説明

可逆性感熱記録材料の洗浄方法および洗浄装置

【課題】洗浄装置での洗浄と画像の形成および消去を繰り返して行った際にも、明瞭なコントラストで高精細な画像を多数回に渡って安定的に形成することが可能となる可逆性感熱記録材料の洗浄方法、および洗浄装置を提供する。
【解決手段】可逆性感熱記録材料の記録面を、液滴を吐出する吐出手段から吐出された洗浄液により洗浄し、該洗浄液が付着した可逆性感熱記録材料を最初にニップする搬送ロールとして、洗浄液を洗い流す濯ぎロールを用いて可逆性感熱記録材料を搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可逆性感熱記録材料の洗浄方法および洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可逆性感熱記録材料の用途としては、工場や物流倉庫等での工程管理や部品管理に利用される指示書としての用途があり、指示書に汚れが生じた場合には洗浄装置を用いて洗浄することが一般に行われる。このような可逆性感熱記録材料の洗浄装置としては、上下対をなすロール間にシート状物を通して洗浄する装置が提案されている(例えば、特許文献1〜4)。
【0003】
この種の洗浄装置を用い効果的に洗浄するために、界面活性剤等を含む洗浄液が用いられる。一般的な洗浄液の成分は可逆性感熱記録材料の発色を阻害する作用(以下、減感作用と呼ぶ)を有する場合が多いが、実用化されている可逆性感熱記録材料は、記録層の上に耐水性の保護層を有しているため、洗浄液が単に付着した程度では、発色濃度の低下は起こらない。しかし、従来から知られる洗浄装置での洗浄と画像の形成および消去を繰り返し行うと、次第に可逆性感熱記録材料の発色濃度が低下し、バーコードやQRコード等の判読が困難になるという問題があった。
【0004】
従来から知られる洗浄装置においては、比較的大量の洗浄液を記録面側に付着させた状態で、可逆性感熱記録材料を搬送ロール対により搬送する。しかし繰り返し使用される可逆性感熱記録材料には、保護層表面の傷、折り曲げよるクラック、更に多数回の印字消去で加わる熱履歴が原因で発生する保護層表面のクラック等が生じている場合が多く、傷やクラックが生じた可逆性感熱記録材料の記録面に、比較的大量の洗浄液を記録面に付着させた状態で、可逆性感熱記録材料を搬送ロール対によりニップすると、洗浄液は保護層を通過し感熱記録層に達する場合がある。このような理由から、従来から知られる洗浄装置での洗浄と画像の形成および消去を繰り返し行うと、次第に可逆性感熱記録材料の発色濃度が低下し、バーコードやQRコード等の判読が困難になるという問題が生じた。
【0005】
このような問題に対して、繰り返し洗浄した後の発色濃度の低下の少ない洗浄液が提案されている(例えば、特許文献5〜7)。しかし、このような洗浄液を用いた場合においても、洗浄を繰り返し行うことによる発色濃度の低下は免れない。
【0006】
一方、可逆性感熱記録材料の用途としては、上記した指示書以外にも、順番待ち等で使用される番号券としての用途が挙げられる。例えば銀行等では、客の順番を整理する目的で感熱紙による番号券が配布されていたが、このような番号券は一度きりの使用でゴミになるため、繰り返し使用可能な可逆性感熱記録材料の利用が求められている。
【0007】
可逆性感熱記録材料を番号券に用いる場合は、不特定多数の人の手に触れることが想定されるため、衛生上の観点から一回毎にエタノール等の洗浄液(消毒液)を使って洗浄することが好ましい。しかしこのような場合においても従来から知られる洗浄方法では、減感作用が生じてしまい、改善が求められていた。
【0008】
他方、配線基板の洗浄にインクジェット方式で洗浄液を吐出して洗浄し、配線基板を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献8〜11)。しかしながらインクジェット方式により少量の洗浄液で可逆性感熱記録材料を洗浄しても減感作用が生じる場合があり、改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−112584号公報
【特許文献2】特開2007−209870号公報
【特許文献3】特開2009−220054号公報
【特許文献4】特開2006−263622 号公報
【特許文献5】特開2007−169320号公報
【特許文献6】特開2007−261121号公報
【特許文献7】特開2008−132734号公報
【特許文献8】特開2004−327487号公報
【特許文献9】特開2005−44866号公報
