説明

可逆セルの運転制御方法

【課題】固体高分子形の水電解装置と燃料電池とを一体化させた可逆セルにおいて、運転モードの切り替えを安全、かつ確実に行い、効率の良い運転を実現する。
【解決手段】固体高分子形の水電解装置と燃料電池とを一体化させた可逆セル1において、水電解装置運転から燃料電池運転への運転モードの切り替えにあたって、可逆セル1内部の流路に不活性ガス供給源31から不活性ガスを供給して、可逆セル1の内部を乾燥させる。乾燥状況は、交流抵抗測定器35によって給・集電板2、3間の抵抗上昇に基づいて判断し、抵抗上昇値が適切な範囲内になったら、制御装置34がガスの供給を停止させ、以後燃料電池運転が開始される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子形の水電解装置(WE)と燃料電池(FC)とを一体化させた可逆セルの運転制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形の可逆セルとは、同形の水電解装置と燃料電池の機能を一体化させた機器であり、日本では、特許文献1に開示されているように、構成部材の最適化に関する研究が行われているが、現在のところ実用化までには至っていない。その理由としては、実用規模において、水電解装置と燃料電池という、正反対の物理現象を同一部材で成立させ、かつそれを制御することに対する技術的困難さが挙げられる。
【0003】
すなわち、運転モードの切替には、燃料電池運転→水電解装置運転の場合と、その逆の水電解装置運転→燃料電池運転の2つの場合がある。このうち、前者の燃料電池運転→水電解装置運転への切替時は、切替判断は格別不要である。つまりこの場合には、燃料電池運転で撥水性となっている可逆セルの内部基材、例えばイオン交換膜及び給/集電体を、水電解装置運転に必要な親水性に変える必要があるが、セル内部に電解水を供給するだけで容易にこれら内部基材は親水性となり、電極面に電解水が供給され水電解装置運転が可能なためである。
【0004】
しかし、後者の水電解装置運転→燃料電池運転への切替時には、適切な切替判断が必要である。これは水電解装置運転→燃料電池運転への切替時に、水電解装置運転で親水性となり、ガス透過性を失っている状態のセル内部基材に対して、反応ガスを供給しても、電極面まで十分なガスが供給されず燃料電池運転が不可能なためである。またたとえ部分的にガス透過性が回復しても、それ以外の部分は電極として有効に作用(反応)しないため、見かけ上の電極面積が減少したことになる。その結果、ガス透過性のある部分のみで集中的に反応が起こり、性能低下を招く。かかる場合、有効に作用する電極面積次第では、負荷運転開始直後に出力電圧の急降下が生じ、その反応に伴う温度上昇等により、イオン交換膜が乾燥し、水素ガスがH(プロトン)の状態ではなく、分子の状態でカソード側に透過(クロスリーク)し、その透過した水素ガスと、カソード側に供給される酸化剤ガスが電極上で反応すると爆発その他の燃焼が生じるため、イオン交換膜の破損を招く可能性もある。
【0005】
また燃料電池を運転している間、反応ガスの高利用率運転に伴うガス流速の低下や、高電流密度域での運転に伴う反応生成水の増加により、可逆セルや燃料電池のセル内部の水分(反応ガスと共に供給される水分や反応生成水等)が、セル外部にスムーズに排出されずセル内部に停滞し、給・集電体の濡れを生じたり、流路を塞いでしまうフラッディングと呼ばれる現象が発生することがある。
【0006】
フラッディングが発生すると、その部分のセル内部基材(イオン交換膜および給・集電体)が親水性となり、ガス透過性を失ってしまう。このとき、その状態のセル内部基材に対して反応ガスを供給しても、電極面までガスが供給されないため、ガス透過性を失った部分は電極として有効に作用(反応)せず、見かけ上の電極面積が減少したことになり、出力電圧の低下を招く。このとき、有効に作用する電極面積次第では、負荷運転中に出力電圧の急降下が生じ、その反応に伴う温度上昇によりイオン交換膜が乾燥し、水素ガスがH(プロトン)の状態ではなく、分子の状態でカソード側に透過(クロスリーク)し、その透過した水素ガスと、カソード側に供給される酸化剤ガスが電極上で反応すると爆発その他の燃焼が生じるため、やはりイオン交換膜の破損を招く可能性がある。
【0007】
