説明

可逆的感熱記録媒体およびその製造方法

【課題】柔軟性を保ちながら、繰り返し使用しても反りがなく、プリンタ搬送性が良好な可逆的感熱記録媒体を提供する。
【解決手段】可逆的感熱記録層5を有するリライト層3、不織布含有ホットメルト層9およびウレタンエラストマー層11が順に積層されている可逆的感熱記録媒体1である。不織布含有ホットメルト層9は、不織布をホットメルト層で挟んで熱プレスすることにより得られ、不織布繊維13がホットメルト層の中に分散され溶着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱により、繰り返し記録、消去が可能な可逆的感熱記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
可逆的感熱記録媒体は、容易に書き換え可能な表示媒体として、種々の分野で使用されている。例えば工場や物流等において、荷物にバーコードの情報を表示したり、ICチップを備えてICタグとして利用することにより、作業者が容易に識別可能であることから、現場指示書やカンバンとして工場管理等に多く用いられる。
可逆的感熱記録媒体は、プリンタ等を使用し、熱により、繰り返し記録、消去して使用することから、プリンタ搬送性が良好であり、繰り返し熱を加えても変形しない(反らない)性質が求められている。また折り曲げに対する耐久性を考慮すると柔軟性を併せ持つことが必要である。
【0003】
一般に可逆的感熱記録媒体は、支持体に可逆的感熱記録層が設けられて構成され、多くの場合支持体は、ポリエチレンテレフタレートなどに代表されるプラスチックフィルムが使用されることが多いが、ポリエチレンテレフタレートからなる支持体は、熱を加えると大きく反る性質がある。
可逆的感熱記録媒体については、従来種々の提案がなされており、例えば媒体の折れ、曲がり、変形に対する耐久性を改善することを目的として、熱可塑性エラストマー等のエラスティックな成分を含む素材を支持体とする方法が提案されている(特許文献1を参照)。しかしながら、この方法は、媒体の折れや曲がりに対する耐久性は良好であるものの、使用時の熱による反りの改善が得られるものではなかった。
また、非接触ICカードに用いる例として、可逆的感熱記録層、基材、ホットメルト層、ICチップ等が挟まれた不織布層、基材を積層して構成する方法が提案されている(特許文献2を参照)。この方法もまた、使用時の熱による反りの改善が得られるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−276546号公報
【特許文献2】特開2000−251042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたもので、柔軟性を保ちながら、繰り返し使用しても反りがなく、プリンタ搬送性が良好な可逆的感熱記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本願は以下の発明を提供するものである。
(1)可逆的感熱記録層を有するリライト層と、不織布を含有するホットメルト層と、ウレタンエラストマー層とを順に積層してなることを特徴とする可逆的感熱記録媒体。
(2)可逆的感熱記録層を有するリライト層と、第1のホットメルト層と、不織布層と、第2のホットメルト層と、ウレタンエラストマー層とを順に積層してなることを特徴とする可逆的感熱記録媒体。
(3)可逆的感熱記録層を有するリライト層と、ホットメルト層と、ウレタンエラストマー層とが順に積層してなることを特徴とする可逆的感熱記録媒体。
(4)前記ウレタンエラストマー層は、前記ホットメルト層側と反対側の面が凹凸に加工されていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の可逆的感熱記録媒体。
(5)前記凹凸は、シルク印刷により形成されていることを特徴とする(4)記載の可逆的感熱記録媒体。
(6)前記凹凸の凸部が、前記可逆的感熱記録媒体の辺方向に対して互い違いに設けられていることを特徴とする(4)または(5)に記載の可逆的感熱記録媒体。
(7)前記ホットメルト層中に、ICチップと、前記ICチップに接続されたアンテナとを有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の可逆的感熱記録媒体。
