帯の信号の一例を示す図である。ここでは、局部発振信号生成部220が3つの局部発振信号(LO1、LO2及びLON)を生成する場合について説明する。局部発振信号に対応する無線周波数帯に信号(RF1、RF2及びRFN)があるものとする。このとき、局部発振信号(LO1、LO2及びLON)それぞれの掃引速度は、Vosc1、2×Vosc1、N×Vosc1となる。
同図に示すように、局部発振器221が局部発振信号LO1を掃引速度Vosc1で掃引することにより、無線周波数帯の信号RF1、RF2、RFNがIF帯のIF1、IF2、IFNに変換され信号が、掃引速度Vosc1、2×Vosc1、N×Vosc1で周波数が変化する。
【0048】
上述の構成により、受信機200では、1つの局部発振信号LO1をN個に分配し、分配した局部発振信号LO1それぞれを逓倍又は分周により周波数を調整した後に、周波数変換部130へ入力する。これにより、局部発振器の数を減らすことができ、受信機200を小型化できる。また、1つの局部発振信号LO1の掃引速度を予め決定し、その特性を事前に測定等で較正することにより、逓倍又は分周による周波数成分の変化速度は、その整数倍又は分数倍となる。その結果、信号処理部180が行う、周波数及び電力判定手法における受信信号の検出が容易となる。
【0049】
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態における受信機300の構成を示す概略ブロック図である。同図に示すように、受信機300は、広帯域LNA110と、局部発振信号生成部320と、周波数変換部としてのミキサ131と、周波数帯域制限部としてのローパスフィルタ回路141と、利得調整部としてのLNA151と、アナログ−デジタル変換部170と、信号処理部180とを備えている。本実施形態の受信機300において、第1実施形態の受信機100(図1)と同じ構成には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0050】
局部発振信号生成部320は、局部発振器321と、分配器322と、2逓倍器323と、4逓倍器324と、振幅制御器325a、325b、325cと、合成器326とを有している。
局部発振器321は、局部発振信号LO1を生成する。分配器322は、局部発振器321が生成した局部発振信号LO1を3つに分配し、1つを振幅制御器325aに出力し、1つを2逓倍器323に出力し、1つを4逓倍器324に出力する。2逓倍器323は、入力された局部発振信号LO1の周波数を2逓倍して振幅制御器325bに出力する。4逓倍器324は、入力された局部発振信号LO1の周波数を4逓倍して振幅制御器325cに出力する。3つの振幅制御器325a〜325cは、入力された局部発振信号の振幅(電力)を調整する。合成器326は、3つの振幅制御器325a〜325cで振幅を調整された信号を合成してミキサ131に出力する。
【0051】
本実施形態における受信機300は、1つのミキサ131で、局部発振信号LO1の周波数帯域と、その2倍波帯域、4倍波帯域を同時にセンシングすることができる。信号処理部180は、無線周波数帯においていずれの帯域の信号を検出したのかを、前述の周波数及び電力判定手法(図4)を用いることで判定する。
受信機300において、ミキサ131を1つとしたことにより、無線周波数帯(RF)のバンドパスフィルタを除去又は簡易化できる。また、低雑音増幅器やミキサ、IF帯におけるローパスフィルタなどの回路を削減することができ、受信機300の小型化を図ることができる。
また、局部発振器の数を減らせるため、受信機300を小型化できる。また、1つの局部発振信号の掃引速度を決定し、その特性を事前に測定等で較正すれば、逓倍又は分周器による周波数成分の掃引速度は、その整数倍又は分数倍となるため、前記の周波数及び電力判定手法(図4)において判定が容易となる。
【0052】
図8に示したように、1つのミキサに3つの異なる周波数の局部発振信号を入力した場合、図6に示した局部発振信号の周波数変化速度をもとにした周波数及び電力判定手法に加えて、局部発振信号にそれぞれ異なる振幅変化パターンを加えることにより、信号を分離する際の情報を増やすことができる。
例えば、図9に示すように、各局部発振信号の振幅(電力)を変化させる。
【0053】
図9は、本実施形態における振幅制御器325a〜325cを用いた局部発振信号の電力変化パターンを示す図である。同図において、縦軸は各局部発振信号の電力を示し、横軸は時間を示す。図9(a)は、振幅制御器325aが出力する局部発振信号LO1の電力を示す。振幅制御器325aは、予め定められた周期で、局部発振信号LO1の電力を三角波状に変化させる。図9(b)は、振幅制御器325bが出力する局部発振信号LO2の電力を示す。振幅制御器325bは、振幅制御器325aと同じ周期で、かつ逆の傾きで、局部発振信号LO2の電力を三角波状に変化させる。図9(c)は、振幅制御器325cが出力する局部発振信号LO3の電力を示す。振幅制御器325cは、局部発振信号LO3の電力を一定にさせる。
【0054】
図9(d)は、合成器326が出力する各局部発振信号を合成した信号の電力を示す。図9(a)〜(c)のように電力(振幅)が制御された局部発振信号を合成することにより、合成した信号の電力を一定にすることができる。
これにより、ミキサ131に入力される局部発振信号の電力を一定にすることができ、局部発振信号の電力変化に伴うRF信号に対する線形性などの特例劣化が生じることを防ぐことができる。
このように、周波数の掃引速度だけでなく、局部発振信号ごとに互いに異なるように振幅の変化を付与することで、信号処理部180において、信号を分離する際に、掃引速度及び振幅の変化を検出することで、受信信号を検出する精度を改善することができる。
【0055】
なお、本実施形態において、局部発振信号生成部はLO1のみを生成し、ミキサ131へ入力した際に生じるミキサ131内の局部発振信号LO1の逓倍波信号で、複数の局部発振信号の代用とすることもできる。一般的にはミキサ内部で生じる逓倍波成分はLO1と比較すると受信感度は弱くなるが、2逓倍から5逓倍くらいまでの範囲であれば数dBから30dB程度の受信感度の低下で実現できる。この場合でも同様に、周波数変化速度の違いをもとに、無線周波数や電力などの情報をセンシングすることが可能である。各逓倍波に対する受信感度を予め把握しておくことで、受信信号の電力を算出することができる。
【0056】
なお、本実施形態において、ミキサ131に、局部発振信号LO1の偶数倍波の発生を抑圧するミキサを用いるようにしてもよい。これにより、ミキサ131内における2倍波、4倍波などの発生が抑圧される。その状態において、別途2逓倍、4逓倍された局部発振信号である局部発振信号LO2、LO3を入力すると、2倍、4倍波帯を受信する際にもRF信号の線形性の劣化を抑圧することができる。また、局部発振信号の電力変化パターンを付加する際にも影響を低減することができる。
また、ミキサ131に、局部発振信号LO1の奇数倍波の発生を抑圧するミキサを用いることにより、ミキサ131内における3倍波、5倍波などの発生が抑圧される。その状態において、別途局部発振信号LO1を3逓倍、5逓倍した局部発振信号LO2、LO3を入力すると、3倍、5倍波帯を受信する際にもRF信号の線形性の劣化を抑圧することができる。