固体高分子形の燃料電池のフラッディング対策として、現在はフラッディングを未然に防ぐことに重点がおかれているが、フラッディングが発生してからの対処については、セパレータ自体をヒータなどで加熱する方法が簡単であるが、これらの方法では、フラッディング対策を行う上でシステムの中に新たな機構を組み込む必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−134134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、固体高分子形の水電解装置(WE)と燃料電池(FC)とを一体化させた可逆セルにおいて、運転モードの切り替えを安全、かつ確実に行え、そして効率の良い運転を繰り返し実現するための制御方法を提供することを目的としている。また本発明考案では、フラッディングが発生してからの対策に、新たな機構を組み込まないで対処する方法も提案する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した現象を防ぐには、水電解装置運転終了後に可逆セルの内部基材を撥水性が回復するまで一旦乾燥させることにより、給・集電体のガス透過性を回復させ、電極面全てが有効に反応できる状態に戻す必要がある。しかし、同時にセル内部基材の1つであるイオン交換膜については、ある程度の湿潤状態を確保しておく必要もある。
【0011】
そこで本発明では、水電解装置運転と燃料電池運転との運転モードの切り替えが可能な固体高分子形の可逆セルにおいて、水電解装置から燃料電池への運転モードの切り替えにあたって、可逆セル内部を乾燥させ、前記可逆セルの内部のイオン交換膜の抵抗上昇値又はイオン交換膜表面の活量に基づいて前記運転モードの切り替えを行うことを特徴としている。
【0012】
このように可逆セル内部を乾燥させて、前記可逆セルの内部のイオン交換膜の抵抗上昇値又はイオン交換膜表面の活量に基づいて前記運転モードの切り替え制御を行うようにしたので、どこまで乾燥させれば有効電極面積の減少による性能低下を生じないかという、確実な切替が可能であり、かつどこまで乾燥させても乾燥させ過ぎによる前述のようなクロスリークが生じない、安全な切替が可能かの判断が可能となる。
【0013】
前記乾燥は、例えばセル内部、たとえば燃料ガスや酸化剤ガスの流路に不活性ガスを供給することによって行うことができる。またかかる場合、可逆セル内部への不活性ガスの供給方向は、次回からの乾燥の際には、適宜供給方向を変えるようにしてもよい。例えば上方から供給、下方から排出した場合、次回からは交互にあるいは適当な回数ごとに、下方から供給、上方から排出する。これによって、乾燥の偏りを防止することができる。
【0014】
また前記乾燥は、可逆セル本体を加熱による蒸発、冷却による凝縮によって行ってもよい。加熱は、例えば可逆セル内部に流れる冷却水の温度を上昇させればよい。また冷却は、例えばいわゆる水冷式では冷却水の温度を低下させて供給することで(例えば60℃→40℃以下)可逆セル内部に残留した水分を凝縮させることで乾燥が行える。この場合、冷却水の温度を調節することによって、乾燥速度等を制御できる。
【0015】
また前記乾燥状況の判断は、可逆セルの出口ガス温度を求め、そのときの供給ガス流量及び流路内部のガス圧力とから出口ガス温度での飽和水蒸気量を求めることにより、セル内部からの蒸発水分量を求めることによっても可能である。
【0016】
さらに前記乾燥状況の判断は、可逆セルの内部から排出される物質量、例えば蒸発した水分、凝縮して液化したドレン(例えば水)の量に基づいて行うことができる。
【0017】
さらにまた前記乾燥は、可逆セルを水電解装置運転の運転モードを実施して行ってもよい。可逆セルを水電解装置運転することで、バルブを閉じていわば空焚きすることになり、可逆セル内部の水を、酸素と水素に分解して乾燥させることができる。可逆セルに対してそのような空焚きの水電解装置運転を実施して前記乾燥を行った場合には、水電解装置運転の運転モードにおいて生成されるガス、つまり酸素と水素の積算量に基づいて乾燥状況を把握して判断することができる。
【0018】
以上3つの判断方法のいずれかを採用すれば、徒な通電の防止、不十分な状態での燃料電池運転を適切に防止できる。つまり効率的な運転と装置寿命の伸長を実現することができる。
【0019】
なお前記した乾燥状況の判断は、いずれも予め所定の値、つまり燃料電池運転を開始するのに適した値、範囲を求めておき、この範囲に入った際に燃料電池運転を開始するようにすればよい。こうすることで、汎用化、自動化、規格化した可逆セルや燃料電池を提供できる。
【0020】
一方フラッディングについてみれば、ただこの現象への対策をするということだけでは、フラッディング発生時に燃料電池運転を中止し、セル内部基材を撥水性が回復するまで一旦乾燥させることにより、給・集電体のガス透過性を回復させ、電極面全てが有効に反応できる状態に戻せばよい。しかしながら、同時にセル内部基材の1つであるイオン交換膜については、ある程度の湿潤状態を確保しておくことが必要である。