(8)可逆的感熱記録層を有するリライト層と、第1のホットメルト層と、不織布層と、第2のホットメルト層と、ウレタンエラストマー層とを順に積層する工程と、前記リライト層と、前記第1のホットメルト層と、前記不織布層と、前記第2のホットメルト層と、前記ウレタンエラストマー層とを熱プレスする工程とを備えることを特徴とする可逆的感熱記録媒体の製造方法。
(9)可逆的感熱記録層を有するリライト層と、ホットメルト層と、ウレタンエラストマー層とを順に積層する工程と、前記リライト層と、前記ホットメルト層と、前記ウレタンエラストマー層とを熱プレスする工程と、前記ウレタンエラストマー層の前記ホットメルト層側と反対側の面に、シルク印刷により凸部を形成する工程とを備えることを特徴とする可逆的感熱記録媒体の製造方法。
【0007】
なお、(2)の「可逆的感熱記録層を有するリライト層と、第1のホットメルト層と、不織布層と、第2のホットメルト層と、ウレタンエラストマー層とを順に積層してなることを特徴とする可逆的感熱記録媒体」とは、これらの層を単に積層したのみで、熱プレスを行わない記録媒体と、不織布層の一部のみがホットメルト層に分散する程度に熱プレスした記録媒体(第2の実施形態に対応)の両方を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、柔軟性を保ちながら、繰り返し使用しても反りがなく、プリンタ搬送性が良好な可逆的感熱記録媒体およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態における可逆的感熱記録媒体を示す概略断面図。
【図2】第1の実施形態における製造方法の説明図。
【図3】第1の実施形態における可逆的感熱記録媒体の他の例を示す概略断面図。
【図4】第2の実施形態における可逆的感熱記録媒体を示す概略断面図。
【図5】第3の実施形態における可逆的感熱記録媒体を示す概略断面図。
【図6】ICチップ入り可逆的感熱記録媒体を示す概略断面図。
【図7】サーマルプリンタによる可逆的感熱記録媒体への印字を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
尚、各図において同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における可逆的感熱記録媒体1の概略断面図である。
可逆的感熱記録媒体1は、リライト層3、不織布含有ホットメルト層9、ウレタンエラストマー層11が順に積層されている。
【0012】
リライト層3は、支持体7上に可逆性で再書き込み消去可能な可逆的感熱記録層5を有する。
【0013】
支持体7には、例えば白色のポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムを使用することができる。
【0014】
支持体7の面には、熱可逆性感熱記録剤による可逆的感熱記録層5が形成されている。可逆的感熱記録層5は熱可逆性感熱記録剤を塗工したものが一般的であるが、薄層の熱可逆性感熱記録フィルムをラミネートしたものであっても構わない。一般には、180°C以上で発色し、130°C〜170°Cの消去温度で消去させるものが多く使用されている。
可逆的感熱記録層5を塗工する場合は、支持体7に対してグラビア印刷等により行う。支持体7に密着性向上のため下引き層(場合によりプライマー層)を塗工し、その面に、ロイコ染料からなる可逆性感熱記録剤を塗工することにより可逆的感熱記録層5を形成する。可逆的感熱記録層5の厚みは、1μm〜10μm程度である。通常、可逆的感熱記録層5の面には、さらに保護層を設ける。
【0015】
ロイコ染料を使用した可逆性感熱記録剤は、分子構造内にラクトン環をもち電子放出によりラクトン環の開環により発色を示す電子供与性呈色性化合物(ロイコ染料)が可逆性感熱記録剤として使用されている。可逆性感熱記録剤にも各種の用法があるが、ロイコ染料と酸・塩基化合物からなる顕減色剤を主成分とし、これをバインダー中に分散したものが一般的に使用されている。この記録方法は、顕減色剤として分子内に水酸基またはカルボキシル基からなる酸性基とアミノ基からなる塩基性基を合わせ持ち、水素イオンを可逆的に放出できる性質をもつ有機物質を用いることにより、ロイコ染料のラクトン環が熱条件の違いで開環し、閉環する変化を利用して可逆的に発色及び消色を行うものである。繰り返し回数特性、画像安定性を向上させるために保護層を設けること、染料および顕減色剤をマイクロカプセル化することも行われている。
【0016】