【特許文献10】特開2006−108218号公報
【特許文献11】特開2007−11100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、洗浄装置での洗浄と画像の形成および消去を繰り返して行った際にも、明瞭なコントラストで高精細な画像を多数回に渡って安定的に形成することが可能な可逆性感熱記録材料の洗浄方法、および可逆性感熱記録材料の洗浄装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記課題は以下の発明により解決された。
(1)可逆性感熱記録材料の記録面を、液滴を吐出する吐出手段から吐出された洗浄液により洗浄し、該洗浄液が付着した可逆性感熱記録材料を最初にニップする搬送ロールとして、洗浄液を洗い流す濯ぎロールを用いて可逆性感熱記録材料を搬送することを特徴とする可逆性感熱記録材料の洗浄方法。
(2)少なくとも1種類の洗浄液を液滴として吐出する洗浄液吐出手段、および洗浄液が付着した可逆性感熱記録材料を最初にニップする搬送ロールとして洗浄液を洗い流す濯ぎロールを少なくとも備えた可逆性感熱記録材料の洗浄装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、洗浄装置での洗浄と画像の形成および消去を繰り返して行った際にも、明瞭なコントラストで高精細な画像を多数回に渡って安定的に形成することが可能な可逆性感熱記録材料の洗浄方法、および可逆性感熱記録材料の洗浄装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係わる洗浄装置の基本概略構成の一例を示す側面図である。
【図2】図1の洗浄装置において、可逆性感熱記録材料を洗浄している状態を示す側面図である。
【図3】ライン状に複数の洗浄液タンクを配置した場合の基本概略構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の洗浄方法および洗浄装置について詳細に説明する。
【0015】
本発明の洗浄方法の特徴は、微細な洗浄液の液滴を吐出することが可能な洗浄液吐出手段を用いて、記録面に必要最少量の洗浄液を塗布すること、および該洗浄液が付着した可逆性感熱記録材料を最初にニップする搬送ロールとして洗浄液を洗い流す濯ぎロールを用いて可逆性感熱記録材料を搬送することにより、傷やクラックが生じる可逆性感熱記録材料の記録面に、比較的大量の洗浄液が記録面に付着した状態で可逆性感熱記録材料を搬送ロール対によりニップすることを回避し、結果、可逆性感熱記録材料の記録面に傷やクラックが生じていても、減感作用を軽減し、明瞭なコントラストで高精細な画像を多数回に渡って安定的に形成することが可能な可逆性感熱記録材料の洗浄方法、および可逆性感熱記録材料の洗浄装置を見出したものである。
【0016】
本発明に関わる洗浄液を液滴として吐出する洗浄液吐出手段としては、インクジェット方式を用いることができる。洗浄液を液滴で供給する方法では必要な場所に必要な量の洗浄液を供給できるという利点がある。一般に繰り返し使用される可逆性感熱記録材料の記録面は、サーマルヘッドが蓄熱しやすい条件で印字された部分に傷やクラックが入りやすい。このような印字条件の例としては、背景を印字部とし、画像部を非印字部とするネガ画像(以下、ネガ画像という)や太字部分および印字の際の搬送方向と平行な罫線等が挙げられる。このような傷やクラックが入った箇所は熱的負荷が高く減感作用が生じ易いため、洗浄液を液滴として吐出する洗浄液吐出手段としてインクジェット方式を用いることにより、このような部分的には選択的に洗浄液を塗布しないことも可能となる。逆に、印字装置の搬送ローラーの接触する部分は汚れやすいため、この部分の洗浄液を多くすることも可能となる。
【0017】
以下、本発明の洗浄装置を実施するための形態について、図1、図2、図3に例示した概略構成図を参照しながら具体的に説明する。
【0018】
図1は本発明の実施形態に係わる洗浄装置の基本概略構成の一例を示す側面図である。図1の洗浄装置は可逆性感熱記録材料を洗浄装置内に送る搬送ロール11、洗浄液吐出手段20、洗浄液タンク21、洗浄液吐出手段20に対向し可逆性感熱記録材料を支持する支持ロール12、洗浄液が付着した可逆性感熱記録材料を最初にニップし洗浄液を洗い流す濯ぎロール13a、13b、液パン30、水滴を拭き取るための拭き取りロール14を備える。
【0019】