【0021】
そこで本発明では、水電解装置運転と燃料電池運転との運転モードの切り替えが可能な固体高分子形の可逆セルにおいて、燃料電池運転中に、可逆セル内部にフラッディングが生じ、出力電圧が著しく低下した場合や運転の継続が危険となった場合に、燃料電池運転を停止して、可逆セル内部を乾燥させ、前記可逆セルの内部のイオン交換膜の抵抗上昇値又はイオン交換膜表面の活量に基づいて燃料電池運転を再開するようにした。
【0022】
これによって、フラッディングが生じ、出力電圧が著しく低下した場合や運転の継続が危険となった場合に、燃料電池の運転を停止してどこまで乾燥させれば確実に運転が再開でき、かつどこまで乾燥させても安全に燃料電池運転が再開できるかの判断が可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、固体高分子形の水電解装置と燃料電池とを一体化させた可逆セルにおいて、運転モードの切り替えを安全、かつ確実に行え、そして効率の良い運転を繰り返し実現することが可能である。またフラッディングに対しても、新たな機構を組み込まないで対処することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施の形態で用いた可逆セルの内部構造を模式的に示した説明図である。
【図2】実施の形態で用いた可逆セルの部分拡大水平断面図である。
【図3】水電解装置運転時の可逆セル周りのガス流通状況を示す説明図である。
【図4】燃料電池運転時の可逆セル周りのガス流通状況を示す説明図である。
【図5】不活性ガスを供給して乾燥運転しているときの可逆セル周りのガス流通状況を示す説明図である。
【図6】水電解装置運転から燃料電池運転への切り替えた後の燃料電池の出力安定性を示すグラフである。
【図7】膜表面の活量と給・集電板間抵抗上昇値との関係を示すグラフである。
【図8】可逆セル内部の蒸発水分量と給・集電板間抵抗上昇値との関係を示すグラフである。
【図9】不活性ガス供給条件による最短切替可能時間を示すグラフである。
【図10】加熱によって乾燥運転しているときの可逆セル周りのガス流通状況を示す説明図である。
【図11】冷却によって乾燥運転しているときの可逆セル周りのガス流通状況を示す説明図である。
【図12】水電解運転によって乾燥運転しているときの可逆セル周りのガス流通状況を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、可逆セル1の内部を模式的に示しており、図2は、この可逆セル1の水平断面を示している。この可逆セル1は、図2に示したように、最も外側に、各々給・集電板2、3が配置され、給・集電板2、3間の中心には、2枚の電極触媒層によって構成される電極部4a、4a間に、固体電解質材料によって構成されるイオン交換膜4bが配置されて、複合化した発電ユニットであるMEA4が配置されている。各電極触媒層4aの外側には、各々給・集電体5、6が配置されている。給・集電体5、6は例えば多孔質の材料からなる。なお作図と説明の都合上、図1は単セルを図示しているが、実用に供する可逆セルは、給・集電板2、3間に、数十〜数百の単セルが配置されており、これらが給・集電板2、3の外側に各々位置するエンドプレート(図示せず)によって、挟持され、締め付けられている。
【0026】
そして給・集電体5と給・集電板2との間には空間S1が形成され、給・集電体6と給・集電板3との間には空間S2が形成されている。各空間S1、S2内には、各々断面が波型のセパレータ7が各々配置されている。そしてこの可逆セルは水冷方式による冷却方法を採用しており、空間S1に配置されたセパレータ7によって、空間S1には、冷却水流路11と流路12が交互に形成されている。一方、空間S2に配置されたセパレータ7によって、空間S2にも、冷却水流路13と流路14が交互に形成されている。冷却水は、冷却水流路11とヒートポンプ介装の恒温水槽(図示せず)や冷却塔(図示せず)を循環し、可逆セル1の入り口で例えば60℃を維持するように運転される。
【0027】
再び図1に戻ってさらに説明すると、流路12の両端部には、流通口12a、12bが形成され、流路14の両端部には、流通口14a、14bが形成されている。
【0028】
そしてイオン交換膜4bと給・集電体5との境界面には、カソード(水電解運転時)の電極部4aが形成され、イオン交換膜4bと給・集電体6との境界面には、アノード(水電解運転時)の電極部4aが形成されている。
【0029】
