説明

口腔内速崩壊性錠

【課題】
口腔内速崩壊性錠を提供する。
【解決手段】
次の成分を含有し、硬度(錠剤の直径方向で測定、以下同様)が20N以上、空隙率が20〜50%である口腔内速崩壊性錠に関する。
(1)アルコール系溶媒に可溶性かつ水不溶性のコーティング剤で被覆された薬物含有微粒子
(2)アルコール系溶媒に溶解性の水溶性結合剤及び水溶性糖類を含む混合物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮成型製剤の製造方法、更に詳しくは、アルコール系溶媒に可溶性かつ水不溶性のコーティング剤で被覆された薬物含有微粒子及びアルコール系溶媒に不溶性の賦形剤を含有する混合物を圧縮成型し、得られた圧縮成型物をアルコール系溶媒で処理する圧縮成型製剤の製造方法に関する。
【0002】
また、本発明は、口腔内速崩壊性錠、更に詳しくは次の成分を含有し、硬度(錠剤の直径方向で測定、以下同様)が20N以上、空隙率が20〜50%である口腔内速崩壊性錠に関する。
(1)アルコール系溶媒に可溶性かつ水不溶性のコーティング剤で被覆された薬物含有微粒子
(2)アルコール系溶媒に溶解性の水溶性結合剤及び水溶性糖類を含む混合物
【背景技術】
【0003】
薬物溶出を制御した薬物含有微粒子を含む圧縮成型製剤については、特許文献1には、苦味を有する薬物等及び製剤用担体とを含む懸濁液を回転ディスク型スプレードライヤーに噴霧して得られる粒子を糖類と混合後、圧縮する口腔内速崩壊性錠の製造方法が記載されており、特許文献2には持続放出性重合体組成物で被覆された活性成分粒子からなる平均粒子径5〜400μmのマイクロカプセルを圧縮する錠剤の製造方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献3には、薬物含有芯物質を疎水性有機化合物−水不溶性高分子混合皮膜で被覆した平均粒子径300μm以下の徐放性粒子を圧縮成型する錠剤の製造方法が記載されている。
【0005】
しかしながら、これら特許文献には、圧縮成型製剤に後処理することについては記載がない。
【0006】
また、最近、嚥下力の弱い乳幼児、高齢者、重症患者に服用容易な製剤とし、速効性を期待して口腔内速崩壊性錠が用いられるようになってきており、例えば、特許文献4には薬物、製剤添加物からなる薬物処方成分を低密度に成型後、一旦アルコールで湿潤させ、アルコールを除去する方法が、特許文献5には薬物、糖類、水分を含む混合物を打錠する方法が、特許文献6には薬物、水溶性結合剤、水溶性賦形剤の混合物を打錠後、水蒸気で加湿・乾燥する方法が、特許文献7には水溶性添加物、薬物、水を含む練合物を圧縮成型し、乾燥後グレージングする方法が、特許文献8には薬物及び成型性の低い糖類を成型性の高い糖類で造粒後、造粒物を圧縮成型する方法が記載されている。
【0007】
更に、圧縮成型を行わない方法として、凍結乾燥法によって口腔内速崩壊性錠を製造することが提案されており、例えば、特許文献9には、分散剤、水溶性糖類及び機能性粒子を含有する水分散液を鋳型に充填し、水を除去することにより、機能性微粒子含有口腔内速崩壊性錠を製造することが記載されている。
【0008】
【特許文献1】WO02/002083パンフレット
【特許文献2】特許2601660号公報
【特許文献3】WO00/24423パンフレット
【特許文献4】特開平10−298061号公報
【特許文献5】特開平5−271054号公報
【特許文献6】特開平8−291051号公報
【特許文献7】WO93/15724パンフレット
【特許文献8】WO95/20380パンフレット
【特許文献9】WO02/100381パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の圧縮成型製剤の製造方法は、圧縮成型により失われた、被覆された薬物含有微粒子の溶出制御機能を圧縮成型物の内部で再生させるものであり、また、本発明の口腔内速崩壊性錠は、崩壊時間が短いと共に、薬物の溶出が十分に制御されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、アルコール系溶媒に可溶性かつ水不溶性のコーティング剤で被覆された薬物含有微粒子及びアルコール系溶媒に不溶性の賦形剤を含有する混合物を圧縮成型し、得られた圧縮成型物をアルコール系溶媒で処理することにより、圧縮成型により失われた、被覆された薬物含有微粒子の溶出制御機能を圧縮成型物の内部で再生させて、薬物溶出の制御された圧縮成型製剤を製造する方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、次の成分を含有し、硬度が20N以上、空隙率が20〜50%である口腔内速崩壊性錠を提供するものである。
(1)アルコール系溶媒に可溶性かつ水不溶性のコーティング剤で被覆された薬物含有微粒子
(2)アルコール系溶媒に溶解性の水溶性結合剤及び水溶性糖類を含む混合物
また、本発明の圧縮成型製剤の製造方法においては、薬物含有微粒子及びアルコール系溶媒に不溶性の賦形剤を含有する混合物に、更に、アルコール系溶媒に溶解性の結合剤、滑沢剤を添加して圧縮成型してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の口腔内速崩壊性錠は、崩壊時間が短いと共に、薬物の溶出が十分に制御されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1における打錠前の薬物処方成分、打錠で得られた薬物処方成分の錠剤及びエタノール処理を行った口腔内速崩壊性錠について、第14改正日本薬局方溶出試験第2法(溶媒:水)でのベシル酸ベポタスチンの溶出試験結果を示すグラフ。
【図2】実施例2における打錠前の薬物処方成分、打錠で得られた薬物処方成分の錠剤及びエタノール処理を行った口腔内速崩壊性錠について、第14改正日本薬局方溶出試験第2法(溶媒:水)でのベシル酸ベポタスチンの溶出試験結果を示すグラフ。
【図3】実施例3における打錠前の薬物処方成分、打錠で得られた薬物処方成分の錠剤及びエタノール処理を行った口腔内速崩壊性錠について、第14改正日本薬局方溶出試験第2法(溶媒:水)での塩酸ジルチアゼムの溶出試験結果を示すグラフ。
【図4】実施例4における口腔内速崩壊性錠について、第14改正日本薬局方溶出試験第2法(溶媒:水)での塩酸ジルチアゼムの溶出試験結果を示すグラフ。
【図5】実施例5における口腔内速崩壊性錠について、第14改正日本薬局方溶出試験第2法(溶媒:水)でのベシル酸ベポタスチンの溶出試験結果を示すグラフ。
【図6】実施例6における口腔内速崩壊性錠について、第14改正日本薬局方溶出試験第2法(溶媒:水)でのベシル酸ベポタスチンの溶出試験結果を示すグラフ。
【図7】実施例7における口腔内速崩壊性錠について、第14改正日本薬局方溶出試験第2法(溶媒:水)でのベシル酸ベポタスチンの溶出試験結果を示すグラフ。
【図8】実施例8における口腔内速崩壊性錠について、第14改正日本薬局方溶出試験第2法(溶媒:水)でのベシル酸ベポタスチンの溶出試験結果を示すグラフ。
【図9】実施例9における口腔内速崩壊性錠について、第14改正日本薬局方溶出試験第2法(溶媒:水)でのベシル酸ベポタスチンの溶出試験結果を示すグラフ。
【図10】実施例10における口腔内速崩壊性錠について、第14改正日本薬局方溶出試験第2法(溶媒:水)でのベシル酸ベポタスチンの溶出試験結果を示すグラフ。
【図11】実施例11における口腔内速崩壊性錠について、第14改正日本薬局方溶出試験第2法(溶媒:水)でのベシル酸ベポタスチンの溶出試験結果を示すグラフ。
【図12】実施例12における口腔内速崩壊性錠について、第14改正日本薬局方溶出試験第2法(溶媒:水)でのベシル酸ベポタスチンの溶出試験結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の製造方法における各成分の配合率は、圧縮成型製剤全量当たりの各成分の含有率[成分重量(g)÷圧縮成型製剤重量(g)×100]で示せば、薬物が0.1〜70w/w%、アルコール系溶媒に可溶性かつ水不溶性のコーティング剤が0.02〜10w/w%、アルコール系溶媒に不溶性の賦形剤が1〜98w/w%とするのが好ましく、アルコール系溶媒に溶解性の結合剤及び滑沢剤を含有させる場合には、それぞれ、0.1〜30w/w%及び0.01〜10w/w%とするのが好ましい。
