説明

可撓式分割防潮板

【課題】収納ケースに納めることができる可撓式分割防潮板を得、見栄えの向上を図るとともに、新たな天井高スペースを確保することなく設置を可能とする。
【解決手段】巻取軸を内設し巻取軸に沿って長いスリット状の収納口を天井面に開口させた収納ケース23と、建物開口部21を挟み収納口の長手方向両端から床に亘って垂設される一対のレール状ガイド手段35,35と、レール状ガイド手段35,35に長手方向両端がガイドされ巻取軸に巻き取られるシャッターカーテン39に上部が接続されることで建物開口部を昇降自在な防潮板41とを備える可撓式分割防潮板100であって、防潮板41が、上下方向に分割された複数の分割小板と、上下で隣接する分割小板同士を接触と離反の双方状態可能にするとともに上下で隣接する分割小板同士を可撓可能に接続する連結手段とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物開口部に昇降自在に設けられる可撓式分割防潮板に関し、特に建物の天井内に配置される収納部に防潮板を巻き取り可能とした改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
河川地域や海浜地域、ことに海抜の低い地域における台風や豪雨、或いは急激な降雨などによって、建物内への浸水の被害が大きな問題となっている。大規模な災害に限らず、数センチの浸水程度でも、建物に侵入した雨水は、床材や什器類などに損害をもたらす。また、地面より低い空間、すなわち地階を備える建物構造物においても浸水は問題である。建物の開口部の下部は、このような被害に備え防潮板が配置可能となったものがある。この種の防潮板には、建物開口部の両側に断面コ字形の溝を向かい合わせて設け、出水時にはこの溝に堰板の両端を嵌合させるようにしたものが旧来よりある。
【0003】
ところが、このような堰板を用いた防潮板構造は、出水の都度、離れた場所に保管した堰板を運搬して取り付ける必要があると共に、不要となった際にも、溝から堰板を取り外し、再び離れた場所にある保管箱等まで堰板を運搬しなければならないなど、手間のかかる問題があった。
【0004】
このような不具合を解消したものに、特許文献1に開示される防潮板兼用シャッターがある。この防潮板兼用シャッター1は、図17に示すように、建物開口部3の左右に設けられたガイドレール5,5に沿って昇降自在となったシャッターカーテン7の下部に、所定高さを有する1枚の防潮板9を連結してなる。防潮板9は、操作スイッチ11によって巻き取り装置13が駆動されると、シャッターカーテン7が巻き取られ、これに伴ってガイドレール5,5に案内されながら、建物開口部3を上昇することとなる。防潮板9は、不使用時、シャッターカーテン7が収納部15内に巻き取られた状態で、図18に示すように、収納部15の収納口17から下方へと垂下した状態で支持される。
【特許文献1】実開平7−8785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の防潮板兼用シャッターは、シャッターカーテンに連結したことにより、開閉は容易となったものの、防潮板が所定高さを有した1枚板であるため、収納部内へ引き込むことが不可能であり、収納口から垂れ下がった状態で配置しなければならなかった。このため、見栄えを低下させる問題があった。このような、防潮板が収納できずに、天井面から垂れ下がった見栄えの悪い状態を改善しようとすると、防潮板の高さ分、天井を下げて建物を構築するか、防潮板の高さ分、収納部を天井内の上方へ引き上げて設置するかとなり、新築の建物であれば、設計段階で採用の可否を決定できるが、改修や後付け工事で収納部の下方に防潮板を配置するスペースが確保できない場合には、設置が不可能となる問題があった。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、防潮部の高さを有る程度自由に設定できる可撓式分割防潮板を提供し、もって、防潮板の一部又は全部を巻き取り収納すること、又は可撓状態で収納することによって、全開時における防潮板の納まり寸法を小さくすることが可能になるとともに、開口部の有効開口高さを広く確保することができることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の可撓式分割防潮板は、変向軸27を内設し該変向軸27に沿って長いスリット状の収納口31を天井面25aに開口させた収納部23と、建物開口部21を挟み前記収納口31の長手方向両端から床に亘って垂設される一対のレール状ガイド手段35と、該レール状ガイド手段35に長手方向両端がガイドされ前記変向軸27によって前記収納部へ収納される連接部材39に上部が接続されることで前記建物開口部21を昇降自在な防潮板41と、を備える可撓式分割防潮板100であって、
