説明

可変開口絞機構を備えたズームレンズ鏡筒

【課題】可変開口絞機構によりズーム撮影領域では開放径を大小に変化させるとともに、収納位置では大開口としてその開口内に可動レンズ群の一部を進入させるズームレンズ鏡筒において、絞開口を大開口にする絞開口動作が完了する前に、レンズ群が同開口内に進入して衝突するおそれをなくす。
【解決手段】可変開口絞機構は、開閉リングの正逆の回動動作によって開口径を大小に切り換えること;いずれかの可動レンズ群からなる開口制御レンズ群がズーム撮影位置から収納位置に移動するとき、該可変開口絞機構の開口を小開口から大開口にするように開閉リングを回転させること;収納位置では、開口制御レンズ群の一部が可変開口絞機構に接近してその大開口内に進入すること;及び開閉リングが小開口位置にある状態で、開口制御レンズ群が可変開口絞機構に接近するとき、両者の最大接近位置を規制する接近規制部材を有すること;を満足するズームレンズ鏡筒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点距離に応じて開放F値を変化させる可変開口絞機構を備えたズームレンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
コンパクトカメラ用のレンズシャッタ(ビトウイーンシャッタ)を搭載するズームレンズ鏡筒、特に高変倍ズームレンズ鏡筒では、ワイド端(側)における有害光線の入射を制限する一方、テレ端(側)における開放F値を小さくするため、焦点距離に応じて最大開口径を変更することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-66311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の開口径を可変にするための可変開口絞機構は、光軸方向の厚みが大きく、このため、収納長を短縮するのに障害となっていた。また、シャッタと可変開口絞を一体にした複合開口制御機構も知られているが、シャッタと可変開口絞の両方を精度良く駆動するために、機械的構成及び電気的制御系のいずれもが複雑化し、高価であった。
【0005】
また、本出願人は、焦点距離に応じて開放F値を変化させる可変開口絞機構を備えたズームレンズ鏡筒において、収納長の短縮を図るために、その収納位置においては、該可変開口絞機構の開口内に、可動レンズ群の一部を収納する鏡筒を開発中である。
【0006】
本発明は、ズーム撮影領域では可変開口絞機構により開放径を大小に変化させるとともに、収納位置では同可変開口絞機構を大開口としてその開口内に可動レンズ群の一部を進入させるという着眼のズームレンズ鏡筒において、収納位置において絞開口を大開口にする絞開口動作が完了する前に(つまり、小開口の状態のままで)、レンズ群が同開口内に進入して衝突するおそれをなくすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、変倍に寄与する複数の可動レンズ群を、光軸方向後方の収納位置と前方のズーム撮影位置との間で移動させるズームレンズ鏡筒において、いずれか一つの可動レンズ群を開口制御レンズ群として、該開口制御レンズ群の前後のいずれか一方に、光軸方向の相対移動を可能にして可変開口絞機構を位置させること;この可変開口絞機構は、ベース部材と、このベース部材に対して相対回動可能な開閉リングと、この開閉リングの正逆の回動動作によって開口径を大小に切り換える複数枚の絞羽根とを有すること;開口制御レンズ群がズーム撮影位置から収納位置に移動するとき、該可変開口絞機構の開口を小開口から大開口にするように上記開閉リングを回転させる回動手段を有すること;収納位置では、開口制御レンズ群の一部が可変開口絞機構に接近してその大開口内に進入すること;及び開閉リングが小開口位置にある状態で、開口制御レンズ群が可変開口絞機構に接近するとき、両者の最大接近位置を規制する接近規制部材を有すること;を特徴としている。
【0008】
接近規制部材は、具体的には例えば、開閉リングに形成した安全突起と、開口制御レンズ群を支持したレンズ移動枠に形成した安全突起とから構成し、この両安全突起を、開閉リングが小開口位置にあるときには位相が一致し、大開口位置にあるときには位相が一致しないように設けることができる。
【0009】
本発明のズームレンズ鏡筒は、正逆の回転運動により複数の可動レンズ群を光軸方向に移動させるカム環を備えるのが実際的である。このカム環の同一方向の回転動作により、複数の可動レンズ群は、収納位置、ズーム撮影領域内のワイド端位置及びテレ端位置の順又はその逆に移動し、可変開口絞機構は、収納位置及びテレ端位置では大開口に維持され、ワイド端では小開口に維持される。