従来、ロイコ染料と顕減色剤からなる可逆性感熱記録剤は、経時的な濃度の低下や消色が不完全となりコントラストが低下する、繰り返し使用耐久性に劣る、等の問題があったが、近年では特性が改善され、鮮明な色彩とコントラスト、耐久性を有する材料が得られるようになってきている。これらの材料は、ラクトン環の開環温度と閉環温度が異なるものというよりは、加熱により発色反応と消色反応が並行して生じ、発色反応の反応速度が消色反応の反応速度よりも飛躍的に大きいため、瞬間的な加熱では発色反応のみが認められることになる。一方、長時間(長時間といっても数百ミリ秒)の加熱では平衡状態になるがこの平衡状態は消色状態である場合と考えられる。可逆性感熱記録剤では、この特性を考慮して、サーマルヘッドの加熱条件を設定する必要がある。
【0017】
使用するロイコ染料は特に限定されるものではないが、クリスタルバイオレットラクトン、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−インドリノ−3−p−ジメチルアミノフェニル−6−ジメチルアミノフタリド等のフタリド化合物、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−キシリジノフルオラン等のフルオラン化合物などを使用することができる。
【0018】
顕減色剤としては、フェノール性水酸基またはカルボキシル基からなる酸性基とアミノ基からなる塩基性基の双方を有する化合物で、熱エネルギーの違いにより酸性または塩基性となって、ロイコ染料を発色・消色させるもの、あるいは上述の平衡状態を実現できる材料が使用できる。例えば、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシサリチル酸、没食子酸、等の酸と脂肪属アミン類、フェニルアルキルアミン類、トリルアルキルアミン類等の塩基との塩または錯塩が挙げられる。
【0019】
また、可逆性感熱記録剤は、水または有機溶剤に溶解する高分子材料をバインダーとして使用することができ、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール、ゼラチン、アラビアゴム、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。繰り返し特性や耐熱性を高めるためには熱硬化性樹脂や耐熱性樹脂の使用が好ましい。
【0020】
リライト層3の印字は、サーマルヘッドを有するサーマルプリンタで印字することができる。サーマルプリンタにより、リライト層3は、まず所定の加熱温度で全面または部分的に走査し書き込まれていた元の画像を消去する。消去の場合は書込みの場合よりは長い加熱時間(各消去箇所において数百ミリ秒〜1秒程度)が必要であり、サーマルヘッドをやや緩慢に走査する必要がある。書換え可能表示部に対する書込みは、消去よりも短時間(数ミリ〜数十ミリ秒)で行うことができる。書込みは、サーマルヘッドを走査することにより行う。
【0021】
リライト層3の厚さは、目的に応じて適宜選択することができるが、85〜135μmが好ましい。
【0022】
不織布含有ホットメルト層9は、ホットメルト層中に不織布繊維13が含まれている。
【0023】
不織布含有ホットメルト層9は、図2に示すように、不織布層17を上下からホットメルト層15、19で挟み、可逆的感熱記録媒体1を製造する際の熱プレスによりホットメルト層15、19が不織布層17に浸透し、不織布層17を構成していた不織布繊維13が、ホットメルト層15、19内に分散することにより得られる。不織布含有ホットメルト層9の厚さは、特に限定するものではないが、100μm以上あることが好ましい。
【0024】
ウレタンエラストマー層11は、ウレタン系熱可塑性エラストマーからなり、ポリエステル系、ポリエーテル系等いずれも使用可能である。
ウレタンエラストマー層11の厚さは、特に限定するものではないが、50〜150μmが好ましい。
【0025】
可逆的感熱記録媒体1の製造方法について説明する。
可逆的感熱記録媒体1は、図2に示すように、リライト層3、ホットメルト層15、不織布層17、ホットメルト層19、ウレタンエラストマー層11を順に積層し、熱プレスすることにより製造される。ここでは、不織布層17をホットメルト層15、19で挟んで熱プレスする例を示したが、ホットメルト層15、19はどちらか一方だけ用いてもよい。
【0026】