可逆セル1における燃料ガス等の流路構成は、図3に示したようになっている。すなわち、これらの流路は例えばステンレス鋼の配管によって構成され、流通口12aには、流路F1が接続され、流通口14aには、流路F2が接続され、流通口14bには、流路F3が接続され、流通口12bには、流路F4が接続されている。またこれら各流路F1〜F4には、各々さらに分岐した流路F5〜F8が接続されている。そして各流路F1〜F8には、各々対応する流路を開閉するバルブV1〜V8が設けられている。
【0030】
そしてかかる構成の可逆セル1を水電解運転するときは、図3に示したように、バルブV1〜V4を開放し(他のバルブは閉鎖)、流路F3、F4から電解水を供給し、給・集電板2、3に対して外部電源から電力を供給することにより、電解水は電気分解され、純水素と純酸素とが発生する。そして純水素は流通口12aから流路F1を流れて可逆セル1から排出され、純酸素は流通口14aから流路F2を流れて可逆セル1から排出される。図3中、(G)はガス状、(L)は液体状であることを示している。なお流路F1から排出される水素ガス、流路F2から排出される酸素ガスは、実際の運転の際に使用されるHOが微量なため(数パーセントが分解されるのみである)、これらのガスは水の中の気泡として存在しているため、便宜上(G、L)として記載している。
また流路F3には必ずしも電解水を供給する必要はなく、流路F4にのみこれを供給しておけば運転は可能である。すなわち原料ガスの供給側配管は1本とし、あるいは流路F3、流路F4に各々配管して、1本のみをONしてもよい。
【0031】
一方この可逆セル1を燃料電池運転する際には、図4に示したように、バルブV1、V2、V7、V8を開放し(他のバルブは閉鎖)し、可逆セル1に対して、流通口12aには、加湿した燃料ガス(水素ガス)を供給し、流通口14aには、加湿した酸化剤ガス(酸素)を供給することで可逆セル1で電力が発生し、給・集電板2、3からこれを取り出して、負荷に供給することができる。なお反応の結果発生した水については、カソード側は流通口12bから流路F8を流れて可逆セル1から排出され、アノード側は流通口14bから流路F7を流れて可逆セル1から排出される。なお合流管または分岐管としての流路F3、F4、F5、F6は加湿用タンクに連通している。
【0032】
さらに可逆セル1内の流路12、14には、不活性ガス供給ルートが付加されている。すなわち図1に示したように、流路F5、F6には、不活性ガス供給源31からの不活性ガス、例えば窒素ガスが、バルブ32、マスフローコントローラ33を介して、供給路36を介して供給可能である。
【0033】
前記バルブ32、マスフローコントローラ33は、制御装置34によって制御される。すなわち、給・集電板2、3に交流抵抗測定器35が接続されており、この交流抵抗測定器35によって測定された給・集電板2、3の抵抗値に基づいて、制御装置34は、バルブ32、マスフローコントローラ33を制御する。なおこのバルブ32は、図3〜図5においては、バルブV5、V6に相当する。
【0034】
可逆セル1、及びその周辺の流路、主たる機器構成は以上のようになっており、水電解運転から燃料電池運転に切り替える際には、可逆セル1の内部は完全に濡れ状態になっているので、そのままでは燃料電池運転ができないので、可逆セル1の内部を乾燥させる必要がある。
【0035】
したがってまず、水電解運転終了後、図5に示したように、バルブV1〜V4を閉鎖し、他のバルブV5〜8を開放させ、図1に示したように、不活性ガス供給源31から不活性ガスを流路12、14内に供給する。これによって、流路12、14内の水は排水され、可逆セル1内部が乾燥される。
【0036】
このとき可逆セル1の給・集電板2、3間の抵抗値を交流抵抗測定器35により測定し、セル内部が完全湿潤状態での抵抗値を基準として、不活性ガスを供給することにより生じる抵抗上昇値(=イオン交換膜の抵抗上昇値)から、セル内部の乾燥状況を判断する。
【0037】
そして、抵抗上昇値が規定の範囲内に入れば、図4に示したように、バルブV5、V6を閉鎖し、次いで燃料電池運転を開始するために、バルブV1、V2を開放して、加湿した反応ガス(燃料ガス、酸化剤ガス)の供給を開始する。
【0038】
発明者らが実験した具体的な抵抗上昇値の範囲については図6に示したとおりである。この図は、水電解運転終了後に不活性ガスにより可逆セル1の内部基材を乾燥させ、イオン交換膜の抵抗値をある値まで上昇させてから、不活性ガスの供給を停止し、燃料電池運転(電流密度:0.1→0.2A/cm)を開始したときの出力電圧値の安定性を確認した結果を示している。図中に示す数字(単位面積あたりの抵抗値:mΩ・cm)が乾燥により上昇させたイオン交換膜の抵抗値を示し、実線が負荷運転中の出力電圧値を示す。
【0039】
