説明

口栓付きパウチの殺菌並びに冷却を行うためのバケット、及び口栓付きパウチの殺菌並びに冷却方法

【課題】口栓付きパウチの膨らみ形状が多少変化しても、口栓付きパウチを確実に冷却できる、口栓付きパウチの殺菌並びに冷却を行うためのバケット、及び、口栓付きパウチの殺菌並びに冷却方法を提供する。
【解決手段】このバケット10は、一対の前後壁11,13と、両側壁15,15と、区画18を形成する仕切壁17と、パウチ1の底部6を支持する底壁19と、パウチ1の口栓部5を突出させて保持する天壁30とを有し、天壁30は、前後に延出してその周囲にリブ状に突出した周壁34を有し、更に、天壁30には、天壁30の前後壁11,13との連結部31a,31aよりも内側にあり、かつ、天壁30の上面の最も低い位置にあって、周壁34によって天壁30上に溜まった冷却水の落下口となる開口部35が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動食品等の内容物が充填されて封止された口栓付きパウチを殺菌並びに冷却を行うためのバケット、及び同バケットを用いた口栓付きパウチの殺菌並びに冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、口栓が装着されたストロー状の口部を備える口栓付きパウチに、果汁飲料、ゼリー等の流動食品を充填した製品が市販されている。この口栓付きパウチへの内容物の充填には、予め加熱殺菌された内容物を熱い状態で上記パウチに充填し、直ちに口栓を施して密封することによって内容物の熱で容器内部も殺菌する、いわゆるホットパックと呼ばれる方法が採用されている。しかしながら、通常のホットパックではキャップの内側を十分に殺菌することができなかった。
【0003】
このため、下記特許文献1には、流動食品を加熱した状態で容器(口栓付きパウチ)に充填して口部を封止した後、容器の口部を下方に向けて、口部近辺のみを熱水槽に浸漬させることにより、細長く殺菌しにくい口部を熱水により加熱して殺菌できるようにした、流動食品入り容器の殺菌方法が開示されている。
【0004】
ところで、このようなパウチの加熱殺菌においては、ホットパックや上記口部の加熱殺菌によって熱い状態を保っているパウチの内容物を速やかにゲル化させると共に、内容物の熱変質を防ぐために、加熱殺菌後にパウチ表面を冷却する必要がある。
【0005】
下記特許文献2には、内容物が充填された口栓付きパウチを、口栓を下に向けた状態で加熱し、その後パウチを、口栓を上に向くように反転して冷却するようにした、口栓付きパウチの殺菌方法が開示されている。また、その実施形態には、口栓付きパウチを支持するためのものとして、複数のパウチが収容可能なように箱状に形成され、一部に取出し口が設けられた本体と、本体内に設けられた仕切りと、取出し口を閉じるための蓋と、取出し口を閉鎖する方向へ蓋を付勢し、蓋が開くのを阻止する状態維持としてのバネとを有するバケットが開示されている。このバケットは、パウチの厚さにほぼ適合する間隔で配置された前後壁を有しており、その上部の途中にはバケット内へ水を導くための水受けが前後に張り出すように取付けられており、この水受けから突出する前後壁部分は多数の孔開き形状をなしていて、水受け上に溜まった冷却水が上記孔を通して流入し、前後壁の内周を伝わって流下しつつ、パウチ表面を冷却するようになっている。
【特許文献1】特開平10−1118号公報
【特許文献2】特開2005−280758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2に開示されたバケットでは、水受けに溜まった冷却水が孔開き形状の前後壁上部から流入し、前後壁の内周を伝わって流下するので、パウチの表面が前後壁の内周に近接している場合には、流下する冷却水によって効果的に冷却されるのであるが、当接している場合には、パウチ表面に冷却水が接触しなかったり、パウチの表面が前後壁から離れていると、冷却水がパウチ表面に接触せずに流下してしまい、十分な冷却効果が得られないことがあった。この種のパウチ製品では、製品の種類によって内容物の比重等が変化して容積が変化することもあるため、バケットの前後壁に常に密接するように収容させることは難しかった。更に、バケットの底壁の形状により冷却水の前後の流量に隔たりができ、バケットを積み重ねて連続的に冷却する際に冷却水の流量の調整が困難であった。更にまた、パウチの表面が前後壁の内周に密接する場合には、パウチを収納する区画の大きさとパウチとほぼ同じ大きさになり、パウチを機械的に収納させることは難しかった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、殺菌後に口栓付きパウチを効率よく冷却できるようにしたバケット、及び該バケットを用いた口栓付きパウチの殺菌並びに冷却方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の1つは、内容物が充填された口栓付きパウチを収容してコンベヤにより移動し、該パウチの口栓部の殺菌並びに冷却を行うためのバケットにおいて、