【0015】
また、薬物が0.5〜20w/w%、アルコール系溶媒に可溶性かつ水不溶性のコーティング剤が0.5〜5w/w%、アルコール系溶媒に不溶性の賦形剤が10〜95w/w%とするのがより好ましく、アルコール系溶媒に溶解性の結合剤及び滑沢剤を含有させる場合には、それぞれ、0.5〜5w/w%及び0.03〜3w/w%とするのがより好ましい。
【0016】
アルコール系溶媒に可溶性かつ水不溶性のコーティング剤としては、アルコール系溶媒(25℃)1mlに対して20mg以上溶解し、かつ、水(25℃)1mlに対して1mg以下しか溶解しないコーティング剤をあげることができ、1種のみを使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
【0017】
アルコール系溶媒に可溶性かつ水不溶性のコーティング剤の具体例としては、セルロース系コーティング剤(例えば、エチルセルロース)、アクリル酸系コーティング剤[例えば、メタアクリル酸・メタアクリル酸メチル共重合体(例えば、レーム社製オイドラギット(Eudragit)L、S)、メタアクリル酸・アクリル酸エチル共重合体(例えば、レーム社製オイドラギットL30D−55、L100−55)、メタアクリ酸メチル・アクリル酸エチル共重合体(例えば、レーム社製オイドラギットNE30D)、メタアクリル酸メチル・アクリル酸エチル・(β−メタアクリロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムクロリド共重合体(例えば、レーム社製オイドラギットRL、RS)及びメタアクリル酸メチル・メタアクリル酸ブチル・メタアクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体(例えば、レーム社製オイドラギットE100)]等からなる群より選ばれる1又は2以上をあげることができ、エチルセルロース、メタアクリ酸メチル・アクリル酸エチル共重合体、メタアクリル酸メチル・アクリル酸エチル・(β−メタアクリロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムクロリド共重合体からなる群より選ばれる1又は2以上を使用するのが好ましい。
【0018】
アルコール系溶媒に不溶性の賦形剤としては、アルコール(25℃)1mlに対して1mg以下しか溶解しない賦形剤をあげることができ、1種のみを使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
【0019】
アルコール系溶媒に不溶性の賦形剤の具体例としては、無機賦形剤(例えば、クエン酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム)、水溶性糖類(例えば、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、ソルビトール、ラクトース、シュクロース、マルトース、トレハロース)をあげることができ、水溶性糖類を使用するのが好ましく、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ラクトースからなる群より選ばれる1又は2以上を使用するのがより好ましい。
【0020】
また、アルコール系溶媒に溶解性の結合剤としては、アルコール系溶媒(25℃)1mlに対して20mg以上溶解する結合剤をあげることができ、1種のみを使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
【0021】
アルコール系溶媒に溶解性の結合剤の具体例としては、セルロース系結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)、ポリビニル系結合剤(例えば、ポリビニルピロリドン)からなる群より選ばれる1又は2以上をあげることができ、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンからなる群より選ばれる1又は2以上を使用するのが好ましい。
【0022】
滑沢剤としては、汎用のものを適宜使用することができ、例えば、タルク、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、ステアリン酸アルカリ土類金属(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム)、ショ糖高級脂肪酸エステル(例えば、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖ベヘン酸エステル)、グリセリン高級脂肪酸エステル(例えば、グリセリンベヘン酸エステル)からなる群より選ばれる1又は2以上を使用することができる。
【0023】
更に、圧縮成型製剤には、必要に応じて、崩壊剤(例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、部分アルファ化デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン、結晶セルロース)、甘味料[例えば、サッカリン、アスパルテーム(味の素株式会社製1−メチルN−L−α−アスパルチル−L−フェニルアラニン)、ステビア、アセスルファムカリウム]、香料(例えば、l−メントール、オレンジ油、ウイキョウ油、ケイヒ油、チョウジ油、テレピン油、ハッカ油、ユーカリ油)、着色剤(例えば、食用赤色2号、3号、食用黄色4号、5号、食用緑色3号、食用青色1号、2号、これらのアルミニウムレーキ、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄)、嬌味剤(例えば、塩化ナトリウム)、溶解補助剤(例えば、シクロデキストリン、アルギニン、リジン、トリスアミノメタン)等を添加してもよい。
【0024】
薬物としては、経口投与可能な薬物であれば任意の薬物を含有させることができ、その種類は特に限定されない。以下に含有可能な薬物の例を挙げる。
(1)解熱鎮痛消炎剤(例えば、インドメタシン、アセチルサリチル酸、ジクロフェナックナトリウム、ケトプロフェン、イブプロフェン、メフェナム酸、アズレン、フェナセチン、イソプロピルアンチピリン、アセトアミノフェノン、フェニルブタゾン、フルフェナム酸、サリチル酸ナトリウム、サリチルアミド、エトドラク、セレコキシブ、バルデコキシブなど);
(2)ステロイド系抗炎症剤(例えば、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロンなど);
(3)抗潰瘍剤(例えば、エカベトナトリウム、エンプロスチル、スルピリド、塩酸セトラキサート、ゲファルナート、マレイン酸イルソグラジン、シメチジン、塩酸ラニチジン、ファモチジン、ニザチジン、塩酸ロキサチジンアセテート、オメプラゾール、ランソプラゾールなど);
(4)冠血管拡張剤(ニフェジピン、硝酸イソソルビド、塩酸ジルチアゼム、トラピジル、ジピリダモール、塩酸ジラゼプ、塩酸ニカルジピン、塩酸ベラパミルなど);
(5)末梢血管拡張剤(例えば、酒石酸イフェンプロジル、ペントキシフィリンなど);
(6)抗生物質(例えば、アンピシリン、塩酸バカンピシリン、アスポキシシリン、アモキシリン、セファレキシン、セフタジジム、セフロキシムナトリウム、塩酸ミノサイクリン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、エリスロマイシンなど);
(7)合成抗菌剤(例えば、ナリジクス酸、ピロミド酸、ピペミド酸三水和物、エノキサシン、シノキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、塩酸シプロフロキサシン、スルファメトキサゾール・トリメトプリムなど);
(8)抗ウイルス剤(例えば、アシクロビル、ガンシクロビル、バルガンシクロビルなど);
(9)鎮けい剤(例えば、臭化プロパンテリン、硫酸アトロピン、臭化オキサピウム、臭化チメピジウム、臭化ブチルスコポラミン、塩化トロスピウム、臭化ブトロピウム、N−メチルスコポラミンメチル硫酸、臭化メチルオクタトロピンなど);