【0010】
可変開口絞機構は、開口制御レンズ群を支持したレンズ移動枠に光軸方向に移動可能にかつ該開口制御レンズ群から離間する方向に付勢されて支持することが好ましい。
【0011】
本発明のズームレンズ鏡筒は、可動変倍レンズ群がズーム撮影位置と収納位置の間を移動するとき、該可変開口絞機構の開閉リングに対して相対的に接離移動して、可変開口絞機構を開口制御レンズ群に接離させ、さらに開閉リングを小開口位置と大開口位置との間で回動させる、レンズ移動枠に対して光軸方向に相対移動する直進移動部材を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ズーム撮影領域では可変開口絞機構により開放径を大小に変化させるとともに、収納位置では同可変開口絞機構を大開口としてその開口内に可動レンズ群の一部を進入させるという着眼のズームレンズ鏡筒において、可変開口絞機構の開閉リングが大開口位置に回転動作を終了する前に、開口制御レンズ群が可変開口絞機構に対して接近するときには、両者の最大接近位置を規制する接近規制部材を設けたので、誤作動が生じても、可変開口絞機構と開口制御レンズ群とが衝突する事故の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明によるズームレンズ鏡筒の一実施形態を示すズーム撮影領域(上半部がワイド端で下半部がテレ端)における断面図である。
【図2】同ズームレンズ鏡筒の収納状態における断面図である。
【図3】同ズームレンズ鏡筒の一部構成要素の分解斜視図である。
【図4】同ズームレンズ鏡筒の一部構成要素の分解斜視図である。
【図5】同ズームレンズ鏡筒の一部構成要素の分解斜視図である。
【図6】同ズームレンズ鏡筒の一部構成要素の分解斜視図である。
【図7】同ズームレンズ鏡筒の一部構成要素の分解斜視図である。
【図8】(A)、(B)、(C)、(D)は、同ズームレンズ鏡筒中の可変開口絞機構部分の異なる作動状態を示す斜視図である。
【図9】(A)、(B)は、同可変開口絞機構部分の異なる作動状態を示す正面図である。
【図10】同可変開口絞機構の絞羽根による開口変化を示す図である。
【図11】2群レンズ移動枠、可変開口絞機構(可変開口絞サブアッシ)、抜止リング及び群間付勢ばねの分解状態の斜視図である。
【図12】(A)、(B)、(C)はそれぞれ、同2群レンズ移動枠に、可変開口絞サブアッシを挿入し抜止リングを挿入する前、抜止リングを挿入した後、及び抜止リングを回転させて抜止状態としたときを示す図である。
【図13】(A)、(B)、(C)、(D)、(E)は、可変開口絞機構のズーム撮影領域と収納位置での動作を示す部分斜視図である。
【図14】同ズームレンズ鏡筒の第2繰出筒単体を後方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1から図5を参照して、本発明によるズームレンズ鏡筒ZLの一実施形態の全体の概略構造を説明する。このズームレンズ鏡筒ZLの撮像光学系は、物体(被写体)側から順に第1レンズ群LG1、第2レンズ群LG2、第3レンズ群LG3、ローパスフィルタ25及び撮像素子26を備えている。以下の説明中で光軸方向とは、この撮影光学系の光軸Oと平行な方向を意味する。
【0015】
ローパスフィルタ25と撮像素子26はユニット化されて撮像素子ホルダ23に固定され、撮像素子ホルダ23がハウジング22の後部に固定される。
【0016】
第3レンズ群LG3を保持する3群レンズ枠51は、ハウジング22に対して光軸方向に移動可能に支持されていて、AFモータ160(図3)によって駆動される。
【0017】
ハウジング22の内側には、図3に示すように、可動レンズ(カム環)ブロック110が移動可能に支持されており、この可動レンズ(カム環)ブロック110の先端に、バリヤブロック101が固定されている。108は、バリヤブロック101の前に固定される化粧リングである。
【0018】
可動レンズ(カム環)ブロック110は、図4に示すように、2群用直進案内環10、カム環11、カム環結合環14及び第1繰出筒(1群用直進案内環)13を含んでいる。カム環11は、ズームモータ150(図3)の駆動力によって回転され、鏡筒収納状態(図2)から撮影状態(図1)になるまでの間は、回転しながら光軸方向に移動し、撮影状態におけるズーム域では、光軸方向には定位置で回転される。図1には、その上半断面にワイド端の状態を示し、下半断面にテレ端の状態を示した。