前記パウチの厚さにほぼ適合する間隔で配置された一対の前後壁と、この前後壁の両端に配置された両側壁と、前記前後壁の間を長手方向に所定間隔で仕切って前記パウチを1個ずつ一列に収容する区画を形成する仕切壁と、前記区画に収容された前記パウチの底部を支持するように前記前後壁の上下に対向する面に、前記区画に流入した冷却水が抜ける隙間を設けて取付けられた底壁と、この底壁に対向して配置され、前記前後壁に連結された天壁と、前記両側壁に設けられ、前記コンベヤに連結されて、前記バケットを回動可能に支持する支軸とを有し、
前記天壁は、前後に延出してその周囲にリブ状に突出した周壁を有し、前記区画に収容された前記パウチの口栓部が位置する部分には、該口栓部を突出させることができる開口部が設けられており、
前記開口部は、前記天壁の前記前後壁との連結部よりも内側にあり、かつ、前記天壁の上面の最も低い位置にあって、前記周壁によって前記天壁上に溜まった冷却水の落下口となるように構成されていることを特徴とする口栓付きパウチの殺菌並びに冷却を行うためのバケットを提供するものである。
【0009】
上記発明によれば、口栓付きパウチの口栓部を天壁に向けて、前記各区画に該パウチをそれぞれ収容し、前記コンベヤにより該バケットを搬送しつつ、前記バケットを前記天壁が下方になるように支持し、前記天壁側を湯槽に浸漬して前記パウチの少なくとも口栓部を加熱殺菌し、次いで前記天壁側が上方になるように支持して、前記天壁上に冷却水を降りかけることにより、前記開口部を通して冷却水が流れ込み、前記パウチの口栓部周縁に降りかかることによって冷却を行うことができる。そして、冷却水は、天壁上に溜まった後に、開口部を通して、前後壁の内壁に沿って流下することなく、各区画に収容されたパウチの口栓部周縁に直接落下するので、冷却水が確実にパウチ表面に接触し、内容量の変化等によってパウチの膨らみ形状が多少変化しても、冷却効果を確実にもたらすことができる。
【0010】
本発明のバケットにおいては、前記開口部の前後辺には、一対のリブが対向して立設されており、前記冷却水が前記開口部の両側辺から流入するように構成されていることが好ましい。これによれば、天壁上に溜まった冷却水が、一対のリブの両側から前記開口部に流入するので、パウチの両肩部に冷却水を降りかけることができ、冷却水をパウチ全体に平均して接触させ、冷却効果を高めることができる。また、一対のリブは、加熱殺菌時等において、口栓部を保護する役割もなす。
【0011】
また、本発明のバケットにおいては、前記開口部の前後辺に、前記一対のリブが対向して立設されると共に、前記開口部の両側縁部には、冷却水を流下させる孔が設けられていることが好ましい。これによれば、一対のリブの両側から冷却水が侵入したとき、冷却水が天壁の区画内部の面を伝って流れるのを防止して、冷却水が開口部に至る途中にて、開口部両側の孔からも落下するようになっているので、冷却水が確実にパウチの両肩部に注がれると共に、パウチの両肩部のより広い面積に冷却水を平均化して降りかけることができ、冷却効果を更に高めることができる。
【0012】
更に、本発明のバケットにおいては、前記底壁が開閉可能に構成され、該底壁を開いて前記パウチを前記各区画に挿入できるように構成されていることが好ましい。これによれば、底壁を開いて、パウチをその口栓部から各区画に挿入し、再び底壁を閉じることにより、パウチの口栓部を天壁側に向け、パウチの底部を底壁に支持させた状態で、パウチを各区画に収容することができる。
【0013】
一方、本発明のもう1つは、上記の口栓付きパウチの殺菌並びに冷却を行うためのバケットを用い、口栓付きパウチの口栓部を天壁に向けて、前記各区画に該パウチをそれぞれ収容し、前記コンベヤにより該バケットを搬送しつつ、前記バケットを前記天壁が下方になるように支持し、前記天壁側を湯槽に浸漬して前記パウチの少なくとも口栓部を加熱殺菌し、次いで前記天壁側が上方になるように支持して、前記天壁上に冷却水を降りかけることにより、前記開口部を通して、冷却水を前記パウチの口栓部周縁に降りかけることによって冷却を行うことを特徴とする口栓付きパウチの殺菌並びに冷却方法を提供するものである。