この図より、傾きが上昇、下降していないもの、すなわち抵抗上昇値が50〜1500[mΩ・cm]の範囲を安全な切替が可能であると考えられる。但し、これ以外の範囲でも切替は可能であるが、抵抗上昇値が50[mΩ・cm]未満のときは、経時変化に伴い出力電圧値が低下するため可逆セル1の内部基材の乾燥が不十分であり、また2000[mΩ・cm]以上の範囲では、切替は可能であるが、負荷運転開始直後の電圧降下が大きく、イオン交換膜を破損する可能性があるため、上記で規定した範囲内で、加湿ガスを供給することが望ましい。
【0040】
これによって、水電解装置運転から燃料電池運転への運転モードの切り替えを安全、かつ確実に行うことができ、また効率の良い運転を実現することが可能である。
【0041】
不活性ガスの供給による乾燥は、前記した例では、流路12、14の上方から供給し、下方から排出するようにしていたが、これを繰り返すと、次第に可逆セル1の内部、特に給・集電体5、6において、上方側のみが乾燥しやすくなって、全体としての抵抗上昇値が適切範囲内にあっても、下方側で適切な乾燥状態になっていない場合が生ずるおそれがある。その場合には、燃料電池運転の効率が低下してしまう。
【0042】
これを防止するため、可逆セル1内部への不活性ガスの供給方向を、前回とは逆方向、すなわち流路12、14の下方から上方へと供給し、以後たとえば不活性ガスの供給方向を交互にしたり、あるいは適当な回数ごとに、逆方向から供給するようにすればよい。かかる場合、例えば不活性ガスの供給路として使用した流路F5のバルブV5の上流側に、流路F8と接続されるバイパス流路(図示せず)を設け、また不活性ガスの供給路として使用した流路F6のバルブV6の上流側に、流路F7と接続されるにバイパス流路(図示せず)を設け、各々バルブV5、V8を閉鎖し、バルブV6、V7を開放することで、流路12、14の下方から上方へと不活性ガスを供給することが可能である。
【0043】
なお、イオン交換膜の抵抗値と、イオン交換膜表面の活量とは相関を有することから、図7に示したように、安全な切替運転が可能なイオン交換膜の抵抗上昇範囲をイオン交換膜表面の活量範囲に換算して、表現することも可能である。これによれば、水電解装置運転から燃料電池運転への運転モードの切り替えに好ましい活量の値は0.12〜0.83である。したがって適宜のパソコンによって、イオン交換膜の抵抗値からイオン交換膜表面の活量を算出し、それによって得られたイオン活量に基づいて乾燥状況を判断したり、不活性ガスの制御を行うようにしてもよい。
【0044】
ところで、前記した例ではイオン交換膜4bの抵抗値の上昇を乾燥の判断基準としていたが、これに代えて可逆セル1の出口ガス温度を求め、そのときの供給ガス流量と流路内の圧力とから出口ガス温度での飽和水蒸気量を求めることにより、セル内部からの蒸発水分量を求めるようにしてもよい。
【0045】
すなわち、図8は不活性ガスによる乾燥条件(流量:mPG、可逆セル1本体温度:TPG)を変化させたときの、物質移動による蒸発水分量と可逆セル1の給・集電板2、3間の抵抗上昇値(完全湿潤時基準)を示しているが、この図より、乾燥条件によらず蒸発水分量と可逆セル1の給・集電板2、3間の抵抗上昇値には相関があることがわかる。そして可逆セル1の給・集電板2、3間の抵抗が上昇し始める蒸発水分量は、給・集電体5、6が完全湿潤時に保有する水分量と一致することにより、先に述べたように給・集電板2、3間の抵抗上昇が、イオン交換膜4bの抵抗上昇を表すことがわかる。なお図8中、PPGは流路内の圧力である。
【0046】
したがって前記したように、イオン交換膜4bの抵抗上昇を測定することに代えて、可逆セル1の出口ガス温度、つまり図1の例では、流通口12b、14bの温度、及び流路12、14の圧力を求め、それから飽和水蒸気量を求めることにより、可逆セル1内部からの蒸発水分量を求めるようにしてもよい。
【0047】
蒸発水分量は、不活性ガスの供給温度とその流量、流路内のガス圧力、そのときの可逆セル1本体温度の関係から、下記に示した「管内流の助走区間における層流熱伝達の式(壁温一定)」により、流通口12b、14bのガス温度を求め、その温度における飽和水蒸気圧とガス分圧、及び不活性ガスの供給流量から飽和水蒸気量を求め、その値を蒸発水分量とすることができる。すなわち、運転切替時において、
セル内部のガス圧力 :P[Pa]
セル出口でのガス温度 :TOUT[℃]
OUTでの飽和水蒸気圧 :PH2O、TOUT[Pa]
不活性ガスの流量 :MPG[mol/s]
蒸発水分量 :MH2O[mol/s]
とすると、蒸発水分量:MH2Oは、次式で表される。
H2O={PH2O、TOUT/(P−PH2O、TOUT)}×MPG
