説明

可締め冶具

【課題】接合形材を構成する複数の中空形材間の接合箇所を容易に可締め、接合箇所を目視により確認できる可締め冶具を提供する。
【解決手段】複数の中空形材を接合してなる接合形材の接合箇所を可締めるための可締め冶具であって、一側アーム1と、他側アーム2と、一側アーム1と他側アーム2の間に介在する付勢部材3と、アーム支持部材26とからなる冶具本体11と、冶具本体11に取付可能な押圧手段4とを備えており、一側アーム1と他側アーム2は、隣りあう一の中空形材10aと他の中空形材10bの各々の中空部12内に挿通可能な大きさに形成してあり、一側アーム1と他側アーム2のアーム長手方向の他端部1b、2bには、対向面1c、2cから対向方向にそれぞれが突出した可締め凸部5を有し、可締め凸部5は、傾斜面を有する略三角形状をなすと共に、その傾斜面をアーム長手方向の一端部1a、2a側に向けてあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の中空形材を接合して大型の接合形材を構成するときに使用する可締め冶具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の中空形材を接合して表示パネルやカーポートの柱など、比較的大型の接合形材を構成するものがある。このような接合形材は、隣りあう押出形材間の接合箇所を可締めて接合状態を堅牢にする必要があった。また、特開平11−280175号公報に開示されるもののように、可締めたことを目視できるように、構成部品間の接合箇所に目視可能な刻印を残すものもあった。
【特許文献1】特開平11−280175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
複数の押出形材を接合して大型の形材を構成するときには、当然ながら接合箇所も多くなり、品質管理や安全性の面で、接合形材の製造過程の中で、すでに接合箇所を可締めたか否かの確認を要するものであった。ところが、中空形材同士を接合するときには、その可締めた箇所が中空形材の中空部の奥まった箇所に位置するため、冶具に比べて中空部が小さいと可締め冶具が適切な位置まで届かせられない不都合があり、また、なんとか接合箇所を可締めることができたとしても、中空形材の中空部の奥まった箇所では、四方を囲まれていることでどうしても内部が薄暗くなり、したがって、外から可締め痕が目視し難いことから、接合箇所が可締め済みか否かを確認しずらい不都合があった。
【0004】
本発明は以上に述べたような実情に鑑み、接合形材を構成する複数の中空形材間の接合箇所を容易に可締めることができると共に、接合箇所が可締め済みか否かを目視により容易且つ確実に確認できる可締め冶具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、複数の中空形材を接合してなる接合形材の接合箇所を可締めるための可締め冶具であって、一側アームと、他側アームと、一側アームと他側アームの間に介在する付勢部材と、アーム支持部材とからなる冶具本体と、冶具本体に取付可能な押圧手段とを備えており、一側アームと他側アームは、間隔をあけて略平行に配置してあり、一側アームは、アーム長手方向の一端部をアーム支持部材に固定してあると共に、他側アームは、アーム長手方向の一端部をアーム支持部材に一側アームと開閉自在となるように軸着してあり、一側アームと他側アームのアーム長手方向の他端部には、対向面から対向方向にそれぞれが突出した可締め凸部を有しており、押圧手段は、付勢部材の付勢力に逆らって他側アームを押圧し、一側アームと他側アームを閉じる方向に回動する位置に取り付けてあり、一側アームと他側アームは、隣りあう一の中空形材と他の中空形材の各々の中空部内に挿通可能な大きさに形成してあり、可締め凸部は、傾斜面を有する略三角形状をなすと共に、その傾斜面をアーム長手方向の一端部側に向けてあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、冶具本体の一側アーム及び他側アームは、間隔をあけて略平行に配置してあると共に、中空形材の中空部内に挿通可能な大きさに形成してあることにより、一側アームと他側アームを、一の中空形材と他の中空形材の各々の中空部の延長方向に対して垂直に挿入できるので、一側アームと他側アームの間に各中空形材間の接合箇所を挟んだ状態で可締め凸部を中空部の奥まで届かせることができる。さらに、本可締め冶具で中空形材間の接合箇所を可締めた後、可締め凸部の食い込みにより略V字状に残った可締め痕は、中空形材の中空部開放側に傾斜部を向けることで、接合形材の中空部内に差し込む光が中空部の外に向けて反射し、これにより、中空部内の他部から際立つ状態となるので、接合箇所が既に可締め済みか否かであることを外から容易に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の可締め冶具の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1(a)(b)はそれぞれ、本実施による可締め冶具の使用状態を示す一部を切欠した拡大側面図であり、(a)は、本実施による可締め冶具を中空形材の中空部に挿入したときの状態を示し、(b)は、隣り合う各中空形材間の接合箇所を本実施による可締め冶具で可締るときの状態を示すものである。図2(a)は、本実施による可締め冶具の全体を示す側面図であり、(b)は、(a)中Aを拡大して示す側面図であり、(c)は、本実施による可締め冶具の全体を示す正面図である。図3(a)は、本実施による可締め冶具で可締めた後の接合箇所にできた可締め痕を示す斜視図であり、(b)は、接合箇所の縦断面図である。図4は、本実施による可締め冶具を使用する接合形材を示す斜視図である。