【0014】
上記発明によれば、パウチをバケットに収容した状態で、口栓部近傍の殺菌と、その後の冷却とを行うことができ、作業性が良好となると共に、パウチがバケットで保護されるので作業中に損傷したりする虞れもない。そして、冷却工程の際には、天壁上に降りかけられた冷却水が、天壁上に溜まった後に、開口部を通して、各区画に収容されたパウチの口栓部周縁に直接落下するので、冷却水が確実にパウチ表面に接触し、内容量の変化等によってパウチの膨らみ形状が多少変化しても、冷却効果を確実にもたらすことができる。更に、冷却水を天壁上に溜める機構を採用することにより、バケット底壁の形状に左右されることなくパウチ全面に冷却水を均等に降りかけることができる。更にまた、各区画の中心部分に冷却水を注ぎ込むことができるので、パウチを収納する区画内部を広くゆったりとさせることができる。
【0015】
本発明の口栓付きパウチの殺菌並びに冷却方法においては、前記冷却を行う際に、前記バケットを上下に配列させ、上方のバケットの天壁上に冷却水を降りかけることにより、上方のバケットから流下した冷却水がその下方に配置されたバケットの天壁上に降りかかるようにすることが好ましい。これによれば、上下に配列されたバケットに、上方から順に冷却水が通過するので、冷却水による冷却効率をより高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、バケットの天壁を下方に向けて湯槽に浸漬させることにより、パウチの口栓部が加熱殺菌され、その後、バケットの天壁が上方に向けて、天壁上に冷却水を降りかけることにより、開口部を通ってパウチの口栓部周縁に冷却水が降りかかって、パウチを冷却することができる。
【0017】
このとき、冷却水は天壁上に溜まった後に、開口部を通して、前後壁の内側に沿って流下することなく、各区画に収容されたパウチの口栓部周縁に直接落下するので、冷却水が確実にパウチ表面に接触し、内容量の変化等によってパウチの膨らみ形状が多少変化しても、冷却効果を確実にもたらすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
【0019】
本発明の口栓付きパウチの殺菌並びに冷却を行うためのバケット10(以下、「バケット10」という)は、例えば、図7に示すようなパウチ殺菌装置50に適用されるものであって、図6に示す内容物が充填された口栓付きパウチ1(以下、「パウチ1」という)を収容し、その状態で後述するパウチ殺菌装置50のコンベヤ60により所定の搬送径路に沿って移動することにより、パウチ1の口栓部の殺菌並びに冷却を行うためのものである。
【0020】
上記パウチ1は、この実施形態の場合、合成樹脂製のフィルムに金属箔をラミネートした素材で袋状に形成されていると共に、可撓性を有する容器本体2と、該容器本体2の一端縁から容器本体2内に挿入されて、同容器本体2に固着された細長のストロー状の口部3と、同口部3の先端部外周に螺着された口栓4とを有するものであって、前記口部3及び前記口栓4が、本発明における口栓部5をなしている(図6参照)。また、パウチ1の口栓部5とは反対側の部分は底部6をなし、口栓部5の両側角部は、肩部7,7となっている。なお、上記パウチ1内に充填される内容物としては、果汁飲料、ゼリー等の流動性のある食品が好ましく用いられる。また、本発明における口栓付きパウチとは、フレキシブルな袋状容器に、口栓が装着されたストロー状の口部が取付けられ、ゼリー等の流動性を有する内容物用の密閉容器を意味している。
【0021】
図1〜5を参照して本発明のバケット10について説明する。このバケット10は、所定長さで伸びる長尺の箱形状をなしており、一対の前後壁11,13と、この前後壁11,13の両端に配置された両側壁15,15とを有している(図4(a),(b)参照)。前壁11及び後壁13は、それぞれ左右に長く伸びる長板状をなしていて、前記パウチの厚さに適合する間隔を設けて配置されている。また、前壁11及び後壁13の間隔は、下方が幅広で、その高さ方向途中から上方に向かって次第に幅狭となっており(図4(b)参照)、それによって、前後壁11,13内周がパウチ1の外形により適合しやすくなると共に、図7に示すように、バケット10を反転して口栓部5を下向きにして、バケット10の各区画18(後述する)内に各パウチ1を落し込むときに、各区画18に収容しやすくなっている。更に、前壁11及び後壁13の各下端部には、外方に向かって略L字状に屈曲したフランジ部11a,13aが設けられており、これらに後述する底壁19が当接するようになっている(図4(b)参照)。
