説明

可圧縮性印刷スリーブ担体及びその製造方法

【解決手段】 本発明は、複合ファイバー補強可圧縮性重合体で形成されたオフセットリソグラフィに使用される可圧縮性印刷スリーブ担体を提供する。印刷スリーブ担体は、補強フィラメント(22)を可圧縮性重合体(28)で被膜し、そのフィラメントを、心棒(26)の周りに巻き付けて、中空円筒形ベースを形成する。そのとき、ベースの内側面に近い第一部分は、可圧縮性重合体で覆われた巻回補強フィラメントを含んでおり、ベースの外側面に近い第二部分は、可圧縮性重合体を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可圧縮性印刷スリーブ担体に関するものであり、特に、可圧縮性重合体で被膜された巻回フィラメントを利用して、担体の構造的特性の実質的すべてと、印刷スリーブの可圧縮特性の実質的すべてを提供するような可圧縮性印刷スリーブ担体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最も一般的な商業的印刷処理の1つとしてオフセットリソグラフィがある。この印刷処理においては、インクが、印刷プレートから、紙のような支持体に転写される前に、表面がゴム処理された印刷ブランケット又はスリーブにオフセットされる。典型的には、スリーブが使用される場合には、その印刷スリーブは、薄い金属円筒形ベース又は担体を使用して別に構成され、その後、スリーブを構成する層、すなわち、一重以上の可圧縮性層、一重以上の補強層、及び外側印刷表面層が、担体に取り付けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、印刷スリーブのための担体として金属を使用することは、高価であり、また、金属担体は、その薄い構造から、製造時と使用時の双方において、損傷を受けやすい。近年、補強された重合体担体を印刷スリーブのベースとして使用することが、提案されてきている。重合体担体は、金属担体よりも高価ではなく、如何なる所望のサイズにも容器に加工でき、製造時や使用時に損傷をそれほど受けない。しかしながら、重合体担体を製造する現在の方法は、印刷スリーブを構成することにおいて典型的に使用されるその次の層を付加する前に、担体は別に構成されて、完全に硬化される必要があった。
【0004】
しかして、当該技術分野においては、高価ではなく、製造が簡単で、また、所望の構造的及び可圧縮的な特性を呈する印刷スリーブ担体の要望が未だある。
【0005】
本発明の実施形態は、複合的ファイバー補強可圧縮性重合体で形成せれた、オフセットリソグラフィに使用される可圧縮性印刷スリーブ担体を提供することにより、その要望を満たしている。印刷スリーブ担体は、従来の印刷スリーブ担体により提供される必要な構造的特性の全てを提供し、また、従来の印刷スリーブの要求される可圧縮性の全てを実質的に提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一様相によれば、複合ファイバー補強可圧縮性重合体から成る内側及び外側面を有する中空円筒形ベースを備える可圧縮性印刷スリーブ担体が提供される。ベースの内側面に近い第一部分は、可圧縮性重合体で覆われた巻回補強フィラメントを含んでおり、ベースの外側面に近い第二部分は、可圧縮性重合体を備えている。
【0007】
可圧縮性重合体は、好ましくは、ポリウレタン、ポリビニルエステル、ポリエステル、エポキシ、及びポリアミドの中から選択される。可圧縮性重合体は、好ましくは、微小球、発泡剤、又はそれらの混合から選択された空洞生成材料を含んでいる。
【0008】
巻回フィラメントは、好ましくは、ファイバーグラス、カーボンファイバー、金属ファイバー、及びアラミドファイバーの中から選択される。あるいは、巻回フィラメントは、コードである。
【0009】
本発明の一実施形態においては、巻回補強フィラメントは、実質的無空洞重合体で被膜されている。
【0010】
本発明の他の実施形態においては、ベースの第一部分は、実質的無空洞重合体で被膜された巻回補強フィラメントの第一層と、可圧縮性重合体で覆われた巻回補強フィラメントから成る第一層上の第二層と、を備える。
【0011】
本発明の更に他の実施形態においては、ベースの第一部分は、実質的無空洞重合体で被膜された巻回補強フィラメントと、可圧縮性重合体で覆われた巻回補強フィラメントの層との交互の層の繰返しから成る。
【0012】
可圧縮性印刷スリーブ担体は、好ましくは、約10乃至70lbs/inのコンプライアンスを有し、更に好ましくは、約35乃至51lbs/inのコンプライアンスを有する。
【0013】