前記防潮板41が、
上下方向に分割された複数の分割小板43と、
上下で隣接する該分割小板43同士を接触と離反の双方状態可能にするとともに、上下で隣接する分割小板43同士を可撓可能に接続する連結手段45と、
からなることを特徴とする。
【0008】
この可撓式分割防潮板では、複数の分割小板43が連結手段45で連結される構成とされて、これらの連結状態で可撓可能となり、変向軸27の回転により連接部材39を介して防潮板41を収納口31から引き込み、変向軸27にて収納部31へと導くことができる。したがって、変向軸27を巻取軸として構成すれば一般のシャッターカーテンと同様に、防潮板41を収納部23内に納めることができる。この結果、防潮板41が天井面25aから垂れ下がった状態で露出することがなくなり、見栄えを向上させることができる。また、従来の、天井高さの制約等により防潮板垂れ下げスペースを確保できない設置場所であっても、防潮板41が収納部23内に納められるので、防潮板41の設置を可能にすることができる。
【0009】
請求項2記載の可撓式分割防潮板は、昇降方向最下部の前記分割小板43Aは、上下方向の高さが他の分割小板43より大きいことを特徴とする。
【0010】
この可撓式分割防潮板では、昇降方向最下部の分割小板43Aの上下方向の高さが他の分割小板43より大きく、分割位置が床から高い位置となり、浸水が生じ難くなる。
【0011】
請求項3記載の可撓式分割防潮板は、前記連接部材は、シャッターカーテン39であることを特徴とする。
【0012】
この可撓式分割防潮板では、新たな設置スペースを確保することなく、既存のシャッター装置を利用して防潮板41が容易に増設可能となる。すなわち、既存のシャッターカーテンの下部に連結して構成が可能となる。また、シャッターカーテン39の重量を利用して、防潮板41が上方から相互に密接する方向に押圧可能となる。
【0013】
請求項4記載の可撓式分割防潮板は、上下で隣接する前記分割小板43同士が、一対の水平面59と、該一対の水平面59同士を接続する垂直面61とからなる段部63同士を噛み合わせて接触することを特徴とする。
【0014】
この可撓式分割防潮板では、外部からの水圧が作用した時に、上下で隣接する双方の分割小板43の垂直面61同士が当接され、分割小板43同士が密着した連結状態となる。
【0015】
請求項5記載の可撓式分割防潮板は、上下で隣接する前記分割小板43同士は、少なくとも一方に設けられたパッキン57を介して接触することを特徴とする。
【0016】
この可撓式分割防潮板では、上下で隣接する分割小板43同士が当接した際、当接面同士がパッキン57を介して当接され、当接面同士の間の水密性が高められる。
【0017】
請求項6記載の可撓式分割防潮板は、前記分割小板43のそれぞれを前記レール状ガイド手段35の内側当接面65に押しつけるとともに、前記分割小板の最下端の分割小板を前記レール状ガイド手段37の内側当接面及び一対のレール状ガイド手段37に連続形成される床面37の下部落込み溝53の内側当接面に押しつけ手段67を備え、
該押しつけ手段67は、
前記分割小板43の長手方向両端の端面69に突設され長手方向に沿う軸回りで回転自在となったローラ71と、
前記レール状ガイド手段35の内方に設けられ最下降位置直前の該ローラ71に接し該ローラ71を介して前記分割小板43の両端を前記内側当接面65へ向かって移動させる傾斜面73を有した押圧用突起75と、
前記各レール状該ガイド手段35及び下部落込み溝53の内側当接面65に設けられ前記分割小板43の両端及び最下端の分割小板の一面に密接するガスケット77と、
からなることを特徴とする。
【0018】
この可撓式分割防潮板では、複数の分割小板43からなる防潮板全体が、水圧の加わる方向で、レール状ガイド手段35及び下部落込み溝53の内側当接面65に押しつけられ、介在させたガスケット77により高い水密性が確保される。なお、このガスケット77は、各レール状ガイド手段35と下部落込み溝53内とで連続する略コ字形状が好ましい。
【0019】
請求項7記載の可撓式分割防潮板は、最下部に連結される前記分割小板43の下部に、前記収納口31の面積より大きい相似形の水切板87が設けられたことを特徴とする。