【0022】
なお、前壁11及び後壁13の各下端部の幅は、パウチ1の底部6の前後幅よりも広くなければならないものの、後述するように本発明においては冷却水がパウチ1表面に確実に接触するのでかなり広げることができる。当該幅は、特に限定する必要はないが、しいて挙げればパウチ1の底部6の前後幅の平均値よりも3.5から10mm程度広くすることが好ましい。
【0023】
なお、以下の説明の便宜上、「下方」とは、図1,4における下側(底壁19側)を意味し、「上方」とは、図1,4における上側(天壁30側)を意味する。
【0024】
上記の前後壁11,13の長手方向両側に取付けられた一対の側壁15,15は、下方が幅狭で、上方が幅広の略台形状をなしていて、前後壁11,13の両端部に連結されると共に、前後壁11,13の上部に取付けられた天壁30(後述する)に接続されるようになっている。このような台形状の側壁15,15が、前後壁11,13及び天壁30の両側部に接続されているので、天壁30及び前後壁11,13が強固に連結されて、それによりバケット10全体の剛性を確保できるようになっている。
【0025】
また、図4(a),(b)に示すように、前後壁11,13に対して直交して、前後壁11,13を連結する仕切壁17が、前後壁11,13の長手方向に沿って複数配設されている。これにより、前後壁11、13の間の空間が、その長手方向に仕切られて、複数の区画18が画成されており、複数のパウチ1を1個ずつ収容できるようになっている。更に、仕切壁17は、金属板を2つ折りしてその折れ曲げ線を下端にした形状をなし、下端近傍でV字状に折り曲げてあることにより、各区画18の下方部分が広がるので、後述する底壁19を開いてパウチ1を挿入するときに、挿入しやすくなっている。
【0026】
また、上記仕切壁17の上端部を、図4(a)に示すように、区画18内方にL字状に折曲させて、パウチ1の両肩部7を受ける受け部17aが形成されている。これにより、バケット10を逆さまにしたとき、パウチ1の両肩部7が受け部17aに当接するので、パウチ1が大きくずれ動くことを防止できると共に、パウチ1の位置を固定することができる。ただし、上記受け部17aは必ずしも必要なものではない。
【0027】
前述した前後壁11,13の下方には、各区画18に収容された複数のパウチ1の底部6を支持するための、底壁19が配置されている。この底壁19は、長板状をなしていると共に、図4(b)に示すように、その中央が内方に向かって隆起して、パウチ1の底部6を当接支持するための支持部19aが形成されている。図2に示すように、この底壁19の長手方向一側部と、前述した前壁11のフランジ部11aとには、それぞれ複数の軸受部20が形成されていて、これらに回動軸21が挿通されることにより、底壁19が前壁11のフランジ部11aに対して回動可能に取付けられており、これにより各区画18が開閉可能となっている。
【0028】
また、同図2に示すように、回動軸21の外周にはコイルバネ22が外装されており、これにより各区画18を開く方向に底壁19が付勢されている。なお、この底壁19は区画18を閉じたときに、前後壁11,13の各フランジ部11a,13aに当接するようになっているが(図4(b)参照)、この状態で、図2に示すように、底壁19と、それを取り囲む各壁15、11、13、15との間には、隙間Sが形成されるようになっている。この隙間Sから、各区画18に流入した冷却水が抜け出るようになっている。
【0029】
上記底壁19に関連して、両側壁15,15の外側面であって、後壁13側の周縁部には、略J字状をなすフック24が、軸部を介して回動可能に取付けられている。また、各側壁15の外側面の、前記フック24よりも前壁11側には、引戻しバネ25の一端が引き掛けられた突起26が突設している。この引戻しバネ25の他端は、前記フック24の軸方向途中に突設した突起24aに引き掛けられ、これによりフック24は、前壁11側に付勢されるようになっている。その結果、フック24は、前記底壁19の長手方向他側部(軸受部20の反対側)に設けられた係合ロッド19bに係合して、コイルバネ22により開く方向に付勢された底壁19を、常時閉じるようになっている(図2参照)。