洗浄液吐出手段20に対向し可逆性感熱記録材料を支持する支持ロール12には吸水性の素材を利用することが好ましい。支持ロール12を吸水性とすることで、洗浄液吐出手段20から吐出された洗浄液を、支持ロール20に予め吸収させておくことが可能になる。これにより可逆性感熱記録材料の記録面の洗浄を開始する前に、洗浄液吐出手段20から吐出された洗浄液を、支持ロール12に予め吸収させておくと、一度の洗浄作業で両面を同時に洗浄することが可能となるため好ましい。また裏面は印字装置の搬送ローラーと接触する部分が特に汚れやすい。従って、裏面の汚れやすい位置と接触する支持ロール12の位置に洗浄液を多く吐出することで、少量の洗浄液で汚れやすい部分を効率よく洗浄することも可能となる。
【0020】
まず、図1により洗浄装置内に被洗浄物(可逆性感熱記録材料)がない場合について説明する。洗浄液は、洗浄液タンク21から洗浄液吐出手段20に供給され、図示しない制御手段からの信号を受けて、裏面の汚れの位置に対応した支持ロール12の当該箇所に洗浄液を吐出する。このとき、支持ロール12には、回転させながら、液ダレしない範囲で洗浄液を染み込ませることが好ましい。液パン30には、必要に応じて室温〜80℃の水を入れることが可能であり、加温するためのヒーターを備えても良い。洗浄液が付着した可逆性感熱記録材料を最初にニップし洗浄液を洗い流す濯ぎロール13a、13b、13cはそれぞれ接触しており、可逆性感熱記録材料の搬送方向に各濯ぎロールを回転させて、濯ぎロール13cから濯ぎロール13bを介して濯ぎロール13aに水が届くように各ロールの間隔を調整することが望ましい。
【0021】
また図1では液パン30内の貯留された水を供給する機構を示したが、濯ぎロール13a、13bには例えばシャワー方式を利用して濯ぎ水を供給しても良い。
【0022】
図2は図1の洗浄装置において、可逆性感熱記録材料を洗浄している状態を示す側面図である。図示しない制御手段からの信号、あるいは可逆性感熱記録材料100の検知センサー(図示していない)の信号により、搬送ロール11が回転して可逆性感熱記録材料100が装置内に送られる。このとき、可逆性感熱記録材料100は、記録面を上にした状態で搬送させる。洗浄液吐出手段20は、制御手段からの信号を受けて、記録面の必要な位置に洗浄液を吐出させる。洗浄液の吐出条件は、予め設定しておき、条件に応じて洗浄液の液滴サイズおよび吐出量を制御しながら洗浄液を塗布することができる。また制御手段から、任意に吐出条件を変更することができる。
【0023】
上記した記録面の洗浄が行われると同時に可逆性感熱記録材料100の裏面では、吸水性の支持ロール12により洗浄液が塗布される。このとき、支持ロール12は、搬送ロール11と同期して回転しても良いが、静止状態または逆方向に回転しても良く、回転数も制御手段から任意に設定することができる。
【0024】
本発明においては、傷やクラックが生じる可逆性感熱記録材料の記録面に、比較的高い濃度、あるいは比較的大量の洗浄液を記録面に付着させた状態で可逆性感熱記録材料を搬送ロール対によりニップすることを回避する。このために本発明の可逆性感熱記録材料の洗浄方法においては、微細な洗浄液の液滴を吐出することが可能な洗浄液吐出手段20を用いて、記録面に必要最少量の洗浄液を塗布し、該洗浄液が付着した可逆性感熱記録材料を最初にニップする搬送ロールとして洗浄液を洗い流す濯ぎロール13a、13bを用いて、可逆性感熱記録材料100を搬送する。
【0025】
洗浄液や、洗浄液の作用により可逆性感熱記録材料表面から浮いた汚れは、前記した濯ぎロール13aや13bで除去されるが、一度の濯ぎで洗浄液または汚れの除去が不十分になる場合や洗浄を高速に行う場合は、濯ぎロール13a、13b、13cおよび液パン30と同様の機構を連続して増設しても良い。また液パン30にはヒーター等の加温機構を設けても良い。濯ぎに温水を用いることで、洗浄および濯ぎと同時に画像の消去も可能となる。画像の消去を行う場合は、温水を80〜90℃に加熱しておくことが好ましい。
【0026】
濯ぎロール13aや13bを通過した可逆性感熱記録材料100は、表面に残った水滴や洗浄液成分を、次の拭き取り工程で除去することができる。拭き取り工程は、例えば一対の拭き取りロール14の間を通過させることにより行うことができる。拭き取りロール14は支持ロール12と同様に吸水性のロールであることが好ましい。洗浄を高速に行う場合等で拭き取りが不十分になる場合は、同様の拭き取り工程を後工程に連続して増設しても良い。また、乾燥をより確実にするために、拭き取り行程の後工程に送風設備やヒーター設備を設けても良い。
【0027】
図1および図2の洗浄装置は、エタノール等のアルコール溶液を洗浄液として用いて、可逆性感熱記録材料表裏面の消毒を目的に洗浄することも可能である。