【0048】
「管内流の助走区間における層流熱伝達の式(壁温一定)」
加熱開始点からの距離:x、円管の直径:d、円管入口の流体温度:Tinとするとき、混合平均温度Tm(x+)は次式で求められる。
【0049】
【数1】

【0050】
また以上のことから、可逆セル1内部の乾燥は次の2つステップに分けられることがわかる。1つは、給・集電体5、6乾燥ステップであり、このときは未だイオン交換膜4bの抵抗上昇は生じない。もう1つは、イオン交換膜4b乾燥ステップであり、このイオン交換膜4bが乾燥し始めることにより、イオン交換膜4bの抵抗上昇が生じる。ここで各々の乾燥における蒸発水分量に着目すると、給・集電体5、6は、完全湿潤状態での給・集電体5、6が保有する水分量を可逆セル1に組み込む前に測定しておくことで、イオン交換膜4bの抵抗が上昇し始めるまでの蒸発水分量がわかる。
【0051】
またイオン交換膜4bについては、蒸発水分量とイオン交換膜4bの抵抗上昇値との相関から、膜抵抗上昇を所定の値とするための蒸発水分量がわかる。この双方の蒸発水分量の和と乾燥条件(不活性ガス供給温度とその流量、流路内のガス圧力(圧力が変わるとそれに伴って水蒸気分圧が変わるため)、可逆セル1の温度)から、前記した蒸発水分量の算出方法に基づいて、水電解装置運転から燃料電池運転への切替所要時間の算出が可能になる。すなわち、可逆セル1を水電解装置運転から燃料電池運転へ切り替えるための所要時間を事前に知ることができる。
すなわち既述した蒸発水分量を求めた際の運転切替条件において、
膜抵抗を所定の値とするための蒸発水分量:M[mol]
運転切替所要時間:t[s]
とすると、運転所要時間:tは、次式で表される。
t=M/MH2O
【0052】
このことを利用すれば、運転切替時の可逆セル1の本体温度と、不活性ガスの供給温度、流量、圧力を変化させることにより、切替所要時間を任意に操作することが可能となる。逆に切替所要時間を指定したとき、その時間内に切替を完了させるための切替条件を導くことも可能である。
【0053】
発明者が実際に図1、図2、図5の可逆セル1を用いて可逆セル1の温度を、60℃、70℃、78℃の場合に、不活性ガスの流量を変化させた際に、切り替え可能な最短時間を調べたところ、図9に示したような結果が得られた。
これからもわかるように、可逆セル1の本体温度と、不活性ガスの流量を変化させることにより、切り替え可能時間を制御することが可能であり、また不活性ガスの温度を変えても同様な結果が得られることが推認できる。
【0054】
前記した例では、可逆セル1内部の乾燥を、可逆セル1内部に不活性ガスを供給することで行っていたが、これに代えて可逆セル1を加熱または冷却して行ってもよい。
【0055】
可逆セル1を加熱、冷却するには、たとえば冷却水流路11、13内を流れる冷却水の温度を上昇、下降させればよい。冷却水の温度を上昇、例えば通常運転時より10℃〜20℃高くさせることにより(例えば60℃→70℃〜80℃)、可逆セル1全体の温度が上昇し、可逆セル1内部の水分は蒸発して、図10に示したように、流通口12a、流路F1、流通口14a、流路F2を介して可逆セル1から外部へと排出される。また冷却水の温度を下降させることにより(例えば60℃→40℃)、可逆セル1全体の温度が低下し、可逆セル1内部の水分は凝縮して、図11に示したように、流通口12b、流路F8、流通口14b、流路F7を介して可逆セル1から外部へと排出される。これによって、可逆セル1の内部を乾燥させることができる。これらの場合、いずれも水分の排出を効率よくかつ迅速に行うために、前記したような不活性ガスの供給を併用してもよい。さらには、冷却水の供給を停止し、常温の水(例えば水道水など)や空調用冷水で熱交換したものをその代わりに用いてもよい。
【0056】
なおその他、可逆セル1を加熱、冷却するには、他の手段、たとえば温風、冷風を可逆セル1に対して外側から供給する方式としてもよい。かかる場合、セパレータ7に適宜のフィンを設ければ好ましい。
【0057】
なお前記したような可逆セル1内部の乾燥を、加熱、冷却によって行った場合でも、乾燥状況の判断は、既述したイオン交換膜4bの抵抗上昇値や活量に基づいて行ってもよいが、乾燥の際に排出した蒸発水や凝縮水の量を測定し、これによって判断してもよい。すなわち既述したように、完全湿潤状態の給・集電体5、6が保有する水分量及びイオン交換膜の蒸発水分量は、イオン交換膜の抵抗上昇値と相関があることから、イオン交換膜の抵抗上昇値が「安全な切替が可能となる範囲」に相当する蒸発水分量の範囲を求め、可逆セル1内部から排出される水分量がその範囲であるときに、可逆セル1の本体温度を燃料電池運転に変更すればよい。かかる場合、イオン交換膜4bの抵抗上昇値と、可逆セル1内部から排出される水分量の双方を計測することにより、より確実な乾燥状況の判断が可能になる。また切り替え所要時間の算出についても、両者の値を併せて用いることにより、より精度の高い所要時間を算出することができる。