【0057】
また、局部発振器321としては、電圧制御発振器(Voltage Controlled Oscillator;VCO)や、ダイレクトデジタルシンセサイザ、又はメモリに内蔵されたデジタル波形データをデジタルアナログ変換器で生成する方法などを使用できる。特に、ダイレクトデジタルシンセサイザは、切替え速度が高速な周波数可変の局部発振器として使用できるため、高速なセンシングに適している。
また、局部発振器321と分配器322と2逓倍器323と4逓倍器324と振幅制御器325a〜325cとのセットを複数用意して、M’個の局部発振信号を生成、生成したM’個の局部発振信号を合成器326で1つの信号に合成してミキサ131に出力するようにしてもよい。
【0058】
各実施形態における受信機100、200、300において、信号処理部180は、周波数及び電力を判定するだけでなく、受信信号の復調を行うようにしてもよい。特に、周波数変調や振幅変調方式であれば容易である。また、特に、位相を制御できる発振器であれば、周波数だけでなく搬送波の初期位相を示す位相情報を用いて、位相を同期させた局部発振信号を用いれば、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying;四位相偏移変調)などの位相変調信号を受信する場合でも復調することができる。この場合、信号処理部180は、閾値電力P0以上の受信信号を検出すると、当該受信信号に対する無線周波数帯における周波数を算出し、算出した周波数における初期位相を示す位相情報を用いて復調を行うようにする。
【0059】
また、信号処理部180は、無線周波数帯ごとの用途や、無線電力規格、無線変調方式、当該用途において用いられる位置などを示す周波数利用情報を記憶する共通データベースを内蔵するか、若しくはネットワーク上に設けられたサーバ装置に問い合わせて参照し、前述の周波数及び電力判定手法と組み合わせることで、周波数判定の精度を向上させることもできる。また、信号処理部180は、周波数利用情報が示す変調方式などに対応する復調を行うことにより、電力及び周波数判定だけでなく、検出した電波データの復調も行うことができる。
【0060】
図10は、各実施形態における受信機に対する変形例としての受信システム400の構成を示す概略ブロック図である。受信システム400において、第1実施形態と同じ構成には同じ符号を付して、その説明を省略する。受信システム400は、アナログ−デジタル変換部170の出力を、ネットワーク回線490を介して、受信装置と異なる位置に設けられた信号処理部180(演算装置)に伝送する点が第1実施形態の受信機100と異なる。
【0061】
受信システム400は、周波数変換部130が受信した無線信号をIF帯の信号に周波数変換し、アナログ−デジタル変換部170がデジタル化した後、ネットワーク回線490を介して、電波データを遠方の信号処理部180に送る構成である。信号処理部180が行う周波数及び電力判定手法をより高速に行うには、演算能力の高い演算装置を用いて行うことが望ましい。これに対して、受信システム400は、ネットワーク回線490を介して、高度なワークステーション等を信号処理部180として使うことできる。また、電波の利用状況などをモニタリングし、共通のデータベースを構築する際にもこのような構成が好適である。なお、信号処理部180に伝送する信号は、アナログ−デジタル変換部170で変換する前の信号でもよい。また、受信装置から演算装置に電波データを伝送する伝送段は、アナログ信号伝送方式とデジタル信号伝送方式にいずれの方式を選択してもよい。
【0062】
なお、上述の各実施形態では、無線周波数帯のRF信号をIF帯の信号に変換する構成について説明したが、これに限ることなく、無線周波数帯のRF信号をベースバンド帯の信号に変換するようにしてもよい。
上述の実施形態に示した構成は、一実施形態として示したものであり、本願発明の特徴を変えない範囲で、数量、組合せなどを変更することができる。
【0063】
また、上述の各実施形態では、掃引速度を予め定めた一定の速度とした構成について説明したが、これに限ることなく、時刻の経過とともに掃引速度を変化させるようにしてもよい。
また、本発明における信号分離検出部は、上述の各実施形態における信号処理部180に対応する。
【0064】
なお、本発明における受信機及び受信システムの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、上述の周波数及び電力判定の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0065】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0066】
100,200,300…受信機
110…広帯域LNA
120,220,320…局部発振信号生成部
121−1,121−2,121−M,221,321…局部発振器
130…周波数変換部
131…ミキサ
140…周波数帯域制限部
141…ローパスフィルタ回路
150…利得調整部
151…VGA
160…合成器
170…アナログ−デジタル変換部
180…信号処理部
222…分配器
223…周波数調整器
322…分配器
323…2逓倍器
324…4逓倍器
325a,325b,325c…振幅制御器
326…合成器
400…受信システム
490…ネットワーク回線
【技術分野】
【0001】
本発明は、広帯域な無線信号を受信する受信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や無線LANなどの無線通信システムの発展に伴い、周波数需要が増大している。特に、数GHz帯の周波数帯においては稠密に周波数が割り当てられており、新たな周波数帯域を確保することが難しい。このため、既に割当て済みの周波数の中で、「空間的」、「時間的」に使い分けることで、周波数の利用効率を上げることが検討されている。
【0003】
この実現には、利用状況により変化する利用可能な周波数帯域をリアルタイムに把握する必要がある。求められるセンシング用の無線受信機としては、周波数を広帯域に受信すること、他のシステムが存在しないことを示す低い受信レベルまで高精度に受信すること、高速なセンシングを実現することなどが必要である。
【0004】
無線帯域におけるセンシングには、広帯域な無線受信機で受信した無線信号を周波数変換後にデジタル化し、ソフトウェア無線機で解析する方法[非特許文献1]、スペクトラムアナライザを用いて広帯域な受信帯域を掃引しながら電力を受信する方法などがある[非特許文献2]。また、電波の利用状況を監視する電波監視システムは、無線信号を受信し、高速デジタル専用回線を用いてセンタ局へ集約し、データベース作成を行っている[非特許文献3]。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】石井、山本、樋口、「電波監視を考慮したソフトウェア受信機の開発」1998年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会 B5-47、page 297, 1998.