【0019】
第1繰出筒13と直進案内環10は、カム環11(カム環11とカム環結合環14の結合体)の前後に位置している。直進案内環10と第1繰出筒13はそれぞれハウジング22に対して光軸方向に直進案内されており、かつカム環11に対しては、相対回転は可能で光軸方向に共に移動するように結合されている。カム環結合環14は、第1繰出筒13とカム環11を、相対回転は自在にかつ光軸方向には一緒に移動するように結合(バヨネット結合)させる部材である。
【0020】
直進案内環10は、2群レンズブロック80を光軸方向へ相対移動可能に直進案内している。2群レンズブロック80は、図6に示すように、2群レンズ移動枠(第1のレンズ移動枠)8を有し、その内部には、第2レンズ群LG2を保持する2群レンズ保持枠2が支持されている。第2レンズ群LG2は、全系で最も小径のレンズ群である。この第2レンズ群LG2を保持した2群レンズ移動枠8には、2群レンズ保持枠2の前後にそれぞれ位置させて、可変開口絞機構70とシャッタブロック100がそれぞれ光軸方向に可動に支持されている。シャッタブロック100内のシャッタ羽根100Sの近傍には、機械的絞機構に代わる露光制御用のNDフィルタ90(図1参照)が設けられている。本実施形態では、2群レンズブロック80(第2レンズ群LG2)が光量制御レンズ群であり、第2レンズ群LG2が全系のうちで最も小径のレンズ群である。
【0021】
また、ハウジング22に対して光軸方向に直進案内された第1繰出筒13はさらに、第2繰出筒(第2のレンズ移動枠)12を光軸方向へ相対移動可能に直進案内している。第2繰出筒12の内部には、1群レンズ保持枠1を介して第1レンズ群LG1が支持されている(図5)。
【0022】
第2繰出筒12は内径方向に突出する1群用カムフォロアCF1(図1、図2、図5)を有し、この1群用カムフォロアCF1が、カム環11の外周面に形成した1群制御カム溝CG1に摺動可能に嵌合している。第2繰出筒12は第1繰出筒13を介して光軸方向に直進案内されているため、カム環11が回転すると、1群制御カム溝CG1の形状に従って、第2繰出筒12すなわち第1レンズ群LG1が光軸方向へ所定の軌跡で移動する。
【0023】
カム環11の内周面に形成した2群制御カム溝CG2に対し、2群レンズ移動枠8の外周面に設けた2群用カムフォロアCF2が係合している。2群レンズ移動枠8は直進案内環10を介して光軸方向に直進案内されているため、カム環11が回転すると、2群制御カム溝CG2の形状に従って、2群レンズ移動枠8すなわち第2レンズ群LG2が光軸方向へ所定の軌跡で移動する。
【0024】
2群レンズ移動枠8と第2繰出筒12の間には、圧縮ばねからなる群間付勢ばね27が挿入されており、2群レンズ移動枠8と第2繰出筒12は互いに離間する方向に付勢されている。
【0025】
シャッタブロック100には、光軸方向のガイド筒100aが一体に設けられ、2群レンズ移動枠8には、このガイド筒100aに前後から相対摺動自在に挿入されるガイドピン100b(図1、図6)が設けられている。前方のガイドピン100bの外周には、シャッタブロック100を後方に移動付勢する圧縮コイルばね100c(図6)が設けられている。このガイド機構により、シャッタブロック100は、撮影状態では2群レンズ移動枠8から最も離間した所定位置に位置し、収納状態では、第2レンズ群LG2、第3レンズ群LG3にそれぞれ接近移動することができる(図1、図2)。シャッタブロック100のシャッタ羽根100Sは、ズーム撮影領域においては、シャッタ動作によって全開状態と全閉状態とに制御でき、収納位置では、全開状態に制御される。
【0026】
可変開口絞機構70は、図6に示すように、ベース部材73、開閉リング72、絞羽根74及びズーム回転リング71を備えている。ベース部材73上には、図9、図10に明らかように、3枚の絞羽根74の回転中心穴74aに嵌まる回転中心突起73bが形成されている。各絞羽根74には、回転中心穴74aと対をなす開閉カム溝74bが形成されており、この開閉カム溝74bは、開閉リング72に突出形成した開閉ピン72aに嵌まる。開閉リング72がベース部材73に対して相対回転すると、絞羽根74による開口径が変化する。開閉カム溝74bは、円周方向成分が殆どで径方向成分の少ない(円周方向成分が径方向成分より大きい)閉区間74b1と、径方向成分が殆どで円周方向成分の少ない(径方向成分が円周方向成分より大きい)開区間74b2とを有している。