【0028】
図3はライン状に複数の洗浄液タンク21を配置した場合の基本概略構成を示す側面図である。図3の洗浄液タンク21および洗浄液吐出手段20は4つに分かれており、それぞれ異なる洗浄液を別々に吐出することが可能であり、例えば汚れの種類に応じて任意の洗浄液を選択する、あるいは任意の洗浄液の組み合わせを選択することが可能となる。また洗浄液タンク21の何れか1つに、例えば水を投入しておくことで、任意の濃度の洗浄液での洗浄が可能となる。例えば界面活性剤の入った洗浄液と希釈用の水の入った洗浄液を別々のタンクに入れることで、支持ロール12に染み込ませる洗浄液と記録面に直接吐出する洗浄液の濃度を変えることが可能となる。
【0029】
本発明に関わる微細な洗浄液の液滴を吐出する洗浄液吐出手段20としては、インクジェット方式を好ましく用いることができる。インクジェット方式とは、インクジェットプリンターで実用化されている液滴の吐出方法であり、コンティニュアス型とオンデマンド型に分類できる。
【0030】
コンティニュアス方式とは、液滴を連続的に飛翔させ、電気的な力で飛翔進路を偏向させることにより、塗布に必要な液滴のみを被塗布面に着弾させ、残りの液滴を回収して繰り返し利用することを特徴とした液滴の吐出方式である。特徴としては、ポンプによる高い圧力で液を押し出すので高粘度の液が使用でき、また、連続的に液を押し出すことから速乾性の液も使用できるなど液の選択幅が広い。大量の被塗布物を高速に処理する場合に適している。
【0031】
オンデマンド方式とは、塗布する液体を必要なときに必要な量の液滴を吐出する方式である。特徴としては、構造が簡単で小型化やマルチヘッド化がしやすいなどの長所がある。家庭用のインクジェットプリンターは、ほぼすべてオンデマンド型である。オンデマンド型は液滴に圧力を加える方法により、ピエゾ方式・サーマル方式・静電方式に分けられる。
【0032】
ピエゾ方式とは、電圧を加えると変形するピエゾ素子(圧電素子)を用いた方式である。ピエゾ素子を液の詰まった微細管に取り付け、このピエゾ素子に電圧を加えて変形させることで液を管外へと吐出させる。ピエゾの変形量そのものを電圧制御するため、液の吐出量や液滴サイズを精密に制御できる。
【0033】
サーマル方式とは、加熱により管内の液に気泡を発生させて液を噴射する方式である。サーマル方式では液の詰まった微細管の一部にヒーターを取り付け、これを瞬時に加熱することで液内に気泡を発生させて液を吐出させる。加熱に使用するヒーターは抵抗加熱、誘導加熱などを利用することができる。
【0034】
静電方式とは管に連通する液室の底面を弾性変位可能な振動板とし、この振動板に対して一定のギャップで対向電極を配置し、振動板と対向電極の間に駆動電圧パルスを印加して両者の間に発生する静電力により液室の容積変化を起こさせることで液を吐出させる方式である。
【0035】
本発明に用いる洗浄液吐出手段20としては、コンティニュアス方式またはオンデマンド方式の何れの吐出方式も用いることができる。数百枚〜数千枚の可逆性感熱記録材料を連続して洗浄する用途では、安定して高速に吐出することが可能なコンティニュアス方式が適している。一方、一度に洗浄する枚数が数十枚から数百枚の場合は、小型化しやすく、必要なときに必要な量の洗浄液を吐出するオンデマンド方式が適している。オンデマンド方式としては、シリアルヘッド方式、ラインヘッド方式の何れの方式も用いることが可能であるが、高速に処理することが可能なラインヘッド方式が好ましい。
【0036】
洗浄液の液滴の大きさとしては、1ピコリットル〜10ピコリットルが好ましく、洗浄液の種類、汚れの度合いに応じて洗浄液の液滴の大きさおよび吐出量を任意に変えることができる。液滴の大きさは液吐出方法、液吐出ノズルの径、洗浄液の表面張力等により調整することができる。塗布量をコントロールするには、液滴の大きさはより小さいほうが好ましい。しかし、液滴を小さくするために液吐出ノズルの径を小さくしすぎるとノズルが詰まりやすくなるため、液吐出ノズルの径としては20μm〜50μmが好ましく、液滴の大きさとしては、2ピコリットル〜5ピコリットルが好ましい。
【0037】
本発明に係わる洗浄液としては、水道水、蒸留水、イオン交換水、アルコール、水またはアルコールに界面活性剤、防腐剤、金属イオン封止剤、アルキレングリコールを含有させた洗浄液等を用いることができる。
【0038】