【非特許文献2】”Agilent N9344C Handheld Spectrum Analyzer Data Sheet”、[online]、平成23年3月16日、アジレント・テクノロジー(Agilent Technologies, Inc.)[平成23年6月30日検索]、インターネット<URL: http://cp.literature.agilent.com/litweb/pdf/5990-7193EN.pdf>
【非特許文献3】「DEURASシステム概要」、[online]、平成22年7月30日、総務省関東総合通信局、[平成23年6月30日検索]、インターネット<URL: http://www.soumu.go.jp/soutsu/kanto/re/system/index.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に記載されている技術では、対応する無線周波数帯が広帯域となった場合、デジタル信号へ変換時のデータ量が多く、アナログ−デジタル変換部や、信号処理部の処理負荷が大きくなるという問題がある。また、ネットワーク側へ伝送する際のコストが大きくなるという問題が生じる。
【0007】
また、非特許文献2に記載されている技術では、対応する無線周波数帯が広帯域となった場合、受信機で掃引が完了するまでの時間が長くなり、リアルタイム性が低下するという課題がある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、広帯域な無線周波数帯をセンシングする受信機において、IF(Intermediate Frequency;中間周波数)帯や、ベースバンド帯域の信号をデジタル化する際の負荷、及びデジタル信号を処理する際の負荷を低減し、無線周波数帯を掃引する際に要する時間を短縮することができる受信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は、互いに異なる周波数帯域で、かつ、互いに異なる速度で周波数掃引される複数の局部発振信号を生成する局部発振信号生成部と、入力された無線信号を、前記局部発振信号生成部が出力する前記複数の局部発振信号それぞれに対応する周波数帯域に分割し、分割された周波数帯域の無線信号それぞれを当該周波数帯域に対応する前記局部発振信号と乗算することにより、前記分割された周波数帯域の無線信号を同一の低周波数帯域に周波数変換して出力する周波数変換部と、前記周波数変換部の出力をデジタル信号に変換して出力するアナログ−デジタル変換部と、前記アナログ−デジタル変換部の出力を周波数領域の信号に変換し、変換した信号の電力値が予め定めた閾値電力を超えた周波数成分について受信信号が有ると判定し、当該周波数成分の受信信号が周波数を遷移する速度に基づいて信号を分離する信号分離検出部と、を具備することを特徴とする受信システムである。
【0010】
また、上記に記載の発明において、前記信号分離検出部は、前記受信信号に対する無線信号の周波数を、前記受信信号が低周波数帯域を遷移する周波数遷移量と同一の周波数遷移量で周波数掃引された局部発振信号の周波数と、前記受信信号の周波数とから算出することを特徴とする。
【0011】
また、上記に記載の発明において、前記信号分離検出部は、前記受信信号に対応する局部発振信号の周波数が増加する掃引をした際に、前記受信信号の周波数が増加する遷移をしていた場合、前記受信信号を、前記受信信号に対応する局部発振信号で周波数変換した下側波帯の成分と判定し、前記受信信号に対応する局部発振信号の周波数が増加する掃引をした際に、前記受信信号の周波数が減少する遷移をしていた場合、前記受信信号を、前記受信信号に対応する局部発振信号で周波数変換した上側波帯の成分と判定し、前記受信信号に対応する局部発振信号の周波数が減少する掃引をした際に、前記受信信号の周波数が減少する遷移をしていた場合、前記受信信号を、前記受信信号に対応する局部発振信号で周波数変換した下側波帯の成分と判定し、前記受信信号に対応する局部発振信号の周波数が減少する掃引をした際に、前記受信信号の周波数が増加する遷移をしていた場合、前記受信信号を、前記受信信号に対応する局部発振信号で周波数変換した上側波帯の成分と判定することを特徴とする。
【0012】
また、上記に記載の発明において、前記信号分離検出部は、前記局部発振信号の位相雑音の影響が少ない周波数帯域において、前記受信信号を検出することを特徴とする。
【0013】
また、上記に記載の発明において、前記局部発振信号生成部は、前記複数の局部発振信号の電力を互いに異なる時間変化のパターンを用いて変化させるとともに、前記複数の局部発振信号の電力の総和を一定にさせることを特徴とする。
【0014】
また、上記に記載の発明において、前記局部発振信号生成部は、所定の周波数を有する信号を出力する局部発振器と、前記局部発振器が出力する信号に対して、逓倍と分周とのいずれか一方、あるいは両方をして前記複数の局部発振信号を生成する周波数調整部とを備えることを特徴とする。
【0015】
また、上記に記載の発明において、前記局部発振信号生成部が備える前記局部発振器は1つであり、前記周波数変換部の内部で生じる前記局部発振器の逓倍信号を用いて前記複数の局部発振信号を生成することを特徴とする。
【0016】
また、上記に記載の発明において、前記周波数変換部は、所定の周波数の偶数倍波又は奇数倍波のいずれか一方の発生を抑圧するミキサを用いて構成され、前記局部発振信号生成部は、前記所定の周波数を有する信号と、前記所定の周波数の偶数倍波又は奇数倍波のいずれか一方の信号とを前記複数の前記複数の局部発振信号として生成することを特徴とする。
【0017】
また、上記に記載の発明において、前記信号処理部は、更に、前記局部発振信号生成部の局部発振信号の周波数、及び、搬送波の初期位相を示す位相情報を用いて、前記受信信号に含まれるデータの復調を行うことを特徴とする。
【0018】
また、上記に記載の発明において、前記信号処理部は、無線周波数帯ごとの用途、無線電力規格、無線変調方式、及び当該用途において用いられる位置を示す周波数利用情報を用いて、前記受信信号を検出することを特徴とする。
【0019】
また、上記に記載の発明において、前記信号分離検出部と前記アナログ−デジタル変換部とが、前記局部発振信号生成部と周波数変換部と異なる場所に配置され、前記アナログ−デジタル変換部は、ネットワークを介して、前記周波数変換部が変換した信号を受信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、センシング対象となる無線信号の周波数帯域を複数に分割し、分割した周波数帯域ごとに周波数変換し、同一の周波数帯域に変換する。このとき、分割した周波数帯域それぞれに対応する局部発振信号を並行に掃引することにより、無線信号の周波数帯域の掃引に要する時間を短縮することができる。また、分割された周波数帯域それぞれの無線信号を同一の周波数帯域に変換することで、変換した無線信号の帯域を削減することができ、変換した無線信号をデジタル化する際に要する負荷、デジタル化した無線信号を処理する際の負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態における受信機100の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】同実施形態における無線周波数帯の信号、局部発振信号、及びIF帯の信号の一例を示す図である。
【図3】同実施形態における局部発振信号ごとの掃引速度(傾き)の一例を示す図である。
【図4】同実施形態における信号処理部180が行う受信信号を検出する際の周波数及び電力判定手法のフローチャートである。
【図5】第2実施形態における受信機200の構成を示す概略ブロック図である。
【図6】同実施形態における局部発振信号ごとの掃引速度(傾き)の一例を示す図である。
【図7】同実施形態における無線周波数帯の信号、局部発振信号、及びIF帯の信号の一例を示す図である。
【図8】第3実施形態における受信機300の構成を示す概略ブロック図である。
【図9】同実施形態における振幅制御器335a〜335cを用いた局部発振信号の電力変化パターンを示す図である。
【図10】変形例としての受信システム400の構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