本発明は、また、可圧縮性印刷スリーブ担体の製造方法を提供し、その方法においては、補強フィラメントの連続源が用意されて、可圧縮性重合体で被膜され、被膜補強フィラメントを、張力のもとで、心棒の周りに巻き付けて、内側及び外側面を有する中空円筒形ベースを備える担体を形成し、ベースの内側面に近い第一部分は、可圧縮性重合体で被膜された巻回補強フィラメントを含んでおり、ベースの外側面に近い第二部分は、可圧縮性重合体を含んでいる。
【0014】
その方法は、好適には、印刷スリーブ担体を硬化させることを含んでいる。硬化は、印刷スリーブ担体を、UV放射、化学薬品、又は熱のような硬化源に晒すことにより始まる。
【0015】
一実施形態においては、その方法は、補強フィラメントを可圧縮性重合体で覆う前に、補強フィラメントを実質的無空洞重合体で被膜して湿らせることを含んでいる。
【0016】
本発明の他の実施形態においては、その方法は、補強フィラメントを実質的無空洞重合体で被膜し、そのフィラメントを心棒に巻き付けて第一層を形成し、フィラメントを可圧縮性重合体で被膜し、そのフィラメントを心棒に巻き付けて第二層を形成することを含んでいる。この実施形態においては、その方法は、好ましくは、第二層を形成する前に、第一層を部分的に硬化させることを含んでいる。
【0017】
しかして、複合ファイバー補強可圧縮性重合体で形成された可圧縮性印刷スリーブ担体を提供することが、本発明の特徴である。本発明の他の特徴及び利点は、以下の説明、添付図面、付加された請求項により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】図1Aは、本発明の印刷スリーブ担体の一実施形態の斜視図である。
【図1B】図1Bは、図1Aの可圧縮性印刷スリーブ担体の断面図である。
【図1C】図1Cは、図1Bの可圧縮性印刷スリーブ担体の拡大断面図である。
【図2】図2は、図1に示す実施形態による可圧縮性印刷スリーブ担体を形成する方法を示す概略図である。
【図3A】図3Aは、本発明の印刷スリーブ担体の他の実施形態の斜視図である。
【図3B】図3Bは、図3Aの可圧縮性印刷スリーブ担体の断面図である。
【図3C】図3Cは、図3Bの可圧縮性印刷スリーブ担体の拡大断面図である。
【図4】図4は、図3に示す実施形態による可圧縮性印刷スリーブ担体を形成する方法を示す概略図である。
【図5A】図5Aは、本発明の印刷スリーブ担体の他の実施形態の斜視図である。
【図5B】図5Bは、図5Aの可圧縮性印刷スリーブ担体の断面図である。
【図5C】図5Cは、図5Bの可圧縮性印刷スリーブ担体の拡大断面図である。
【図6】図6は、図5に示す実施形態による可圧縮性印刷スリーブ担体を形成する方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の可圧縮性印刷スリーブ担体は、製造費用が高くなく、如何なる大きさにも形成でき、扱っている間に損傷をそれほど受けやすくないという、従来の金属スリーブに対する利点を有している。そのスリーブ担体は、また、スリーブを構成する層、例えば可圧縮性層を付加する前に、担体の別途の形成を必要とする現在の重合体印刷スリーブに対しても利点を有する。本発明の方法により、必要な構造的特性の全てと、スリーブに対する必要な可圧縮性を提供しつつ、担体を形成する別途のステップを必要とすることなく、スリーブ担体を形成することができる。担体は、そのまま一重以上(任意)の補強層及び一重の印刷面層を受け入れることができ、それにより最終的なブランケットスリーブ製品が提供される。
【0020】
印刷スリーブ担体に使用される重合体としては、巻回補強材料に対する結合剤として作用する重合体がある。適した重合体としては、限定されないのであるが、ポリウレタン、ポリビニルエステル、ポリエステル、エポキシ、及びポリアミドがある。
【0021】
微小球、発泡剤、又はそれらの混合物のような空洞形成材料を混入することにより、重合体に体積性可圧縮特性を与えることができる。適した微小球としては、当該技術分野で知られている低温又は高温微小球がある。また、適した微小球としては、スウェーデンのSundsvallにあるExpancel社製の商標EXPANCELである微小球として知られているものがある。かかる微小球は、ビニリジン塩化物とアクリロニトリルの共重合体から基本的に成る外殻を有し、ガス状イソブタンを含んでいる。所望の可圧縮特性を備える他の微小球も採用でき、それらは例えば米国特許第4,770,928号に開示されている。
【0022】
重合体は、好ましくは、室温で液体樹脂の形態をしており、微小球は、好ましくは攪拌されてその重合体液に混入される。フィラメントへの被膜のときには、その液は、好適に加熱され(例えば、約60℃)、液体樹脂の粘度を低くして被膜処理を簡略化する。
【0023】