支持ロール12としては、親水性の軟質多孔質ロールが好ましい。親水性の軟質多孔質ロールとしては、弾性を有する軟質多孔質素材から構成させることが好ましく、更に、洗浄液としてアルコール等の溶剤を使用可能とするために、耐溶剤性であることがより好ましい。具体的には、スポンジロール、不織布製ロールが挙げられる。スポンジロールのスポンジ材質としては、ポリウレタン、ポリビニルアセタール等を用いることができる。不織布製ロールの具体例としては、極細繊維の不織布シートをロールに巻きつけたものや極細繊維をロールに絡ませたものが好ましい。
【0039】
支持ロール12の平均気孔径としては、10μm以上が好ましい。平均気孔径が10μmに満たないと一度吸収した洗浄液が外に出にくくなり、被洗浄物への洗浄液の供給が不十分になる。一方、平均気孔径が2000μmを超える場合は、被洗浄物への洗浄液の供給が不均一になるため、好ましい平均気孔径は10〜2000μm、より好ましくは50〜1000μmである。
【0040】
本発明は上記した可逆性感熱記録材料の洗浄方法および可逆性感熱記録材料の洗浄装置により、洗浄装置での洗浄と画像の形成および消去を繰り返して行った際にも、明瞭なコントラストで高精細な画像を多数回に渡って安定的に形成することが可能となる。この事は以下の実施例からも支持される。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例で説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
実施例1
組立工程の指示書として1年間、利用された可逆性感熱記録材料を、図1の洗浄装置を利用して洗浄した。洗浄液にはノニオン系界面活性剤を5質量%含有する水溶液を用い、洗浄液吐出手段20から吐出させた洗浄液は5ピコリットルの液滴である。記録面に供給した洗浄液量は約1.4g/mであり、支持ロール12(気孔径700μm、気孔率90%)には、予め約1g吸収させた。液パン30には水を入れ、記録面と裏面を同時に洗浄した。
【0043】
比較例1
図1の洗浄装置に代わり、図1の洗浄装置において、支持ロール12と、濯ぎロール13a、13bとの間に、一対の搬送ロールを追加した洗浄装置B(ただし追加した一対の搬送ロールと支持ロール12間の長さは、図1の支持ロール12と、濯ぎロール13a、13b間の長さと同じ)を準備した。この洗浄装置Bを用いて、実施例1と同様の条件で利用された可逆性感熱記録材料の記録面と裏面を洗浄した。この時、洗浄液が付着した可逆性感熱記録材料は、拭き取りロールによって強くニップされた。
【0044】
[評価]
実施例1および比較例1の可逆性感熱記録材料を洗浄後に一度消去し、再び消去前と同じバーコード画像を印字した。この洗浄、消去、印字の作業を100回繰り返した。この結果、図1の洗浄装置で洗浄された可逆性感熱記録材料は洗浄前と比較してバーコード画像の発色濃度の低下が見られず、バーコードの読み取り機によるデータの読み取りが可能であった。それに対し洗浄装置Bで洗浄された可逆性感熱記録材料は、洗浄液の減感作用によりバーコード画像の発色濃度が低く、更に、バーコード読み取り機によるデータの読み取りができなかった。
【0045】
以上の結果から本発明により、洗浄装置での洗浄と画像の形成および消去を繰り返して行った際にも、明瞭なコントラストで高精細な画像を多数回に渡って安定的に形成することが可能となることが判る。
【符号の説明】
【0046】
11 搬送ロール
12 支持ロール
13a、13b 濯ぎロール
14 拭き取りロール
20 洗浄液吐出手段
21 洗浄液タンク
30 液パン
100 可逆性感熱記録材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可逆性感熱記録材料の記録面を、液滴を吐出する吐出手段から吐出された洗浄液により洗浄し、該洗浄液が付着した可逆性感熱記録材料を最初にニップする搬送ロールとして、洗浄液を洗い流す濯ぎロールを用いて可逆性感熱記録材料を搬送することを特徴とする可逆性感熱記録材料の洗浄方法。
【請求項2】
少なくとも1種類の洗浄液を液滴として吐出する洗浄液吐出手段、および洗浄液が付着した可逆性感熱記録材料を最初にニップする搬送ロールとして洗浄液を洗い流す濯ぎロールを少なくとも備えた可逆性感熱記録材料の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−196855(P2012−196855A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62105(P2011−62105)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】