まず、本発明に係る実施形態における受信機(受信システム)の概要について説明する。以下の実施形態における受信機は、広帯域の周波数帯域を複数の周波数帯域に分割し、それぞれの帯域に含まれる信号を中間周波数(Intermediate Frequency;IF)帯(又はベースバンド周波数帯)の信号へ周波数変換する。このとき、互いに掃引する周波数帯域が異なり、かつ、掃引速度(周波数変化速度)が異なる複数の局部発振信号を用いて、同一のIF帯の信号へ周波数変換する。同じIF帯に周波数変換された信号は、IF帯において合成されることとなるため、特にデジタル変換した場合のデータ量を小さくする効果がある。一方、合成されたIF帯の信号を分離する際は、掃引速度(周波数変化速度)の相違に基づいて分離する。以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照して説明する。ここで、掃引とは、周波数変換に用いる局部発振信号の周波数を、予め定められたステップで、ある周波数から異なる周波数に変化させることである。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における受信機100の構成を示す概略ブロック図である。同図に示すように、受信システムとしての受信機100は、広帯域LNA(Low Noise Amplifier;低雑音増幅器)110と、局部発振信号生成部120、周波数変換部130、周波数帯域制限部140と、利得調整部150と、合成器160と、アナログ−デジタル変換部170と、信号処理部180とを備えている。
【0024】
広帯域LNA110は、アンテナを介して受信したRF(Radio Frequency;無線周波数)信号を増幅し、増幅したRF信号を周波数変換部130に出力する。
局部発振信号生成部120は、それぞれが異なる周波数の局部発振信号(LO1,LO2,…,LOM)を生成する局部発振器121−1〜121−Mの複数を有している。局部発振信号生成部120は、各局部発振器121−1〜121−Mが生成する局部発振信号を周波数変換部130に出力する。局部発振器121−1〜121−Mは、発振周波数を掃引して使うことができる。局部発振器121−1〜121−Mが局部発振信号の周波数を掃引する速度(掃引速度)は、局部発振器121−1〜121−Mごとに異なる。以下、局部発振信号LO1における掃引速度をVosc1とし、局部発振信号LOMにおける掃引速度をVoscMとする。
また、局部発振器121−1〜121−Mが生成する局部発振信号は、センシング対象とする無線周波数帯を分割したそれぞれの周波数帯に1対1に対応している。分割された無線周波数帯の信号それぞれは、対応する局部発振信号を用いて周波数変換することにより、同一のIF帯に周波数変換される。
【0025】
周波数変換部130は、複数の無線周波数帯のRF信号を、IF帯の信号に同時に周波数変換する。周波数変換部130は、局部発振信号生成部120が出力する各局部発振信号に対応するミキサ131を複数有している。各ミキサ131には、対応する局部発振信号と、RF信号とが入力される。各ミキサ131は、局部発振信号とRF信号とを乗算し、乗算によりIF帯に変換された信号を出力する。各ミキサ131でIF帯に周波数変換された信号は、周波数帯域制限部140に出力される。
【0026】
周波数帯域制限部140は、周波数変換部130から出力される複数の信号それぞれに含まれるIF帯の信号を通過させる。周波数帯域制限部140は、周波数変換部130が有する各ミキサ131に対応するローパスフィルタ回路141を複数有している。各ローパスフィルタ回路141は、周波数変換部130が出力する信号に含まれるIF帯以外の信号を減衰させて利得調整部150に出力する。
利得調整部150は、周波数帯域制限部140から出力される複数のIF帯の信号に対して、利得調整を行い合成器160に出力する。利得調整部150は、周波数帯域制限部140が有する各ローパスフィルタ回路141に対応して設けられている可変利得増幅器(VGA)151を複数有している。各VGA151は、周波数変換部130や周波数帯域制限部140における信号処理で減衰した信号のレベルを、予め定められた電力レベルになるよう増幅し、増幅した信号を合成器160に出力する。
【0027】
合成器160は、利得調整部150から出力される複数のIF帯の信号を1つのアナログ信号に合成してアナログ−デジタル変換部170に出力する。
アナログ−デジタル変換部170は、予め定められたサンプリング周波数で、合成器160が出力する信号に対してサンプリングを行い、アナログ信号の強度に応じたデジタル信号に変換し、時系列データのデジタル信号を生成する。また、アナログ−デジタル変換部170は、生成した時系列データのデジタル信号を信号処理部180に出力する。
信号処理部180には、アナログ−デジタル変換部170においてデジタル化された信号が入力される。信号処理部180は、入力された信号に対してフーリエ変換を行い、IF帯信号の周波数情報(各周波数ごとの電力情報、位相情報)を算出する。信号処理部180は、閾値以上の電力が検出されたIF帯信号の周波数情報の時間方向の変化を測定することにより、どのRF周波数に信号が存在するかを検出する。このとき、信号処理部180は、局部発振信号LO1〜LOMそれぞれの周波数変化速度(掃引速度)に基づいて、周波数情報から受信信号の分離及び検出を行う。
なお、デジタル化された時系列の入力信号から周波数情報の時間方向の変化を測定する為の信号変換方法は、フーリエ変換以外にも短時間フーリエ変換やウェーブレット変換、またウィグナー分布解析等を行う時間周波数変換方法を利用しても良い。また検出する値は相関値などの大きさでも良く、信号の電力レベルに限らない。
【0028】
図2は、本実施形態における無線周波数帯の信号、局部発振信号、及びIF帯の信号の一例を示す図である。ここでは、局部発振信号生成部120が3つの局部発振信号(LO1、LO2、LOM)を生成する場合について説明する。局部発振信号に対する掃引速度をVosc1、Vosc2、VoscMとし、各局部発振信号に対応する無線周波数帯に信号(RF1、RF2及びRFM)があるものとする。
同図に示すように、各局部発振信号を掃引することにより、IF帯に周波数変換された信号(IF1、IF2及びIFM)は、時間の経過に応じて、IF帯における周波数が遷移する。IF帯における周波数の単位時間当たりの遷移量は、局部発振信号の掃引速度と等しい。そこで、IF帯における信号が、無線周波数帯においてどの周波数帯域に存在していたかを検出することができる。また、ある時刻における局部発振信号の周波数に、同時刻に検出されたIF帯の信号の周波数差を加算することにより、検出された信号が存在した無線周波数を判定することができる。
【0029】
図3は、本実施形態における局部発振信号ごとの掃引速度(傾き)の一例を示す図である。同図において、横軸は時間を示し、縦軸はIF帯に周波数変換した後の信号が検出された周波数を示す。同図に示すように、局部発振信号の掃引速度は、IF帯に変換された信号の周波数変化速度(傾き)として現れる。すなわち、受信信号がそれぞれの周波数帯域における線スペクトラムと仮定したとき、各局部発振信号を掃引しながら周波数変換を行うことによって、線スペクトラムが時間軸上で周波数を遷移しながら観測されることになる。このとき、観測される線スペクトラムの単位時間あたりの周波数の遷移量が、局部発振信号の掃引速度と等しくなることから、当該線スペクトラムがどの周波数帯に存在するかを検出することができる。また、ある時刻のLO信号の発振周波数にそのときに観測された信号の周波数差を加算することにより、受信信号の存在する周波数を判定できる。
【0030】
図4は、本実施形態における信号処理部180が行う受信信号を検出する際の周波数及び電力判定手法のフローチャートである。ここでは、局部発振信号生成部120が有する局部発振器121−1〜121−Mは、周波数が増加する方向に掃引を行うものとする。
信号処理部180には、アナログ−デジタル変換部170からデジタル信号に変換された時系列データの信号と、局部発振信号の周波数及び掃引速度、各周波数ごとの電力情報、位相情報が入力される(ステップS101)。なお、各周波数ごとの電力情報、位相情報に替えて、閾値を超える電力が検出された周波数の値を入力してもよい。
信号処理部180は、アナログ−デジタル変換部170から入力される信号の受信電力を測定し、測定した受信電力が予め定められた閾値電力P0以上の信号があるか否かを判定する(ステップS102)。信号処理部180は、受信電力が閾値電力P0以上の信号がない場合(ステップS102:NO)、受信信号を検出する処理を終了する。