スリーブの可圧縮性は、重合体材料内で使用される微小球又は他の空洞生成材料の種類、大きさ、量により、可変とすることができる。
【0024】
フィラメントが、実質的無空洞(非圧縮性)重合体で被膜されるような実施形態においては、適した重合体としては、ポロリウレタン、ポリビニルエステル、ポリエステル、エポキシ、及びポリアミドがある。
【0025】
本発明の使用に適した補強フィラメントとしては、ファイバーグラス、カーボンファイバー、金属ファイバー、及びアラミドファイバーがある。あるいは、フィラメントとしては、ファイバーグラスロービング(粗紡)などのコードがある。好適な実施形態においては、補強フィラメントは、ファイバーグラスロービングの形態で提供される。
【0026】
いくつかの実施形態においては、フィラメントは、スリーブに可圧縮性を与えることができるようなものが選択され、例えば、ある実施形態においては、スリーブ担体は、フィラメントの各層を付加している途中で部分的に硬化する可圧縮性重合体で被膜された多重層の巻回フィラメントで形成されている。かかる可圧縮フィラメントは、重合体又はアラミドの寄り線織維コードのような材料を含んでいる。かかるフィラメントの可圧縮特性は、上述のようにそれらが可圧縮性重合体層の層間に配設されるというような層構造とすることにより維持される。
【0027】
ここで図1A及び1Bを参照すると、可圧縮印刷スリーブ担体10の一実施形態が示されている。示されているように、その担体は、内側及び外側面14及び16を有する中空円筒形ベースを備えている。示されているように、ベースの内側面14に近い第一部分18は、可圧縮性重合体24が被膜された巻回補強フィラメント22を含んでおり、外側面16に近い第二部分20は、可圧縮性重合体24のみを含んでいる。
【0028】
図2は、可圧縮印刷スリーブ担体のこの実施形態を製作する方法を示している。ある源から巻回フィラメント22が供給され、可圧縮性重合体及び空洞生成材料を含んだ槽28を通過する。可圧縮性重合体被膜を含んだ被膜付きフィラメントは、そして心棒26に巻かれる。巻き付け工程の間、重合体被膜は、フィラメントを取り囲みつつ、フィラメントの上側を流れる傾向にあり、それにより、図1Aに示されているように、結果的な構造において、フィラメントはスリーブの底部にあり、一方、第二部分20は、可圧縮性重合体のみを含むようになる。フィラメントが心棒に巻かれた後、その心棒は、硬化源30に晒され、それにより硬化が始まる。好ましくは、硬化は、担体をUV放射、化学薬品、又は熱のような硬化源に晒すことにより、始まる。硬化層は、円筒方式研磨のような研磨により好ましい寸法に調整され、それによりスリーブ性能が発揮される。
【0029】
図3に示した他の実施形態においては、印刷スリーブ担体10は、可圧縮性重合体24で覆われる前に、実質的無空洞重合体32により被膜された巻回補強フィラメント22を備えている。図4に示すように、この実施形態は、フィラメントが槽28を通過するときに、可圧縮性重合体がそれらを十分に湿らせるよう、フィラメントを湿らせる機能を有する実質的無空洞重合体を含む漕34をフィラメント22が通過することにより達成される。
【0030】
図5に示した更に他の実施形態においては、印刷スリーブ担体10は、少なくとも2層の巻回補強フィラメントを含んでいる。第一層40は、実質的無空洞重合体32のみで被膜された巻回フィラメント22を備えている一方、第二層42は、実質的無空洞重合体32と可圧縮性重合体24の双方で覆われた巻回フィラメントを備えている。
【0031】
図6に示すように、実質的無空洞重合体を含む漕34を通過した補強フィラメント22は、心棒26の周りに巻かれ、第一層40が形成され、そのあと、フィラメントは、漕34と、可圧縮性重合体を含む漕28との双方を通過するように導かれ、第二層42が形成される。ここで、第一層は、第二層とは別の塗布ステーションでも形成できることに注意すべきである。例えば、第一層は、第一心棒上に形成され、少なくとも部分的に硬化し、その後、別の心棒(図示せず)に搭載され、そこでは、フィラメントは、漕34及び漕28の双方を通過して巻きとられ、その心棒上に巻かれ、第二層が形成される。各層は、その次の層が付加さえる前に、硬化源30により、少なくとも部分的に硬化されるのが望ましい。
【0032】
この方法は、非圧縮性巻回フィラメントと可圧縮性巻回フィラメントの交互の層の繰返しを提供するようにも使用できる。
【0033】
好適な実施形態を参照することにより詳細に本発明を記述してきたが、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変形や変更が可能であることは明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合ファイバー補強可圧縮性重合体から成る内側及び外側面を有する中空円筒形ベースを備える可圧縮性印刷スリーブ担体であって、