【0020】
この可撓式分割防潮板では、防潮板41の収納時に、収納部23の収納口31が水切板87によって塞がれ、天井面25aに収納口31が開口したままとなる見栄えの低下が防止される。また、防潮板41の過剰巻き込みが阻止される。
【0021】
なお、可撓式分割防潮板は、前記変向軸が、第1変向軸79と、該第1変向軸79に平行な別体の第2変向軸27とからなり、
前記レール状ガイド手段が、第1レール状ガイド手段81と、該第1レール状ガイド手段81と平行な第2レール状ガイド手段35とからなり、
前記防潮板41が前記連接部材である可撓性長体83を介し前記第1変向軸79に巻き取られて前記第1レール状ガイド手段81にガイドされ、
シャッターカーテン39が前記第2変向軸27に巻き取られて前記第2レール状ガイド手段35にガイドされる構成とすることもできる。
【0022】
この可撓式分割防潮板によれば、防潮板41とシャッターカーテン39とが分離して二重に配設され、通常の建物開口部21の開閉時には、シャッターカーテン39のみが昇降され、防潮板41は収納状態のままとなる。そして、防潮板41使用時に降下させる。すなわち、防潮板41が可撓性長体83を介し第1変向軸に巻き取られて第1レール状ガイド手段にガイドされ、シャッターカーテンが第2変向軸に巻き取られて第2レール状ガイド手段にガイドされるので、防潮板41とシャッターカーテン39とが分離して二重に配設されることとなり、通常の建物開口部21の開閉時には、シャッターカーテン39のみが昇降され、防潮板41は収納状態のままとなり、防潮板41不使用時の見栄えを良くすることができる効果を得られる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る請求項1記載の可撓式分割防潮板によれば、防潮板が、上下方向に分割された複数の分割小板と、この分割小板同士を接触と離反の双方状態可能にするとともに少なくとも分割小板同士を所望の曲率に可撓可能に接続する連結手段とからなるので、変向軸の回転により連接部材を介して防潮板を収納口から引き込み、変向軸にて収納部へと導くことができる。したがって、変向軸を巻取軸として構成すれば、一般のシャッターカーテンと同様に、防潮板を収納部内に納めることができる。この結果、防潮板が天井面から垂れ下がった状態で露出することがなくなり、見栄えを向上させることができる。また、従来の、天井高さの制約等により防潮板垂れ下げスペースを確保できない設置場所であっても、防潮板が収納部内に納められるので、防潮板の設置を可能にすることができる。
【0024】
請求項2記載の可撓式分割防潮板によれば、昇降方向最下部の分割小板は、上下方向の高さが他の分割小板より大きいので、分割位置を床より高い位置とすることによって浸水を生じ難くできる。
【0025】
請求項3記載の可撓式分割防潮板よれば、連接部材は、変向軸に巻き取られるシャッターカーテンであるので、新たな設置スペースを確保することなく、既存のシャッター装置を利用して防潮板を容易に増設することができる。また、シャッターカーテンの重量によって防潮板を押さえることができ、分割小板の密着性を高めることができる。
【0026】
請求項4記載の可撓式分割防潮板よれば、上下で隣接する分割小板同士が、一対の水平面と、一対の水平面同士を接続する垂直面とからなる段部同士を噛み合わせて接触するので、外部からの水圧が作用した時に、段部の垂直面同士を当接させて、分割小板同士を密着させることができる。
【0027】
請求項5記載の可撓式分割防潮板よれば、上下で隣接する分割小板同士は、少なくとも一方に設けられたパッキンを介して接触するので、分割小板同士の当接面の水密性を向上させることができる。
【0028】
請求項6記載の可撓式分割防潮板よれば、押しつけ手段は、分割小板の端面に突設されたローラと、レール状ガイド手段の内方に設けられ傾斜面を有した押圧用突起と、レール状ガイド手段及び下部落込み溝の内側当接面に設けられ分割小板に密接するガスケットとからなるので、複数の分割小板からなる防潮板全体を、水圧の加わる方向で、レール状ガイド手段及び下部落込み溝の内側当接面に押しつけて、介在させたガスケットにより高い水密性で浸水を防止することができる。
【0029】