(10)鎮咳剤(例えば、ヒベンズ酸チペピジン、エフェドリン、リン酸コデイン、臭化水素酸デキストロメトルファン、リン酸ジメモルファン、塩酸ホミノベン、リン酸ベンプロペリン、塩酸エプラジノン、塩酸クロフェダノール、ノスカピン、クエン酸ペントキシベリンなど);
(11)去たん剤(例えば、塩酸ブロムヘキシン、カルボシステイン、塩酸エチルシステイン、塩酸メチルシステインなど);
(12)気管支拡張剤(例えば、テオフィリン、アミノフィリン、クロモグリク酸ナトリウム、塩酸プロカテロール、塩酸トリメトキノール、ジプロフィリン、硫酸サルブタモール、フマル酸ホルモテロール、硫酸オルシプレナリン、塩酸クレンブテロール、硫酸テルブタリン、塩酸マブテロール、臭化水素酸フェノテロール、塩酸メトキシフェナミンなど);
(13)強心剤(例えば、塩酸ドパミン、塩酸ドブタミン、ドカルパミン、デノパミン、カフェイン、ジゴキシン、ユビデカレノンなど);
(14)利尿剤(例えば、フロセミド、アセタゾラミド、トリクロルメチアジド、ヒドロクロロチアジド、トリアムテレン、ピレタニド、メフルシド、アゾセミドなど);
(15)筋弛緩剤(例えば、塩酸トルペリゾン、塩酸エペリゾン、塩酸チザニジン、メフェネシン、クロルゾキサゾン、メトカルバモール、メシル酸プリジノール、アフロクアロン、バクロフェン、ダントロレンナトリウムなど);
(16)脳代謝改善剤(例えば、ニセルゴリン、塩酸メクロフェノキセート、タルチレリンなど);
(17)マイナートランキライザー(例えば、オキサゾラム、ジアゼパム、クロチアゼパム、メダゼパム、フルジアゼパム、ニトラゼパム、クロルジアゼポキシドなど);
(18)メジャートランキライザー(例えば、スルピリド、塩酸クロカプラミン、ゾテピン、クロルプロマジン、ハロペリドールなど);
(19)β−ブロッカー(例えば、フマル酸ビソプロロール、ピンドロール、塩酸プロプラノロール、塩酸カルテオロール、酒石酸メトプロロール、塩酸アセブトロール、塩酸ブフェトロール、塩酸アルプレノロール、塩酸アロチノロール、塩酸オクスプレノロール、ナドロール、塩酸インデノロール、マレイン酸チモロール、塩酸ベフノロール、塩酸ブプラノロールなど);
(20)抗不整脈剤(例えば、塩酸プロカインアミド、ジソピラミド、アジマリン、硫酸キニジン、塩酸アプリンジン、塩酸プロパフェノン、塩酸メキシレチン、塩酸アジミライドなど);
(21)痛風治療剤(例えば、アロプリノール、プロベネシド、コルヒチン、ベンズブロマロン、ブコロームなど);
(22)血液凝固阻止剤(例えば、塩酸チクロピジン、ワルファリンカリウム、(2R,3R)−3−アセトキシ−5−〔2−(ジメチルアミノ)エチル〕−2,3−ジヒドロ−8−メチル−2−(4−メチルフェニル)−1,5−ベンゾチアゼピン−4(5H)−オン・マレイン酸塩など);
(23)偏頭痛剤(例えば、安息香酸リザトリプタンなど);
(24)抗てんかん剤(例えば、フェニトイン、バルプロ酸ナトリウム、カルバマゼピンなど);
(25)抗アレルギー剤(例えば、マレイン酸クロルフェニラミン、フマル酸クレマスチン、メキタジン、酒石酸アリメマジン、エバスチン、塩酸エピナスチン、ロラタジン、アンレキサノクス、トラニラスト、ベシル酸ベポタスチンなど);
(26)鎮吐剤(例えば、塩酸ジフェニドール、メトクロプラミド、ドンペリドン、メシル酸ベタヒスチン、マレイン酸トリメブチン、オンダンセトロン、塩酸ラモセトロンなど);
(27)降圧剤(例えば、レシナミン、メチルドパ、塩酸プラロゾシン、塩酸ブナゾシン、塩酸クロニジン、ブドララジン、ウラピジルなど);
(28)高脂血症用剤(例えば、プラバスタチンナトリウム、フルバスタチンナトリウムなど);
(29)交感神経興奮剤(例えば、メシル酸ジヒドロエルゴタミン、塩酸イソプロテレノール、塩酸エチレフリンなど);
(30)アルツハイマー痴呆治療剤(例えば、塩酸ドネペジルなど);
(31)経口抗癌剤(例えば、マリマスタットなど);
(32)アルカロイド系麻薬(例えば、モルヒネ、コデイン、コカインなど);
(33)ビタミン剤(例えば、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンE、葉酸など);
(34)頻尿治療剤(例えば、塩酸フラボキサート、塩酸オキシブチニンなど);
(35)アンジオテンシン変換酵素阻害剤(例えば、塩酸イミダプリル、マレイン酸エナラプリル、アラセプリル、塩酸デラプリルなど);
(36)勃起不全治療剤(例えば、クエン酸シルデナフィル、塩酸バルデナフィル、アバナフィル)。
【0025】
薬物含有微粒子及びアルコール系溶媒に不溶性の賦形剤を含有する混合物の調製は、製剤分野で慣用の混合方法で行うことができ、例えば、二重円錐混合機(例えば、八州化工機製ダブルコーンミキサー)、流動層造粒機(例えば、パウレック社製マルチプレックス、フロイント産業製スパイラフロー)、高速攪拌造粒機(例えば、深江パウテック製ハイスピードミキサー、パウレック社製バーティカルグラニュレータ−)、又は振動篩(例えば、ダルトン社製振動篩)等を用いて行うことができる。
【0026】
また、アルコール系溶媒に溶解性の結合剤を使用する場合には、アルコール系溶媒に不溶性の賦形剤を予めアルコール系溶媒に溶解性の結合剤で造粒してもよく、造粒物はアルコール系溶媒に不溶性の賦形剤にアルコール系溶媒に溶解性の結合剤の水溶液又は水懸濁液を添加して混合、造粒、乾燥することによって製造することができる。
【0027】
圧縮成型は、菊水製作所製ロータリー三層打錠機RT−3L−14、菊水製作所製複式打錠機コレクトD65RC、菊水製作所製クリーンプレスコレクト18HUK等の通常の打錠機を使用して行うことができ、例えば、次の方法によって実施することができる。
(1)滑沢剤と流動化剤を含む混合物の圧縮成型と、薬物含有微粒子及びアルコール系溶媒に不溶性の賦形剤を含有する混合物の圧縮成型とを交互に行う(特開平10−298061号)
(2)滑沢剤の粉末を噴霧しながら圧縮成型する(特公昭41−1273号、同48−20103号)
(3)張り付き防止フィルムを介して面取り成型する(特開平8−19589号) 又は
(4)圧縮成型製剤の崩壊性・溶解性に影響を及ぼさない少量の滑沢剤を薬物含有微粒子及びアルコール系溶媒に不溶性の賦形剤を含む混合物に添加して成型する
圧縮成型は、5〜30MPaの成型圧で行えばよく、圧縮成型の段階で薬物含有微粒子の被覆が破損すること等によって溶出制御機能が失われても、圧縮成型後に行うアルコール系溶媒による処理によって、溶出制御機能を再生することができる。
【0028】
アルコール系溶媒に可溶性かつ水不溶性のコーティング剤で被覆された薬物含有微粒子は、圧縮成型による変形が大きくならないよう、平均粒子径を350μm以下とするのが好ましく、平均粒子径が300μm以下とするのが更に好ましい。
【0029】
圧縮成型物の処理に使用するアルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、2−メトキシエタノール(片山化学工業製メチルセロソルブ)等を使用することができるが、常圧での沸点が85℃以下のもの、例えば、メタノール、エタノール、i−プロパノール等を使用するのが好ましく、とりわけ、エタノールを使用するのが好ましい。
【0030】
アルコール系溶媒による圧縮成型物の処理は、(a)圧縮成型物にアルコール系溶媒を液体の状態で添加する、(b)圧縮成型物にアルコール系溶媒を噴霧する、又は(c)圧縮成型物をアルコール系溶媒の蒸気によって湿潤させる等した後、加温、減圧、通風等の慣用の方法によって圧縮成型物からアルコール系溶媒を留去することにより実施することができる。
【0031】
アルコール系溶媒の蒸気によって浸潤させる場合には、薬物の安定性を考慮して、蒸気温度を60℃以下、とりわけ、40℃以下とするのが好ましい。アルコール系溶媒による処理によって、圧縮成型物に含まれる薬物含有微粒子を覆うアルコール系溶媒に可溶性かつ水不溶性のコーティング剤が圧縮成型物の内部で溶解し、アルコール系溶媒が留去される段階で固化することによって、圧縮成型によって失われた溶出制御機能が再生される。
【0032】
また、アルコール系溶媒に溶解性の結合剤を含有させて圧縮成型を行う場合には、圧縮成型後に行うアルコール系溶媒による処理によって、アルコール溶解性結合剤が溶解した後、固化する。このため、アルコール系溶媒による処理によって、同時に、圧縮成型製剤の硬度を向上させることができ、圧縮成型時の圧力を比較的低めに抑制しながら成型しても、硬度の高い成型製剤を得ることができ、例えば、アルコール系溶媒で処理する前の硬度が2〜15Nであっても、アルコール系溶媒による処理によって、硬度を20〜80Nに向上させることができる。