【0030】
また、両側壁15,15の外側面のほぼ中央からは、所定長さで支軸28が突設しており、これがコンベヤ60を構成するチェーン63(後述する)に回動可能に取付けられていて、これによりコンベヤ60にバケット10が回動可能に支持されるようになっている。また、この支軸28の両側には、軸部を介して回転自在とされた一対の回転ローラ29,29が取付けられており、これがパウチ殺菌装置50の、搬送径路に沿って設けられた図示しないガイドレールのレール溝内に入り込んで摺接するようになっており、搬送径路に応じてバケット10の天壁30を上向きにしたり、或いは、下向きに反転させたり、所定の姿勢に維持できるようになっている。
【0031】
前後壁11,13の上方、すなわち、前記底壁19に対向した位置には、天壁30が配設されている。この天壁30は、前後壁11,13の配設間隔よりも広くなるように、前後(前後壁11,13側)に所定長さで延出していると共に、その周縁部からリブ状に周壁34が突出していて、上方が開口した長尺の有底枠状をなしている。
【0032】
そして、図4に示すように、天壁30において各区画18に収容された各パウチ1の口栓部5が位置する部分には、口栓部5を突出させることができる開口部35が、それぞれ設けられている。すなわち、四角形状の開口部35が各区画18に連通するようにして、天壁30の長手方向に沿って、所定間隔を設けて複数配設されている。
【0033】
なお、仕切壁17の上端部にパウチ1の肩部7を受ける受け部17aを設けない場合には、四角形状の各開口部35の前後辺(天壁30の長手方向)の各長さD1は、パウチ1の左右幅よりも小さく形成して、パウチ1の両肩部7,7を通過させずに、口栓部5のみが開口部35から突出するようにする必要がある。
【0034】
また、仕切壁17の上端部にパウチ1の肩部7を受ける受け部17aを設けた場合には、開口部の長さD1は特に限定されないが、長さD1が両側の受け部17aの間隙よりも広い場合には、冷却水が受け部17a上に落下することになるので、受け部17a部分に孔を設けておくことが好ましい。
【0035】
ところで、この実施形態においては、天壁30の上面はほぼ水平面状をなしており、この水平面に開口部35が形成されているが、この場合も開口部35は天壁30の最も低い位置にあることになる。また、図4(b)の部分拡大図に示すように、開口部35は、天壁30と前後壁11、13との連結部31a,31aよりも内側となるように形成されており、周壁34によって天壁30上に溜まった冷却水の落下口となるように構成されている。
【0036】
また、天壁30の、各開口部35の前後辺には、一対のリブ37,37が対向して立設しており、これにより開口部35の前後辺からの冷却水の流入を規制して、開口部35の左右両側から冷却水が流入するようになっている。なお、これらのリブ37,37は、開口部35の前後辺の長さD1よりも長く形成されている。更に、図3(b)に示すように、各開口部35の左右両側辺の周縁部には、各区画18へ冷却水を流下させるための、複数の孔38が形成されている。
【0037】
ところで、この実施形態においては、天壁30の上面がほぼ水平面となっているが、図5に示すように、天壁30の上面の開口部35よりも前後部分33を上方に向けて傾斜させることにより、開口部35が並んだ幅方向中央部分31がより低くなるように構成してもよい。この場合には、前後部分33,33で受けた冷却水を、開口部35へスムーズに流し込むことができる。
【0038】
以上説明した本発明のバケット10は、前述したように、図7に示すパウチ殺菌装置50に適用される。図7を参照して説明すると、このパウチ殺菌装置50は、バケット10を搬送経路に沿って移動させるためのコンベヤ60を有している。コンベヤ60は、搬送経路の所定箇所に配置された複数のスプロケット61と、これら複数のスプロケット61に引き掛けられて張設されたチェーン63とを有している。このチェーン63に、支軸28を介して複数のバケット10が回動可能に取付けられている。そして、図示しない駆動手段によって、矢印C方向に沿ってチェーン63が駆動して、バケット10を所定の搬送径路に沿って移動させるようになっている。また、ガイド溝を有する図示しないガイドレールが、前記搬送経路に沿って配設されており、コンベヤ60によりバケット10が移動するとき、同ガイド溝内を摺動する一対の回転ローラ29,29により、バケット10を所定の向きに支持させるようになっている。
【0039】