開閉ピン72aが開区間74b2に位置すると、図9(A)及び図10に示すように、開閉リング72の小さい回転角で絞羽根74による可変開口径は最大となり、閉区間74b1に位置すると、図9(B)及び図10に示すように、開閉リング72の比較的大きい回転角の間、絞羽根74による可変開口径は最小に維持される。ベース部材73には、絞羽根74による最大可変開口径より小径で最小可変開口径より大径の円形穴(円形固定開口)73c(図9(A))が形成されている。このように、可変開口絞機構70の最大径を絞羽根74によって規定せず、ベース部材73に設けた円形穴73cによって規定することで、最大径を高精度に管理することができる。一方、可変開口絞機構70の最小開口を、開閉カム溝74bの円周方向成分が殆どで径方向成分の少ない閉区間74b1で制御すると、同開口径を高精度に維持することができる。すなわち、図10に拡大して示すように、絞羽根74による開口が小開口となった状態(図9(B)、図10実線)では、開閉カム溝74の閉区間74b1に開閉ピン72aが位置し、閉区間74b1の中心線R1は、開閉ピン72aの回転中心(光軸)を中心とする円周方向R2とほぼ一致しているので、開閉ピン72a(開閉リング72)の回転角に大小の誤差があっても、正しい小開口径に維持することができる。
【0027】
つまり、ベース部材73、開閉リング72及び絞羽根74は、絞羽根開閉機構を構成し、開閉リング72のベース部材72に対する相対回転によって、絞羽根74による可変開口が、可変最大開口と可変最小開口との間で変化する。可変最大開口の径は、円形穴(円形固定開口)73cの径より大きく、可変最小開口の径は、円形穴(円形固定開口)73cの径より小さい。また、絞羽根74は、円形穴(円形固定開口)73cよりも第2レンズ群GL2に近い側に位置している。
【0028】
ズーム回転リング71は、ベース部材73との間に開閉リング72を挟着して脱落を防止し、かつベース部材73に対して一定角度の相対回転を可能にバヨネット結合されている。このズーム回転リング71と開閉リング72の間には、引張コイルばね76が張設されている。この引張コイルばね76は、ズーム回転リング71に回転力が与えられたときには開閉リング72を共に回動させ、開閉リング72側に絞開放方向の回転力が加わったときには、伸びて、開閉リング72単独の回転を許すばねである。また、ズーム回転リング71とベース部材73の間には、ズーム回転リング71を絞開放方向に付勢する引張コイルばね77が張設されている。
【0029】
ベース部材73、開閉リング72、絞羽根74、ズーム回転リング71、引張コイルばね76、77は、図11に示すように、可変開口絞サブアッシSAとして組み立てられ、図11及び図12に示すように、2群レンズ移動枠8の前方開口に挿入され、抜止リング75を介して支持される。すなわち、ベース部材73には、径方向に突出するガイド突起73a(図6)が形成され、2群レンズ移動枠8にはこのガイド突起73aが嵌まる直進案内溝8aが形成されている。2群レンズ移動枠8にはまた、前方開口の円筒壁面から径方向内方に突出する複数の抜止突起8bが形成されており、抜止リング75には、この抜止突起8bと位置の合致する組立溝75aが形成されている。抜止リング75は、ベース部材73と2群レンズ移動枠8との間に、可変開口絞サブアッシSAを前方に移動付勢する圧縮コイルばね(第1の付勢手段)78を介在させた状態で、この抜止突起8bと組立溝75aを利用して、2群レンズ移動枠8の前方開口内面に支持される。またベース部材73には、回り止め突起73dが形成され、抜止リング75には回り止めU溝75bが形成されている。この回り止め突起73dと回り止めU溝75bは、組立溝75aと抜止突起8bの回転位相が一致するときには、その回転位相が一致せず、別の回転位相で互いの位置が一致する。
【0030】
図12は、2群レンズ移動枠8に、可変開口絞サブアッシSAと抜止リング75を嵌めるステップを示している。同図(A)は、2群レンズ移動枠8の前方開口の直進案内溝8aに、ベース部材73のガイド突起73aを係合させて、可変開口絞サブアッシSAを嵌めた状態を示している。同図(B)は、抜止リング75の組立溝75aと2群レンズ移動枠8の抜止突起8bの回転位相を一致させ、圧縮コイルばね78の力に抗して抜止リング75を挿入した状態を示している。この状態において、抜止リング75を2群レンズ移動枠8に対して小角度相対回転させると、抜止突起8bの背面に抜止リング75の一部が入り込んで抜止リング75(可変開口絞サブアッシSA)が抜け止められる。またこのとき、抜止リング75の回り止めU溝75bにベース部材73の回り止め突起73dが嵌まり、抜止リング75の回転が規制される。この抜止状態では、抜止リング75(可変開口絞サブアッシSA)が2群レンズ移動枠8に対して光軸方向に移動可能に案内される。抜止リング75の回り止めU溝75bにベース部材73の回り止め突起73dが係合した状態は、安定しており、抜止リング75を圧縮ばね78の力に抗して押し込んで回転させ、組立溝75aと抜止突起8bの位相を一致させない限り、可変開口絞サブアッシSAが脱落することはない。