【0033】
アルコール系溶媒による処理によって、圧縮成型製剤に含まれる結合剤が溶解するため、一定限度迄は、処理時間を長くすると結合剤の溶解量が多くなり、次の乾燥工程で硬度上昇が大きくなる。必要な硬度が得られないか或いは崩壊時間が長くなる場合には、圧縮成型物中の結合剤の量、処理時間、適用するアルコール系溶媒の量等を適宜選択することにより、必要となる硬度、崩壊時間を達成することができる。
【0034】
圧縮成型後に行うアルコール系溶媒による処理によって、圧縮成型物の内部まで薬物含有微粒子の溶出制御機能を再生させるためには、アルコール系溶媒が圧縮成型物の内部にまで浸透することが必要であるため、次の式で算出される空隙率が20〜50%であるのが好ましく、とりわけ、25〜40%であるのがより好ましい。
空隙率(%)=(V×ρ−M)÷(V×ρ)×100
[式中、Vは圧縮成型製剤の体積(ml)表し、ρは圧縮成型製剤の空隙以外の部分の密度(g/ml)を表し、Mは圧縮成型製剤の重量(g)を表す。]
本発明の圧縮成型製剤の製造方法で得られる圧縮成型製剤の形状としては、タブレット型、楕円球形、球形、角型等が含まれ、また、服用の容易さの点からは圧縮成型製剤の体積は0.02〜1ml/錠、好ましくは0.05〜0.5ml/錠の範囲であるのが好ましい。
【0035】
本発明の圧縮成型製剤の製造方法に使用されるアルコール系溶媒に可溶性かつ水不溶性のコーティング剤で被覆された薬物含有微粒子は、次の薬物含有芯粒子製造工程及びコーティング工程により製造することができる。
【0036】
(薬物含有芯粒子製造工程)
薬物含有芯粒子は、上記薬物及び必要に応じて各種添加剤を用いて、湿式造粒、乾式造粒、レイヤリング造粒、加熱造粒、含浸造粒、噴霧乾燥造粒などの既知の造粒法により調製することができる。
【0037】
薬物含有芯粒子を湿式造粒法で調製するには、例えば、以下のような方法を使用することができる。
(1)薬物及び各種製剤添加剤の混合物(以下、薬物混合物と記載する)に、結合剤溶液を加え、高速転動造粒機などを用いて撹拌、造粒する(WO00/24379)。
(2)薬物混合物に結合剤溶液を添加し混練した後、押出造粒機を用いて造粒、整粒する。
(3)薬物混合物に、流動層造粒機、転動撹拌流動層造粒機などを用い、流動下に結合剤溶液を噴霧して造粒する(WO94/8709)。
【0038】
薬物含有芯粒子の製造に使用する製剤添加剤としては、賦形剤(例えば、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース類;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、部分アルファ化デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム等のデンプン類)等をあげることができ、これらを粉末として使用する。上記(1)の造粒を行う場合には、賦形剤として溶媒を保持する性質を有する賦形剤を使用するのが好ましい。
【0039】
結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等を使用することができ、溶媒としては水、水性エタノール等の水性アルコールを使用することができる。
【0040】
乾式造粒法で調製するには、薬物混合物を、ローラーコンパクター及びロールグラニュレーターなどを用いて造粒する。
【0041】
レイヤリング造粒法で調製するには、遠心流動型造粒機などを用い、転動させた不活性な担体に結合剤溶液を噴霧しつつ薬物混合物を添加し、担体上に薬物混合物を付着させる。不活性な担体としては、結晶ラクトース、結晶セルロース、結晶塩化ナトリウムなどの糖類もしくは無機塩の結晶、球形造粒物〔例えば、結晶セルロースの球形造粒物(例えば、旭化成製セルフィアCP−203)、結晶セルロースとラクトースの球形造粒物(例えば、フロイント産業製ノンパレル−105)、精製白糖の球形造粒物(例えば、フロイント産業製ノンパレル−103)、精製白糖とトウモロコシデンプンの球形造粒物(例えば、フロイント産業製ノンパレル−101)〕などを用いることができる。
【0042】
加熱造粒法で調製するには、以下のような方法で調製することができる。
(a)ポリエチレングリコール、油脂、ワックスなどの加熱により溶融する物質(加熱溶融物質)を含む薬物混合物を、撹拌造粒機、高速撹拌造粒機などを用い、加熱溶融物質が溶融する温度下で撹拌し、造粒する。
(b)遠心流動型造粒機などを用い、加熱溶融物質が溶融する温度下で転動させた不活性な担体に、加熱溶融物質を含む薬物混合物を添加して、担体上に薬物混合物を付着させる。
【0043】
含浸造粒法で調製するには、適当な濃度で薬物を含む溶液と多孔性の担体とを混合し、担体の気孔部中に薬物溶液を充分保持させた後、乾燥させ溶媒を除去させる。多孔性の担体としては、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(富士化学工業製ノイシリン)、ケイ酸カルシウム(エーザイ製フローライト)などを用いることができる。
【0044】
噴霧乾燥造粒法で調製するには、スプレードライヤーなどの噴霧乾燥機を用い、薬物の溶液又は懸濁液を高温気流中に噴霧し、乾燥させる。
【0045】
なお、粒子径約45〜195μmの薬物含有芯粒子を調製するには、高速転動造粒機を用いた湿式造粒(例えば、薬物、溶媒を保持する性質を有する賦形剤に結合剤溶液を添加し、高速転動造粒する方法)、流動層造粒機を用いる湿式造粒(例えば、薬物、賦形剤を流動化し、結合剤溶液を噴霧して造粒する方法)、含浸造粒、噴霧乾燥造粒が好ましい。
【0046】
(コーティング工程)
薬物含有芯粒子のコーティングは、上記のように調製した薬物含有芯粒子の表面に、アルコール系溶媒に可溶性かつ水不溶性のコーティング剤の被覆層を設けることにより実施する。薬物含有芯粒子に被覆層を設けるには、製剤技術の分野において通常使用されている任意の被覆法を用いることができる。例えばアルコール系溶媒に可溶性かつ水不溶性のコーティング剤、及び必要に応じ、可塑剤(例えば、クエン酸トリエチル、トリアセチン)、前記滑沢剤を溶媒に溶解もしくは分散してコーティング液とし、これを通常使用されているコーティング装置を用いて薬物含有芯粒子に噴霧し、乾燥することによって、薬物含有微粒子を得ることができる。
【0047】
コーティング溶液の溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−メトキシエタノール(片山化学工業製メチルセロソルブ)等のアルコール系溶媒、水、水とアルコール系溶媒との混合物等を使用することができる。またコーティング装置としては、流動層コーティング装置、遠心流動層コーティング装置、パンコーティング装置などを使用することができる。
【0048】
本発明の口腔内速崩壊性錠は、本発明の圧縮成型製剤の製造方法により、効率的に製造することができる。
【0049】
口腔内速崩壊性錠に使用されるアルコール系溶媒に可溶性かつ水不溶性のコーティング剤で被覆された薬物含有微粒子としては、本発明の圧縮成型製剤の製造方法に使用するものをそのまま使用することができ、口腔内で崩壊後のザラツキ感を抑制するためには、平均粒子径を350μm以下とするのが好ましく、平均粒子径が300μm以下とするのが更に好ましい。
【0050】
アルコール系溶媒に可溶性かつ水不溶性のコーティング剤の具体例としては、セルロース系コーティング剤、アクリル酸系コーティング剤等をあげることができ、エチルセルロース、メタアクリル酸・メタアクリル酸メチル共重合体(例えば、レーム社製オイドラギット(Eudragit)L、S)、メタアクリル酸・アクリル酸エチル共重合体(例えば、レーム社製オイドラギットL30D−55、L100−55)、メタアクリ酸メチル・アクリル酸エチル共重合体(例えば、レーム社製オイドラギットNE30D)、メタアクリル酸メチル・アクリル酸エチル・(β−メタアクリロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムクロリド共重合体(例えば、レーム社製オイドラギットRL、RS)及びメタアクリル酸メチル・メタアクリル酸ブチル・メタアクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体(例えば、レーム社製オイドラギットE100)等からなる群より選ばれる1又は2以上を使用するのが好ましい。