そして、上記搬送経路には、バケット10の底壁19が斜め上方に向いた状態で、バケット10の底壁19を開閉させて、各区画18に複数のパウチ1を収容支持するパウチ収容部51と、該パウチ収容部51の下流側に配置され、バケット10の天壁30が下方に向いた状態で、パウチ1の口栓部5を熱水が貯留された湯槽54に浸漬させて加熱殺菌するパウチ加熱部53と、該パウチ加熱部53の下流側に配置され、天壁30が上方を向いた状態で、パウチ1を冷却するパウチ冷却部55と、該パウチ冷却部55の下流側に配置され、底壁19が斜め下方に向いた状態で、バケット10の底壁19を開閉させて、バケット10からパウチ1を取出すパウチ取出部59とが設けられている。パウチ取出部59の下方には、取出しコンベヤ65が配置されている。
【0040】
また、前記パウチ冷却部55は、その天井部に複数のノズル57a(図8参照)を設けた冷却手段57が配設されており、バケット10の上方から冷却水を降下させるようになっている。更に、このパウチ冷却部55においては、複数のスプロケット61が、搬送径路に沿って上下に交互に配設され、これによりチェーン63が上下に蛇行するように張設されており、バケット10が上下に並んで上昇したり、下降したりする動作が繰り返されて、移動するようになっている。
【0041】
次に、上記構成からなるパウチ殺菌装置50を用いた、本発明による口栓付きパウチの殺菌並びに冷却方法について説明する。
【0042】
まず、パウチ収容部51の所定位置において、図示しないロック解除手段により、係合ロッド19bからフック24が外されて、コイルバネ22の付勢力により、バケット10の底壁19が開いた状態とされる。その状態で、図7の図中左側の部分拡大図に示すように、内容物が充填され口栓4により口栓部5が封止された複数のパウチ1が、口栓部5を斜め下方に向けた状態で、図示しない供給手段から供給される。すると、各パウチ1がバケット10の各区画18内に落とし込まれて、両肩部7,7が開口部35の両側部分で支持されると共に、開口部35から口栓部5のみが突出する。その状態で図示しないロック手段により、コイルバネ22の付勢力に抗して底壁19を回動させ、係合ロッド19bをフック24に再び係合させることにより、底壁19により各区画18が閉じた状態にロックされる。
【0043】
その後、天壁30を下方に向けて支持し、パウチ加熱部53の湯槽54内にバケット10の天壁30を浸漬させつつ、コンベヤ60によりバケット10が搬送されることにより、開口部35から突出したパウチ1の口栓部5が加熱殺菌される。
【0044】
そして、パウチ加熱部53からバケット10が抜け出ると、図示しないガイドレールのガイド溝に沿って摺動する一対の回転ローラ29,29によって、天壁30が上方に向くようにバケット10が反転され、その状態でパウチ冷却部55内に搬送されていく。
【0045】
このとき、パウチ冷却部55に配置されたコンベヤ60は、図7に示すように、上下に蛇行しているので、バケット10は上下に並んで上昇したり、下降したりする動作を繰り返して移動する。図8及び図9には、この際の状態が示されている。すなわち、パウチ冷却部55の天井部に設けた冷却手段57の、複数のノズル57aから降り注がれた冷却水が、バケット10の天壁30上に落下して、開口部35及び孔38を通して各区画18内に流れ込み、パウチ1の口栓部5の周縁に降りかかることによって、パウチ1を冷却することができる。
【0046】
このとき、本発明においては、バケット10に形成された開口部35が、天壁30の前後壁11,13との連結部31a,31aよりも内側にあり、かつ、天壁30の上面の最も低い位置にあって、周壁34によって天壁30上に溜まった冷却水の落下口となるように構成されている。このため、冷却手段57より降り注がれた冷却水は、天壁30上に溜まった後に、開口部35を通して、前後壁11,13の内側に沿って流下することなく、図4(b)の部分拡大図の矢印に示すように、各区画18に収容されたパウチ1の口栓部5の周縁に直接落下して、冷却水をパウチ1の表面に確実に接触させることができる。したがって、パウチ1に充填される内容物の内容量の変化等によって、パウチ1の膨らみ形状が多少変化しても、パウチ1を確実に冷却することができる。
【0047】
また、この実施形態においては、開口部35の前後辺に、一対のリブ37,37が対向して立設されているので、天壁30上に溜まった冷却水が、一対のリブ37,37の両側から開口部35に流入し、パウチ1の口栓部周縁の中でも、特にパウチ1の両肩部7,7に冷却水を降りかけることができるので、冷却水をパウチ全体に平均して接触させて、冷却効果を高めることができる。