【0031】
一方、信号処理部180は、受信電力が閾値電力P0以上の信号がある場合(ステップS102:YES)、当該信号の周波数変化速度がVosc1であるか否かの判定を行い(ステップS103)、周波数変化速度がVosc1である場合(ステップS103:YES)、局部発振信号LO1で周波数変換した下側波帯(Low Side Band;LSB)成分と判定する(ステップS104)。一方、信号処理部180は、信号の周波数変化速度がVosc1でない場合(ステップS103:NO)、処理をステップS105に進める。
【0032】
信号処理部180は、閾値電力P0以上の信号の周波数変化速度が−Vosc1であるか否かを判定し(ステップS105)、周波数変化速度が−Vosc1である場合(ステップS105:YES)、局部発振信号LO1で周波数変換した上側波帯(Upper Side Band;USB)成分と判定する(ステップS106)。一方、信号処理部180は、閾値電力P0以上の信号の周波数変化速度が−Vosc1でない場合(ステップS105:NO)、処理をステップS107に進める。
【0033】
信号処理部180は、閾値電力P0以上の信号の周波数変化速度がVosci(i=2,…,M)であるか否かを判定し(ステップS107)、周波数変化速度がVosciである場合(ステップS107:YES)、局部発振信号LOiで周波数変換したLSB成分と判定する(ステップS108)。一方、信号処理部180は、信号の周波数変化速度がVosciでない場合(ステップS107:NO)、処理をステップS109に進める。
【0034】
信号処理部180は、閾値電力P0以上の信号の周波数変化速度が−Vosci(i=2,…,M)であるか否かを判定し(ステップS109)、周波数変化速度が−Vosciである場合(ステップS109:YES)、当該信号を局部発振信号LOiで周波数変換したUSB成分と判定する(ステップS110)。一方、信号処理部180は、信号の周波数変化速度が−Vosciでない場合(ステップS109:NO)、処理をステップS111に進める。
【0035】
信号処理部180は、閾値電力P0以上の信号の周波数変化速度がN×Vosci(i=1,2,…,M)であるか否かを判定し(ステップS111)、周波数変化速度がN×Vosciである場合(ステップS111:YES)、局部発振信号LOiのN倍波で周波数変換したLSB成分と判定する(ステップS112)。一方、信号処理部180は、信号の周波数変化速度がN×Vosciでない場合(ステップS111:NO)、処理をステップS113に進める。
【0036】
信号処理部180は、閾値電力P0以上の信号の周波数変化速度が−N×Vosci(i=1,2,…,M)であるか否かを判定し(ステップS113)、周波数変化速度が−N×Vosciである場合(ステップS113:YES)、当該信号を局部発振信号LOiのN倍波で周波数変換したUSB成分と判定する(ステップS114)。一方、信号処理部180は、信号の周波数変化速度が−N×Vosciでない場合(ステップS113:NO)、受信信号を検出する処理を終了する。
【0037】
上述のように、信号処理部180は、アナログ−デジタル変換部170から入力されるIF帯の信号において、電力が閾値電力P0以上の信号の周波数変化速度と、各局部発振信号LO1、LO2、…、LOMの周波数変化速度(掃引速度)とを比較する。これにより、閾値電力P0以上の電力を有する信号が、無線周波数帯におけるどの周波数の信号であるか、及び、LSB成分又はUSB成分であるかを検出する。また、各局部発振信号の整数倍の帯域における無線信号を検出するとともに、当該無線信号がLSB成分又はUSB成分のいずれであるかを検出することができる。
【0038】
なお、局部発振器121−1〜121−Mのうちいずれかの局部発振器において、周波数を掃引しない構成の場合、検出した受信信号の周波数変化速度が0のときは、発振周波数が固定された局部発振信号で周波数変換したLSB成分又はUSB成分として判定する。
【0039】
このように、センシング対象の無線周波数帯を複数の周波数帯に分割し、分割した各周波数帯における信号を同一のIF帯に周波数変換した場合であっても、周波数変化速度(掃引速度)に基づいて、いずれの局部発振信号を用いて周波数変換したものか特定することができ、受信した信号が存在する周波数を検出することができる。
【0040】
このほか、信号処理部180は、受信処理に必要とされる各種信号の処理を行ってもよい。例えば、必要とされる各種信号には、受信信号に対する誤り制御、復号化処理、伸張処理などの処理や受信信号の監視などの処理があげられる。
【0041】
また、図4に示した検出アルゴリズムにおいて、閾値電力P0以上であるか否かを判定する周波数帯域を、ある特定の周波数帯域に限定するようにしてもよい。この場合、例えば局部発振信号の位相雑音の影響が少ないIF帯を選ぶこと、また周波数帯域制限部140にデジタルフィルタを用いるとき通過帯域を低い周波数にすることにより精度を改善することができるため、この2つの条件に基づいて、受信機100において最適な判定周波数を選択するようにしてもよい。
また、受信機100内のスプリアスや、外部からの干渉波の影響が少ない特定の周波数をIF帯に選ぶことも、信号の検出に効果的である。
【0042】
上述のように、本実施形態における受信機100は、センシング対象とする広周波数帯域の受信信号を複数の周波数帯域の信号として扱い、当該周波数帯域ごとに対応する局部発振信号を用いて、同一のIF帯へ周波数変換する。すなわち、受信機100は、広周波数帯域の受信信号をIF帯へ変換する際に、受信信号を重畳して、受信信号の周波数帯域を減少させている。受信機100は、IF帯のアナログ信号の段階で合成し、合成波をデジタル化する構成としている。これにより、IF帯それぞれのアナログ信号に対してアナログ−デジタル変換をする場合に比べ、アナログ−デジタル変換における負荷、変換により得られるデジタル信号のデータ量を削減することができる。
これにより、受信機100は、広帯域なRF周波数帯域の受信信号をデジタル信号に変換する場合に比べ、デジタル信号へ変換する際のデータ量を大幅に削減することができ、アナログ−デジタル変換部170や、信号処理部180の処理負荷を削減することができる。また、IF帯に変換した信号を伝送する際に要するデータ帯域を削減することができ、ネットワークに与える負荷を低減することができる。
【0043】
また、本実施形態における受信機100は、上述のように、広周波数帯域の受信信号を複数の周波数帯域の信号として扱い、当該周波数帯域ごとに対応する局部発振信号を用いて、周波数の掃引を並行して行う。これにより、掃引に要する時間を短縮することができ、リアルタイム性を向上させることができる。特に、広周波数帯域をセンシングする場合、1つの局部発振信号を用いて掃引すると時間が掛かるという問題があるが、複数の周波数帯域に分割し、分割した周波数帯域を並行に掃引することにより、センシングに要する時間をより短縮することができる。
また、LSB成分とUSB成分との分離を行うことができ、高精度な受信信号の検出を行うことができる。
【0044】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態における受信機200の構成を示す概略ブロック図である。同図に示すように、受信システムとしての受信機200は、広帯域LNA110と、局部発振信号生成部220と、周波数変換部130と、周波数帯域制限部140と、利得調整部150と、アナログ−デジタル変換部170と、信号処理部180とを備えている。同図において、第1実施形態の受信機100(図1)と同じ構成には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0045】
局部発振信号生成部220は、1つの局部発振器221と、分配器222と、複数の周波数調整器223とを有している。局部発振器221は、周波数LO1を有する局部発振信号を生成し、生成した局部発振信号を分配器222に出力する。分配器222は、入力された局部発振信号をM個に分配して出力する。分配器222が出力するN個の局部発振信号のうち1つの局部発振信号は、周波数調整器223を介さずに、周波数変換部130に直接出力されてもよい。周波数調整器223は、分配器222から入力された局部発振信号を逓倍又は分周することにより周波数を調整して周波数変換部130に出力する。