【0031】
抜止リング75には、その表裏(前後)に、群間付勢ばね27と圧縮コイルばね78の力が作用するが、圧縮コイルばね78の合計の力は、群間付勢ばね27の力より大きく、従って、可変開口絞サブアッシSAに光軸方向の力が加わらない通常の状態(ズーム撮影状態)では、抜止リング75(可変開口絞サブアッシSA)は、抜止突起8bと抜止リング75が当接する、2群レンズ移動枠(第1のレンズ移動枠)に対する前方への進出端(図1の状態)に維持され、収納位置では、第2繰出筒12の一部によって可変開口絞サブアッシSAが圧縮ばね78を縮ませながら後退し、抜止リング75が抜止突起8bから離間する(図2)。
【0032】
ズーム回転リング71には、回転位置を制御する径方向突起71a(図6、図11)が形成されており、この径方向突起71aは、直進案内環10の直進案内バー10a(図4、図13)の内面に形成した回転制御溝10bに係脱する。回転制御溝10bは、光軸方向の直進溝10b1と、直進溝10b1の先端に連続する、光軸方向及び円周方向に対して傾斜した傾斜溝10b2とを有している。可動レンズ(カム環)ブロック110がズーム撮影領域のテレ端及びその近傍に位置するときには、径方向突起71aは回転制御溝10bとの非係合位置にあり、このとき、ズーム回転リング71は、絞羽根74による開口を最大開口に保持し(引張コイルばね77は縮小状態)、テレ端及びその近傍を除くワイド側領域では、径方向突起71aが傾斜溝10b2から直進溝10b2に達して、ズーム回転リング71と開閉リング72が引張コイルばね76によって共に開口絞込方向に回転し、絞羽根74による開口径を最小にする(図13、図9)。すなわち、直進案内環(直進案内部材)10は、ズーム撮影領域において可変開口絞機構70と相対移動することにより開閉リング72を回転させる第1の回転付与部材(第1の直進部材)である。
【0033】
一方、開閉リング72にも、回転位置を制御する径方向突起72bが形成されており、第2繰出筒12には、この径方向突起72bと係合して、第2繰出筒12(可動レンズ(カム環)ブロック110)が収納位置に達したとき開閉リング72を単独で(ズーム回転リング71を回転させることなく、引張コイルばね76の伸張を伴いながら)最大開放位置に回転させる開放案内面12a及び開放維持面12bが形成されている。図14には、開放案内面12a及び開放維持面12bの位置を明らかにする第2繰出筒12の単体形状を示した。すなわち、第2繰出筒12は、収納位置とズーム撮影位置との間を移動して可変開口絞機構70と相対移動することにより開閉リング72を回転させる第2の回転付与部材(第2の直進部材)である。図8において、径方向突起72bが開放案内面12aから離れている状態(ズーム撮影領域)(同図(A))では、引張コイルばね76が伸びていないのに対し、径方向突起72bが開放案内面12aに接触し(同図(B))、さらに開放維持面12bに接触すると、引張コイルばね76が伸張している(開閉リング72がズーム回転リング71に対して相対回転している)ことが分かる。
【0034】
図13は、ズーム回転リング71(径方向突起71a、回転制御溝10b)と開閉リング72(径方向突起72b、開放案内面12a、開放維持面12b)の役割分担を示している。同図のステップオープン、ステップクローズは、テレ端側の2つのステップを示している。テレ端とステップオープンの間では、ズーム回転リング71の径方向突起71aが回転制御溝10bとは係合していないため、絞羽根74は最大開口に保持されているのに対し、ステップオープンからステップクローズに至る間に、径方向突起71aが回転制御溝10bの傾斜溝10b2から直進溝10b1に至って絞羽根74による開口が最小開口に変化する。また、同図の下半に示すように、収納端及びワイド端では、ズーム回転リング71の径方向突起71aは、回転制御溝10bの直進溝10b1に位置しており、絞羽根74は、ズーム回転リング71との関係では最小開口に保持される筈であるが、収納位置では、同図上半に示すように、ズーム回転リング71の回転位置とは無関係に(独立して)、開閉リング72が第2繰出筒12の開放案内面12aに沿って絞開放方向に回動し、開放維持面12bにより開放状態に維持されるので、絞羽根74は最大開口位置に保持されている。