請求項7記載の可撓式分割防潮板によれば、最下部に連結される分割小板の下部に、収納口の面積より大きい相似形の水切板が設けられたので、防潮板の収納時に、収納部の収納口を水切板によって塞ぐことができ、天井面に収納口が開口したままとなる見栄えの低下を防止することができるとともに、防潮板の過剰巻き込みによる繰り出し障害を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明に係る可撓式分割防潮板の好適な実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る可撓式分割防潮板の正面図、図2は図1のA−A矢視図、図3は図1のB−B矢視図、図4は変向軸にシャッターカーテンと共に巻き取られた状態の防潮板の変向軸直交方向の断面図、図5は防潮板の非閉鎖時における断面図である。
図1に示すように、建物開口部21の上部には収納部としての収納ケース23が取り付けられ、収納ケース23は図2に示すように、天井25の内部に納められている。収納ケース23は、図2に示す変向軸としての巻取軸27を備えた巻取装置29を内設し、巻取軸27に沿って長いスリット状の収納口31を天井面25aに開口させている。巻取装置29は、操作スイッチ33の操作によって巻取軸27を巻き取り・繰り出し回転可能としている。
【0031】
建物開口部21の左右にはこの建物開口部21を挟んで一対のレール状ガイド手段35,35が設置され、レール状ガイド手段35,35は収納口31の長手方向両端から床37に亘って垂設される。巻取軸27には連接部材であるシャッターカーテン39の上端が固定され、シャッターカーテン39は巻取軸27の回動によってレール状ガイド手段35,35によって案内されて建物開口部21を昇降自在となる。シャッターカーテン39は、水平方向に長尺の複数の帯板状のスラットを上下に連結してなる。このシャッターカーテン39の下端には防潮板41が連結され、防潮板41はレール状ガイド手段35,35に長手方向両端がガイドされシャッターカーテン39の昇降に伴って建物開口部21を昇降自在となっている。
【0032】
レール状ガイド手段35,35は、図3に示すように、断面コ字状の防潮板用レール部35aと、この防潮板用レール部35aから更に奥側へ凹んだシャッターカーテン用レール部35bとの二段構造となっている。
【0033】
防潮板41は、上下方向に分割された複数の分割小板43と、上下で隣接するこの分割小板43同士を連結する連結手段45とからなる。ここで、連結手段45は、分割小板43の長手方向全長に亘って設けられるものであってもよく、分割小板43の長手方向所定間隔で複数設けられるものであってもよい。
【0034】
図4に示すように、分割小板43は、本実施の形態において、断面四角形の角筒状に形成され、連結方向に位置する平行な一対の辺部に連結スリット47を有する。隣接する分割小板43同士の連結スリット47には連結手段45の連結板49の両端が挿入され、連結板49の両端は、先端に膨出された抜留部51によって連結スリット47から抜脱が規制されている。
【0035】
連結手段45は、抜留部51を有し、容易に撓まない鋼板等の金属素材よりなる連結板49によって分割小板43同士を連結することで、分割小板43同士を接触と離反の双方状態可能にするとともに、少なくとも巻取軸27による巻き取りが可能となるように、上下で隣接する分割小板43板同士を巻取曲率に可撓可能に接続する。
【0036】
図6は蓋取付け状態を(a)、蓋取り外し状態を(b)に示した下部落込み溝の断面図、図7は通常閉鎖時の防潮板の断面図、図8は防潮時の防潮板の断面図である。
床37には建物開口部21の下端で、左右のレール状ガイド手段35,35を連続させる下部落込み溝53が形成され、下部落込み溝53は通常、蓋55によって塞がれる。蓋55によって塞がれた下部落込み溝53は、床37の面と段差のない同一平面となる。通常閉鎖時、防潮板41は、図7に示すように、下部落込み溝53に蓋55が取り付けられた状態で閉鎖される。
【0037】
一方、防潮閉鎖時、防潮板41は、図8に示すように、下部落込み溝53から蓋55が取り除かれた状態で閉鎖される。本実施の形態において、連接部材は、巻取軸27に巻き取られるシャッターカーテン39であるので、新たな設置スペースを確保することなく、既存のシャッター装置を利用して防潮板41を容易に増設することができる。また、図8に示すように、シャッターカーテン39の重量によって防潮板41を上方から押さえることができ、分割小板43同士の密着性を高めることができる。
【0038】