ホットメルト層15、19に用いる材料としては、エチレン酢酸ビニル共重合物系、アクリレート共重合物系、ポリオレフィン共重合物系等のホットメルト樹脂が使用可能であるが、エチレン酢酸ビニル共重合物系(以下「EVA」と略す)の樹脂が特に好ましい。
ホットメルト層15、19の厚さは、特に限定するものではないが、50μm〜150μmが好ましく、特に好ましくは100μm程度である。
【0027】
不織布層17は、熱プレス時の温度で溶けないものであればよく、ポリアミド系、ポリエステル系、ビニロン系等の不織布が使用可能で特に制限するものではないが、ポリエステル系の不織布であることが好ましい。また特に限定するものではないが、乾式またはスパンボンドにより製造された不織布が特に好ましい。不織布層17は目付量として、20〜50g/mであるものが好適に使用可能である。
【0028】
熱プレス時の加熱温度は、ホットメルト層15、19の材質等により適宜選択することが好ましいが、例えば、ホットメルト層15、19としてEVAを用いる場合は、85〜110℃の範囲で設定することが好ましい。85℃より低いと、EVAの軟化が十分ではなく、110℃を越えるとリライト層3が化学変化する恐れがある。
【0029】
熱プレスにおける圧力および時間は、特に限定するものではないが、不織布層17が残らずに、不織布層17の繊維がホットメルト層15、19に完全に分散し、一つの不織布含有ホットメルト層9を形成する条件であることが必要である。圧力は0.05MPa〜0.2MPaの範囲で設定されることが特に好ましい。0.05MPa以下では、不織布層17のホットメルト層への分散が不十分となる可能性があり、0.2MPa以上では、リライト層3の可逆的感熱記録層5が変質して印字濃度が損なわれるとなる可能性がある。不織布層17の繊維がホットメルト層15、19に完全に取り込まれるには、適度な圧力で時間をかけて熱プレスすることが有効であり、例えば、100℃で加熱する場合、圧力0.1MPaで90分程度である。
【0030】
可逆的感熱記録媒体を、サーマルプリンタを使用して消去または印字を行う機構を説明する。図7は、サーマルプリンタによる可逆的感熱記録媒体への印字を説明する図である。図7において、サーマルプリンタは概略断面を示されており、可逆的感熱記録媒体には「ABC」の印字が消去され、「DEF」が印字されている。サーマルプリンタ61は、感熱記録媒体の搬送機構と、リライト層の印字を消去する消去ヘッド65と、リライト層に印字する印字ヘッド67を有する。搬送機構は、主に搬送ローラ63により構成され、搬送ローラが感熱記録媒体に接触して搬送する。感熱記録媒体1をサーマルプリンタに挿入すると、搬送ロール63が感熱記録媒体1を搬送する。消去ヘッド65により感熱記録媒体1の既存の印字を消去し、印字ヘッド67により感熱記録媒体1に印字を行って、排出口より感熱記録媒体1を排出する。プリンタ搬送性とは、サーマルプリンタ61の搬送機構が、問題なく可逆的感熱記録媒体1を搬送できることである。搬送失敗の態様としては、感熱記録媒体1の裏面の摩擦力が高く、搬送ローラ間で感熱記録媒体1が斜行してしまうことなどが考えられる。
【0031】
印字ヘッド67は、複数の発熱体が配列されたサーマルヘッドであり、感熱記録媒体のリライト層に接しながら画像の印字部分に対応する発熱体に電流を流すことにより、リライト層を印字温度に加熱して画像をサーマル印字する。
また、消去ヘッド65はサーマルバーであって、消去温度に一様に加熱された状態でリライト層に接することにより画像を消去する。なお、消去ヘッド65は、熱ロールや熱板により構成されてもよい。
【0032】
また、本実施形態では、ウレタンエラストマー層11を、図3(a)に示すように、裏面(リライト層側の反対側の面)に凹凸を形成させたウレタンエラストマー層23としてもよい。凸部25の高さは10〜30μm程度とすることが好ましい。また、凸部25の直径は0.2〜1.0mm程度とすることが好ましく、隣接する凸部25どうしの中心間距離は、0.5〜1.5mm程度とすることが好ましい。
【0033】
裏面に凹凸を形成させることにより、可逆的感熱記録媒体使用時におけるプリンタ搬送性が良好となる。凹凸は、例えば図3(b)に示すように、凸部25を互い違い(千鳥状)に形成することが好ましい。凸部25をプリンタでの搬送方向(図中、矢印A方向)に対して斜めに並べるように互い違いに形成することにより、プリンタ内で搬送する際に搬送ローラより加えられる力のばらつきが少なく、搬送時に斜行しにくい。また折り曲げに対する柔軟性が良好となる。一方、図3(c)に示すように、凸部25をプリンタの搬送方向に対して並列に配置にすると、搬送ローラと感熱記録媒体の接触が不均一になり、搬送時に斜行する恐れがある。プリンタの搬送方向は、通常使用される矩形の感熱記録媒体においては、感熱記録媒体の辺方向であるのが一般的である。