【0035】
第2レンズ移動枠8にはさらに、図6、図8に示すように、可変開口絞サブアッシSAと対向する面に、安全突起8cが形成されており、可変開口絞サブアッシSAの開閉リング72には、この安全突起8cに対応する安全突起72d(図8)が形成されている。この安全突起8cと72dは、開閉リング72が小開口位置にあるときには回転位相が一致し、大開口位置にあるときには回転位相が一致しないように、形成されている。つまり、何らかの原因で開閉リング72の回転が妨げられたまま、可変開口絞サブアッシSAが後方に移動したときには、回転位相が一致している安全突起8cと72dが衝突(干渉)して、可変開口絞サブアッシSAが後方に移動するのを防ぐ。一方、図8(C)のように、開閉リング72が正しく開方向に回転して開位置に至ると、安全突起8cと72dの周方向位置がずれ、可変開口絞サブアッシSAの後退が可能となる。
【0036】
以上の構造からなるズームレンズ鏡筒ZLは次のように動作する。図2に示す鏡筒収納状態では、図1に示す撮影状態よりも光軸方向の光学系の長さ(第1レンズ群LG1の物体側の面から撮像素子26の撮像面までの距離)が短くなっている。この鏡筒収納状態において撮影状態への移行信号(例えば、ズームレンズ鏡筒ZLが搭載されるカメラに設けたメインスイッチのオン)が入力されると、ズームモータ150が鏡筒繰出方向に駆動され、カム環11が回転しながら光軸方向前方へ繰り出される。直進案内環10と第1繰出筒13は、カム環11と共に前方に直進移動する。カム環11が回転すると、その内側では、直進案内環10を介して直進案内された2群レンズ移動枠8が、2群用カムフォロアCF2と2群制御カム溝CG2の関係によって光軸方向に所定の軌跡で移動される。また、カム環11が回転すると、該カム環11の外側では、第1繰出筒13を介して直進案内された第2繰出筒12が、1群用カムフォロアCF1と1群制御カム溝CG1の関係によって光軸方向に所定の軌跡で移動される。
【0037】
すなわち、鏡筒収納状態からの第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2の繰出量はそれぞれ、前者が、ハウジング22に対するカム環11の前方移動量と、該カム環11に対する第2繰出筒12のカム繰出量との合算値として決まり、後者が、ハウジング22に対するカム環11の前方移動量と、該カム環11に対する2群レンズ移動枠8のカム繰出量との合算値として決まる。ズーミングは、この第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2が互いの空気間隔を変化させながら撮影光軸Oに沿って移動することにより行われる。収納状態から鏡筒繰出を行うと、まず図1の上半断面に示すワイド端の繰出状態になり、さらにズームモータ150を鏡筒繰出方向に駆動させると、図1の下半断面に示すテレ端の繰出状態となる。テレ端とワイド端の間のズーム撮影領域では、カム環11は前述の定位置回転を行い、光軸方向へは進退しない。収納状態への移行信号(例えば、カメラのメインスイッチのオフ)が入力されると、ズームモータ150が鏡筒収納方向に駆動され、ズームレンズ鏡筒ZLは以上の繰出動作とは逆の収納動作を行う。収納状態からワイド端に達する迄は、撮影は不能である。
【0038】
第2繰出筒12の前端部のバリヤブロック101は、ズームレンズ鏡筒ZLの収納状態ではバリヤ羽根が閉じており、撮影状態への繰り出し動作に応じてバリヤ羽根が開かれる。
【0039】
第3レンズ群LG3を支持する3群レンズ枠51は、以上のズームモータ150による第1レンズ群LG1及び第2レンズ群LG2の駆動とは独立して、AFモータ160によって光軸方向に前後移動させることができる。そして、光学系がワイド端からテレ端までのズーム域にあるとき、測距手段によって得られた被写体距離情報に応じてAFモータ160を駆動することにより、第3レンズ群LG3が光軸方向に移動してフォーカシングが実行される。
【0040】