【0008】
ここで、本実施による可締め冶具を用いる対象となる接合形材について説明すると、図4のように、略断面縦長矩形状をなす一の中空形材10aと他の中空形材10bを上下に連接したものである。また、各中空形材10a、10bの上下両端には、鉤状をなす係止部13aと被係止部13bがそれぞれ設けてあり、上下方向に隣りあう一の中空形材10aと他の中空形材10bの係止部13aと被係止部13bを係止して各中空形材10a、10b同士を接合することにより、パネル型の接合形材10を構成したものである。また、この接合形材10を構成する一の中空形材10aと他の中空形材10bの接合箇所18には、各中空形材10a、10bの中空部12と平行する方向に長い挿通孔14が形成され、その挿通孔14には芯棒15が挿通される。
【0009】
次に、本実施による可締め冶具は、図1(a)(b)及び図2のように、それぞれの対向面1c、2cに可締め凸部5を有する一側アーム1及び他側アーム2と、一側アーム1と他側アーム2の間に介在する付勢部材3とから冶具本体11を構成するものであり、冶具本体11は、一側アーム1と他側アーム2が開閉自在なクリップ型に形成してあり、付勢部材3の付勢力に逆らって、一側アーム1又は他側アーム2のいずれかを冶具本体11に取り付けた本実施の押圧手段となる電動油圧押圧工具4で押圧し、これにより、一側アーム1と他側アーム2の間に介在した各中空形材10a、10b間の接合箇所18を可締めるものである(図1(a)(b)参照)。
また、本実施による可締め冶具は、図2(a)のように、冶具本体11を、電動油圧押圧工具4のヘッド取付部16に取り付けるものであり、この電動油圧押圧工具4は、ハンドル部22と工具本体部21とからなる横向き略L字型をなしており、作業者がハンドル部22を手で握り、トリガスイッチ24を指で押して駆動状態とすることにより、バッテリ23から図示は省略するが、工具本体部21内にあるモーターに駆動電流が供給されて油圧ポンプが作動し、この油圧ポンプからの油圧が油圧シリンダに送られてピストンロッド20が冶具本体11側に進出して、冶具本体の他側アームの側壁部を押圧するものである。また、作業が終了すれば、トリガスイッチ24から指を離して、油圧解除弁を開き油圧を開放することにより、油圧シリンダのばねによって進出したピストンロッド20が工具本体部21側の元の位置に戻る仕様となっている。
尚、符号25は、補助ハンドルである。
【0010】
次に、冶具本体11について説明すると、図1(a)(b)に示すように、一側アーム1及び他側アーム2は、一方向に長い矩形ブロック状をなすと共に、各アーム1、2が上下に略平行に配置してあり、一側アーム1と他側アーム2のアーム長手方向の一端部1a、2aは、図2(c)のように、それぞれアーム支持部材26に取り付けてあり、アーム支持部材26は、一側アーム1及び他側アーム2の両側を挟む位置に配置する一対の各壁部で構成されており、アーム支持部材26の各壁部には、電動油圧押圧工具4のヘッド取付部16に取付可能なジョイント部26aを有している。また、一側アーム1の一端部1aは、アーム支持部材26の両壁部間に水平軸19で回動自在に軸着してあり、これにより、一側アーム1がアーム支持部材26の両壁部間の間隙Sにおいて上下に回動自在となっている(図2(c)参照)。そして、他側アーム2の一端部2aは、アーム支持部材26の両壁部間に固定ピン27で不動状態に固定してあり、一側アーム1が水平軸19を中心に回動することで、他側アーム2との間に介在してある各中空形材10a、10b同士の接合箇所18を挟むことができる。また、一側アーム1と他側アーム2は、アーム長手方向の一端部1a、2aから他端部1b、2bの所定の位置まで断面形状が略同一且つ均一な大きさになっており、これにより、一側アーム1と他側アーム2が、上記した接合形材10を構成する中空形材10a、10bの中空部12の奥まった位置まで挿通可能となる。
尚、符号30は、一側アーム1と他側アーム2が閉じる方向の回動を規制するストッパーである。
【0011】