この構成により、局部発振信号生成部220は、局部発振器221が生成する周波数LO1の局部発振信号を逓倍又は分周して得られるM個の局部発振信号を周波数変換部130に出力する。なお、局部発振器221と分配器222と周波数調整器223のセットを複数用意して、M’個の局部発振信号を周波数変換部130に出力してもよい。
【0046】
図6は、本実施形態における局部発振信号ごとの掃引速度(傾き)の一例を示す図である。同図に示すように、局部発振信号生成部220において、局部発振器221が生成する周波数LO1の局部発振信号を基準信号として逓倍して用いるため、掃引速度(傾き)が周波数LO1の局部発振信号の整数倍となる。なお、分周して得られた局部発振信号の場合は分数倍になる。
【0047】
図7は、本実施形態における無線周波数帯の信号、局部発振信号、及びIF帯の信号の一例を示す図である。ここでは、局部発振信号生成部220が3つの局部発振信号(LO1、LO2及びLON)を生成する場合について説明する。局部発振信号に対応する無線周波数帯に信号(RF1、RF2及びRFN)があるものとする。このとき、局部発振信号(LO1、LO2及びLON)それぞれの掃引速度は、Vosc1、2×Vosc1、N×Vosc1となる。
同図に示すように、局部発振器221が局部発振信号LO1を掃引速度Vosc1で掃引することにより、無線周波数帯の信号RF1、RF2、RFNがIF帯のIF1、IF2、IFNに変換され信号が、掃引速度Vosc1、2×Vosc1、N×Vosc1で周波数が変化する。
【0048】
上述の構成により、受信機200では、1つの局部発振信号LO1をN個に分配し、分配した局部発振信号LO1それぞれを逓倍又は分周により周波数を調整した後に、周波数変換部130へ入力する。これにより、局部発振器の数を減らすことができ、受信機200を小型化できる。また、1つの局部発振信号LO1の掃引速度を予め決定し、その特性を事前に測定等で較正することにより、逓倍又は分周による周波数成分の変化速度は、その整数倍又は分数倍となる。その結果、信号処理部180が行う、周波数及び電力判定手法における受信信号の検出が容易となる。
【0049】
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態における受信機300の構成を示す概略ブロック図である。同図に示すように、受信機300は、広帯域LNA110と、局部発振信号生成部320と、周波数変換部としてのミキサ131と、周波数帯域制限部としてのローパスフィルタ回路141と、利得調整部としてのLNA151と、アナログ−デジタル変換部170と、信号処理部180とを備えている。本実施形態の受信機300において、第1実施形態の受信機100(図1)と同じ構成には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0050】
局部発振信号生成部320は、局部発振器321と、分配器322と、2逓倍器323と、4逓倍器324と、振幅制御器325a、325b、325cと、合成器326とを有している。
局部発振器321は、局部発振信号LO1を生成する。分配器322は、局部発振器321が生成した局部発振信号LO1を3つに分配し、1つを振幅制御器325aに出力し、1つを2逓倍器323に出力し、1つを4逓倍器324に出力する。2逓倍器323は、入力された局部発振信号LO1の周波数を2逓倍して振幅制御器325bに出力する。4逓倍器324は、入力された局部発振信号LO1の周波数を4逓倍して振幅制御器325cに出力する。3つの振幅制御器325a〜325cは、入力された局部発振信号の振幅(電力)を調整する。合成器326は、3つの振幅制御器325a〜325cで振幅を調整された信号を合成してミキサ131に出力する。
【0051】
本実施形態における受信機300は、1つのミキサ131で、局部発振信号LO1の周波数帯域と、その2倍波帯域、4倍波帯域を同時にセンシングすることができる。信号処理部180は、無線周波数帯においていずれの帯域の信号を検出したのかを、前述の周波数及び電力判定手法(図4)を用いることで判定する。
受信機300において、ミキサ131を1つとしたことにより、無線周波数帯(RF)のバンドパスフィルタを除去又は簡易化できる。また、低雑音増幅器やミキサ、IF帯におけるローパスフィルタなどの回路を削減することができ、受信機300の小型化を図ることができる。
また、局部発振器の数を減らせるため、受信機300を小型化できる。また、1つの局部発振信号の掃引速度を決定し、その特性を事前に測定等で較正すれば、逓倍又は分周器による周波数成分の掃引速度は、その整数倍又は分数倍となるため、前記の周波数及び電力判定手法(図4)において判定が容易となる。
【0052】
図8に示したように、1つのミキサに3つの異なる周波数の局部発振信号を入力した場合、図6に示した局部発振信号の周波数変化速度をもとにした周波数及び電力判定手法に加えて、局部発振信号にそれぞれ異なる振幅変化パターンを加えることにより、信号を分離する際の情報を増やすことができる。
例えば、図9に示すように、各局部発振信号の振幅(電力)を変化させる。
【0053】
図9は、本実施形態における振幅制御器325a〜325cを用いた局部発振信号の電力変化パターンを示す図である。同図において、縦軸は各局部発振信号の電力を示し、横軸は時間を示す。図9(a)は、振幅制御器325aが出力する局部発振信号LO1の電力を示す。振幅制御器325aは、予め定められた周期で、局部発振信号LO1の電力を三角波状に変化させる。図9(b)は、振幅制御器325bが出力する局部発振信号LO2の電力を示す。振幅制御器325bは、振幅制御器325aと同じ周期で、かつ逆の傾きで、局部発振信号LO2の電力を三角波状に変化させる。図9(c)は、振幅制御器325cが出力する局部発振信号LO3の電力を示す。振幅制御器325cは、局部発振信号LO3の電力を一定にさせる。
【0054】
図9(d)は、合成器326が出力する各局部発振信号を合成した信号の電力を示す。図9(a)〜(c)のように電力(振幅)が制御された局部発振信号を合成することにより、合成した信号の電力を一定にすることができる。
これにより、ミキサ131に入力される局部発振信号の電力を一定にすることができ、局部発振信号の電力変化に伴うRF信号に対する線形性などの特例劣化が生じることを防ぐことができる。
このように、周波数の掃引速度だけでなく、局部発振信号ごとに互いに異なるように振幅の変化を付与することで、信号処理部180において、信号を分離する際に、掃引速度及び振幅の変化を検出することで、受信信号を検出する精度を改善することができる。
【0055】
なお、本実施形態において、局部発振信号生成部はLO1のみを生成し、ミキサ131へ入力した際に生じるミキサ131内の局部発振信号LO1の逓倍波信号で、複数の局部発振信号の代用とすることもできる。一般的にはミキサ内部で生じる逓倍波成分はLO1と比較すると受信感度は弱くなるが、2逓倍から5逓倍くらいまでの範囲であれば数dBから30dB程度の受信感度の低下で実現できる。この場合でも同様に、周波数変化速度の違いをもとに、無線周波数や電力などの情報をセンシングすることが可能である。各逓倍波に対する受信感度を予め把握しておくことで、受信信号の電力を算出することができる。
【0056】
なお、本実施形態において、ミキサ131に、局部発振信号LO1の偶数倍波の発生を抑圧するミキサを用いるようにしてもよい。これにより、ミキサ131内における2倍波、4倍波などの発生が抑圧される。その状態において、別途2逓倍、4逓倍された局部発振信号である局部発振信号LO2、LO3を入力すると、2倍、4倍波帯を受信する際にもRF信号の線形性の劣化を抑圧することができる。また、局部発振信号の電力変化パターンを付加する際にも影響を低減することができる。
また、ミキサ131に、局部発振信号LO1の奇数倍波の発生を抑圧するミキサを用いることにより、ミキサ131内における3倍波、5倍波などの発生が抑圧される。その状態において、別途局部発振信号LO1を3逓倍、5逓倍した局部発振信号LO2、LO3を入力すると、3倍、5倍波帯を受信する際にもRF信号の線形性の劣化を抑圧することができる。
【0057】