そして、シャッタブロック100と可変開口絞機構70は、ズームレンズ鏡筒ZLが以上のように収納位置と撮影位置(ズーム撮影領域)との間で移動する間に、次のように光軸方向に移動し、かつその開口を制御する。図1に示すズーム撮影領域では、シャッタブロック100は、圧縮コイルばね100cの力により、2群レンズ保持枠2(第2レンズ群2LG)から最も離間した後方位置に位置し、可変開口絞機構70の可変開口絞サブアッシSAは、圧縮コイルばね78により、抜止リング75が抜止突起8bの背面に当接する位置に保持される。そして、ズーム撮影領域のテレ端及びその近傍では、ズーム回転リング71の径方向突起71aと直進案内バー10aの回転制御溝10bの関係により、絞羽根74が開いてベース部材73の円形穴73cにより開口F値を小さく維持し、テレ端及びその近傍を除くワイド側領域では、絞羽根74が閉じて開口径を小さくして有害光の入射を制限する(図1、図13)。撮影時には、シャッタブロック100のシャッタ羽根100Sが開閉し、NDフィルタ90は、設定絞に応じた光量を透過させる。
【0041】
ズームレンズ鏡筒ZLが図1に示すズーム撮影領域から図2に示す収納位置に移動すると、シャッタブロック100が後方の部材(3群レンズ枠51または撮像素子ホルダ23)に当て付いて後退が規制され、第2レンズ移動枠8が圧縮コイルばね100cを圧縮しながらシャッタブロック100に接近する。このとき、シャッタ羽根100SとNDフィルタ90は、開放され、その開放開口内に、2群レンズ移動枠8内に位置している2群レンズ保持枠2(第2レンズ群LG2)の後部一部が進入する(図2)。つまり、2群レンズ保持枠2(第2レンズ群LG2)の後端部の光軸直交面がシャッタ羽根100Sの光軸直交面より後方に位置する。
【0042】
同時に、後退移動する第2繰出筒12の開放案内面12a及び開放維持面12bによって可変開口絞機構70(可変開口絞サブアッシSA)の径方向突起72bが押され、開閉リング72が絞開放方向に回転し、絞羽根74による開口が最大となり、ベース部材73の円形穴73cによって最大開口が規定される。また、後退する第2繰出筒(第2のレンズ移動枠)12によって、抜止リング75及び可変開口絞サブアッシSAが後方に押され、圧縮コイルばね78を撓ませながら第2レンズ群LG2に接近する。第2レンズ移動枠8に支持されている第2レンズ群LG2の前端部は、このようにして、第2レンズ群LG2に対して接近移動する可変開口絞サブアッシSAの円形穴(開放開口)73c内に入り込んで、収納長の短縮を図る(図2)。つまり、第2レンズ群LG2の前端部の光軸直交面が円形穴73c及び絞羽根74の光軸直交面より前方に位置する。
【0043】
絞羽根74による開口径は、最小開口時のみ高精度で管理すればよく、最大開口時は精度が不要である(開口径は円形固定開口73cで決定される)から、絞羽根開閉機構の構成を簡略化してコンパクト化を図ることができる。また、最大開口の大きい絞羽根73の方が円形固定開口73cより第2レンズ群GL2寄りにあるので、同レンズ群を絞開口の中に容易に(より深く)突入させて収納長の短縮を図ることができる。
【0044】
また、以上の収納位置への後退動作に際し、何らかの原因で開閉リング72の回転が妨げられた状態では、第2レンズ移動枠8の安全突起8cと、開閉リング72の安全突起72dとの回転位相が一致したままである(図8(C))。このため、開閉リング72が小開口位置にあるのに、可変開口絞サブアッシSAが後方に移動しようとすると、両安全突起8cと72dが干渉(衝突)して、可変開口絞サブアッシSAの小開口の絞羽根74と第2レンズ群LG2とが干渉(衝突)する事故を回避することができる。一方、開閉リング72が正しく開方向に回転すると、安全突起8cと72dの回転位相(周方向位置)がずれる。このため、可変開口絞サブアッシSAの絞羽根74による大開口内に、第2レンズ群LG2の後端部を正しく収納することができる。
【0045】
以上のように、本実施形態では、ズームレンズ鏡筒ZLの収納位置において、厳密には、シャッタブロック100の開放開口内に2群レンズ保持枠2が進入し、可変開口絞機構70(可変開口絞サブアッシSA)の開放開口内に、第2レンズ群LG2が進入するが、2群レンズ保持枠2は、第2レンズ群(開口制御レンズ群)LG2の一部である。つまり、第2レンズ群(開口制御レンズ群)LG2と一体に移動して、収納位置で、シャッタブロック100の開放開口と、可変開口絞機構70の開放開口内に入り込む部材は、「開口制御レンズ群の一部」である。
【0046】
以上の実施形態では、可変開口絞機構70の小開口は、絞羽根74によって規定され、大開口は、円形穴(円形固定開口)73cによって規定されている。しかし、円形穴73cを廃止し(あるいは円形穴73cを絞羽根74による大開口径よりも大きくし)、絞羽根74によって大開口を規定してもよい。
【0047】
以上の実施形態では、第2レンズ群2LGの前方に可変開口絞機構70を配し、後方にシャッタブロック100を配したが、この前後関係は逆にすることもできる。
【0048】