前記ベースの前記内側面に近い第一部分は、前記可圧縮性重合体で覆われた巻回補強フィラメントを含んでおり、前記ベースの前記外側面に近い第二部分は、前記可圧縮性重合体を備えていることを特徴とする可圧縮性印刷スリーブ担体。
【請求項2】
前記可圧縮性重合体は、微小球、発泡剤、又はそれらの混合から選択された空洞生成材料を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の可圧縮性印刷スリーブ担体。
【請求項3】
前記巻回フィラメントは、ファイバーグラス、カーボンファイバー、金属ファイバー、及びアラミドファイバーの中から選択されることを特徴とする請求項1に記載の可圧縮性印刷スリーブ担体。
【請求項4】
前記巻回フィラメントは、コードであることを特徴とする請求項1に記載の可圧縮性印刷スリーブ担体。
【請求項5】
前記可圧縮性重合体は、ウレタン、ビニルエステル、ポリエステル、エポキシ、及びナイロンの中から選択されることを特徴とする請求項1に記載の可圧縮性印刷スリーブ担体。
【請求項6】
前記巻回補強フィラメントは、実質的無空洞重合体で被膜されていることを特徴とする請求項1に記載の可圧縮性印刷スリーブ担体。
【請求項7】
前記ベースの前記第一部分は、実質的無空洞重合体で被膜された巻回補強フィラメントの第一層と、前記可圧縮性重合体で覆われた前記巻回補強フィラメントから成る前記第一層上の第二層と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の可圧縮性印刷スリーブ担体。
【請求項8】
前記ベースの前記第一部分は、実質的無空洞重合体で被膜された巻回補強フィラメントと、可圧縮性重合体で覆われた巻回補強フィラメントの層との交互の層の繰返しから成ることを特徴とする請求項1に記載の可圧縮性印刷スリーブ担体。
【請求項9】
約10乃至70lbs/inのコンプライアンスを有する請求項1に記載の可圧縮性印刷スリーブ担体。
【請求項10】
約35乃至51lbs/inのコンプライアンスを有する請求項1に記載の可圧縮性印刷スリーブ担体。
【請求項11】
心棒を用意し、
補強フィラメントの連続源を用意し、
前記フィラメントを可圧縮性重合体で被膜し、
前記被膜補強フィラメントを、張力のもとで、前記心棒の周りに巻き付けて、内側及び外側面を有する中空円筒形ベースを備える担体を形成するという可圧縮性印刷スリーブ担体の製造方法であって、
前記ベースの前記内側面に近い第一部分は、前記可圧縮性重合体で被膜された巻回補強フィラメントを含んでおり、前記ベースの前記外側面に近い第二部分は、可圧縮性重合体を含んでいることを特徴とする可圧縮性印刷スリーブ担体の製造方法。
【請求項12】
前記印刷スリーブ担体を硬化させることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
硬化は、前記印刷スリーブ担体を、UV放射、化学薬品、又は熱のような硬化源に晒すことにより始まることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記補強フィラメントを前記可圧縮性重合体で覆う前に、前記補強フィラメントを実質的無空洞重合体で被膜して湿らせることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記補強フィラメントを実質的無空洞重合体で被膜し、そのフィラメントを前記心棒に巻き付けて第一層を形成し、前記フィラメントを前記可圧縮性重合体で被膜し、そのフィラメントを前記心棒に巻き付けて第二層を形成することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記第二層を形成する前に、前記第一層を部分的に硬化させることを特徴とする請求項15に記載の方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2011−507735(P2011−507735A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539674(P2010−539674)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/086800
【国際公開番号】WO2009/085685
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(300078202)デイ インターナショナル インコーポレーテッド (21)
【Fターム(参考)】