また、局部発振器321としては、電圧制御発振器(Voltage Controlled Oscillator;VCO)や、ダイレクトデジタルシンセサイザ、又はメモリに内蔵されたデジタル波形データをデジタルアナログ変換器で生成する方法などを使用できる。特に、ダイレクトデジタルシンセサイザは、切替え速度が高速な周波数可変の局部発振器として使用できるため、高速なセンシングに適している。
また、局部発振器321と分配器322と2逓倍器323と4逓倍器324と振幅制御器325a〜325cとのセットを複数用意して、M’個の局部発振信号を生成、生成したM’個の局部発振信号を合成器326で1つの信号に合成してミキサ131に出力するようにしてもよい。
【0058】
各実施形態における受信機100、200、300において、信号処理部180は、周波数及び電力を判定するだけでなく、受信信号の復調を行うようにしてもよい。特に、周波数変調や振幅変調方式であれば容易である。また、特に、位相を制御できる発振器であれば、周波数だけでなく搬送波の初期位相を示す位相情報を用いて、位相を同期させた局部発振信号を用いれば、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying;四位相偏移変調)などの位相変調信号を受信する場合でも復調することができる。この場合、信号処理部180は、閾値電力P0以上の受信信号を検出すると、当該受信信号に対する無線周波数帯における周波数を算出し、算出した周波数における初期位相を示す位相情報を用いて復調を行うようにする。
【0059】
また、信号処理部180は、無線周波数帯ごとの用途や、無線電力規格、無線変調方式、当該用途において用いられる位置などを示す周波数利用情報を記憶する共通データベースを内蔵するか、若しくはネットワーク上に設けられたサーバ装置に問い合わせて参照し、前述の周波数及び電力判定手法と組み合わせることで、周波数判定の精度を向上させることもできる。また、信号処理部180は、周波数利用情報が示す変調方式などに対応する復調を行うことにより、電力及び周波数判定だけでなく、検出した電波データの復調も行うことができる。
【0060】
図10は、各実施形態における受信機に対する変形例としての受信システム400の構成を示す概略ブロック図である。受信システム400において、第1実施形態と同じ構成には同じ符号を付して、その説明を省略する。受信システム400は、アナログ−デジタル変換部170の出力を、ネットワーク回線490を介して、受信装置と異なる位置に設けられた信号処理部180(演算装置)に伝送する点が第1実施形態の受信機100と異なる。
【0061】
受信システム400は、周波数変換部130が受信した無線信号をIF帯の信号に周波数変換し、アナログ−デジタル変換部170がデジタル化した後、ネットワーク回線490を介して、電波データを遠方の信号処理部180に送る構成である。信号処理部180が行う周波数及び電力判定手法をより高速に行うには、演算能力の高い演算装置を用いて行うことが望ましい。これに対して、受信システム400は、ネットワーク回線490を介して、高度なワークステーション等を信号処理部180として使うことできる。また、電波の利用状況などをモニタリングし、共通のデータベースを構築する際にもこのような構成が好適である。なお、信号処理部180に伝送する信号は、アナログ−デジタル変換部170で変換する前の信号でもよい。また、受信装置から演算装置に電波データを伝送する伝送段は、アナログ信号伝送方式とデジタル信号伝送方式にいずれの方式を選択してもよい。
【0062】
なお、上述の各実施形態では、無線周波数帯のRF信号をIF帯の信号に変換する構成について説明したが、これに限ることなく、無線周波数帯のRF信号をベースバンド帯の信号に変換するようにしてもよい。
上述の実施形態に示した構成は、一実施形態として示したものであり、本願発明の特徴を変えない範囲で、数量、組合せなどを変更することができる。
【0063】
また、上述の各実施形態では、掃引速度を予め定めた一定の速度とした構成について説明したが、これに限ることなく、時刻の経過とともに掃引速度を変化させるようにしてもよい。
また、本発明における信号分離検出部は、上述の各実施形態における信号処理部180に対応する。
【0064】
なお、本発明における受信機及び受信システムの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、上述の周波数及び電力判定の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0065】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0066】
100,200,300…受信機
110…広帯域LNA
120,220,320…局部発振信号生成部
121−1,121−2,121−M,221,321…局部発振器
130…周波数変換部
131…ミキサ
140…周波数帯域制限部
141…ローパスフィルタ回路
150…利得調整部
151…VGA
160…合成器
170…アナログ−デジタル変換部
180…信号処理部
222…分配器
223…周波数調整器
322…分配器
323…2逓倍器
324…4逓倍器
325a,325b,325c…振幅制御器
326…合成器
400…受信システム
490…ネットワーク回線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる周波数帯域で、かつ、互いに異なる速度で周波数掃引される複数の局部発振信号を生成する局部発振信号生成部と、
入力された無線信号を、前記局部発振信号生成部が出力する前記複数の局部発振信号それぞれに対応する周波数帯域に分割し、分割された周波数帯域の無線信号それぞれを当該周波数帯域に対応する前記局部発振信号と乗算することにより、前記分割された周波数帯域の無線信号を同一の低周波数帯域に周波数変換して出力する周波数変換部と、
前記周波数変換部の出力をデジタル信号に変換して出力するアナログ−デジタル変換部と、
前記アナログ−デジタル変換部の出力を周波数領域の信号に変換し、変換した信号の電力値が予め定めた閾値電力を超えた周波数成分について受信信号が有ると判定し、当該周波数成分の受信信号が周波数を遷移する速度に基づいて信号を分離する信号分離検出部と、
を具備することを特徴とする受信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の受信システムであって、
前記信号分離検出部は、
前記受信信号に対する無線信号の周波数を、
前記受信信号が低周波数帯域を遷移する周波数遷移量と同一の周波数遷移量で周波数掃引された局部発振信号の周波数と、前記受信信号の周波数とから算出する
ことを特徴とする受信システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載の受信システムであって、
前記信号分離検出部は、
前記受信信号に対応する局部発振信号の周波数が増加する掃引をした際に、前記受信信号の周波数が増加する遷移をしていた場合、前記受信信号を、前記受信信号に対応する局部発振信号で周波数変換した下側波帯の成分と判定し、
前記受信信号に対応する局部発振信号の周波数が増加する掃引をした際に、前記受信信号の周波数が減少する遷移をしていた場合、前記受信信号を、前記受信信号に対応する局部発振信号で周波数変換した上側波帯の成分と判定し、
前記受信信号に対応する局部発振信号の周波数が減少する掃引をした際に、前記受信信号の周波数が減少する遷移をしていた場合、前記受信信号を、前記受信信号に対応する局部発振信号で周波数変換した下側波帯の成分と判定し、
前記受信信号に対応する局部発振信号の周波数が減少する掃引をした際に、前記受信信号の周波数が増加する遷移をしていた場合、前記受信信号を、前記受信信号に対応する局部発振信号で周波数変換した上側波帯の成分と判定する
ことを特徴とする受信システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の受信システムであって、
前記信号分離検出部は、
前記局部発振信号の位相雑音の影響が少ない周波数帯域において、前記受信信号を検出する
ことを特徴とする受信システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の受信システムであって、
前記局部発振信号生成部は、
前記複数の局部発振信号の電力を互いに異なる時間変化のパターンを用いて変化させるとともに、前記複数の局部発振信号の電力の総和を一定にさせる