また、以上の実施形態は、物体側から順に負正正の3群ズームレンズ鏡筒において、最も小径の第2レンズ群を光量制御レンズ群としたものであるが、例えば、物体側から順に正負正正の4群ズームレンズ鏡筒においては、最も小径の第3レンズ群を光量制御レンズ群とすることが可能である。
【符号の説明】
【0049】
2 第2レンズ保持枠(第2レンズ群、光量制御レンズ群)
LG2 第2レンズ群(光量制御レンズ群)
10 直進案内環(第1の回転付与部材、第1の直進部材)
10a 直進案内バー
10b 回転制御溝
10b1 直進溝
10b2 傾斜溝
12 第2繰出筒(第2のレンズ移動枠、第2の回転付与部材、第2の直進部材)
12a 開放案内面
12b 開放維持面
8 2群レンズ移動枠(第1のレンズ移動枠)
8a 直進案内溝
8b 抜止突起
8c 安全突起
70 可変開口絞機構
71 ズーム回転リング
72 開閉リング
73 ベース部材
73d 回り止め突起
74 絞羽根
75 抜止リング
75a 組立溝
75b 回り止めU溝
76 77 引張コイルばね
78 圧縮コイルばね
80 2群レンズブロック(開口制御レンズ群)
90 NDフィルタ
100 シャッタブロック
100S シャッタ羽根
110 可動レンズ(カム環)ブロック
SA 可変開口絞サブアッシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変倍に寄与する複数の可動レンズ群を、光軸方向後方の収納位置と前方のズーム撮影位置との間で移動させるズームレンズ鏡筒において、
いずれか一つの可動レンズ群を開口制御レンズ群として、該開口制御レンズ群の前後のいずれか一方に、光軸方向の相対移動を可能にして可変開口絞機構を位置させること;
この可変開口絞機構は、ベース部材と、このベース部材に対して相対回動可能な開閉リングと、この開閉リングの正逆の回動動作によって開口径を大小に切り換える複数枚の絞羽根とを有すること;
上記開口制御レンズ群が上記ズーム撮影位置から収納位置に移動するとき、該可変開口絞機構の開口を小開口から大開口にするように上記開閉リングを回転させる回動手段を有すること;
収納位置では、上記開口制御レンズ群の一部が可変開口絞機構に接近してその大開口内に進入すること;及び
上記開閉リングが小開口位置にある状態で、開口制御レンズ群が可変開口絞機構に接近するとき、両者の最大接近位置を規制する接近規制部材を有すること;
を特徴とする可変開口絞機構を有するズームレンズ鏡筒。
【請求項2】
請求項1記載のズームレンズ鏡筒において、上記接近規制部材は、開閉リングに形成した安全突起と、開口制御レンズ群を支持したレンズ移動枠に形成した安全突起とからなり、両安全突起は、開閉リングが小開口位置にあるときには位相が一致し、大開口位置にあるときには位相が一致しない可変開口絞機構を有するズームレンズ鏡筒。
【請求項3】
請求項1または2記載のズームレンズ鏡筒において、正逆の回転運動により上記複数の可動レンズ群を光軸方向に移動させるカム環を有し、このカム環の同一方向の回転動作により、上記複数の可動レンズ群は、収納位置、ズーム撮影領域内のワイド端位置及びテレ端位置の順又はその逆に移動し、上記可変開口絞機構は、収納位置及びテレ端位置では大開口に維持され、ワイド端では小開口に維持される可変開口絞機構を有するズームレンズ鏡筒。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載のズームレンズ鏡筒において、上記可変開口絞機構は、開口制御レンズ群を支持したレンズ移動枠に光軸方向に移動可能にかつ該開口制御レンズ群から離間する方向に付勢されて支持されている可変開口絞機構を備えたズームレンズ鏡筒。
【請求項5】
請求項4記載のズームレンズ鏡筒において、上記可動変倍レンズ群がズーム撮影位置と収納位置の間を移動するとき、該可変開口絞機構の開閉リングに対して相対的に接離移動して、可変開口絞機構を開口制御レンズ群に接離させ、さらに開閉リングを小開口位置と大開口位置との間で回動させる、上記レンズ移動枠に対して光軸方向に相対移動する直進移動部材を備えている可変開口絞機構を備えたズームレンズ鏡筒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−7821(P2011−7821A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148150(P2009−148150)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】