【0048】
更に、この実施形態においては、上記の一対のリブ37,37に加えて、開口部35の左右両側の周縁部に、複数の孔38を設けられている。それにより、一対のリブ37,37の両側から冷却水が侵入したとき、冷却水が天壁30の区画内部の面を伝って流れるのを防止して、冷却水が開口部35に至る途中にて、開口部35両側の孔38からも落下するようになっているので、冷却水が確実にパウチ1の両肩部7,7に注がれると共に、同パウチ1の両肩部7,7のより広い面積に冷却水を平均化して降りかけることができ、冷却効果を更に高めることができる。
【0049】
また、前述したように、バケット10を搬送するコンベヤ60をパウチ冷却部55においては、上下に蛇行するように配設したので、パウチ冷却時において、複数のバケット10が上下に配列するようになっている。そのため、図8及び図9に示すように、最も上方のバケット10の天壁30により受けた冷却水は、開口部35を通ってパウチ1を冷却しつつ、底壁19と前後壁11,13との隙間S(図2参照)から抜け出て、その下方のバケット10の天壁30上に冷却水が降り注がれ、同様に、冷却水が更に下方のバケット10の天壁30上に降り注がれることとなる。その結果、上下に配列された複数のバケット10のそれぞれに、上方から順に冷却水が通過するようになっている。したがって、一度の冷却水の接触によっては、パウチ1の冷却が不十分であっても、パウチ1の表面に冷却水が次々に接触するので、冷却水による冷却効率をより高めることができる。
【0050】
そして、上記のパウチ冷却部55を通り抜けたバケット10は、コンベヤ60によりパウチ取出部59に搬送され、そこで天壁30が右斜め上方となるように、バケット10が傾動支持される。その状態で図示しないロック解除手段により、係合ロッド19bからフック24が外すことにより底壁19を開かせて、各区画18内から複数のパウチ1がそれぞれ取出される。
【実施例】
【0051】
下記表1に示す原料を水に分散させて、クエン酸ナトリウムを加えてpH3.8に調整した。pHを調整したものを95℃まで加温してゼリー飲料の原液を製造した。このゼリー飲料の原液を95℃で口栓付きパウチに180g充填してキャップを螺合させて密栓した。密栓したパウチを直ちに本発明品のバケットの5つの区画にそれぞれ1つずつ挿入した。そして、パウチには、経時的な温度変化を測定するために温度センサーを挿入した。
【0052】
その後、バケットの上方20cmのところから図9に示すように20リットル/分の水量で20℃の冷却水を散水し、ゼリー飲料を製造した。
【0053】
その結果、ゼリー飲料の原液は、約8分30秒で内部温度は40℃になった(図10参照)。また、充填したパウチ底部の前後の幅は、平均して42mmであり、このとき本発明品のバケットの各区間の挿入口における前後壁の幅は、50mmであった。そのため、充填したパウチをバケットの区画に挿入する際にバケットの区画に余裕があったので挿入しやすかった。
【0054】
【表1】

【0055】
(比較例)
上記実施例と同じようにゼリー飲料の原液を口栓付きパウチに充填し、直ちに特開2006−168856号に記載されたバケットであって5つの区画を有するテスト用のバケットの各区画にパウチを挿入した。その後、上記実施例と同じようにゼリー飲料原液を冷却してゼリー飲料を製造した。
【0056】
その結果、ゼリー飲料の原液は、約10分で内部温度は40℃になった(図10参照)。すなわち、本発明のバケットと比べて冷却速度が遅く、冷却効率が劣ることが分かった。また、比較例で使用したバケットの各区画の挿入口における前後壁の幅は、45mmしかなく、充填したパウチをバケットの区画に挿入する際にバケットの区画の幅とパウチの幅に余裕がなく挿入しずらかった。
【0057】
なお、図10に示す冷却テストデータにおいて、図中破線で示す既存バケットとは、比較例(特開2006−168856号)のバケットを示しており、図中実線で示す改良バケットとは、本発明のバケットを示している。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の口栓付きパウチの殺菌並びに冷却を行うためのバケットの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】同バケットを斜め下方から見た場合の斜視図である。