ことを特徴とする受信システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の受信システムであって
前記局部発振信号生成部は、
所定の周波数を有する信号を出力する局部発振器と、
前記局部発振器が出力する信号に対して、逓倍と分周とのいずれか一方、あるいは両方をして前記複数の局部発振信号を生成する周波数調整部と
を備えることを特徴とする受信システム。
【請求項7】
請求項6に記載の受信システムであって、
前記局部発振信号生成部が備える前記局部発振器は1つであり、
前記周波数変換部の内部で生じる前記局部発振器の逓倍信号を用いて前記複数の局部発振信号を生成する
ことを特徴とする受信システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の受信システムであって、
前記周波数変換部は、
所定の周波数の偶数倍波又は奇数倍波のいずれか一方の発生を抑圧するミキサを用いて構成され、
前記局部発振信号生成部は、
前記所定の周波数を有する信号と、前記所定の周波数の偶数倍波又は奇数倍波のいずれか一方の信号とを前記複数の前記複数の局部発振信号として生成する
ことを特徴とする受信システム。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の受信システムであって、
前記信号分離検出部は、更に、
前記局部発振信号生成部の局部発振信号の周波数、及び、搬送波の初期位相を示す位相情報を用いて、前記受信信号に含まれるデータの復調を行う
ことを特徴とする受信システム。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の受信システムであって、
前記信号分離検出部は、
無線周波数帯ごとの用途、無線電力規格、無線変調方式、及び当該用途において用いられる位置を示す周波数利用情報を用いて、前記受信信号を検出する
ことを特徴とする受信システム。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の受信システムであって、
前記信号分離検出部と前記アナログ−デジタル変換部とが、前記局部発振信号生成部と周波数変換部と異なる場所に配置され、
前記アナログ−デジタル変換部は、ネットワークを介して、前記周波数変換部が変換した信号を受信する
ことを特徴とする受信システム。
【請求項1】
互いに異なる周波数帯域で、かつ、互いに異なる速度で周波数掃引される複数の局部発振信号を生成する局部発振信号生成部と、
入力された無線信号を、前記局部発振信号生成部が出力する前記複数の局部発振信号それぞれに対応する周波数帯域に分割し、分割された周波数帯域の無線信号それぞれを当該周波数帯域に対応する前記局部発振信号と乗算することにより、前記分割された周波数帯域の無線信号を同一の低周波数帯域に周波数変換して出力する周波数変換部と、
前記周波数変換部の出力をデジタル信号に変換して出力するアナログ−デジタル変換部と、
前記アナログ−デジタル変換部の出力を周波数領域の信号に変換し、変換した信号の電力値が予め定めた閾値電力を超えた周波数成分について受信信号が有ると判定し、当該周波数成分の受信信号が周波数を遷移する速度に基づいて信号を分離する信号分離検出部と、
を具備することを特徴とする受信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の受信システムであって、
前記信号分離検出部は、
前記受信信号に対する無線信号の周波数を、
前記受信信号が低周波数帯域を遷移する周波数遷移量と同一の周波数遷移量で周波数掃引された局部発振信号の周波数と、前記受信信号の周波数とから算出する
ことを特徴とする受信システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載の受信システムであって、
前記信号分離検出部は、
前記受信信号に対応する局部発振信号の周波数が増加する掃引をした際に、前記受信信号の周波数が増加する遷移をしていた場合、前記受信信号を、前記受信信号に対応する局部発振信号で周波数変換した下側波帯の成分と判定し、
前記受信信号に対応する局部発振信号の周波数が増加する掃引をした際に、前記受信信号の周波数が減少する遷移をしていた場合、前記受信信号を、前記受信信号に対応する局部発振信号で周波数変換した上側波帯の成分と判定し、
前記受信信号に対応する局部発振信号の周波数が減少する掃引をした際に、前記受信信号の周波数が減少する遷移をしていた場合、前記受信信号を、前記受信信号に対応する局部発振信号で周波数変換した下側波帯の成分と判定し、
前記受信信号に対応する局部発振信号の周波数が減少する掃引をした際に、前記受信信号の周波数が増加する遷移をしていた場合、前記受信信号を、前記受信信号に対応する局部発振信号で周波数変換した上側波帯の成分と判定する
ことを特徴とする受信システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の受信システムであって、
前記信号分離検出部は、
前記局部発振信号の位相雑音の影響が少ない周波数帯域において、前記受信信号を検出する
ことを特徴とする受信システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の受信システムであって、
前記局部発振信号生成部は、
前記複数の局部発振信号の電力を互いに異なる時間変化のパターンを用いて変化させるとともに、前記複数の局部発振信号の電力の総和を一定にさせる
ことを特徴とする受信システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の受信システムであって
前記局部発振信号生成部は、
所定の周波数を有する信号を出力する局部発振器と、
前記局部発振器が出力する信号に対して、逓倍と分周とのいずれか一方、あるいは両方をして前記複数の局部発振信号を生成する周波数調整部と
を備えることを特徴とする受信システム。
【請求項7】
請求項6に記載の受信システムであって、
前記局部発振信号生成部が備える前記局部発振器は1つであり、
前記周波数変換部の内部で生じる前記局部発振器の逓倍信号を用いて前記複数の局部発振信号を生成する
ことを特徴とする受信システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の受信システムであって、
前記周波数変換部は、
所定の周波数の偶数倍波又は奇数倍波のいずれか一方の発生を抑圧するミキサを用いて構成され、
前記局部発振信号生成部は、
前記所定の周波数を有する信号と、前記所定の周波数の偶数倍波又は奇数倍波のいずれか一方の信号とを前記複数の前記複数の局部発振信号として生成する
ことを特徴とする受信システム。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の受信システムであって、
前記信号分離検出部は、更に、
前記局部発振信号生成部の局部発振信号の周波数、及び、搬送波の初期位相を示す位相情報を用いて、前記受信信号に含まれるデータの復調を行う
ことを特徴とする受信システム。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の受信システムであって、
前記信号分離検出部は、
無線周波数帯ごとの用途、無線電力規格、無線変調方式、及び当該用途において用いられる位置を示す周波数利用情報を用いて、前記受信信号を検出する
ことを特徴とする受信システム。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の受信システムであって、
前記信号分離検出部と前記アナログ−デジタル変換部とが、前記局部発振信号生成部と周波数変換部と異なる場所に配置され、
前記アナログ−デジタル変換部は、ネットワークを介して、前記周波数変換部が変換した信号を受信する
ことを特徴とする受信システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−26663(P2013−26663A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156598(P2011−156598)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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