【0051】
口腔内速崩壊性錠に使用される水溶性糖類としては、本発明の圧縮成型製剤の製造方法に使用されるアルコール系溶媒に不溶性の賦形剤の1つとして挙げられている水溶性糖類を使用することができ、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ラクトースからなる群より選ばれる1又は2以上を使用するのが好ましい。
【0052】
口腔内速崩壊性錠に使用されるアルコール系溶媒に溶解性の水溶性結合剤としては、アルコール系溶媒(25℃)1ml及び水(25℃)1mlのいずれに対しても20mg以上溶解する結合剤をあげることができ、1種のみを使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
【0053】
アルコール系溶媒に溶解性の水溶性結合剤の具体例としては、セルロース系結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)、ポリビニル系結合剤(例えば、ポリビニルピロリドン)からなる群より選ばれる1又は2以上をあげることができ、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンからなる群より選ばれる1又は2以上を使用するのが好ましい。
【0054】
また、本発明の口腔内速崩壊性錠には、必要に応じて、圧縮成型製剤の製造方法に使用される滑沢剤、崩壊剤、甘味料、香料、着色剤、嬌味剤、溶解補助剤等を添加してもよい。
【0055】
アルコール系溶媒に溶解性の水溶性結合剤及び水溶性糖類を含む混合物は、これら成分等を単に混合したものであっても、これら成分等を造粒したものであってもよく、アルコール系溶媒に溶解性の水溶性結合剤を用いて造粒された水溶性糖類を含む造粒物は、薬物含有微粒子製造工程における造粒物の製造と同様の方法で製造することができ、水溶性糖類にアルコール系溶媒に溶解性の水溶性結合剤の水溶液又は水懸濁液を添加して混合、造粒、乾燥することによって製造することができる。
【0056】
本発明の口腔内速崩壊性錠における各成分の配合率は、錠剤全量当たりの各成分の含有率[成分重量(g)÷錠剤重量(g)×100]で示せば、薬物が0.1〜70w/w%、アルコール系溶媒に可溶性かつ水不溶性のコーティング剤が0.02〜10w/w%、水溶性糖類が1〜98w/w%、アルコール系溶媒に溶解性の水溶性結合剤が0.1〜30w/w%とするのが好ましく、滑沢剤を含有させる場合には、0.01〜10w/w%とするのが好ましい。
【0057】
また、薬物が0.5〜20w/w%、アルコール系溶媒に可溶性かつ水不溶性のコーティング剤が0.5〜5w/w%、水溶性糖類が10〜95w/w%、アルコール系溶媒に溶解性の水溶性結合剤が0.5〜5w/w%とするのがより好ましく、滑沢剤を含有させる場合には、0.03〜3w/w%とするのがより好ましい。
【0058】
本発明の口腔内速崩壊性錠としては、タブレット型、楕円形、球形、角型等のものがあげられ、また、その口腔内速崩壊性錠の体積は0.02〜1ml/錠、好ましくは0.05〜0.5ml/錠の範囲であるのが好ましい。
【0059】
本発明の口腔内速崩壊性錠は、硬度が20N以上、好ましくは30N以上であり、前述の空隙率が20〜50%、好ましくは25〜40%である。また、口腔内速崩壊性錠の崩壊時間は、口腔内において60秒以内、好ましくは45秒以内、より好ましくは30秒以内であり、日本薬局方(第14改正)に規定された崩壊試験法(上下運動:29〜32往復/分;37℃;水)において200秒以内であり、好ましくは150秒以内であり、より好ましくは100秒以内である。
【0060】
本発明の口腔内速崩壊性錠においては、アルコール系溶媒に可溶性かつ水不溶性のコーティング剤による被覆によって、薬物の溶出が十分に制御されるため、日本薬局方(第14改正)に規定された溶出試験第2法(パドル回転数:50rpm;37℃;水)による薬物溶出率(水に溶解した薬物量÷口腔内速崩壊性錠中全薬物量×100)が溶出開始後1分で20%以下とすることができ、薬物が口腔内で不快な味覚を生じる薬物であっても、薬物の味を十分に遮蔽することができる。加えて、同溶出試験法で溶出開始後30分で75%以上とすれば、薬物の味は遮蔽しながら、速やかな薬効発現を得ることもできる。
【0061】
また、アルコール系溶媒に可溶性かつ水不溶性のコーティング剤による被覆として、より溶出制御機能の高いものを薬物含有微粒子に適用すれば、崩壊時間を長くすることなく、前記溶出試験方法での薬物溶出率を溶出開始後60分で60%以下とすることもでき、徐放性の口腔内速崩壊性錠とすることもできる。
【0062】
本発明の口腔内速崩壊性錠は、本件特許出願の圧縮成型製剤の製造方法に従って製造することができ、アルコール系溶媒に可溶性かつ水不溶性のコーティング剤で被覆された薬物含有微粒子並びにアルコール系溶媒に溶解性の水溶性結合剤及び水溶性糖類を含む混合物を混合し、圧縮成型した後、アルコール系溶媒で処理することにより製造することができる。
【0063】
薬物含有微粒子と造粒物との混合は、薬物含有微粒子及びアルコール系溶媒に不溶性の賦形剤を含有する混合物の場合と同様に行うことができる。
【0064】
圧縮成型は、本発明の圧縮成型製剤の製造方法における成型方法をそのまま適用することができるが、後のアルコール系溶媒での処理によって、硬度を向上させることができるため、圧縮成型の段階での硬度は5〜10N程度となっていればよく、5〜30MPaの成型圧で圧縮成型を行えばよい。
【0065】
アルコール系溶媒による処理も、本発明の圧縮成型製剤の製造方法における処理方法をそのまま適用することができ、圧縮成型の段階で薬物含有微粒子の被覆が破損すること等によって溶出制御機能が失われても、アルコール系溶媒による処理によって、溶出制御機能を再生することができる。
【実施例】
【0066】
実施例1
(1)芯粒子の調製
ベシル酸ベポタスチン83重量部、結晶セルロース(旭化成株式会社製アビセルPH−301)15重量部及びヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製HPC−SL)2重量部を高速転動造粒装置(セイシン企業株式会社製ニュ−グラマシンNC−200)に仕込み、1分間予混合した。これを、25℃、600回転/分で攪拌を続けながら、精製水を9g/分の速度で添加し、約30分間造粒した。造粒後、箱型乾燥機で45℃、3時間乾燥し、平均粒子径117μmのベシル酸ベポタスチン含有芯粒子を得た。
(2)コーティング
エチルセルロース水分散液(FMC社製アクアコート;固形分30w/w%含有)164.0g、アクリル酸エチル・メタアクリル酸メチル共重合体の水性乳濁液(レ−ム社製オイドラギットNE30D;固形分30%w/w%含有)16.4g、クエン酸トリエチル9.8g及びステアリン酸カルシウム54.1gを精製水1255.7gに溶解又は分散させ、コーティング液を調製した。ワースター式流動層コーティング装置(パウレック社製SPC0.5/1)を用いて、流動状態のベシル酸ベポタスチン含有芯粒子120gに対して、上記コーティング液を被覆率(被覆層の芯粒子に対する割合)が60w/w%となるまで噴霧して、平均粒子径130μmの被覆粒子約180gを得た。
(3)外添部顆粒の調製
転動流動層造粒機(パウレック社製MP−01/03)を用いて、流動状態のD−マンニトール(日研化成製)98重量部に対して、5w/w%ポリビニルピロリドン(BASF社製コリドンK30)水溶液40重量部を噴霧して造粒後、乾燥することにより、外添部顆粒を調製した。
(4)口腔内速崩壊性錠の調製
上記(2)の被覆粒子7.7重量部及び上記(3)の外添部顆粒92.3重量部を混合して薬物処方成分とした。また、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム1重量部、流動化剤として結晶セルロース(旭化成株式会社製アビセルPH−102)19重量部を混合し、滑沢剤と流動化剤の混合物とした。