【0058】
さらにまた可逆セル1内部を乾燥させる方法として、可逆セル1を水電解装置運転の運転モードを実施して行ってもよい。すなわち水電解装置運転終了後、図12に示したように、バルブV3、4を閉鎖して電解水の供給を停止し、バルブV7、8を開放して可逆セル1内部の電解水を排水する。その後再度水電解装置運転を開始し、セル内部の基材に残留した電解水を純水素/純酸素ガスに分解し排出することで、可逆セル1内部の乾燥を行う。
【0059】
なお既述したように、イオン交換膜4bの抵抗上昇値と、蒸発水分量とは相関を有しているが、この蒸発水分量は前記した乾燥目的として実施した水電解装置運転時に分解した水分量に相当するため、水電解装置運転によって発生した精製ガスである純水素/純酸素ガスの積算量を測定することによっても、乾燥状況を判断することができるから、それによって切替の判断が可能である。また「安全な運転が可能となる範囲」に相当する蒸発水分量を求めれば、その量を電気分解すればよいため、印加する電力を調整することで、切替所要時間を任意に選択することが可能である。もちろん交流抵抗測定器35によるイオン交換膜4bの抵抗上昇値と併用してもよい。
【0060】
ところで、固体高分子形の燃料電池において、運転中のセル内部で反応ガスとともに供給される水分や、反応生成水がセル外部にスムーズに排出されなくなると、セル内部基材に濡れ(フラッディング)が生じる。この現象が発生すると、反応面に反応ガスが供給されなくなり出力電圧の低下が生じ、さらにこれが進むと運転を継続することすら不可能となる。
【0061】
本発明は、かかるフラッディングに対処することが可能である。すなわちフラッディングは、反応ガスの高利用率運転に伴うガス流速の低下や、高電流密度域での運転に伴う反応生成水の増加により、セル内部の水分(反応ガスと共に供給される水分や反応生成水等)がセル外部にスムーズに排出されずセル内部に停滞することが原因で、前記した可逆セル1に即して説明すれば、給・集電体5、6の濡れを生じたり、流路を塞いでしまう現象である。そしてフラッディングが発生すると、その部分のセル内部基材であるイオン交換膜4b、給・集電体5、6が親水性となり、ガス透過性を失ってしまう。
【0062】
このとき、その状態のセル内部基材に対して反応ガスを供給しても、電極部15、16までガスが供給されないため、ガス透過性を失った部分は電極として有効に作用(反応)せず、見かけ上の電極面積が減少したことになり、出力電圧の低下を招き、結局水電解装置運転→燃料電池運転への切替時の際に発生する乾燥不適切状態のときと同様に、クロスリークやイオン交換膜の破損を招く可能性もある。
【0063】
この現象に適切に対処するためには、フラッディング発生時に燃料電池運転を中止し、セル内部基材を撥水性が回復するまで一旦乾燥させることにより、給・集電体5、6のガス透過性を回復させ、電極面全てが有効に反応できる状態に戻す必要がある。しかし、同時に可逆セル1の内部基材の1つであるイオン交換膜4bについては、ある程度の湿潤状態を確保しておく必要もある。そのため、セル内部基材が燃料電池運転可能な状態かどうかを判断するための判断基準がやはり必要となる。
【0064】
したがって、既述した水電解装置運転→燃料電池運転への運転切替時に行った不活性ガスの可逆セル1内部への供給時に採用した乾燥状況の判断手法であるイオン交換膜4bの抵抗上昇値に基づいて判断すればよい。なおこのときの基準は、フラッディング発生時を基準として抵抗上昇値を測定すればよい。
【0065】
より具体的にいえば、フラッディングが発生したら図5に示したように、バルブV1〜V4を閉鎖して反応ガス供給を停止し、不活性ガス供給源31から不活性ガスを流路12、14内に供給する。これによって、流路12、14内の水は排水され、可逆セル1内部が乾燥される。後は交流抵抗測定器35によって測定されるイオン交換膜4bの抵抗上昇値が、既述した所定の適切な範囲になったら、不活性ガスの供給を停止し、以後再び燃料電池運転を行えばよい。
なおフラッディングに対して採ったかかる手法は、上記した可逆セルの場合だけではなく、固体分子型の燃料電池についてもそのまま適用することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 可逆セル
2、3 給・集電板
4 MEA
4a 電極触媒層