【図3】同バケットを示しており、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図4】同バケットを示しており、(a)は図3(a)のA−A矢視線における断面図、(b)は図3(a)のB−B矢視線における断面図である。
【図5】同バケットの他の形状を示す斜視図である。
【図6】同バケットに収容される口栓付きパウチを示す斜視図である。
【図7】同バケットが適用されるパウチ殺菌装置の概略を示す正面図である。
【図8】同パウチ殺菌装置の冷却工程における要部拡大断面図である。
【図9】同パウチ殺菌装置の冷却工程における要部拡大斜視図である。
【図10】本発明のバケット及び従来のバケットの冷却テストデータを示す図表である。
【符号の説明】
【0059】
1 口栓付きパウチ
5 口栓部
6 底部
7 肩部
10 バケット
11 前壁
13 後壁
15 側壁
17 仕切壁
18 区画
19 底壁
28 支軸
30 天壁
31a 連結部
34 周壁
35 開口部
37 リブ
38 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が充填された口栓付きパウチを収容してコンベヤにより移動し、該パウチの口栓部の殺菌並びに冷却を行うためのバケットにおいて、
前記パウチの厚さにほぼ適合する間隔で配置された一対の前後壁と、この前後壁の両端に配置された両側壁と、前記前後壁の間を長手方向に所定間隔で仕切って前記パウチを1個ずつ一列に収容する区画を形成する仕切壁と、前記区画に収容された前記パウチの底部を支持するように前記前後壁の上下に対向する面に、前記区画に流入した冷却水が抜ける隙間を設けて取付けられた底壁と、この底壁に対向して配置され、前記前後壁に連結された天壁と、前記両側壁に設けられ、前記コンベヤに連結されて、前記バケットを回動可能に支持する支軸とを有し、
前記天壁は、前後に延出してその周囲にリブ状に突出した周壁を有し、前記区画に収容された前記パウチの口栓部が位置する部分には、該口栓部を突出させることができる開口部が設けられており、
前記開口部は、前記天壁の前記前後壁との連結部よりも内側にあり、かつ、前記天壁の上面の最も低い位置にあって、前記周壁によって前記天壁上に溜まった冷却水の落下口となるように構成されていることを特徴とする口栓付きパウチの殺菌並びに冷却を行うためのバケット。
【請求項2】
前記開口部の前後辺には、一対のリブが対向して立設されており、前記冷却水が前記開口部の両側辺から流入するように構成されている請求項1記載の口栓付きパウチの殺菌並びに冷却を行うためのバケット。
【請求項3】
前記開口部の前後辺に、前記一対のリブが対向して立設されると共に、前記開口部の両側縁部には、冷却水を流下させる孔が設けられている請求項2記載の口栓付きパウチの殺菌並びに冷却を行うためのバケット。
【請求項4】
前記底壁が開閉可能に構成され、該底壁を開いて前記パウチを前記各区画に挿入できるように構成されている請求項1〜3のいずれか1つに記載の口栓付きパウチの殺菌並びに冷却を行うためのバケット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のバケットを用い、口栓付きパウチの口栓部を天壁に向けて、前記各区画に該パウチをそれぞれ収容し、前記コンベヤにより該バケットを搬送しつつ、前記バケットを前記天壁が下方になるように支持し、前記天壁側を湯槽に浸漬して前記パウチの少なくとも口栓部を加熱殺菌し、次いで前記天壁側が上方になるように支持して、前記天壁上に冷却水を降りかけることにより、前記開口部を通して、冷却水を前記パウチの口栓部周縁に降りかけることによって冷却を行うことを特徴とする口栓付きパウチの殺菌並びに冷却方法。
【請求項6】
前記冷却を行う際に、前記バケットを上下に配列させ、上方のバケットの天壁上に冷却水を降りかけることにより、上方のバケットから流下した冷却水がその下方に配置されたバケットの天壁上に降りかかるようにする請求項5記載の口栓付きパウチの殺菌並びに冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−290736(P2008−290736A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136438(P2007−136438)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000006116)森永製菓株式会社 (130)