三層打錠機(菊水製作所製、杵サイズ:直径10mm)の第1の予備圧縮部位に滑沢剤と流動化剤の混合物を供給し、同打錠機の第2の予備圧縮部位には何も供給せず、主圧縮部位に薬物処方成分を供給し、滑沢剤と流動化剤の混合物を打錠し、打錠機より排出した後、同じ杵で薬物処方成分を打錠した。
薬物処方成分は1錠当たり300mgとなるようにし、生成する錠剤の硬度は約6Nになるように打錠圧を調整した。打錠で得られた薬物処方成分の錠剤を、25℃において、エタノ−ル蒸気で満たしたデシケ−タ中に16時間放置後、箱型乾燥機中に3時間放置してエタノ−ルを留去し、口腔内速崩壊性錠を製した。Schleuniger錠剤硬度計で直径方向での硬度を測定したところ、この口腔内速崩壊性錠の硬度は45Nであった。また、錠剤1錠を口に含み、自然に(噛む、舌を激しく動かすなどしない)溶解するまでの時間(崩壊時間)は、13秒であった。
(5)溶出試験
打錠前の薬物処方成分、打錠で得られた薬物処方成分の錠剤及びエタノ−ル処理を行った口腔内速崩壊性錠の3種類の製剤につき、第14改正日本薬局方溶出試験法第2法(パドル回転数:50rpm;37℃)に従い、精製水900mLで溶出試験を行い、溶出液中のベシル酸ベポタスチンの濃度を 260nmにおける吸光度を測定することにより算出し、この濃度及び溶出液の量から溶出率を算出した。結果を図1に示す。
打錠で得られた薬物処方成分の錠剤では打錠の影響により、ベシル酸ベポタスチンの溶出率が溶出試験開始直後から高かったが、エタノ−ル処理を行った口腔内速崩壊性錠では、打錠前の薬物処方成分と同様、遅い溶出を示した。
これらのことから、打錠前の薬物処方成分に含まれる被覆粒子の皮膜は打錠により破損されるが、エタノ−ル処理により修復されたと考えられる。
【0067】
実施例2
(1)芯粒子の調製
ベシル酸ベポタスチン83重量部及び結晶セルロース(旭化成株式会社製アビセルPH−301)15重量部を転動流動層造粒機(パウレック社製MP−01/03)に仕込み、45℃、300回転/分で製品温度が31℃まで予熱した。同回転速度で攪拌を続けながら、混合物に7%ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製HPC−SL)水溶液28.6重量部を約26分間噴霧し、造粒した。造粒後、流動層造粒機内の給気温度を70℃にし、排気温度が45℃となるまで乾燥し、平均粒子径126μmのベシル酸ベポタスチン含有芯粒子を得た。
(2)コーティング
エチルセルロース水分散液(FMC社製アクアコート;固形分30w/w%含有)181.0g、クエン酸トリエチル11.5g及びステアリン酸カルシウム54.3gを精製水1253.2gに溶解又は分散させ、コーティング液を調製した。ワースター式流動層コーティング装置(パウレック社製SPC0.5/1)を用いて、流動状態のベシル酸ベポタスチン含有芯粒子120gに対して、上記コーティング液を被覆率(被覆層の芯粒子に対する割合)が60w/w%となるまで噴霧して、平均粒子径134μmの被覆粒子177gを得た。
(3)口腔内速崩壊性錠の調製
上記(2)の被覆粒子7.7重量部及び実施例1−(3)の外添部顆粒92.3重量部を混合して薬物処方成分とした。
上記薬物処方成分及び実施例1−(4)の滑沢剤と流動化剤の混合物を実施例1−(4)と同様に処理することにより、口腔内速崩壊性錠を製した。
実施例1−(4)と同様に測定したところ、この口腔内速崩壊性錠の硬度及び崩壊時間は、50N及び15秒であった。また、日本薬局方(第14改正)に規定された崩壊試験法(上下運動:29〜32往復/分;37℃;水)による崩壊時間は12秒であった。
(4)溶出試験
打錠前の薬物処方成分、打錠で得られた薬物処方成分の錠剤及びエタノ−ル処理を行った口腔内速崩壊性錠の3種類の製剤につき、実施例1−(5)と同様にして、溶出試験を行った。結果を図2に示す。
打錠で得られた薬物処方成分の錠剤では打錠の影響により、ベシル酸ベポタスチンの溶出率が溶出試験開始直後から高かったが、エタノ−ル処理を行った口腔内速崩壊性錠では、溶出試験開始直後は、打錠前の薬物処方成分よりも更に低い溶出率を示した。
これらのことから、打錠前の薬物処方成分に含まれる被覆粒子の皮膜は打錠により破損されるが、エタノ−ル処理により修復され、打錠前よりも更に口腔内での苦味抑制に優れた皮膜となったと考えられる。
【0068】
実施例3
(1)芯粒子の調製
塩酸ジルチアゼム68重量部、結晶セルロース(旭化成株式会社製アビセルPH−301)30重量部及びヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製HPC−SL)2重量部を高速転動造粒装置(セイシン企業株式会社製ニュ−グラマシンNC−200)に仕込み、25℃、600回転/分で、1分間予混合した。同回転速度で攪拌を続けながら、精製水を9g/分の速度で添加し、約30分間造粒した。造粒後、乾燥棚で45℃、3時間乾燥し、平均粒子径176μmの塩酸ジルチアゼム含有芯粒子を得た。
(2)コーティング
エチルセルロース(ダウケミカル社製EC#10)60g及びタルク(日本タルク社製P3)60gを70%エタノ−ル−30%水の混液1380gに溶解又は分散させ、コーティング液を調製した。ワースター式流動層コーティング装置(パウレック社製SPC0.5/1)を用いて、流動状態の塩酸ジルチアゼム含有芯粒子150gに対して、上記コーティング液を被覆率(被覆層の芯粒子に対する割合)が60w/w%となるまで噴霧して、平均粒子径200μmの被覆粒子223gを得た。
(3)口腔内速崩壊性錠の調製
上記(2)の被覆粒子10.6重量部及び実施例1−(3)の外添部顆粒89.4重量部を混合して薬物処方成分とした。
上記薬物処方成分及び実施例1−(4)の滑沢剤と流動化剤の混合物を実施例1−(4)と同様に処理することにより、口腔内速崩壊性錠を製した。
実施例1−(4)と同様に測定したところ、この口腔内速崩壊性錠の硬度及び崩壊時間は、54N及び15秒であった。
(4)溶出試験
打錠前の薬物処方成分、打錠で得られた薬物処方成分の錠剤及びエタノ−ル処理を行った口腔内速崩壊性錠の3種類の製剤につき、第14改正日本薬局方溶出試験法第2法(パドル回転数:50rpm;37℃)に従い、精製水900mLで溶出試験を行い、溶出液中の塩酸ジルチアゼムの濃度を260nmにおける吸光度を測定することにより算出し、この濃度及び溶出液の量から溶出率を算出した。結果を図3に示す。
打錠で得られた薬物処方成分の錠剤では打錠の影響によって溶出制御能が弱まり、溶出開始から60分後の塩酸ジルチアゼムの溶出率は、打錠前の薬物処方成分の160%程度まで高くなったが、エタノ−ル処理を行った口腔内速崩壊性錠では、打錠前の薬物処方成分の70%以下まで塩酸ジルチアゼムの溶出率が低くなっている。
これらのことから、打錠前の薬物処方成分に含まれる被覆粒子の皮膜は打錠により破損されるが、エタノ−ル処理により修復され、打錠前よりも更に徐放能に優れた皮膜となったと考えられる。
【0069】
実施例4
(1)コーティング
アクリル酸エチル・メタアクリル酸メチル・(β−メタアクリロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムクロリド共重合体(レーム社製オイドラギットRLPO)90重量部及びカルボキシメチルセルロースナトリウム10重量部からなる粉末混合物(レーム社製オイドラギットRD100)75g、非イオン性界面活性剤(日光ケミカルズ製ポリソルベート80)15g及びステアリン酸カルシウム15gを水895gに溶解又は分散させ、コーティング液を調製した。ワースター式流動層コーティング装置(パウレック社製SPC0.5/l)を用いて流動化した、実施例3−(1)の塩酸ジルチアゼム含有芯粒子150gに対して、上記コーティング液を被覆率(被覆層の芯粒子に対する割合)が40%となるまで噴霧して、平均粒子径150μmの被覆粒子190gを得た。
(2)口腔内速崩壊性錠の調製
上記(1)の被覆粒子9.3重量部及び実施例1−(3)の外添部顆粒90.7重量部を混合して薬物処方成分とした。
上記薬物処方成分及び実施例1−(4)の滑沢剤と流動化剤の混合物を実施例1−(4)と同様に処理することにより、口腔内速崩壊性錠を製した。
実施例1−(4)と同様に測定したところ、この口腔内速崩壊性錠の硬度及び崩壊時間は、44N及び12秒であった。