4b イオン交換膜
5、6 給・集電体
11、13 冷却水流路
12、14 流路
12a、12b、14a、14b 流通口
31 不活性ガス供給源
33 マスフローコントローラ
34 制御装置
35 交流抵抗測定器
F1〜F8 流路
V1〜V8 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水電解装置運転と燃料電池運転との運転モードの切り替えが可能な固体高分子形の可逆セルにおいて、
水電解装置運転から燃料電池運転への運転モードの切り替えにあたって、
可逆セル内部を乾燥させ、
前記可逆セルの内部のイオン交換膜の抵抗上昇値又はイオン交換膜表面の活量に基づいて前記運転モードの切り替えを行うことを特徴とする、可逆セルの運転制御方法。
【請求項2】
水電解装置運転と燃料電池運転との運転モードの切り替えが可能な固体高分子形の可逆セルにおいて、
水電解装置運転から燃料電池運転への運転モードの切り替えにあたって、可逆セル内部に不活性ガスを供給することによって可逆セル内部を乾燥させ、
前記乾燥状況の判断は、可逆セルの出口ガス温度を求め、そのときの供給ガス流量と流路内のガス圧力とから出口ガス温度での飽和水蒸気量を求めることにより、セル内部からの蒸発水分量を求めることで行ない、
当該乾燥状況に基づいて前記運転モードの切り替えを行うことを特徴とする、可逆セルの運転制御方法。
【請求項3】
水電解装置運転と燃料電池運転との運転モードの切り替えが可能な固体高分子形の可逆セルにおいて、
水電解装置運転から燃料電池運転への運転モードの切り替えにあたって、
可逆セル本体を加熱又は冷却することによって、可逆セル内部を乾燥させ、
前記乾燥状況の判断は、可逆セルの内部から排出される物質量に基づいて行ない、
当該乾燥状況に基づいて前記運転モードの切り替えを行うことを特徴とする、可逆セルの運転制御方法。
【請求項4】
水電解装置運転と燃料電池運転との運転モードの切り替えが可能な固体高分子形の可逆セルにおいて、
水電解装置運転から燃料電池運転への運転モードの切り替えにあたって、
水電解装置運転における電解水の供給を停止した状態で、可逆セルを水電解装置運転を実施して、可逆セル内部を乾燥させ、
前記乾燥状況の判断を、乾燥目的で行われる水電解装置運転の運転モードにおいて精製されるガスの積算量に基づいて行ない、
当該乾燥状況に基づいて前記運転モードの切り替えを行うことを特徴とする、可逆セルの運転制御方法。
【請求項5】
前記抵抗上昇値が50〜1500[mΩ・cm]のときに、水電解装置運転から燃料電池運転への運転モードの切り替えが行われることを特徴とする、請求項1に記載の可逆セルの運転制御方法。
【請求項6】
水電解装置運転と燃料電池運転との運転モードの切り替えが可能な固体高分子形の可逆セルにおいて、
燃料電池運転中に、可逆セル内部にフラッディングが生じた場合に、
燃料電池運転を停止して、可逆セル内部を乾燥させ、
前記可逆セルの内部のイオン交換膜の抵抗上昇値又はイオン交換膜表面の活量に基づいて、燃料電池運転を再開することを特徴とする、可逆セルの運転制御方法。
【請求項7】
前記抵抗上昇値が50〜1500[mΩ・cm]のときに、燃料電池運転を再開することを特徴とする、請求項6に記載の可逆セルの運転制御方法。
【請求項8】
前記乾燥は、可逆セル内部に不活性ガスを供給することによって行われることを特徴とする、請求項1、5、6または7のいずれかに記載の可逆セルの運転制御方法。
【請求項9】
前記乾燥は、可逆セル本体を加熱又は冷却することで行われることを特徴とする、請求項1、5、6または7のいずれかに記載の可逆セルの運転制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−146395(P2011−146395A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48603(P2011−48603)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【分割の表示】特願2004−311443(P2004−311443)の分割
【原出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年5月26日 社団法人日本伝熱学会主催の「第41回 日本伝熱シンポジウム」において文書をもって発表
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000169499)高砂熱学工業株式会社 (287)
【出願人】(000101374)アタカ大機株式会社 (55)
【Fターム(参考)】