一側アーム1と他側アーム2のアーム長手方向の他端部1b、2bの対向面1c、2cには、それぞれに凹部が設けてあり、この凹部には、複数の可締め凸部5を有するヘッド部材17が着脱可能に取り付けてある。可締め凸部5は、図2(b)のように、一側アーム1及び他側アーム2の長手方向に傾斜面5aを向ける鋭角な略三角形状をなすものであり、図3(b)のように、冶具本体11の一側アーム1を上記の隣り合う一の中空形材10aの中空部12に、他側アーム2を他の中空形材10bの中空部12にそれぞれ挿通し、さらに、一側アーム1と他側アーム2とで接合箇所18を可締めたときに、可締め凸部5が接合箇所18に食い込む。これにより、可締め凸部5により押圧変形した接合箇所18の形材壁部が挿通孔14内にある芯棒15の長手方向端面に圧接すると共に、接合箇所18の可締められた側には、図3(a)のように、可締め凸部5による可締め痕31が残る。この可締め痕31は、可締め凸部5の形状と略一致した略V字状、具体的には、中空形材10a、10b中空部12の両側の開放側12a、12aに傾斜部31aを配置した略V字状に窪む状態で残る。したがって、接合形材10の中空部12内に外の光が差し込んだときに、可締め痕31の傾斜部31aから中空部12開放側12aに向けて光が反射するので、中空部12の奥まった箇所にあり且つ薄暗く目視し難い可締め痕31が、中空部12内の他部から際立つことで外から容易に識別でき、これにより、接合箇所18が可締め済みか否かが容易に確認できる。
【0012】
本発明の可締め冶具は、本実施で示したパネル体のほか、柱、その他中空形材による接合形材の接合箇所に使用することができる。また、可締め凸部5は、本実施のものでは略二等辺三角形状をなすものについて示したが、可締め痕31の傾斜部31aを中空形材10a、10bの中空部12開放側12aに向けるものであればよいから、例えば、一方側のみが傾斜した略直角三角形状をなすものであってもよい。また、押圧手段についても、本実施例で示した電動油圧押圧工具4の他、一側アーム1と他側アーム2を閉じる方向に押圧できるものであれば何でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1(a)(b)】(a)は、本実施による可締め冶具を中空形材の中空部に差し込んだときの状態を示す側面図であり、(b)は、中空形材同士の接合箇所を可締め冶具で可締めるときの状態を示す側面図である。
【図2(a)(b)(c)】(a)は、本実施による可締め冶具の全体図を示す側面図であり、(b)は、(a)中Aを拡大して示す側面図であり、(c)は、本実施による可締め冶具の正面図である。
【図3(a)(b)】(a)は、本実施による可締め冶具により可締めた後の接合形材の可締め痕を示す斜視図であり、(b)は、接合箇所の縦断面図である。
【図4】本実施による可締め工具の使用対象となる接合形材の全体図である。
【符号の説明】
【0014】
1 一側アーム
2 他側アーム
1a、2a 一端部
1b、2b 他端部
1c、2c 対向面
3 付勢部材
4 電動油圧押圧工具(押圧手段)
5 可締め凸部
5a 傾斜面
10a 中空形材
11 冶具本体
12 中空部
26 アーム支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の中空形材を接合してなる接合形材の接合箇所を可締めるための可締め冶具であって、
一側アーム(1)と、他側アーム(2)と、一側アーム(1)と他側アーム(2)の間に介在する付勢部材(3)と、アーム支持部材(26)とからなる冶具本体(11)と、アーム支持部材(26)に取付可能な押圧手段(4)とを備えており、
一側アーム(1)と他側アーム(2)は、間隔をあけて略平行に配置してあり、一側アーム(1)は、アーム長手方向の一端部(1a)をアーム支持部材(26)に固定してあると共に、他側アーム(2)は、アーム長手方向の一端部(2a)をアーム支持部材(26)に一側アーム(1)と開閉自在となるように軸着してあり、一側アーム(1)と他側アーム(2)のアーム長手方向の他端部(1b、2b)には、両アーム(1、2)の対向面(1c、2c)から対向方向にそれぞれが突出した可締め凸部(5)を有しており、
押圧手段(4)は、アーム支持部材(26)に対して、付勢部材(3)の付勢力に逆らって他側アーム(2)を押圧し、一側アーム(1)と他側アーム(2)を閉じる方向に回動する位置に取り付けてあり、
一側アーム(1)と他側アーム(2)は、隣りあう一の中空形材(10a)と他の中空形材(10b)の各々の中空部(12)内に挿通可能な大きさに形成してあり、可締め凸部(5)は、傾斜面(5a)を有する略三角形状をなすと共に、その傾斜面(5a)をアーム長手方向の一端部(1a、2a)側に向けてあることを特徴とする可締め冶具。

【図1(a)(b)】
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【図2(a)(b)(c)】
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【図3(a)(b)】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−233740(P2009−233740A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86904(P2008−86904)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000004592)日本カーバイド工業株式会社 (165)
【出願人】(000112185)ビニフレーム工業株式会社 (53)
【出願人】(505398941)東日本高速道路株式会社 (66)
【出願人】(505398952)中日本高速道路株式会社 (94)
【出願人】(505398963)西日本高速道路株式会社 (105)
【出願人】(507194017)株式会社高速道路総合技術研究所 (33)