(3)溶出試験
上記(2)の口腔内速崩壊性錠につき、実施例3−(4)と同様にして、溶出試験を行った。結果を図4に示す。
【0070】
実施例5
(1)芯粒子の調製
ベシル酸ベポタスチン82重量部及び結晶セルロース(旭化成株式会社製アビセルPH−301)14重量部を転動流動層造粒機(パウレック社製MP−01/03)に仕込み、45℃、300回転/分で製品温度が31℃となるまで予熱した。同回転速度で攪拌を続けながら、混合物に7%ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製HPC−SL)水溶液57.1重量部を約26分間噴霧し、造粒した。造粒後、流動層造粒機内の給気温度を70℃にし、排気温度が45℃となるまで乾燥し、ベシル酸ベポタスチン含有芯粒子を得た。
(2)コーティング
ワースター式流動層コーティング装置(パウレック社製SPC0.5/1)を用いて流動化した、上記(1)のベシル酸ベポタスチン含有芯粒子150gに対して、実施例2−(2)のコーティング液を被覆率(被覆層の芯粒子に対する割合)が70w/w%となるまで噴霧して、平均粒子径204μmの被覆粒子220gを得た。
(3)口腔内速崩壊性錠の調製
l−メントール20重量部を加熱融解した後、結晶セルロース(旭化成株式会社製アビセルPH−301)80重量部に吸着させて、メントール/アビセル倍散を調製した。
このメントール/アビセル倍散1.3重量部、上記(2)の被覆粒子6.9重量部、実施例1−(3)の外添部顆粒91.3重量部及び味の素株式会社製アスパルテーム0.5重量部を混合して薬物処方成分とした。
上記薬物処方成分及び実施例1−(4)の滑沢剤と流動化剤の混合物を実施例1−(4)と同様に処理することにより、口腔内速崩壊性錠を製した。
実施例1−(4)と同様に測定したところ、この口腔内速崩壊性錠の硬度及び崩壊時間は79N及び15秒であった。また、日本薬局方(第14改正)に規定された崩壊試験法(上下運動:29〜32往復/分;37℃;水)による崩壊時間は30秒であった。
(4)溶出試験
上記(3)の口腔内速崩壊性錠につき、実施例1−(5)と同様にして、溶出試験を行った。結果を図5に示す。
【0071】
実施例6
(1)外添部顆粒の調製
転動流動層造粒機(パウレック社製MP−01/03)を用いて、D−マンニトール98重量部を流動化し、5w/w%ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製HPC−SL)水溶液40重量部を噴霧して造粒後、乾燥することにより、外添部顆粒を調製した。
(2)口腔内速崩壊性錠の調製
実施例5−(2)の被覆粒子6.9重量部、実施例5−(3)のメントール/アビセル倍散1.3重量部、上記(1)の外添部顆粒91.3重量部及び味の素株式会社製アスパルテーム0.5重量部を混合して薬物処方成分とした。
【0072】
上記薬物処方成分及び実施例1−(4)の滑沢剤と流動化剤の混合物を実施例1−(4)と同様に処理することにより、口腔内速崩壊性錠を製した。
実施例1−(4)と同様に測定したところ、この口腔内速崩壊性錠の硬度及び崩壊時間は、58N及び23秒であった。また、日本薬局方(第14改正)に規定された崩壊試験法(上下運動:29〜32往復/分;37℃;水)による崩壊時間は48秒であった。
(3)溶出試験
上記(2)の口腔内速崩壊性錠につき、実施例1−(5)と同様にして、溶出試験を行った。結果を図6に示す。
【0073】
実施例7
(1)外添部顆粒の調製
転動流動層造粒機(パウレック社製MP−01/03)を用いて、α−ラクトース・1水和物(DMV社製ラクトース200M)98重量部を流動化し、5w/w%ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製HPC−SL)水溶液40重量部を噴霧して造粒後、乾燥することにより、外添部顆粒を調製した。
(2)口腔内速崩壊性錠の調製
実施例5−(2)の被覆粒子6.9重量部、実施例5−(3)のメントール/アビセル倍散1.3重量部、上記(1)の外添部顆粒91.3重量部及び味の素株式会社製アスパルテーム0.5重量部を混合して薬物処方成分とした。
【0074】
上記薬物処方成分及び実施例1−(4)の滑沢剤と流動化剤の混合物を実施例1−(4)と同様に処理することにより、口腔内速崩壊性錠を製した。
実施例1−(4)と同様に測定したところ、この口腔内速崩壊性錠の硬度及び崩壊時間は、36N及び35秒であった。また、日本薬局方(第14改正)に規定された崩壊試験法(上下運動:29〜32往復/分;37℃;水)による崩壊時間は54秒であった。
(3)溶出試験
上記(2)の口腔内速崩壊性錠につき、実施例1−(5)と同様にして、溶出試験を行った。結果を図7に示す。
【0075】
実施例8
(1)外添部顆粒の調製
転動流動層造粒機(パウレック社製MP−01/03)を用いて、α−ラクトース・1水和物(DMV社製ラクトース200M)98重量部を流動化し、5w/w%ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製HPC−SL)水溶液40重量部を噴霧して造粒後、乾燥することにより、外添部顆粒を調製した。
(2)口腔内速崩壊性錠の調製
実施例5−(2)の被覆粒子6.9重量部、実施例5−(3)のメントール/アビセル倍散1.3重量部、上記(1)の外添部顆粒91.3重量部及び味の素株式会社製アスパルテーム0.5重量部を混合して薬物処方成分とした。
上記薬物処方成分及び実施例1−(4)の滑沢剤と流動化剤の混合物を実施例1−(4)と同様に処理することにより、口腔内速崩壊性錠を製した。
実施例1−(4)と同様に測定したところ、この口腔内速崩壊性錠の硬度及び崩壊時間は、45N及び12秒であった。また、日本薬局方(第14改正)に規定された崩壊試験法(上下運動:29〜32往復/分;37℃;水)による崩壊時間は54秒であった。
(3)溶出試験
上記(2)の口腔内速崩壊性錠につき、実施例1−(5)と同様にして、溶出試験を行った。結果を図8に示す。
【0076】
実施例9
(1)口腔内速崩壊性錠の調製
実施例5−(2)の被覆粒子7.2重量部、実施例5−(3)のメントール/アビセル倍散1.3重量部、味の素株式会社製アスパルテーム0.5重量部、直打用ラクトース(DMV社製ファーマトース(Pharmatose)DCL14)89.1重量部及びポリビニルピロリドン(BASF社製コリドンK30)1.9重量部を混合して薬物処方成分とした。
上記薬物処方成分及び実施例1−(4)の滑沢剤と流動化剤の混合物を実施例1−(4)と同様に処理することにより、口腔内速崩壊性錠を製した。
実施例1−(4)と同様に測定したところ、この口腔内速崩壊性錠の硬度及び崩壊時間は、57N及び27秒であった。
(2)溶出試験
上記(1)の口腔内速崩壊性錠につき、実施例1−(5)と同様にして、溶出試験を行った。結果を図9に示す。
【0077】
実施例10
(1)芯粒子の調製
ベシル酸ベポタスチン82重量部及び結晶セルロース(旭化成株式会社製アビセルPH−301)14重量部を転動流動層造粒機(パウレック社製MP−01/03)に仕込み、45℃、300回転/分で製品温度が31℃となるまで予熱した。同回転速度で攪拌を続けながら、混合物に7%ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製HPC−SL)水溶液57.1重量部を約26分間噴霧し、造粒した。造粒後、流動層造粒機内の給気温度を70℃にし、排気温度が45℃となるまで乾燥し、ベシル酸ベポタスチン含有芯粒子を得た。
(2)コーティング
ワースター式流動層コーティング装置(パウレック社製SPC0.5/1)を用いて流動化した、上記(1)のベシル酸ベポタスチン含有芯粒子120gに対して、実施例2−(2)のコーティング液を被覆率(被覆層の芯粒子に対する割合)が70w/w%となるまで噴霧して、平均粒子径163μmの被覆粒子184gを得た。
(3)口腔内速崩壊性錠の調製
上記(2)の被覆粒子7.2重量部、実施例5−(3)のメントール/アビセル倍散1.3重量部、味の素株式会社製アスパルテーム0.5重量部、直打用ラクトース(ロケット社製パーリトール(Pearlitol)100SD)89.1重量部及びポリビニルピロリドン(BASF社製コリドンK30)1.9重量部を混合して薬物処方成分とした。