【0034】
凹凸の形成加工は、ウレタンエラストマー層11の裏面にシルク印刷を用いて凸部25を印刷することにより行うことができる。シルク印刷において、ウレタンエラストマー層と同じウレタン系の印刷インキを用いることにより、耐熱性、耐摩耗性に優れた性質の凹凸面を得ることができる。シルク印刷によれば、凹凸のパターンを正確に形成することが容易であり、また印刷インキに含まれる硬化剤の作用により凹凸面が硬くなり、凹凸形成加工前に比べて摩擦係数を低下させることができ、プリンタ搬送性をより高めることができる。
【0035】
また、他の方法として、可逆的感熱記録媒体1の製造時に、凹凸が形成されたプレス板を用いてウレタンエラストマー層11を熱プレスする方法(マット加工)や、シボ加工等により予め凹凸が形成されたウレタンエラストマー層23を用いる方法も使用できる。
【0036】
いずれの方法で凹凸を形成してもよいが、シルク印刷による方法が、凹凸のパターンを正確に形成できること、また摩擦係数が小さくなることから最も好ましい。マット加工は、製造時のプレス条件によっては凹凸の形成が不完全になることがあり、シボ加工では凹凸がランダムな形状である。また、マット加工、シボ加工で形成された凹凸は、シルク印刷により形成された凹凸よりも柔らかく、接触対象に接する際に変形するため、接触面積が大きくなり、シルク印刷に比べ摩擦係数は高めとなる傾向がある。
【0037】
第1の実施形態によれば、不織布含有ホットメルト層において、不織布の繊維がホットメルト層に絡み合うことで、柔軟性を保ちつつ、熱をかけても反らない構造となっており、これがリライト層を支えることで、加熱による反りを防ぐことができる。また、耐熱性に優れたウレタンエラストマー層により、更に不織布含有ホットメルト層およびリライト層を支えることで、柔軟性に優れ、加熱による反りがない可逆的感熱記録媒体を得ることができる。また、ウレタンエラストマー層の裏面を凹凸加工すれば、プリンタ搬送性、折り曲げ時の柔軟性を更に加えることができる。
【0038】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態における可逆的感熱記録媒体31の概略断面図である。
可逆的感熱記録媒体31は、リライト層3、第1のホットメルト層33、不織布層35、第2のホットメルト層37、ウレタンエラストマー層11が順に積層されている。
第1のホットメルト層33と不織布層35、不織布層35と第2のホットメルト層37とは、不織布層35の一部が第1のホットメルト層33、第2のホットメルト層37に溶着することにより一体化している。
【0039】
可逆的感熱記録媒体31は、第1の実施形態で説明した可逆的感熱記録媒体1の製造において、熱プレスの条件を調整し、不織布層17の繊維がホットメルト層15、19に完全に取り込まれず、不織布層17の一部がホットメルト層15、19に分散させられることによって得られる。なお、ウレタンエラストマー層11に代えて、凸部25を有するウレタンエラストマー層23を用いることもできる。
【0040】
第2の実施形態によれば、不織布の一部がホットメルトに絡みながらホットメルト層が不織布を挟んで積層することで、柔軟性を保ちつつ、熱をかけても反らない構造となっており、これがリライト層を支えることで、加熱による反りを防ぐことができる。また、耐熱性に優れたウレタンエラストマー層により、更に不織布と一部溶着したホットメルト層およびリライト層を支えることで、柔軟性に優れ、加熱による反りがない可逆的感熱記録媒体を得ることができる。また、ウレタンエラストマー層の裏面を凹凸加工すれば、プリンタ搬送性、折り曲げ時の柔軟性を更に加えることができる。
【0041】
(第3の実施形態)
図5は、第3の実施形態における可逆的感熱記録媒体41の概略断面図である。
可逆的感熱記録媒体41は、リライト層3、ホットメルト層43、裏面に凹凸を形成されたウレタンエラストマー層23が順に積層されている。なお、ウレタンエラストマー層23に代えて、凹凸が形成されていないウレタンエラストマー層11を使用してもよい。