さらに、上下で隣接する分割小板43同士は、少なくとも一方に設けられたパッキン57を介して接触する。本実施の形態では、上側分割小板43下面の手前側と、下側分割小板43上面の奥側とにそれぞれパッキン57a,57bとが付設され、二重に水密シールされるようになっている。このように、上下で隣接する分割小板43は、パッキン57a,57bを介して接触するので、当接面の水密性を向上させることができる。
【0039】
図9は異なる高さの分割小板が組み合わされた防潮板を(a)、分割小板同士の間に段部を有する防潮板を(b)に示した変形例の説明図である。
防潮板41は、図9(a)に示すように、昇降方向最下部の分割小板43Aのみが、上下方向の高さが他の分割小板43より大きいものであってもよい。勿論、図5に示すように、防潮板41は、昇降方向最下部を含む全ての分割小板43が、同一の高さで形成されてもよい。防潮板41は、昇降方向最下部の分割小板43Aの上下方向の高さが他の分割小板43より大きければ、分割箇所がその分少なくなり、浸水が生じ難くなる。
【0040】
また、上下で隣接する分割小板43同士は、図9(b)に示すように、一対の水平面59と、この一対の水平面59,59同士を接続する垂直面61とからなる段部63,63同士を噛み合わせて接触するものであってもよい。上下で隣接する分割小板43同士が、一対の水平面59と、一対の水平面59,59同士を接続する垂直面61とからなる段部63,63同士を噛み合わせて接触するので、外部からの水圧が作用した時に、段部63の垂直面61,61同士を当接させて、分割小板43,43同士を密着させることができる。
【0041】
図10は押しつけ手段を備えた防潮板の側面図を(a)に、ガスケットの概略斜視図を(b)に示した説明図、図11は図10のC−C矢視図である。
防潮板41は、分割小板43のそれぞれをレール状ガイド手段35,35の内側当接面65に押しつける押しつけ手段67を備えることが好ましい。押しつけ手段67は、分割小板43の長手方向両端の端面69に突設され長手方向に沿う軸回りで回転自在となったローラ71と、レール状ガイド手段35の内方に設けられ最下降位置直前のローラ71に接し、ローラ71を介して分割小板43の両端を内側当接面65へ向かって移動させる傾斜面73を有した押圧用突起75と、レール状ガイド手段35,35及びこれらに連続する下部落込み溝53の内側当接面65に設けられ分割小板43の両端、及び最下端の分割小板43の一面に密接するガスケット77と、からなる。
【0042】
なお、押圧用突起75及びローラ71は、図10に示すように、下方の分割小板43に対応するものほど、内側当接面65に近接して配置される。これにより、防潮板41の最下降位置で、全ての分割小板43が傾斜面73からの反力を受け内側当接面65へ向かって移動させるようになっている。
【0043】
このように、押しつけ手段67を備えた防潮板41によれば、複数の分割小板43からなる防潮板41の全体を、水圧の加わる方向で、レール状ガイド手段35,35及び下部落込み溝53の内側当接面65に押しつけて、これら連続した面に沿って略コ字状に形成され介在させたガスケット77(図10(b)参照)により高い水密性で浸水を防止することができる。
【0044】
上記のように構成された可撓式分割防潮板100によれば、巻取軸27の回転によりシャッターカーテン39を介して防潮板41を収納口31から引き込み、巻取軸27に巻き取ることができる。したがって、一般のシャッターカーテン39と同様に、防潮板41を収納ケース23内に納めることができる。この結果、防潮板41が天井面25aから垂れ下がった状態で露出することがなくなり、見栄えを向上させることができる。また、従来の、天井高さの制約等により防潮板垂れ下げスペースを確保できない設置場所であっても、防潮板41が収納ケース23内に納められるので、防潮板41の設置を可能にすることができる。
【0045】
図12は可撓性長体により巻き取られる防潮板の変形例を表す正面図、図13は図12に示した防潮板の収納状態を表す巻取軸直交方向の断面図である。
可撓式分割防潮板200は、シャッターカーテン39と連結せずに、単独で設置されてもよい。この場合、防潮板41は、第1変向軸としての第1巻取軸79に設けられたプーリ79aに、可撓性長体としてのワイヤ83を介して巻き取られ、第1レール状ガイド手段81,81にガイドされて昇降される。
【0046】
図14はグリルシャッターの下部に防潮板を取り付けた変形例の正面図である。
可撓式分割防潮板は、上記したシャッターカーテン39、ワイヤ83を連接部材とする他、図14に示すグリルシャッター85や、不図示のパネルカーテン、シートカーテン等を連接部材としてもよい。
【0047】