上記薬物処方成分及び実施例1−(4)の滑沢剤と流動化剤の混合物を実施例1−(4)と同様に処理することにより、口腔内速崩壊性錠を製した。
実施例1−(4)と同様に測定したところ、この口腔内速崩壊性錠の硬度及び崩壊時間は、58N及び28秒であった。
(4)溶出試験
上記(3)の口腔内速崩壊性錠につき、実施例1−(5)と同様にして、溶出試験を行った。結果を図10に示す。
【0078】
実施例11
(1)口腔内速崩壊性錠の調製
実施例10−(2)の被覆粒子7.2重量部、実施例5−(3)のメントール/アビセル倍散1.3重量部、味の素株式会社製アスパルテーム0.5重量部、直打用ラクトース(DMV社製ファーマトースDCL14)89.1重量部及びポリビニルピロリドン(BASF社製コリドンK30)1.9重量部を混合して薬物処方成分とした。
上記薬物処方成分及び実施例1−(4)の滑沢剤と流動化剤の混合物を実施例1−(4)と同様に処理することにより、口腔内速崩壊性錠を製した。
実施例1−(4)と同様に測定したところ、この口腔内速崩壊性錠の硬度及び崩壊時間は、57N及び20秒であった。
(2)溶出試験
上記(1)の口腔内速崩壊性錠につき、実施例1−(5)と同様にして、溶出試験を行った。結果を図11に示す。
【0079】
実施例12
(1)芯粒子の調製
ベシル酸ベポタスチン85重量部、結晶セルロース(旭化成株式会社製、アビセルPH−102)15重量部を高速攪拌造粒機(深江パウテック社製超小型ハイスピードミキサー)に仕込み、1分間予混合した。これを、50℃、850回転/分で攪拌を続けながら、精製水30gを添加し、約10分間造粒した。造粒後、箱型乾燥機で45℃、3時間乾燥し、平均粒子径237μmのベシル酸ベポタスチン含有芯粒子を得た。
(2)コーティング
ワースター式流動層コーティング装置(パウレック社製SPC0.5/1)を用いて流動化した、上記(1)のベシル酸ベポタスチン含有芯粒子150gに対して、実施例2−(2)のコーティング液を被覆率(被覆層の芯粒子に対する割合)が40w/w%となるまで噴霧して、平均粒子径275μmの被覆粒子185gを得た。
(3)外添部顆粒の調製
流動層造粒機(パウレック社製MP−10)を用いて、流動状態のD−マンニトール(日研化成社製)98.5重量部に対して、3.3w/w%ポリビニルピロリドン(BASF社製コリドンK30)及び1.7w/w%ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製HPC−SL)混合水溶液30重量部を噴霧して造粒後、乾燥することにより、外添部顆粒を調製した。
(4)口腔内速崩壊性錠の調製
上記(2)の被覆粒子5.5重量部、実施例5−(3)のメントールアビセル倍散1.3重量部、上記(3)の外添部顆粒92.2重量部、味の素株式会社製アスパルテーム0.5重量部、ステアリン酸マグネシウム(タイコヘルスケア社製)0.5重量部を混合して薬物処方成分とした。
上記薬物処方成分をロータリー式打錠機にて、1錠300mg、直径10mm、13mmRの杵にて打錠圧100kg/杵で打錠し、実施例1−(4)と同様にエタノール処理することにより、口腔内速崩壊性錠を製した。
実施例1−(4)と同様に測定したところ、この口腔内速崩壊性錠の硬度及び崩壊時間は、50N及び15秒であった。また、日本薬局方(第14改正)に規定された崩壊試験法(上下運動:29〜32往復/分;37℃;水)による崩壊時間は78秒であった。
(5)溶出試験
上記(4)の口腔内速崩壊性錠につき、実施例1−(5)と同様にして、溶出試験を行った。結果を図12に示す。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、医薬品として有用な口腔内速崩壊性錠、更に詳しくは次の成分を含有し、硬度(錠剤の直径方向で測定、以下同様)が20N以上、空隙率が20〜50%である口腔内速崩壊性錠に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分を含有し、硬度が20N以上、空隙率が20〜50%である口腔内速崩壊性錠。
(1)アルコール系溶媒に可溶性かつ水不溶性のコーティング剤で被覆された薬物含有微粒子
(2)アルコール系溶媒に溶解性の水溶性結合剤及び水溶性糖類を含む混合物
【請求項2】
アルコール系溶媒に溶解性の水溶性結合剤及び水溶性糖類を含む混合物が、アルコール系溶媒に溶解性の水溶性結合剤を用いて造粒された水溶性糖類を含む造粒物である請求項1記載の口腔内速崩壊性錠。
【請求項3】
口腔内速崩壊性錠中の薬物含有量が0.1〜70w/w%、アルコール系溶媒に可溶性かつ水不溶性のコーティング剤の含有量が0.02〜10w/w%、水溶性糖類の含有量が1〜98w/w%、アルコール系溶媒に溶解性の水溶性結合剤の含有量が0.1〜30w/w%である請求項1又は2記載の口腔内速崩壊性錠。
【請求項4】
アルコール系溶媒に可溶性かつ水不溶性のコーティング剤がアルコール系溶媒(25℃)1mlに対して20mg以上溶解し、かつ、水(25℃)1mlに対して1mg以下しか溶解しないものであり、水溶性糖類がアルコール系溶媒(25℃)1mlに対して1mg以下しか溶解せず、かつ、水(25℃)1mlに対して20mg以上溶解するものであり、アルコール系溶媒に溶解性の水溶性結合剤がアルコール系溶媒(25℃)1ml及び水(25℃)1mlのいずれにも20mg以上溶解するものである請求項3記載の口腔内速崩壊性錠。
【請求項5】
アルコール系溶媒に可溶性かつ水不溶性のコーティング剤がセルロース系コーティング剤及びアクリル酸系コーティング剤からなる群より選ばれる1又は2以上であり、アルコール系溶媒に溶解性の水溶性結合剤がセルロース系及びポリビニル系結合剤からなる群より選ばれる1又は2以上である請求項4記載の口腔内速崩壊性錠。
【請求項6】
アルコール系溶媒に可溶性かつ水不溶性のコーティング剤がエチルセルロース、メタアクリル酸・メタアクリル酸メチル共重合体、メタアクリル酸・アクリル酸エチル共重合体、メタアクリ酸メチル・アクリル酸エチル共重合体、メタアクリル酸メチル・アクリル酸エチル・(β−メタアクリロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムクロリド共重合体及びメタアクリル酸メチル・メタアクリル酸ブチル・メタアクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体からなる群より選ばれる1又は2以上であり、水溶性糖類がマンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、ソルビトール、ラクトース、シュクロース、マルトース及びトレハロースからなる群より選ばれる1又は2以上であり、アルコール系溶媒に溶解性の水溶性結合剤がポリビニルピロリドン及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選ばれる1又は2以上である請求項5記載の口腔内速崩壊性錠。
【請求項7】
薬物含有微粒子の平均粒子径が350μm以下である請求項1又は2記載の口腔内速崩壊性錠。
【請求項8】
薬物が不快な味覚を生じるものであり、日本薬局方(第14改正)に規定された溶出試験法第2法(パドル回転数:50rpm;37℃;水)による口腔内速崩壊性錠からの薬物溶出率が溶出開始後1分で30%以下であり、口腔内での崩壊時間が60秒以内である請求項7記載の口腔内速崩壊性錠。
【請求項9】
薬物が抗アレルギー剤である請求項8記載の口腔内速崩壊性錠。
【請求項10】
薬物がベシル酸ベポタスチンである請求項9記載の口腔内速崩壊性錠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−46750(P2011−46750A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275056(P2010−275056)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【分割の表示】特願2004−229570(P2004−229570)の分割
【原出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(000002956)田辺三菱製薬株式会社 (225)
【Fターム(参考)】