【0042】
可逆的感熱記録媒体41は、第1の実施形態の可逆的感熱記録媒体1の製造における積層構成を変え、リライト層3、ホットメルト層15、ウレタンエラストマー層11を順に積層して、熱プレスし、ウレタンエラストマー層11の裏面に第1の実施形態で説明したように、シルク印刷により凹凸形成加工することによって製造される。または、熱プレス時のマット加工や、シボ加工を用いることもできる。なお、凹凸形成加工せずに、ウレタンエラストマー層11のまま使用してもよい。
【0043】
第3の実施形態によれば、耐熱性に優れ、裏面に凹凸が形成されたウレタンエラストマー層が、ホットメルト層およびリライト層を支えて加熱による反りを防ぎ、可逆的感熱記録媒体使用時におけるプリンタ搬送性、折り曲げに対する柔軟性が良好となる。また、特にシルク印刷により凹凸を形成すれば、プリンタ搬送性、折り曲げ時の柔軟性を更に加えることができ、ウレタン系の印刷インキを用いることにより、耐熱性、耐摩耗性に優れる。
【0044】
さらに、本発明の第1〜3の実施形態における可逆的感熱記録媒体は、ICチップ及びICチップに接続されたアンテナを備え、ICタグを備えることができる。第1の実施形態においてICチップ及びICチップに接続されたアンテナを備えた可逆的感熱記録媒体51の例を図6に示す。可逆的感熱記録媒体51は、不織布含有ホットメルト層9内に、ベースフィルム53、ICチップ57及びアンテナ55とで形成されたインレット59を有する。ベースフィルム53には、アンテナ55が配設され、アンテナ55にはICチップ57が取付けられている。なお、インレット59を設ける箇所は、可逆的感熱記録媒体31においては、ホットメルト層33または37のいずれでも良く、可逆的感熱記録媒体41においては、ホットメルト層43である。
【0045】
ベースフィルム53は、樹脂フィルムや紙基材を用いることができる。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、テレフタル酸‐シクロヘキサンジメタノール‐エチレングリコール共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフェニレンサルフイド、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体、ポリアクリル酸エステル、ポリウレタンなどの素材が使用される。また、紙基材としては、上質紙、コート紙、クラフト紙、グラシン紙、合成紙、ラテックスやメラミン含浸紙などが使用できる。樹脂フィルムの場合、厚さは15μm〜40μm程度が好ましい。
【0046】
アンテナ55は、ベースフィルム53上にパターン形成されたアルミニウムや銅などの金属の膜からなるアンテナである。アンテナ55は、一般的にICタグに用いられるアンテナパターンで有り、例えば、13.56MHz帯用のコイル型アンテナやUHF帯用のダイポール型アンテナを用いることができる。アンテナ55は、送信と受信を兼用する。厚さは、15μm〜30μm程度が好ましい。
【0047】
アンテナ55は、ベースフィルム53に、アルミ粉や銀粉などの粒子を含む導電性のインキを、所望のパターンで印刷する方法により形成することができる。
また、アンテナ55は、ベースフィルム53上にめっきや蒸着、ドライラミネートにより形成した金属膜にレジストパターンを印刷し、更にケミカルエッチングによりエッチングする方法により形成することもできる。
また、アンテナ55は、金属箔をプレス加工により打ち抜き、打ち抜き後の金属箔をベースフィルム53に貼り合わせる方法により形成することもできる。
【0048】
ICチップ57は、一般的にICタグに用いられるICチップであり、シリコン基板に、制御部、情報記憶のためのメモリ部、無線通信部などの回路が形成されている。ICチップは小サイズ化が図られ薄片化しているが、近年のICチップでも、0.2mm〜2mm角以内の平面サイズと、50μm〜500μmの厚みを有する。
【0049】
インレット59は、インターポーザをアンテナ55に取付けて形成してもよいし、アンテナ55にICチップ57を直接取付けて形成してもよい。インターポーザとは、基材の面に金属箔導電層による接続端子を形成し、当該接続端子にICチップ57を装着してなる。また、インレット59は、表裏どちらでも使用できるが、本発明ではICチップ57の突起がリライト層3への印字に影響しないように、ICチップ57を、リライト層側を「上」とした場合の下向き、すなわち、ICチップ57よりもベースフィルム53がリライト層3に近くなるように配置することが好ましい。