図15は防潮板とシャッターカーテンとを2重構造で設けた変形例の断面図である。
また、可撓式分割防潮板は、防潮板41と、シャッターカーテン39とが別体に設置されるものであってもよい。この場合、変向軸としての巻取軸は、第1変向軸としての第1巻取軸79と、この第1巻取軸79に平行な別体の第2変向軸としての第2巻取軸(本実施の形態では巻取軸27)とからなる。また、レール状ガイド手段は、第1レール状ガイド手段81と、第1レール状ガイド手段81と平行な第2レール状ガイド手段(本実施の形態ではレール状ガイド手段35)とからなる。防潮板41は、連接部材であるワイヤ83を介し第1巻取軸79に巻き取られて第1レール状ガイド手段81にガイドされる。シャッターカーテン39は、第2巻取軸である巻取軸27に巻き取られて第2レール状ガイド手段であるレール状ガイド手段35にガイドされる。
【0048】
防潮板41がワイヤ83を介し第1巻取軸79に巻き取られて第1レール状ガイド手段81にガイドされ、シャッターカーテン39が巻取軸27に巻き取られてレール状ガイド手段35にガイドされるので、防潮板41とシャッターカーテン39とが分離して二重に配設さることとなり、通常の建物開口部21の開閉時には、シャッターカーテン39のみが昇降され、防潮板41は収納状態のままとなり、防潮板不使用時の見栄えを良くすることができる。
【0049】
図16は建物開口部閉鎖時を(a)、建物開口部開放時を(b)に示した水切板付防潮板の断面図である。
さらに、防潮板41は、図16(a)に示すように、最下部に連結される分割小板43の下部に、収納口31の面積より大きい相似形の水切板87が設けられてもよい。水切板87が設けられた防潮板41によれば、図16(b)に示す防潮板41の収納時に、収納部23の収納口31を水切板87によって塞ぐことができ、天井面25aに収納口31が開口したままとなる見栄えの低下を防止することができるとともに、防潮板41の過剰巻き込みによる繰り出し障害を防止することができる。
【0050】
したがって、上記の可撓式分割防潮板100によれば、防潮板が、上下方向に分割された複数の分割小板43と、この分割小板43同士を接触と離反の双方状態可能にするとともに少なくとも分割小板43同士を巻取曲率に可撓可能に接続する連結手段45とからなるので、巻取軸27の回転により連接部材を介して防潮板41を収納口31から引き込み、巻取軸27に巻き取ることができる。したがって、一般のシャッターカーテンと同様に、防潮板41を収納ケース23内に納めることができる。この結果、防潮板41が天井面25aから垂れ下がった状態で露出することがなくなり、見栄えを向上させることができる。また、従来の、天井高さの制約等により防潮板垂れ下げスペースを確保できない設置場所であっても、防潮板41が収納部23内に納められるので、防潮板41の設置を可能にすることができる。
【0051】
なお、上述した実施の形態では、変向軸27を巻取軸として構成し、連接部材39をシャッターカーテンとした構成として、このシャッターカーテン39を巻き取る構成として述べたが、変向軸としては、連接部材を収納する方向、すなわち収納部23内へと導くために内設されるものであることから、この変向軸27の位置で巻き取るのではなく、例えば天井面に沿ってシャッターカーテン等の連接部材39が収納される構成のものであってもよく、上述した巻き取りによる構成に限定されるのではない。そして、防潮板43が、可撓性を備える構造であることから、収納部内に導かれる方向で例えば湾曲することで収納状態となれば上記同様の効果が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は本発明に係る可撓式分割防潮板の正面図である。
【図2】図1のA−A矢視図である。
【図3】図1のB−B矢視図である。
【図4】巻取軸にシャッターカーテンと共に巻き取られた状態の防潮板の巻取軸直交方向の断面図である。
【図5】防潮板の非閉鎖時における断面図である。
【図6】蓋取付け状態を(a)、蓋取り外し状態を(b)に示した下部落込み溝の断面図である。
【図7】通常閉鎖時の防潮板の断面図である。
【図8】防潮時の防潮板の断面図である。
【図9】異なる高さの分割小板が組み合わされた防潮板を(a)、分割小板同士の間に段部を有する防潮板を(b)に示した変形例の説明図である。
【図10】押しつけ手段を備えた防潮板の側面図を(a)に、ガスケットの概略斜視図を(b)に示した説明図である。
【図11】図10のC−C矢視図である。
【図12】可撓性長体により巻き取られる防潮板の変形例を表す正面図である。
【図13】図12に示した防潮板の収納状態を表す巻取軸直交方向の断面図である。
【図14】グリルシャッターの下部に防潮板を取り付けた変形例の正面図である。
【図15】防潮板とシャッターカーテンとを2重構造で設けた変形例の断面図である。
【図16】建物開口部閉鎖時を(a)、建物開口部開放時を(b)に示した水切板付防潮板の断面図である。
【図17】従来の防潮板兼用シャッターの正面図である。
【図18】図17のD−D矢視図である。
【符号の説明】
【0053】
21…建物開口部
23…収納部(収納ケース)
25a…天井面
27…変向軸(巻取軸,第2巻取軸)
31…収納口
35…レール状ガイド手段(第2レール状ガイド手段)
37…床
39…連接部材(シャッターカーテン)
41…防潮板
43…分割小板
43A…昇降方向最下部の分割小板
45…連結手段
57…パッキン
59…水平面
61…垂直面
63…段部
65…内側当接面
67…押しつけ手段
69…端面
71…ローラ
73…傾斜面
75…押圧用突起
77…ガスケット
79…第1変向軸(第1巻取軸)
81…第1レール状ガイド手段
83…連接部材(可撓性長体)
87…水切板
100,200…可撓式分割防潮板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変向軸を内設し該変向軸に沿って長いスリット状の収納口を天井面に開口させた収納部と、建物開口部を挟み前記収納口の長手方向両端から床に亘って垂設される一対のレール状ガイド手段と、該レール状ガイド手段に長手方向両端がガイドされ前記変向軸によって前記収納部内へ収納される連接部材に上部が接続されることで前記建物開口部を昇降自在な防潮板と、を備える可撓式分割防潮板であって、
前記防潮板が、
上下方向に分割された複数の分割小板と、
上下で隣接する該分割小板同士を接触と離反の双方状態可能にするとともに、上下で隣接する分割小板同士を可撓可能に接続する連結手段と、
からなることを特徴とする可撓式分割防潮板。
【請求項2】
昇降方向最下部の前記分割小板は、上下方向の高さが他の分割小板より大きいことを特徴とする請求項1記載の可撓式分割防潮板。
【請求項3】
前記連接部材は、シャッターカーテンであることを特徴とする請求項1又は2記載の可撓式分割防潮板。
【請求項4】
上下で隣接する前記分割小板同士が、一対の水平面と、該一対の水平面同士を接続する垂直面とからなる段部同士を噛み合わせて接触することを特徴とする請求項1又は2又は3記載の可撓式分割防潮板。
【請求項5】
上下で隣接する前記分割小板同士は、少なくとも一方に設けられたパッキンを介して接触することを特徴とする請求項1,2,3,4のいずれか1つに記載の可撓式分割防潮板。
【請求項6】
前記分割小板のそれぞれを前記レール状ガイド手段の内側当接面に押しつけるとともに、前記分割小板の最下端の分割小板を前記レール状ガイド手段の内側当接面及び該一対のレール状ガイド手段に連続形成される床面の下部落込み溝の内側当接面に押しつける押しつけ手段を備え、
該押しつけ手段は、
前記分割小板の長手方向両端の端面に突設され長手方向に沿う軸回りで回転自在となったローラと、
前記レール状ガイド手段の内方に設けられ最下降位置直前の該ローラに接し該ローラを介して前記分割小板の両端を前記内側当接面へ向かって移動させる傾斜面を有した押圧用突起と、
前記各レール状ガイド手段及び下部落込み溝の内側当接面に設けられ前記各分割小板の両端及び最下端の分割小板の一面に密接するガスケットと、
からなることを特徴とする請求項1,2,3,4,5のいずれか1つに記載の可撓式分割防潮板。
【請求項7】
最下部に連結される前記分割小板の下部に、前記収納口の面積より大きい相似形の水切板が設けられたことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6のいずれか1つに記載の可撓式分割防潮板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−82012(P2008−82012A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−262763(P2006−262763)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000239714)文化シヤッター株式会社 (657)
【Fターム(参考)】