【0050】
インレット59は、ホットメルト層内に有することが好ましく、製造時の層構成に、インレット59の形状の穴を有し、前記穴にインレット59が入れられているホットメルト層を更に加えて熱プレスする。インレット59が入れられたホットメルト層の積層位置は、適宜選択可能であるが、例えば、図2においては、ホットメルト層15、19の上下いずれかに接して積層する。
【0051】
このように、可逆的感熱記録媒体にICタグが付いている場合は、ICタグの内容をサーマルプリンタで読み出して、その内容を直ちに印字することができる。また、外部処理装置から受信したデータを印字すると同時にICタグのメモリに記録することもできる。さらに、ICが保持するデータと印字記録される情報、ひいてはICが保持するデータと可逆的感熱記録媒体が付されている物品との間に不一致が生じないという利点を有することになる。
【符号の説明】
【0052】
1………可逆的感熱記録媒体
3………リライト層
5………可逆的感熱記録層
7………支持体
9………不織布含有ホットメルト層
11………ウレタンエラストマー層
13………不織布繊維
15………ホットメルト層
17………不織布層
19………ホットメルト層
21………可逆的感熱記録媒体
23………ウレタンエラストマー層
25………凸部
27………凹部
31………可逆的感熱記録媒体
33………第1のホットメルト層
35………不織布層
37………第2のホットメルト層
41………可逆的感熱記録媒体
43………ホットメルト層
51………ICタグ入り可逆的感熱記録媒体
53………ベースフィルム
55………アンテナ
57………ICチップ
59………インレット
61………サーマルプリンタ
63………搬送ローラ
65………消去ヘッド
67………印字ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可逆的感熱記録層を有するリライト層と、不織布を含有するホットメルト層と、ウレタンエラストマー層とを順に積層してなることを特徴とする可逆的感熱記録媒体。
【請求項2】
可逆的感熱記録層を有するリライト層と、第1のホットメルト層と、不織布層と、第2のホットメルト層と、ウレタンエラストマー層とを順に積層してなることを特徴とする可逆的感熱記録媒体。
【請求項3】
可逆的感熱記録層を有するリライト層と、ホットメルト層と、ウレタンエラストマー層とが順に積層してなることを特徴とする可逆的感熱記録媒体。
【請求項4】
前記ウレタンエラストマー層は、前記ホットメルト層側と反対側の面が凹凸に加工されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の可逆的感熱記録媒体。
【請求項5】
前記凹凸は、シルク印刷により形成されていることを特徴とする請求項4記載の可逆的感熱記録媒体。
【請求項6】
前記凹凸の凸部が、前記可逆的感熱記録媒体の辺方向に対して互い違いに設けられていることを特徴とする請求項4または5に記載の可逆的感熱記録媒体。
【請求項7】
前記ホットメルト層中に、ICチップと、前記ICチップに接続されたアンテナとを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の可逆的感熱記録媒体。
【請求項8】
可逆的感熱記録層を有するリライト層と、第1のホットメルト層と、不織布層と、第2のホットメルト層と、ウレタンエラストマー層とを順に積層する工程と、
前記リライト層と、前記第1のホットメルト層と、前記不織布層と、前記第2のホットメルト層と、前記ウレタンエラストマー層とを熱プレスする工程と
を備えることを特徴とする可逆的感熱記録媒体の製造方法。
【請求項9】
可逆的感熱記録層を有するリライト層と、ホットメルト層と、ウレタンエラストマー層とを順に積層する工程と、
前記リライト層と、前記ホットメルト層と、前記ウレタンエラストマー層とを熱プレスする工程と、
前記ウレタンエラストマー層の前記ホットメルト層側と反対側の面に、シルク印刷により凸部を形成する工程と
を備えることを特徴とする可逆的感熱記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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